(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G01N35/10 F
(21)【出願番号】P 2021546991
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035543
(87)【国際公開番号】W WO2021054456
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019171369
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161559(JP,A)
【文献】特許第6067584(JP,B2)
【文献】特開2009-300151(JP,A)
【文献】特開平02-296131(JP,A)
【文献】特開2017-096761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 ー 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に試料と試薬を各々分注して反応させ、この反応させた液体を測定する自動分析装置であって、
複数の分注機構と、
複数の前記分注機構を制御するコントローラと、
複数の前記分注機構のうち1つだけがアクセスする位置に設けられ、アクセスしてきた前記分注機構に対して通常の洗浄を行う、夫々の前記分注機構に専用の通常洗浄槽と、
複数の前記分注機構がいずれもアクセスする位置に設けられ、アクセスしてきた前記分注機構に対して通常と異なる洗浄を行う、夫々の前記分注機構に共用の特別洗浄槽と、
を備え
、
前記分注機構が、前記試料又は試薬の吸引位置と前記試料又は試薬の吐出位置との間を往復するとともに、途中で前記通常洗浄槽にアクセスする、分注動作と、
前記特別洗浄槽で前記分注機構に対して特別洗浄を行う、特別動作と、を有し、
一方の前記分注機構が前記特別動作時に前記特別洗浄槽にアクセスしたときの一方の前記分注機構と、他方の前記分注機構が前記分注動作時に前記吸引位置と前記吐出位置との間を往復する軌跡と、は干渉領域を有するものであって、
一方の前記分注機構が前記特別動作を行い、他方の前記分注機構が前記分注動作を行う場合、前記コントローラは、
他方の前記分注機構が1サイクル目の前記分注動作時に、一方の前記分注機構は、前記特別洗浄のうち第1特別洗浄を行うとともに、他方の前記分注機構が前記干渉領域を移動する間は前記特別洗浄槽から離れた退避位置にアクセスするよう制御し、
他方の前記分注機構が2サイクル目の前記分注動作時に、一方の前記分注機構は、前記特別洗浄のうち第2特別洗浄を行うとともに、他方の前記分注機構が前記干渉領域を移動する間は前記退避位置にアクセスするよう制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項
1において、
前記特別動作は、前記特別洗浄を行った後、乾燥機構にアクセスして前記分注機構の乾燥を行うものであって、
前記コントローラは、
他方の前記分注機構が2サイクル目の前記分注動作時に、一方の前記分注機構は、前記第1特別洗浄より短い前記第2特別洗浄を行った後、他方の前記分注機構が前記干渉領域を移動する間は前記退避位置にアクセスし、その後、前記乾燥機構にアクセスして乾燥を行うよう制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項
1または2において、
一方の前記分注機構が前記通常洗浄槽にアクセスしたときの一方の前記分注機構と、他方の前記分注機構が前記分注動作時に前記吸引位置と前記吐出位置との間を往復する軌跡と、は干渉領域を有さず、
前記退避位置は、前記通常洗浄槽の位置であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項
1において、
一方の前記分注機構が前記特別動作を行い、他方の前記分注機構も前記特別動作を行う場合、前記コントローラは、
一方の前記分注機構が、前記特別洗浄を行っているときは、他方の前記分注機構は、前
記退避位置にアクセスさせることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項
