IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特許7600585液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
<>
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図1
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図2
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図3
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図4
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図5
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図6
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図7
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図8
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図9
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図10
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図11
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図12
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図13
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図14
  • 特許-液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241210BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/16 201
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020155490
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049338
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】小林 高弘
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-256165(JP,A)
【文献】特開2011-173304(JP,A)
【文献】特開2017-144665(JP,A)
【文献】特開2017-154262(JP,A)
【文献】特開2005-007789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有するノズル板と、
前記ノズルを露出する開口部を有し、少なくとも前記ノズルの外周を覆うカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、接着剤により接合され、前記開口部の周縁領域、及び前記開口部の周縁領域よりも外側の領域に、液滴吐出方向に突出した凸部を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記開口部の周縁領域、及び前記カバー部材の外側端部の周縁領域に、前記凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記凸部が、少なくとも前記液体吐出ヘッドの走査方向と直交する方向に延在することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記凸部が、少なくとも前記液体吐出ヘッドの走査方向の下流側に設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記カバー部材の外側端部に接着剤のフィレット形状部を有すること特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記カバー部材の前記開口部の側面を除く表面及びノズル板表面に撥インク処理を施し、前記カバー部材の前記開口部の側面に親インク処理を施したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドの前記カバー部材の前記凸部が、液滴が吐出される被記録媒体の被記録面と接触しないことを特徴とする請求項8に記載の液体を吐出する装置。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドの前記カバー部材の前記凸部が、液滴が吐出される被記録媒体の被記録面に対する移動方向において先頭側に設けられたことを特徴とする請求項8または9に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、インク液滴を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体を吐出する装置(例えば、インクジェット記録装置)が知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドには、ワイパ等のクリーニング部材との接触や、ジャム時の被記録媒体(吐出対象物)との衝突等による外力から保護するために、ノズル(インク滴吐出口)が形成されたノズル板にカバー部材を装着する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
カバー部材がノズル板に取り付けられると、該カバー部材の厚み分だけヘッド全体の厚みが増加するため、被記録媒体とカバー部材とが接触しないように距離(プラテンギャップ)を十分に確保する必要がある。しかしながら、被記録媒体とカバー部材との距離を確保することにより、ノズルから被記録媒体への距離も大きくなるため、液滴の着弾位置ズレや着弾前の液滴のミスト化等の不具合を招くおそれがある。
これに対し、特許文献1には、ノズル板とカバー部材との間の高低差を低減しつつ導通を確保することが可能な液体噴射ヘッドが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体を吐出する装置は、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置である。ここで、「液体が付着可能なもの」としては、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、その材質としては、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどが挙げられる。
