(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】吐出ヘッド、吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/045 20060101AFI20241210BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J2/045
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2020171568
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020050474
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】松藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】甘利 清志
(72)【発明者】
【氏名】本多 領
(72)【発明者】
【氏名】酒井 慶太郎
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-230122(JP,A)
【文献】特開2018-051479(JP,A)
【文献】特表2000-506590(JP,A)
【文献】特表2020-501886(JP,A)
【文献】特開昭58-102774(JP,A)
【文献】特開2019-006012(JP,A)
【文献】米国特許第04669660(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05C 5/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルを開閉する弁体と、
前記弁体を駆動する圧電素子と、を備え、
前記弁体は、前記圧電素子に電圧が印加されたときに前記ノズルが開く方向に駆動され、
前記圧電素子と並列に、前記ノズルが開く方向に前記弁体を付勢する第1付勢手段を備え、
前記圧電素子と直列に、前記ノズルが閉じる方向に前記弁体を付勢する第2付勢手段を備えている
ことを特徴とする吐出ヘッド。
【請求項2】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルを開閉する弁体と、
前記弁体を駆動する圧電素子と、
前記弁体が設けられる側と反対側の前記圧電素子の端部を保持する保持部材と、
前記ノズルが閉じる方向に前記圧電素子及び前記弁体を
、前記保持部材を介して変位させる手段と、を備え、
前記圧電素子は電圧が印加されたときに前記ノズルを閉じる方向に前記弁体を駆動する
ことを特徴とする吐出ヘッド。
【請求項3】
前記変位させる手段は、
前記圧電素子に対して前記ノズルが位置する側と反対側に設けられ、
前記圧電素子とは別の圧電素子を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の吐出ヘッド。
【請求項4】
前記圧電素子と並列に、前記ノズルが開く方向に前記弁体を付勢する第1付勢手段を備えている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の吐出ヘッド。
【請求項5】
前記圧電素子と直列に、前記ノズルが閉じる方向に前記弁体を付勢する第2付勢手段を備えている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の吐出ヘッド。
【請求項6】
前記弁体の移動を案内する案内部材を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の吐出ヘッド。
【請求項7】
前記圧電素子と前記弁体との間に、前記弁体の移動に応じて変位可能な変位板を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の吐出ヘッド。
【請求項8】
前記ノズルに連通する流路と、前記圧電素子を収容する圧電素子収容空間と、を有するハウジングを備え、
前記変位板は、前記圧電素子収容空間と前記流路との間を仕切る
ことを特徴とする請求項7に記載の吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第1付勢手段は、少なくとも、前記圧電素子の伸縮方向の両端部に弾性変形可能なバネ部を有している
ことを特徴とする請求項1又は4に記載の吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1付勢手段は、前記圧電素子の伸縮方向の中央部に弾性変形可能なバネ部を有している
ことを特徴とする請求項9に記載の吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第1付勢手段の両端部の前記バネ部は、バネ定数が異なる
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の吐出ヘッドを備えている
ことを特徴とする吐出ユニット。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれかに記載の吐出ヘッド、又は、請求項12に記載の吐出ユニットを備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吐出ヘッド、吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する吐出ヘッドとして、ノズルが通じる液室の加圧液体を供給し、ノズルを開閉する弁体を駆動することでノズルから液体を吐出するようにしたものがある。
