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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】検体性状判別装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/38 20060101AFI20241209BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20241209BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20241209BHJP
   G01F 23/292 20060101ALN20241209BHJP
【FI】
G01N1/38
G01N35/02 C
G01N35/02 D
G01N21/17 A
G01F23/292 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021126479
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021552
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森田 祥平
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-212077(JP,A)
【文献】特開平11-248853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/38
G01N 35/02
G01N 21/17
G01F 23/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容する容器を、第1回転軸を軸として傾けることで前記検体を攪拌する第1機構と、
前記検体に光を照射する光源、前記検体を間にして前記光源の反対側に設置されて前記検体を撮影する撮像部、及び、前記容器を、第1回転軸とは異なる第2回転軸を軸として傾ける第2機構と、
前記第1回転軸及び前記第2回転軸を支持する支持部と、
を含むことを特徴とする検体性状判別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検体性状判別装置において、
前記第2機構は、前記光源、前記撮像部及び前記容器の位置関係を変えずに、前記光源、前記撮像部及び前記容器を、前記第2回転軸を軸として傾け、
前記撮像部は、前記光源、前記撮像部及び前記容器が傾けられている最中に前記検体を撮影する、
ことを特徴とする検体性状判別装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検体性状判別装置において、
前記光源、前記撮像部及び前記容器が傾けられている最中に前記撮像部によって撮影することで生成された画像に基づいて、前記検体の境界を判別する判別手段を更に含む、
ことを特徴とする検体性状判別装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検体性状判別装置において、
前記第1機構が前記容器を傾ける速度は、前記第2機構が前記光源、前記撮像部及び前記容器を傾ける速度よりも速く、
前記第1機構によって前記容器が傾けられる範囲は、前記第2機構によって前記光源、前記撮像部及び前記容器が傾けられる範囲よりも広い、
ことを特徴とする検体性状判別装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の検体性状判別装置において、
複数の容器を把持する把持機構を更に含み、
前記把持機構は、
前記容器が配置される複数の溝が形成された第1部材と、
弾性体によって構成され、前記複数の溝のそれぞれに配置された前記容器を前記第1部材と共に挟む第2部材と、
を含み、
前記第1機構は、前記把持機構によって把持された前記複数の容器を、前記第1回転軸を軸として傾け、
前記第2機構は、前記光源、前記撮像部、及び、前記把持機構によって把持された前記複数の容器を、前記第2回転軸を軸として傾ける、
ことを特徴とする検体性状判別装置。
【請求項6】
請求項5に記載の検体性状判別装置において、
前記溝が形成されている部分を前記第2部材に向けて押す第3部材が、第1部材に設けられている、
ことを特徴とする検体性状判別装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の検体性状判別装置において、
前記把持機構は、
