(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】クランプ補償のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20241210BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20241210BHJP
H10N 30/857 20230101ALI20241210BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20241210BHJP
H10N 30/80 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
H01J37/20
H10N30/20
H10N30/857
H10N30/853
H10N30/80
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020189254
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-08-02
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン ロベルト マリア ヴェルシューレン
(72)【発明者】
【氏名】ポール タックス
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-024919(JP,A)
【文献】特開平04-221792(JP,A)
【文献】特開2005-185094(JP,A)
【文献】欧州特許第02973981(EP,B1)
【文献】Dongwoo Kang et al.,Development of compact high precision linear piezoelectric stepping positioner with nanometer accuracy and large travel range,Review of Scientific Instruments,2007年,Vol. 78,p.075112-1 - 075112-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ要素が移動体要素に向かって第1の方向に移動するように、クランプ要素駆動信号を駆動ユニットクランプ要素に印加することと、
前記駆動ユニットクランプ要素と前記移動体要素との間の不整合を少なくとも部分的に補償するために剪断要素が第2の方向に移動するように、剪断要素駆動信号を駆動ユニット剪断要素に印加すること
であって、前記不整合は、前記駆動ユニットクランプ要素が前記移動体要素に対して傾いた状態で配置されている状態である、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記剪断要素駆動信号は、前記駆動ユニットクランプ要素が前記移動体要素に接触する角度に起因する前記移動体要素の動きを少なくとも部分的に補償する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記剪断要素駆動信号は、前記駆動ユニットクランプ要素と前記移動体要素との接触によって引き起こされる前記移動体要素の変位に少なくとも部分的に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記駆動ユニットクランプ要素および前記駆動ユニット剪断要素が、圧電要素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記剪断要素駆動信号を印加することが、初期剪断要素駆動信号および補償信号を印加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも部分的に、
前記駆動ユニットクランプ要素との接触に応答した前記移動体要素の第1の変位を決定することと、
前記移動体要素の前記第1の変位と前記駆動ユニット剪断要素の逆剪断定数との積に少なくとも部分的に基づいて、第1の補償信号を決定すること、によって修正された剪断要素駆動信号を決定すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記修正された剪断要素駆動信号を決定することが、
前記第1の補償信号の印加に応答して、前記移動体要素の第2の変位を決定することと、
前記移動体要素の前記第2の変位に少なくとも部分的に基づいて、第2の補償信号を決定することと、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の補償信号を初期剪断要素駆動信号と組み合わせて、前記修正された剪断要素駆動信号を取得することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記剪断要素駆動信号が、前記駆動ユニットクランプ要素との接触によって引き起こされる前記移動体要素の移動方向とは反対の方向に前記駆動ユニット剪断要素を移動させることによって、前記駆動ユニットクランプ要素の
前記不整合を少なくとも部分的に補償する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
クランプ要素駆動信号を駆動ユニットクランプ要素に印加して、移動体要素を係合することと、
前記移動体要素の第1の変位を決定することと、
前記第1の変位に少なくとも部分的に基づいて、
前記駆動ユニットクランプ要素と前記移動体要素との間の不整合を少なくとも部分的に補償するために、1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加される第1の補償信号を決定することと、
前記第1の補償信号を前記1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加し、前記クランプ要素駆動信号を前記駆動ユニットクランプ要素に印加することと、
前記第1の補償信号および前記クランプ要素駆動信号に応答して、前記移動体要素の第2の変位を決定することと、
前記第2の変位を事前選択された閾値と比較することと、
前記事前選択された閾値よりも小さい第2の変位について、前記第1の補償信号を初期剪断要素駆動信号と組み合わせて、修正された剪断要素駆動信号を生成することと、
前記事前選択された閾値より大きい第2の変位について、
前記駆動ユニットクランプ要素と前記移動体要素との間の不整合を少なくとも部分的に補償するために、前記1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加される第2の補償信号を決定することと、を含
み、
前記不整合は、前記駆動ユニットクランプ要素が前記移動体要素に対して傾いた状態で配置されている状態である、方法。
【請求項11】
前記修正された剪断要素駆動信号を前記1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加しながら、前記クランプ要素駆動信号を前記駆動ユニットクランプ要素に印加すること、をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記
第1の補償信号を決定することおよび/または前記第2の補償信号を決定することが、前記移動体要素の前記変位に前記1つ以上の剪断要素の逆剪断定数を乗算すること、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の補償信号および前記第2の補償信号を前記1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加し、前記クランプ要素駆動信号を前記駆動ユニットクランプ要素に印加することと、
前記移動体要素の第3の変位を決定することと、
前記第3の変位を前記事前選択された閾値と比較することと、
前記事前選択された閾値よりも小さい第3の変位について、前記第2の補償信号を初期剪断要素駆動信号と組み合わせて、修正された剪断要素駆動信号を生成することと、
前記事前選択された閾値よりも大きい第3の変位について、前記1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加される第3の補償信号を決定することと、をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の補償信号を決定することが、前記移動体要素の前記第2の変位に前記1つ以上の剪断要素の逆剪断定数を乗算することと、前記第1の補償信号から結果を減算することと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記移動体要素の前記変位を決定することが、位置エンコーダを用いて前記移動体要素の前記変位を測定すること、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記移動体要素の前記変位が、少なくとも部分的に前記駆動ユニットクランプ要素と前記移動体要素との間の
前記不整合によって引き起こされる、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
位置決めシステムであって、
修正された剪断要素駆動信号を生成するように構成された剪断信号発生器を含む制御ユニットであって、前記修正された剪断要素駆動信号が、初期剪断要素駆動信号および補償信号を含む、制御ユニット
と、
クランプ要素および1つ以上の剪断要素を含む駆動ユニットと、
ワークピースを保持するためのキャリアに結合され、前記駆動ユニットと係合し、前記駆動ユニットに対して移動可能である、移動体要素と、を備え
、
前記補償信号は、前記駆動ユニットと前記移動体要素との間の不整合を少なくとも部分的に補償するためのものであり、前記不整合は前記駆動ユニットが前記移動体要素に対して傾いた状態で配置されている状態である、位置決めシステム。
【請求項18】
前記制御ユニットが、クランプ要素駆動信号を生成するように構成されたクランプ信号発生器をさらに備える、請求項17に記載の位置決めシステム。
【請求項19】
前記制御ユニットが、前記移動体要素の変位に少なくとも部分的に基づいて
前記補償信号を生成するように構成されたプロセッサをさらに備える、請求項
17に記載の位置決めシステム。
【請求項20】
走査型透過電子顕微鏡(STEM)と、
前記STEMで画像化するためにワークピースを選択的に位置決めするように配置された、請求項
17に記載の位置決めシステムと、を備える、電子顕微鏡法のためのシステム。
【請求項21】
前記STEMが、前記ワークピースが前記位置決めシステムによって移動されている間に前記ワークピースを画像化するように構成されている、請求項
20に記載のシステム。
【請求項22】
前記制御ユニットが、複数の事前計算された
前記補償信号を含むルックアップテーブル(LUT)をさらに備える、請求項17に記載の位置決めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電要素などのクランプ要素を備える位置決めシステムを操作するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高解像度画像化および/またはデバイス処理は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、イオンカラム、レーザー、および/または他のビーム生成機器などの1つ以上の機器を使用して達成することができる。このような機器では、画像を撮像するか、または所望の領域を処理するために、ワークピースを正確に位置決めする必要があり得る。一般に、位置決めシステムは、ワークピース(または画像化される標本)を取り付けることができるキャリア要素、およびキャリア要素を移動させるように配設されたモータなどのアクチュエータのセットとを含む。
【0003】
