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特許76005443次元架橋構造体、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、塗料、塗膜、レンズ、及び3次元架橋構造体の製造方法
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  • 特許-3次元架橋構造体、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、塗料、塗膜、レンズ、及び3次元架橋構造体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】3次元架橋構造体、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、塗料、塗膜、レンズ、及び3次元架橋構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/00 20060101AFI20241210BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20241210BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241210BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20241210BHJP
   C09D 153/00 20060101ALI20241210BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F265/06
C09D5/00 Z
C09D133/00
C09D153/00
G02B1/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020092218
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021187904
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】菅原 学
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿計
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199717(WO,A1)
【文献】特表平05-506687(JP,A)
【文献】特表平06-503103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00
C08F 265/06
C09D 5/00
C09D 133/00
C09D 153/00
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素官能基を有さない(メタ)アクリル化合物と、水酸基、カルボキシ基またはアミノ基である活性水素官能基を有する(メタ)アクリル化合物との共重合体もしくはブロック重合体である数平均分子量(Mn)が1,000~200,000の範囲の線状高分子を重合する工程、複数の前記線状高分子の一方端部を化学結合させコア部を形成する工程、及び前記線状高分子の水酸基、カルボキシ基またはアミノ基である活性水素官能基を(メタ)アクリル基に変換する工程を含む、数平均分子量(Mn)が5,000~300,000の3次元架橋構造体の製造方法。
【請求項2】
前記線状高分子の一方端部が、ハロゲン基、またはチオカルボニルチオ構造を含む官能基である、請求項1に記載の3次元架橋構造体の製造方法
【請求項3】
前記3次元架橋構造体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.1~3.0である、請求項1又は2に記載の3次元架橋構造体の製造方法
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項で得られた3次元架橋構造体を用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の製造方法
【請求項5】
請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させる硬化物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元架橋構造体、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、塗料、塗膜、レンズ、及び3次元架橋構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂は、紫外線を照射することにより短時間に重合硬化できる特徴を有するため、スマートフォンなどの電子デバイスや自動車外装・内装などの保護コーティング、光学レンズ等の用途において使用されており、今後も成長が見込まれている。紫外線硬化樹脂組成物は、ポリマー、モノマー、光重合開始剤が主要な成分であり、当該ポリマーとしては、モノマーだけでは足りない柔軟性や、硬化収縮を低減させることができる点から紫外線硬化アクリルアクリレートポリマーがよく使用される。ハードコートなどの保護コーティング用途の塗料として、紫外線硬化アクリルアクリレートポリマーを用いることについては、例えば下記特許文献1に記載されている。
【0003】
上記の紫外線硬化アクリルアクリレートポリマーなどのポリマーは、分子量が大きいため塗工時には希釈する有機溶剤を併用しなければならない。多量の有機溶剤の使用は環境への負荷が大きいため、紫外線硬化アクリルアクリレートポリマーを使用する際の有機溶媒の削減が求められている。
【0004】
上記の紫外線硬化アクリルアクリレートポリマーなどのポリマーを含む塗料では、単純に有機溶媒の量を少なくすると粘度が高くなり、塗工できなくなるため、ポリマー自体の粘度を下げる必要がある。
【0005】
また、電子デバイスなどの保護コーティングや光学レンズの分野では、さらに高い耐擦傷性が求められている。さらに近年では、フィルム型ディスプレイなど曲面かつ柔軟な基材への保護コーティングのため、硬化収縮が小さく、柔軟性を有する材料が求められている。
【0006】
しかし、従来知られているフリーラジカル重合などで合成したポリマーでは、不定形な構造を有するため低粘度化するには限界がある。他のポリマーとしては、アニオン重合によるゲル架橋型スターポリマーや中心から規則的に分枝した構造を持つデンドリマーなどがある。しかし、従来のスターポリマーは、直接的に極性基(水酸基等)を導入できず、保護、脱保護を必要とするため、紫外線硬化型ポリマーを合成することが困難である。また、デンドリマーの場合、規則性の高い構造と構造であるものの、保護コーティングや光学レンズの分野に使用する場合、柔軟性や成形収縮に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-207947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように保護コーティングや光学レンズの分野では、紫外線硬化樹脂組成物に用いるポリマーとして、新たなポリマーが求められている。よって、本発明が解決しようとする課題は、保護コーティングや光学レンズ製造用の紫外線硬化樹脂組成物としたときに有機溶剤をほとんど使用しなくてもよい程度に低粘度であり、塗膜やレンズとしたときに成形収縮が小さく、柔軟性や耐擦傷性がよいポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、コア部から複数の線状高分子が放射線状に伸びた特定の構造を有する3次元架橋構造体を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、以下に関する。
項1. 共重合体もしくはブロック重合体である線状高分子を複数有し、前記線状高分子が1つ以上のアクリル基を有し、複数の前記線状高分子の一方端部が集合して化学結合をすることによりコア部を形成する3次元架橋構造体。
