(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/42 20060101AFI20241210BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20241210BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41J11/42
H04N1/387 110
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2020197492
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大樹
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-184427(JP,A)
【文献】特開2010-173845(JP,A)
【文献】特開2011-057437(JP,A)
【文献】特開2020-040342(JP,A)
【文献】特開平04-169259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42
H04N 1/387
B41J 2/01
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を所定の搬送量に応じて搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体が前記搬送手段により搬送される際に前記記録媒体に周期的なマークを追加するマーク追加手段と、
前記記録媒体から前記マークを検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した前記マークの
規則的なマークの横方向ピッチを基準に縦方向のマークの移動量を算出する算出手段と、
前記記録媒体の前記搬送量を前記移動量により補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記マーク追加手段は、前記搬送手段による前記記録媒体の搬送と共に前記記録媒体に接触して回転する回転ローラに設けられている、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記マーク追加手段は、前記回転ローラのうちの前記記録媒体に接触する回転面に設けた所定間隔の複数の突起物であり、
前記検知手段は、前記記録媒体から前記突起物が形成した跡を前記マークとして検知する、
請求
項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記算出手段は、
さらに、前記記録媒体から検知した規則的な
前記マークの横方向への移動量を算出することにより前記記録媒体のスキューを検知する、
請求項1乃至
3のうちの何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタにおいて、記録紙の裏面の材質の違いによりプラテン等との摩擦抵抗にバラつきがあるため、印刷前に搬送量の補正を行う技術がある。例えば記録紙等の繊維模様をカメラ撮影し、撮影画像を各周期でパターンマッチングすることで記録紙の移動量を取得する技術がある。
【0003】
特許文献1に印刷媒体上の模様を撮像して移動量を取得する技術が開示されている。この技術では、印刷媒体上の模様を高精度なカメラで撮影して模様をパターンマッチングすることにより移動量を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では記録媒体の繊維等の模様を取得するために高精度なカメラが必要であり、微細な模様を検知するために高い精度での組み付けも必要になってくる。また、模様がないプラスチックメディア等の記録媒体に対しては移動量の検出精度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、模様がない記録媒体に対しても高精度に移動量を検出することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、記録媒体を所定の搬送量に応じて搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、前記記録媒体が前記搬送手段により搬送される際に前記記録媒体に周期的なマークを追加するマーク追加手段と、前記記録媒体から前記マークを検知する検知手段と、前記検知手段が検知した前記マークの規則的なマークの横方向ピッチを基準に縦方向のマークの移動量を算出する算出手段と、前記記録媒体の前記搬送量を前記移動量により補正する補正手段と、備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、模様がない記録媒体に対しても高精度に移動量を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、インクジェット記録装置の内部構成の平面図である。
【
図3】
図3は、インクジェット記録装置の内部構成の側面図である。
【
図5】
