(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】半導体ワークピースのための真空把持部を生成するための方法、および真空把持部
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241209BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/68 B
(21)【出願番号】P 2023512154
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021070436
(87)【国際公開番号】W WO2022037890
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-04-13
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイスラー,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ランプレヒト,ルートビヒ
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-092239(JP,A)
【文献】特開2019-007479(JP,A)
【文献】特開2017-121806(JP,A)
【文献】特開2015-138954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0272982(US,A1)
【文献】特表2018-529995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0259855(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0080954(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0345692(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空によって半導体ワークピースを保つために好適な装置(100、100’、100’’、100’’’)を生成するための方法であって、
前記方法では、前記装置(100)は、少なくとも1つのベース材料(160)から3D印刷によって生成され、
前記装置(100、100’、100’’、100’’’)は、それが、半導体ワークピース(150)が配置され得る少なくとも
平坦なエリア(110)と、1つ以上の吸引開口部(120)と、それらに接続された1つ以上のチャネル(130)とを有するように設計され、
前記装置(100’、100’’)は、それが、前記装置上に配置されることになっている半導体ワークピース(150)と接触させられ得る1つ以上
の可撓性シールを有するように設計され、
前記装置(100、100’、100’、100’’’’)は、それ
が前記ベース材料(160)から形成された補強構造を含むように設計され
、
前記装置(100’’’)は、前記ベース材料(160)よりも低い硬度を有する材料の層(105)が前記半導体ワークピース(150)に面することになっている側に形成されて、設計されている、方法。
【請求項2】
前記装置(100、100’、100’’、100’’’)の予め規定された領域が、前記ベース材料(160)とは異なる材料から3D印刷によって作り出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コーティング材料(180)が、低温コーティングプロセス
または低温焼結プロセスによって、
150℃未満の温度で塗布される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記装置(100、100’、100’’、100’’’)は、少なくとも所定領域において
、超音波を使用し、研削添加剤を使用して滑らかにされる、
請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ワークピースのための真空把持部を生成するための方法、および、半導体ワークピースのためのそのような真空把持部に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