【0003】
従来、吐出口が連通し、液体を収容している収容室と、収容室の液体を吐出口から吐出させる吐出機構を備え、吐出機構は、収容室内において、吐出口から離間した第1位置と、吐出口の周縁部に接触して吐出口を塞ぐ第2位置との間を往復移動する弁体と、弁体に往復移動のための駆動力を付与する圧電素子と付勢手段とを含む駆動部とを備え、弁体を、第1位置から第2位置に移動させることによって、収容室内の液体を吐出口へと押し出して吐出させる液体吐出装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示の構成にあっては、圧電素子に異常が発生した場合、意図する液体吐出ができず、画像品質が低下するという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、圧電素子に異常が発生した場合でも、意図する液体吐出を行い、画像品質の低下を防ぐようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る吐出ヘッドは、
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルを開閉する弁体と、
前記弁体を駆動する圧電素子と、を備え、
前記弁体は、前記圧電素子に電圧が印加されたときに前記ノズルが開く方向に駆動され、
前記圧電素子と並列に、前記ノズルが開く方向に前記弁体を付勢する第1付勢手段を備え、
前記圧電素子と直列に、前記ノズルが閉じる方向に前記弁体を付勢する第2付勢手段を備えている
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧電素子に異常が発生した場合でも、意図する液体吐出を行い、画像品質の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る吐出ヘッドの外観斜視説明図である。
【
図2】同じく
図1の断面S1における断面説明図である。
【
図3】同吐出ヘッドの1つの吐出モジュールの断面説明図である。
【
図4】同吐出モジュールの要部拡大断面説明図である。
【
図5】同吐出モジュールの保持部材の拡大説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る吐出ヘッドの吐出モジュールの要部拡大断面説明図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る吐出ヘッドの吐出モジュールの要部拡大断面説明図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る吐出ヘッドの吐出モジュールの要部拡大断面説明図である。
【
図9】本発明の第5実施形態に係る吐出ヘッドの断面説明図である。
【
図10】同吐出ヘッドの1つの吐出モジュールの断面説明図である。
【
図11】本発明の第6実施形態に係る吐出モジュールの保持部材の拡大説明図である。
【
図12】本発明の第7実施形態に係る吐出モジュールの保持部材の拡大説明図である。
【
図13】本発明の第8実施形態に係る吐出モジュールの保持部材の拡大説明図である。
【
図14】本発明の第9実施形態に係る液体を吐出する装置で印刷対象物を航空機として印刷するときの説明に供する説明図である。
【
図15】同液体を吐出する装置の斜視説明図である。
【
図16】本発明の第10実施形態に係る液体を吐出する装置の斜視説明図である。
【
図18】本発明の第11実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図である。
【
図20】吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
【
図21】吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について
図1ないし
図5を参照して説明する。
図1は同実施形態に係る吐出ヘッドの外観斜視説明図、
図2は同じく
図1の断面S1における断面説明図である。
図3は同吐出ヘッドの1つの吐出モジュールの断面説明図、
図4は同吐出モジュールの要部拡大断面説明図である。
図5は同吐出モジュールの保持部材の拡大説明図である。
【0011】
吐出ヘッド1は、ハウジング10内に、1列又は複数列に並べて配置された複数の吐出モジュール100を有する。各吐出モジュール100には、外部から供給ポート11を介して加圧された液体が供給され、吐出されなかった液体は回収ポート12から外部に回収される。また、ハウジング10にはコネクタ2が設けられている
【0012】
吐出モジュール100は、液体を吐出するノズル111が形成されたノズル板101と、ノズル111が連通し、加圧された液体が供給される流路112と、ノズル111を開閉するニードル状の弁体113と、弁体113を駆動する圧電素子114とを備えている。
【0013】
ノズル板101とハウジング10とは接合されている。流路112は、ハウジング10に形成された複数の吐出モジュール100に共通の流路であり、前述したように、供給ポート11を介して加圧液体が供給され、回収ポート12から液体が回収される。
【0014】
弁体113の先端部には弾性体113aが設けられており、ノズル板101に押し付けられたときにノズル111を確実に閉塞する。弁体113とハウジング10との間には軸受け部121を設け、軸受け部121と弁体113との間にはO-リングなどのシール部材122を設けている。
【0015】