項2. 前記線状高分子の一方端部にハロゲン基、またはチオカルボニルチオ構造を含む官能基を有する、項1に記載の3次元架橋構造体。
項3. 重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.1~3.0である、項1又は2に記載の3次元架橋構造体。
項4. 項1~3のいずれか1項に記載の3次元架橋構造体を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
項5. 項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含む塗料。
項6. 項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物である塗膜。
項7. 項4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物であるレンズ。
項8. 活性水素官能基を有する共重合体もしくはブロック重合体である線状高分子を重合する工程、複数の前記線状高分子の一方端部を化学結合させコア部を形成する工程、及び前記線状高分子の活性水素官能基をアクリル基に変換する工程を含む、3次元架橋構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の3次元架橋構造体の硬化物を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、塗料としたときに有機溶剤をほとんど使用しなくてもよい程度に低粘度であり、また硬化させて塗膜やレンズとしたときの成形収縮が小さく、さらに硬化物における柔軟性、透明性及び耐擦傷性に優れる。そのため上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ハードコートなどの保護コーティング用途の塗料、スマートフォンなどのモバイル端末に使用される光学レンズとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の3次元架橋構造体の一態様を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[3次元架橋構造体]
本発明の3次元架橋構造体は、共重合体もしくはブロック重合体である線状高分子(アームポリマー)を複数有し、上記線状高分子が1つ以上のアクリル基(アクリロイル基)を有し、複数の線状高分子の一方端部が集合して化学結合をすることによりコア部(中心核)を形成するという特徴を有する。本発明の明細書における「一方端部」は、上記を意味するものとする。上記線状高分子の「一方端部」における「端部」は、末端のみを意味するのではなく、末端の近傍を含む概念である。本発明の3次元架橋構造体の一態様である構造体を模式的に表すと図1のとおりとなる。
【0014】
本発明の3次元架橋構造体は、特に制限されないが、線状高分子の合成も含めて制御ラジカル(リビングラジカル)重合により製造することが好ましい。特に、ATRP(原子移動ラジカル重合;Atom Transfer Radical Polymerization)、RAFT重合(可逆的付加-開裂連鎖移動重合:Reversible Addition/Fragmentation Chain Transfer polymerization)により製造することが好ましい。ATRPやRAFT重合などの制御ラジカル(リビングラジカル)重合により、成長ラジカルの再結合や不均化を防ぎつつ直線的に重合が進むことで、狭い分子量分布で高い鎖末端官能基率のポリマーを精密に合成することができる。
【0015】
上記線状高分子(アームポリマー)は、図1の模式図において、コア部(中心核)から放射状に延びる線で表される。線状高分子の数平均分子量(Mn)は、例えば1,000~200,000の範囲であり、好ましくは2,000~100,000の範囲である。線状高分子は、活性水素官能基を有さない(メタ)アクリル化合物と活性水素官能基を有する(メタ)アクリル化合物との単量体骨格を有することが好ましい。活性水素官能基としては、例えば水酸基、カルボキシ基、アミノ基が挙げられる。
【0016】
活性水素官能基を有さない(メタ)アクリル化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、活性水素官能基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルイミドが挙げられる。活性水素官能基を有さない化合物としては、(メタ)アクリル化合物f以外に、スチレン及びスチレン誘導体、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0017】
これらの中でも、入手容易性や重合性の観点からメタクリル酸メチル、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。線状高分子は、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム重合体のいずれであってもよい。また、線状高分子は、本発明の効果を損なわない程度に側鎖を有していてもよい。線状高分子は、アクリル基以外に官能基として、アルキル基、エーテル基などの官能基を有してもよい。本発明の3次元架橋構造体における線状高分子(アームポリマー)の数は、例えば3~500、好ましくは6~350である。
【0018】
本発明の3次元架橋構造体のコア部(中心核)では、線状高分子の一方端部が、直接または他の化学構造部を介して任意に化学結合をし、ゲル状のアモルファス構造を有していることが好ましい。化学結合としては、共有結合、イオン結合いずれであってもよい。線状高分子の一方端部を、ジビニル化合物などの多官能反応性化合物と反応させ、上記化学結合を形成させてもよい。また、コア部において放射線状に伸びた線状高分子を束ねるような線状の高分子を有していてもよい。本発明の3次元架橋構造体は、コア部においてゲル状のアモルファス構造を有することで柔軟性を有する構造となり、硬化後の塗膜としたときに透明性を維持しつつ耐摩耗性に優れる。
【0019】
線状高分子の一方端部では、RAFT重合で合成した際の連鎖移動剤(RAFT剤)に由来するチオカルボニルチオ構造(S=C-S)を含む官能基を有していてもよい。また、線状高分子の一方端部では、ATRPにより重合した際の重合開始剤である有機ハロゲン化合物に由来するハロゲン基を含む官能基を有していてもよい。ハロゲン基としては、例えばクロロ(Cl)基、ブロモ(Br)基、ヨード(I)基が挙げられる。ハロゲン基を含む官能基としては、例えばブロモイソプロピル基が挙げられる。
【0020】
本発明の3次元架橋構造体は、数平均分子量(Mn)が例えば5,000~300,000、好ましくは7,000~200,000である。また、重量平均分子量(Mw)が例えば5,000~600,000、好ましくは10,000~400,000である。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.1~3.0の範囲が好ましく、1.1~2.5の範囲がより好ましく、1.1~2.0の範囲がさらに好ましい。Mw/Mnが上記範囲であると分子量分布が狭く、結果として粘度を小さくすることができる。
【0021】
尚、本発明において、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定される値である。
【0022】
測定装置 ; 東ソー(株)製 HLC-8220
カラム ; 東ソー(株)製 ガードカラムHXL-H
+東ソー(株)製 TSKgel G5000HXL
+東ソー(株)製 TSKgel G4000HXL
+東ソー(株)製 TSKgel G3000HXL
+東ソー(株)製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC-8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0023】