【0006】
被記録媒体には、その材質により被記録面である表面に毛羽立ち等を生じているものがある。毛羽等の異物が液体吐出ヘッドのノズルに当接すると、吐出不良や破損の原因となることがある。
表面に生じた毛羽の程度や長さは被記録媒体の種類や材質によって様々であるが、液体吐出ヘッドにカバー部材を設けていても、ノズルが露出している限り、特に、ノズル板とカバー部材との間の高低差を低減した態様においては、毛羽がノズルに当接するのを防ぐことが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、液体を吐出する対象である被記録媒体の毛羽立ち等の表面状態にかかわらず、吐出不良や破損を防止可能な液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルを有するノズル板と、前記ノズルを露出する開口部を有し、少なくとも前記ノズルの外周を覆うカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、接着剤により接合され、前記開口部の周縁領域と、前記開口部の周縁領域よりも外側の領域とに、液滴吐出方向に突出した複数の凸部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体を吐出する対象である被記録媒体の毛羽立ち等の表面状態にかかわらず、吐出不良や破損を防止可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例を示す要部断面模式図である。
図2】本実施形態に係る液体吐出ヘッドのカバー部材をノズル板に接合する前の状態を示す模式図である。
図3】カバー部材の説明図である。
図4】本実施形態に係る液体吐出ヘッドのカバー部材の第一の実施形態(A)及び第二の実施形態(B)を示す平面模式図である。
図5】液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
図6】液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
図7】液体吐出ヘッドの外観斜視図である。
図8】液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
図9】液体を吐出する装置の一例を示す説明図である。
図10図9の液体を吐出する装置が備えるヘッドユニットの平面説明図である。
図11】液体供給装置を構成する液体循環装置のブロック説明図である。
図12】液体を吐出する装置の要部平面説明図である。
図13】液体を吐出する装置の要部側面説明図である。
図14】液体吐出ユニットの一例を示す要部平面説明図である。
図15】液体吐出ユニットの一例を示す要部正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
図1は、本発明の一本実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例を示す要部断面模式図であり、図2は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドのカバー部材をノズル板に接合する前の状態を示す模式図である。また、図3は、カバー部材の説明図である。
【0013】
本発明に係る液体吐出ヘッド100は、液滴を吐出するノズル4を有するノズル板1と、ノズル4を露出する開口部41を有し、少なくともノズル4の外周を覆うカバー部材40と、を備える。
カバー部材40は、開口部41の周縁領域(例えば、図3において符号42で示す領域)、及び開口部41の周縁領域42よりも外側の領域に、液滴吐出方向に突出した凸部44を有する。液体吐出方向は、図1中矢印Eで示す方向である。
【0014】
カバー部材40は、図2に示すように、ノズル板1のノズル4(ノズル列)以外の領域を被覆する部材であり、接着剤により接合される。
図1に示すように、カバー部材40の外側端部と液体吐出ヘッド100本体との間に接着剤のフィレット形状部45が形成されている。
フィレット形状部45は、接合時の押圧によりはみ出した接着剤、または補充した接着剤がカバー部材40の外側端部(例えば、図3において符号46で示す領域)に沿って液体吐出ヘッド100との間に略均一に濡れ広がることにより形成される。
【0015】
フィレット形状部45が形成されることにより、カバー部材40と液体吐出ヘッド100本体との接着強度が高まるため、被記録媒体の衝突等の外力による剥離を防止することができる。
【0016】
カバー部材40の凸部44は、被記録媒体の被記録面の表面に生じている毛羽等の異物に当接し、移動に伴いこれを屈曲させたり押さえ込んだりすることにより表面を均し、ノズル4に当該異物が当接しないようにするために設けられている。
毛羽立ちの発生の程度や毛羽等の異物の長さは被記録媒体の材質や種類によって様々であるが、凸部44の高さを適宜調整することにより、ノズル板1とカバー部材40との高低差を大きくすることなく、毛羽等の異物がノズル4に当接するのを防ぐことができる。
【0017】
カバー部材40の凸部44は、開口部41の周縁領域42と、開口部41の周縁領域42よりも外側の領域に設けられるが、後者の凸部44は、カバー部材40の外側端部の周縁領域(例えば、図3において符号43で示す領域)に設けられることが好ましい。
凸部44が配設される間隔を大きくすることにより、より確実に被記録媒体の表面を均すことができる。
【0018】
凸部44は、少なくとも液体吐出ヘッド100の走査方向(矢印D)と直交する方向に延在することが好ましい。
また、凸部44は、複数のノズル4(ノズル列)の配列方向と直交する方向に延在することが好ましい。
さらに、凸部44は、少なくとも液体吐出ヘッド100の走査方向(矢印D)の下流側に設けられることが好ましい。すなわち、液体吐出ヘッド100が装置に搭載された態様において、凸部44が先頭となるように液体吐出ヘッド100が走査することが好ましい。
これにより、毛羽立ちがノズル4に当接するのをより確実に防ぐことができるとともに、凸部44により均された表面に液体を吐出することができる。
【0019】
図4は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドのカバー部材40の例を示す平面模式図であり、図4(A)は第一の実施形態、図4(B)は第二の実施形態である。
