(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】塗布型偏光素子形成用積層フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241210BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20241210BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B5/30
C08J7/04 B CFD
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2020205207
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 道久
(72)【発明者】
【氏名】木下 昇平
(72)【発明者】
【氏名】宮下 陽
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/026804(WO,A1)
【文献】特開2015-217667(JP,A)
【文献】特開2016-108568(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188338(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/114884(WO,A1)
【文献】特開平06-068521(JP,A)
【文献】特開2019-018392(JP,A)
【文献】特開2020-034622(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08J 7/04-7/06
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に、(A)(メタ)アクリレートと(B)改質剤とを含む硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化樹脂層(X)を備えた構成であり、
前記(B)改質剤が(メタ)アクリル系重合体であり、
前記硬化樹脂層(X)の表面粗さ(Sa)が2.5nm以下である、塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
【請求項2】
150℃、30分間熱処理後の収縮率差(MD-TD)の絶対値が1.0%以下である、請求項1に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1又は2に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
【請求項4】
前記基材フィルム中の粒子の含有量が0.1質量%以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
【請求項5】
前記硬化樹脂層(X)の厚みが1μm以上10μm以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
【請求項6】
前記基材フィルムの厚みが12μm以上250μm以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
【請求項7】
前記基材フィルムにおける前記硬化樹脂層(X)が設けられた面とは反対側の面に、硬化樹脂層(Y)を更に備えた、請求項1~6の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか1項に記載の積層フィルムと、前記積層フィルムの前記硬化樹脂層(X)上に形成された塗布型偏光素子と、を備えた、塗布型偏光素子付き積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布型偏光素子形成用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業材料、光学材料、電子部品材料、電池用包装材料等の様々な分野で、基材フィルムの少なくとも片面に硬化樹脂層を設けた積層フィルムが使用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。積層フィルムの基材フィルムとしては、ポリエステルフィルムとして代表的なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、特に2軸延伸PETフィルムが、透明性、機械的強度、耐熱性、柔軟性等に優れることから広く使用されている。
【0003】
近年、ディスプレイパネルの薄膜化、高機能化に伴い、技術動向として構成部材も更に薄膜化する傾向にある。かかる構成部材の一つとして、偏光板が挙げられる。偏光板の構成は、偏光子に接着層を介して、トリアセチルセルロースを貼り合わせた構成であるのが一般的であるが、技術動向に伴い、基材フィルム上に重合性液晶組成物を塗布して、薄膜の塗布型偏光素子を得た後にディスプレイに組み込む開発が鋭意、進められている。
【0004】
例えば、基材フィルム上に配向膜組成物及び重合性液晶組成物をこの順に重ね塗りして、塗布型偏光素子を形成する場合、微小な気泡等の、わずかな塗布欠陥がディスプレイの品質に直接影響を及ぼすため、塗布欠陥を極力少なくする必要がある。また、塗布型偏光素子はディスプレイに組み込まれるため、使用する基材フィルム自身にも高度な平滑性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-18392号公報
【文献】特開2020-34622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、汎用の基材フィルムでは、配向膜組成物及び重合性液晶組成物等の塗布型偏光素子組成物の塗布性と、フィルム平面性とを高度なレベルで両立させるのが困難であった。
そこで、本発明は、塗布型偏光素子形成時に塗布欠陥が少なく、それでいて、平面性が良好な積層フィルムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定構成の積層フィルムが塗布型偏光素子形成時に塗布欠陥が少なく、それでいて、平面性が良好であることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供するものである。
[1]基材フィルムの一方の面に、(A)(メタ)アクリレートと(B)改質剤とを含む硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化樹脂層(X)を備えた構成であり、
前記硬化樹脂層(X)の表面粗さ(Sa)が2.5nm以下である、塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
[2]150℃、30分間熱処理後の収縮率差(MD-TD)の絶対値が1.0%以下である、上記[1]に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
[3]前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、上記[1]又は[2]に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
[4]前記基材フィルム中の粒子の含有量が0.1質量%以下である、上記[1]~[3]の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
[5]前記硬化樹脂層(X)の厚みが1μm以上10μm以下である、上記[1]~[4]の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
[6]前記基材フィルムの厚みが12μm以上250μm以下である、上記[1]~[5]の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
[7]前記基材フィルムにおける前記硬化樹脂層(X)が設けられた面とは反対側の面に、硬化樹脂層(Y)を更に備えた、上記[1]~[6]の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
[8]前記(B)改質剤が(メタ)アクリル系重合体及びウレタン(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[7]の何れか1項に記載の塗布型偏光素子形成用積層フィルム。
[9][1]~[8]の何れか1項に記載の積層フィルムと、前記積層フィルムの前記硬化樹脂層(X)上に形成された塗布型偏光素子と、を備えた、塗布型偏光素子付き積層フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗布型偏光素子形成時に塗布欠陥が少なく、それでいて、平面性が良好な積層フィルム、及びその積層フィルムを用いた塗布型偏光素子付き積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明の積層フィルムは塗布型偏光素子形成用であり、基材フィルムの一方の面に、(A)(メタ)アクリレートと(B)改質剤とを含む硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化樹脂層(X)を備えた構成であり、硬化樹脂層(X)の表面粗さ(Sa)が2.5nm以下である。