本発明の3次元架橋構造体におけるゲル粒子径(D50)は、例えば5~100nm、好ましくは5~50nm、より好ましくは5~30nmである。ゲル粒子径がこの範囲であると、3次元架橋構造体が微小構造となり、これにより粘度が小さくなる。ゲル粒子径は、例えば3次元架橋構造体を樹脂固形分換算で1質量%のテトラヒドロフラン溶液を調製し、これを動的光散乱式粒径分布測定装置にて測定することで算出することができる。
【0024】
[3次元架橋構造体の製造方法]
本発明の3次元架橋構造体は、活性水素官能基を有する共重合体もしくはブロック重合体である線状高分子を重合する工程(線状高分子重合工程)、複数の線状高分子の一方端部を化学結合させてコア部を形成する工程(コア形成工程)、及び線状高分子の活性水素官能基をアクリル基に変換する工程(アクリル基変換工程)を含む方法にて得られる。特に、線状高分子重合工程は、制御ラジカル(リビングラジカル)重合の一種であるRAFT重合やATRPにて行うことが好ましい。なお、本発明の3次元架橋構造体は、本明細書に記載の方法により得られたものに限定されない。
【0025】
RAFT重合では、置換モノマーの一般的なフリーラジカル重合にRAFT平衡に関する反応が加わり、連鎖移動剤(RAFT剤)を介して可逆的な連鎖移動反応によって重合反応が進む。RAFT重合に用いられる連鎖移動剤(RAFT剤)としては、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボナート、キサンタートなどのチオカルボニルチオ化合物、クロロ(Cl)基、ブロモ(Br)基、ヨード(I)基を有するハロゲン化合物を用いることが好ましい。連鎖移動剤(RAFT剤)としては、例えば、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸、2-シアノ-2-プロピル ベンゾジニオネート、シアノメチル メチル(1-フェニル)カーボジチオジオネート、4-シアノ-4-(フェニルカルボチオリノ)ペンタン酸、2-シアノ-2-プロピル ドデシル トリチオカーボネート、2-(ドデシルチオカルバノチオリノ)-2-メチルプロピオン酸、シナノメチル ドデシル トリチオカーボネートを使用することができる。連鎖移動剤(RAFT剤)としては、シグマ・アルドリッチ社製、東京化成工業社製、富士フィルム和光純薬社製などの市販試薬を使用することができる。連鎖移動剤(RAFT剤)としては、単量体に合わせて適切なものを選択することができる。
【0026】
ATRPでは、重合開始剤として有機ハロゲン化合物を使用し、触媒として銅(I)錯体などの遷移金属錯体を使用する。ATRPでは、有機ハロゲン化合物の炭素―ハロゲン結合がラジカル的に開裂し、ハロゲン原子が触媒の金属原子上に移動し、生じた開始剤のラジカルがビニルモノマーの二重結合に付加する。付加によって新たに生じたラジカル活性種は、触媒の金属原子上のハロゲン原子を引き抜くことでドーマント種となる。ラジカル活性種とドーマント種は平衡状態にあるが、平衡はドーマント種に大きく偏っており、低濃度で存在するラジカル活性種の末端がビニルモノマーへ付加しポリマーが成長する。重合開始剤である有機ハロゲン化合物としては、2-ブロモイソ酪酸エチル、臭化2-ブロモ-2-メチルプロピオニル、2-BOC-2-ブロモプロパン、2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸エチルなどを使用することができる。また、触媒としては、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、クロロ(インデニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(ジクロロメタン付加物)、クロロ(η5-ペンタメチルシクロペンタジエン)[ビス(トリフェニルホスフィン)]ルテニウム(II)などを使用することができる。これらの有機ハロゲン化合物や触媒としては、シグマ・アルドリッチ社製、東京化成工業社製、富士フィルム和光純薬社製などの市販試薬を使用することができる。
【0027】
線状高分子重合工程では、例えば上述のRAFT重合やATRPなどの精密ラジカル重合により、メタクリル酸メチル(MMA)、ヒドロキシメチルアクリレート(HEMA)などの単量体を溶剤の存在下で加熱して重合させ、これにより共重合体もしくはブロック重合体として線状高分子を得ることができる。
【0028】
線状高分子は、上述のとおり、活性水素官能基を有さない(メタ)アクリル化合物と活性水素官能基を有する(メタ)アクリル化合物の単量体骨格を有することが好ましい。活性水素官能基としては、例えば水酸基、カルボキシ基、アミノ基が挙げられる。線状高分子重合工程で、活性水素官能基を有する単量体を使用することにより、活性水素官能基を有する線状高分子を得ることが好ましい。しかし、線状高分子の重合後、一方端部に活性水素官能基を導入してもよい。
【0029】
コア形成工程では、線状高分子の一方端部を化学結合させる反応を行う。当該反応は、例えば2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤の存在下、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)などのジビニル化合物である多官能反応性化合物を反応させることにより行う。当該反応は、例えば室温で窒素を導入して脱酸素を行った後、撹拌しながら系内温度が50~100℃になるまで昇温し、50~100℃で5~24時間維持することにより行うことができる。
【0030】
そして、コア形成後、活性水素官能基をアクリル基変換する工程(アクリル基変換工程)では、イソシアネート基含有ビニル化合物、例えば2-イソシアナトエチルアクリラート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等イソシアネート基含有ビニル化合物、または、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸と反応させることにより、活性水素官能基をアクリル基に変換する。当該反応は、3次元架橋構造体となるものをメチルエチルケトンなどに溶解させて溶液とし、イソシアネート基含有ビニル化合物を加え、無機金属触媒の存在下、撹拌しながら系内温度が50~100℃になるまで昇温し、50~100℃で1~8時間維持することにより行うことができる。このようにして本発明の3次元架橋構造体が得られる。
【0031】
[活性エネルギー線硬化型樹脂組成物]
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記3次元架橋構造体を含む限り特に制限されないが、3次元架橋構造体を架橋するため多官能ビニル化合物を含むことが好ましい。このように多官能ビニル化合物を用いて3次元架橋構造体を架橋させることにより、低粘度且つ硬化物における成形収縮が小さく、さらに柔軟性や耐擦傷性が良いという効果を奏する。
【0032】
上記多官能ビニル化合物は、1分子中に2~6個のビニル基を有することが好ましい。2個のビニル基を有する化合物(2官能モノマー)としては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0033】
3個のビニル基を有する化合物(3官能モノマー)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアネート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
4個以上のビニル基を有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの多官能ビニル化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、多官能ビニル化合物とともにビニル基を1つ有する化合物(単官能モノマー)を併用してもよい。
【0035】