真空把持部は、しばしば「チャック」あるいは吸引把持部または真空吸引把持部とも呼ばれるが、たとえばシリコンまたは他の半導体材料のウェーハなどの半導体ワークピースの生成および加工において、さまざまなプロセスステップ中にこれらの半導体ワークピースを固定および/または搬送すること、および/またはそれらを特定の整列で保持することを可能にするために使用される。しかしながら、同時に、半導体ワークピースはまた、それらが真空把持部上に配置または保持される際に加工される。これは、たとえば、表面を研磨すること、エッチングすること、洗浄すること、寸法決めすること、および研削することを含む。
【0003】
半導体ワークピースのためのそのような真空把持部は、鋳造され、溶接され、機械加工プロセスによって加工された装置として製造され得る。しかしながら、示されてきたように、これらの製造プロセスは、真空把持部の成形および機能的特徴の制限された実現を可能にするに過ぎない。
【0004】
文献US2019/272982 A1はこのため、真空把持部が少なくとも1つのベース材料から追加堆積(additive build-up)プロセスによって作成される、半導体ワークピースのための真空把持部を生成するための方法を開示する。
【0005】
文献US2019/080954 A1は、真空を使用して半導体ウェーハを保つための装置を開示する。
【0006】
文献US2017/345692 A1も、真空を使用して半導体ウェーハを保持するための装置を開示しており、当該装置は3D印刷によって生成されたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、半導体ワークピースのための改良された真空把持部、および/またはそれらの生成に対する要求が存在する。
【0008】
発明の開示
この発明に従って提案されるのは、真空によって半導体ワークピースを保つために好適な装置を生成するための方法である。有利な実施形態は、従属請求項の、および以下の説明の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、たとえばシリコンウェーハなどの半導体ワークピースのための真空把持部の生成に、ひいてはその構造的設計にも関する。最初でもすでに述べたように、真空把持部は、半導体ワークピース、特にウェーハをしっかりと保つことができる装置である。この目的のために、名前がすでに示すように真空が生成され、それにより、半導体ワークピースは真空把持部上に、いわば吸引され得る。
【0010】
そのような真空把持部は好ましくは、半導体ワークピースが配置され得る(少なくとも実質的に)平坦なエリアと、1つ以上の吸引開口部と、それらに接続された1つ以上のチャネルとを有する。その場合、これらのチャネルはそれに応じて吸引開口部に接続されるべきである。また、吸引開口部は、できるだけ平坦エリアの領域に設けられるべきであり、その結果、半導体ワークピースをそれらの上に位置付けることができる。さらに、チャネルはその場合、チャネルにおいて負圧または真空を作り出すことができるために、負圧源に接続可能であるべきであり、または負圧源に接続されたものであるべきである。平坦エリアは、その上に典型的なウェーハを配置することができるように、たとえば丸い形を有していてもよい。この丸いエリアの、または真空把持部全体の直径はその場合、たとえば300mm、またはそれ以上であり得る。
【0011】
提案された方法では、真空把持部は、少なくとも1つのベース材料から、追加堆積または生成プロセス(これは、特に3D印刷として知られているものであってもよい)によって、実際には特に予め規定された形で、または当該形を有して作り出される。ベース材料はこのため、たとえば、最終的に所望の予め規定された形が生成されるまで、層ごとにともに接合される。この点において、真空把持部は好ましくは、真空把持部の好都合な実施形態としてすでに上述されたように、それが、少なくとも実質的に平坦なエリアと、1つ以上の吸引開口部と、それらに接続された1つ以上のチャネルとを有するように設計されている。
【0012】
真空把持部は、好ましくはさらに、それが、特にベース材料から形成された補強構造を含むように設計されている。たとえば支柱、肥厚部などといった、そのような補強構造の作成は、追加堆積プロセスによって、または3D印刷によって、特に簡単な態様で、また、多かれ少なかれ任意の所望の形で、または当該形を有して、可能であり得る。しかしながら、補強構造はまた、たとえばベース材料とは異なる材料硬度を有する別の材料から形成されてもよい。
【0013】
材料硬度を適合し得る少なくとも1つの添加剤が好ましくはベース材料に添加される。このように、たとえば補強構造の形成のために、真空把持部の機械的特性に、目標とされる態様で、特に特定箇所または特定領域で選択的に、補強構造と同様に影響を及ぼすことが可能である。
【0014】