4において、
前記退避位置は、前記通常洗浄槽の位置であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1において、
複数の前記分注機構は、同軸に回転移動し、前記試料又は試薬の吸引位置と前記試料又は試薬の吐出位置との間を往復するものであり、
前記特別洗浄槽は、夫々の前記通常洗浄槽の間で、かつ、前記吸引位置側にあることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項
6において、
回転中心に対し、前記吐出位置の点対称位置と前記吸引位置とを結ぶ軌道上であって相対的に短い方の軌道上に、前記特別洗浄槽が位置することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1において、
複数の前記分注機構は、異なる軸を中心に回転移動し、前記試料又は試薬の吸引位置と前記試料又は試薬の吐出位置との間を異なる軌道で往復するものであり、
各軌道の交点に、前記特別洗浄槽が位置することを特徴とすることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置において、試料や試薬を分注するための分注ノズルは、吸引量/吐出量がばらついたり、コンタミネーションが発生したり、するのを防ぐため、洗浄機構により洗浄して繰り返し使用するのが一般的である。しかし、試料等の微量化や分析の高感度化が年々進んでいるため、分注ノズルの洗浄が不十分であると、分析精度に与える影響が大きくなってきており、分注ノズルの洗浄性能を高めることがこれまで以上に求められている。
【0003】
そこで、分注ノズルの洗浄性能を高める技術として、洗剤を含む洗浄液を用いて、洗浄水よりも強力な特別洗浄を行うことが知られている。例えば、特許文献1には、「特別洗浄は、第1の洗浄槽28bに供給されるアルカリ性、酸性、中性等の洗剤を含む洗浄液を用いて第1の洗浄槽28bで行われる洗浄と、この洗浄の後に行われる洗浄水を用いて第1の洗浄槽28aで行われる(通常)洗浄により構成される」(段落0043)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1などに記載されている従来の自動分析装置では、複数の分注機構に対して、各々に専用の特別洗浄槽を有しているため、装置全体が大型化したり、製造コストが増加したりする。
【0006】
本発明の目的は、装置全体が大型化するのを防ぎ、かつ、製造コストも抑制しつつ、特別洗浄を行うことのできる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、反応容器に試料と試薬を各々分注して反応させ、この反応させた液体を測定する自動分析装置であって、複数の分注機構と、複数の前記分注機構を制御するコントローラと、複数の前記分注機構のうち1つだけがアクセスする位置に設けられ、アクセスしてきた前記分注機構に対して通常の洗浄を行う、夫々の前記分注機構に専用の通常洗浄槽と、複数の前記分注機構がいずれもアクセスする位置に設けられ、アクセスしてきた前記分注機構に対して通常と異なる洗浄を行う、夫々の前記分注機構に共用の特別洗浄槽と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置全体が大型化するのを防ぎ、かつ、製造コストも抑制しつつ、特別洗浄を行うことのできる自動分析装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る自動分析装置における分析部の概略構成図である。
【
図2】実施例1における試料分注機構の側面図である。
【
図3】実施例1における試料分注機構の位置関係を示す平面図である。
【
図6】各試料分注機構における動作のパターンの組み合わせを示す図である。
【
図7】各試料分注機構が両方とも分注動作を行う場合のタイミングチャートである。
【
図8】一方の試料分注機構が特別動作を行い、他方の試料分注機構が分注動作を行う場合のタイミングチャートである。
【
図9】各試料分注機構が両方とも特別動作を行う場合のタイミングチャートである。
【
