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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/10 20060101AFI20241209BHJP
   C08L 25/02 20060101ALI20241209BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20241209BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C08L33/10
C08L25/02
C08L51/06
C08L77/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021535152
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2020011328
(87)【国際公開番号】W WO2021045429
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-06-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0110417
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0106135
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ワンレ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ホ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン・ジャン
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】加藤 幹
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-509048(JP,A)
【文献】特開平10-33626(JP,A)
【文献】特開昭58-222139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A-1)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体10~30重量%、A-2)平均粒径0.3~0.5μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、
B)芳香族ビニル重合体0重量%、及び
C)ポリメタクリレート0~0重量%からなるベース樹脂100重量部と;
D)ポリアミド0.5~10重量部とを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物であって、
B)芳香族ビニル重合体は、含まれず、
前記C)ポリメタクリレート樹脂は、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであるポリメチルメタクリレート樹脂と、重量平均分子量が35,000~45,000g/molであるポリメチルメタクリレート樹脂との混合物であり、
前記熱可塑性樹脂組成物は、オプティカルプロファイラーシステムにより5か所を測定して平均した表面粗さが2.5以下であり、
前記熱可塑性樹脂組成物は、SAE J1960方法により測定した耐候性(△E)が1.8以下である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物は、グロスメーターVG7000を用いて60°で測定したフィルム光沢度(gloss)が14以下である無光特性を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記A-1)グラフト共重合体は、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記A-2)グラフト共重合体は、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記A-1)グラフト共重合体は、前記A-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の重量の和は、ベース樹脂に対して40~60重量%であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記D)ポリアミドはポリアミド6.6であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2019年09月06日付の韓国特許出願第10-2019-0110417号及び2020年08月24日付で再出願された韓国特許出願第10-2020-0106135号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関し、より詳細には、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながら、耐候性に優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかい感じを与え、表面光沢が均一な低光沢熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリレート化合物-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「ASA樹脂」という)は、耐候性、耐老化性、耐化学性、剛性、耐衝撃性及び加工性をすべて備えており、用途が多様であるため、自動車、雑貨及び建築資材分野などで広範囲に用いられる。
【0004】
ところが、外装材分野においてASA樹脂の場合、人為的なプラスチックの感じを脱した感性樹脂に対するニーズを満たし得る低光沢ASA樹脂に対する開発の必要性が増大している。
【0005】
前記低光沢ASA樹脂としてナイロンなどの結晶性樹脂を用いて低い光沢を実現したが、低光沢に劣らず外装材において重要な物性である耐候性及び表面の質感の向上には限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0095764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながら、耐候性に優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかい感じを与え、表面光沢が均一な低光沢熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、A-1)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体10~30重量%、A-2)平均粒径0.3~0.5μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、B)芳香族ビニル重合体0~35重量%、及びC)ポリメタクリレート10~60重量%からなるベース樹脂100重量部と;D)ポリアミド0.5~10重量部とを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながら、耐候性に優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかい感じを与え、表面光沢が均一な低光沢熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を詳細に説明する。
【0012】