同様に、真空把持部の予め規定された領域が、ベース材料とは異なる材料から追加堆積プロセスによって作り出される場合、好都合である。このように、たとえばシールとして機能する、たとえば可撓性領域を生成することが可能である。
【0015】
この文脈では、ベース材料よりも低い硬さまたは低い硬度を有する材料を用いた層が、半導体ワークピースに面することになっている真空把持部のエリアまたは側に形成されている場合、それは同様に好ましい。この層はその場合、平坦エリアを含み得る。この層はその場合、半導体ワークピースの起こり得る損傷を回避するよう機能し、このため、「チャックパッド」として知られているものの代わりとして機能し得る。そのような「チャックパッド」は従来、適切な場合にはポリウレタンからも構成された一種の織物または布地の部分であり、それは、半導体ワークピースの損傷を回避するために、従来の真空把持部における硬い表面上に配置される。そのようなチャックパッドは、述べられた層の設計ではもはや必要ない。
【0016】
次に、つまり、真空把持部が、ベース材料またはオプションでさらに別の材料から、予め規定された形を有して生成された後に、化学薬品に対する保護のためのコーティング材料を完全にまたは(このように堆積された)本体の表面の所定領域において塗布することが可能である。すなわち、真空把持部は(保護層として機能する)コーティングによって化学薬品に対して耐性があるようになり、表面粗さが減少する。この点においてコーティング材料が塗布される表面に関連する領域は特に、後で使用中に対応する媒体または化学薬品と接触するため、したがって保護されるべきである領域である。これは特に、半導体ワークピースを吸引するよう機能する上側(特に、すでに述べられた平坦エリア)に関わる。この点において、好ましいコーティング材料は、ポリテトラフルオロエチレン、PTFE、パーフルオロアルコキシポリマー、PFA、ポリビニリデンフルオライド、PVDF、DLC(diamond-like carbon:ダイヤモンド状炭素)、または炭化ケイ素である。
【0017】
そのようなコーティングの好ましい使用の理由は、3D印刷などの追加堆積プロセスによって生成された部品、および、所望の用途に依存して(おそらく)ベース材料(のみ)から構成された述べられた真空把持部の場合、表面の粗さが強力に顕著過ぎるおそれがあり、すなわち、表面が概して、所望の使用にとっては大き過ぎる粗さを有する、ということである。その結果、(たとえば真空把持部によって保持された半導体ワークピースの研磨中に生成される)有機および無機の汚染物質が表面内および表面上に堆積され、ある状況下で、加工されることになっている半導体ワークピースの品質に悪影響を与える。
【0018】
しかしながら、追加堆積プロセスによって生成された真空把持部の関連する表面上への、たとえばPTFEを用いたコーティングはここで、従来通りに生成された真空把持部のプラスの特性(つまり、特に化学薬品に対する耐性)を、シリコンウェーハのための追加堆積プロセスによって生成された真空把持部のプラスの特性(すなわち、特に自由成形)と組合せることを可能にする。
【0019】
従来のコーティングプロセスの場合、追加堆積プロセスによって生成された真空把持部は高い熱負荷を受け、その結果、変形すると想定されるため、低温コーティングプロセスを追加堆積プロセスと目標とされる態様で組合せて使用することが可能である。半導体ワークピースの場合のプロセスに必要である高純度コーティング(すなわち、特に高純度のコーティング)は従来、高温で表面に塗布される。
【0020】
目標とされる態様で、好ましくは150℃未満の温度で使用される低温コーティングプロセスは、たとえば真空把持部といった3D印刷された部品のそれほど熱的に安定していない表面にも高純度コーティングを塗布すること、ひいては、自由成形、吸引開口部の目標とされる位置付け、化学的および物理的特性といった利点を寄せ集めることを可能にする。たとえば、材料PA3200GFは、ISO75-1/-2に従って(圧力0.45MPaで、およびX方向において)最大157℃の熱変形温度を有する。特にガラスビーズで充填されたポリアミドを含む好ましいベース材料について、同等の状況があてはまる。この温度を上回る場合、プラスチック輪郭は典型的には自重崩壊する。たとえば、PTFEコーティングは概して、炉の上で成型され、炉内で約220℃~420℃の温度で焼結される。典型的にはたとえば100℃で比較的長時間に及ぶ低温焼結プロセスは、シリコンウェーハのための3D印刷された真空把持部が化学薬品および汚れに対して耐性があるようになる状況を達成することを可能にしてきた。
【0021】