上記多官能ビニル化合物の含有量は、3次元架橋構造体100重量部に対して、例えば1~500重量部、好ましくは2~100重量部である。また、多官能ビニル化合物により架橋する際に2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油(株)製「パーブチルO」)などのラジカル重合開始剤を用いてもよい。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記多官能ビニル化合物以外に必要に応じて、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、有機ビーズ、無機微粒子、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等を有していてもよい。
【0037】
上記有機溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0038】
上記有機溶剤は、主に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の粘度を調整する目的で用いるが、通常、不揮発分が30~90質量%の範囲となるように調整することが好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、比較的低粘度であるため、通常の分子量が大きいアクリルアクリレートモリマーに比べて、有機溶剤の使用量を少なくすることができる。
【0039】
上記紫外線吸収剤は、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2′-キサンテンカルボキシ-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-o-ニトロベンジロキシ-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0040】
上記酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0041】
上記シリコン系添加剤は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体など如きアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0042】
上記フッ素系添加剤は、例えば、DIC株式会社「メガファック」シリーズ等が挙げられる。
【0043】
上記有機ビーズは、例えば、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、シリコーンビ-ズ、ガラスビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、メラミン系樹脂ビーズ、ポリオレフィン系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、ポリイミド系樹脂ビーズ、ポリフッ化エチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。これら有機ビーズの平均粒径の好ましい値は1~10μmの範囲である。
【0044】
上記帯電防止剤は、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド又はビス(フルオロスルホニル)イミドのピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、アンモニウム、又はリチウム塩が挙げられる。
【0045】
上記添加剤の使用量は、その効果を十分発揮し、また紫外線硬化を阻害しない範囲が好ましく、具体的には、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中、それぞれ0.1~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、更に、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、3,3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4′-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4′-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′-ジクロロベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなど各種のベンゾフェノン;キサントン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどのキサントン、チオキサントン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなど各種のアシロインエーテル;ベンジル、ジアセチルなどのα-ジケトン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、p-トリルジスルフィドなどのスルフィド類;4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなど各種の安息香酸;3,3′-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノ)クマリン、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4′-メチルジメチルスルフィド、2,2′-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタ-ル、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-[ジ-(エトキシカルボニルメチル)アミノ]フェニル-S-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(4-エトキシ)フェニル-S-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-エトキシ)フェニル-S-トリアジンアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、β-クロルアントラキノン等が挙げられる。これらの光重合開始剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0047】
光重合開始剤の中でも、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンの群から選ばれる1種または2種類以上の混合系を用いることにより、より広範囲の波長の光に対して活性を示し、硬化性の高い塗料が得られるため好ましい。
【0048】
光重合開始剤の市販品は、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア-184」、「イルガキュア-149」、「イルガキュア-261」、「イルガキュア-369」、「イルガキュア-500」、「イルガキュア-651」、「イルガキュア-754」、「イルガキュア-784」、「イルガキュア-819」、「イルガキュア-907」、「イルガキュア-1116」、「イルガキュア-1664」、「イルガキュア-1700」、「イルガキュア-1800」、「イルガキュア-1850」、「イルガキュア-2959」、「イルガキュア-4043」、「ダロキュア-1173」;ビーエーエスエフ社製「ルシリンTPO」;日本化薬株式会社製「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」;ストウファ・ケミカル社製「バイキュア-10」、「バイキュア-55」;アクゾ社製「トリゴナルP1」;サンドズ社製「サンドレイ1000」;アプジョン社製「ディープ」;ワードブレンキンソップ社製「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」等が挙げられる。
【0049】