本発明者らは、ASA樹脂にポリアミドを添加して無光効果を実現しようとするとき、ASA樹脂のモフォロジーを調節し、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体やポリメチルメタクリレートを必須成分として所定の組成比で含む場合に、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながら、耐候性が向上し、表面粗さの値は低くなるため感性的に柔らかく、表面光沢が均一な低光沢熱可塑性樹脂組成物を得ることができることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して、本発明を完成するようになった。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、A-1)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体10~30重量%、A-2)平均粒径0.3~0.5μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、B)芳香族ビニル重合体0~35重量%、及びC)ポリメタクリレート10~60重量%からなるベース樹脂100重量部と;D)ポリアミド0.5~10重量部とを含むことを特徴とし、このような場合に、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも、耐候性に優れ、光沢が低く、表面光沢が均一で、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかい感じを与える熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0014】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0015】
A-1)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記A-1)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が0.05~0.15μmであってもよく、好ましくは0.1~0.15μmであり、より好ましくは0.12~0.15μm、さらに好ましくは0.12~0.14μm、または0.13~0.15μmであり、この範囲内で、最終的に製造される熱可塑性樹脂組成物に優れた耐候性、着色性、衝撃強度、耐化学性及び表面光沢特性を付与することができる。
【0016】
前記アクリレートゴムは、好ましくはコアであってもよい。
【0017】
本記載において、平均粒径は、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳しくはNicomp380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて測定することができる。
【0018】
また、本記載において、平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には散乱強度平均粒径を意味することができる。
【0019】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として10~30重量%、好ましくは15~25重量%、より好ましくは15~20重量%であり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0020】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0021】
好ましい例として、前記A-1)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~50重量%及びビニルシアン化合物5~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0022】
より好ましい例として、前記A-1)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0023】
本記載において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合された重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0024】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合に、耐化学性、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0025】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0026】
前記アクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が2~8個であるアルキルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8個であるアルキルアクリレートであり、より好ましくは、ブチルアクリレート又はエチルヘキシルアクリレートであってもよい。
【0027】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-tert-ブチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0028】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0029】
A-2)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記A-2)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が0.3~0.5μmであってもよく、好ましくは0.35~0.5μmであってもよく、より好ましくは0.4~0.5μm、さらに好ましくは0.45~0.50μmであり、この範囲内で、耐候性が良好ながらも、流動性、引張強度及び衝撃強度などの機械的強度に優れるという効果がある。
【0030】
前記アクリレートゴムは、好ましくはコアであってもよい。
【0031】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として20~40重量%、好ましくは25~35重量%、より好ましくは30~35重量%であり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0032】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0033】
好ましい例として、前記A-2)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0034】
前記A-1)グラフト共重合体は、好ましくは、前記A-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれてもよく、より好ましくは、前記A-1)グラフト共重合体と前記A-2)グラフト共重合体との重量比が1:1.1~1:4、より好ましくは1:1.2~1:2であり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0035】
前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の重量の和は、好ましくは、ベース樹脂に対して40~60重量%、より好ましくは45~55重量%、さらに好ましくは47~53重量%であり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0036】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合に、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0037】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0038】