追加堆積プロセスによって生成された真空把持部の表面粗さは低温コーティングによって減少可能であり、(粗さを特定する)Rz値およびRa値は典型的には、低温コーティングのない真空把持部の対応する値に関して約70%減少する。このため、これはまた、真空把持部上の液体の粒子または他の有機もしくは無機成分が、(真空把持部の)表面にはるかにより少ない程度しか付着せず、ひいては、はるかにより容易で目標とされる態様で除去され得ることに寄与する。
【0022】
追加堆積プロセスによって、または3D印刷によって、従来の生成プロセスと比較してさまざまな点において最適化された真空把持部を生成することが可能である。改良された成形、すなわち、実際に生成可能な形は、従来の生成プロセスを用いる場合よりも良好に最適な形を達成することを可能にし、たとえば吸引漏斗の形をした、たとえば活発に効果的な吸引開口部は、従来通りに製造された真空把持部とは対照的に、それぞれ所望の用途に適合され得る。自由成形は、真空または負圧によって作り出された必要な保持力を特に正確な態様で設定することを可能にする。真空排気されることになっている領域(チャネル)は、用途最適型の可変成形によってできるだけ小さく保たれることが可能であり、これは、保持力のより速い増強および低下に寄与し、その結果、たとえば半導体ワークピースの移送を加速する。
【0023】
たとえば制限された長さのみを有する薄くて深い穴を作成可能である製造ツールの使用によって制限されている従来の製造プロセスと比較すると、追加生成プロセスは、たとえば真空把持部内のチャネルの局所的に比較的大きい断面の結果、たとえば真空把持部において真空タンクを直接生成することを可能にする。その結果、真空把持部は一時的な真空漏れにそれほど敏感ではなく、表面加工中に保持力が低下する場合の半導体ワークピースの損傷のリスクが減少する。吸引開口部および吸引チャネルの個々の設計および配置は、従来の生成プロセスと比較して、半導体ワークピースのための保持力を、目標とされる態様で、たとえば加工中に周辺領域において他の領域よりも高い保持力が設定される(これは、ワークピースエッジに対する力の特定の作用を伴う)ように、設定することを可能にする。
【0024】
追加生成プロセスは、真空把持部の領域に依存して目標とされる態様で吸引開口部およびチャネルの数を選択すること、ひいては、たとえば従来通りに生成された真空把持部と比べて周辺領域における吸引開口部およびチャネルの数を増加させることを可能にし、このようにして、半導体ワークピースの加工中に吸引される媒体、たとえば研磨剤が、吸引によってより迅速に抽出され得る。このため、周辺腐食の事例が回避される。
【0025】
目標とされる態様で設計され、半導体ワークピースのそれぞれの加工プロセスに適合され得る、たとえば周辺領域における吸引開口部自体の成形も、従来の生成プロセスと比較して提案された方法を用いて可能にされる。半導体ワークピースのエッジを加工するためのプロセス、たとえばエッジ研磨の場合、エッジに対する力の作用の結果、プロセス媒体はまた、典型的には、真空把持部と半導体ワークピースとの間の領域に入る。真空把持部の上側で環状チャネルとして設計された吸引開口部は、たとえば、侵入した媒体を迅速に退出させること、そして、その結果、半導体ワークピースの表面に対する媒体の望ましくない化学的または物理的反応を回避することを可能にする。
【0026】
追加堆積プロセスの使用は、真空把持部の従来の生成プロセスと比較して、すでに述べたようなたとえば可撓性シールさえも、それを直接一体化するか、またはその後それを取り付けることを可能にする。たとえば3D印刷されたシーリング要素は、従来のシールと比較して、半導体ワークピースのための加工プロセスに正確に適合され、ひいては、たとえばエッジ研磨プロセス中にプロセス媒体が支持エリアと半導体ワークピースとの間のエッジ領域に侵入するのを防止し得る。追加堆積プロセスによって生成され、同様に追加堆積プロセスによって生成された一体化されたシールまたは別個のシールを有する、そのような真空把持部の使用は、半導体ワークピースのための変更された加工プロセスに、シールを、従来の生成プロセスよりも可変的にかつ迅速に適合させることを可能にする。
【0027】
追加堆積プロセスによる、目標とされる製造は、従来の生成プロセスと比較すると、任意の所望の成形を有する吸引開口部を実現することを可能にする。その結果、吸引開口部および支持エリアが任意の所望の態様で形成された状態での、半導体ワークピースの加工されたエッジの代わりに、たとえば半径方向に、たとえば鋭いエッジの遷移部を回避することが可能である。従来通りに生成された真空把持部の場合、鋭いエッジの遷移部は、半導体ワークピースの表面への圧痕、擦傷または他の損傷の重大な原因である。なぜなら、真空排気の結果、表面が支持エリアに押し付けられ、たとえばエッジの研磨中に必要な高保持力のために、鋭いエッジ遷移部が半導体ワークピースまたはウェーハ上に圧痕(「チャックマーク」として知られているもの)を作り出すためである。