図5は、インクジェット記録装置の制御ブロックの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、副走査モータ駆動部の具体的な制御ブロックの構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、数回の搬送量と移動量を平均化して搬送量を算出する計算結果の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、インクジェット記録装置の制御フローの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、搬送量補正シーケンスの詳細フロー図である。
【
図10】
図10は、撮像エリアのスパイク跡のパターンの変化の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、スパイク跡のピッチと記録シートの搬送量とが同じ場合のときのある時点と次の時点の撮像エリアのパターンを示す図である。
【
図13】
図13は、記録シートのスキューや蛇行の検知を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を詳細に説明する。以下では本実施の形態に係る画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置への適用例を示す。
【0010】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置(一例としてワイドフォーマットプリンタ)の外観斜視図である。
図1においてインクジェット記録装置の内部構成の一部を透視図で示している。
図2は、インクジェット記録装置の内部構成の平面図である。
図3は、インクジェット記録装置の内部構成の側面図である。
図3には主に
図2の平面図で隠れている搬送手段の内部構成を模式的な図で示している。まず、
図1~
図3を参照して、実施の形態にかかる画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置の構成を説明する。
【0011】
インクジェット記録装置1は、装置本体の上部に、キャリッジ11と、キャリッジ11に搭載した吐出ヘッド12と、吐出ヘッド12に各色のインクを供給するインクカートリッジ13と、キャリッジ11を方向Aに駆動させる駆動手段10とを備える。これらは「画像形成手段」に対応する。なお、この構成に限らず、記録媒体に画像を形成するものであれば画像形成手段に含まれる。
【0012】
装置本体の下部には、ロール搭載部にセットされた記録媒体(一例として長尺の記録シート100)を方向Bに間欠駆動して搬送する搬送手段20を備える。
【0013】
駆動手段10は、装置本体の左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド14と、従ガイドロッド15とを備え、これらによりキャリッジ11を方向Aに摺動自在に保持する。
【0014】
キャリッジ11は、駆動プーリ16と従動プーリ17との間に張装されたタイミングベルト18に固定され、主走査モータ19の制御により駆動プーリ16を駆動し、キャリッジ11をA方向へ移動する。
【0015】
キャリッジ11は、エンコーダセンサ31を備え、キャリッジ11の移動方向(方向A)に沿って備えられたエンコーダシート(リニアスケール)32をエンコーダセンサ31により読み取ることでキャリッジ11の位置を検出する。
【0016】
この例ではイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)のインクカートリッジ13から各色のインクが供給され、吐出ヘッド12の吐出ノズル列から、色別にインク滴を吐出する。
【0017】
記録シート100は、装置本体の後方にあるロール搭載部から、モータとエンコーダセンサとにより構成される給紙ユニット21の回転で繰り出される。繰り出された記録シート100は、回転ローラであるレジストローラ22とピンチローラ23とに挟持された状態で、プラテン24の周囲面に沿って方向Bへ送られて、排紙側にある排紙ユニット25の紙管に巻き取られて回収される。この例ではレジストローラ22が間欠的に回転駆動し、この際、ピンチローラ23は記録シート100をレジストローラ22に押し付け、レジストローラ22の回転面に常に記録シート100が押圧力を受けて接触するようにする。このため、レジストローラ22の動力が適切に記録シート100に伝わり、回転時に給紙ユニット21とレジストローラ22との間の記録シート100のテンションが一定に保たれる。
【0018】
そして、レジストローラ22が間欠的に動作すると、記録シート100が間欠的に所定量ずつ排紙側へと送られる。
【0019】
プラテン24は、記録シート100の浮きを防ぐための吸着手段を備えている。この例では小さな吸着穴が多数設けられ、ファンの回転により記録シート100をプラテン24の外周面に吸着させて浮きを防いでいる。また、プラテン24は、キュアヒーター26やポストヒーター27などのヒータを備えている。これらのヒータにより記録シート100上に滴下されたインクを硬化して画像を定着させる。
【0020】
吐出ヘッド12による画像の形成は、
図3に示すように吐出ヘッド12の吐出面から各色インクを吐出して、作像エリアの範囲に画像を形成する。吐出ヘッド12の吐出面には、A方向(主走査方向)に複数列の吐出ノズルが設けられている。
図3に示す例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(Bk)の吐出ノズルの列が各色3組設けられている。