圧電素子114は、ハウジング10の圧電素子収容空間123内に収容されている。圧電素子114は、第1付勢手段を兼ねる保持部材115の中央空間115a内に保持されている。圧電素子114と弁体113とは同軸上に保持部材115の先端部115bを介して連結されている。
【0016】
保持部材115は、圧電素子114を収容する中央空間115aを有し、先端部115b側が弁体113に連結され、後端部115c側がハウジング10に取り付けた圧電素子固定軸124により固定されている。
【0017】
保持部材115は、第1付勢手段としての保持板バネ116を有している。保持板バネ116は、圧電素子114の伸縮方向に相当する長手方向の両端部に弾性変形可能なバネ部116a、116bを有している。バネ部116aは弁体113を取付ける先端部115b側とし、バネ部116bは弁体113を取付ける先端部115b側とは反対側の後端部115c側とする。
【0018】
バネ部116a、116bは、長手方向と直交する短手方向から交互にスリット115dを設けてクランク状に残存させることでバネ機能を持たせたものである。本実施形態では、バネ部116a、116bのバネ定数はほぼ同じ(同じを含む。)にしている。
【0019】
ここで、保持部材115の中央空間115aの長さ(弁体113の軸方向の長さ)は、圧電素子114の長さよりも短くしている。したがって、圧電素子114を保持部材115の中央空間115aに嵌め込むとき、保持板バネ116はバネ部116a、116bの部分が延ばされた状態になる。
【0020】
これにより、圧電素子114が
図4で矢印a方向に収縮したとき、保持板バネ116も矢印b方向に収縮して、ノズル111が開く方向に弁体113を引っ張る付勢力を弁体113に作用させる。
【0021】
ここで、圧電素子114は、電圧印加手段200によって電圧が印加されたときにD31モードで動作して、ノズル111が開く方向に弁体113を駆動する。つまり、弁体113は、圧電素子114に電圧が印加されることによりノズル111が開く方向に駆動される。
【0022】
したがって、圧電素子114に電圧を印加していないときには、弁体113がノズル111を閉塞しているので、流路112に加圧液体が供給されていても、ノズル111から液体が吐出されることはない。
【0023】
そして、圧電素子114に電圧を印加することで、圧電素子114が収縮して、保持部材115を介して弁体113を引っ張るので、弁体113がノズル111から離間してノズル111を開放する。これにより、流路112に供給されている加圧液体がノズル111から吐出される。
【0024】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0025】
まず、比較例として、弁体113を駆動する圧電素子が、電圧が印加されたときに弁体113を閉じる方向に伸長するD33モードで動作する場合について説明する。
【0026】
圧電素子がD33モードで動作するときには、電圧を印加した状態にして弁体113をノズル111側に押し付けて閉塞しておく。そして、液体を吐出させるときに、圧電素子に対する電圧の印加を停止し、あるいは、電圧を低くして、弁体113を開く方向に移動させてノズル111を開放する。
【0027】
圧電素子のD33モードは、応答性が高く、変位量が大きいというメリットがあり、弁体113の開閉動作の応答性が高く、ノズル111から吐出する液体の滴速度、滴量のばらつきを小さくすることができる。
【0028】
しかしながら、圧電素子にマイグレーションなどによる機能劣化が生じて電圧を印加しても伸長状態を保持できなくなると、弁体113が開放位置に移動してノズル11が開放され、流路112に加圧液体が供給されているため、常時吐出状態になる。
【0029】
これに対して、本実施形態では、圧電素子114がD31モードで動作する構成としているので、電圧を印加していないときには弁体113がノズル111を閉じる位置に保持されている。
【0030】
そして、圧電素子114に電圧を印加することで圧電素子114が収縮して、弁体113が開き、ノズル111から液体が吐出される。
【0031】
したがって、圧電素子114にマイグレーションなどによる機能劣化が生じても、弁体113がノズル111を開放する位置に移動しないので、常時吐出状態になることもない。
【0032】
ここで、圧電素子114をD31モードで動作させると、D33モードで動作せる場合に比べて、応答性、変位量が低いので、弁体113の開閉応答性が低下し、吐出特性のばらつきが大きくなるおそれがある。
【0033】
そこで、本実施形態では、圧電素子114と並列な第1付勢手段(保持板バネ116)を有する保持部材115によって圧電素子114を保持している。つまり、圧電素子114と並列に、ノズル111が開く方向に弁体113を付勢する第1付勢手段を備えている
。
【0034】
これにより、圧電素子114に電圧を印加して圧電素子114を収縮させ、ノズル111が開く方向に弁体113を移動させるとき、保持板バネ116の収縮によって弁体113の開位置への移動がアシストされる。
【0035】
したがって、弁体113を移動させる力が高まり、弁体113によるノズル111の開放移動の応答性が向上し、吐出特性のばらつきが低減する。
【0036】
これに対して、圧電素子114と直列に渦巻ばねなどの付勢手段を配置した場合には、圧電素子の動きに対して付勢手段の動きが独立した動きとなる。そのため、自由振動したときに圧電素子の動きを阻害する方向への振動も発生するという不都合がある。
【0037】