前記容器が前記第1部材と前記第2部材とによって挟まれたときに前記容器の蓋を押さえ付ける第4部材を更に含む、
ことを特徴とする検体性状判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体性状判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断のために採取された検体は、検査項目に従って医用分析装置によって計測される。例えば、血液検査装置を用いて全血球計算を行う場合、採血によって摂取された血液が収容された採血管から血液を抽出し、血算項目に従って計測が行われる。
【0003】
一般的に、血算に必要な前工程として、容器に収容された検体の攪拌、容器内の検体量の確認、及び、検体内に凝固体が含まれているか否かの判別、が行われる。
【0004】
これらの前工程を検査技師が手作業で行うと、検査技師の負担の増大、前工程に要する時間の増大、及び、人為的ミスの発生等が生じするおそれがあるため、これらの前工程の自動化が図られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、容器内の検体が凝固しているか否かを機械的に判定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-248853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
攪拌を自動化しても、検体数が多いと攪拌に要する時間が長くなるため、短時間で検体を攪拌することが可能な機構の実現が望まれる。
【0008】
また、容器にラベルが貼られている場合、検体量を自動的に測定する技術では、その容器内の検体量を正確に測定することが困難な場合がある。例えば、ラベルと検体の液面とを区別して液面を正確に検出することができず、その結果、検体量を正確に測定することができない場合がある。
【0009】
また、検体内に凝固体が含まれていると、検査時に異常値が測定されたり、検体の吸引時に吸引ノズルが詰まったりすることが発生する。これらを回避するためにも、検体内の凝固体を自動的に判別する機構の実現が望まれる。
【0010】
本発明の目的は、検体の攪拌、検体量の確認及び凝固体の判別を実現するための機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、検体を収容する容器を、第1回転軸を軸として傾けることで前記検体を攪拌する第1機構と、前記検体に光を照射する光源、前記検体を間にして前記光源の反対側に設置されて前記検体を撮影する撮像部、及び、前記容器を、第1回転軸とは異なる第2回転軸を軸として傾ける第2機構と、前記第1回転軸及び前記第2回転軸を支持する支持部と、を含むことを特徴とする検体性状判別装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の1つの態様によれば、検体の攪拌、検体量の確認及び凝固体の判別を実現するための機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る検体性状判別装置の機能を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る振動部の構成を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る振動部の構成を示す斜視図である。
図4】実施形態に係る振動部の一部の構成を示す斜視図である。
図5】容器と検体を示す図である。
図6】実施形態に係る振動部の構成を示す斜視図である。
図7】撮像部と容器を示す図である。
図8】容器を示す図である。
図9】把持機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、実施形態に係る検体性状判別装置の機能について説明する。図1は、実施形態に係る検体性状判別装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0015】
実施形態に係る検体性状判別装置は、例えば、検体性状の異常を透過光による映像の陰影によって計測する装置である。検体性状の異常は、例えば、血液の凝固等である。
【0016】
実施形態に係る検体性状判別装置は、振動部10と、振動部10を構成するデバイスの制御を行なう機器制御部12と、判別部14と、判別結果を表示する表示部16とを含む。
【0017】
振動部10は、転倒混和機構と揺動撮影機構とを含み、転倒運動と揺動撮影とを実現する機構である。
【0018】