図10】各試料分注機構が干渉している状態を示す側面図である。
【
図11】
図8のT1で示すタイミングにおける、各試料分注機構の位置関係を示す平面図である。
【
図12】
図9のT2で示すタイミングにおける、各試料分注機構の位置関係を示す平面図である。
【
図13】実施例2における試料分注機構の位置関係を示す平面図である。
【
図14】実施例3における試料分注機構の位置関係を示す平面図である。
【
図15】実施例3において、一方の試料分注機構が特別動作を行い、他方の試料分注機構が分注動作を行う場合のタイミングチャートである。
【
図16】実施例3において、各試料分注機構が両方とも特別動作を行う場合のタイミングチャートである。
【
図17】実施例3の変形例における試料分注機構の位置関係を示す平面図である。
【
図18】実施例4における試料分注機構の位置関係を示す平面図である。
【
図19】実施例4において、一方の試料分注機構が分注動作を行い、他方の試料分注機構が特別動作を行う場合のタイミングチャートである。
【
図20】実施例4において、各試料分注機構が両方とも特別動作を行う場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の自動分析装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例の自動分析装置における分析部の概略構成図である。
図1に示すように、反応ディスク1には、反応容器2が円周状に配置され、試薬ディスク11の中には、複数の試薬ボトル12が円周状に配置される。そして、試薬分注機構7~10が、シリンジを介して試薬用ポンプ23に接続されている。また、血液や尿等の検査試料が含まれている試料容器20が、ラック21に載せられた状態で、試料搬送機構22によって、反応ディスク1と試薬ディスク11との間を移動できるようになっている。
【0012】
反応ディスク1の周囲には、洗浄機構3、分光光度計4、攪拌機構5,6、試薬ディスク11、試料用ポンプ24が配置され、使用済みの反応容器2を洗浄する洗浄機構3には洗浄用ポンプ25が接続されている。そして、試料分注機構13,14が、反応ディスク1と試料搬送機構22との間に設置され、シリンジを介して試料用ポンプ24に接続されている。
【0013】
さらに、本実施例の自動分析装置は、試薬分注機構7~10の動作軌跡内に設置された洗浄槽30~33と、試料分注機構13の動作軌跡内に設置された通常洗浄槽15及び乾燥機構17と、試料分注機構14の動作軌跡内に設置された通常洗浄槽16及び乾燥機構18と、試料分注機構13,14の動作軌跡内に設置された特別洗浄槽19と、を有している。なお、試薬分注機構7~10の動作軌跡内にも、特別洗浄槽や乾燥機構を設置する構成であっても良い。
【0014】
ここで、試料分注機構13,14は、試料分注ノズル13a、14aを備えている。そして、試料分注ノズル13a、14aは、水平移動(鉛直方向の回転軸を中心とした回転移動と、水平方向のレール上を移動する平行移動)と、上下移動を行ない、試料容器20から反応容器2への試料分注を行う。
【0015】
試料分注ノズル13a、14aは、通常、夫々に専用の通常洗浄槽15,16で洗浄される。しかし、予め指定された検査項目を測定する際には、試料分注ノズル13a、14aが、夫々に共用の特別洗浄槽19で通常とは異なる特別洗浄が行われた後、夫々に専用の通常洗浄槽15,16で通常洗浄され、さらに夫々に専用の乾燥機構17,18で周りに付着した水滴の除去が行われる。
【0016】
また、本実施例における自動分析装置は、反応容器2内の検査試料を分析する分析部としての機能を備えたコントローラ26を有し、このコントローラ26に接続された各機構の動作が制御される。
【0017】
次に、
図2を用いて試料分注機構13,14の構成の概略について説明をする。
図2は、本実施例における試料分注機構13,14の側面図である。
図2に示すように、試料分注機構13,14は、シリンジに接続されて試料の吸引及び吐出を行う試料分注ノズル13a,14aと、試料分注ノズル13a,14aを保持するアーム44と、アーム44を上下動作させる上下機構41と、アーム44を回転動作させる回転機構42と、アーム44を水平動作させる水平機構43と、を備えている。なお、回転機構42は、水平機構43と直交する向きで動作する水平機構でも良い。