光重合開始剤の含有量は、光重合開始剤としての機能を十分に発揮しうる量であり、かつ、結晶の析出や塗膜物性の劣化が生じない範囲が好ましく、具体的には、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物全量に対して0.05~10質量%の範囲で用いることが好ましく、なかでも0.1~5質量部の範囲で用いることが特に好ましい。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤と併せて、種々の光増感剤を使用しても良い。光増感剤は、例えば、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物またはニトリル類もしくはその他の含窒素化合物等が挙げられる。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、更に熱重合開始剤を使用することもできる。熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルパーオキシエチルヘキサノエイト、1,1’-ビス-(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物および過酸化水素等が挙げられ、樹脂組成物100質量部に対して、0.05~20質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、粘度や屈折率の調整、あるいは、塗膜の色調の調整やその他の塗料性状や塗膜物性の調整を目的に各種の配合材料、例えば、上記有機溶剤、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、カーボン、酸化チタン、アルミナ、銅、シリカ微粒子等の各種の有機又は無機粒子、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、防錆剤、スリップ剤、ワックス、艶調整剤、離型剤、相溶化剤、導電調整剤、顔料、染料、分散剤、分散安定剤、シリコーン系、炭化水素系界面活性剤等を含んでもよい。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記3次元架橋構造体、多官能ビニル化合物、光重合開始剤、有機溶剤などを適宜加えて混合溶液とすることで得られる。本発明の塗料は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含み、特にハードコート用塗料として好適に使用できる。
【0054】
[塗膜]
本発明の塗膜は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物である。上記塗膜は、例えば、上記3次元架橋構造体、多官能ビニル化合物、光重合開始剤、有機溶剤など含む混合溶液を攪拌後、この混合溶液をPETフィルムなどの基材上に塗工し、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより得られる。上記混合溶液を、塗工に適した粘度まで、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより半硬化させ、塗工後に再度活性エネルギー線を照射することに完全硬化させてもよい。本発明の塗膜は、特にハードコート塗膜として有用である。
【0055】
[レンズ]
本発明のレンズは、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物である。上記レンズは、例えば金型などの型に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を射出し、活性エネルギー線を照射することで硬化させて成形することにより得られる。本発明のレンズは、特に光学レンズとして有用である。なお、上記活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線をいう。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化後の塗膜(特にハードコート塗膜)における成形収縮が小さく、さらに柔軟性や耐擦傷性が良いため、スマートフォン、タブレット端末などの電子デバイス向けのハードコート、スマートフォン、デジタルカメラなどに搭載される光学レンズ(例えばフラッシュレンズ、フレネルレンズ、望遠レンズ)に適している。
【実施例
【0057】
以下に本発明を具体的な製造例、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。下記の方法で、アクリル基を導入した本発明の3次元架橋構造体を製造し、粘度とゲル粒子径を測定した。さらに、3次元架橋構造体を架橋させてフィルムに塗工し、硬化させた塗膜についてスチールウール(SW)試験を行った。それぞれの3次元架橋構造体における樹脂組成と、線状高分子(直鎖状ポリマー)の分子量、ゲル粒子径、粘度、スチールウール(SW)試験の結果を表1に示す。
【0058】
[分子量-GPC測定]
本発明の実施例では、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
測定装置:高速GPC装置(東ソー(株)製「HLC-8220GPC」)
カラム ; 東ソー(株)製 ガードカラムHXL-H
+東ソー(株)製 TSKgel G5000HXL
+東ソー(株)製 TSKgel G4000HXL
+東ソー(株)製 TSKgel G3000HXL
+東ソー(株)製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC-8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0059】
[ゲル粒子径測定]
アクリル基を導入した3次元架橋構造体について、樹脂固形分換算で1質量%のテトラヒドロフラン溶液を調製した。これを動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500((株)堀場製作所製)にて平均粒子径(D50)を評価した。
【0060】
[粘度-EMS測定]
アクリル基を導入した3次元架橋構造体について、樹脂固形分換算で40質量%のポリマー溶液を調製した。これを専用のガラス管、およびφ2.0mm 球状プローブを投入し密封した。これを非接触式粘度測定装置EMS-1000(京都電子工業(株)製)を用いてプローブの回転数により23℃における粘度を測定した。粘度値により下記の基準により塗工性を評価した。
○(良い):粘度=1000mPa・s未満
×(悪い):粘度=1000mPa・s以上
【0061】
[耐摩耗性-スチールウール(SW)試験]
往復摩耗試験機TYPE 30S(新東科学(株)製)を用いて、スチールウール(日本スチールウール(株)製「ボンスター#0000」0.5gで円盤状の圧子を包み、該圧子に500g重の荷重をかけてフィルムの塗膜表面を100往復させた。試験前後の塗膜のヘーズ値をスガ試験機(株)製「ヘーズコンピュータHZ-2」を用いて測定し、δH値から下記の基準により耐磨耗性を評価した。
○(良い):δH値=10未満
×(悪い):δH値=10以上
【0062】
[実施例1]
まず、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルエチルケトン45質量部、メタクリル酸メチル(MMA)20.6質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)20.6質量部、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸3.8質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.35質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で18時間反応させ、線状高分子として数平均分子量5,500、重量平均分子量6,400の直鎖状アクリル樹脂(MMA/HEMA=50/50)を得た。