【0028】
たとえば機械加工プロセスによって従来通りに生成された真空把持部と比較すると、追加堆積プロセスによって、たとえば最適化されたチャネルまたはチャネルガイドおよび吸引開口部を実現することが可能である。これは、たとえば半導体ワークピースのエッジの上昇および研磨力のために生成される時間制限のある真空漏れの場合に、真空把持部と半導体ワークピースとの間で十分な保持力を維持することに寄与する。さらに、プロセス中に作用する力の(できるだけ)均質な分布が、真空把持部の上側または保持エリア上の活発な保持要素(すなわち吸引開口部)の可変配置によって達成され、したがって、システム電力を同じ状態で保ったまま、基板が受ける負荷は低く保たれ、半導体ワークピースが破損する(ウェーハ破損)リスクがかなり低下する。
【0029】
すでに述べられたように、ベース材料よりも低い硬度を有する材料の層を設けることは、「チャックパッド」として知られているものの使用を省くことを可能にする。そのような層が設けられない場合、および/または、それにもかかわらず意図は「チャックパッド」を使用することである場合、その生成は同様に簡略化され得る。この理由は、従来の真空把持部のための「チャックパッド」の場合、真空把持部に設けられた吸引開口部を露出させ得るためには、環状の切欠きが一般に必要であるということである。追加堆積プロセスによって生成された真空把持部における吸引開口部のかなりより可変の設計は、それに応じて、「チャックパッド」における切欠きをより単純に、たとえば円状の切欠きの形に保つことも可能にする。加えて、追加堆積プロセスによって「チャックパッド」自体を生成することも考えられる。
【0030】
追加堆積プロセスまたは3D印刷は、特に今まで使用された鋳造プロセスまたは機械加工プロセスと比較すると、アイテム数に関する自由、材料の最適化された使用、およびより低いツールコストを可能にする。その結果、真空把持部の生成コストは、従来の生成プロセスよりもかなり低い。たとえば、3D印刷を制御するための基礎となる3D CADデータの修正は、真空把持部の修正された設計を生成または印刷するのに十分であり得る。そして、たとえば鋳造モデルおよび特殊加工ヘッドといった、従来の生成プロセスでのようなツール製造の追加の事例は、必要ない。
【0031】
すでに述べられたように、追加堆積プロセスまたは3D印刷は自由成形を可能にし、その結果、たとえば、たとえばアンバランスによって引き起こされ得る振動の規定された回避のために使用される材料またはベース材料の目標とされる質量分布も可能にする。たとえば、ハニカム構造、中実材料の代わりの質量低減支柱、および、それぞれの用途のために最適化されたFEM(finite element method:「有限要素法」)生成設計の使用により、機械的剛性が同じままでありながら、材料の使用の減少も達成される。さらに、機械的特性の目標とされる設定のための充填材の使用を考慮に入れることができる。この文脈では、追加堆積プロセスの場合には真空把持部内でさえ異なり得る剛性の目標とされる設定のために、たとえばカーボンファイバー、ガラスファイバー、またはセラミックファイバーなどのファイバー比率が好ましくは使用され得る。このようにして、真空把持部は、たとえば周辺よりも機械的固定点でより耐摩耗性であるとして設計され得る。
【0032】
同様にすでに述べられたように、追加堆積プロセスの場合には同様に可変的に設定され得る材料硬度の目標とされる適合のために、添加剤が使用され得る。その結果、たとえば、真空把持部の特定領域が可撓性を有して、たとえばシールとして生成され、また、他の領域が、たとえばより強くより硬いものとして生成され得る。
【0033】
従来の生成プロセスと比較すると、追加堆積プロセスまたは3D印刷の場合、異なる材料を接合技術なしで組合せることが可能であり、それにより、それぞれの用途のために定められた必要とされる特性が実現され得る。これは好ましくは、従来通りに生成された真空把持部の場合には追加のアクチュエータによってのみ実現され得る材料の組合せによる作用機構を得ることを可能にする。3D印刷プロセスの場合、たとえば、真空把持部の周辺領域は、弾性があり弾力的な材料で生成可能であり、それらは、エッジの研磨中に周辺領域をより良好に支持する。
【0034】