転倒混和機構は、転倒運動を実現する機構である。例えば、検体の攪拌の方法は、転倒混和である。転倒混和は、検体を上下反転させて混ぜることである。転倒運動は、検体を収容する容器を転倒させることで、検体を攪拌するための運動である。つまり、転倒混和機構は、容器を転倒させることで、その容器に収容されている検体を攪拌する。
【0019】
揺動撮影機構は、揺動撮影を実現する機構である。揺動撮影は、容器を揺動させながら検体を撮影することである。つまり、揺動撮影機構は、容器を揺動させながら、その容器に収容されている検体を撮影する。
【0020】
機器制御部12は、撮像制御部18と、光源制御部20と、駆動制御部22と、システム制御部24とを備える。
【0021】
撮像制御部18は、振動部10に含まれる撮像部28(図2参照)を制御する。撮像制御部18には、撮像部28から出力される撮像データが入力される。撮像制御部18は、例えば、圧縮形式の撮像データをRGB信号等の非圧縮形式の映像データに変換し、映像の輝度及び階調に応じて露出及び焦点調整等を行うための撮像制御信号をシステム制御部24に出力する。撮像制御信号は、システム制御部24に入力される。
【0022】
システム制御部24は、検体照明用の光源30(図2参照)の明るさを制御するための光源制御信号を光源制御部20に出力する。光源制御信号は、光源制御部20に入力される。また、システム制御部24は、第1機構34(図2参照)に設けられているモータを制御するための駆動制御信号、及び、第2機構38(図2参照)に設けられているモータを制御するための駆動制御信号を、駆動制御部22に出力する。駆動制御信号は、駆動制御部22に入力される。
【0023】
光源制御部20は、光源制御信号に従って光源30の明るさを制御する。例えば、光源制御部20は、光源30の明るさを制御するための光源用電圧信号を光源30に出力することで、光源30の明るさを制御する。例えば、光量不足又はハレーションが発生する場合、撮像制御部18が、撮像部28の絞り等によって露光を調整する。その調整によっても光量不足又はハレーションが解消されない場合、光源制御部20は、光源30が出力する光量の調整を行う。もちろん、これは制御の一例に過ぎず、これ以外の制御が行われてもよい。
【0024】
駆動制御部22は、駆動制御信号に従って、第1機構34及び第2機構38のそれぞれに設けられているモータを制御する。例えば、駆動制御部22は、第1機構34及び第2機構38のそれぞれに設けられているモータを駆動するためのモータ用電圧信号を各モータに出力することで、各モータを制御する。
【0025】
以下、図2及び図3を参照して、振動部10の構成について説明する。図2及び図3は、振動部10を示す斜視図である。
【0026】
振動部10は、支持部26と、撮像部28と、光源30と、把持機構32と、第1機構34と、第2機構38とを含む。第1機構34は、第1回転軸36とモータとを含む。第2機構38は、第2回転軸40とモータとを含む。把持機構32によって容器42が把持される。
【0027】
把持機構32及び第1機構34によって、転倒混和機構が構成される。撮像部28、把持機構32、光源30及び第2機構38によって、揺動撮影機構が構成される。
【0028】
支持部26は、第1回転軸36と第2回転軸40とを支持する部材である。例えば、支持部26は、互いに離れて配置されたフレーム44,46を含み、第1回転軸36及び第2回転軸40は、フレーム44からフレーム46にわたって配置されている。つまり、第1回転軸36及び第2回転軸40のそれぞれの一端は、フレーム44に接続され、第1回転軸36及び第2回転軸40のそれぞれの他端は、フレーム46に接続されている。
【0029】
撮像部28、把持機構32及び光源30は、その順番で配置されている。つまり、撮像部28と光源30との間に把持機構32が配置されている。換言すると、撮像部28は、把持機構32の一方側(つまり容器42の一方側)に配置され、光源30は、把持機構32の他方側に配置される。容器42は、撮像部28と光源30との間に配置される。
【0030】
撮像部28、把持機構32及び光源30の位置関係は、固定されている。容器42は把持機構32によって把持されるので、撮像部28、容器42及び光源30の位置関係は、固定されている。つまり、撮像部28、容器42に収容されている検体、及び、光源30の位置関係は、固定されている。
【0031】
撮像部28は、例えば、カラーカメラ、赤外線カメラ又は紫外線カメラ等のカメラである。
【0032】
光源30は、光源制御部20から出力される光源用電圧信号によって制御される。光源30は、例えば、赤外光源又は可視光源である。
【0033】