【0021】
プラテン24は、ヒータ27により予め暖められており、吐出ヘッド12の吐出面から吐出したインクは記録シート100に付着してすぐに硬化する。
【0022】
吐出ヘッド12は、駆動手段10がキャリッジ11を方向Aへ往復駆動することにより記録シート100に対して主走査方向の作像を行う。主走査方向の作像を終えると搬送手段20が記録シート100を所定量だけ方向Bへ送る。そして、再び駆動手段10がキャリッジ11を方向Aへ往復駆動して主走査方向の作像を行う。このようにインクジェット記録装置1は吐出ヘッド12による主走査方向の作像と搬送手段20による副走査方向への記録シート100の搬送とを繰り返し、記録シート100に画像を形成する。
【0023】
本実施の形態にかかるインクジェット記録装置1は、記録シート100の移動量(送り量)を検知するための構成を備える。その構成として、記録シート100が搬送手段20により搬送される際に記録シート100に周期的なマークを追加するマーク追加手段と、記録シート100からマークを検知する検知手段とを備える。
図3に示すレジストローラ22は、記録シート100にスパイク跡を形成するスパイク跡形成手段を上記マーク追加手段として備える。プラテン24に設けた検知センサ28が上記検知手段に相当し、記録シート100のスパイク跡から記録シート100の移動量を検知する。
【0024】
図4は、マーク追加手段の説明図である。
図4(a)および
図4(b)には一例として、レジストローラ22に設けたスパイク跡形成手段でスパイク跡を記録シート100に形成する例を示している。
図4(a)および
図4(b)に示すように、レジストローラ22の回転面(記録シート100に接触する回転面)の周方向に亘り、所定間隔の複数の突起物を設けている。周方向に直交する方向(横方向と呼ぶ)には所定ピッチで複数の突起物を設けている。ここでは一例として規則的な配列で多数のスパイク22-1を設けている。レジストローラ22が回転矢印の方向に回転すると、その回転により記録シート100がB方向(排紙側)へ送られ、記録シート100の移動量に応じ、各スパイク22-1が記録シート100の背面側に所定の間隔で刺さり、記録シート100の背面側に規則的なスパイク跡100-1を形成する。
【0025】
記録シート100の背面に形成されたスパイク跡100-1は、プラテン24に設けた検知センサ28により設定されている所定の撮像エリアが読み取られる。
図4(a)には、検知センサ28の撮像エリアの一例を示している。検知センサ28は、
図4(a)に点線の矩形枠で示す撮像エリアを撮像手段(例えばCCD(Charge Coupled Device)センサなど)により撮像し、撮像したスパイク跡100-1をマークとしてマークの規則的なパターンから移動量を求めてフィードバックする。例えば検知センサ28は撮像エリアの同じマーク(スパイク跡100-1)を記録シート100の搬送前後にかけてトラッキングして、その間隔から移動量を計算して制御部にフィードバックする。
【0026】
また、このようにスパイク22-1を設けた場合には、スパイク22-1が記録シート100の背面側に刺さるため、記録シート100をスリップすることなく搬送することも可能になる。ここで、スパイク22-1は記録シート100にスパイク跡100-1が形成される程度の突起物であり、記録シート100の表面側に影響がでない程度の大きさとする。
【0027】
図5は、インクジェット記録装置1の制御ブロックの構成の一例を示す図である。
図5に示す制御部40は、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)42と、RAM(Random Access Memory)43と、NVLAM44と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)45などを有する。
【0028】
CPU41は、装置全体の制御を行う。ROM42は、制御プログラムやデータを記憶する。RAM43は、CPU41のワーク領域などとして使用される。NVLAM44は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持する。ASIC45は、画像処理等を行う。
【0029】
制御部40は、ホスト側との信号送受を行なうためのホストI/F46を備える。ホストI/F46は、ホスト側から送信された印刷データをケーブル或いはLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して受信する。
【0030】
印刷制御部47は、吐出ヘッド12を駆動制御するためのデータ転送手段と駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む。キャリッジ11側には吐出ヘッド12を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC(Integrated Circuit))12-1を備える。
【0031】
主走査モータ駆動部48-1は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ31からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ19を駆動する。