B)芳香族ビニル重合体
前記B)芳香族ビニル重合体は、一例として0~35重量%であってもよく、好ましくは10~35重量%であってもよく、より好ましくは10重量%未満であり、さらに好ましくは5重量%未満であり、含まれないことが最も好ましく、この範囲内で、耐候性に優れ、特に表面粗さの値が大幅に低くなるため、光沢が均一で、手で触れたときに柔らかい感じがするという利点がある。
【0039】
前記B)芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなることが好ましく、この範囲内で、耐化学性及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0040】
前記B)芳香族ビニル重合体は、一例として、重量平均分子量が80,000~180,000g/molであり、好ましくは80,000~160,000g/molであり、この範囲内で、引張強度及び衝撃強度などに優れるという効果がある。
【0041】
前記B)芳香族ビニル重合体は、一例として、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体であり、好ましい例として、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体(耐熱SAN樹脂)、またはこれらの混合物であってもよく、この場合に、耐熱度などに優れるという効果がある。
【0042】
前記スチレン-アクリロニトリル共重合体は、好ましくは15~35重量%であってもよく、より好ましくは15~25重量%であり、この範囲内で、耐熱度などに優れるという効果がある。
【0043】
前記スチレン-アクリロニトリル共重合体は、スチレン65~80重量%及びアクリロニトリル20~35重量%を含んでなることが好ましく、この範囲内で、加工性及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0044】
前記スチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として、重量平均分子量が100,000~180,000g/molであり、好ましくは100,000~150,000g/molであり、この範囲内で、耐熱度などに優れるという効果がある。
【0045】
前記α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体は、好ましくは10~20重量%であってもよく、より好ましくは12~18重量%であり、この範囲内で、耐熱度などに優れるという効果がある。
【0046】
前記α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体は、α-メチルスチレン70~75重量%及びアクリロニトリル25~30重量%を含んでなることが好ましく、より好ましくは、α-メチルスチレン60~75重量%、スチレン0~10重量%及びアクリロニトリル20~30重量%を含んでなるか、又は、α-メチルスチレン60~70重量%、スチレン0~10重量%及びアクリロニトリル25~30重量%を含んでなってもよく、さらに好ましくは、α-メチルスチレン60~75重量%、スチレン5~10重量%及びアクリロニトリル20~30重量%を含んでなるか、又は、α-メチルスチレン60~70重量%、スチレン5~10重量%及びアクリロニトリル25~30重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐熱度などに優れるという効果がある。
【0047】
前記α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体は、重量平均分子量が80,000~120,000g/molであることが好ましく、この範囲内で、耐熱度などに優れるという効果がある。
【0048】
本記載において、重量平均分子量は、特に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介して、標準PS(標準ポリスチレン(standard polystyrene))試料に対する相対値として測定することができる。
【0049】
前記B)芳香族ビニル重合体は、一例として、懸濁重合、乳化重合、溶液重合または塊状重合により製造されてもよく、この場合に、耐熱性及び流動性などに優れるという効果がある。
【0050】
前記懸濁重合、乳化重合、溶液重合及び塊状重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる溶液重合及び塊状重合方法による場合、特に制限されない。
【0051】
C)ポリメタクリレート
前記C)ポリメタクリレートは、一例として10~60重量%であってもよく、好ましくは25~55重量%、より好ましくは25~50重量%、さらに好ましくは30~50重量%、より一層好ましくは35~50重量%、最も好ましくは45~50重量%であり、この範囲内で、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながら、耐候性が大きく向上し、表面粗さの値が非常に低いため感性的に柔らかいという利点がある。
【0052】
前記C)ポリメタクリレートは、好ましくはメタクリレート単量体を55重量%以上含み、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは65重量%以上含み、この範囲内で、耐候性が大きく向上し、表面粗さの値が非常に低いため感性的に柔らかいという効果がある。
【0053】
前記メタクリレート単量体は、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートであってもよく、具体例として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、炭素数1~4個の鎖状アルキル基を含むアルキルメタクリレートであってもよく、より好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0054】
前記C)ポリメタクリレートは、好ましくは、ポリメチルメタクリレート樹脂及びメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択された1種以上であり、より好ましくは、ポリメチルメタクリレート樹脂またはメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体であり、さらに好ましくはポリメチルメタクリレート樹脂であり、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかいという効果がある。
【0055】
前記ポリメチルメタクリレート樹脂は、一例として、重量平均分子量が35,000~200,000g/molであってもよく、好ましくは50,000~200,000g/molであってもよく、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかいという効果がある。
【0056】
他の例として、ポリメチルメタクリレート樹脂は、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであるポリメチルメタクリレート樹脂(以下、「高分子量PMMA樹脂」という)と、重量平均分子量が35,000~45,000g/molであるポリメチルメタクリレート樹脂(以下、「低分子量PMMA樹脂」という)との混合物であってもよい。