加えて、たとえば真空把持部の表面といった特定領域を特定用途向けに滑らかにすることは好ましくは、真空把持部、さらには内部チャネルのすべての表面上の表面粗さを都合よく減少させる特定の研削プロセスによって、特に超音波および研削添加剤によって得られ得る。これは、表面上での媒体、たとえば研磨剤の付着減少、ひいては、半導体ワークピースの損傷の回避をもたらす。
【0035】
この発明はまた、少なくともベース材料から、追加堆積プロセスによって、特に予め規定された形で、または当該形を有して生成される、半導体ワークピースのための真空把持部に関する。この点において、真空把持部は、半導体ワークピースが配置され得る少なくとも実質的に平坦なエリアと、1つ以上の吸引開口部と、それらに接続された1つ以上のチャネルとを都合よく有する。この場合、そのような真空把持部は好ましくは、この発明に従った方法によって生成される。さらに好ましい実施形態および利点に関し、繰り返しを避けるために、ここで対応してあてはまる方法に関する上述の説明を参照するべきである。
【0036】
この発明のさらなる利点および実施形態は、説明および添付図面から明らかになるであろう。
【0037】
上に識別された特徴、および以下にさらに解明されることになっている特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、示された特定の組合せで使用され得るだけでなく、他の組合せでも、または単独で使用され得るということが理解されるであろう。
【0038】
この発明は、例示的な実施形態によって図面に概略的に示され、また、図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】好ましい実施形態におけるこの発明に従った方法での手順の概略図である。
【
図2】好ましい実施形態におけるこの発明に従った真空把持部の概略図である。
【
図3】
図2からの真空把持部を断面図で示す図である。
【
図5】さらに好ましい実施形態におけるこの発明に従った真空把持部の概略図である。
【
図6】さらに好ましい実施形態におけるこの発明に従った真空把持部の概略図である。
【
図7】
図6からの真空把持部を異なる図で示す図である。
【
図8】
図7に示す真空把持部の異なる図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、好ましい実施形態におけるこの発明に従った方法での手順の概略図を示す。この目的のために、最初に画像(a)でおおまかな概略図として示されているのは、追加堆積プロセスのための装置150、たとえば3Dプリンタであり、それは、ベース材料160が供給されるプリントヘッド155を有する。オプションで、(その場合、特にベース材料とは別に使用される)添加剤161および/または別の材料も、プリントヘッド155に供給され得る。プリントヘッド155は次に、まず、生成される真空把持部の第1の層101をキャリア151に塗布する。
【0041】
手順のさらなる過程で、具体的にはそれぞれの先行する層にそれぞれの新しい層を塗布することによって、さらに別の層が塗布される。例として、画像(b)で示されているのは、層101に塗布されたさらに別の層102であり、画像(c)で示されているのは、層102に塗布されたさらに別の層103である。
【0042】
このように、真空把持部100は、ベース材料から、追加堆積プロセスによって、画像(d)におけるおおまかな概略図に示されるような所望の形または予め規定された形で生成される。より詳細な図については、次の図面がここで参照されるべきである。同様に画像(d)で示されるように、コーティング材料180が、たとえばタンク170からコーティング材料180が供給される塗布ツール175によって、たとえば真空把持部100の上側に塗布される。
【0043】
このようにコーティングされた真空把持部100は次に、たとえば画像(e)で示されるような炉190で、所定時間の間、ベース材料160の熱変形温度よりも低い所定温度範囲内で、たとえば150℃で乾燥され、特に焼結される。これは、完成したコーティングされた真空把持部をもたらし、それもこのため、化学薬品に対して耐性がある。
【0044】
図2は、たとえば
図1に示され、それに関して説明された方法によって生成され得るような、好ましい実施形態におけるこの発明に従った真空把持部100の概略図を示す。
図2は真空把持部100の上側の斜視図を示し、一方、
図3は整合する断面図を示す。
図3に示された対称軸Aは、
図2における図の中央開口部を通過する。
図2および
図3は、以下に包括的に説明されるよう意図される。
【0045】
真空把持部100は、少なくとも実質的に平坦なエリア110を有するかまたはそのような平坦エリアとして設計されている上側を有する、対称軸Aに対して丸い形を有する。真空把持部100の使用中、たとえばウェーハなどの半導体ワークピースが、この平坦エリア110上に間接的にまたは直接配置される。この点において、