【0018】
図3は、本実施例における試料分注機構13,14の位置関係を示す平面図である。
図3に示すように、本実施例は、2つの試料分注機構13,14のうち、1つだけがアクセスする位置に、夫々に専用の乾燥機構17,18を設置した自動分析装置である。本実施例の自動分析装置は、特別洗浄槽が1つで済むため、装置全体が小型化でき、製造コストも低減できる。
【0019】
そして、各試料分注機構13,14の動作軌跡の端点に、試料吸引位置S1と、試料吐出位置C1と、が設置され、その間に、夫々に専用の通常洗浄槽15,16及び乾燥機構17,18と、夫々に共用の特別洗浄槽19と、が設置される。
【0020】
ここで、特別洗浄槽19で行われる特別洗浄は、洗剤を含む洗剤液を用いて、通常洗浄よりも強力な洗浄を行うものであり、試料に設定された検査項目の中に特別洗浄が必要な項目として設定された場合に実施される。特別洗浄の具体的な洗浄方法として、洗剤を用いたものを説明するが、これに限らず超音波を用いたものでも良い。
【0021】
また、本実施例における乾燥機構17,18は、通常洗浄槽15,16の内部や、通常洗浄槽15,16に近接する位置に、配置される。乾燥機構17,18自体の構成としては、試料分注ノズル13aに圧縮空気を吹き付けて洗浄液を風で吹き飛ばす空気噴射型のブロワーを採用している。なお、この乾燥機構17は、真空吸引を用いた乾燥口や、洗浄液を拭き取るワイパーであっても良い。このように、乾燥機構17,18を設けることで、特別洗浄後の試料分注ノズル13aに付着した洗浄液が、試料に持ち込まれるのを防ぎ、分析の精度を高く維持できる。
【0022】
次に、
図4を用いて試料の分注動作についてのフローを説明する。ここでは、2つの試料分注機構13,14のうち、一方の試料分注機構13の分注動作を例に挙げて説明する。
【0023】
まず、試料分注機構13が通常洗浄槽15より、試料容器20上の試料吸引位置S1に移動する(ステップS100)。
【0024】
そして、この試料吸引位置S1で、試料分注ノズル13aが下降し、試料容器20に収容された試料に試料分注ノズル13aが浸漬した状態となる。この状態で、シリンジが動作し、試料の吸引が行われた後、試料分注ノズル13aが上昇する(ステップS101)。
【0025】
その後、試料分注機構13は、試料吸引位置S1から通常洗浄槽15に移動する(ステップS102)。この通常洗浄槽15の位置では、試料分注ノズル13aの外壁が水で洗浄される(ステップS103)。
【0026】
その後、試料分注機構13は、反応ディスク1にある所定の反応容器2上の試料吐出位置C1に移動する(ステップS104)。
【0027】
さらに、試料分注ノズル13aが下降し、シリンジが動作して試料の吐出が行われ、試料の吐出が完了すると、試料分注ノズル13aが上昇する(ステップS105)。
【0028】
その後、試料分注機構13は通常洗浄槽15に移動する(ステップS106)。
【0029】
ここで、同一試料の分注を引き続き行う場合は、これを以って1つのサイクルが終了する。ただし、同一試料の最後の分注である場合は、さらにシリンジの動作により通常洗浄を行う。具体的には、図示しないタンクの水を試料分注ノズル13aから吐出することで、試料分注ノズル13aの外壁だけでなく内壁も洗浄する(内部洗浄)。
【0030】
次に、
図5を用いて、特別洗浄を行う特別動作についてのフローを説明する。ここでは、2つの試料分注機構13,14のうち、一方の試料分注機構13の分注動作を例に挙げて説明する。
【0031】
本実施形態の特別動作は、洗剤を用いて行う特別洗浄と、その後に行う通常洗浄と、その後に行う乾燥と、に大別される。
【0032】
具体的には、まず、試料分注機構13が通常洗浄槽15より特別洗浄槽19に移動する(ステップS200)。
【0033】
次に、試料分注ノズル13aが下降し、特別洗浄槽19内の洗剤を含む洗剤液に試料分注ノズル13aが浸漬した状態となる。
【0034】
この状態で、試料分注ノズル13aに接続されたシリンジが動作して洗剤液を吸引することで特別洗浄が行われ、試料分注ノズル13aの内壁および外壁が洗浄される(ステップS201)。