以下に積層フィルムの実施形態を参照しつつ本発明を説明する。
【0011】
<積層フィルム>
本実施形態の積層フィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された硬化樹脂層(X)とを備える。以下、各部材についてより詳細に説明する。
【0012】
[基材フィルム]
積層フィルムを構成する基材フィルムは、フィルム状を呈するものであれば、その材料を特に限定するものではない。例えば、紙製、樹脂製、金属製等であってもよい。これらの中でも、機械的強度及び柔軟性の観点から、樹脂製であることが好ましい。
【0013】
樹脂製の基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の高分子を膜状に形成した樹脂フィルムを挙げることができる。また、フィルム化が可能であれば、これらの材料を混合したもの(ポリマーブレンド)や構成単位を複合化したもの(共重合体)であっても構わない。
【0014】
上記例示したフィルムの中でも、ポリエステルフィルムは、耐熱性、平面性、光学特性、強度等の物性が優れており、好ましい。上記ポリエステルフィルムは単層でも、性質の異なる2以上の層を有する多層フィルム(すなわち、積層フィルム)でもよい。ポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分樹脂とするフィルムである。
また、ポリエステルフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであるのが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性の観点で、二軸延伸フィルムであるのがより好ましい。したがって、二軸延伸ポリエステルフィルムが更に好ましい。
更に好ましくはロールtoロールプロセスに対応可能なように二軸延伸ポリエステルフィルムロールであるのがよい。
【0015】
上記ポリエステルフィルムの主成分樹脂であるポリエステルは、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。なお、主成分樹脂とは、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の中で最も質量割合の大きい樹脂の意味であり、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%を占めればよい。
【0016】
上記ホモポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましい。脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができ、エチレングリコールが好ましい。
代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等を例示することができる。
【0017】
一方、上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であってもよい。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等から選択される一種又は二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選択される一種又は二種以上を挙げることができる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸がテレフタル酸を含み、グリコール成分がエチレングリコールを含み、かつ第3成分がこれら以外であることが好ましい。
中でも、本実施形態の積層フィルムにおける基材フィルムとしては、60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートを主成分樹脂として含むポリエステルフィルムが好ましい。
【0018】
本実施形態の積層フィルムにおける基材フィルムには、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を図るため、粒子を配合することも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。更に、ポリエステルフィルムの場合には、ポリエステルの製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
本実施形態において、有機粒子とは有機化合物を粒子状にしたものであり、層や部材中でも粒子状の形態を維持しているものいう。
【0019】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは0.1μm以上5μm以下の範囲である。平均粒径を上記範囲とすることにより、フィルムに適度な表面粗度を与え、良好な滑り性と平滑性が確保できる。
粒子を配合する場合、例えば、表面層と、中間層を設けて、表面層に粒子を含有させることが好ましい。この場合、より好ましくは、粒子を含有する表面層、中間層、及び粒子を含有する表面層をこの順に有する多層構造とするとよい。
【0020】
基材フィルム中の粒子の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下であり、そして好ましくは0.0003質量%以上である。粒子の含有量を上記範囲内とすることで、基材フィルムの透明性を確保しつつ、基材フィルムに滑り性を付与しやすくなる。ただし、基材フィルムは、実質的に粒子を含有しなくてもよい。
なお、本明細書において「実質的に粒子を含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子質量濃度)がその部材や層(ここでは、基材フィルム)に対して、200ppm以下、より好ましくは150ppm以下のことを指す。以下で示す同様の用語も同様の意味である。
なお、基材フィルムに粒子が実質的に含有されない場合、あるいは含有量が少ない場合は、基材フィルムの透明性が高くなり外観が良好なフィルムが得られ、また、硬化樹脂層表面の平滑性が高くなりやすくなる。一方で、積層フィルムの滑り性が不十分となる場合がある。そのため、そのような場合には、硬化樹脂層中に粒子を配合する等することで、滑り性を向上させたりしてもよいし、後述する粒子を有する易滑層等を設けて滑り性を向上させてもよい。
【0021】
基材フィルムの厚みは、好ましくは12μm以上、より好ましくは20μm以上であり、そして好ましくは250μm以下、より好ましくは188μm以下である。基材フィルムの厚みが上記範囲内であると、光学用途において好適に使用できる。
【0022】
(基材フィルムの積層構造)
基材フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、中間層Aと表面層B及び表面層Cから構成されるB/A/C及び中間層Aと表面層Bから構成されるB/A/Bの3層構造が好ましい。基材フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、各層を構成する主成分樹脂は、上記の通りポリエステルが好ましい。
【0023】
上記B/A/C及び上記B/A/Bの3層構造において、表面層B及び表面層Cは、ハンドリング性を確保するために粒子を含有してもよい。
【0024】
また、上記B/A/C及びB/A/Bの3層構造において、表面層B及び表面層Cそれぞれは、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する(いわゆる単分散性を有する)粒子を含有してもよい。
【0025】
表面層B及び表面層Cは、例えば平均粒径0.1~10μmの粒子を含有し、平均粒径0.1~5μmの粒子を含有してもよい。
【0026】
なお、粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0027】
[硬化樹脂層(X)]
硬化樹脂層(X)は、硬化性樹脂組成物を硬化して形成されるものであり、基材フィルム上に設けられる。硬化樹脂層は、基材フィルムの片面のみに設けられてもよいが、両面に設けられてもよい。
硬化樹脂層(X)は、例えば平滑性を付与する機能を有する。硬化性樹脂組成物は、重合することでポリマーとなる成分を含み、具体的には、光重合性化合物及び熱重合性化合物のいずれかの重合性化合物を含有してもよいが、硬化性樹脂組成物は、光重合性化合物を含み、光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。光硬化性樹脂組成物を使用することで、硬化性樹脂組成物を硬化させるために、高温で熱処理する必要がないため、熱処理による不純物の発生や、熱収縮の発生等が防止できる。また、重合性化合物としては、一分子中に1つ又は2つ以上の重合性官能基を有するモノマーが挙げられる。