次に、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた直鎖状アクリル樹脂18質量部、メチルエチルエトン583質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.20質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)6.9質量部を加え、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で18時間反応させ、水酸基をもつ3次元架橋構造体として数平均分子量19,100、重量平均分子量25,800のポリマーを得た。
そして、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた3次元架橋構造体(固形分率40.4質量%のメチルエチルケトン溶液)25質量部、2-イソシアナトエチルアクリラート(AOI、昭和電工(株)製)3.5質量部、ネオスタンU-28(日東化成(株)製)0.0041質量部、メトキノン0.0041質量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.041質量部を加えた。その後、空気気流下で撹拌しながら系内温度が80℃になるまで昇温し、80℃で4時間反応させ、アクリル基を導入した3次元架橋構造体として数平均分子量9,800、重量平均分子量17,500のポリマーを得た。この3次元架橋構造体溶液を用いて上記の方法で粘度及びゲル粒子径を測定した。
得れたアクリル基を導入した3次元架橋構造体75質量部、アロニックスM-404(DPHA、東亜合成(株)製)25質量部、BYK-3505(ビックケミー・ジャパン社製)0.1質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(品名「イルガキュア184」、チバスペシャルティケミカルズ社製)4質量部、メチルエチルエトン233質量部の混合溶液を作製した。この溶液をPETフィルム上に厚み5μmで塗工した後、紫外線照射装置CSOT-40((株)GSユアサ製)で硬化させて塗膜を得た。このPETフィルム上に塗膜が形成された試験片を用いて上記の方法でスチールウール試験を行った。
【0063】
[実施例2]
まず、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルエチルケトン45質量部、メタクリル酸メチル(MMA)16.5質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)24.7質量部、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸3.8質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.35質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で18時間反応させ、線状高分子として数平均分子量5,200、重量平均分子量6,000の直鎖状アクリル樹脂(MMA/HEMA=40/60)を得た。
次に、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた直鎖状アクリル樹脂18質量部、メチルエチルエトン592質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.19質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)6.5質量部を加え、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で18時間反応させ、水酸基をもつ3次元架橋構造体として数平均分子量17,500、重量平均分子量23,900のポリマーを得た。
そして、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた3次元架橋構造体(固形分率41.3質量%のメチルエチルケトン溶液)25質量部に、2-イソシアナトエチルアクリラート(AOI、昭和電工(株)製)4.4質量部、ネオスタンU-28(日東化成(株)製)0.0044質量部、メトキノン0.0059質量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.044質量部を加えた。その後、空気気流下で撹拌しながら系内温度が80℃になるまで昇温し、80℃で4時間反応させ、アクリル基を導入した3次元架橋構造体として数平均分子量8,700、重量平均分子量15,900のポリマーを得た。この3次元架橋構造体溶液を用いて上記の方法で粘度及びゲル粒子径を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0064】
[実施例3]
まず、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、エタノール3.2質量部、メチルエチルケトン11質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)17.6質量部、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸4.1質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.28質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で16時間反応させ、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を重合した。室温まで冷却後、メチルエチルケトン18質量部、メタクリル酸メチル(MMA)26.4質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.28質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で16時間反応させ、線状高分子として数平均分子量5,200、重量平均分子量5,800の直鎖状ブロック化アクリル樹脂(HEMA-b-MMA=40/60)を得た。
次に、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた直鎖状アクリル樹脂12質量部、メチルエチルエトン382質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.13質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)4.4質量部を加え、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で18時間反応させ、水酸基をもつ3次元架橋構造体として数平均分子量27,400、重量平均分子量39,200のポリマーを得た。
そして、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた3次元架橋構造体(固形分率37.4質量%のメチルエチルケトン溶液)27質量部、2-イソシアナトエチルアクリラート(AOI、昭和電工(株)製)2.9質量部、ネオスタン U-28(日東化成(株)製)0.0039質量部、メトキノン0.0052質量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.039質量部を加えた。その後、空気気流下で撹拌しながら系内温度が80℃になるまで昇温し、80℃で4時間反応させ、アクリル基を導入した3次元架橋構造体として数平均分子量18,000、重量平均分子量38,600のポリマーを得た。この3次元架橋構造体溶液を用いて上記の方法で粘度及びゲル粒子径を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0065】
[実施例4]