いくつかの既存の位置決めシステムは、圧電モータまたはアクチュエータ、例えばウォーキングピエゾアクチュエータを使用して作動する。ただし、ピエゾアクチュエータのストロークは制限されている場合があり、途切れた動作をもたらす可能性がある。高品質の画像および正確な処理を実現するために、ワークピースの乱れを最小限に抑える必要がある。いかしながら、既存の位置決めシステムは、正確な位置決めを妨げる可能性のある位置および速度の重大な障害に悩まされている。したがって、ワークピースを位置決めするための改善されたシステムが必要である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載されているのは、位置決めシステム用の駆動ユニットの実施形態、およびそのようなデバイスの動きを改善するためのシステムおよび方法である。代表的な実施形態では、本方法は、クランプ要素が移動体要素に向かって第1の方向に移動するように、クランプ要素駆動信号を駆動ユニットクランプ要素に印加することと、剪断要素が第2の方向に移動して、駆動ユニットクランプ要素と移動体要素との間の不整合を少なくとも部分的に補償するように、剪断要素駆動信号を駆動ユニット剪断要素に印加することと、を含むことができる。
【0005】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、剪断要素駆動信号は、駆動ユニットクランプ要素が移動体要素に接触する角度に起因する移動体要素の動きを少なくとも部分的に補償することができる。
【0006】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、剪断要素駆動信号は、駆動ユニットクランプ要素と移動体要素との接触によって引き起こされる移動体要素の変位に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0007】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、駆動ユニットクランプ要素および駆動ユニット剪断要素は、圧電要素であり得る。
【0008】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、剪断要素駆動信号を印加することは、初期剪断要素駆動信号および補償信号を印加することを含むことができる。
【0009】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、本方法は、少なくとも部分的に、駆動ユニットクランプ要素との接触に応答した移動体要素の第1の変位を決定することと、移動体要素の第1の変位と駆動ユニット剪断要素の逆剪断定数との積に少なくとも部分的に基づいて、第1の補償信号を決定することと、によって修正された剪断要素駆動信号を決定すること、をさらに含むことができる。
【0010】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、修正された剪断要素駆動信号を決定することは、第1の補償信号の印加に応答して、移動体要素の第2の変位を決定することと、移動体要素の第2の変位に少なくとも部分的に基づいて、第2の補償信号を決定することと、をさらに含むことができる。
【0011】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、本方法は、第2の補償信号を初期剪断要素駆動信号と組み合わせて、修正された剪断要素駆動信号を取得すること、をさらに含むことができる。
【0012】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、剪断要素駆動信号は、移動体駆動ユニットクランプ要素との接触によって引き起こされる移動体要素の移動方向とは反対の方向に駆動ユニット剪断要素を移動させることによって、駆動ユニットクランプ要素の不整合を少なくとも部分的に補償することができる。
【0013】
別の代表的な実施形態では、本方法は、クランプ要素駆動信号を駆動ユニットクランプ要素に印加して、移動体要素を係合することと、移動体要素の第1の変位を決定することと、第1の変位に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加される第1の補償信号を決定することと、を含むことができる。本方法は、第1の補償信号を1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加し、クランプ要素駆動信号を駆動ユニットクランプ要素に印加することと、第1の補償信号およびクランプ要素駆動信号に応答して、移動体要素の第2の変位を決定することと、第2の変位を事前選択された閾値と比較することと、をさらに含むことができる。事前選択された閾値よりも小さい第2の変位について、本方法は、第1の補償信号を初期の剪断要素駆動信号と組み合わせて修正された剪断要素駆動信号を生成することと、事前選択された閾値よりも大きい第2の変位について、1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加される第2の補償信号を決定することと、を含むことができる。
【0014】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、本方法は、修正された剪断要素駆動信号を1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加しながら、クランプ要素駆動信号を駆動ユニットクランプ要素に印加すること、をさらに含むことができる。
【0015】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、補償信号を決定することは、移動体要素の変位に1つ以上の剪断要素の逆剪断定数を乗算すること、を含むことができる。
【0016】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、本方法は、第1の補償信号および第2の補償信号を1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加し、クランプ要素駆動信号を駆動ユニットクランプ要素に印加することと、移動体要素の第3の変位を決定することと、第3の変位を事前選択された閾値と比較することと、をさらに含むことができる。事前選択された閾値よりも小さい第3の変位について、本方法は、第2の補償信号を初期の剪断要素駆動信号と組み合わせて修正された剪断要素の駆動信号を生成することと、事前選択された閾値よりも大きい第3の変位について、1つ以上の駆動ユニット剪断要素に印加される第3の補償信号を決定することと、を含むことができる。
【0017】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、補償信号は第1の補償信号であり、第2の補償信号を決定することは、移動体要素の前記第2の変位に1つ以上の剪断要素の逆剪断定数を乗算することと、第1の補償信号から結果を減算することと、を含むことができる。
【0018】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、移動体要素の変位を決定することは、位置エンコーダを用いて移動体要素の変位を測定すること、を含む。
【0019】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、移動体要素の変位は、駆動ユニットクランプ要素と移動体要素との間の不整合によって少なくとも部分的に引き起こされる。
【0020】
代表的な実施形態では、位置決めシステムは、修正された剪断要素駆動信号を生成するように構成された剪断信号発生器を含む制御ユニットであって、修正された剪断要素駆動信号が、初期剪断要素駆動信号および補償信号を含む、制御ユニット、を備えることができる。
【0021】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、制御ユニットは、クランプ要素駆動信号を生成するように構成されたクランプ信号発生器をさらに備える。
【0022】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、位置決めユニットは、クランプ要素および1つ以上の剪断要素を含む駆動ユニットと、ワークピースを保持するためのキャリアに結合され、駆動ユニットと係合し、駆動ユニットに対して移動可能である、移動体要素と、をさらに備える。
【0023】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、制御ユニットは、移動体要素の変位に少なくとも部分的に基づいて補償信号を生成するように構成されたプロセッサをさらに備える。
【0024】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてに記載されている位置決めシステムは、電子顕微鏡法のためのシステムに含めることができる。このシステムは、走査型透過電子顕微鏡(STEM)と、STEMで画像化するためにワークピースを選択的に位置決めするように配置することができる位置決めシステムと、を備えることができる。
【0025】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、STEMは、ワークピースが位置決めシステムによって移動されている間にワークピースを画像化するように構成することができる。
【0026】
開示された実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、制御ユニットは、複数の事前計算された補償信号を含むルックアップテーブル(LUT)をさらに備えることができる。
【0027】
本開示の前述および他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明、添付図面を参照してより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】マルチビームシステムの代表的な実施形態を示す。
【
図2A】電子顕微鏡システムの側面に取り付けられた位置決めシステムの代表的な実施形態の概略断面側面図を示す。
【
図2B】ワークピースがz軸に沿って変位した
図2Aのシステムを示す。
【
図3】一実施形態による位置エンコーダの概略図を示す。
【
図4A】一実施形態による、移動体要素と係合する駆動ユニットの正面図を示す概略図である。
【
図5A】縦ピエゾ要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【
図5B】縦ピエゾ要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【
図6A】剪断ピエゾ要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【
図6B】剪断ピエゾ要素の代表的な実施形態の斜視図である。
【
図7A】移動体要素と係合する駆動ユニットの一実施形態の例示的な駆動サイクルを示す。
【
図7B】移動体要素と係合する駆動ユニットの一実施形態の例示的な駆動サイクルを示す。
【
図7C】移動体要素と係合する駆動ユニットの一実施形態の例示的な駆動サイクルを示す。
【
図7D】移動体要素と係合する駆動ユニットの一実施形態の例示的な駆動サイクルを示す。
【
図8A】
図7A~7Dの駆動ユニットのクランプ要素の代表的な駆動信号のグラフである。
【
図8B】
図7A~7Dの駆動ユニットの剪断要素の代表的な駆動信号のグラフである。
【
図9】クランプ要素のクランプ表面が移動体要素の表面と平行である、移動体要素と係合する駆動ユニットの代表的な実施形態の側立面図を示す。
【
図10】クランプ要素の表面が移動体要素の表面に対して傾斜している、移動体要素と係合する駆動ユニットの実施形態の側面図である。
【
図11】開ループ制御システムの代表的な実施形態の概略ブロック図である。
【
図12A】1Hzの駆動周波数でのクランプ要素の経時的な位置のグラフである。
【
