(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】生コンクリートの品質予測方法、品質予測プログラム、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの品質予測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
G01N33/38
(21)【出願番号】P 2024095785
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2024053712の分割
【原出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 実暉
(72)【発明者】
【氏名】玉滝 浩司
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-124304(JP,A)
【文献】特開2023-065743(JP,A)
【文献】特開2023-103030(JP,A)
【文献】特開平11-077659(JP,A)
【文献】特開2019-010739(JP,A)
【文献】特開2008-008629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0316856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38,
G01N 11/00,
B28C 7/00,
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサの電力負荷値に係る第1情報、及び、前記ミキサによる生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する取得工程と、
前記入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデルと、前記取得工程において取得された前記入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測工程と、
を含み、
前記第2情報は、前記ミキサが練混ぜを実行する際の日付及び時刻を表す情報を含む
、
生コンクリートの品質予測方法。
【請求項2】
コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサの電力負荷値に係る第1情報、及び、前記ミキサによる生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する取得工程と、
前記入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデルと、前記取得工程において取得された前記入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測工程と、
を含み、
前記第2情報は、任意に設定された基準時点から前記ミキサが練混ぜを実行した時点までの時間を表す情
報を含む
、
生コンクリートの品質予測方法。
【請求項3】
前記基準時点は、前記ミキサ内の洗浄が行われた後、且つ、前記ミキサによる製造が再開される前の時点に設定される、
請求項2に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測方法をコンピュータに実行させる品質予測プログラム。
【請求項5】
生コンクリートを製造する製造工程と、
請求項1~3のいずれか一項に記載の生コンクリートの品質予測方法により、前記製造工程において製造された生コンクリートの品質を予測する品質予測工程と、を含む、
生コンクリートの製造方法。
【請求項6】
コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサの電力負荷値に係る第1情報、及び、前記ミキサによる生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する入力情報取得部と、
前記入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデルと、前記入力情報取得部により取得された前記入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測演算部と、
を備え
、
前記第2情報は、前記ミキサが練混ぜを実行する際の日付及び時刻を表す情報を含む、生コンクリートの品質予測装置。
【請求項7】
コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサの電力負荷値に係る第1情報、及び、前記ミキサによる生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する入力情報取得部と、
前記入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデルと、前記入力情報取得部により取得された前記入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測演算部と、
を備え、
前記第2情報は、任意に設定された基準時点から前記ミキサが練混ぜを実行した時点までの時間を表す情報を含む、
生コンクリートの品質予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生コンクリートの品質予測方法、品質予測プログラム、及び、生コンクリートの品質予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予測モデルを用いて、生コンクリートの品質を予測するための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、予測モデルにより品質を予測する際の予測精度の向上に有用な生コンクリートの品質予測方法、品質予測プログラム、及び、生コンクリートの品質予測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサの電力負荷値に係る第1情報、及び、前記ミキサによる生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する取得工程と、前記入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデルと、前記取得工程において取得された前記入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測工程と、を含む、生コンクリートの品質予測方法。
【0006】
[2]前記第2情報は、前記ミキサが練混ぜを実行する際の日付及び時刻を表す情報を含む、上記[1]に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【0007】
[3]前記第2情報において、前記日付及び前記時刻のそれぞれは、三角関数を用いて特定される、上記[2]に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【0008】
[4]前記第2情報は、前記ミキサによる練混ぜの1日のうちの累計バッチ数を表す情報を更に含む、上記[2]又は[3]に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【0009】
[5]前記第2情報は、任意に設定された基準時点から前記ミキサが練混ぜを実行した時点までの時間を表す情報、又は、前記基準時点からの前記ミキサによる練混ぜの累計バッチ数を表す情報を含む、上記[1]に記載の生コンクリートの品質予測方法。
【0010】
[6]前記第1情報は、前記ミキサが1回の練混ぜを実行する際の前記電力負荷値の時系列データから得られる統計量を含み、前記統計量は、最大値と最小値との差分を表す変動範囲、最大値と終局値との差分を表す下降幅、任意に設定された時間内の合計値、平均値、標準偏差、変動係数、中央値、第一四分位点、第三四分位点、尖度、及び歪度から成る群から選択される少なくとも1種以上の値である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の生コンクリートの品質予測方法。