図5も参照されるべきである。
【0046】
複数の吸引開口部120が、真空把持部100の上側上に導入される。
図2では、これらの吸引開口部120の特に均一な分布を上側上または平坦エリア110内で見ることができ、一方、
図3は、真空把持部内の構成を示す。上側から始まって、吸引開口部120は、真空把持部100の内側に向かってほぼ円錐状に狭くなり、次に、チャネル130へと開く。吸引開口部120の各々はチャネル130に取り付けられてもよく、特に、径方向の線上に位置する開口部が共通チャネル130に取り付けられる。この点において、
図7も参照されるべきである。
【0047】
チャネル130およびすべてのさらなるチャネルは、中心で、または対称軸A上で、上側または平坦エリア110とは反対に位置する開口部135へと開く。そこには、たとえば好適な装置が、チャネル130を通って吸引開口部120まで伝搬する負圧または真空を生成するために、その後配置され得る。このようにして、負圧または真空を吸引開口部120で作り出すことができ、その結果、平坦エリア110に載っているウェーハが、平坦エリア110または真空把持部100上に吸引され、ひいては適所に保持される。
【0048】
図4は、
図3からの真空把持部100の拡大された詳細を示す。その図の最も右に、すなわち、径方向最外側に配置された吸引開口部120の例に基づいて、平坦エリア110への遷移部での吸引開口部120の遷移部122が示される。ここでは、前記遷移部が、従来通り生成された真空把持部にあるような鋭いエッジではなく、むしろ、丸い設計を有するかまたは半径として設計されていることが見える。これらは、追加堆積プロセスによって特に良好にまたは簡単に作成可能であり、それらに当たって位置するウェーハに損傷が生じないか、または、それらに当たって位置するウェーハの損傷が少なくとも非常に相当減少され得るという事実をもたらす。
【0049】
図5は、さらに好ましい実施形態におけるこの発明に従った真空把持部100’の概略図を示す。真空把持部100’は基本的に、
図2、
図3および
図4に従った真空把持部100に対応する。ここに示される図は、
図4に示される図に対応する。
【0050】
ここでは、真空把持部100’の径方向外端でシール140が導入されていることが見える。前記シールは特に可撓性であり、たとえば、真空把持部の周辺の1つ以上の部分で延び得る。シール140は、たとえば同様に追加堆積プロセスによって生成され得るが、その場合、好ましくは、別の材料がベース材料として使用される。
【0051】
さらに、ウェーハの形をした半導体ワークピース150が次に配置されるパッド155、または「チャックパッド」として知られているものが、上側または平坦エリア110上に塗布または配置される。パッド155における吸引開口部およびたとえば好適な開口部(それらのうちの1つが吸引開口部120の領域で見える)は、ウェーハ150がパッド155とともに吸引されることを可能にする。同様に、ウェーハ150はシール140と接触しており、その結果、封止が生成され、したがって、負圧がより大きい効果を生み出し得るということも見える。
【0052】
図6は、さらに好ましい実施形態におけるこの発明に従った真空把持部100’’の概略図を示す。真空把持部100’’は基本的に、たとえば
図5に示されるような真空把持部100’に対応するが、ウェーハ150に面することになっている真空把持部の側に層105が形成され、「チャックパッド」として機能する。したがって、別個の「チャックパッド」は必要ない。
【0053】
図7は、さらに好ましい実施形態におけるこの発明に従った真空把持部100’’’の概略図を、具体的には
図2における図と同等の斜視図で示す。この点において、真空把持部100’’は基本的に、
図2、
図3および
図4に従った真空把持部100に対応するが、
図2との比較から見えるように、より多くの吸引開口部120が設けられている。これは、たとえば、吸引開口部で負圧によって作り出される接触圧力をウェーハまたはその表面エリア上にできるだけ均一に分布させるために、吸引開口部120が必要に応じて設けられ得るということを示す。
【0054】
図8は、
図7からの真空把持部100’’’を、具体的には(
図2に従った真空把持部の場合と同様に位置する)対称軸に垂直な断面での異なる図で示す。この図では、例として示されているのは、星形になるように径方向に延びて中心で一致するいくつかのチャネル130である。たとえば
図7で見えるような吸引開口部の各々は、これらのチャネル130によって接続され得る。