図12B】1Hzの駆動周波数でのクランプ要素の経時的な速度のグラフである。
【
図13A】駆動ユニットの1つ以上のクランプ要素の代表的な信号のグラフである。
【
図13B】クランプ測定の時間の関数としての速度の代表的なグラフである。
【
図13C】開ループ制御による時間の関数としての速度の代表的なグラフである。
【
図14】クランプ速度信号で補正された1Hzおよび-1Hzの駆動信号の速度信号の代表的なグラフである。
【
図15A】駆動ユニットの1つ以上のクランプ要素の代表的な駆動信号のグラフである。
【
図15B】駆動ユニットの1つ以上の剪断要素の代表的な補償された駆動信号のグラフである。
【
図16】クランプ要素の不整合を補償するために、反復学習制御スキームの連続実行によって駆動信号が修正されている、移動体要素の位置を転流角の関数として示すグラフである。
【
図17A】駆動ユニットの1つ以上のクランプ要素の代表的な駆動信号のグラフである。
【
図17B】駆動ユニットの1つ以上の剪断要素の代表的な補償された駆動信号のグラフである。
【
図18A】補償された駆動信号および補償されていない駆動信号の転流角の関数としての移動体要素の位置を示すグラフである。
【
図18B】補償された駆動信号および補償されていない駆動信号の転流角の関数としての移動体要素の速度を示すグラフである。
【
図19】代表的な閉ループ反復学習ベースの制御システムの概略ブロック図である。
【
図20】駆動ユニットを用いて移動体要素を位置決めする代表的な方法のプロセスフロー図である。
【
図21】駆動ユニットの補償信号を決定する代表的な方法のプロセスフロー図である。
【
図22】駆動ユニットの補償信号を決定する代表的な方法のプロセスフロー図である。
【
図23】開示された方法および装置を実施する際に使用するための代表的なコンピュータ制御システムを示す。
【
図24】開示された方法および装置を実施する際に使用するための代表的な制御システムを示す。
【
図25】開示された方法および装置を実施する際に使用するための代表的な制御システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
序論
本開示は、例えば、線形および/または湾曲したガイドまたは軸に沿って、ウェーハステージアセンブリなどのキャリア要素を移動させるためのシステムおよび方法に関する。本明細書に記載のシステムは、半導体ウェーハなどのワークピースを、システムの必要性に従って、ツールおよび/またはワークピースが様々な角度で位置決めされ得るプロセスチャンバ(例えば、真空チャンバ)内で、1つ以上のツール(例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、イオンカラム、レーザービームなど)に対して正確に位置決めすることを可能にし得る。以下のシステムおよび方法は、半導体処理アプリケーションを参照していくつかの例で説明されているが、本明細書で説明される位置システムおよび制御方法論は、生物学的サンプルの調整または分析などの正確な位置決めおよび/または画像化が使用される他の分野にも適用可能である。
【0030】
実施例1
図1を参照すると、代表的な実施形態では、マルチビームシステムは、一般に102で示される走査型電子顕微鏡(SEM)および一般に104で示されるイオンビームカラムを含むデュアルビームシステム100として構成することができる。SEM102は、集光レンズ116および対物レンズ106などの1つ以上の荷電粒子ビーム(CPB)レンズを備え得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のCPBレンズは、磁気レンズであり得、特に、対物レンズ106は、磁気対物レンズであり得る。イオンビームカラムは、集束イオンビーム(FIB)をワークピースWに提供するように配設され、SEM102は、ワークピースWの画像を生成するために配置されている。
【0031】
SEM102およびイオンビームカラム104は、ワークピースWを保持するための可動位置決めシステム110を収容する真空チャンバ108に取り付けることができる。真空チャンバ108は、真空ポンプ(図示せず)を使用して排気することができる。以下でさらに詳細に考察さるように、位置決めシステム110は、座標系150に関して示されるように、X軸、Y軸、および/またはZ軸に沿って移動可能であり、Y軸は、ページの平面に垂直である。
【0032】
いくつかの実施形態では、SEM102は、ワークピースWの上に垂直に配設することができ、ワークピースWを画像化するために使用することができ、イオンビームカラム104は、角度を付けて配設することができ、ワークピースWを機械加工し、かつ/または処理するために使用することができる。
図1は、SEM102およびイオンビームカラム104の例示的な配向を示している。
【0033】
SEM102は、電子源112を備えることができ、電子源112からの「生の」放射ビームを操作し、それに基づいて、集束、収差軽減、トリミング(開口を使用)、フィルタリングなどの操作を実行するように構成することができる。SEM102は、粒子光学軸115に沿って伝播する入力帯電粒子のビーム114(例えば、電子ビーム)を生成することができる。SEM102は、一般に、ビーム115をワークピースWに集束させるための集光レンズ116および対物レンズ106などの1つ以上のレンズ(例えば、CPBレンズ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、SEM102は、ビーム115を操縦するように構成することができる偏向ユニット118を備え得る。例えば、ビーム114は、調査されているサンプルまたは処理されるべきワークピースを横切って走査運動(例えば、ラスターまたはベクトル走査)で操縦され得る。
【0034】
デュアルビームシステム100は、とりわけ、偏向ユニット118、荷電粒子ビーム(CPB)レンズ106、116、および検出器(図示せず)を制御するための、また、検出器から収集した情報を表示ユニットに表示するための、コンピュータ処理装置ならびに/またはコントローラ128をさらに備えることができる。場合によっては、制御コンピュータ130が、様々な励起を確立し、画像データを記録し、そして一般に、SEMおよびFIBの両方の動作を制御するために提供される。
【0035】
さらに
図1を参照すると、イオンビームカラム104は、イオン源(例えば、プラズマ源120)およびイオンビーム光学系122を備えることができる。図示の実施形態では、イオンビームカラム104は、プラズマ集束イオンビーム(PFIB)であるが、他の実施形態では、イオンビームカラム104は、液体金属イオン源(LMIS)を有する標準的な集束イオンビーム(FIB)るか、または集束イオンビームカラムと互換性のあるその他のイオン源であり得る。イオンビームカラム104は、イオン光軸125に沿ってイオンビーム124を生成し、かつ/または向けることができる。上記のように、イオンカラム104は、切り込み、フライス加工、エッチング、堆積などの、ワークピースの画像化、処理、および/または機械加工操作を実行するために使用することができる。
【0036】
イオンビームがPFIBである実施形態では、イオン源120は、それぞれの弁によってイオン源120に結合されたガス源を含むガスマニホルド165を介して複数のガスに流体結合することができる。イオン源120の動作中に、ガスを導入することができ、そこでガスは帯電またはイオン化され、それによってプラズマを形成する。次に、プラズマから抽出されたイオンは、イオンビームカラム104を通して加速され、イオンビームになることができる。他の実施形態では、システム100は、1つ以上のレーザー、または他のタイプのフライス加工または診断ツールを備え得る。
【0037】
上記のように、そのようなマルチビームシステムは、ワークピースWを保持し、かつ位置決めするように構成された位置決めシステム(例えば、ステージ)を備え得る。位置決めシステムは、線形運動(例えば、ワークピースの分析のために特定の領域を選択するため)および/または角度もしくは回転運動(例えば、器具に対してワークピースの選択された角度を達成するため)を含む多自由度でキャリア要素を位置決めし/移動させることができる。位置決めシステムは、開示されたクランプ補償システムおよび方法を使用することができる1つ以上のピエゾアクチュエータを含むことができる。
【0038】
本明細書に記載のピエゾモータ、ステージ、およびビームシステムの追加の詳細は、本明細書に提出され、また弁護士参照番号9748-102338-01によって参照される「Systems and Methods of Hysteresis Compensation」と題された出願に、また、本明細書に提出され、また、弁護士参照番号9748-102714-01によって参照される「Electron Microscope Stage」と題された出願に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0039】
実施例2
図2Aおよび2Bは、一般に208で示される荷電粒子顕微鏡(CPM)として構成されたビームシステムに結合された例示的な位置決めシステム200の断面図を示す。位置決めシステム200は、1つ以上の駆動ユニットを備え得る。例えば、図示の実施形態では、システムは3つの駆動ユニットを備えることができ、そのうちの2つの駆動ユニット202および204を
図2に見ることができる。図示の実施形態では、駆動ユニット202、204は、ハインメイドBVから入手可能なハインメイドピエゾステッパ(HMPS)アクチュエータなどのウォーキングまたはステッピングピエゾ駆動ユニットとして構成される。しかしながら、他の実施形態では、駆動ユニットは、他のタイプのピエゾアクチュエータ、ボイスコイルモータ、ラックアンドピニオンシステム、リニアモータなどの他のタイプのアクチュエータを備え得る。
【0040】
第1および第2の駆動ユニット202、204は、ビームシステム208に関して定義された座標系206の少なくともX軸およびZ軸に沿ってワークピースWを位置決めするように構成することができる。上記のように、位置決めシステムは、3つ以上の駆動ユニットを備えることができ、X軸、Y軸、およびZ軸に沿ったワークピースの動きを可能にする。いくつかの特定の実施形態では、位置決めシステムは、各駆動ユニットが他の駆動ユニットから120度オフセットされるように配向された3つの駆動ユニットを備え得る。
【0041】
上記のように、位置決めシステム200は、CPM208などのマルチビームシステムと共に使用することができる。CPM208は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、または走査型透過電子顕微鏡(STEM)の組み合わせであり得る。CPM208は、ビーム源210、上極対物レンズ212、下極対物レンズ214、検出器216(例えば、カメラ、光電子増倍管、フォトダイオード、CMOS検出器、CCD検出器、光電池など)を備え得る。構成要素は、真空チャンバ218内に少なくとも部分的に位置決めされ得る。その上に位置決めされたワークピースWを含むキャリア要素220が、位置決めシステム200から真空チャンバ218内に延在するように示されている。
【0042】
位置決めシステム200は、CPM208の外面224(例えば、真空チャンバ218の外面)に取り付けられたフレームまたはハウジング222を備えることができる。ハウジング222は、1つ以上のベアリング226を使用して表面224に取り付けることができ、これにより、ハウジング222は、表面224に対して(例えば、x軸の周りで)傾斜するか、または回転することができる。いくつかの実施形態では、
図2に示されるように、ベアリング226は、CPM208の表面224上に配置された取り付け要素228に結合することができる。
【0043】