【0032】
副走査モータ駆動部48-2は、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ29-1からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値(狙い値)とに基づいて副走査モータ29を駆動する。
【0033】
検知センサ28はCCD等の撮像センサであり、検知データである撮像画像データをI/O(Input/Output)49に出力する。
【0034】
その他、必要な情報の入力及び表示を行なう操作パネル30などが通信可能に接続される他、温度を検出する温度センサやヒータ制御部などを備える。
【0035】
CPU41は、受信した印刷データを読み出して解析し、ASIC45にて必要な画像処理や、データの並び替え処理等を行ない、印刷制御部47に画像データの印刷を指示する。
【0036】
図6は、副走査モータ駆動部48-2の具体的な制御ブロックの構成の一例を示す図である。
図6に示す制御ブロックのうちの搬送量決定部402が「補正手段」に相当し、移動量算出部403が「算出手段」に相当する。
図6に示す制御ブロックのうちの画像処理部401、搬送量決定部402、および移動量算出部403は、ASIC等のハードウェアにより構成してもよいし、CPU41が制御プログラムを実行することにより機能的に実現してもよい。また、そのうちの一部だけを機能的に実現するものであってもよい。また、
図5に示す構成と対応する箇所に同一の番号を付している。
【0037】
なお、画像形成を行う前に、検知センサ28の読取位置でスパイク跡を読み取ることができるようにレジストローラ22を回転して記録シート100を搬送し、読取位置まで記録シート100の余白にスパイク跡100-1を形成しておくものとする。
【0038】
画像処理部401は、印刷データの解析等によって得られた搬送量を搬送量決定部402に出力する。搬送量は、搬送手段20による1回の間欠動作により記録シート100を副走査方向へ送る量である。
【0039】
搬送量決定部402は、画像処理部401から入力された搬送量を移動量算出部403が計算した移動量(つまり実際に移動した量)に応じて補正し、補正により決定した搬送量を副走査モータ駆動部48-2に出力して狙い値になるように駆動させる。例えば搬送量決定部402は次の式1によって搬送量を決定する。
【0040】
前回搬送量 + (搬送量狙い値 - 媒体移動量) = 次回搬送量
・・・(式1)
【0041】
例えば、前回搬送量が100μm、搬送量狙い値が90μm、媒体移動量が80μmであった場合に、これらを式1に適用すると、100μm + (90μm - 80μm) = 110μmが搬送量となる。ここで媒体移動量は記録シート100の移動量のことである。
【0042】
なお、式1は一例であり、(搬送量狙い値 - 媒体移動量)の算出結果がある一定値以上となる場合に搬送量を補正するように制御してもよい。つまり、狙いの搬送量から一定の誤差が発生するまで搬送量の誤差を補正せず、一定の誤差が発生したときに一度に搬送量を補正する。また、数回の搬送量と移動量を平均化して、搬送量を算出するようにしてもよい。
【0043】
図7は、数回の搬送量と移動量を平均化して搬送量を算出する計算結果の一例を示す図である。
図7に示す例では直前の2回分の移動量を含む3回分の移動量ごとに平均値を算出し、前回の3回分の平均値と今回の3回分の平均値との差(誤差)から次回搬送量を算出する。このように数回の搬送量と移動量を平均化して搬送量を算出するようにしてもよい。
【0044】
以上のように、搬送量決定部402は、移動量算出部403が算出した実際の移動量に基づき搬送量を補正し、副走査モータ駆動部48-2へ補正後の搬送量を出力する。なお、移動量算出部403による移動量の算出方法については後述する。
【0045】
図8は、インクジェット記録装置1(制御部40)の制御フローの一例を示す図である。まず、インクジェット記録装置1(制御部40)は、電源がユーザに押下されるなどすることによりマシンを起動する(S1)。
【0046】
インクジェット記録装置1(制御部40)は、マシンの起動後、記録シート100がセットされていることを検知し、そしてレジストローラ22を回転させて検知センサ28の読取位置まで記録シート100にスパイク跡を形成する(S2)。そして、インクジェット記録装置1(制御部40)は、搬送量補正シーケンスを実行する(S3)。
【0047】
続いて、インクジェット記録装置1(制御部40)は、搬送量補正シーケンスで決定した搬送量と、スキュー量とがOKかを判定し(S4)、OKでない場合には(S4:No)、記録シートをセットし直させるなどして、再度、搬送量補正シーケンスを実行する。インクジェット記録装置1(制御部40)は、決定した搬送量とスキュー量とがOKの場合に(S4:Yes)、印字を開始する(S5)。
【0048】
図9は、搬送量補正シーケンスの詳細フロー図である。まず、インクジェット記録装置1(制御部40)は、記録シート100についてN回目(最初はN=1回目)のテストフィードを開始し(S31)、フィードした長さのスパイク跡100-1のパターンを検知センサ28により撮像する(S32)。
【0049】
続いてインクジェット記録装置1(制御部40)は、撮像したパターンに基づき実際の移動量を算出し(S33)、算出した移動量から搬送量を算出する(S34)。