【0028】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリレート、(B)改質剤を含み、必要に応じて(C)溶媒を含む。硬化性樹脂組成物において、典型的には(A)成分が光重合性化合物であり、(A)成分及び(B)成分の両方が、光重合性化合物であってもよい。
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリレート」という表現を用いる場合、「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方を意味するものとする。「(メタ)アクリロイル」という表現を用いる場合、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方又は両方を意味するものとする。「(メタ)アクリル」という表現を用いる場合、「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとし、他の類似表現も同様である。
また、本実施形態で用いられる(メタ)アクリロイル基を有する化合物の(メタ)アクリロイル基濃度の表現として(メタ)アクリロイル基当量(g/eq)を示すことがある。(メタ)アクリロイル基当量とは、(メタ)アクリロイル基1個あたりの平均分子量である。例えば、数平均分子量10,000の(メタ)アクリレート系化合物の1分子あたりの(メタ)アクリロイル基が10個の場合、(メタ)アクリロイル基当量は、10,000/10=1,000g/eqとなる。
【0029】
(A)(メタ)アクリレート
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリレートを含むことで硬化性樹脂組成物を硬化して形成した層(硬化樹脂層(X))からの添加剤のブリードアウト抑制効果が良好となりやすい。また、耐擦傷性、基材フィルムに対する密着性等も高めやすくなる。
(A)(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス-2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上含有する3官能以上の多官能(メタ)アクリレート;これらの(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物の変性物;イソシアヌレート構造を有する多官能(メタ)アクリレート等の窒素原子含有複素環構造を有する多官能(メタ)アクリレート;デンドリマー構造を有する多官能(メタ)アクリレート、ハイパーブランチ構造を有する多官能(メタ)アクリレート等の多分岐樹脂状構造を有する多官能(メタ)アクリレート;ジイソシアネート、トリイソシアネート等のポリイソシアネート、又はこれらの3量体(イソシアヌレート)に、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートが付加したウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、水酸基を有する(メタ)アクリレートは、エチレン性不飽和基を2個以上有する多官能であることが好ましい。また、(A)(メタ)アクリレートはウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0030】
(メタ)アクリレートとしては具体的には、(メタ)アクリル系重合体との相溶性の点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、塗膜の耐擦傷性、耐候性、添加剤のブリードアウト抑制効果の点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの混合物とイソホロンジイソシアネートの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記した中でも、3官能~6官能の多官能(メタ)アクリレート、又はポリイソシアネートに水酸基を有する多官能(例えば、3官能~5官能)の(メタ)アクリレートを付加したウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく、上記した多官能(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとを併用することもより好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレートに使用するポリイソシアネートは、ジイソシアネートであることが更に好ましい。
【0032】
(A)(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、例えば250以上、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは500以上、そして例えば8,000以下、好ましくは7,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下である。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算にて算出した値である。
【0033】
(A)(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量は、好ましくは80g/eq以上、より好ましくは85g/eq以上、更に好ましくは90g/eq以上であり、そして好ましくは150g/eq未満、より好ましくは135g/eq未満、更に好ましくは120g/eq未満である。(A)(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量が上記範囲内であることで、均一な塗膜形成がしやすくなる。
【0034】
なお、(A)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートは、上記のとおり、ポリイソシアネート又はイソシアヌレートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応生成物であるが、ポリイソシアネート又はイソシアヌレートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートと水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物を反応することで生成してもよい。この際、水酸基を有さない(メタ)アクリレートは、未反応物として残存するが、そのまま硬化性樹脂組成物に含有させて(A)成分として使用するとよい。
【0035】
(B)改質剤
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、(A)(メタ)アクリレート成分と(B)改質剤とを併用することで、添加剤のブリードアウト抑制効果を維持しながら、それでいて、カール、熱シワ等の発生を防止して、フィルム平面性を良好にできる利点を有する。また、紫外線吸収性能を高めて、耐候性も向上しやすくなる。(B)改質剤としては、本発明の目的を損なわないものであれば特に限定されるわけではないが、(メタ)アクリル系重合体及びウレタン(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、(メタ)アクリル系重合体及びウレタン(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、(メタ)アクリル系重合体であることが更に好ましい。
ここで、(B)改質剤は、分子量が、(A)(メタ)アクリレートよりも大きい。(B)改質剤は、分子量が(A)(メタ)アクリレートよりも大きいことで、フィルム平面性を良好にできるという改質効果が得られる。
【0036】
なお、(B)改質剤として使用されるウレタン(メタ)アクリレートは、例えば(メタ)アクリレートを含む(A)成分を含む硬化性樹脂組成物を改質する成分として使用すればよく、(A)成分としての(メタ)アクリレートよりも分子量が大きい成分を使用するとよい。
したがって、(B)成分としてウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合、硬化性樹脂組成物は、(A)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートと、(B)成分としての(A)成分のウレタン(メタ)アクリレートよりも重量平均分子量が大きいウレタン(メタ)アクリレートを含有するとよい。
【0037】
((メタ)アクリル系重合体)
(B)成分として使用される(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、(A)(メタ)アクリレートよりも大きく、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、更に好ましくは30,000以下である。
【0038】
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を上記範囲内とすることで、フィルム平面性を確保しやすくなる。また、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が1,000以上であることで硬化樹脂層の表面硬度が低下することを防止できる。また、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を100,000以下ですることで、塗工液の粘度の増加を防止でき、硬化樹脂層の平滑性が低下することを防止できる。