【0035】
その後、試料分注ノズル13aが上昇し、試料分注機構13は通常洗浄槽15へ移動する(ステップS202)。
【0036】
ここで、試料分注機構13は、シリンジを動作させて、特別洗浄槽19で吸引した洗剤液を、図示しないタンクからの水と共に試料分注ノズル13aから吐出することにより、試料分注ノズル13aの内部洗浄を行う(ステップS203)。
【0037】
その後、試料分注機構13は乾燥機構17へ移動し、試料分注ノズル13aが下降する(ステップS204)。
【0038】
ここで、乾燥機構17は、試料分注ノズル13aの外壁についた水滴を落とす(ステップS205)。なお、試料分注ノズル13aが上昇しているときに、乾燥機構17が風を吹き付けるので、高さ方向にむらなく水滴を落とすことが可能となっている。
【0039】
その後、試料分注機構13は通常洗浄槽15へ移動する(ステップS206)。
【0040】
次に、2つの試料分注機構13,14の実際の動作方法について説明する。本実施例の自動分析装置では、処理能力を高めるため、2つの試料分注機構13,14を同時に動作させる。実際の動作パターンとしては、上述した分注動作と特別動作を組み合わせたものであり、
図6に示す通り、合計4通りが存在する。しかし、2つの試料分注機構13,14は、共通にアクセスする場所として、試料吸引位置S1、試料吐出位置C1及び特別洗浄槽19が存在するので、試料分注機構13,14を単純に同時に動作させると、互いに干渉してしまう可能性がある。
【0041】
そこで、
図7~
図9を用いて、動作パターン毎に、試料分注機構13,14の互いの干渉を防ぎながら、待機時間を少なくする方法について、説明する。ここでは、試料の分注動作について説明するが、試薬についても同様の分注動作を行うことも可能である。
図7~
図9に示すタイミングチャートは、
図4に示す一連の試料分注動作を1サイクルとしたとき、試料分注機構13,14の動作、通常洗浄槽15,16での通常洗浄、特別洗浄槽19での特別洗浄、乾燥機構での乾燥、に割り当てた時間帯を凸で示している。
【0042】
図7は、試料に設定された検査項目の中に特別洗浄が必要な項目が含まれていない場合における、試料分注ノズル13a,14aの動作等を示すタイミングチャートである。この場合は、試料分注機構13,14が両方とも分注動作を行うパターンに相当する。
【0043】
試料分注機構13,14は、両方とも
図4に示す分注動作を行うため、2つの試料分注機構13,14が同時に分注動作を開始すると、試料吸引位置S1や試料吐出位置C1で互いの試料分注機構13,14が干渉してしまう。そこで、一方の試料分注動作の開始点(位相)を、他方と半サイクルずらすことで、互いの試料分注機構13,14が干渉するのを防いでいる。その結果、分注動作中の待ち時間の発生が抑制され、分析装置としての処理の高速化が実現できる。なお、通常洗浄槽については、複数の試料分注機構13,14のうち1つだけがアクセスする位置に、夫々に専用のものが設けられており、一方の試料分注機構がその通常洗浄槽にアクセスしているときは、他方の試料分注機構と干渉することはない。
【0044】
図8は、試料に設定された検査項目の中に特別洗浄が必要な項目が1つ含まれている場合における、試料分注機構13,14の動作等を示すタイミングチャートである。ここでは、試料分注機構13が特別動作を行い、試料分注機構14が分注動作を行うパターンを例に挙げて説明する。なお、試料分注機構13が分注動作を行い、試料分注機構14が特別動作を行うパターンについては、同様の動作となるため、説明を省略する。
【0045】
まず、本実施例では前提として、一方の試料分注機構が特別動作時に特別洗浄槽19にアクセスしたときの一方の試料分注機構と、他方の試料分注機構が分注動作時に試料吸引位置S1と試料吐出位置C1との間を往復する軌跡と、は干渉領域を有している。このため、
図10に示すように、試料分注機構13が特別洗浄槽19にアクセスしているときに、試料分注機構14が試料吸引位置S1へ移動しようとすると、試料分注機構13,14が干渉してしまう。
【0046】