凸部44の配置はこれらに限定されないが、例えば、図4(A)に示すように凸部44が液体吐出ヘッド100の走査方向と直交する長手方向にのみ配設された態様であってもよく、図4(B)に示すように凸部44が開口部41の周縁領域42と、カバー部材40の外側端部の周縁領域43の全周にわたって配設された態様であってもよい。
【0020】
凸部44を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、絞り加工などによりカバー部材40と一体に形成される方法、別部材を溶接や接着剤等を用いて接合することにより形成する方法等が挙げられる。
別部材として形成される凸部44の材質は、カバー部材40の材質と同じであっても異なっていてもよい。凸部44の材質としては、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。
【0021】
凸部44が被記録媒体の被記録面と接触すると、液体の吐出により形成された画像を汚損して品質低下を招くおそれがあるため、凸部44は、液体吐出ヘッド100が装置に搭載された態様において、液滴が吐出される被記録媒体の被記録面とは接触しないことが好ましい。
【0022】
ところで、液体吐出ヘッド100からインクを吐出して画像を形成する場合、高い画像品質を得るためには、ノズル4から吐出される液滴が、ノズル板1に対し垂直の方向に直進することが必要となる。
しかしながら、ノズル板1の表面が十分に清掃されない場合や、連続して長時間駆動を続けた場合に、液滴がノズル4の周辺部、特にカバー部材40の開口部41との段差部に堆積してしまうおそれがある。堆積した液滴が次第に増加してノズル4の周辺に付着すると、当該付着した液体に引張られ、吐出の曲がりが生じることがある。
【0023】
このような弊害を防止するために、開口部41の側面を除くカバー部材40の表面及びノズル板1の表面に撥インク処理を施し、開口部41の側面には親インク処理を施すことが好ましい。
開口部41の側面に撥インク層を設けず親インク性にすることで、余分な液滴の退避部が形成され、長期にわたり直進性の高い吐出が得られる。
なお、吐出される液体がインク以外の液体である場合は、同様に、開口部41の側面を除くカバー部材40の表面及びノズル板1の表面に当該液体をはじく処理を施し、開口部41の側面には当該液体との親和性を付与する処理を施すことが好ましい。
【0024】
以上のように、本実施形態の液体吐出ヘッドによれば、被記録媒体の毛羽立ち等の表面状態にかかわらず、吐出不良や破損の発生を防止することができる。
以下、本発明を適用可能な液体吐出ヘッドの例、及び本発明に係る液体吐出ヘッドを備える液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置について説明する。
【0025】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0026】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0027】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0028】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0029】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0030】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0031】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0032】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0033】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0034】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0035】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0036】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0037】
「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0038】
「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0039】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0040】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0041】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0042】
(液体吐出ヘッド)
本発明を適用可能な液体吐出ヘッドの実施形態について図5及び図6を参照して説明する。図5は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(圧力室長手方向)に沿う断面説明図、図6は同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【0043】
液体吐出ヘッド100は、ノズル板1と、個別流路部材である流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材20とを備えている。
【0044】
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
【0045】
流路板2は、複数のノズル4に通じる複数の圧力室6と、各圧力室6にそれぞれ通じる個別流路である個別供給流路7と、1又は複数(本実施形態では1つ)の個別供給流路7に通じる液導入部となる中間供給流路8を形成している。
【0046】
振動板部材3は、流路板2の圧力室6の壁面を形成する変位可能な複数の振動板(振動領域)30を有する。ここでは、振動板部材3は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層3Aと、厚肉部を形成する第2層3Bで構成されている。
【0047】
そして、薄肉部である第1層3Aで圧力室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。振動領域30内には、第2層3Bで圧電アクチュエータ11と接合する厚肉部である凸部30aを形成している。
【0048】