本実施形態では、圧電素子と第1付勢手段とが並列であるので、圧電素子の形状に依存してバネ力(付勢力)が発生するので、圧電素子の動き(変位)と付勢力とが完全に同期でき、アシストすることができる。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態について
図6を参照して説明する。
図6は同実施形態に係る吐出ヘッドの吐出モジュールの要部拡大断面説明図である。
【0039】
本実施形態では、保持部材115の先端部115bと弁体113の軸部113bとの間に、第2付勢手段である圧縮ばね117を配置している。保持部材115は後端部115c側が固定されているので、圧縮ばね117による付勢力は、弁体113に対してノズル111を閉じる方向に作用する。
【0040】
これにより、圧電素子114に対する電圧の印加が停止され、ノズル111を閉じる方向に弁体113が移動するとき、圧縮ばね117による付勢力によって弁体113の閉位置(ノズル111を閉塞する位置)への移動がアシストされる。
【0041】
したがって、弁体113を移動させる力が高まり、弁体113の閉位置への移動の応答性が向上し、吐出特性のばらつきが低減する。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態について
図7を参照して説明する。
図7は同実施形態に係る吐出ヘッドの吐出モジュールの要部拡大断面説明図である。
【0043】
本実施形態では、ハウジング10の圧電素子収容空間123と軸受け部121の流路112側とは反対側との空間125とを仕切る変位板118を備えている。変位板118は、保持部材115と弁体113の間に配置され、弁体113及び保持部材115の移動に追従して変位可能である。
【0044】
このように構成したので、シール部材122のシール不良などにより、流路112に供給される加圧液体が、弁体113の軸受け部121との間の隙間を介して圧電素子114側にリークした場合でも、圧電素子収容空間123への侵入が阻止される。
【0045】
これにより、リークした液体が圧電素子114に付着して、圧電素子114が動作不良になることを防止できる。
【0046】
次に、本発明の第4実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は同実施形態に係る吐出ヘッドの吐出モジュールの要部拡大断面説明図である。
【0047】
本実施形態において、複数の吐出モジュール100は、ハウジング10、フレーム部材20及びベース部材21で構成される筐体を共通にして配置されている。ハウジング10とフレーム部材20とは変位板118を介して結合され、フレーム部材20の開口部にベース部材21が取り付けられている。
【0048】
吐出モジュール100は、液体を吐出するノズル111が形成されたノズル板101と、ノズル111に加圧された液体を供給する流路112と、ノズル111を開閉するニードル状の弁体113と、弁体113を駆動する圧電素子134とを備えている。
【0049】
ノズル板101とハウジング10とは接合されている。流路112は、ハウジング10に形成された複数の吐出モジュール100に共通の流路である。
【0050】
弁体113の先端部には弾性体113aが設けられており、ノズル板101に押し付けられたときにノズル111を確実に閉塞する。弁体113とハウジング10との間には軸受け部121を設け、軸受け部121と弁体113との間にはO-リングなどのシール部材122を設けている。
【0051】
圧電素子134は、フレーム部材20に設けた圧電素子収容空間123内に収容されている。圧電素子134は、第1付勢手段を兼ねる保持部材115の中央空間115a内に保持されている。圧電素子134と弁体113とは同軸上に保持部材115の先端部115bを介して連結されている。
【0052】
保持部材115は、圧電素子134を収容する中央空間115aを有し、先端部115b側が弁体113に連結されている。
【0053】
保持部材115は、第1付勢手段としての保持板バネ116を有している。保持板バネ116は、前記第1実施形態と同様な、圧電素子114の伸縮方向に相当する長手方向の両端部に弾性変形可能なバネ部116a、116bを有している。
【0054】
ここで、保持部材115の中央空間115aの長さ(弁体113の軸方向の長さ)は、圧電素子134の長さよりも短くしている。したがって、圧電素子134を保持部材115の中央空間115aに嵌め込むとき、保持板バネ116はバネ部116a、116bの部分が延ばされた状態になる。
【0055】
これにより、圧電素子134が収縮したとき、保持板バネ116も収縮して、ノズル111が開く方向に弁体113を引っ張る付勢力を弁体113に作用させる。
【0056】
ここで、圧電素子134は、電圧印加手段201から電圧が印加されたときにD33モードで動作して、ノズル111を閉じる方向に弁体113を駆動する。つまり、弁体113は、圧電素子134に電圧が印加されることによりノズル111が閉じる方向に駆動される。
【0057】
したがって、本実施形態では、圧電素子134に電圧を印加して圧電素子134を伸長させ、弁体113でノズル111を閉塞させる。このときには、流路112に加圧液体が供給されていても、ノズル111から液体が吐出されない。
【0058】
そして、圧電素子134に印加する電圧を停止又は下げることで、圧電素子134が収縮して、保持部材115を介して弁体113を引っ張るので、弁体113がノズル111から離間してノズル111を開放する。これにより、流路112に供給されている加圧液体がノズル111から吐出される。
【0059】