【0011】
[7]上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の生コンクリートの品質予測方法をコンピュータに実行させる品質予測プログラム。
【0012】
[8]コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサの電力負荷値に係る第1情報、及び、前記ミキサによる生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する入力情報取得部と、前記入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデルと、前記入力情報取得部により取得された前記入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測演算部と、を備える、生コンクリートの品質予測装置。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、予測モデルにより品質を予測する際の予測精度の向上に有用な生コンクリートの品質予測方法、品質予測プログラム、及び、生コンクリートの品質予測装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、生コンクリートの製造システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、電力負荷値に係るデータを例示する図である。
【
図4】
図4は、日付及び時刻の表現形式を説明するための図である。
【
図5】
図5は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6(a)は、学習フェーズでの処理フローの一例を示す図である。
図6(b)は、評価フェーズでの処理フローの一例を示す図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、予測モデルによる演算過程の一例を表す模式図である。
図7(c)は、ニューラルネットワークの演算過程の一例を表す模式図である。
【
図8】
図8は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、電力負荷値の計測結果の推移を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1には、一実施形態に係る品質予測装置を備える生コンクリートの製造システムが模式的に示されている。
【0016】
[生コンクリートの製造システム]
最初に、生コンクリートの製造システムについて、その概要を説明する。
図1に示される製造システム1は、生コンクリートを製造するシステムである。製造システム1は、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する。
【0017】
製造システム1において用いられるコンクリート材料は、セメント、混和材、粗骨材、細骨材、水、及び混和剤等を含む。粗骨材としては、例えば、砂利、砕石、スラグ粗骨材、軽量粗骨材、再生粗骨材、回収骨材、又はこれらを混合した粗骨材が挙げられる。砂利は、山砂利、陸砂利、川砂利、又は海砂利などである。スラグ粗骨材は、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、又は石炭ガス化スラグ骨材などである。軽量粗骨材は、天然軽量骨材、副産軽量骨材、又は人工軽量骨材などである。粗骨材は、砕岩砕石、又は石灰砕石を含んでもよい。
【0018】
細骨材としては、例えば、砂、砕砂、スラグ細骨材、軽量細骨材、再生細骨材、回収骨材、又はこれらを混合した細骨材が挙げられる。砂は、山砂、陸砂、川砂、又は海砂などである。スラグ細骨材は、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、又は石炭ガス化スラグ骨材などである。軽量細骨材は、天然軽量骨材、副産軽量骨材、又は人工軽量骨材などである。
【0019】
砕石、及び砕砂の岩種には、例えば、火成岩類、堆積岩類、変成岩類、珪石、石灰岩、ドマロイト、又はかんらん岩などがある。火成岩類は、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、ひん岩、輝緑岩、流紋岩、安山岩、玄武岩、又は蛇紋岩などである。堆積岩類は、礫岩、砂岩、頁岩、粘板岩、又は凝灰岩などである。変成岩類は、片麻岩、又は結晶片岩などである。
【0020】
製造システム1は、製造した生コンクリートを運搬車200に積み込む。運搬車200は、生コンクリートが積み込まれた後に、生コンクリートが使用される現場(例えば、工事現場)まで生コンクリートを運搬する。運搬車200としては、例えば、アジテータ車(ミキサ車)、又はダンプトラックが挙げられる。製造システム1は、現場ごとに設定された目標品質(要求品質)を満たすように、コンクリート材料から生コンクリートを製造してもよい。例えば、製造システム1のオペレータが、目標品質を満たすようにコンクリート材料の配合を決定し、製造システム1に対して動作指示を入力する。
【0021】
現場ごとに設定された目標品質は、製造システム1で製造され、出荷される前の(出荷時点での)生コンクリートの品質とは異なっている。例えば、製造システム1においては、現場ごとに設定された生コンクリートの使用時における目標品質が満たされるように、製造システム1で生コンクリートが製造され、出荷される前の生コンクリートの品質の管理(検査等)が行われる。生コンクリートの使用時とは、現場において生コンクリートを受け入れる時に相当する。出荷される前の生コンクリートの品質の管理のために、生コンクリートの使用時における目標品質に基づいて、生コンクリートの出荷時における目標品質が定められてもよい。生コンクリートの出荷時における目標品質は、工場ごとに定められた社内規格等によって設定されてもよい。生コンクリートの出荷時における目標品質の設定において、製造を行う際の使用材料の状態(品質)、季節(気温)、コンクリートの種類、使用時の目標品質、及び運搬時間のうちの少なくとも1つの情報が考慮されてもよい。生コンクリートの出荷時における目標品質は、例えば、生コンクリートの使用時における目標品質に社内規格で定めた値が加算されて設定される。
【0022】
製造システム1は、例えば、製造装置100と、制御装置10と、を備える。製造装置100は、制御装置10からの動作指示に基づいて、生コンクリートを製造する装置である。製造装置100は、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する。製造装置100は、例えば、材料置場101と、運搬装置104と、貯蔵瓶111と、計量瓶112と、集合ホッパ113と、ミキサ114と、積込ホッパ115と、を備える。
【0023】
材料置場101は、コンクリート材料を貯蔵する場所である。材料置場101は、複数のサイロ102を含む。複数のサイロ102は、コンクリート材料の少なくとも一部を、材料の種類ごとに貯蔵する容器である。複数のサイロ102は、例えば、粗骨材を貯蔵するサイロ102と、細骨材を貯蔵するサイロ102と、セメントを貯蔵するサイロ102とを含む。
【0024】
運搬装置104は、複数のサイロ102に貯蔵されたコンクリート材料を、貯蔵瓶111まで運搬する装置である。運搬装置104は、例えば、コンクリート材料を搬送するベルトコンベアを含む。運搬装置104は、互いに異なるタイミングで、材料の種類ごとにコンクリート材料を運搬してもよい。一例では、制御装置10による動作指示に基づいて、各種コンクリート材料のうちの特定の材料が運搬装置104に移され、貯蔵瓶111まで搬送される。
【0025】
貯蔵瓶111は、各種のコンクリート材料を一時的に貯蔵する。貯蔵瓶111には、材料置場101から、運搬装置104によって各種のコンクリート材料が運搬(搬送)される。貯蔵瓶111は、各種のコンクリート材料を個別に貯蔵するように構成されている。以下、「コンクリート材料」を単に「材料」と表記する場合がある。貯蔵瓶111に貯蔵されている各種材料は、必要に応じて計量瓶112に供給される。
【0026】