ハウジング222は、ワークピースWを保持するためのキャリア要素220を備えるハウジングの一部が、CPM208の側面の開口部を通って、少なくとも部分的に真空チャンバ218内に延在することができるように配置することができる。位置決めシステム200は、以下でより詳細に説明するように、駆動ユニット(例えば、第1および第2の駆動ユニット202、204)を使用してキャリア要素220の位置を調整することにより、ビーム230に対するワークピースWの位置を調整するように構成することができる。
【0044】
キャリア要素220は、第1および第2のガイド232、234に結合することができる。各ガイド232、234は、それぞれのジョイント236(例えば、ヒンジ、ナックルジョイント、ボールジョイントなど)を介して、それぞれのストラット部材238、240にさらに結合することができる。ストラット238は、ピボットジョイント239で移動体要素または部材242に枢動可能に結合することができ、ストラット240は、ピボットジョイント241で移動体要素または部材244に枢動可能に結合することができる。第1および第2の駆動ユニット202、204は、それぞれ、移動体要素242および244と係合するように構成することができる。駆動ユニット202は、以下により詳細に説明するように、一連のステップ動作において、移動体要素242をその軸に沿って、ハウジング222の後壁243に向かって、かつ、それから離れるように移動させるように構成することができる。駆動ユニット204は、移動体要素242と同様に、移動体要素244をその軸に沿ってハウジング222の後壁245に向かって、かつ、それから離れるように移動させるように構成することができる。ストラット238、240(移動体要素および駆動ユニットと共に)は、移動体要素242の後壁243から離れる動きが、移動体要素244の後壁245に向かう動きと共に、
図2Bに示されるように、キャリア要素220をXY平面から傾斜させることができるように、互いに対してある角度で位置決めされることができる。移動体要素242および244を壁243および245から離れてCPM208に向かって同時に移動させることにより、キャリア要素200をX軸に沿って移動させることができる。図示の実施形態では、移動体要素242および244は、互いに対して90°の角度で位置決めされている。特定の実施形態では、3つの駆動ユニットおよび対応する移動体要素は、120°の角度間隔でキャリア要素220の軸の周りに配列することができる。
【0045】
各移動体要素242、244は、それぞれのエンコーダスケール246を備え得る。ハウジング222に取り付けられた第1および第2の位置エンコーダ248および250(例えば、光学エンコーダ)は、エンコーダスケール246に基づいて、それぞれ、各移動体要素242、244の位置を決定するように構成することができる。エンコーダスケール246は、移動体242、244に結合するか、または一体的に形成することができる。
【0046】
図3は、例示的な位置エンコーダ300の概略図を示している。エンコーダスケール302は、光源304と検出器306との間に位置決めすることができる移動体に取り付けられている。特定の実施形態では、光源および検出器は、位置決めシステムのハウジングに取り付けることができる。
【0047】
示されるように、光源304によって生成されたビーム308は、エンコーダスケール302を通過するときに2つのビーム310、312に分割される。2つのミラー314、316を使用して、ビームを再結合し、結合されたビーム318を検出器306に向ける。
【0048】
再び
図2Aを参照すると、各エンコーダ248、250は、それぞれの移動体要素242、244の位置を決定するように構成することができる。エンコーダ248、250によって生成された場所データは、コントローラ252によって使用されて、アクチュエータ202、204を操作して、移動体要素242、244を選択された位置に位置決めし、それによって、以下により詳細に記載されるように、ワークピースWを選択された位置に位置決めすることができる。位置決めシステムは、開示されたクランプ補償システムおよび方法を使用することができる1つ以上のピエゾアクチュエータを含むことができる。
【0049】
実施例3
図4Aおよび4Bは、例示的な駆動ユニット400をより詳細に示しており、これは、駆動ユニット202または204のいずれかとして位置決めシステムと共に使用するように構成され得る。駆動ユニット400は、移動体部材または要素402と係合することができる。上記のように、移動体要素402は、キャリア要素に結合することができ、したがって、ワークピースWを、真空チャンバ218内のCPM208または他の器具に対して位置決めすることができる。図示の実施形態では、駆動ユニット400は、第1および第2のフレームまたはハウジング部分408、410内に収容されたアクチュエータ404、406の2つのセットを備えるピエゾ駆動ユニットであり得る。
【0050】
例えば、図示の実施形態では、各アクチュエータセットは、本明細書ではアクチュエータと呼ばれる3つの移動可能部材を備え得る。次に、各アクチュエータは、剪断要素、クランプ要素、またはそれらの様々な組み合わせなどの1つ以上のアクチュエータ要素を備え得る。アクチュエータ要素の各々は、独立して移動可能および/または制御可能であり得る。他の実施形態では、アクチュエータセットは、より多くの、またはより少ない数のアクチュエータを備え得る。さらに、図示の実施形態では、アクチュエータの各セットは同数のアクチュエータを備えるが、他の実施形態では、アクチュエータの1つのセットは、他よりも多くの、または少ないアクチュエータを備える。例えば、アクチュエータの第1のセットは3つのアクチュエータを備え得、アクチュエータの第2のセットは4つのアクチュエータを備え得る、などである。
【0051】
図4Aに戻ると、アクチュエータ404の第1のセットは、移動体要素402の第1の表面412に隣接して配設された第1のアクチュエータ404a、ならびに、移動体要素の第2の表面414に隣接した移動体要素402の反対側に配設された第2および第3のアクチュエータ404b、404cを備え得る。図示の実施形態では、第1のアクチュエータ404aは、剪断要素420およびクランプ要素422を備え、第2および第3のアクチュエータ404b、404cは、剪断要素を備える。以下でより詳細に説明されるように、クランプおよび/または剪断要素は、移動体要素402を選択された方向に移動させるために、移動体要素402と摩擦的に係合することができる。
【0052】
アクチュエータ406の第2のセットは、移動体要素402の第2の表面414に隣接して配設された第1のアクチュエータ406a、移動体要素402の第1の表面412に隣接して配設された第2および第3のアクチュエータ406b、406cを備え得る。図示の実施形態では、第1のアクチュエータ406aは、剪断要素424およびクランプ要素426を備え、第2および第3のアクチュエータ406b、406cは、剪断要素を備える。
【0053】
アクチュエータ404、406の2つのセットは、アクチュエータ404の第1のセットが移動体要素402と係合してかつ移動体要素402上に力を加えると、要素406の第2のセットを係合解除または解放するように、交互、ステッピング、または「ウォーキング」運動で作動することができ、その逆も同様である。アクチュエータ404および406の両方のセットが移動体402と接触しているとき、ステップ間に短い期間があり得る。これは、アクチュエータの1つのセットが他のアクチュエータのセットから「引き継ぐ」場合の「引き継ぎ」状態と呼ばれる。セットの1つのアクチュエータが移動体要素の第1の表面に係合し、セットの第2および第3のアクチュエータが移動体要素の第2の表面に係合するこの構成は、動作中の歪みを軽減するのに役立ち、移動体要素のより滑らかな動きを提供することができる。アクチュエータの2つのセット間の交互の引き継ぎ動作は、アクチュエータと移動体要素との間の滑りを有利に最小化する。さらに、この構成により、剛性や動作性能に影響を与えることなく、駆動ユニットのストローク長を延長することができる。
【0054】
作動されると、剪断要素は、座標系416に関して示されるように、Z軸に沿って変位することができ、Z軸は、
図4Aのページの平面に垂直であり、
図4Bのページの平面に平行である。クランプ要素は、Y軸に沿って変位され得る。アクチュエータのセットを交互に作動させることにより、大きな移動ストロークを実現できる。
【0055】
いくつかの実施形態では、第1のフレーム部分408は、第1のフレーム部分408が移動体要素402に対して移動することを可能にするバイアス部材418(例えば、ばね)に結合することができる。使用中、アクチュエータ要素が拡張位置(例えば、
図4Aのクランプ要素420)に通電されると、第1のフレーム部分408は、移動体要素402に対して移動し、それによって、バイアス部材418を圧縮する。いくつかの実施形態では、バイアス部材418は、フレーム408の第1の部分に収容されたアクチュエータと移動体要素402との間の摩擦接触を維持するために、拡張位置にバイアスされ得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、アクチュエータの端部(例えば、移動体要素に隣接する部分)は、アクチュエータの摩耗を軽減し、駆動ユニットの寿命を延ばすために、酸化アルミニウムでコーティングすることができる。他の実施形態では、クランプおよび/または剪断要素の各々は、移動体との摩擦係合によるクランプおよび/または剪断要素への損傷を軽減するように構成された耐摩耗性プレートを含むことができる。
【0057】
実施例4
図5A~5Bは、クランプ要素500の例示的な実施形態を示し、
図6A~6Bは、剪断要素600の例示的な実施形態を示す。図示の実施形態では、クランプ要素および剪断要素は、圧電要素を備える。
【0058】
特定の実施形態では、クランプ要素500は、縦ピエゾ要素であり得、剪断要素600は、剪断ピエゾ要素であり得る。以下に詳細に説明されるように、縦ピエゾ要素500は、電圧が印加されると軸方向に変形または伸長するように構成することができ、剪断ピエゾ要素600は、電圧が印加されると一端が反対端に対して横方向に変位するように構成することができる。
図5Bおよび6Bに示されるように、いくつかの実施形態では、各要素500、600は、互いに隣接して配置された複数の圧電部材502、602を備え得る。他の実施形態では、クランプおよび剪断要素500、600は、単層ピエゾ要素、またはモノリシック同時焼成ピエゾ要素とも呼ばれるモノリシック多層ピエゾ要素であり得る。特定の実施形態では、クランプおよび/または剪断要素の変位は、印加電圧に線形に関連することができる。ピエゾ部材502、602が分極される方法に応じて、それは縦方向要素または剪断要素と見なすことができる。クランプ要素は、第1の、または中性構成、第2の細長い構成(例えば、正の電圧を印加することによって通電されるとき)、および/または第3の短縮構成(例えば、負の電圧を印加することによって通電されるとき)の間を移動することができる。
【0059】
例えば、
図5Aに示されるように、電界(矢印506によって示される)は、分極の方向(矢印504によって示される)に平行に印加され得る。いくつかの実施形態では、
図5Bに示されるように、クランプ要素は、8つのピエゾ層を含むことができるが、他の実施形態では、クランプ要素は、より多くの、またはより少ない数の層を備え得る。いくつかの特定の実施形態では、クランプ要素は、3つのピエゾ層を備え得る。いくつかの実施形態では、クランプ要素に印加される電圧は、例えば、-30V~60Vの間であり得る。
【0060】
通電されると(例えば、正または負の電圧を印加することによって)、クランプ要素500は、長手方向に、すなわち、矢印508によって示される方向に膨張および/または収縮することができる。
図5Aを参照すると、クランプ要素500は、電圧が全く電圧クランプ要素に印加されていないときに第1のまたは自然長L
1を有する第1のまたは中性構成を、第1の、または正の電力が要素に印加されているときに、第1の、または第2の長さL
2を有する第2のまたは拡張された構成を、第2のまたは負の電圧が要素に印加されているときに、第3の長さL