まず、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、エタノール4.8質量部、メチルエチルケトン8.5質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)18.4質量部、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸2質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.14質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で16時間反応させ、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシエチルを重合した。室温まで冷却後、メチルエチルケトン18.7質量部、メタクリル酸メチル(MMA)27.6質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.14質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で16時間反応させ、さらに線状高分子として数平均分子量8,600、重量平均分子量9,400の直鎖状ブロック化アクリル樹脂(HEMA-b-MMA=40/60)を得た。
次に、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた直鎖状アクリル樹脂12質量部、メチルエチルエトン339質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.08質量部、エチレングリコールジメタクリレート2.7質量部を加え、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で18時間反応させ、水酸基をもつ3次元架橋構造体として数平均分子量34,000、重量平均分子量46,700の3次元架橋構造体を得た。
そして、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた3次元架橋構造体(固形分率31.7質量%のメチルエチルケトン溶液)25質量部に、2-イソシアナトエチルアクリラート(AOI、昭和電工(株)製)2.6質量部、ネオスタン U-28(日東化成(株)製)0.0032質量部、メトキノン0.0043質量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.032質量部を加えた。その後、空気気流下で撹拌しながら系内温度が80℃になるまで昇温し、80℃で4時間反応させ、アクリル基を導入した3次元架橋構造体として数平均分子量26,200、重量平均分子量61,200のポリマーを得た。この3次元架橋構造体溶液を用いて上記方法で粘度及びゲル粒子径を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0066】
[実施例5]
まず、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルエチルケトン20.0質量部、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸4.1質量部、メタクリル酸メチル(MMA)26.4質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.19質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で16時間反応させ、ポリメタクリル酸メチルを重合した。室温まで冷却後、エタノール3.2質量部、メチルエチルケトン8.8質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)17.6質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.19質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で16時間反応させ、さらに線状高分子として数平均分子量5,400、重量平均分子量5,900の直鎖状ブロック化アクリル樹脂(MMA-b-HEMA=40/60)を得た。
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた直鎖状アクリル樹脂18質量部、メチルエチルエトン555質量部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.10質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)6.2質量部を加え、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。その後、撹拌しながら系内温度が70℃になるまで昇温し、70℃で18時間反応させ、水酸基をもつ3次元架橋構造体として数平均分子量25,100、重量平均分子量33,400の3次元架橋構造体を得た。
そして、撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、得られた3次元架橋構造体(固形分率43.0質量%のメチルエチルケトン溶液)28質量部、2-イソシアナトエチルアクリラート(AOI、昭和電工(株)製)3.5質量部、ネオスタン U-28(日東化成(株)製)0.0047質量部、メトキノン0.0062質量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.047質量部を加えた。その後、空気気流下で撹拌しながら系内温度が80℃になるまで昇温し、80℃で4時間反応させ、アクリル基を導入した3次元架橋構造体として数平均分子量19,700、重量平均分子量37,800のポリマーを得た。この3次元架橋構造体溶液を用いて上記方法で粘度及びゲル粒子径を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0067】
[比較例1]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン154質量部を仕込み、撹拌しながら系内温度が110℃になるまで昇温し、グリシジルメタクリレート200質量部、メチルメタクリレート300質量部の混合液、およびメチルイソブチルケトン90質量部とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油(株)製「パーブチルO」)10質量部からなる混合液を4時間かけて敵下ロートより滴下した後、110℃で18時間保持した。その後、80℃まで温度を下げた後、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.8質量部、メトキノン0.3質量部、およびアクリル酸(AA)103質量部を仕込んだ後、トリフェニルホスフィン3質量部を添加して、さらに105℃まで昇温して酸価が5mgKOH/g以下であることを確認し、数平均分子量14,900、重量平均分子量30,300のポリマーを得た。このポリマーの溶液について、上記方法で粘度を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0068】
[比較例2]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン154質量部を仕込み、撹拌しながら系内温度が110℃になるまで昇温し、グリシジルメタクリレート300質量部、メチルメタクリレート200質量部の混合液、およびメチルイソブチルケトン90質量部とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油(株)製「パーブチルO」)10質量部からなる混合液を4時間かけて滴下ロートより滴下した後、110℃で18時間保持した。その後、80℃まで温度を下げた後、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.8質量部、メトキノン0.3質量部、およびアクリル酸(AA)154質量部を仕込んだ後、トリフェニルホスフィン3質量部を添加して、さらに105℃まで昇温して酸価が5mgKOH/g以下であることを確認し、数平均分子量12,100、重量平均分子量34,700のポリマーを得た。であるアクリルアクリレートを得た。このアクリル樹脂について、上記方法で粘度を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0069】