光源30から出射した光は、容器42内の検体に照射される。検体を透過した光は、撮像部28に入射する。このようにして、撮像部28は、容器42内の検体を撮像する。
【0034】
把持機構32は、複数の容器42を把持する。把持機構32の構成については後で詳しく説明する。
【0035】
撮像部28は、支持部26に固定されている。把持機構32と光源30は、第1回転軸36に固定されている。
【0036】
第1機構34は、第1機構34に設けられているモータの駆動力によって、第1回転軸36を軸として把持機構32と光源30を傾ける。つまり、モータによって第1回転軸36が回転させられることで、第1回転軸36に固定されている把持機構32と光源30が、傾けられる。把持機構32が傾けられることで、把持機構32によって把持されている容器42が傾けられる。これにより、検体の転倒混和が実現される。
【0037】
駆動制御部22は、第1機構34に設けられているモータを制御することで、第1回転軸36の回転を制御し、これによって、把持機構32と光源30の回転を制御する。例えば、第1回転軸36の回転角度の範囲、角速度、角加速度、及び、回転の回数が、第1機構34の第1回転パラメータとして設定される。駆動制御部22は、その第1回転パラメータに従って第1回転軸36を回転させる。第1回転パラメータは、例えば、作業者によって設定される。
【0038】
把持機構32及び光源30の傾斜の角度(つまり回転角度)の範囲は、0°~180°である。つまり、第1回転軸36の回転によって、0°~180°の範囲で、把持機構32及び光源30を傾けることができる。なお、この回転角度の範囲は一例に過ぎず、他の範囲が採用されてもよい。回転の回数は、転倒混和の回数である。
【0039】
第2機構38は、第2機構38に設けられているモータの駆動力によって、第2回転軸40を軸として振動部10の全体を傾ける。つまり、モータによって第2回転軸40が回転させられることで、振動部10の全体が傾けられる。これにより、第2回転軸40を軸として、撮像部28、光源30及び把持機構32が傾けられる。
【0040】
駆動制御部22は、第2機構38に設けられているモータを制御することで、第2回転軸40の回転を制御し、これによって、振動部10の全体の回転を制御する。例えば、第2回転軸40の回転角度の範囲、角速度、角加速度、及び、回転の回数が、第2機構38の第2回転パラメータとして設定される。駆動制御部22は、その第2回転パラメータに従って第2回転軸40を回転させる。第2回転パラメータは、例えば、作業者によって設定される。
【0041】
振動部10の傾斜の角度(つまり回転角度)の範囲は、0°~180°である。つまり、第2回転軸40の回転によって、0°~180°の範囲で、振動部10の全体を傾けることができる。なお、この回転角度の範囲は一例に過ぎず、他の範囲が採用されてもよい。回転の回数は、振動部10の全体を回転させる回数である。
【0042】
以下、振動部10の動作について説明する。
【0043】
図2から図5を参照して、転倒混和について説明する。図4は、振動部10の一部の構成を示す斜視図である。具体的には、図4には、第1回転軸36、把持機構32及び光源30が示されている。図5は、容器42と検体を示す図である。
【0044】
図2及び図3には、回転角度が0°のときの把持機構32及び光源30が示されている。図4には、回転角度が180°のときの把持機構32及び光源30が示されている。例えば、0°~180°の回転角度の範囲で把持機構32が複数回傾けられることで、検体が攪拌される。
【0045】
図5には、転倒混和の様子が示されている。図5(a)には、攪拌前の検体が示されている。図5(b)には、転倒混和が行われているときの検体が示されている。図5(c)には、攪拌後の検体が示されている。容器42内には、検体の一例である血液が収容されている。
【0046】
図5(a)に示すように、攪拌前(つまり転倒混和の前)においては、血液は、血漿成分42aと血餅成分42bとに自然に分離している。図5(b)には、転倒混和中の容器42及び血液が示されている。転倒混和によって血液が攪拌され、図5(c)に示すように、攪拌された検体42cが得られる。
【0047】
図2図3図6及び図7を参照して、揺動撮影について説明する。図6は、振動部10を示す斜視図である。図7は、撮像部28と容器42が示されている。
【0048】
図2及び図3には、回転角度が0°のときの振動部10が示されている。図6には、回転角度が180°のときの振動部10が示されている。
【0049】