3を有する第3のまたは収縮した構成を有することができる。第2の長さL
2は、第1の長さL
1よりも大きくすることができ、第1の長さL1は、第3の長さL
3よりも大きくすることができる。長さは、印加電圧の大きさに少なくとも部分的に基づくことができる。
【0061】
図6Aおよび6Bは、例示的な剪断ピエゾ要素600を示している。
図6Aに示されるように、電界(矢印606によって示される)は、分極の方向(矢印604によって示される)に対して直交して印加される。いくつかの実施形態では、
図6Bに示されるように、剪断要素600は、8層のピエゾ部材を備え得る。しかしながら、他の実施形態では、剪断要素は、より多くの、またはより少ない数の層を備え得る。いくつかの特定の実施形態では、剪断要素600は、4層のピエゾ部材を備え得る。いくつかの実施形態では、剪断アクチュエータに印加される電圧は、例えば、-250V~250Vの間であり得る。
【0062】
通電されると(例えば、正または負の電圧を印加することによって)、剪断要素600の一部は、矢印608によって示されるように、選択された方向に剪断するか、または横方向に移動することができる。例えば、剪断運動は、剪断要素の反対側の第2の表面612に対して、剪断ピエゾ要素の第1の表面610の変位を引き起こす。剪断要素は、正の電圧が印加されたときに第1の表面が第1の変位長さD1だけ第1の方向に第2の表面から変位する第1のオフセット位置と、第1の表面が負の電圧が印加されたときに第2の変位長さD2だけ第2の方向(例えば、第1の方向の反対側)に第2の表面から変位する第2のオフセット位置を有し得る。変位長さD1およびD2は、印加電圧の大きさに少なくとも部分的に基づくことができる。
【0063】
圧電部材502および602は、セラミック(天然および合成セラミックを含む)、結晶(天然および合成結晶を含む)、グループIII-VおよびII-VI半導体、ポリマー、有機ナノ構造、または任意のそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。いくつかの特定の実施形態では、圧電要素は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含むことができる。このような圧電要素は、正の電圧が印加されると拡張し、負の電圧が印加されると収縮する可能性がある。収縮、拡張、および/または剪断変位の大きさおよび速度は、ピエゾ部材に印加される電圧の大きさに依存する可能性がある。
【0064】
実施例6
図7A~7Dは、駆動サイクル全体にわたる例示的な駆動ユニット700(駆動ユニット400と同様に構成することができる)のアクチュエータの位置を示す。駆動ユニット700は、移動体要素702と係合するように構成されている。駆動ユニット700は、アクチュエータ704および706の2つのセットを備える。各アクチュエータセットは、3つのアクチュエータで構成され得る。例えば、アクチュエータセット704は、アクチュエータ704a、704b、および704cを備えることができ、アクチュエータセット706は、アクチュエータ706a、706b、および706cを備えることができる。アクチュエータは、剪断要素、クランプ要素、および/またはそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、図示の実施形態では、アクチュエータ704b、704c、706b、および706cは、剪断要素を備える。アクチュエータ704aは、剪断要素714およびクランプ要素716を備えることができ、アクチュエータ706aは、剪断要素718およびクランプ要素720を備えることができる。アクチュエータは、第1および第2のフレーム部分708、710に収容することができる。特定の実施形態では、アクチュエータの変位は、印加される電圧に線形に関連することができる。アクチュエータ704、706の2つのセットがあり、各セットは2つのタイプの要素(クランプおよび剪断)を備えることができるので、4つの駆動信号を使用して、アクチュエータ704、706のセットを交互に移動させることができる。いくつかの実施形態では、駆動信号は、交互またはウォーキング運動の反復性のために波形(例えば、電圧波形)として構成することができる。
【0065】
この例では、アクチュエータ704aおよび706aは等しい長さを有するが、他の例では、アクチュエータ704aおよび706aは異なる長さを有することができる。この例では、2つのクランプ要素716および720、ならびに6つの剪断要素704b、704c、714、706b、706c、718が存在する。しかしながら、他の例では、駆動ユニットは、より多くの、またはより少ない数のクランプおよび剪断要素を備えることができる。
【0066】
図8Aおよび8Bは、
図7A~7Dに示される駆動サイクルの駆動信号を示す。駆動信号は転流角αに依存する可能性があり、2πの期間で周期的である可能性がある。転流角αは、次の式を使用して定義することができる。
【数1】
α(t)は経時的な転流角であり
、f
α(τ)は、時間(τ)の関数としての駆動信号の駆動周波数である。
【0067】
図8Aは、アクチュエータの第1および第2のセットのクランプ要素の例示的な駆動または電圧信号を示し、
図8Bは、アクチュエータの第1および第2のセットの剪断要素の例示的な駆動または電圧信号を示す。ここで
図8Aを参照すると、第1の電圧信号800は、第1のアクチュエータセット704のクランプ要素716に印加することができ、第2の電圧信号802は、第2のアクチュエータセット706のクランプ要素720に印加することができる。
図8Aの電圧信号は、-30V~60Vの間で一定の速度で上昇し、かつ下降する。クランプ要素716の駆動信号は、クランプ要素716に印加される電圧が60Vであるとき、クランプ要素720に印加される電圧が-30Vであるように、クランプ要素720の駆動信号と位相がずれているπ radであり得、逆もまた同様である。両方の信号の期間、最大値、および最小値は同じである。しかしながら、他の実施形態では、クランプ要素716の駆動信号は、クランプ要素720の駆動信号とは異なり得る。
【0068】
図8Bの電圧信号804および806は、3π/2 radの角度を通じて、第1の速度で-250V~250Vに増加するか、または上昇することができ、鋸波のようにπ/2 radの角度で第2の速度で250V~-250Vに減少するか、または上昇することができる。
図8Bの信号はまた、位相がずれているか、またはπ radによって位相シフトされ得る。
【0069】
図7Aは、転流角がゼロである駆動サイクルの第1のまたは開始位置にある駆動ユニット700を示している。この位置は、参照文字aによって示される、
図8Aおよび8Bの0 radの転流角での駆動信号値に対応する。
図8Aに示されるように、アクチュエータ704aおよび706aのクランプ要素716および720に印加された電圧は、両方のアクチュエータが等しい長さL
1を有するように0 radで等しく、それらの間に移動体要素702を係合し、かつクランプする。
図8Bを参照すると、アクチュエータ704bおよび704cの剪断要素、ならびにアクチュエータ704aの剪断要素714に印加された電圧は、-200Vであり得る。剪断要素706bおよび706cに印加された電圧、およびアクチュエータ706aの剪断要素720は、200Vであり得る。したがって、アクチュエータ704b、704c、706b、および706cもまた、移動体要素702と接触している。
図7Aのアクチュエータの位置は、アクチュエータ704、706の両方のセットのすべての要素が互いに平衡状態にあり、移動体702と接触している、引継ぎ運動に対応し得る。両方の剪断グループの剪断要素の剪断電圧の転流角に関する導関数は等しくすることができる。したがって、両方の剪断グループは同じ速度で移動することができる。
【0070】
図7Bは、
図8Aおよび8Bの参照文字b~cによって示された駆動信号の部分に対応する、駆動サイクルにおける第2の例示的な位置にある駆動ユニットを示す。アクチュエータ704の第1のセットのアクチュエータ704aのクランプ要素716は、最大電圧で通電され、したがって、アクチュエータ704aを第1の長さL
1から、L
1よりも大きい拡張長さL
2に移動させる。
図8Aに示されるように、アクチュエータ704aのクランプ要素716に印加された電圧は60Vであり得、アクチュエータ706aのクランプ要素720に印加された電圧は-30Vであり得る。アクチュエータ704aの拡張された長さL
2は、アクチュエータ706bおよび706cがもはや移動体要素702に係合しないように、移動体要素702に対する第1のフレーム部分708を移動させる。第1のフレーム部分708は、バイアス要素712に結合することができる。
【0071】
バイアス要素712(例えば、ばね)は、圧縮して、移動体要素702に対する第1のフレーム部分708の移動を可能にすることができる。一方、アクチュエータ706aのクランプ要素720は、その最小電圧(例えば、-30V)で通電され、したがって、アクチュエータ706aを、アクチュエータ706aが、もはや移動体要素702と係合しないように、第1の長さL
1から、長さL
1よりも小さい長さL
3を有する収縮構成に移動させる。アクチュエータ706bおよび706cは、次の「引き継ぎ」移動のための位置にあり、一方、アクチュエータ704b、704c、および714は、
図8Bの増加する駆動電圧の影響下で、駆動ユニット700に対して移動体要素702を移動させるか、変位させるか、または駆動する。
図8Bに示されるように、剪断要素718、706b、および706cに印加された電圧は、250V~-250Vに低下することができ、剪断要素714、704b、および704cに印加される電圧は、-250V~250Vに上昇することができる。
【0072】
図7Cは、
図8Aおよび8Bの参照文字dによって示された駆動信号の部分に対応する、駆動サイクルにおける第3の例示的な位置にあるアクチュエータを示す。第3の例示的な位置は、
図7Aに関して上記で説明された引き継ぎ運動と同様の第2の「引き継ぎ」運動であり、ここで、アクチュエータのすべてが移動体要素702と接触している。
図8Aに示されるように、アクチュエータ704aおよび706aのクランプ要素716および720に印加された電圧は、両方のアクチュエータが等しい長さL
1を有するように0 radで等しく、それらの間に移動体要素702を係合し、かつクランプする。
図8Bを参照すると、アクチュエータ704bおよび704cの剪断要素、ならびにアクチュエータ704aの剪断要素714に印加された電圧は、200Vであり得る。剪断アクチュエータ706bおよび706c、ならびにアクチュエータ706aの剪断要素718に印加された電圧は、-200Vであり得る。
【0073】
図7Dは、
図8Aおよび8Bの参照文字e-fによって示された駆動信号の部分に対応する、駆動サイクルにおける第4の例示的な位置にあるアクチュエータを示す。この位置は、アクチュエータ706の第2のセットが移動体要素702と係合し、アクチュエータ704の第1のセットが係合していないことを除いて、
図7Bに示される位置と同様である。アクチュエータ706aのクランプ要素720は、最大電圧で通電され、したがって、アクチュエータ706aを長さL
1から、L
1よりも大きい長さL
2を有する拡張構成に移動させる。
図8Aに示すように、アクチュエータ706aのクランプ要素720に印加された電圧は60Vであり得、アクチュエータ704aのクランプ要素716に印加された電圧は-30Vであり得る。アクチュエータ706aの拡張構成は、アクチュエータ704bおよび704cがもはや移動体要素702に係合しないように、第2のフレーム部分710に対して(例えば、離れて)、移動体要素702を(またそれにより、要素704a、706b、706cおよび第1のフレーム部分708を)移動させることができる。クランプ要素716は、最小電圧(例えば、-30V)で通電され、したがって、アクチュエータ704aを、アクチュエータ704aが、もはや移動体要素702と係合しないように、第1の長さL