計量瓶112は、貯蔵瓶111の下方に配置されている。計量瓶112は、制御装置10からの動作指示に基づいて動作し、各種材料を個別に計量する。計量瓶112は、制御装置10から指示された目標量の材料を検知すると、その材料を集合ホッパ113に供給する。水が計量瓶112に供給される際に、その水に混和剤が混合されてもよい。集合ホッパ113は、計量瓶112の下方に配置されている。集合ホッパ113は、計量瓶112から排出される各種材料を集約し、集約した各種材料をミキサ114に供給する。なお、製造装置100は集合ホッパ113を備えていなくてもよく、計量瓶112から各種材料がミキサ114に供給されてもよい。
【0027】
ミキサ114は、集合ホッパ113の下方に配置されている。ミキサ114は、コンクリート材料を練り混ぜる装置である。ミキサ114は、骨材、セメント、水、及び混和剤等を練り混ぜる(混練する)ことで、生コンクリートを製造する。ミキサ114の底部から、生コンクリートが積込ホッパ115に排出される。ミキサ114は、傾動ミキサ、水平1軸型のミキサ、水平2軸型のミキサ、又はパン型のミキサであってもよい。ミキサ114は、例えば、2つの攪拌部材114aと、ミキサ駆動部114bと、を含む。
【0028】
攪拌部材114aは、ミキサ114に供給された各種材料を攪拌する部材である。2つの攪拌部材114aは、ミキサ114の本体部分(容器部分)の内部において並んで配置され、回転自在に設けられている。2つの攪拌部材114aそれぞれは、水平な一方向に延びる回転軸を含む。ミキサ駆動部114bは、制御装置10からの動作指示に基づいて、2つの攪拌部材114aそれぞれの回転軸を回転させる。ミキサ駆動部114bは、例えば、攪拌部材114aに駆動力を付与するモータ等の駆動源を含む。ミキサ114の本体部分の底部には、製造された生コンクリートを積込ホッパ115に排出するための開閉口が設けられている。
【0029】
積込ホッパ115は、ミキサ114の下方に配置されており、生コンクリートを一時的に収容する。積込ホッパ115は、一時的に収容した生コンクリートを運搬車200に供給する。
【0030】
以上に説明した製造装置100は、生コンクリートの製造装置の一例であり、生コンクリートの製造装置は、ミキサによりコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造可能であれば、どのように構成されていてもよい。
【0031】
本開示では、ミキサ114において1回の練混ぜによって製造され、運搬車200に積み込まれる生コンクリートの単位を「1バッチ」と定義する。1バッチ分の生コンクリートを製造するために製造システム1が実行する処理を「バッチ処理」と定義する。ある基準時点からのバッチ処理の実行回数(累計の実行回数)を、「累計バッチ数」という。基準時点では、累計バッチ数がゼロにリセットされる。例えば、毎日、製造装置100が稼働を開始する時点において、累計バッチ数がゼロにリセットされる。この場合、1日のうちのk番目(kは、1以上の整数)に実行されるバッチ処理での累計バッチ数は、kとなる。
【0032】
1~3バッチ分の生コンクリートが1台の運搬車200に積み込まれてもよい。例えば、2バッチ分の生コンクリートが1台の運搬車200に積み込まれる場合、同じ製造条件に従った2回のバッチ処理が、互いに異なるタイミングで(順に)行われる。1日のうちのある期間において、同じ製造条件に従った複数回のバッチ処理が連続して順に行われてもよい。
【0033】
<制御装置(品質予測装置)>
制御装置10は、製造装置100を制御する装置である。制御装置10は、1つ又は複数のコンピュータによって構成される。制御装置10が複数のコンピュータで構成される場合、これらのコンピュータは、互いに通信可能に接続される。制御装置10は、設定された動作条件に従って製造装置100を制御する。動作条件の少なくとも一部は、作業員等のオペレータからの指示によって定められてもよい。
【0034】
制御装置10には、入力デバイス12とモニタ14とが接続されてもよい。入力デバイス12は、作業員等からの指示を示す情報を制御装置10に入力する機器である。入力デバイス12は、所望の情報を入力可能であればいかなるものであってもよく、キーボード(キーパッド)、操作パネル、又はマウスであってもよい。モニタ14は、制御装置10からの情報を作業員等に表示するためのデバイスである。モニタ14は、グラフィック表示が可能であればいかなるものであってもよく、液晶ディスプレイであってもよい。入力デバイス12及びモニタ14は、タッチパネルのように一体化されていてもよい。制御装置10、入力デバイス12、及びモニタ14は、タブレットコンピュータ(タブレット端末)のように一体化されていてもよい。
【0035】
制御装置10は、製造装置100に対する制御に加えて、製造装置100によって製造された生コンクリートの品質を予測する機能を有してもよい。この場合、制御装置10が、生コンクリートの品質を予測する品質予測装置(生コンクリートの品質予測装置)を構成する。以下の説明において、制御装置10による予測対象の生コンクリートの品質は、製造装置100によって製造された後、且つ、現場に出荷される前の品質(すなわち、生コンクリートの出荷時における品質)である。
【0036】
制御装置10による予測対象の生コンクリートの品質は、スランプ、スランプフロー、及び空気量のうちの1種以上の品質を含んでもよい。制御装置10による予測対象の生コンクリートの品質は、スランプ、スランプフロー、及び空気量のうちの2種以上の品質を含んでもよい。制御装置10による予測対象の生コンクリートの品質は、スランプ、スランプフロー、及び空気量のうちの1種の品質であってもよく、スランプ、スランプフロー、及び空気量のうちの2種以上の品質であってもよい。
【0037】
制御装置10は、少なくとも、取得工程及び予測工程を実行するように構成されている。取得工程は、ミキサ114の電力負荷値に係る情報、及び、ミキサ114による生コンクリートの製造時期に係る情報を含む入力情報を取得する工程である。予測工程は、上記入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデルと、上記取得工程において取得された入力情報とに基づいて、予測対象の生コンクリートの品質を予測する工程である。
【0038】
図2には、制御装置10が備える機能上の構成要素(以下、「機能ブロック」という。)の一例が示されている。制御装置10は、例えば、機能ブロックとして、動作制御部22と、動作情報取得部24と、時期情報取得部26と、モデル構築部30と、モデル保持部32と、予測演算部28と、表示出力部34と、を有する。これらの機能ブロックが実行する処理は、制御装置10が実行する処理に相当する。
【0039】
動作制御部22は、予め定められた動作条件に従って、生コンクリートを製造するように製造装置100を制御する。上記動作条件の少なくとも一部は、生コンクリートの製造が実行される度に、作業員等のオペレータによって定められてもよい。動作制御部22は、ミキサ114のミキサ駆動部114bの回転速度が、動作条件において規定される目標回転速度に追従するように、ミキサ駆動部114bを制御してもよい。動作制御部22は、ミキサ駆動部114bを制御する際に、ミキサ駆動部114bに対して供給される電力(例えば、電流値)を調節してもよい。製造される生コンクリートが硬いと、電力負荷値は大きくなる傾向があり、製造される生コンクリートが柔らかいと、電力負荷値は小さくなる傾向がある。
【0040】
動作情報取得部24は、生コンクリートを製造した際の動作に関連する情報を取得する。動作情報取得部24は、ミキサ114の電力負荷値に係る情報(以下、「第1情報」という。)を取得する。ミキサ114の電力負荷値は、ミキサ114に供給される電力(kW)そのものを示す値であってもよく、ミキサ114に供給される電流値(A)を示す値であってもよい。あるいは、ミキサ114の電力負荷値は負荷油圧力(MPa)を示す値に代えられてもよい。ミキサ114の電力負荷値に係る情報は、1バッチ分の処理の間にミキサ114が動作している間の連続した時系列データであってもよく、その時系列データから得られる統計量データであってもよい。
【0041】