図7には、各回転角度における容器42と撮像部28が示されている。矢印Aは、回転方向を示している。撮像部28、光源30及び把持機構32の位置関係を変えずに、撮像部28、光源30及び把持機構32が、第2回転軸40を軸として回転させられる。そのため、撮像部28、光源30及び容器42の位置関係を変えずに、撮像部28、光源30及び容器42が、第2回転軸40を軸として回転させられ、容器42内の検体が撮像部28によって撮像される。撮像部28は、その回転の最中に容器42内の検体を撮像する。
【0050】
揺動撮影について詳しく説明する。容器42内には、血液等の検体42dが収容されている。容器42の外周面にはラベルが貼付されている。図7には、検体42dの液面42eと、そのラベルの端部42fが示されている。液面42eは、検体42dの境界の一例に相当する。
【0051】
符号45aは、回転角度が0°のときの容器42の状態を指し示している。回転角度が0°の場合、ラベルの端部42fが検体42dの液面であると誤判定される可能性がある。つまり、この状態では、液面42eとラベルの端部42fとの区別が困難であり、端部42fが液面42eであると誤判定される可能性がある。
【0052】
撮像部28、光源30及び把持機構32が回転させられると、符号45bが指し示すように、容器42が傾き、検体42dが容器42内で移動し、液面42eが移動する。撮像部28、光源30及び把持機構32が更に回転させられると、符号45c,45dのそれぞれが指し示すように、容器42が更に傾き、液面42eが更に移動する。このように、容器42が傾くと、容器42内における液面42eの位置が徐々に変わる。一方、ラベルの端部42fの位置は変わらない。このように、ラベルの端部42fの位置は変わらず、液面42eの位置が変わるので、ラベルの端部42fと液面42eとを区別して識別することができる。
【0053】
判別部14は、撮像部28、光源30及び容器42が傾けられている最中に撮像部28による撮影によって生成された画像に基づいて、液面42e(つまり検体の境界)を判別する。例えば、判別部14は、揺動撮影によって生成された画像において移動している部分が液面42eであると判別する。これにより、ラベルが貼付された容器42が用いられる場合であっても、液面42eを判別することができるため、検体量を正確に測定することが可能となる。
【0054】
図8を参照して、凝固体の判別方法について説明する。図8(a)及び図8(b)に示すように、容器42内に検体42dが収容されている。図8(a)に示されている検体42dには、凝固体は含まれていない。図8(b)に示されている検体42dには、凝固体42gが含まれている。揺動撮影を行うと、凝固体が検体42dに含まれない場合と凝固体が検体42dに含まれる場合とで、検体42dの挙動に差が生じる。例えば、検体42dの移動に遅延が発生したり、検体42dが静止したりする。その様子が撮像部28によって撮影され、判別部14は、その撮影によって生成された画像を解析することで、検体42d中の凝固体の有無を判断する。判別部14は、検体42dの移動に遅延が発生していたり、検体42dが静止していたりする場合、検体42dに凝固体が含まれていると判断する。人工知能(AI)によって画像解析が行われることで、凝固体の有無が判断されてもよい。
【0055】
図9を参照して、把持機構32について説明する。図9は、把持機構32を示す斜視図である。
【0056】
把持機構32は、第1部材47と第2部材48とを含む。第1部材47には、複数の溝50が形成されている。例えば、V字状の溝50が形成されたブロック部材52が、第1部材47に設置されている。各溝50に容器42が配置される。図9に示す例では、5つのブロック部材52が直線状に並んで配置されており、5つの容器42が把持機構32によって同時に把持される。
【0057】
第2部材48は、ゴム等の弾性体によって構成され、各溝50に配置された容器42を第1部材47と共に挟む。第2部材48は、平坦な面を有する直方体の部材である。
【0058】
また、ばね54が、第1部材47に設けられている。ばね54は、溝50が形成されているブロック部材52を第2部材48に向けて押す第3部材の一例である。ばね54は、各ブロック部材52の背面(つまり、第2部材48とは反対側の面)に設けられている。ばね54の反発力によって、ブロック部材52が第2部材48に向けて押される。
【0059】
各溝50に容器42が配置され、第1部材47と第2部材48とによって各容器42が挟み込まれることで、各容器42が第1部材47と第2部材48とによって把持される。溝50と弾性体である第2部材48とによって容器42が挟み込まれることで、容器42の姿勢が安定する。
【0060】