1から、長さL
1よりも小さい長さL
3を有する収縮構成に移動させる。アクチュエータ704bおよび704cは、次の「引き継ぎ」運動のための位置にあり、一方、アクチュエータ706bおよび706cは、
図8Bの駆動電圧の増加により、移動体要素702を駆動するか、または変位させる。
図8Bに示されるように、剪断要素718、706b、および706cに印加された電圧は、-250V~250Vに上昇することができ、剪断要素714、704b、および704cに印加された電圧は、250V~-250Vに低下することができる。
【0074】
アクチュエータセットの選択された駆動信号は周期的であるため、
図8Aおよび8Bの参照文字gによって示された駆動信号の部分に対応する駆動ユニットの構成は、
図7Aに示される構成と同じである。ピエゾ要素と駆動信号のこの組み合わせにより、駆動ユニットは、ウォーキング運動を連想させる一連のステップで移動体要素702を移動させることができる。この駆動サイクルは、移動体要素702を選択された位置に移動させるために必要に応じて繰り返すことができる。移動体要素を反対方向に動かすために、駆動信号の方向を逆にすることもできる。
【0075】
実施例7
前述のように、駆動ユニット(複数可)を使用して移動体(複数可)を移動させることができ、それにより、ワークピースWを荷電粒子顕微鏡(CPM)、例えばSTEMに対して位置決めすることができる。ワークピースWの位置および速度の乱れは、一定速度で移動するワークピースWの点から点への移動を追跡するために望ましくない可能性がある。例えば、乱れは、ガイダンスシステムが、ワークピースの位置および/または画像化されることを意図されたワークピースの選択された領域を見失う原因となる可能性がある。いくつかの実施形態では、CPMは、ワークピースが動いている間にワークピースWを画像化するように構成することができる。そのような実施形態では、ワークピースWの滑らかで一貫した移動を有することが特に有利である。
【0076】
図9に示されるように、駆動ユニット900のアクチュエータ902、904は、典型的には、それらが移動体要素906に垂直になるように位置付けられる。例えば、アクチュエータ902、904は、アクチュエータ902、904を通って長手方向に延在する軸908が、移動体要素906の表面と90°の角度を形成するように位置付けることができる。移動体要素の接触面910に接触するアクチュエータ902、904の表面は、移動体要素906に平行であり、アクチュエータは、移動体の表面に対して垂直に移動する。使用中、この構成により、クランプ要素を備えるアクチュエータは、移動体要素の位置に影響を与えることなく、移動体要素と係合することができる。
【0077】
実施例8
しかしながら、
図10に示されるように、いくつかの実施形態では、駆動ユニット1000のアクチュエータ1002、1004の一方または両方は、移動体要素1006に対してある角度(例えば、傾斜)で位置付けられ得る。これは、「クランプ要素の不整合」と呼ばれることがある。そのような実施形態では、接触面1012の移動体要素と接触するアクチュエータの表面は、表面1012と平行ではなく、アクチュエータは、移動体要素に対して非垂直な角度で移動する。例えば、システム内の構成要素の寸法および/または位置の公差に関する実際的な制限は、アクチュエータ1002、1004の一方または両方が、移動体要素1006に対して角度を付けられるか、または傾斜する結果となる可能性がある。これは、アクチュエータ1002および1004をそれぞれ軸方向に延在し、移動体要素1006との接触面1012に対して角度β、φを形成する線1008、1010によって示されている。傾斜したアクチュエータ1002、1004は、剪断要素の速度に変化(例えば、加算または減算)をもたらし、それにより、ワークピースWの位置および速度に乱れを生じさせる可能性がある。例えば、角度のあるアクチュエータ要素は、垂直アクチュエータが接触すると予想される転流角αの前の移動体の表面に接触し得る。これにより、不整合の方向に応じて、アクチュエータが伸び続けるため、移動体が前方または後方に押される可能性がある。
【0078】
実施例9
傾斜したアクチュエータによって引き起こされる乱れは、例えば、開ループクランプ測定を使用して定量化することができる。そのような開ループ測定のための例示的な制御アーキテクチャ1100が
図11に示されている。制御システム1100は、積分器ツールまたはモジュール1102および信号発生器モジュール1104を備えることができる。駆動ユニットは、ブロック1106で表されている。ブロック1102、1104、および1106は、物理システムGを表すブロック1108内に一緒にグループ化される(例えば、キャリアユニット、駆動ユニット、位置エンコーダなどを含むことができる)。図示の実施形態では駆動周波数f
αは、積分器モジュール1102に入力することができる。積分器モジュール1102は、転流角αを信号発生器1104に出力することができ、信号発生器1104は、駆動ユニット1106に複数の(例えば、4つの)出力信号u
iを生成することができる。図示の実施形態には2つのタイプのピエゾ要素(例えば、剪断機およびクランプ)および2つのセットのピエゾアクチュエータがあるので(例えば、
図7A~7Dを参照)、信号発生器は4つの信号または電圧関数u
iを出力して選択した方法で駆動ユニットを移動させることができる。1つの代表的な実施形態では、剪断要素が静止したままである間、クランプ要素は、クランプ要素駆動信号で通電することができる。一定の駆動信号の移動体要素x
mの位置を測定することにより、移動体要素x
mの位置への傾斜クランプ要素の影響を決定することができる。開ループ測定が進むにつれて、移動体要素の変位を決定することができる。
【0079】
上記の特定の開ループ測定では、アクチュエータの剪断要素が0Vで静止したまま、駆動信号を使用してアクチュエータのクランプ要素に通電することができる。一定の駆動周波数で移動体要素の位置を測定することにより、移動体要素の位置に対する傾斜したクランプ要素の影響を決定することができる。
【0080】
図12A~12Bは、開ループ測定値を使用して決定された例示的な位置および速度の測定値を示し、
図12Aは、1Hzの一定の駆動周波数f
αを使用した例示的な位置評価を示し、
図12Bは、1Hzの一定の駆動周波数f
αを使用した例示的な速度評価を示す。
図12Aおよび12Bに見られるように、速度信号は反復的であり、したがって、位置信号の乱れは反復的である。
【0081】
実施例10
特定の実施形態では、速度、したがって位置の乱れは、
図13A~13Cに示されるように、クランプ要素に印加された駆動信号、および開ループ応答の方向依存性に関連し得る。アクチュエータのクランプ要素に印加された電圧が一定である駆動サイクルの瞬間については、速度はゼロであり得る。
図13Aは、アクチュエータのクランプ要素に印加された典型的な駆動信号を示す。
図13Bは、1Hzの駆動周波数を有するクランプ測定の正規化された速度変化を示す。
図13Cは、f
α{-1, 1} Hzで開ループ制御システム1100によって駆動されたクランプ要素の正規化速度進化を示す。
図13Bを参照すると、クランプ要素に印加された電圧が一定である駆動サイクルの動きについて、クランプ測定の速度はゼロであることが分かることができる。クランプ要素が収縮し始めると(例えば、α=0.71π radおよびα=1.71π radで)、クランプ要素の速度はほぼ一定の速度またはレベルまで増加する。
図13Cに示すように、f
α=1Hzでのクランプ要素の速度は増加し、f
α=-1Hzでのクランプ要素の速度は減少する。
【0082】
同様の乱れは、一定のクランプ位相の前に発生する(例えば、α=0.28π radおよびα=1.28π rad)。一定のクランプ位相の直前および直後に、1つのクランプ要素のみが移動体と接触する(例えば、アクチュエータの第1セットのクランプ要素またはアクチュエータの第2のセットのクランプ要素)。したがって、速度の増加および減少は、傾斜したクランプ要素の結果である可能性がある。
【0083】
アクチュエータの1つ以上の傾斜したクランプ要素によって引き起こされた乱れは、クランプ要素の傾斜または不整合を補償するために剪断要素を作動させることによって、少なくとも部分的に相殺するか、または軽減することができる。より具体的には、角度付きクランプ要素は、剪断要素の駆動信号(複数可)の波形を修正して、修正された駆動信号(例えば、補償信号と組み合わせた初期剪断信号を備える信号)をアクチュエータの剪断要素に提供することによって、少なくとも部分的に補償することができる。例示的な補償信号は、クランプ測定および開ループ測定の結果としての速度の重ね合わせによって生成することができる。
図14は、剪断速度およびクランプ速度の重ね合わせに基づくクランプ速度信号で補正された、1Hzおよび-1Hzの正規化された開ループ速度信号を示す。
図14から、α∈{0.1π、1.15π}radでの最小値が、約0m/秒に減少することがわかる。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載の傾斜補償アルゴリズムを使用して、少なくとも負の速度を回避することができる。
【0084】
実施例11
移動体要素に対するクランプ要素の不整合、変位、および/または傾斜は、剪断要素の動きを修正することによって少なくとも部分的に補償することができる。剪断要素の変位軌道は、クランプ要素が作用したときに観察された移動体要素の変位に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。特定の実施形態では、剪断要素は、250Vの振幅を有する電圧信号が印加されるとき、約3.0×10
-6mのストローク長を有することができる。したがって、特定の剪断変位を生成するために必要な電圧は、式1および2で以下に示すモデルで近似し得る。逆剪断定数
は、印加電圧を剪断ピエゾ要素の剪断変位に関連付ける。
【数2】
【数3】
【0085】
式2および3では、
は逆剪断定数[V/m]は、uは印加電圧[V]であり、x
mは移動体要素[m]の位置である。
【0086】
理想的には、クランプ要素によってクランプされたときの移動体要素の変位は0mである必要がある。したがって、特定の実施形態では、剪断補償信号または波形は、式3に示されるように、反復学習制御(ILC)スキームおよび逆剪断モデルを使用して生成することができる。
【数4】
【0087】
式3において、u
j+1は調整補償信号[V]であり、u
jは、初期補正信号[V]であり、
は、逆剪断定数[V/m]であり、x
mは移動体[m]の変位である。
【0088】
実施例12
図15Aおよび15Bは、剪断要素駆動信号を調整するためにILCシステムと共に使用することができるクランプ要素および剪断要素の初期電圧波形を示す。
図15Aは、クランプ要素を第1の方向に(例えば、移動体要素に向かってまたは離れて)移動させるために、駆動ユニットの動作中にアクチュエータのクランプ要素に印加された典型的な駆動信号を示し、
図15Bは、剪断要素を第2の方向(例えば、移動体要素の移動方向と反対の方向)に移動させるために、アクチュエータの剪断要素に印加される、本明細書では補償信号または波形と呼ばれる初期駆動信号を示す。特定の実施形態では、
図15Bに示された信号は、クランプ要素が
図15Aに示された信号で作動されるクランプ動作中の移動体要素のパスまたは位置に少なくとも部分的に基づいて取得することができる。言い換えれば、剪断要素の初期電圧信号は、不整合の補償がないクランプ動作中の移動体要素のパスに少なくとも部分的に基づくことができる。例えば、剪断要素を駆動するための第1の電圧波形は、移動体x
mの位置を逆剪断定数