この吐出モジュール100では、圧電素子134とベース部材21との間に、保持部材115を介して、圧電素子134及び弁体113を、ノズル111が閉じる方向に変位させる手段として圧電素子144を配置している。
【0060】
そして、圧電素子134にマイグレーションなどによる機能劣化が生じて電圧を印加しても伸長状態を保持できなくなったときには、圧電素子144に電圧印加手段202から電圧を印加して、圧電素子144を伸長させる。
【0061】
これにより、保持部材115を介して圧電素子134が弁体113とともに、ノズル111を閉じる方向に圧電素子134及び弁体113が移動し、弁体113でノズル111が閉じられ、常時吐出状態になることが防止される。
【0062】
このように、本実施形態では、圧電素子134をD33モードで動作させて高い応答性と吐出特性を得ながら、常時吐出状態になることを防止できる。
【0063】
なお、圧電素子134及び弁体113を、弁体113が閉じる方向に変位させる手段としては、圧電素子144に限るものではなく、ソレノイドなどのアクチュエータを使用することもできる。
【0064】
また、本実施形態では、前記第1ないし第3実施形態で説明したように、通常の動作状態では、保持板バネ116(第1付勢手段)、圧縮ばね117(第2付勢手段)によるアシストを行うことができる。これにより、一層の応答性の向上を図ることができる。また、圧電素子と第1付勢手段とが並列であるので、圧電素子の形状に依存してバネ力(付勢力)が発生するので、圧電素子の動き(変位)と付勢力とが完全に同期でき、アシストすることができる。
【0065】
次に、本発明の第5実施形態について
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は同実施形態に係る吐出ヘッドの断面説明図、
図10は同吐出ヘッドの1つの吐出モジュールの断面説明図である。
【0066】
吐出ヘッド1は、ハウジング10及び流路部材102内に、1列又は複数列に並べて配置された複数の吐出モジュール100を有する。各吐出モジュール100には、外部から供給ポート11を介して加圧された液体が供給され、吐出されなかった液体は回収ポート12から外部に回収される。また、ハウジング10にはコネクタ2が設けられている
【0067】
吐出モジュール100は、液体を吐出するノズル111が形成されたノズル板101と、ノズル111に加圧された液体を供給する流路112を形成する流路部材102と、ノズル111を開閉するニードル状の弁体113と、弁体113を駆動する圧電素子114とを備えている。
【0068】
ノズル板101と流路部材102とは接合されている。流路112は、流路部材102に形成された複数の吐出モジュール100に共通の流路であり、前述したように、供給ポート11を介して加圧液体が供給され、回収ポート12から液体が回収される。
【0069】
弁体113の先端部には弾性体113aが設けられており、ノズル板101に押し付けられたときにノズル111を確実に閉塞する。
【0070】
弁体113とハウジング10との間には、弁体113の移動を案内する案内部材(ガイド部材)としてのすべり軸受127を設けている。すべり軸受け127によって弁体113の移動を案内することで、弁体113とノズル111との中心軸のずれを抑制することができ、吐出曲がりを低減することができる。
【0071】
弁体113と流路部材102との間にはシール部材122を設けている。
【0072】
圧電素子114は、ハウジング10の圧電素子収容空間123内に収容されている。圧電素子114は、第1付勢手段を兼ねる保持部材115の中央空間115a内に保持されている。圧電素子114と弁体113とは同軸上に保持部材115の先端部115bを介して連結されている。
【0073】
保持部材115は、圧電素子114を収容する中央空間115aを有し、先端部115b側が弁体113に連結され、後端部115c側がハウジング10に取り付けた圧電素子固定軸124により固定されている。
【0074】
保持部材115は、第1付勢手段としての保持板バネ116を有している。本実施形態では、保持板バネ116は、圧電素子114の伸縮方向に相当する長手方向の一端部側(弁体113を取り付ける側)にだけ弾性変形可能なバネ部116aを有している。
【0075】
ここで、保持部材115の中央空間115aの長さ(弁体113の軸方向の長さ)は、圧電素子114の長さよりも短くしている。したがって、圧電素子114を保持部材115の中央空間115aに嵌め込むとき、保持板バネ116はバネ部116aの部分が延ばされた状態になる。
【0076】
これにより、圧電素子114が収縮したとき、保持板バネ116も収縮して、弁体113を引っ張る方向(弁体113をノズル111から離間させる方向)の付勢力を弁体113に作用させる。
【0077】
ここで、圧電素子114は、電圧が印加されたときに弁体113を開く方向に収縮するD31モードで動作する。
【0078】
したがって、圧電素子114に電圧を印加していないときには、弁体113がノズル111を閉塞しているので、流路112に加圧液体が供給されていても、ノズル111から液体が吐出されることはない。
【0079】
そして、圧電素子114に電圧を印加することで、圧電素子114が収縮して、保持部材115を介して弁体113を引っ張るので、弁体113がノズル111から離間してノズル111を開放する。これにより、流路112に供給されている加圧液体がノズル111から吐出される。
【0080】
さらに、すべり軸受け127と圧電素子114の先端部(保持部材115の先端部115b)との間には、弁体113とハウジング10との間をシールするO-リングなどの弾性部材128を配置している。また、圧電素子固定軸124とハウジング10との間をシールするO-リングなどの弾性部材129を配置している。