図3には、1バッチ分の処理におけるミキサ114の電力負荷値に係る時系列データが模式的に示されている。電力負荷値に係る時系列データは、例えば、所定のサンプリング周期でミキサに供給される電力(kW)を繰り返し計測することで得られるデータである。動作情報取得部24は、統計量データとして、変動範囲(最大値と最小値との差分)、下降幅(最大値と終局値との差分)、任意に設定された時間内の合計値、平均値、標準偏差、変動係数、中央値、第一四分位点、第三四分位点、尖度、及び歪度から成る群から選択される少なくとも1種以上を算出(取得)してもよい。動作情報取得部24は、統計量データとして、上記群から選択される少なくとも1種以上に加えて、最小値及び最大値の少なくとも一方を算出してもよい。動作情報取得部24により取得される統計量データは、時系列データに含まれる2以上の電力負荷値を用いた演算から求まる統計値を含んでもよい。
【0042】
図3に示されるグラフにおいて、「P1」は、時系列データにおける初期値を表す。初期値P1は、時系列データにおいて、練混ぜ開始時点の電力負荷値である。「P2」は、時系列データにおける最小値を表す。最小値P2は、初期値P1が得られた時刻以降において、最小となる電力負荷値である。なお、練混ぜ開始時点の電力負荷値(初期値P1)が、最小となる場合もある。「P3」は、時系列データにおける最大値を表す。最大値P3は、初期値P1が得られた時刻よりも後において、最大となる電力負荷値である。「P4」は、時系列データにおける終局値を表す。終局値P4は、動作制御部22が、ミキサ114による練混ぜを終了させるための条件を満たすと判断した時点での電力負荷値である。動作制御部22は、例えば、攪拌部材114aの駆動を開始した時点から所定時間が経過した場合に、上記条件を満たすと判断して、攪拌部材114aの駆動を停止する。
【0043】
時期情報取得部26は、ミキサ114による生コンクリートの製造時期に係る情報(以下、「第2情報」という。)を取得する。ミキサ114による生コンクリートの製造時期とは、ミキサ114がコンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するタイミングを意味する。上記製造時期(製造するタイミング)に係る情報である第2情報は、例えば、ミキサ114が練混ぜを実行する際の日付及び時刻を表す情報を含む。第2情報において、ミキサ114が練混ぜを実行する際の日付は、ミキサ114が生コンクリートを製造した特定の日を、年、月、及び日の組合せ、又は、月及び日の組合せで表す。
【0044】
第2情報において、ミキサ114が練混ぜを実行する際の時刻は、ミキサ114が生コンクリートを製造した特定の時点を、時間、分、及び秒の組合せ、又は、時間及び分の組合せで表す。第2情報における上記時刻(ミキサ114が生コンクリートを製造した特定の時点)は、ミキサ114に対してコンクリート材料が供給された時点の時刻であってもよく、ミキサ114から製造後の生コンクリートが排出された時点の時刻であってもよい。第2情報における上記時刻(ミキサ114が生コンクリートを製造した特定の時点)は、ミキサ114において攪拌部材114aの駆動を開始させた時点の時刻であってもよく、攪拌部材114aの駆動を終了させた時点の時刻であってもよい。
【0045】
第2情報において、日付と時刻とのそれぞれは、三角関数を用いて特定されてもよい。例えば、第2情報において、月及び日のそれぞれが、三角関数を用いて特定され、時、分、及び秒のそれぞれが、三角関数を用いて特定される。最初に、
図4を参照しながら、時刻のうちの「時」を、三角関数により特定する(表す)場合について説明する。通常、1日のうちの「時」は、24時になると0時に戻るとして、0時~23時の24個の数値で特定される(表される)。このような通常の数値を用いて特定すると、例えば、0時と23時との間では、日にちを考慮しないと1時間の差しかないにも関わらず、数字上は、大きく離れていることになる。そこで、三角関数を用いて、周期性を有するように「時」が特定(表現)される。
【0046】
一例では、h時(hは、0~23のうちの任意の整数)が、
図4に示されるように、cos{2π×(h/24)}とsin{2π×(h/24)}との組み合わせで表される。この場合、0時は(1,0)となり、6時は(0,1)となり、12時は(-1,0)となり、18時は(0,-1)となる。m分(mは、0~59のうちの任意の整数)、及び、s秒(sは、0~59のうちの任意の整数)についても、それぞれ下記の組合せによって表されてもよい。
・m分:cos{2π×(m/60)},sin{2π×(m/60)}
・s秒:cos{2π×(s/60)},sin{2π×(s/60)}
【0047】
日付の「月」をM月(Mは、1~12のうちの任意の整数)とし、「日」をD日(Dは、1~Dmのうちの任意の整数)とした場合、M月及びD日が、それぞれ下記の組合せによって表されてもよい。Dmは、月ごとに定まり、28、29、30、及び31のいずれかの整数である。
・M月:cos[2π×{(M-1)/12)],sin[2π×((M-1)/12)]
・D日:cos[2π×{(D-1)/Dm)],sin[2π×((M-1)/Dm)]
【0048】
上記製造時期に係る情報である第2情報は、ミキサ114による練混ぜの1日のうちの累計バッチ数を表す情報を更に含んでもよい。1日のうちの累計バッチ数を表す情報は、その日において何番目に実行されたバッチ処理か(何番目に実行されたバッチ処理で製造された生コンクリートか)を特定する情報である。着目している生コンクリートが、1日のうちの何番目のバッチ処理で製造したものかによっても、どのタイミングで製造が行われたかを表すことができるので、1日のうちの累計バッチ数を表す情報も、製造時期に係る情報である。
【0049】
時期情報取得部26は、作業員等のオペレータからの入力デバイス12を介した入力に基づいて、上記第2情報を取得してもよい。作業員等のオペレータからの入力に代えて、又は加えて、時期情報取得部26(制御装置10自身)が、動作制御部22がミキサ114等を制御したタイミングに基づいて、第2情報の少なくとも一部を取得してもよい。以上の動作情報取得部24及び時期情報取得部26は、第1情報及び第2情報を含む入力情報を取得する入力情報取得部として機能する。
【0050】
モデル構築部30は、生コンクリートの品質を予測するためのモデル(以下、「予測モデルM」と表記する。)を構築する。予測モデルMは、上記第1情報及び第2情報を含む入力情報の入力に応じて、生コンクリートの品質を示す品質情報(品質値)を出力するモデルである。モデル構築部30は、入力情報と、当該入力情報に対応付けられた品質の正解値とに基づく機械学習により、予測モデルMを構築する。予測モデルMは、品質情報として、スランプの予測値、スランプフローの予測値、及び、空気量の予測値のうちの1種以上の予測値を出力するように構築されてもよい。予測モデルMは、上記1種以上の予測値に代えて又は加えて、品質情報として、スランプに対するスランプフローの比(スランプフロー/スランプ)の予測値を出力するように構築されてもよい。
【0051】
機械学習とは、機械(コンピュータ)が与えられた情報に基づいて反復的に学習することで、法則又はルールを自律的に見つけ出す手法をいう。予測モデルMは、アルゴリズム及びデータ構造を用いて構築することができる。予測モデルMは、例えば、人間の脳神経の仕組みを模した情報処理のモデルであるニューラルネットワークを用いて実現される。予測モデルMを構築する際に行われる機械学習の具体的なアルゴリズムは特に限定されない。ニューラルネットワークは、例えば、入力層と、1層又は複数層の中間層と、出力層とを有する。1以上の中間層を含むことでより複雑な予測モデルMを構築でき、予測精度を向上できる。
【0052】
モデル構築部30は、機械学習の入力として与えられるデータと、機械学習の出力の正解データ(スランプ等の正解値)とを用いて機械学習を行うことで、生コンクリートの品質を予測するための予測モデルMを自律的に構築してもよい。機械学習の入力は、第1情報及び第2情報を含む入力情報の種々のデータセットである。機械学習の出力は、生コンクリートの品質を示すデータ(数値)である。モデル構築部30は、入力情報のデータセット及びスランプ等の正解値の複数の組合せを用いて、スランプ等の予測値を出力するモデルを反復的に学習する。
【0053】