【0050】
続いて、回数Nをインクリメントし(S35)、N=5を超えたかを判定する(S36)。N=5を超えない場合は(S36:No)、再度テストフィードを行う(S31)。
【0051】
このようにして5回分の搬送量を決定し、N=6の場合は、N=5を超えるため(S36:Yes)、処理を終了する。なお、搬送回数Nの上限を5としたが、これは説明を分かりやすくするためであり、搬送回数を5回に限定するものではない。搬送回数は任意である。
【0052】
ここで、移動量算出部403による移動量の算出方法について説明する。
図10は、撮像エリアのスパイク跡100-1のパターンの変化の一例を示す図である。
図10には、ある時点における撮像エリアのスパイク跡100-1のパターン(a)と次の時点における撮像エリアのスパイク跡100-1のパターン(b)を示している。ある時点と次の時点の時間間隔は、移動量算出部403が検知センサ28から撮像画像を出力するように設定した時間間隔であり、例えばレジストローラ22を間欠駆動する時間間隔などである。間欠駆動する時間間隔で少なくとも2つの撮像画像を取得する。
【0053】
図10(a)および
図10(b)に示す同じパターンのスパイク跡100-1を矩形で囲んでいる。移動量算出部403は、
図10(a)から
図10(b)で変化したパターンの移動量を算出することにより記録シート100の実際の移動量を求める。
【0054】
ここで、検知センサ28の組み付け誤差により記録シート100と検知センサ28の距離にバラツキがあると検出精度が低下するという問題がある。しかし、組み付け誤差がある場合でも、スパイク22-1のピッチa(横方向ピッチ)が既知であるため、スパイク22-1のピッチaを基準として移動量b(縦方向のスパイク22-1の移動量)を算出することで、記録シート100の移動量を高精度に検出することが可能になる。
【0055】
図11は、スパイク跡100-1のピッチと記録シート100の搬送量とが同じ場合のときのある時点と次の時点の撮像エリアのパターンを示す図である。つまり、
図11(a)および
図11(b)でスパイク22-1のピッチcが搬送量bと一致している。このように、スパイク22-1のピッチcと搬送量bとが同じ場合、搬送後のパターンが搬送前のパターンと同じになり、記録シート100の実際の移動量を正しく検知することができない場合がある。そこで、次のようにして移動量を求める。
図12は、移動量の算出方法の説明図である。移動量算出部403があらかじめ搬送量bを認識し、移動量算出部403が
図12(a)に対し
図12(b)に示すように搬送量b付近で撮影することにより、移動量を算出する。この場合、搬送量b付近で撮影するため、搬送量bをスパイクcのピッチとずらすことができるため移動量を高精度に検出することができる。
【0056】
図13は、記録シート100のスキューや蛇行の検知を説明する図である。記録シート100にスキューや蛇行が生じるとスパイク跡のマークが横方向へ移動する。そこで、
図13に矢印で移動方向を示すマークについて角度θを求め、記録シート100の横方向の移動量からスキューや蛇行を検知する。
【0057】
スキューや蛇行については、印刷前に検出して記録シート100をセットしなおしておく。これにより異常画像を未然に防止することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、記録シート100に周期的なマークを追加するマーク追加手段としてレジストローラ22にスパイク22-1を設けた例について説明したが、記録シート100に周期的なマークを追加するマーク追加手段であれば、その他の方法で実施してもよい。例えば、レジストローラ22からインク等により規則的なマークを転写してもよい。また、マークは人の目で認識することができないインク等で形成してもよい。
【0059】
以上のように、本実施の形態にかかる画像形成装置では、記録媒体に画像を形成する際に記録媒体に対してマークを付加するため、模様がない記録媒体に対しても高精度に記録媒体の移動量を検出することができる。また、マークを付与するため、繊維模様を撮影するカメラほど高精度なカメラは不要であり、組付けも容易である。さらに、画像の形成と共に記録媒体の搬送量の補正を行うことができるため、生産性や、ランニングコストの観点でメリットがある。
【0060】
本実施の形態にかかる画像形成装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0061】
また、本実施の形態にかかる画像形成装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態にかかる画像形成装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。
【0062】
また、本実施の形態にかかる画像形成装置のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
22 レジストローラ
22-1 スパイク
28 検知センサ
29 副走査モータ
29-2 エンコーダセンサ
48-2 副走査モータ駆動部
100 記録シート
100-1 スパイク跡
401 画像処理部
402 搬送量決定部
403 移動量算出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】