そこで、本実施例では、一方の試料分注機構13が特別動作を行い、他方の試料分注機構14が分注動作を行う場合、他方の試料分注機構14が、干渉領域を移動するときは、一方の試料分注機構13が、特別洗浄槽19から離れた退避位置にアクセスさせる。
図11は、
図8のT1で示すタイミングにおける、試料分注機構13,14の位置関係を示す平面図である。
図8に示す通り、分注動作中の試料分注機構14が干渉領域を移動するときは、コントローラ26が、特別動作中の試料分注機構13を通常洗浄槽15の位置にアクセスさせることで、試料分注機構13,14が干渉することを防止できる。
【0047】
このように、試料分注機構13は、特別動作の途中で通常洗浄槽15へアクセスしなければならず、試料分注機構14の1回の分注動作に相当する1サイクルでは、十分な特別洗浄が行えず、前回の試料のキャリーオーバが発生する可能性がある。そこで、本実施例では、特別洗浄を、第1特別洗浄と、その後の第2特別洗浄と、に分け、第1特別洗浄を1サイクル目に実施し、第2特別洗浄を2サイクル目に実施する。具体的には、まず試料分注機構14の1サイクル目の分注動作時に、試料分注機構13が第1特別洗浄を行うとともに、試料分注機構14が干渉領域を移動する間は、コントローラ26が試料分注機構13を退避位置にアクセスさせる。そして、試料分注機構14の2サイクル目の分注動作時に、試料分注機構13が第2特別洗浄を行うとともに、試料分注機構14が干渉領域を移動する間は、コントローラ26が試料分注機構13を退避位置にアクセスさせる。
【0048】
また、本実施例の特別動作では、特別洗浄を行った後に、乾燥機構17にアクセスして試料分注機構13の乾燥を行う。このように、特別洗浄の後に乾燥を行うことを考慮して、本実施例では、第2特別洗浄の時間を第1特別洗浄よりも短くし、2サイクル目で第2特別洗浄と乾燥の両方を行っている。具体的には、試料分注機構14の2サイクル目の分注動作時に、試料分注機構13が第2特別洗浄を行った後、試料分注機構14が干渉領域を移動する間、試料分注機構13は退避位置にアクセスし、その後、試料分注機構13が乾燥機構にアクセスして乾燥が行われる。
【0049】
なお、本実施例では、特別洗浄を2回に分けたが、試料用ポンプ24が小型で圧力が小さい場合などは、特別洗浄を3回以上に分けても良い。また、退避位置は、通常洗浄槽15の位置に限られるものではなく、試料分注機構13が退避位置にアクセスしたときの試料分注機構13と、試料分注機構14が分注動作時に試料吸引位置S1と試料吐出位置C1との間を往復する軌跡と、が干渉領域を有さなければ良い。
【0050】
図9は、試料に設定された検査項目の中に特別洗浄が必要な項目が2つ含まれている場合における、試料分注機構13,14の動作等を示すタイミングチャートである。この場合は、試料分注機構13,14が両方とも特別動作を行うパターンに相当する。
【0051】
図9に示す通り、各試料分注機構の特別動作は、分注動作の2サイクル分を使用して、1サイクル目に第1特別洗浄及び通常洗浄、2サイクル目に第2特別洗浄、通常洗浄及び乾燥を行う。
【0052】
図12は、
図9のT2で示すタイミングにおける、試料分注機構13,14の位置関係を示す平面図である。
図12に示す通り、試料分注機構13が特別洗浄槽19で特別洗浄を行っているとき、コントローラ26は、試料分注機構14を特別洗浄槽19から離れた退避位置、具体的には通常洗浄槽16にアクセスさせる。このように動作させることで、試料分注機構13,14が干渉することを防止できる。
【0053】
以上述べた本実施例によれば、通常洗浄槽や乾燥機構と比べて大きな特別洗浄槽が1つで済むため、装置全体が小型化でき、製造コストも低減できる。また、特別洗浄槽を共用化しても、機構の干渉を回避するために夫々の試料分注機構に待機時間が発生するのを防ぎ、処理能力の低下が抑制できる。このため、試料の微量化や分析の高感度化への対応し、かつ高密度な機構配置が可能であり、処理能力の高い自動分析装置が実現できる。
【0054】
また、本実施例では、乾燥機構は夫々の試料分注機構に専用のものを設けたので、乾燥時の干渉を避けるための動作が不要となり、待機時間の増加を抑制できる。
【実施例2】
【0055】