予測モデルMを自律的に構築する段階は、学習フェーズに相当する。上記学習フェーズが、生コンクリートの製造を行う生産フェーズの前に行われてもよく、又は、生産フェーズの初期段階で行われてもよい。モデル保持部32は、モデル構築部30によって構築された予測モデルMを保持する。学習済みのモデルである予測モデルMは、コンピュータ間で転用可能であってもよい。従って、制御装置10において構築された予測モデルMが、製造システム1とは異なる他の製造システムで用いられてもよく、モデル保持部32は、他の製造システムで構築された予測モデルMを保持してもよい。
【0054】
予測演算部28は、評価フェーズにおいて、動作情報取得部24及び時期情報取得部26(入力情報取得部)により取得された入力情報と、予測モデルMとに基づいて、予測対象の生コンクリートの品質を予測する。予測演算部28は、取得された入力情報を予測モデルMに入力し、予測モデルMから出力される予測値を取得する。評価フェーズにおいて取得される入力情報(評価用の入力情報)は、生コンクリートの品質が未知な情報である。
【0055】
表示出力部34は、予測演算部28により予測された品質を示す情報(品質値)をモニタ14に出力する。これにより、モニタ14に品質の予測値が表示され、作業員等のオペレータが、予測対象の生コンクリート(製造された生コンクリート)の品質の予測値を把握できる。
【0056】
図5に示されるように、制御装置10は、回路50を備える。回路50は、プロセッサ51と、メモリ52と、ストレージ53と、入出力ポート54と、を有する。ストレージ53は、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の1以上の不揮発性メモリデバイスにより構成されている。ストレージ53は、少なくとも、取得工程及び予測工程をコンピュータに実行させる品質予測プログラムを記憶している。ストレージ53は、制御装置10の各機能ブロックを構成するための品質予測プログラムを記憶する。
【0057】
メモリ52は、例えばランダムアクセスメモリ等の1以上の揮発性メモリデバイスにより構成されている。メモリ52は、ストレージ53からロードされた品質予測プログラムを一時的に記憶する。プロセッサ51は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の1以上の演算デバイスにより構成されている。プロセッサ51は、メモリ52にロードされた品質予測プログラムを実行することで、制御装置10の各機能ブロックを構成する。プロセッサ51による演算結果は一時的にメモリ52に格納される。入出力ポート54は、プロセッサ51からの要求に応じ、入力デバイス12、モニタ14、及びミキサ114等との間で情報の入出力を行う。
【0058】
タイマ55は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。なお、回路50は、必ずしもプログラムにより各機能を構成するものに限られない。例えば回路50は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により少なくとも一部の機能を構成してもよい。品質予測プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、又は半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、品質予測プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0059】
[生コンクリートの製造方法]
続いて、製造システム1において実行される生コンクリートの製造方法の一例について説明する。生コンクリートの製造方法は、製造工程と、品質予測工程と、を含む。製造工程は、生コンクリートを製造する工程である。品質予測工程は、製造工程において製造された生コンクリートの品質を予測する工程である。製造工程が繰り返し実行されている期間の少なくとも一部と重複する期間において、品質予測工程が実行されてもよい。
【0060】
製造工程は、例えば、搬送工程と、計量工程と、投入工程と、練混ぜ工程と、排出工程と、積込工程と、を含む。搬送工程では、運搬装置104によって、各種のコンクリート材料が貯蔵瓶111まで搬送されて、貯蔵瓶111に各種材料が個別に供給される。計量工程では、貯蔵瓶111から計量瓶112に各種材料が個別に供給され、計量瓶112において各種材料が計量される。計量工程では、材料ごとに、計測量が所定の設定量に達した場合に、その材料が集合ホッパ113に排出される。投入工程では、集合ホッパ113に全ての種類の材料が集約された後に、集合ホッパ113内の材料がミキサ114に投入(供給)される。
【0061】
練混ぜ工程では、ミキサ114において複数種のコンクリート材料が練り混ぜられる。練混ぜ工程では、予め定められた動作条件に従って、制御装置10がミキサ駆動部114bを制御してもよい。練混ぜ工程において、ミキサ駆動部114bの回転速度が、目標の回転速度に追従するように、制御装置10からミキサ駆動部114bに対して供給される電力が調節されてもよい。
【0062】
排出工程では、ミキサ114においてコンクリート材料の練混ぜが終了した後に、ミキサ114から積込ホッパ115に生コンクリートが排出される。積込工程では、積込ホッパ115内に排出された生コンクリートが、運搬車200に積み込まれる。
【0063】
品質予測工程(品質予測方法)は、学習フェーズでのモデル構築工程と、評価フェーズでの品質評価工程とを含む。品質予測工程において、モデル構築工程は、品質評価工程の前に実行される。以下、モデル構築工程の一例と、品質評価工程の一例とについて説明する。
【0064】
(モデル構築工程)
図6(a)は、モデル構築工程において実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。このモデル構築工程は、製造装置100での上記製造工程が実行される前、又は、上記製造工程が開始された初期段階において実行される。このモデル構築工程では、例えば、製造装置100において実際に製造された生コンクリートが、学習用の生コンクリートとして利用される。
【0065】
モデル構築工程では、最初にステップS11が実行される。ステップS11では、例えば、作業員等のオペレータによって、機械学習を行うための学習用のデータが準備される。学習用のデータは、複数のデータセットから構成される。複数のデータセットそれぞれでは、学習用の生コンクリートを製造した際に得られた上記第1情報及び上記第2情報を含む入力情報(学習用の入力情報)と、その入力情報に対応付けられた品質情報(例えば、スランプ)の正解値とが含まれる。
【0066】
品質情報の正解値は、学習用の生コンクリートの品質を実測して得られる値であってもよい。一例では、学習用の生コンクリートが運搬車200に積み込まれた後、一部の生コンクリートが作業員等によって抜き出される。そして、抜き出された生コンクリートのスランプ、スランプフロー、及び空気量等が作業員等によって計測され、これらの実測値の少なくとも一部が、学習用のデータにおける正解値として利用される。
【0067】
次に、ステップS12が実行される。ステップS12では、例えば、制御装置10のモデル構築部30が、ステップS11で準備された学習用のデータ(複数のデータセット)を用いて機械学習を行うことで、予測モデルMを構築する。モデル構築部30は、ニューラルネットワークを用いた機械学習により予測モデルMを構築してもよい。
【0068】
図7(a)及び
図7(b)のそれぞれには、モデル構築部30により構築される予測モデルMが模式的に示される。
図7(a)に示される予測モデルMは、入力情報の入力に応じて、単一の品質予測値を出力するモデルである。
図7(b)に示される予測モデルMは、入力情報の入力に応じて、2種以上の品質予測値を出力するモデルである。本開示では、予測モデルMが単一の品質予測値(1種類の品質の予測値のみ)を出力するように行う機械学習を、「シングルタスク学習」と称する。また、予測モデルMが、2種類以上の品質の予測値を出力するように行う機械学習を「マルチタスク学習」と称する。
【0069】