【0039】
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主な構成単位とする重合体である。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル及び(メタ)アクリル酸n-ヘキシル等の(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等の環状構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(B)(メタ)アクリル系重合体の(A)(メタ)アクリレートとの相溶性、硬化樹脂層の耐熱性の点から、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が1以上4以下である(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチルが更に好ましい。すなわち、(メタ)アクリル酸メチルを主な構成単位とする重合体であることが好ましい。また、(メタ)アクリル系重合体はラジカル重合可能な二重結合を有するものであってもよい。
なお、主な構成単位とするとは、(メタ)アクリル系重合体において、その構成単位が主成分であるとよく、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上含有されるとよい。
【0040】
(メタ)アクリル重合体は、ガラス転移温度、機械的物性、相溶性等を良好にすることを目的として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、その他ビニル基を有する化合物を共重合することができる。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
前記ビニル基を有する化合物としては、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド系化合物、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン等のスチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、硬化樹脂層の機械的特性を良好にする点から、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましい。また、そのガラス転移温度(Tg)は硬化樹脂層を積層させた積層フィルムの加工性を良好にする点から、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。
【0042】
ガラス転移温度(Tg)は、(メタ)アクリル系重合体を形成する単量体の種類及び質量分率から、下記のFoxの式より求められる。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
上記式で、Tgは(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(単位はK)、Wiは(メタ)アクリル系重合体を構成する単量体i由来の単量体単位の質量分率、Tgiは単量体iの単独重合体のガラス転移温度(単位はK)を示す。Tgiの値は、POLYMER HANDBOOK Volume 1(WILEY-INTERSCIENCE)に記載の値を用いることができる。
【0043】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
(B)改質剤として使用されるウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるもの、乃至、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものである。ウレタン(メタ)アクリレートは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。なお、(B)改質剤としてウレタン(メタ)アクリレートを使用すると、耐擦傷性が良好になる。
【0044】
イソシアネート系化合物としては、例えば、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネート等のポリイソシアネート系化合物が挙げられ、これらの中ではジイソシアネート化合物が好ましい。また、イソシアネート系化合物としては、ジイソシアネート化合物をイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物等が挙げられる。
上記芳香族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
上記脂環式系ポリイソシアネートとしては、例えば、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
これらの中でも、耐黄変性に優れる点で脂肪族系ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好ましい。また、イソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、同様の観点から、脂肪族系ジイソシアネート、又は脂環式ジイソシアネートをイソシアヌレート化したイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物も好ましく、これらの中でもイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系化合物がより好ましい。
イソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1個含有する単官能の水酸基含有(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレート等のエチレン性不飽和基を2個含有する2官能の水酸基含有(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上含有する3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、反応性及び汎用性に優れ、硬化樹脂層の耐擦傷性とフィルム平面性のバランスに優れる点で、エチレン性不飽和基を3個以下含有する(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、また、中でもエチレン性不飽和基を2個以上含有する多官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0046】
上記ポリオール系化合物は、水酸基を2個以上有する化合物(ただし、上記水酸基含有(メタ)アクリレートは除く。)であればよい。
【0047】
上記ポリオール系化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。
【0048】
上記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の2個の水酸基を含有する脂肪族アルコール類、キシリトールやソルビトール等の糖アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3個以上の水酸基を含有する脂肪族アルコール類等が挙げられる。
【0049】
上記脂環族ポリオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロヘキサンジオール類、水添ビスフェノールA等の水添ビスフェノール類、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0050】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体が挙げられる。
【0051】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0052】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトール等)等が挙げられる。
【0053】
上記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0054】
上記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0055】
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0056】
ポリカーボネート系ポリオールに使用される上記多価アルコールとしては、上記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示の多価アルコール等が挙げられ、上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0057】