【0081】
これにより、圧電素子114を収容する圧電素子収容空間123が外気から遮断され、圧電素子114が湿気から保護される。
【0082】
次に、本発明の第6実施形態について
図11を参照して説明する。
図11は同実施形態に係る吐出モジュールの保持部材の拡大説明図である。
【0083】
本実施形態では、保持板バネ116には長手方向の両端部に設けたバネ部116aとバネ部116bとでバネ定数を異ならせている。ここでは、弁体113を取り付ける側のバネ部116aのスリット115dの数を4つ(片方2つずつ)とし、弁体113を取り付ける側と反対側のバネ部116bのスリット115dの数を6つ(片方3つずつ)とすることで、バネ定数を異ならせている。
【0084】
このように、保持板バネ116の両端部に設けたバネ部116aとバネ部116bとでバネ定数が異なることにより、圧電素子114の変位速度を伸び側と縮み側とで異ならせることができる。
【0085】
例えば、弁体113側のバネ数を増やすことで縮みの速度を速くし、弁体113と逆側のバネ数を増やすことで伸びの速度を速くする。
【0086】
次に、本発明の第7実施形態について
図12を参照して説明する。
図12は同実施形態に係る吐出モジュールの保持部材の拡大説明図である。
【0087】
本実施形態では、保持板バネ116には長手方向の両端部にバネ部116aとバネ部116bを設けるとともに、長手方向の中央部にバネ部116cを設けている。なお、バネ部116cの構成は、バネ部116a、116bと同様である。
【0088】
このように、保持板バネ116の両端部及び中央部にバネ部116a~116cを設けることで、保持板バネ116全体を変位させることができ、圧電素子114の変位力を無駄なく弁体113に伝達できる。
【0089】
次に、本発明の第8実施形態について
図13を参照して説明する。
図13は同実施形態に係る吐出モジュールの保持部材の拡大説明図である。
【0090】
本実施形態では、保持板バネ116には長手方向の両端部に設けたバネ部116aとバネ部116bとでバネ定数を異ならせている。ここでは、弁体113を取り付ける側のバネ部116aのスリット115dの間隔daを、弁体113を取り付ける側と反対側のバネ部116bのスリット115dの間隔dbよりも広くすることで、バネ定数を異ならせている。
【0091】
このように、保持板バネ116の両端部に設けたバネ部116aとバネ部116bとでバネ定数が異なることにより、圧電素子114の変位速度を伸び側と縮み側とで異ならせることができる。
【0092】
次に、本発明の第9実施形態について
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は同実施形態に係る液体を吐出する装置で印刷対象物を航空機として印刷するときの説明に供する説明図、
図15は同液体を吐出する装置の斜視説明図である。
【0093】
液体を吐出する装置500は、前記吐出ヘッド1を含む吐出ユニット501を搭載した移動体であるキャリッジを往復直線移動させるリニアレール504と、リニアレール504を適宜所定の位置へ移動させ、その位置で保持する多関節ロボット505とを備えている。
【0094】
多関節ロボット505は、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能としたロボットアーム505aを備えており、ロボットアーム505aの先端を自由に移動させ、且つ、正確な位置に配置することができる。
【0095】
多関節ロボット505としては、例えば、6つの軸、すなわち6つの関節を備えた6軸制御型の産業用ロボットを用いることができる。6軸型の多関節ロボットによれば予め動作に関する情報をティーチングしておくことできわめて正確、且つ、迅速にリニアレール504を印刷対象物700(航空機)の所定位置に対峙させることができる。ロボット505は、6軸に限定されるものではなく、5軸、7軸など適宜の軸数を備えた多関節ロボットを用いることができる。
【0096】
このロボット505のロボットアーム505aに二股に枝分かれしたフォーク状の支持部材524を設け、この支持部材524の左側の枝部524aの先端に垂直リニアレール523aを、右側の枝部524bの先端に垂直リニアレール523bを平行になるようにして取り付けている。
【0097】
そして、吐出ユニット501を移動可能に保持したリニアレール504の両端を、2つの垂直リニアレール523a,523bにそれぞれ架け渡すようにして支持させている。
【0098】
吐出ユニット501は、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイトの各色の液体を吐出する複数の吐出ヘッド1、又は、複数のノズル列を有する吐出ヘッド1を備えている。この吐出ユニット501の各吐出ヘッド1又は吐出ヘッド1の各ノズル列に対しては、液体タンク530から各色の液体が加圧供給される。
【0099】
この液体を吐出する装置500においては、ロボット505によってリニアレール504を印刷対象物700の所要の印刷領域に対向する位置に移動させる。そして、印刷データに応じて吐出ユニット501をリニアレール504に沿って移動しながら、吐出ヘッド1の各吐出モジュール100の圧電素子114(又は圧電素子134)を駆動して、印刷を行う。
【0100】
そして、1ライン分の印刷が終了したときに、垂直リニアレール523a,523bを駆動することにより、吐出ユニット501の吐出ヘッド1をあるラインから次のラインに移動させる。