【0057】
前記高分子量PMMA樹脂と低分子量PMMA樹脂は、一例として、重量比が1:0.1~2.0であってもよく、好ましくは1:1.3~1.7、より好ましくは1:1.4~1.6であってもよく、この範囲内で、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れ、耐候性がさらに優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかいという効果がある。
【0058】
本記載において、AとBの重量比は、A:Bの重量比を意味する。
【0059】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として、メチルメタクリレート65~85重量%、スチレン5~30重量%及びアクリロニトリル5~10重量%を含んでなり、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかいという効果がある。
【0060】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として、重量平均分子量が70,000~140,000g/molであってもよく、他の例として、70,000~90,000g/mol、または90,000g/mol超~140,000g/mol以下であってもよく、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかいという効果がある。
【0061】
他の例として、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、重量平均分子量が70,000~90,000g/molであるメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「低分子量SAMMA樹脂」という)と、重量平均分子量が120,000~140,000g/molであるメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「高分子量SAMMA樹脂」という)との混合物であってもよい。
【0062】
前記低分子量SAMMA樹脂と高分子量SAMMA樹脂は、一例として、重量比が1:0.1~0.45であってもよく、好ましくは1:0.2~0.45であってもよく、より好ましくは1:0.3~0.45であってもよく、さらに好ましくは1:0.35~0.45であってもよく、この範囲内で、耐候性に優れるという利点がある。
【0063】
前記C)ポリメタクリレートは、一例として、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により製造されてもよく、前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0064】
D)ポリアミド
前記D)ポリアミドは、一例として、前記ベース樹脂100重量部を基準として0.5~10重量部、好ましくは1~8重量部、より好ましくは4~8重量部、さらに好ましくは4~6重量部であってもよく、この範囲内で、光沢を低下させて無光効果が大きく、物性バランスに優れるという利点がある。
【0065】
前記D)ポリアミドは、アミド結合を含む熱可塑性高分子を意味し、具体例として、ポリアミド6、ポリアミド66(PA6.6)、ポリアミド46、ポリアミドll、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド6/9T、ポリアミド6/9I、ポリアミド66/9T、ポリアミド6/12/9T、ポリアミド66/12/9T、ポリアミド6/12/9I及びポリアミド66/12/6Iからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはポリアミド66(PA6.6)である。
【0066】
前記D)ポリアミドは、一例として、融点が230℃以上、好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは260~270℃であるものを使用することがよい。
【0067】
前記D)ポリアミドは、一例として、相対粘度(硫酸96%溶液)が2.0~4.0、好ましくは2.0~3.5、より好ましくは2.0~3.0、さらに好ましくは2.4~2.7であるものを使用することがよい。
【0068】
本記載において、相対粘度は、ISO307硫酸法により、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて測定することができる。
【0069】
前記D)ポリアミドの製造方法は、本発明の属する技術分野で通常行われる重合方法であれば、特に制限されず、本発明に係るポリアミドの定義に符合する場合、商業的に購入して用いても構わない。
【0070】
熱可塑性樹脂組成物
本記載の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、オプティカルプロファイラーシステムにより5か所を測定して平均した表面粗さの値が、4以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下であってもよい。
【0071】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、SAE J1960方法により2000時間測定した耐候性(△E)が、4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.2以下、さらに好ましくは3.0以下であってもよい。
【0072】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D1238に準拠した流動指数(MI)(220℃、荷重10kg)が、3g/10分以上であり、好ましくは7g/10分以上であり、より好ましくは10g/10分以上であり、さらに好ましくは12g/10分以上であり、具体例として12~15g/10分であってもよい。
【0073】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM 638に準拠した引張強度(1/8インチ)が、290kg/cm以上であり、好ましくは380kg/cm以上であり、より好ましくは400kg/cm以上であり、より一層好ましくは470kg/cm以上であり、具体例として380~490kg/cmであってもよい。
【0074】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM 256に準拠したアイゾット衝撃強度(1/4インチ)が、7kg・cm/cm以上であり、好ましくは9kg・cm/cm以上であり、具体例として、7~11kg・cm/cm又は8~11kg・cm/cmであってもよい。
【0075】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、グロスメーターVG7000を用いて60°で測定したフィルム光沢度(gloss)が、14以下、11以下または10.5以下であり、好ましくは9.5以下であり、より好ましくは9.3以下であり、一実施例として、4.8~14.0又は4.8~11.0であり、この範囲内で、無光特性に優れながらも物性バランスに優れるという効果がある。したがって、本記載の熱可塑性樹脂組成物は、無光の熱可塑性樹脂組成物とも称することができる。