なお、ポリカーボネート系ポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0058】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマー又はコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0059】
上記ポリブタジエン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部又は一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであってもよい。
【0060】
上記ポリイソプレン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてイソプレンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリイソプレン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部又は一部が水素化された水添化ポリイソプレンポリオールであってもよい。
【0061】
上記(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとの共重合体でもよい。
【0062】
上記ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0063】
上記ポリオール系化合物は1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0064】
上記イソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、乃至、イソシアネート系化合物、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、及びポリオールとの付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5質量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
【0065】
(B)改質剤としてのウレタン(メタ)アクリレートが、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものを含む場合、イソシアネート系化合物とポリオール系化合物を反応させて得られたイソシアネート基を有する反応生成物、又は該反応生成物とイソシアネート系化合物の混合物を、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物とを反応させて得るとよい。
このような反応により得られる、(B)改質剤として使用されるウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものと、イソシアネート系化合物、ポリオール系化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるものの混合物となってもよい。
【0066】
イソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物、オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。これらを単独、あるいは2種以上併せて用いることができる。
【0067】
またイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。また、適宜重合禁止剤等を使用してもよい。
【0068】
また、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物及びイソシアネート系化合物、又は、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物の反応生成物であるが、水酸基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物とイソシアネート系化合物とを反応することで生成してもよい。あるいは、水酸基を有する(メタ)アクリレート及び水酸基を有さない(メタ)アクリレートの混合物と、イソシアネート系化合物と、ポリオール系化合物とを反応することで生成してもよい。この際、水酸基を有さない(メタ)アクリレートは、未反応物として残存するが、そのまま硬化性樹脂組成物に含有させて(A)成分として使用するとよい。
また、以上説明したイソシアネート系化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物との反応においては、上記のとおりイソシアネート系化合物の一部又は全部が、イソシアネート系化合物とポリオ―ル系化合物の反応生成物であってもよい。
【0069】
(B)改質剤として使用されるウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、(A)(メタ)アクリレートよりも大きく、例えば3,000以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは8,000以上であり、そして好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、更に好ましくは30,000以下である。前記範囲を満足することで、硬化樹脂層を積層フィルム等の積層体構成において形成することで、良好なフィルム平面性を確保することができる。
【0070】
(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量は、(A)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量よりも大きくなるとよい。具体的な(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量は、例えば120g/eq以上、好ましくは135g/eq以上、より好ましくは150g/eq以上であり、そして例えば250g/eq以下、好ましくは220g/eq以下、より好ましくは200g/eq以下である。(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基当量が上記範囲内であると、良好なフィルム平面性を確保できる。
【0071】
硬化性樹脂組成物における(A)(メタ)アクリレートに対する(B)改質剤の含有量比(B/A)は、質量比で好ましくは3/97以上、より好ましくは4/96以上であり、そして好ましくは45/55以下、より好ましくは35/65以下、更に好ましくは25/75以下である。含有量比(B/A)が上記範囲内であると、フィルム平面性等を良好にしやすくなる。
【0072】
また、硬化性樹脂組成物において、(A)成分及び(B)成分は、主成分となるものであり、(A)成分及び(B)成分の合計量が、硬化性樹脂組成物の固形分全量に対して、50質量%以上であるとよく、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、そして好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下である。
【0073】
(C)溶媒
硬化性樹脂組成物は、(C)溶媒により希釈されることで塗布液とするとよい。硬化性樹脂組成物は、液状の塗布液として基材フィルムに塗布し、乾燥し、かつ硬化させることで硬化樹脂層とするとよい。硬化性樹脂組成物を構成する各成分((A)~(B)成分等)は、溶媒に溶解させてもよいが、溶媒中に分散させてもよい。硬化性樹脂組成物は、(C)溶媒を含有し、かつ塗布液を乾燥かつ硬化させることで、シワ、カール等が発生するおそれがあるが、本実施形態では、上記(A)~(C)成分の組み合わせにより、シワ、カールの発生が防止できる。
溶媒としては有機溶媒が好ましい。有機溶媒の具体例として、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0074】
有機溶媒の使用量には特に制限はなく、調製される硬化性樹脂組成物の塗布性、液の粘度及び表面張力、固形分の相溶性等を考慮して適宜決定される。硬化性樹脂組成物は、前述の溶媒を用いて、好ましくは固形分濃度が15~80質量%、より好ましくは20~70質量%の塗布液として調製される。なお、硬化性樹脂組成物における「固形分」とは、揮発性成分である溶媒を除いた成分を意味するものであり、固体の成分のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。
【0075】
(D)その他成分
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜、種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、光開始剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、有機顔料、有機粒子、無機粒子、難燃剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤等を併用してもよい。