モデル構築部30は、シングルタスク学習を行って予測モデルMを構築してもよい。この場合、モデル構築部30は、品質の種類ごとに、予測モデルMを構築してもよい。例えば、モデル構築部30は、スランプの予測値を出力する予測モデルM、スランプフローの予測値を出力する予測モデルM、及び、空気量の予測値を出力する予測モデルMのうちの2以上のモデルを構築する。モデル構築部30は、マルチタスク学習を行って予測モデルMを構築してもよい。例えば、モデル構築部30は、スランプ、スランプフロー、及び空気量のうちの2種以上の品質それぞれの予測値を出力する予測モデルM(1つの予測モデルM)を構築する。モデル構築部30は、スランプ、スランプフロー、及び空気量のうちの1種以上の品質に加えて、スランプに対するスランプフローの比を出力する予測モデルM(1つの予測モデルM)を構築してもよい。
【0070】
以下、予測モデルMの一例について、理解を容易にするために簡素化された数式を用いて説明する。モデル構築部30によって構築される予測モデルMは、例えば、次の式(1)及び式(2)のように簡易的に表すことができる。
【数1】
【数2】
【0071】
式(2)において、Yは品質の出力値を表し、シングルタスク学習により構築された予測モデルMでは、単一の品質の出力値である。マルチタスク学習により構築された予測モデルMでは、Yは、2種類以上の品質のいずれか1つの品質の出力値であり、品質の種類ごとに、式(1)及び式(2)が演算される。Nは、2以上の整数であり、入力データの個数を表す。xは入力データに含まれる各種の入力値を表し、入力データは上記入力情報に対応しており、入力データには、少なくとも、第1情報に含まれる電力負荷値に係る値(例えば、2以上の統計量)、及び、第2情報に含まれるミキサ114による製造時期(例えば、日付及び時刻)を示す値が含まれる。
【0072】
wiは、重み(係数)であり、bは、バイアス項(係数)である。f(U)は、活性化関数を表す。活性化関数は、線形関数(恒等関数)、又は、多項式、絶対値、step関数、sigmoid関数、hardsigmoid関数、logsigmoid関数、softmax関数、logsoftmax関数、softmin関数、softplus関数、softsign関数、tanh関数、tanhShrink関数、hardtanh関数、tanhexp関数、ReLU関数、ReLU6関数、Leaky-ReLU関数、PReLU関数、ELU関数、SELU関数、CELU関数、Swith関数、Mish関数、ACON関数、などの非線形関数である。
【0073】
モデル構築部30は、学習用のデータを用いて、式(2)によって得られるY(予測値)と、品質の正解値との誤差(損失)を評価することを繰り返して、誤差が最小化されるように、式(1)における重みwiとバイアス項bとを定めてもよい。モデル構築部30は、式(2)によって得られるY(予測モデルMを構築する途中段階での中間モデルからの出力値)と品質の正解値との誤差を評価する関数として、いずれの種類の損失関数を用いてもよい。損失関数の役割を説明すると、予測値及び正解値を損失関数に入力し、予測値と正解値との誤差aから損失値L(a)を出力することにある。そして、損失値L(a)を用いて重みwiを計算する。モデル構築部30は、例えば、損失関数として、Huber損失関数(HuberLoss)、平均絶対誤差(MAE:Mean AbsoluteError)、及び、ε-許容損失関数(ε-insensitiveloss)から成る群から選択された1つを利用する。なお、予測精度を向上させる観点から、損失関数として、損失値L(a)が常に誤差aの絶対値以下になる関数を用いることが好ましい。損失値L(a)が常に誤差aの絶対値以下になる関数として、平均絶対誤差、又はε-許容損失関数が用いられてもよく、あるいは、下記式(3)で示されるHuber損失関数のδを1.0以下とすることで、損失値L(a)が常に誤差aの絶対値以下になる関数として用いることも可能である。
【数3】
【0074】
モデル構築部30は、損失関数で評価される誤差が最小となるように、勾配法により重みwiを更新することを繰り返してもよい。モデル構築部30は、重みwiを更新する際に、いずれの種類の更新式(重みの更新式)を利用してもよい。モデル構築部30は、例えば、重みの更新式として、Adam、AdamBelief、Adamax、AdaBound、Adagrad、AMSGRAD、AMSBound、RMSprop、SgdW、Momentum、及び、Nesterovから成る群から選択された1つを利用する。重みの更新式は、最適化アルゴリズム、又は最適化手法とも称される。
【0075】
モデル構築部30は、入力情報を正規化する演算と、全結合層における一部の結合を欠損させる演算とを行わないニューラルネットワークを用いた機械学習により予測モデルMを構築してもよい。入力情報を正規化する演算とは、予測モデルMの入力となる入力情報に含まれる各値を、平均が0となり、標準偏差が1となるように正規化(標準化)する演算(Batch Normalization)を意味する。
【0076】
全結合層における一部の結合を欠損させる演算とは、ニューラルネットワークを用いた機械学習を実行する際に、任意の割合のノードを不活性化させながら学習を行うこと(Dropout)を意味する。全結合層における一部の結合を欠損させた場合(Dropoutを行う場合)の予測モデルMの演算過程の様子が、
図7(c)に模式的に示されている。なお、モデル構築部30は、入力情報を正規化する演算と、全結合層における一部の結合を欠損させる演算との少なくとも一方を行うニューラルネットワークを用いた機械学習により予測モデルMを構築してもよい。
【0077】
図6(a)に戻り、ステップS12の実行後に、ステップS13が実行される。ステップS13では、例えば、モデル保持部32が、ステップS12で構築された予測モデルMを記憶する。以上により、モデル構築工程が終了する。
【0078】
(品質評価工程)
図6(b)は、品質評価工程において実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。この品質評価工程は、例えば、製造装置100による上記製造工程が実行されている期間の少なくとも一部と重複する期間において行われる。
【0079】
品質評価工程では、最初に、制御装置10がステップS21を実行する。ステップS21では、例えば、制御装置10が、評価対象の生コンクリートの品質を評価するタイミングである評価タイミングとなるまで待機する。評価対象の生コンクリートは、製造装置100による製造対象の生コンクリートでもある。上記評価タイミングは、1日のうちのある時間帯に予め定められていてもよく、1日のうちのある何番目かのバッチ処理を実行するタイミングに予め定められていてもよい。上記評価タイミングは、作業員等のオペレータから、評価を実行する指示を受けたタイミングであってもよい。
【0080】
次に、制御装置10は、ステップS22を実行する。ステップS22では、例えば、動作情報取得部24及び時期情報取得部26が、評価対象の生コンクリートを製造した際の上記第1情報(電力負荷値に係る情報)及び上記第2情報(製造時期に係る情報)を含む入力情報を取得する。時期情報取得部26が、第2情報として日付及び時刻を表す情報を通常の表現形式で取得する場合において、時期情報取得部26は、上述したように三角関数で表現する形式に換算してもよい。ステップS22で取得される入力情報は、品質情報(例えば、スランプ)が未知である評価用の入力情報である。
【0081】
次に、制御装置10は、ステップS23を実行する。ステップS23では、例えば、予測演算部28が、ステップS22で取得された入力情報と、モデル保持部32に保持されている予測モデルMとに基づいて、評価対象の生コンクリートの品質情報を予測する。一例では、予測演算部28は、ステップS22で取得された入力情報を予測モデルMに入力して、予測モデルMから出力される、スランプ、スランプフロー、及び空気量のうちの1種以上の品質の予測値を取得する。
【0082】
次に、制御装置10は、ステップS24を実行する。ステップS24では、例えば、表示出力部34が、ステップS23で取得された品質の予測値をモニタ14に表示させる。これにより、作業員等のオペレータが、品質の予測値を確認することができる。
【0083】
以上により、品質評価工程が終了する。制御装置10は、1バッチ分の生コンクリートの製造が行われる度に(1回のバッチ処理ごとに)、ステップS21~S24の一連の処理を実行してもよい。制御装置10は、複数バッチ分の生コンクリートの製造が行われる度に(複数回のバッチ処理ごとに)、ステップS21~S24の一連の処理を実行してもよい。
【0084】
[変形例]
図6(a)及び