【0101】
この動作を繰り返して、印刷対象物700の所要の印刷領域に印刷することができる。
【0102】
次に、本発明の第10実施形態について
図16及び
図17を参照して説明する。
図16は同実施形態に係る液体を吐出する装置の斜視説明図、
図17は同装置の駆動部の斜視説明図である。
【0103】
液体を吐出する装置500は、車両のボンネットなどの曲面を有する印刷対象物700に対向させて据付けられる移動可能な枠ユニット802を備えている。枠ユニット802を構成する左右の枠部材810,811には、枠部材810,811に架け渡されるようにして、可動ユニット813が垂直方向(Y方向)へ昇降可能に取り付けられている。
【0104】
可動ユニット813には、可動ユニット813上を水平方向(X方向)に往復移動可能に配置されたモータを内蔵する駆動部803と、この駆動部803に取り付けられて印刷対象物700へ向けて液体を吐出する吐出ユニット501とが搭載されている。
【0105】
また、吐出ユニット501からの液体の吐出、駆動部803の往復移動及び可動ユニット813の昇降を制御するコントローラ805と、このコントローラ805に対して指示を行うPC(パーソナルコンピュータ)などの情報処理装置806とを備えている。情報処理装置806には、形状や大きさなどの印刷対象物700に関する情報を記録保存するデータベース部(DB部)807が接続されている。
【0106】
枠ユニット802は、金属柱状体等によって形成された上下左右の枠部材808,809,810,811と、枠ユニット802を自立させるために下側の枠部材809の両側に直角且つ水平に取り付けられた左右の脚部材812a,812bを備えている。
【0107】
そして、左右の枠部材810,811の間に架け渡された可動ユニット813は、駆動部803を支持した状態で昇降可能に構成されている。
【0108】
印刷対象物700は、液体の吐出方向(Z方向)に直角に、すなわち、枠ユニット802の上下左右の枠部材808,809,810,811によって形成される平面に対向するようにして配置される。
【0109】
この場合、印刷を行うべき所定の位置に印刷対象物700を配置させるためには、例えば、多関節型アームロボットのアームの先端に取り付けたチャックによって印刷対象物700の印刷領域の裏側を吸着保持させることによって行うことができる。多関節型アームロボットを用いることで印刷対象物700をプリント位置に正確に配置することが可能となり、印刷対象物700の姿勢を適宜に変更することもできる。
【0110】
駆動部803は、
図17に示すように、可動ユニット813上を水平方向(X方向)に往復移動可能に配置されている。そして、可動ユニット813は、枠ユニット802の左右の枠部材810,811に架け渡されるようにして水平に配設されたレール830と、このレール830と平行となるように配設されたラックギヤ831と、レール830の一部に外嵌されてスライドしながら移動するリニアガイド832と、このリニアガイド832と連結されてラックギヤ831と噛合うピニオンギヤユニット833と、このピニオンギヤユニット833を回転駆動する減速機836付きのモータ834と、印刷点位置検出用のロータリエンコーダ835を備えて構成されている。
【0111】
モータ834を駆動(正転又は逆転)することによって吐出ユニット501を可動ユニット813に沿って右方向または左方向に移動させる。そして、駆動部803は吐出ユニット501のX方向の駆動機構として機能する。なお、減速機836の筐体の両側にはリミットスイッチ37a,37bが取付けられている。
【0112】
吐出ユニット501は、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイトの各色の液体を吐出する複数の吐出ヘッド1、又は、複数のノズル列を有する吐出ヘッド1を備えている。この吐出ユニット501の各吐出ヘッド1又は吐出ヘッド1の各ノズル列に対しては、液体タンクから各色の液体が加圧供給される。
【0113】
この液体を吐出する装置500においては、可動ユニット813をY方向に移動させ、吐出ユニット501をX方向に移動させて、印刷対象物700に所要の画像を印刷する。
【0114】
次に、本発明の第11実施形態について
図18及び
図19を参照して説明する。
図18は同実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図、
図19は同装置の要部側面説明図である。
【0115】
この液体を吐出する装置500は、シリアル型印刷装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0116】
このキャリッジ403には、本発明に係る吐出ヘッド1を含む吐出ユニット501を搭載している。吐出ユニット501の吐出ヘッド1は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。
【0117】
この装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0118】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して吐出ヘッド1に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0119】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0120】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に吐出ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0121】