【0076】
(光開始剤)
硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物の場合、硬化性を向上させるため、硬化性樹脂組成物は光開始剤を含有することが好ましい。光開始剤は、光重合開始剤であり、公知のものを使用することができる。光重合開始剤としては例えば、光ラジカル発生剤、光酸発生剤等が挙げられる。
【0077】
光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)651」、IGM RESINS製]、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)184」、IGM RESINS製]、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)1173」、IGM RESINS製]、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)127、IGM RESINS製」]、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)2959」、IGM RESINS製]、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)907」、IGM RESINS製]、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)TPO」、IGM RESINS製]、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド[例えば、商品名「Omnirad(登録商標)819」、IGM RESINS製]等のホスフィンオキシド類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾフェノン及びその各種誘導体;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル等のギ酸誘導体等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
これらの光ラジカル発生剤の中でも、硬化物の耐光性の観点から、好ましいのはアルキルフェノン類、ホスフィンオキシド類、ギ酸誘導体であり、より好ましいのは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾイルギ酸メチルであり、更に好ましいのは、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オンである。
【0079】
光酸発生剤としては公知のものが使用可能であるが、中でもジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が硬化性、酸発生効率等の観点から好ましい。具体例を挙げると、ジ(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩(具体的にはPF6塩、SbF5塩、テトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート塩等)が例示できる。(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩の具体例としては、ジアルキルフェニルヨードニウムのPF6塩[商品名「Omniad(登録商標)250」、IGM RESINS製]が好ましい。これらの光酸発生剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせてもよい。
【0080】
光開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物中の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計100質量部に対して、硬化性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。一方、硬化性樹脂組成物を溶液としたときの塗布液の安定性を維持する観点及び硬化樹脂層の平面性の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
【0081】
(厚み)
硬化樹脂層(X)の厚みは例えば1μm以上10μm以下、好ましくは1μm以上8μm以下、更に好ましくは1μm以上5μm以下の範囲がよい。硬化樹脂層の厚みをこれら下限値以上とすると、硬化樹脂層により基材フィルムを適切に保護できる。
また、硬化樹脂層の厚みをこれら上限値以下とすると、積層フィルム等の硬化樹脂層を有する積層体構成において、カールや熱シワをより一層防止でき、より一層良好な平面性を確保できる。
【0082】
本実施形態の硬化性樹脂組成物を硬化させて形成される硬化樹脂層(X)は、(A)成分としての(メタ)アクリレート、(B)成分としてのウレタン(メタ)アクリレート、又はこれらの両方を重合してなる(メタ)アクリル系樹脂や、(B)成分としての(メタ)アクリル系重合体(すなわち、(メタ)アクリル系樹脂)を含むものであるが、これら以外にも本発明の目的を損なわない範囲において、いかなる樹脂を使用してもよい。
ただし、硬化樹脂層は、主成分樹脂が(メタ)アクリル系重合体により構成される(メタ)アクリル系重合体層であることが好ましい。なお、主成分樹脂とは、硬化樹脂層を構成する樹脂の中で最も質量割合の大きい樹脂の意味であり、硬化樹脂層を構成する樹脂の50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%を占めればよい。
硬化樹脂層(X)中の粒子の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下であり、硬化樹脂層(X)は実質的に粒子を含有しないことが更に好ましい。硬化樹脂層(X)中の粒子の含有量を上記範囲内とすることで、硬化樹脂層(X)表面の平滑性を高めることができる。
ここで、上記粒子とは有機粒子又は無機粒子をいう。無機粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられ、有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
粒子の平均粒径は、例えば、0.005~10μmである。
【0083】
(硬化樹脂層の形成方法)
硬化樹脂層は、硬化性樹脂組成物を基材フィルム表面に塗布し、乾燥して塗布層を形成し、その塗布層を硬化することで得ることができる。
硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレーコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等の従来公知の塗布方法を用いることができる。
乾燥条件は、特に限定されず、室温付近で行ってもよいし、加熱により行ってもよく、例えば25~120℃程度、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃である。また、乾燥時間は、(D)溶媒が十分に揮発できる限り特に限定されず、例えば10秒間~30分間程度、好ましくは15秒間~10分間程度である。
【0084】
硬化性樹脂組成物の硬化方法は、硬化性樹脂組成物の硬化メカニズムに応じて適宜選択すればよく、硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物であれば加熱することで硬化させればよい。また、光硬化性樹脂組成物であればエネルギー線を照射して硬化させればよい。
本実施形態の積層フィルムにおいて、硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いることのできる活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
硬化性樹脂組成物の硬化方法は、成形時間及び生産性の観点、及び加熱による各部材の熱収縮及び熱劣化を防止できる観点等から、これらの中ではエネルギー線照射により硬化することが好ましい。エネルギー線の照射は、いずれの面側から行ってもよく、基材フィルム側から行ってもよいし、基材フィルムの反対側から行ってもよい。
硬化性樹脂組成物を紫外線照射により硬化させる場合には、種々の紫外線照射装置を用いることができ、その光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED-UVランプ等を使用することができる。紫外線の照射量(単位はmJ/cm2)は、通常50~3,000mJ/cm2であり、硬化性樹脂組成物の硬化性、硬化物(硬化樹脂層)の可撓性等の観点から好ましくは100~1,000mJ/cm2であり、積層フィルムの平面性の観点から、より好ましくは100~500mJ/cm2の範囲で、各硬化工程で必要とされる(メタ)アクリロイル基の反応率に応じて適宜決定される。
【0085】