[比較例3]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン154質量部を仕込み、撹拌しながら系内温度が110℃になるまで昇温し、グリシジルメタクリレート400質量部、メチルメタクリレート100質量部の混合液、およびメチルイソブチルケトン90質量部とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油(株)製「パーブチルO」)10質量部からなる混合液を4時間かけて敵下ロートより滴下した後、110℃で18時間保持した。その後、80℃まで温度を下げた後、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.8質量部、メトキノン0.3質量部、およびアクリル酸(AA)205質量部を仕込んだ後、トリフェニルホスフィン3質量部を添加して、さらに105℃まで昇温して酸価が5mgKOH/g以下であることを確認し、数平均分子量14,200、重量平均分子量41,900のポリマーを得た。このポリマーの溶液について、上記方法で粘度を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0070】
[比較例4]
撹拌装置、冷却管、および窒素導入管を備えた4つ口フラスコを窒素置換し、溶剤としてメチルイソブチルケトン400質量部、グリシジルメタクリレート237質量部、メチルメタクリレート356質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。窒素気流下にて攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、2,2’-ビピリジル10.9質量部、塩化第一銅3.5質量部を仕込み、フラスコ内を40℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2-ブロモイソ酪酸エチル6.8質量部を加え、窒素気流下40℃で6時間反応させた。触媒除去のため、得られた反応物をメチルエチルケトンで希釈、イオン交換樹脂を加えて1時間攪拌した。これをイオン交換樹脂で濾過することにより直鎖状アクリル樹脂(HEMA/MMA=40/60)溶液を得た。
さらに、この直鎖状アクリル樹脂を含む溶液を80℃まで温度を下げた後、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.8質量部、メトキノン0.3質量部、およびアクリル酸(AA)121質量部を仕込んだ後、トリフェニルホスフィン3質量部を添加して、さらに105℃まで昇温して酸価が5mgKOH/g以下であることを確認し、分子量分布の狭い直鎖状アクリル樹脂を得た。この樹脂の分子量をGPCで測定した結果、数平均分子量(Mn)26,800、重量平均分子量(Mw)37,600であった。このアクリル樹脂を含む溶液について、上記方法で粘度を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0071】
[比較例5]
撹拌装置、冷却管、および窒素導入管を備えた4つ口フラスコを窒素置換し、溶剤としてメチルイソブチルケトン400質量部、グリシジルメタクリレート237質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。窒素気流下にて攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、2,2’-ビピリジル10.9質量部、塩化第一銅3.5質量部を仕込み、フラスコ内を40℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2-ブロモイソ酪酸エチル6.8質量部を加え、窒素気流下40℃で4時間反応させポリグリシジルメタクリレートを得た。この反応液にあらかじめ窒素導入により脱酸素をしておいたメチルメタクリレート356質量部を仕込んだ。窒素気流下40℃で4時間反応させた。触媒除去のため、得られた反応物をメチルエチルケトンで希釈、イオン交換樹脂を加えて1時間攪拌した。イオン交換樹脂を濾過後、直鎖状ブロック化アクリル樹脂(HEMA-b-MMA=40/60)溶液を得た。
さらにこのアクリル樹脂溶液を80℃まで温度を下げた後、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.8質量部、メトキノン0.3質量部、およびアクリル酸(AA)121質量部を仕込んだ後、トリフェニルホスフィン3質量部を添加して、さらに105℃まで昇温して酸価が5mgKOH/g以下であることを確認し、分子量分布の狭い直鎖状アクリル樹脂を得た。この樹脂の分子量をGPCで測定した結果、数平均分子量(Mn)23,300、重量平均分子量(Mw)39,000であった。このアクリル樹脂上記方法で粘度を測定した。
その後、実施例1と同様にしてスチールウール試験用試験片の作製し、スチールウール試験を行った。
【0072】
[比較例6]
撹拌装置、冷却管、および窒素導入管を備えた4つ口フラスコを窒素置換し、溶剤としてメチルエチルケトン400質量部、グリシジルメタクリレート237質量部、メチルメタクリレート356質量部を仕込み、室温で1時間窒素を導入して脱酸素を行った。窒素気流下にて攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、2,2’-ビピリジル43.6質量部、塩化第一銅14質量部を仕込み、フラスコ内を40℃に保ちながら30分撹拌した。その後、2-ブロモイソ酪酸エチル27.2質量部を加え、窒素気流下40℃で6時間反応させ、直鎖状ポリマーを得た。この直鎖状ポリマーの分子量をGPCで測定した結果、数平均分子量(Mn)6,800、数平均分子量(Mw)7,700であった。次いであらかじめ脱酸素をしておいたメチルエチルケトン2000質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)6.2質量部を加え、50℃で18時間反応させ。触媒除去のため、得られた反応物をメチルエチルケトンで希釈、イオン交換樹脂を加えて1時間攪拌した。イオン交換樹脂を濾過後、エポキシ基をもつ3次元架橋構造体を得た。
この3次元架橋構造体溶液を、エバポレーターで一部脱溶剤することで固形分率55質量%のエポキシ基をもつ3次元架橋構造体メチルエチルケトン溶液とした。
撹拌装置、冷却管、および酸素導入管を備えた4つ口フラスコに、この3次元架橋構造体メチルエチルケトン溶液1200質量部、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.8質量部、メトキノン0.3質量部、およびアクリル酸(AA)121質量部を仕込んだ後、トリフェニルホスフィン3質量部を添加して、さらに105℃まで昇温した。105℃で4時間後、酸価が5mgKOH/g以下となる前にフラスコ内がゲル化により固化した。そのため評価できなかった(N.D)。
【0073】
【表1】
【0074】
比較例1-3は、従来のフリーラジカル重合によって得られたエポキシ基-アクリル酸付加による従来のアクリル基を有する線状高分子を使用した。比較例4,5は、制御ラジカル重合により共重合、またはブロック化したエポキシ基-アクリル酸付加によるアクリル基を有した線状高分子を使用した。比較例6では、エポキシ基-アクリル酸付加によってアクリル基をもった3次元架橋構造体を作成しようしたが、エポキシ基-アクリル酸の意図しない架橋反応により溶液が完全ゲル化してしまい目的とする3次元架橋構造体は作成できなかった。一方、実施例1~5は、3次元架橋構造体の粒子径が10nm程度と非常に小さく、比較例1-5に比べて粘度が低い。そのため溶剤が少なくてもハードコート剤等として使用できることが分かる。また、実施例1~5の3次元架橋構造体から得られた塗膜は、耐摩耗性が良く、ハードコート性に優れることが分かる。
図1