そして、振動板部材3の圧力室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0049】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子12を所定の間隔で櫛歯状に形成している。そして、圧電素子12は、振動板部材3の振動領域30に形成した厚肉部である凸部30aに接合している。
【0050】
この圧電素子12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0051】
共通流路部材20は複数の圧力室6に通じる共通供給流路10を形成している。共通供給流路10は、振動板部材3に設けた開口部9を介して液導入部となる中間供給流路8に連通し、中間供給流路8を介して個別供給流路7に通じている。
【0052】
この液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子12に与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子12が収縮し、振動板部材3の振動領域30が引かれて圧力室6の容積が膨張することで、圧力室6内に液体が流入する。
【0053】
その後、圧電素子12に印加する電圧を上げて圧電素子12を積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させることにより、圧力室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0054】
循環型液体吐出ヘッドの例を図7及び図8に基づき説明する。
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材20とを備えている。
【0055】
そして、流路板2は、複数のノズル4に各々ノズル連通路5を介して通じる複数の圧力室6と、複数の圧力室6に各々通じる複数の流体抵抗部を兼ねる個別供給流路7と、2以上の個別供給流路7に通じる1又は複数の液導入部となる中間供給流路8などを形成している。
【0056】
個別供給流路7は、前記実施形態と同様に、個別供給流路7は、圧力室6よりも流体抵抗が高い2つの第1流路部7A及び第2流路部7Bと、第1流路部7Aと第2流路部7Bとの間に配置され、第1流路部7A及び第2流路部7Bよりも流体抵抗が低い第3流路部7Cとを含む。
【0057】
なお、流路板2は、複数枚の板状部材2A~2Eを積層して構成しているが、これに限るものではない。
【0058】
また、流路板2は、複数の圧力室6にノズル連通路5を介して各々通じる流路板2の面方向に沿う複数の個別回収流路57と、2以上の個別回収流路57に通じる1又は複数の液導出部となる中間回収流路58を形成している。
【0059】
個別回収流路57は、圧力室6よりも流体抵抗が高い2つの第1流路部57A及び第2流路部57Bと、第1流路部57Aと第2流路部57Bとの間に配置され、第1流路部57A及び第2流路部57Bよりも流体抵抗が低い第3流路部57Cとを含む。個別回収流路57は、第2流路部57Bよりも循環方向において下流側となる流路部57Dは第3流路部57Cと同じ流路幅にしている。
【0060】
共通流路部材20は、共通供給流路10と共通回収流路50とを形成している。なお、本実施形態においては、共通供給流路10は、ノズル配列方向において共通回収流路50と並ぶ流路部分10Aと、共通回収流路50と並ばない流路部分10Bとで構成している。
【0061】
共通供給流路10は、振動板部材3に設けた開口部9を介して液導入部となる中間供給流路8に連通し、中間供給流路8を介して個別供給流路7に通じている。共通回収流路50は、振動板部材3に設けた開口部59を介して液導出部となる中間回収流路58に連通し、中間回収流路58を介して個別回収流路57に通じている。
【0062】
また、共通供給流路10は供給ポート71に通じ、共通回収流路50は回収ポート72に通じている。
【0063】
なお、その他の振動板部材3の層構成、圧電アクチュエータ11の構成などは上述の構成と同様である。
【0064】
この液体吐出ヘッド100においても、圧電素子12を積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させることにより、圧力室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0065】
また、ノズル4から吐出されない液体はノズル4を通過して個別回収流路57から共通回収流路50に回収され、共通回収流路50から外部の循環経路を通じて共通供給流路10に再度供給される。また、ノズル4から液体吐出を行っていないときも、共通供給流路10から圧力室6を経て共通回収流路50に液体が循環し、外部の循環経路を通じて共通供給流路10に再度供給される。
【0066】
このように、本実施形態の液体吐出ヘッドは、簡単な構成で液体吐出に伴う圧力変動を減衰して、共通供給流路10、共通回収流路50に対する伝搬を抑制することができる。
【0067】
(液体を吐出する装置)
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図9及び図10を参照して説明する。図9は同装置の概略説明図、図10は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
本発明に係る液体を吐出する装置は、上述の本発明に係る液体吐出ヘッド100を備えている。
本実施形態の液体を吐出する装置において、液体吐出ヘッド100のカバー部材40の凸部44は液滴が吐出される被記録媒体の被記録面と接触せず、また凸部44は、液滴が吐出される被記録媒体の被記録面に対する移動方向において先頭側に設けられている。
【0068】
液体を吐出する装置である印刷装置500は、被記録媒体である連帳紙、シート材などの連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0069】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0070】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0071】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ551A、551B、551C、551D(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
【0072】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される連続体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0073】