維持回復機構420は、例えば吐出ヘッド1のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0122】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0123】
このように構成した液体を吐出する装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0124】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0125】
次に、吐出ユニットの他の例について
図20を参照して説明する。
図20は同ユニットの要部平面説明図である。
【0126】
この吐出ユニット501、前記液体を吐出する装置500を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、吐出ヘッド1で構成されている。
【0127】
なお、この吐出ユニット501の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた吐出ユニットを構成することもできる。
【0128】
次に、吐出ユニットの更に他の例について
図21を参照して説明する。
図21は同ユニットの正面説明図である。
【0129】
この吐出ユニット501は、流路部品444が取付けられた吐出ヘッド1と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0130】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444の上部には吐出ヘッド1と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0131】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0132】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0133】
「吐出ユニット」は、吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0134】
ここで、一体化とは、例えば、吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0135】
例えば、吐出ユニットとして、吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの吐出ユニットのヘッドタンクと吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0136】
また、吐出ユニットとして、吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0137】
また、吐出ユニットとして、吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0138】
また、吐出ユニットとして、吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0139】
また、吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた吐出ヘッドにチューブが接続されて、吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が吐出ヘッドに供給される。
【0140】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0141】
「液体を吐出する装置」には、吐出ヘッド又は吐出ユニットを備え、吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0142】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0143】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0144】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0145】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0146】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0147】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0148】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0149】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0150】
1 吐出ヘッド
10 ハウジング
20 フレーム部材
21 ベース部材
100 吐出モジュール
101 ノズル板
102 流路部材
111 ノズル
112 液室
113 弁体
114 圧電素子
115 保持部材
116 保持板バネ(第1付勢手段)
117 圧縮バネ(第2付勢手段)
118 変位板
123 圧電素子収容空間
200~202 電圧印加手段
500 液体を吐出する装置
501 吐出ユニット
700 印刷対象物