図6(b)に示される一連の処理は、一例であり適宜変更可能である。上記一連の処理において、1つのステップと次のステップとが並列に実行されてもよく、上述した例とは異なる順序で、いくつかのステップが実行されてもよい。上記一連の処理の少なくとも一部のステップに代えて、又は、上記一連の処理に加えて、上述した例とは異なる内容のステップが実行されてもよい。
【0085】
上記第1情報には、電力負荷値に係る時系列データにおける初期値、最小値、最大値、及び終局値のうちの少なくとも1つの値が含まれてもよい。制御装置10(入力情報取得部)によって取得され、予測モデルMの入力となる入力情報に、ミキサ114による練混ぜに係る情報(電力負荷値以外の情報)が含まれてもよい。練混ぜに係る情報として、例えば、1バッチ分のコンクリートの練混ぜ量、練混ぜ時間、電力負荷値が最大値に到達した時間、及び、電力負荷値が最大値に到達してから、ミキサ114から生コンクリートが排出されるまでの時間が挙げられる。予測モデルMの入力となる入力情報に、呼び強度、セメントの種類を示す情報、混和剤の種類を示す情報、細骨材の種類を示す情報、粗骨材の種類を示す情報、及び、添加剤の添加量を示す情報が含まれてもよい。予測モデルMの入力となる入力情報に、ミキサ114で製造中又は製造直後の生コンクリートの画像、又は、ミキサ114から排出された後の生コンクリートの画像に係る情報が含まれてもよい。予測モデルMの入力となる入力情報に、生コンクリートの使用時における目標品質、及び、生コンクリートの出荷時における目標品質の少なくとも一方が含まれてもよい。予測モデルMの入力となる入力情報は、少なくとも、ミキサの電力負荷値に係る情報とミキサによる生コンクリートの製造時期に係る情報とを含んでいればよく、以上に例示した種々の情報に代えて又は加えて、他の種類の情報を含んでいてもよい。
【0086】
ミキサ114が生コンクリートを製造した時期に関する第2情報は、任意に設定された基準時点からミキサ114が練混ぜを実行した時点までの時間を表す情報を含んでもよい。基準時点は、作業員等のオペレータによって設定されてもよい。基準時点は、例えば、製造装置100のメンテナンスにおいてミキサ114内の洗浄が行われた後、且つ、ミキサ114による製造が再開される前の時点に設定されてもよい。基準時点と、ミキサ114が練混ぜ(生コンクリートの製造)を実行した時点との間の時間は、分単位で表されてもよく、秒単位で表されてもよい。
【0087】
ミキサ114が練混ぜ(生コンクリートの製造)を実行した時点は、ミキサ114に対してコンクリート材料が供給された時点であってもよく、ミキサ114から製造後の生コンクリートが排出された時点であってもよい。ミキサ114が練混ぜ(生コンクリートの製造)を実行した時点は、ミキサ114において攪拌部材114aの駆動を開始させた時点であってもよく、ミキサ114において攪拌部材114aの駆動を終了させた時点であってもよい。時期情報取得部26(制御装置10自身)が、基準時点からミキサ114が練混ぜを実行した時点までの時間を表す情報を計測してもよい。
【0088】
ミキサ114が生コンクリートを製造した時期に関する第2情報は、基準時点からミキサ114が練混ぜを実行した時点までの時間を表す情報に代えて、基準時点からの累計バッチ数を表す情報を含んでもよい。基準時点からの累計バッチ数は、基準時点から何番目に実行されるバッチ処理であるか(基準時点から何番目のバッチ処理で製造された生コンクリートであるか)を特定する情報である。基準時点からの累計バッチ数では、基準時点において、累計バッチ数が0にリセットされる。
【0089】
制御装置10による生コンクリートの品質の予測に加えて、製造装置100において、定期的に(例えば、1日に数回)、生コンクリートの品質が実測されてもよい。この場合、生コンクリートの品質の実測値と、その実測値が得られた際の入力情報(例えば、電力負荷値に係る情報)とに基づいて、予測モデルMが更新されてもよい。上記予測工程においては、更新後の予測モデルMによって、生コンクリートの品質が予測されてもよい。なお、更新後の予測モデルMが使用される場合であっても、予測モデルMと、上記取得工程において取得された入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質が予測される工程が行われることに変わりがない。
【0090】
製造システム1は、制御装置10とは別に、機能ブロックとして、少なくとも、動作情報取得部24、時期情報取得部26、予測演算部28、及びモデル保持部32を有する品質予測装置(生コンクリートの品質予測装置)を備えてもよい。その品質予測装置を構成するコンピュータは、制御装置10と通信可能に接続されてもよい。以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例で説明した事項の少なくとも一部が組み合わせられてもよい。
【0091】
[予測モデルによる予測結果の検証]
続いて、正解値が既知であるデータセットを用いて、上記第1情報及び上記第2情報を含む入力情報を入力とする予測モデルMを用いた品質情報の予測結果を検証した結果について説明する。
【0092】
(製造時期に係る情報の影響)
ミキサ114による生コンクリートの製造時期に係る情報である第2情報の影響を検証した。この検証では、機械学習を行って予測モデルを構築するための2765個の学習用データセットを準備し、正解値が既知であり、評価するための789個の評価用データセットを準備した。学習用データセット及び評価用データセットでは、入力情報に含まれる各種入力値と、品質情報の正解値とが対応付けられている。学習用データセット及び評価用データセットにおける入力情報の第1情報として、電力負荷値に係る時系列データから得られた統計量が用いられている。
【0093】
学習用データセット及び評価用データセットにおける入力情報の第2情報として、製造年、製造月、製造日、時間、分、秒、及び1日あたりの累計バッチ数を表す情報が用いられている。製造月、製造日、時間、分、及び秒を示す情報については、上述したような三角関数を用いた表現形式に修正した。2765個の学習用データセットを用いて、第1情報及び第2情報を含む入力情報を入力とする予測モデルMを構築した。スランプ、スランプフロー、及び空気量を出力するようにマルチタスク学習により予測モデルMを構築した。
【0094】
第2情報による予測精度への影響を検証するために、入力情報から第2情報を除いたうえで、同じ2765個の学習用データセットを用いて、比較用モデルを構築した。スランプ、スランプフロー、及び空気量のそれぞれについて、第2情報による予測精度への影響を評価した。789個の評価用データセットを用いて、予測モデルM及び比較用モデルのそれぞれについて、モデルによる予測結果と、評価用データセットにおける正解値とを比較した。モデルによる予測結果が、評価用データセットにおける正解値に所定の許容差を加算した範囲に含まれる場合を正解と定義し、正解率を評価指標として用いた。
図8には、第2情報の影響を検証した結果を表すグラフが示されている。
【0095】
図8におけるスランプでの検証結果に関して、許容差が「±0.5cm」である場合には、モデルによる予測結果(予測値)が正解値の±0.5cmの範囲に含まれるデータセットを正解とし、正解と判定されたデータセットの割合が正解率(%)として示されている。許容差が、「±1.0cm」、「±1.5cm」、「±2.0cm」、及び「±2.5cm」である場合も同様に正解率(%)が算出されている。「有」は、第2情報(製造時期に係る情報)を入力情報に含む予測モデルMによる評価結果を示し、「無」は、第2情報を入力情報に含まない比較用モデルによる評価結果を示す。
【0096】
図8におけるスランプフローの検証結果に関して、スランプでの検証と同様に、許容差を「±2.5cm」、「±3.0cm」、「±5.0cm」、及び「±7.5cm」に変化させて、許容差ごとに、正解率(%)を求めた結果が示されている。
図8における空気量の検証結果に関して、スランプでの検証と同様に、許容差を「±0.3%」、「±0.5%」、「±1.0%」、及び「±1.5%」に変化させて、許容差ごとに、正解率(%)を求めた結果が示されている。
図8に示される検証結果の全体を観察すると、予測モデルM(第2情報)を用いて品質を予測した場合の正解率(%)が、比較用モデルを用いて品質を予測した場合に比べて、高くなる傾向があることが分かる。なお、電力負荷値に係る時系列データの移動平均値から得られた統計量を使用した検証を行った場合でも、同様の検証結果が得られている。