【0076】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に熱安定剤、光安定剤、染料、顔料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、0.01~5重量部、0.05~3重量部、0.1~2重量部、または0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本記載の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性がよく具現されるという効果がある。
【0077】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、A-1)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体10~30重量%、A-2)平均粒径0.3~0.5μmのアクリレートゴムを含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、B)芳香族ビニル重合体0~35重量%、及びC)ポリメタクリレート10~60重量%からなるベース樹脂100重量部と;D)ポリアミド0.5~10重量部と;を含んで混合した後、220~280℃の条件下で、押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含むことを特徴とし、このような場合に、従来のASA系樹脂と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、表面光沢が均一で、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかい感じを与える熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0078】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述した熱可塑性樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0079】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、好ましくは220~280℃下で、より好ましくは240~280℃下で行うことができ、このとき、温度は、シリンダーに設定された温度を意味する。
【0080】
前記押出混練機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出混練機であれば、特に制限されず、好ましくは二軸押出混練機であってもよい。
【0081】
成形品
本記載の成形品は、本記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合に、従来の成形品と比較して、機械的物性及び加工性などが同等以上に維持されながらも耐候性に優れ、光沢が低く、表面光沢が均一で、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかい感じを与えるという利点がある。
【0082】
前記成形品は、一例として、押出成形品又は射出成形品であってもよく、好ましくは建築外装材であり、より好ましくはサイディング(siding)、スライディングドアまたは建具であってもよい。
【0083】
前記成形品は、好ましくは、本記載の熱可塑性樹脂組成物を成形温度190~250℃下で押出又は射出するステップを含んで製造されてもよく、この範囲内で、優れた無光効果が発現されるという利点がある。
【0084】
本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界で通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0085】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0086】
[実施例]
下記の実施例1~10及び比較例1~3で用いられた物質は、次の通りである。
【0087】
A-1)乳化重合方式の第1グラフト共重合体(平均粒径100nmのブチルアクリレート重合体50重量%、シェル:スチレン36重量%、アクリロニトリル14重量%)
A-2)乳化重合方式の第2グラフト共重合体(平均粒径400nmのブチルアクリレート重合体50重量%、シェル:スチレン38重量%、アクリロニトリル12重量%)
B-1)バルク重合方式のSAN樹脂(92RF)、
B-2)バルク重合方式の耐熱SAN樹脂(200UH)、
C-1)バルク重合方式のSAMMA樹脂(XT500)、
C-2)バルク重合方式のSAMMA樹脂(XT510)、
C-3)PMMA樹脂(IH830),
C-4)PMMA樹脂(BA611)
D)PA6.6
【0088】
実施例1~10及び比較例1~3
それぞれ、下記表1に記載された成分及び含量を、二軸押出機にて280℃下で混練及び押出してペレットを製造した。製造されたペレットを用いて溶融指数を測定した。また、製造されたペレットを用いて成形温度220℃で0.15Tのシートを製造し、フィルムの光沢(gloss)及び表面粗さの値を測定した。さらに、前記製造されたペレットを成形温度220℃で射出して物性測定用試片を作製し、これを用いて引張強度及び衝撃強度を測定した。
【0089】
[試験例]
前記実施例1~10及び比較例1~3で製造されたペレット、シート及び試片の特性を、下記の方法で測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0090】
*溶融指数(melt index;MI):製造されたペレットを、220℃/10kgの条件下でASTM D1238方法により測定した。
【0091】
*引張強度(kg/cm):ASTM 638方法により測定した。
【0092】
*アイゾット衝撃強度(kg.cm/cm):ASTM 256方法により測定した。
【0093】
*フィルム光沢(gloss):グロスメーター(gloss meter)VG7000を用いて60°で測定した。
【0094】
*表面粗さの値:オプティカルプロファイラーシステム(Optical profiler system)(NV-2700、(株)ナノシステム)により、対物レンズ(Objective lens):10倍×接眼レンズ1倍(F.O.V:628μm×471μm)、モード:WSI 枠(Envelope)及びスキャン範囲(Scan range):±30μmの条件下で5か所を測定して平均を出した。表面粗さの値が低いと、手で触れたときに柔らかい感じがし、光沢が均一である。
【0095】
*耐候性:SAE J1960方法により2000時間測定した後、下記の数式1で計算される△Eにより評価した。△Eの値が低いと、耐候性に優れる。
【0096】
【数1】
【0097】
【表1】
【0098】
前記表1に示されたように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~10参照)は、ポリメタクリレート樹脂を含まない比較例1及び2と比較して、流動指数、引張強度及び衝撃強度などの機械的物性は同等又はそれ以上を維持しながらも耐候性に優れ、表面粗さの値が低いため感性的に柔らかい感じを与え、表面光沢が均一でかつ低いことが確認できた。特に、前記表1を参照すると、ポリメタクリレート樹脂を40~60重量%、より具体的には45~55重量%の範囲で含む実施例1~3及び実施例7~9の場合、表面粗さの値が3.0以下、具体的には2.0~3.0であり、耐候性(△E)は3.1以下、具体的には1.3~3.3で、比較例1及び2と比較していずれも非常に優れるため、高い品質の感性樹脂が製造されることが確認できた。
【0099】
一方、ポリアミドを含まない比較例3の場合、光沢(gloss)が67として、実施例1~9の光沢(gloss)と比較して、少なくは6倍から多くは14倍と高いため、無光特性を実現して高品質の感性樹脂を製造しようとする本発明の目的とは全く合わないことが確認できた。