また、本実施形態の積層フィルムを製造する際、硬化性樹脂組成物を電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常、0.5~20Mradであり、硬化性樹脂組成物の硬化性、硬化物の可撓性、基材の損傷防止等の観点から好ましくは1~15Mradの範囲で、各硬化工程で必要とされる(メタ)アクリロイル基の反応率に応じて適宜決定される。
【0086】
[易接着層]
本実施形態の積層フィルムは、基材フィルムの表面に易接着層を有してもよい。易接着層は、上記した硬化樹脂層が設けられる基材フィルムの一方の面に設けられるとよく、易接着層の表面に上記した硬化樹脂層が形成されるとよい。
易接着層を設けることで、基材フィルムに硬化樹脂層を接着させやすくなる。易接着層は、例えば、バインダー樹脂及び架橋剤を含む易接着層組成物から形成される。
【0087】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等のポリビニル系樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも、硬化樹脂層との密着性向上の観点からは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましく、より好ましくはポリエステル樹脂、アクリル樹脂である。これらバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。易接着層組成物において、バインダー樹脂の含有量は、固形分基準で、例えば20~90質量%、好ましくは30~80質量%である。
【0088】
架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用でき、例えば、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。なお、オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を有するアクリルポリマー等であってよい。
これらの中でも、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、及びエポキシ化合物が好ましい。これら架橋剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
易接着層組成物における架橋剤の含有量は、固形分基準で、例えば、5~60質量%、好ましくは10~50質量%である。
【0089】
易接着層組成物には、耐ブロッキング性、滑り性改良を目的として粒子を配合してもよい。粒子としては、後述する易滑層で示したものを適宜使用できる。ただし、易接着層組成物(すなわち、易接着層)は、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。粒子を実質的に含有しないことで、硬化樹脂層表面の平滑性を高めることができる。
また、易接着層組成物には、架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒等が配合されていてもよい。更に、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することも可能である。
【0090】
易接着層組成物は、一般的に、水、有機溶剤、又はこれらの混合液により希釈されていることが好ましく、易接着層は、易接着層組成物の希釈液を、基材フィルムの表面に塗布液としてコーティングして、乾燥することにより形成するとよい。コーティングは、従来公知の方法で行うとよい。易接着層の厚さは、通常0.003~1μmの範囲であり、好ましくは0.005~0.6μm、更に好ましくは0.01~0.4μmの範囲である。厚さを0.003μm以上とすることで、十分な接着性を確保できる。また1μm以下とすることで、外観の悪化や、ブロッキング等を生じにくくする。
【0091】
[易滑層]
本実施形態の積層フィルムは、易滑層を有してもよい。易滑層は、基材フィルムの硬化樹脂層が設けられる一方の面とは反対側の面に設けられるとよい。易滑層は、基材フィルムの表面に設けられるとよい。積層フィルムは、易滑層を有することで、滑り性が良好となる。そのため、上記の通り、積層フィルムの硬化樹脂層が設けられる側の面の平滑性を高めても、積層フィルムのロール巻き取り性及び取り扱い性が良好になる。
【0092】
易滑層は、例えば、バインダー樹脂、架橋剤及び粒子を含む易滑層組成物から形成される。なお、バインダー樹脂、及び架橋剤に使用できる化合物は、上記易接着層に使用されるバインダー樹脂、架橋剤で説明したとおりである。
また、易滑層組成物におけるバインダー樹脂の含有量は、固形分基準で、例えば、20~90質量%、好ましくは30~80質量%である。易滑層組成物における架橋剤の含有量は、固形分基準で、例えば、5~50質量%、好ましくは10~40質量%である。
【0093】
易滑層に使用される粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、有機高分子粒子等が挙げられる。その中でも透明性の観点からシリカが好ましい。粒子の平均粒径は、ポリエステルフィルムの表面平滑性を損なうことなく、滑り性を良好にする観点から、好ましくは0.005~1.0μm、より好ましくは0.01~0.8μm、更に好ましくは0.01~0.6μmの範囲内である。易滑層組成物における粒子の含有量は、固形分基準で、例えば、1~20質量%、好ましくは3~15質量%である。易滑層に使用される粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
易滑層組成物は、一般的に、水、有機溶剤、又はこれらの混合液により希釈されていることが好ましく、易滑層は、易滑層組成物の希釈液を、基材フィルムの表面に塗布液としてコーティングして、乾燥することにより形成するとよい。コーティングは、従来公知の方法で行うとよい。
易滑層の厚さは、通常0.003~1μmの範囲であり、好ましくは0.005~0.6μm、更に好ましくは0.01~0.4μmの範囲である。厚さを0.003μm以上とすることで、易滑層に含有される粒子を十分に保持でき、滑り性を付与できる。また1μm以下とすることで、外観の悪化や、ブロッキング等を生じにくくする。
【0095】
基材フィルムの表面には必要に応じてコーティングを施すことができ、コーティングにより上記した易接着層及び易滑層を形成するとよい。コーティングは、インラインあるいはオフラインあるいはそれらを両方組み合わせて行うことができるが、インラインで行うことが好ましい。インラインで行うコーティングは、基材フィルムの製造ラインにおいて基材フィルムにコーティングを施すとよい。例えば、基材フィルムが二軸延伸フィルムである場合には、例えば、縦延伸が終了した段階で、易接着層及び易滑層の少なくとも一方を形成するための塗布液を塗布した後、その後の基材フィルムの製造工程で塗布液を乾燥、硬化等させるとよい。
【0096】
<積層フィルムのアニール処理>
本実施形態において、低収縮化のためにアニール処理を行うことが好ましい。アニール処理温度は、150~200℃が好ましく、170~200℃がより好ましい。
【0097】
アニール処理を行う工程における炉内張力は12kg/m幅以下、好ましくは8kg/m幅以下、その中でも特に6kg/m幅以下がよい。
【0098】
アニール処理時間は、1秒間~5分間が好ましい。前記アニール処理時間の範囲の下限は、1秒間以上が好ましく、10秒間以上がより好ましく、1分間以上が更に好ましい。アニール処理時間の範囲の上限は、5分間以下が好ましく、3分間以下がより好ましい。アニール処理時のフィルムの搬送速度は10~300m/分が好ましく、5~200m/分がより好ましい。
【0099】
<積層フィルムの物性>
本実施形態の積層フィルムは、塗布型偏光素子形成用の工程紙(支持体)として用いるため、以下の特性について説明する。
【0100】
(表面粗さ(Sa))
表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクサイエンスの「VertScan」(登録商標)R5500)を用いて、積層フィルムの硬化樹脂層(X)表面において、237.65μm×178.25μmの領域における表面の凹凸形状を光干渉法にて測定する。
塗布型偏光素子組成物の塗布性を良好とするために、硬化樹脂層(X)の表面粗さ(Sa)は2.5nm以下であり、好ましくは2.0nm以下、更に好ましくは1.8nm以下である。上記表面粗さ(Sa)の下限値は、滑り性や塗布型偏光素子との密着性を向上させる観点から、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上、更に好ましくは1.0nm以上である。
上記の通り、より高度なレベルの表面平滑性を有することにより、偏光特性への影響が極力少ない、塗布型偏光素子を形成することが可能となる。
ここで、表面粗さ(Sa)はISO25178に準拠して測定される算術平均高さである。
積層フィルムの硬化樹脂層(X)の表面粗さ(Sa)を上記上限値以下に制御するための因子としては、例えば、基材フィルム、易接着層及び硬化樹脂層(X)に含まれる粒子の含有量が挙げられる。これらの層に含まれる粒子の含有量を低下させることで、硬化樹脂層(X)の表面粗さ(Sa)を上記上限値以下に制御することが可能である。