図13は、本実施例における試料分注機構13,14の位置関係を示す平面図である。
図13に示すように、本実施例は、2つの試料分注機構13,14の両方がアクセスする位置に、夫々に共用の乾燥機構57を設置した自動分析装置である。本実施例の自動分析装置は、特別洗浄槽だけでなく乾燥機構も1つで済むため、装置全体がさらに小型化でき、製造コストもさらに低減できる。
【実施例3】
【0056】
図14は、本実施例における試料分注機構27,28の位置関係を示す平面図である。上述の実施例1,2では、夫々の試料分注機構が試料吸引位置S1と試料吐出位置C1との間を直線的に移動する構成であったが、本実施例では、夫々の試料分注機構が試料吸引位置S1と試料吐出位置C1との間を回転移動する構成となっている。
【0057】
図14に示すように、本実施例の試料分注機構27,28は、同軸に回転移動及び上下移動可能な機構を持っており、両方の試料分注機構に対して共通に設けられた、試料吐出位置C1および試料吸引位置S1へアクセス可能である。また、試料吐出位置C1と試料吸引位置S1との間のうち、試料分注機構27のみがアクセスする位置には、専用の通常洗浄槽34及び乾燥機構58が設けられ、試料分注機構28のみがアクセスする位置には、専用の通常洗浄槽35及び乾燥機構59が設けられている。
【0058】
さらに、本実施例の自動分析装置は、試料分注機構27,28が共通にアクセスする特別洗浄槽19を有しており、この特別洗浄槽19が、試料吐出位置C1、試料吸引位置S1、通常洗浄槽34,35及び乾燥機構58,59と同じ円の軌道TR1上にある。本実施例の特別洗浄槽19の位置は、通常洗浄槽34と通常洗浄槽35の間で、かつ、試料吸引位置S1側の軌道TR1上にある。
【0059】
また、特別洗浄槽19は、試料分注機構27,28の移動距離に大きな偏りが生じないような位置に配置することが望ましい。一方の試料分注機構の移動距離が長くなると、特別洗浄槽19への移動が所望の時間内に収まらず、全体として無駄なサイクルが必要となる場合があるからである。そこで、本実施例では、試料分注機構27,28の回転中心に対し、試料吐出位置C1の点対称位置(P)と試料吸引位置S1とを結ぶ軌道であって相対的に短い方の軌道である軌道TR1(
図14において実線で示した円弧)上に、特別洗浄槽19が位置するようにした。これにより、試料分注機構27,28の夫々の試料吐出位置C1と特別洗浄槽19との間の移動距離が概ね等しくなり、夫々の試料分注機構27,28の動作が統一化し易い利点もある。また、試料吸引位置S1と特別洗浄槽19の距離が比較的短いため、一方の試料分注機構が試料吸引位置S1を通過して特別洗浄槽19にアクセスする場合でも、専用の通常洗浄槽へ早く退避でき、他方の試料分注機構との干渉を避けることが可能である。すなわち、本実施例によれば、夫々の通常洗浄槽34,35と特別洗浄槽19との距離が同程度になり、試料分注機構の干渉を回避するための待機時間が抑制されるため、効率的に洗浄処理が行える。
【0060】
なお、ここでは試料分注機構27,28が同軸で回転移動する場合を例に挙げて説明したが、回転中心が同じでない場合でも、試料吐出位置C1に配置された反応容器に試料を吐出することや、特別洗浄槽19を用いることは可能である。したがって、試料分注機構27,28の回転中心軸が厳密に同一でなく僅かにズレている形態も、本明細書においては同軸に含まれるものとする。
【0061】
図15は、試料に設定された検査項目の中に特別洗浄が必要な項目が1つ含まれている場合における、本実施例の試料分注機構27,28の動作等を示すタイミングチャートである。ここでは、試料分注機構27が特別動作を行い、試料分注機構28が分注動作を行うパターンを例に挙げて説明する。上述の実施例1と同様に、特別動作については、2サイクルを使用する一方で、分注動作については、1サイクルごとに1回の頻度で分注が行われる。例えば、特別動作を行う試料分注機構27は、
図15に示すように、通常洗浄槽34から特別洗浄機構19へ移動して特別洗浄した後、特別洗浄機構19から通常洗浄槽34へ移動して通常洗浄し、通常洗浄槽34から特別洗浄機構19へ移動して再び特別洗浄すると、特別洗浄機構19から通常洗浄槽34へ移動して通常洗浄し、通常洗浄槽34から乾燥機構58へ移動して乾燥した後、乾燥機構58から通常洗浄槽34へ移動する。