と乗算し、上記の式3に従って、初期の修正されていない剪断要素電圧信号から結果の量を減算することにより得られる。その後、クランプを再び作動させることができ、式3から得られる波形で剪断要素を駆動することができる。剪断要素は、第2の方向(例えば、移動体要素の移動方向と反対方向)に移動して、クランプ要素と移動体要素との間の不整合を少なくとも部分的に補償することができる。移動体要素の変位、位置、またはパスを決定することができ(例えば、位置エンコーダを使用して)、測定された変位と目標変位との差を、ドライブサイクル全体で測定することができる(例えば、α=0~α=2π)。この違いは、誤差と呼ばれることがある。誤差の合計は、ターゲットの変位またはパス(例えば、0m、または移動なし)と比較できる。変位が事前選択された閾値(例えば、1μm、100nm、10nmなど)を超えている場合、第2の剪断要素の電圧信号は、移動体要素の測定された変位と目標変位との差に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。特定の実施形態では、剪断要素の引き込み運動は、このグループがクランプ中に移動体要素と接触しないように配向することができ、これは、移動体要素の位置の変化がクランプ要素の不整合によって引き起こされ得ることを意味する。
【0089】
剪断要素の駆動信号(例えば、剪断要素に印加された電圧)は、クランプ要素によるクランプ中の移動体要素の動きを低減するために、上記のプロセスを繰り返すことによって繰り返し修正することができる。このプロセスは、移動体要素の変位が目標変位に収束するまで、または目標変位に近づくまで繰り返すことができる。
図16は、ILCスキームの8回の反復試行にわたる駆動信号の変化を示している。試行ごとに、移動体要素の位置の変化を減らすために、剪断要素の駆動信号が修正される。特定の実施形態では、クランプの不整合を補償することなく、駆動ユニットの動作と比較して、移動体要素の変位を60分の1以上低減することが可能である。ゼロ変位、ほぼゼロ変位、または事前選択された移動体要素の変位をもたらす剪断要素波形は、本明細書では、補償波形または補償駆動信号と呼ばれる。
【0090】
実施例13
動作中に傾斜補償を適用するために、
図16に関連付けられた補償駆動信号などの補償駆動信号を、初期または修正されていない剪断要素駆動信号と組み合わせることができる(例えば、
図8Bを参照)。いくつかの特定の実施形態では、システムの実際的な制限により、剪断要素への最大電圧は250Vを超えることができないので、初期波形の振幅は150Vに減少する。結果として生じる駆動信号を
図17A~17Bに示す。
図17Aは、クランプ要素に印加された駆動信号を示し、
図17Bは、補償波形を初期剪断駆動信号と組み合わせることから生じる修正または補償された剪断要素駆動信号を示す。
図17Bに示される結果として生じる修正された駆動信号は、クランプ要素の不整合によって引き起こされた移動体要素の移動を軽減しながら、移動体要素を目標位置に(またはサイクルごとに選択された距離だけ)移動するように構成される。
【0091】
実施例14
図18Aは、駆動ユニットの補償されていない位置および補償された位置進化を示している。駆動信号の周波数は1Hzであり得る。補償されていない駆動信号は、
図8Aおよび8Bに示された駆動信号に類似することができ、補償された駆動信号は、
図17Aおよび17Bに示された駆動信号に類似することができる。補償された位置進化1802は、補償されていない位置進化1800よりも滑らかであり、摂動が少ない。
図18Bは、1つの駆動信号サイクルにわたる補償されていない速度および補償された速度を示している。補償された速度1804は、負の速度を有さず、補償されていない速度1806よりも滑らかで、変化が浅い。傾斜補償を使用すると、速度の変化の最小値を
【数5】
に減らすことができる。いくつかの実施形態では、同じ補償信号を、異なる駆動周波数での開ループ測定に印加することができる。
【0092】
実施例15
図19は、本明細書に記載のプロセスを実施するために使用された閉ループ処理のための例示的な制御システム1900を示している。制御システム1900は、積分器ツールまたはモジュール1902および信号発生器モジュール1904を備えることができる。駆動ユニットは、ブロック1906で表されている。ブロック1902、1904、および1906は、物理システムGを表すブロック1908内に一緒にグループ化される(例えば、キャリアユニット、駆動ユニット、位置エンコーダなど)。図示の実施形態では、加算接合部は、事前選択された閾値r(例えば、10nm~100nmの間)およびx
m(移動体要素の変位)を合計して、誤差値eをもたらす。誤差値は、次式を使用して計算することができる。
e=r-x
m
【0093】
次に、誤差値を、コントローラ1910に入力することができる。コントローラ1910は駆動周波数fαを生成することができ、これは、積分器モジュール1902に入力することができる。積分器モジュール1902は、転流角αを信号発生器1904に出力することができ、信号発生器1904は、複数(例えば、4つ)の出力電圧信号uiを駆動ユニット1906に生成することができ、その結果、位置変化xmが生じる。特定の実施形態では、波形発生器1904によって生成された剪断要素への出力信号は、クランプ中の移動体要素の所定の動きに少なくとも部分的に基づく補償された駆動信号であり得る。
【0094】
実施例16
図20を参照すると、駆動ユニットを使用して位置決めシステムの移動体要素を位置決めするための代表的な方法2000は、2002において、クランプ要素が第1の方向に移動体要素に向かって移動するように、第1の駆動信号を駆動ユニットのクランプ要素に印加することを含む。2004において、剪断要素が第2の方向に移動して、クランプ要素と移動体要素との間の不整合を補償することができるように、第2の駆動信号を駆動ユニットの少なくとも1つの剪断要素に印加することができる。
【0095】
実施例17
図21を参照すると、駆動ユニットの補償された駆動信号を生成するための代表的な方法2100は、2102において、クランプ要素駆動信号を駆動ユニットのクランプ要素に印加することを含み、クランプ要素は移動体要素と係合するように構成されている。2104において、移動体要素の変位が決定される。2106において、駆動ユニットの1つ以上の剪断要素に印加される補償信号が、移動体要素の変位に少なくとも部分的に基づいて決定される。2108において、補償信号が1つ以上の剪断要素に印加され、クランプ要素駆動信号がクランプ要素に印加される。2110において、移動体要素の第2の変位が決定される。2112において、第2の変位が事前選択された閾値(例えば、10nm~100nm)を下回る場合、補償信号は、初期剪断要素駆動信号と組み合わされて、修正または補償された剪断要素駆動信号を生成する。
【0096】
実施例18
図22を参照すると、修正された剪断要素駆動信号を決定するための代表的な方法2200は、クランプ要素駆動信号を2202でクランプ要素に印加することを含む。2204において、移動体要素の変位を測定することができる(例えば、位置エンコーダを使用して)。2206において、変位を使用して補償信号を決定することができる。2208において、クランプ要素駆動信号をクランプ要素に印加することができ、補償信号を1つ以上の剪断要素に印加することができる。2210において、移動体要素の変位を再度測定することができる。2212において、移動体要素の変位が事前選択された閾値を下回っている場合(例えば、変位が10nm~100nmの値未満の場合)、補償信号を初期剪断要素駆動信号と組み合わせて、2214において修正された剪断要素駆動信号を生成することができる。2216において、修正された剪断要素駆動信号を1つ以上の剪断要素に印加することができ、クランプ要素駆動信号をクランプ要素に印加することができる。再び2212を参照すると、変位が事前選択された閾値を下回っていない場合(例えば、変位が10nm~100nmの間の値より大きい場合)、次いで、移動体要素の変位を使用して、2206における追加の補償信号を決定することができる。動作2206から2212は、移動体要素の変位が事前選択された閾値を下回るまで繰り返すことができる。
【0097】
実施例19
図23および以下の考察は、開示された技術が実施され得る例示的なコンピューティング環境の簡潔で一般的な説明を提供することを意図している。例えば、コントローラ252は、以下に説明するコンピューティング環境と同様に構成することができる。さらに、開示される技術は、携帯デバイス、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースの、またはプログラム可能な消費者電子機器、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータなどを含む他のコンピュータシステム構成で実施することができる。開示された技術はまた、タスクが通信ネットワークを介してリンクされているリモート処理デバイスによって実行される分散型コンピュータ環境においても実行することができる。
【0098】
図23を参照すると、開示された技術を実施する例示的なシステムは、1つ以上の処理ユニット2302、システムメモリ2304およびシステムメモリ2304を含む様々なシステム構成要素を1つ以上の処理ユニット2302を結合するシステムバス2306を含み、例示的な汎用PC2300の形態である、汎用コントローラを含む。システムバス2306は、様々なバスアーキテクチャのうちの任意のものを使用した、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、およびローカルバスを含む数種のバス構造物のうちのいずれかであってもよい。例示的なシステムメモリ2304は、読取専用メモリ(ROM)2308およびランダムアクセスメモリ(RAM)2310を含む。ROM2308には、PC2300内の要素間の情報の転送を助ける基本ルーチンを包有する基本入出力システム(BIOS)2312が格納されている。
図23の例では、SEMおよびFIBの位置決めシステム、画像化、処理、および他の動作モードの動きを制御するためのデータおよびプロセッサ実行可能命令は、メモリ2310Aに格納され、ビーム成分を識別し、かつ定量化するためのデータおよびプロセッサ実行可能命令は、メモリ2310Aに格納される。
【0099】
例示的なPC2300は、さらに、ハードディスクから読み書きするためのハードディスクドライブ、取り外し可能な磁気ディスクから読み書きするための磁気ディスクドライブ、および光ディスクドライブなどの1つ以上の記憶デバイス2330を含む。このような記憶デバイスは、それぞれ、ハードディスクドライブインターフェース、磁気ディスクドライブインターフェース、および光学ドライブインターフェースによってシステムバス2306に接続することができる。ドライブおよび関連するコンピュータ可読媒体は、PC2300用のコンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、および他のデータの不揮発性ストレージを提供する。他のタイプのコンピュータ可読媒体は、磁気カセット、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスクなどの、PCによってアクセス可能なデータを記憶することができる。
【0100】
いくつかのプログラムモジュールは、オペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、およびプログラムデータを含む記憶デバイス2330に格納されることができる。ユーザは、キーボードなどの1つ以上の入力デバイス2340およびマウスなどのポインティングデバイスを介して、コマンドおよび情報をPC2300に入力することができる。モニタ2346または他のタイプのディスプレイデバイスもまた、ビデオアダプタなどのインターフェースを介してシステムバス2306に接続される。
【0101】
PC2300は、リモートコンピュータ2360などの1つ以上のリモートコンピュータへの論理接続を使用してネットワーク環境で動作することができる。いくつかの例では、1つ以上のネットワークまたは通信接続2350が含まれる。リモートコンピュータ2360は、別のPC、サーバ、ルータ、ネットワークPC、またはピアデバイスまたは他の共通ネットワークノードであってもよく、典型的には、PC2300に関して上述した要素の多くまたはすべてを含むが、