また、ばね54によってブロック部材52が第2部材48に向けて押されることで、各容器42の径差を吸収することができる。つまり、径の異なる複数の容器42が把持機構32によって把持された場合であっても、各ばね54の伸縮によって各ブロック部材52の位置が調整されるので、各容器42の径差が吸収されて、当該複数の容器42を把持機構32に設置することができる。
【0061】
把持機構32を用いることで、5つの容器42を把持して、転倒混和と揺動撮影を同時に行うことが可能となる。また、径の異なる複数の容器42が用いられる場合も、複数の検体について転倒混和と揺動撮影を同時に行うことが可能となる。
【0062】
また、図3に示すように、容器42には、蓋56が設置される。把持機構32は、更に第4部材58を含む。第4部材58は、容器42が第1部材47と第2部材48とによって挟まれたときに容器42の蓋56を押さえ付ける部材である。例えば、第4部材58は、ばね等の弾性体を含み、その弾性体によって蓋56を押さえ付ける。
【0063】
実施形態において、第1機構34が容器42を傾ける速度(つまり角速度)は、第2機構38が光源30、撮像部28及び容器42を傾ける速度(つまり角速度)よりも速くてもよい。以下、第1機構34の角速度を「第1角速度」と称し、第2機構38の角速度を「第2角速度」と称する。第1角速度>第2角速度の関係が成立してもよい。第1機構34は、検体の攪拌のために容器42を傾ける。第1角速度が速いほど、検体が良好に攪拌される。第2機構38は、揺動撮影のための機構であり、検体の攪拌に用いられる機構ではない。そのため、検体が攪拌される程度の角速度で、光源30、撮像部28及び容器42を傾ける必要がない。したがって、第1角速度>第2角速度の関係に従って、第1機構34と第2機構38が駆動してもよい。
【0064】
また、第1機構34によって容器42が傾けられる範囲(つまり回転角度の範囲)は、第2機構38によって光源30、撮像部28及び容器42が傾けられる範囲(つまり回転角度の範囲)よりも広くてもよい。以下、第1機構34の回転角度の範囲を、「第1回転角度範囲」と称し、第2機構38の回転角度の範囲を、「第2回転角度範囲」と称する。第1回転角度範囲>第2回転角度範囲の関係が成立してもよい。回転角度の範囲が広いほど、検体が良好に攪拌される。例えば、容器42を上下反転させると、つまり、容器42を0°~180°の回転角度の範囲で傾けると、検体が良好に攪拌される。揺動撮影では、検体の攪拌ほど回転角度の範囲を必要としない。したがって、第1回転角度範囲>第2回転角度範囲の関係に従って、第1機構34と第2機構38が駆動してもよい。
【0065】
上述した実施形態によれば、第1機構34によって転倒混和を実現して、検体を良好に攪拌することが可能となる。また、第2機構38によって揺動撮影を実現して、検体の液面を正確に判別することが可能となる。ラベルが貼付されている容器42が用いられる場合であっても、検体の液面を正確に判別し、その結果、検体量を正確に測定することが可能となる。また、揺動撮影によって、検体中の凝固体の有無を判別することが可能となる。また、把持機構32を用いることで、複数の検体(例えば5つの検体)について、転倒混和と揺動撮影を同時に実現することが可能となる。その結果、検査に要する時間を短縮することが可能となる。
【0066】
また、撮像部28、光源30及び把持機構32の全体を回転させる第2機構38の他に第1機構34を用いることで、検体の攪拌のために回転する必要のない撮像部28を回転させずに、検体を攪拌することが可能となる。攪拌のために回転させる対象の重さを極力減らして、容器42を回転させて検体を攪拌することが可能となる。
【0067】
上記の各構成、機能、処理部及び処理手段の全部又は一部は、例えば、集積回路等のハードウェアによって実現されてもよい。CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムを実行することで、上記の各構成、機能、処理部及び処理手段の全部又は一部が実現されてもよい。上記の各構成、機能、処理部及び処理手段の全部又は一部を実現するプログラム、テーブル及びファイル等の情報は、例えば、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、ICカード、SDカード又はDVD等の記憶媒体に記憶される。
【符号の説明】
【0068】
10 振動部、14 判別部、28 撮像部、30 光源、32 把持機構、34 第1機構、36 第1回転軸、38 第2機構、40 第2回転軸、42 容器。
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