【0062】
図16は、試料に設定された検査項目の中に特別洗浄が必要な項目が2つ含まれている場合における、本実施例の試料分注機構27,28の動作等を示すタイミングチャートである。例えば、試料分注機構27は、試料分注機構28が特別洗浄槽19にいるとき、専用の通常洗浄槽34などの退避位置におり、試料分注機構28が専用の通常洗浄槽35などの退避位置へ移動すると、特別洗浄槽19へと移動する。このため、各試料分注機構は、無駄な待機時間を抑制しながら、互いの物理的な干渉を防ぐことが可能となっている。
【0063】
図17は、実施例3の変形例における試料分注機構27,28の位置関係を示す平面図である。
図17に示すように、この変形例は、特別洗浄槽19などの位置は実施例3と同様であるが、複数の試料吐出位置C1a,C1bを有する点で異なっている。なお、上述の点対称Pの位置は、試料吐出位置C1aとC1bのどちらを基準にするかで変わってくるので、試料吐出位置C1aを基準とした点対称と試料吐出位置C1bを基準とした点対称の間に位置する軌道TR1上の点が、この場合の便宜的な点対称Pとして採用される。ただし、通常は、各試料吐出位置が近い位置にあるため、いずれの位置を基準にしても同様の効果が得られる。
【実施例4】
【0064】
図18は、本実施例における試料分注機構45,46の位置関係を示す平面図である。
図18に示すように、本実施例の試料分注機構45,46は、異なる軸を中心に回転移動を行う機構を持っており、夫々が異なる軌道TR2,TR3を通る。各軌道の交点には、共通の特別洗浄槽19及び試料吸引位置S1があり、軌道TR2上には、試料吐出位置C1cの他、専用の通常洗浄槽34及び乾燥機構58、軌道TR3上には、試料吐出位置C1dの他、専用の通常洗浄槽35及び乾燥機構59がある。
【0065】
図19は、試料に設定された検査項目の中に特別洗浄が必要な項目が1つ含まれている場合における、本実施例の試料分注機構45,46の動作等を示すタイミングチャートである。ここでは、試料分注機構45が分注動作を行い、試料分注機構46が特別動作を行うパターンを例に挙げて説明する。
【0066】
例えば、試料分注機構45は、試料分注機構46が特別洗浄槽19にいるとき、試料吐出位置C1cにおり、試料分注機構46が特別洗浄を終えて専用の通常洗浄槽35へ移動を開始すると、特別洗浄槽19を通過して専用の通常洗浄槽34へと移動する。このため、各試料分注機構は、無駄な待機時間を抑制しながら、互いの物理的な干渉を防ぐことが可能となる。
【0067】
図20は、試料に設定された検査項目の中に特別洗浄が必要な項目が2つ含まれている場合における、本実施例の試料分注機構45,46の動作等を示すタイミングチャートである。例えば、試料分注機構45は、試料分注機構46が特別洗浄槽19にいるとき、専用の通常洗浄槽34などの退避位置におり、試料分注機構46が専用の通常洗浄槽35などの退避位置へ移動すると、特別洗浄槽19へと移動する。このため、各試料分注機構は、無駄な待機時間を抑制しながら、互いの物理的な干渉を防ぐことが可能となる。
【0068】
なお、本発明は、上述の実施例1~4に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上述の実施例1~4は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…反応ディスク、2…反応容器、3…洗浄機構、4…分光光度計、5,6…攪拌機構、7~10…試薬分注機構、11…試薬ディスク、12…試薬ボトル、13,14,27,28,45,46…試料分注機構、13a,14a…試料分注ノズル、15,16,34,35…通常洗浄槽、17,18,57,58,59…乾燥機構,19…特別洗浄槽、20…試料容器、21…ラック、22…試料搬送機構、23…試薬用ポンプ、24…試料用ポンプ、25…洗浄用ポンプ、26…コントローラ、30~33…洗浄槽、41…上下機構、42…回転機構、43…水平機構、44…アーム、S1…試料吸引位置、C1,C1a,C1b,C1c,C1d…試料吐出位置、TR1,TR2,TR3・・・試料分注機構の動作軌道