図23には記憶デバイス2362のみ図示されている。パーソナルコンピュータ2300および/またはリモートコンピュータ2360は、論理ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイドエリアネットワーク(WAN)に接続することができる。
【0102】
実施例20
図24は、前述のプロセスを実施するための制御システム2400の代表的な実施形態を示している。制御システムは、クランプ信号発生器2402、剪断信号発生器2404、およびルックアップテーブル(LUT)2406を備えることができる。
【0103】
クランプ信号発生器は、駆動ユニット2408の1つ以上のクランプ要素に印加される1つ以上のクランプ要素駆動信号(複数可)を生成するように構成することができる。例えば、クランプ信号発生器2402は、第1のクランプ要素(例えば、
図7A~7Dの要素716)を駆動することができる第1のクランプ要素駆動信号2410、および、第2のクランプ要素(例えば、
図7A~7Dのクランプ要素720)を駆動することができる第2のクランプ要素駆動信号2412とを生成することができる。いくつかの実施形態では、クランプ信号発生器はまた、クランプLUTを備えることができる。クランプLUTは、転流角αを入力として受信し、クランプ駆動信号(複数可)(電圧など)を出力として生成することができる。いくつかの実施形態では、第1および第2のクランプ要素駆動信号2410、2412は、デジタルアナログ変換器(DAC)を使用して、デジタル信号からアナログ信号に変換することができる。
【0104】
剪断信号発生器は、1つ以上の初期剪断要素駆動信号(複数可)2414を生成するように構成することができる。LUT2406は、補償または誤差補正信号2416のアレイを含むことができる。LUTは、事前計算されて静的プログラムストレージに格納されるか、制御システムの初期化フェーズの一部として計算されるか、またはアプリケーション固有のプラットフォームのハードウェアに格納することができる。使用中、制御システム2400は、システム要件に基づいて、LUTから1つ以上の補償信号(複数可)2416を選択することができる。補償信号2416は、デジタルアナログ変換器(DAC)2418を使用して、デジタル信号からアナログ信号に変換することができる。変換された信号(複数可)2420は、加算接合部2422で初期剪断要素信号(複数可)2414と組み合わされて、1つ以上の修正された剪断要素駆動信号を生成することができる。例えば、図示の実施形態では、2つの修正された剪断要素駆動信号2424および2426が存在する。第1の剪断要素駆動信号2424は、剪断要素の第1のセット(例えば、
図7A~7Dの要素704b、704c、および714)を駆動することができ、第2の剪断要素駆動信号2426は、剪断要素の第2のセット(例えば、
図7A~7Dの要素706b、706c、および718)を駆動することができる。
【0105】
他の実施形態では、補償信号2416および初期剪断要素駆動信号(複数可)2141は、デジタル信号として加算接合部2422で組み合わせることができ、修正された剪断要素駆動信号2424および2426は、DACを使用してアナログ信号に変換することができる。
【0106】
クランプ要素駆動信号(複数可)および修正された剪断要素駆動信号(複数可)を駆動ユニット2408に印加して、駆動ユニットの移動を生成することができる。信号、例えば、クランプ要素駆動信号(複数可)、初期剪断要素駆動信号(複数可)、補償信号(複数可)、および修正された剪断要素駆動信号(複数可)は制御システム2400に印加された周波数fαに依存せずに機能することができる。
【0107】
実施例21
図25は、前述のプロセスを実施するための制御システム2500の別の代表的な実施形態を示している。制御システム2500は、クランプ信号発生器2502、剪断信号発生器2504、およびメモリユニット2508を備えるプロセッサ2506を備えることができる。
【0108】
クランプ信号発生器は、駆動ユニット2510の1つ以上のクランプ要素に印加される1つ以上のクランプ要素駆動信号(複数可)を生成するように構成することができる。例えば、クランプ信号発生器2502は、第1のクランプ要素(例えば、
図7A~7Dの要素716)を駆動することができる第1のクランプ要素駆動信号2512、および、第2のクランプ要素(例えば、
図7A~7Dのクランプ要素720)を駆動することができる第2のクランプ要素駆動信号2514とを生成することができる。いくつかの実施形態では、クランプ信号発生器はまた、クランプLUTを備えることができる。クランプLUTは、転流角αを入力として受信し、クランプ駆動信号(複数可)(電圧など)を出力として生成することができる。いくつかの実施形態では、第1および第2のクランプ要素駆動信号2512、2514は、デジタルアナログ変換器(DAC)を使用して、デジタル信号からアナログ信号に変換することができる。
【0109】
剪断信号発生器は、1つ以上の初期剪断要素駆動信号(複数可)2516を生成するように構成することができる。プロセッサ2506は、1つ以上の誤差補正または補償信号(複数可)2518を生成するように構成することができる。補償信号2518は、デジタルアナログ変換器(DAC)2520を使用して、デジタル信号からアナログ信号に変換することができる。変換された信号(複数可)2522は、加算接合部2524で初期剪断要素信号(複数可)2516と組み合わされて、1つ以上の修正された剪断要素駆動信号を生成することができる。例えば、図示の実施形態では、2つの修正された剪断要素駆動信号2526および2528が存在する。第1の剪断要素駆動信号2424は、剪断要素の第1のセット(例えば、
図7A~7Dの要素704b、704c、および714)を駆動することができ、第2の剪断要素駆動信号2426は、剪断要素の第2のセット(例えば、
図7A~7Dの要素706b、706c、および718)を駆動することができる。
【0110】
クランプ要素駆動信号および修正された剪断要素駆動信号(複数可)は、駆動ユニット2510に印加されて、駆動ユニット2510に対する移動体要素の移動(例えば、変位)を生成することができる。移動体要素xmの変位は、位置エンコーダ2530(上記の位置エンコーダ248および250と同様)を使用して測定することができる。プロセッサ2506は、変位xmを使用して、補償信号2518を計算し、かつ/またはメモリ2508から事前計算された補償信号を選択することができる。例えば、プロセッサ2506は、変位xmと逆剪断定数との積に基づいて補償信号を計算することができる。信号、例えば、クランプ要素駆動信号(複数可)、初期剪断要素駆動信号(複数可)、補償信号(複数可)、および修正された剪断要素駆動信号(複数可)は制御システム2500に印加された周波数fαに依存せずに機能することができる。
【0111】
例示された実施形態を参照して開示の原理を記載し、かつ図示してきたが、例示された実施形態は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細を改変することができることが認識されるであろう。例えば、ソフトウェアにおいて示された例示された実施形態の要素は、ハードウェアで実装されてもよく、逆もまた同様である。また、任意の実施例からの技術は、他の実施例のうちの任意の1つ以上で記載された技術と組み合わせることができる。
【0112】
一般的な考慮事項
この説明の目的のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規の特徴が本明細書に記載されている。開示された方法、装置、およびシステムは、いかなる方法でも限定的であると解釈されるべきではない。むしろ、本開示は、単独で、ならびに互いとの様々な組み合わせおよび部分的な組み合わせで、様々な開示された実施形態のすべての新規性および非自明性および態様を対象とする。開示された方法、装置およびシステムは、任意の特定の態様もしくは特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、任意の1つ以上の特定の利点が存在するか、または問題が解決されることも必要としない。
【0113】
開示された方法のいくつかの動作は、便宜上、特定の順番で記載されているが、以下に記載される具体的な文言によって特定の順序が要求されない限り、この説明方法が並び替えを包含することを理解されるものとする。例えば、順に記載される動作は、いくつかの場合では、並び替えられるかまたは同時に実施されてもよい。さらに、単純化のために、添付の図面は、開示された方法が、他の方法と共に使用され得る様々な方法を示さないことがある。加えて、説明は、開示された方法を説明するために、「提供する(provide)」および「達成する(achieve)」などの用語を使用することがある。これらの用語は、実施される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装態様に応じて、様々であり、当業者には容易に認識可能である。
【0114】
本明細書に記載のすべての特徴は、互いに独立しており、構造的に不可能な場合を除いて、本明細書に記載の他の任意の特徴と組み合わせて使用することができる。
【0115】
本出願および特許請求の範囲において使用される、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数形も含む。さらに、「含む(include)」という用語は「備える(comprise)」を意味する。さらに、「結合された(coupled)」および「関連する(associated)」という用語は、一般に、電気的、電磁的、かつ/または物理的に(例えば、機械的または化学的に)結合されるか、またはリンクされていることを意味し、特定の反対の文言がない結合された、または関連付けられたアイテム間の中間要素の存在を排除しない。
【0116】
以下の説明では、「上(up)」、「下(down)」、「上部(upper)」、「下部(lower)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」、「左(left)」、「右(right)」などの特定の用語が使用され得る。これらの用語は、該当する場合、相対的な関係を扱うときに説明を明確にするために使用される。ただし、これらの用語は、絶対的な関係、位置、および/または方向を意味することを意図したものではない。例えば、オブジェクトに関しては、オブジェクトを裏返すだけで「上部」の表面を「下部」の表面にすることができる。それにもかかわらず、それはまだ同じオブジェクトである。
【0117】
特に明記しない限り、明細書または特許請求の範囲で使用される、材料の量、角度、圧力、分子量、パーセンテージ、温度、時間などを表すすべての数値は、「約(about)」という用語によって修正されるものとして理解されるべきである。したがって、特に明記しない限り、暗黙的または明示的に、記載された数値パラメータは、当業者によく知られている試験条件/方法の下で求められる所望の特性および/または検出限界に依存し得る近似値である。実施形態を考察された先行技術から直接的かつ明示的に区別する場合、「約(about)」という単語が列挙されない限り、実施形態の番号は概算ではない。さらに、本明細書に記載されているすべての選択肢が同等であるわけではない。
【0118】
本開示の原理が適用され得る多数の可能な実施形態の観点では、図示された実施形態は好ましい実施例のみであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと認識すべきである。むしろ、本開示の範囲は、少なくとも以下の特許請求の範囲と同じくらい広い。したがって、我々はこれらの特許請求の範囲の範囲および趣旨内に含まれるすべてのものを特許請求する。