ヘッドアレイ551は、例えば、本発明に係る液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)100をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0074】
次に、液体循環装置の一例について図11を参照して説明する。
図11は同循環装置のブロック説明図である。なお、ここでは1つの液体吐出ヘッド(図中「ヘッド」と表す)100のみ図示しているが、複数のヘッドを配列する場合には、マニホールドなどを介して複数のヘッドの供給側、回収側にそれぞれ供給側液体経路、回収側液体経路を接続することになる。
【0075】
液体循環装置600は、供給タンク601、回収タンク602、メインタンク603、第1送液ポンプ604、第2送液ポンプ605、コンプレッサ611、レギュレータ612、真空ポンプ621、レギュレータ622、供給側圧力センサ631、回収側圧力センサ632などで構成されている。
【0076】
ここで、コンプレッサ611及び真空ポンプ621は、供給タンク601内の圧力と回収タンク602内の圧力とに差圧を生じさせる手段を構成している。
【0077】
供給側圧力センサ631は、供給タンク601とヘッド100との間であって、ヘッド100の供給ポート71に繋がった供給側液体経路に接続されている。回収側圧力センサ632は、ヘッド100と回収タンク602との間であって、ヘッド100の回収ポート72に繋がった回収側液体経路に接続されている。
【0078】
回収タンク602の一方は、第1送液ポンプ604を介して供給タンク601と接続されており、回収タンク602の他方は第2送液ポンプ605を介してメインタンク603と接続されている。
【0079】
これにより、供給タンク601から供給ポート71を通ってヘッド100内に液体が流入し、回収ポート72から回収タンク602へ回収され、第1送液ポンプ604によって回収タンク602から供給タンク601へ液体が送られることによって、液体が循環する循環経路が構成される。
【0080】
ここで、供給タンク601にはコンプレッサ611がつなげられており、供給側圧力センサ631で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、回収タンク602には真空ポンプ621がつなげられており、回収側圧力センサ632で所定の負圧が検知されるよう制御される。
【0081】
これにより、ヘッド100内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0082】
また、ヘッド100のノズル4から液体を吐出すると、供給タンク601及び回収タンク602内の液体量が減少していく。そのため、適宜、第2送液ポンプ605を用いて、メインタンク603から回収タンク602に液体を補充する。
【0083】
なお、メインタンク603から回収タンク602への液体補充のタイミングは、回収タンク602内の液体の液面高さが所定高さよりも下がったときに液体補充を行うなど、回収タンク602内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0084】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について図12及び図13を参照して説明する。図12は同装置の要部平面説明図、図13は同装置の要部側面説明図である。
【0085】
印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0086】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0087】
液体吐出ヘッド100は、前述した液体循環装置600と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0088】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0089】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0090】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0091】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0092】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0093】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0094】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0095】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0096】
(液体吐出ユニット)
本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図14及び図15を参照して説明する。
本発明に係る液体を吐出する装置は、上述の本発明に係る液体吐出ヘッド100を備えている。
【0097】
図14は、液体吐出ユニットの一例を示す要部平面説明図である。
この液体吐出ユニット440、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド100で構成されている。
【0098】
なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0099】
図17は、液体吐出ユニットの一例を示す正面説明図である。
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド100と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0100】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド100と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【符号の説明】
【0101】
1 ノズル板
4 ノズル
40 カバー部材
41 開口部
44 凸部
45 フィレット形状部
100 液体吐出ヘッド
440 液体吐出ユニット
500 液体を吐出する装置(印刷装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【文献】特開2006-68981号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15