【0097】
(電力負荷値の推移)
図9には、生コンクリートの製造が実際に行われた際の電力負荷値の計測結果の推移がグラフとして示されている。電力負荷値として、電力負荷値に係る時系列データにおける初期値が計測されている。9時頃から11時30分頃まで、同じ動作条件(製造条件)に従ってバッチ処理が連続して行われており、12時頃から14時30分頃まで、同じ動作条件(製造条件)に従ってバッチ処理が連続して行われている。
図9に示される時刻t1において、ミキサ114内の洗浄が行われている。時刻t1よりも前の前段での動作条件(製造条件)と、時刻t1よりも後の後段での動作条件(製造条件)とは、互いに同じである。
図9においては、連続して実行される複数回のバッチ処理から抜き取りでスランプを計測した結果もプロットされている。
【0098】
図9に示されるグラフから、連続した複数回のバッチ処理において、バッチ処理の回数が進むにつれて、同じ動作条件であっても、電力負荷値の初期値が徐々に低下していることが分かる。時刻t1よりも前の前段での複数回のバッチ処理と、時刻t1よりも後の後段での複数回のバッチ処理との間で、最初の方での(累計バッチ数が小さい段階での)電力負荷値が同程度であることが分かる。
図9に示されるグラフから、ミキサ114による生コンクリートの製造時期によっても電力負荷値が変動するので、製造時期に係る情報と電力負荷値に係る情報との両方を予測モデルの入力とするように機械学習を行うことが有用であることが分かる。
【0099】
[本開示のまとめ]
以上に説明した生コンクリートの品質予測方法は、コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサ(114)の電力負荷値に係る第1情報、及び、ミキサ(114)による生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する取得工程と、入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデル(M)と、上記取得工程において取得された入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測工程と、を含む。
【0100】
電力負荷値の大きさから、生コンクリートの硬さ等を表す品質を予測する検討が従来から行われている。しかしながら、本発明者らの検討結果、たとえ動作条件(製造条件)が同じであっても、ミキサ(114)により生コンクリートを製造した時期によって、電力負荷値そのものが変動し得るという知見が得られた。上記品質予測方法では、機械学習により構築される予測モデル(M)の入力情報の1つとして、ミキサ(114)による生コンクリートの製造時期に係る情報が用いられる。そのため、機械学習を実行する際に、電力負荷値だけでなく、製造時期も加味して、正解値が得られるように予測モデル(M)が構築される。従って、上記品質予測方法は、予測モデルにより品質を予測する際の予測精度の向上に有用である。
【0101】
以上に説明した生コンクリートの品質予測方法において、上記第2情報は、ミキサ(114)が練混ぜを実行する際の日付及び時刻を表す情報を含んでもよい。ミキサ(114)が練混ぜを実行する際の日付及び時刻によって、電力負荷値が変動し得る。そのため、上記方法では、上記日付及び時刻による電力負荷値の変動を加味したうえで、品質を予測するための予測モデル(M)を構築できる。従って、品質を予測するための学習済みモデルによる予測の精度を向上させることができる。
【0102】
以上に説明した生コンクリートの品質予測方法において、上記第2情報において、日付及び時刻のそれぞれは、三角関数を用いて特定されてもよい。この場合、日付及び時刻のそれぞれを、周期性を有するように表現することができる。従って、周期的に繰り返される日付及び時刻を実際に近い形式で表して、機械学習を行うことができる。
【0103】
以上に説明した生コンクリートの品質予測方法において、上記第2情報は、ミキサ(114)による練混ぜの1日のうちの累計バッチ数を表す情報を更に含んでもよい。1日のうちの累計バッチ数は、ミキサ(114)による練混ぜ(上述したバッチ処理)が、1日のうちの何番目に実行されるかを表す。そのような累計バッチ数によっても、電力負荷値が変動し得る。そのため、上記方法では、1日のうちの累計バッチ数による電力負荷値の変動を加味したうえで、品質を予測するための予測モデル(M)を構築できる。従って、品質を予測するための学習済みモデルによる予測の精度を更に向上させることができる。
【0104】
以上に説明した生コンクリートの品質予測方法において、上記第2情報は、任意に設定された基準時点からミキサ(114)が練混ぜを実行した時点までの時間を表す情報、又は、上記基準時点からのミキサ(114)による練混ぜの累計バッチ数を表す情報を含んでもよい。ある基準時点からミキサ(114)が練混ぜを実行した時点までの時間によって、電力負荷値が変動し得る。また、ある基準時点からのミキサ(114)による練混ぜの累計バッチ数によっても、電力負荷値が変動し得る。そのため、上記方法では、ある基準時点から練混ぜの実行時点までの時間、又は、ある基準時点からの累計バッチ数による電力負荷値の変動を加味したうえで、品質を予測するための予測モデル(M)を構築できる。従って、品質を予測するための学習済みモデルによる予測の精度を向上させることができる。
【0105】
以上に説明した生コンクリートの品質予測方法において、上記第1情報は、ミキサ(114)が1回の練混ぜを実行する際の電力負荷値の時系列データから得られる統計量を含んでもよい。上記統計量は、最大値と最小値との差分を表す変動範囲、最大値と終局値との差分を表す下降幅、任意に設定された時間内の合計値、平均値、標準偏差、変動係数、中央値、第一四分位点、第三四分位点、尖度、及び歪度から成る群から選択される少なくとも1種以上の値であってもよい。この場合、電力負荷値に係る統計量を用いることで、電力負荷値の時系列データにおける各値に含まれ得る外乱の影響を低減できる。従って、予測精度の向上に更に有用である。
【0106】
以上に説明した品質予測プログラムは、上述した生コンクリートの品質予測方法をコンピュータに実行させるプログラムである。この品質予測プログラムにより、上述した品質予測方法が実行されるので、予測モデルにより品質を予測する際の予測精度の向上に有用である。
【0107】
以上に説明した生コンクリートの品質予測装置(10)は、コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサ(114)の電力負荷値に係る第1情報、及び、ミキサ(114)による生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する入力情報取得部(24,26)と、入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデル(M)と、入力情報取得部(24,26)により取得された入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測演算部(28)と、を備える。この品質予測装置(10)は、上述した品質予測方法と同様に、予測モデルにより品質を予測する際の予測精度の向上に有用である。
【符号の説明】
【0108】
1…製造システム、10…制御装置、24…動作情報取得部、26…時期情報取得部、28…予測演算部、30…モデル構築部、M…予測モデル、100…製造装置、114…ミキサ、114a…攪拌部材、114b…ミキサ駆動部。
【要約】
【課題】予測モデルにより品質を予測する際の予測精度を向上させる。
【解決手段】コンクリート材料を練り混ぜて生コンクリートを製造するミキサの電力負荷値に係る第1情報、及び、前記ミキサによる生コンクリートの製造時期に係る第2情報を含む入力情報を取得する取得工程と、前記入力情報の入力に応じて生コンクリートの品質を示す品質情報を出力するように機械学習により予め構築された予測モデルと、前記取得工程において取得された前記入力情報とに基づいて、生コンクリートの品質を予測する予測工程と、を含む、生コンクリートの品質予測方法。
【選択図】
図6