【0101】
(熱収縮率)
150℃雰囲気下で30分間熱処理した後の積層フィルムのMD、TDの収縮率差(絶対値)は1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.2%以下が更に好ましく、0.1%以下が更に好ましい。
熱収縮率値を上記上限値以下にすることで、より良好な平面性を確保できるとともに良好な偏光特性を有する塗布型偏光素子の形成が可能となる。
【0102】
<塗布型偏光素子>
本実施形態における塗布型偏光素子とは、重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物(以下、「光学異方性組成物」と称す場合がある。)の硬化物及び該硬化物を含む積層体である。光学異方性組成物の硬化物は通常、基材に形成された配向膜上に、重合性液晶化合物等を含む光学異方性組成物を塗布し、重合性液晶化合物を配向させた状態で重合することで得られる。
【0103】
重合性液晶化合物を配向させるには、基材フィルム上に設けられた配向膜による配向規制力、電場や磁場等の外場による配向規制力、及び/又は塗布時のせん断力を用いた方法が挙げられる。特に配向膜による方法が、重合性液晶化合物を高秩序な配向状態となり、良好な光学性能を示す塗布型偏光素子を得られる観点から好ましい。
基材フィルム上に設けられた配向膜は、後述する重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる配向規制力を有する層である。配向膜としては、光学異方性組成物溶液を塗布する際に溶解しない溶剤耐性、光学異方性組成物溶液を弾かない適度な溶液親和性及び溶剤乾燥時や液晶配向時の加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。
配向膜は配向方向制御のために、「液晶便覧」(丸善株式会社、平成12年10月30日発行)の226~239ページ等に記載の公知の方法(ラビング法、配向膜表面上にグルーブ(微細な溝構造)を形成する方法、偏光紫外光・偏光レーザーを用いる方法(光配向法)、LB膜形成による配向方法、無機物の斜め蒸着による配向方法等)により、配向処理を施していてもよい。特に、ラビング法、光配向法が、高配向度を得やすい観点から好ましい。
配向膜の厚さは、通常10nm~1000nmであり、好ましくは50nm~800nmである。前記範囲であることで、重合性液晶化合物を配向させるに十分な配向規制力と薄膜化を両立できる。
【0104】
光学異方性組成物は、重合性液晶化合物や光重合開始剤の他に、重合開始剤、必要に応じて非重合性液晶化合物、重合禁止剤、重合助剤、重合性非液晶化合物、非重合性非液晶化合物、界面活性剤、レベリング剤、カップリング剤、pH調整剤、分散剤、酸化防止剤、有機・無機フィラー、金属酸化物等の各種添加剤や溶剤を含む組成物であり、この光学異方性組成物の硬化物層が、偏光素子としての光学機能を発揮する。
偏光素子が偏光膜である場合は、光学異方性組成物中に二色性色素を含むのが好ましい。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料等が挙げられる、用いる二色性色素は一種類でもよいし、異なる色素を複数組み合わせてもよい。
前記二色性有機染料としては、特に限定されることはないが、アゾ系色素、キノン系色素(ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素等を含む。)、スチルベン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、インジゴ系色素、縮合多環系色素(ペリレン系色素、オキサジン系色素、アクリジン系色素等を含む。)等が挙げられる。これらの色素の中でも、分子長短軸比が大きく、良好な二色性を示しえるため、アゾ系色素が好ましい。
【0105】
重合性液晶化合物は、重合性官能基を有する液晶化合物であり、液晶を配向させた状態で重合性官能基を架橋することにより配向を固定し、光学異方性を発現する。重合性液晶化合物は一種類でもよいし、異なる構造の化合物を複数組み合わせてもよい。
重合性液晶化合物は、重合性官能基を有する低分子液晶化合物、重合性官能基を有する高分子液晶化合物いずれを用いてもよい。その中でも、重合性液晶化合物が高い配向性を示す硬化物を得やすい傾向をもつことから、低分子液晶化合物であることが好ましい。
重合性液晶化合物が示す液晶相はネマティック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、ディスコティック液晶等を適宜選択することができるが、製造の容易さと秩序性の高い配向状態を得る観点から、ネマティック液晶、スメクチック液晶を示すことが好ましい。
重合性官能基は、配向構造の固定の容易さから光重合性基であることが好ましい。具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、エチニルオキシ基、1,3-ブタジエニル基、1,3-ブタジエニルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、スチリル基、スチリルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0106】
重合性液晶化合物としては、特に分子構造は限定されることなく重合性基を有する液晶化合物を用いることができる。例えば、本実施形態の異方性色素膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物としては、下記式(1)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(1)」と称す場合がある。)を挙げることができる。
【0107】
Q1-R1-A11-Y1-A12-(Y2-A13)k-R2-Q2 (1)
【0108】
(式(1)中、
-Q1は、水素原子又は重合性基を表し;
-Q2は、重合性基を表し;
-R1-及び-R2-は、それぞれ独立に、鎖状有機基を表し;
-A11-及び-A13-は、それぞれ独立に、下記式(2)で表される部分構造、2価有機基、又は単結合を表し;
-A12-は、下記式(2)で表される部分構造又は2価有機基を表し;
-Y1-及び-Y2-は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=S)O-、-OC(=S)-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2S-、又は-SCH2-を表し;
-A11-及び-A13-の一方は、下記式(2)で表される部分構造又は2価有機基であり;
kは1又は2である。
kが2の場合、2つの-Y2-A13-は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0109】
-Cy-X2-C≡C-X1- (2)
(式(2)中、
-Cy-は、炭化水素環基又は複素環基を表し;
-X1-は、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=S)O-、-OC(=S)-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2S-、又は-SCH2-を表し;
-X2-は、単結合、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=S)O-、-OC(=S)-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2S-、又は-SCH2-を表す。)
【0110】
なお、-A11-が、式(2)で表される部分構造である場合、式(1)は、下記式(1A)であってもよく、下記式(1B)であってもよい。
Q1-R1-Cy-X2-C≡C-X1-Y1-A12-(Y2-A13)k-R2-Q2 (1A)
Q1-R1-X1-C≡C-X2-Cy-Y1-A12-(Y2-A13)k-R2-Q2 (1B)
【0111】
また、-A12-が、式(2)で表される部分構造である場合、式(1)は、下記式(1C)であってもよく、下記式(1D)であってもよい。
Q1-R1-A11-Y1-Cy-X2-C≡C-X1-(Y2-A13)k-R2-Q2 (1C)
Q1-R1-A11-Y1-X1-C≡C-X2-Cy-(Y2-A13)k-R2-Q2 (1D)
【0112】
また、-A13-が、式(2)で表される部分構造である場合、式(1)は、下記式(1E)であってもよく、下記式(1F)であってもよい。
Q1-R1-A11-Y1-A12-(Y2-Cy-X2-C≡C-X1)k-R2-Q2 (1E)
Q1-R1-A11-Y1-A12-(Y2-X1-C≡C-X2-Cy)k-R2-Q2 (1F)
【0113】
同様に、-A11-、-A12-、及び-A13-のうち、二つ以上が式(2)で表される部分構造である場合、それぞれ独立に、式(2)で表される部分構造の向きが反転していてもよい。
【0114】
また、上記のように、-A11-、-A12-、及び-A13-は、それぞれ独立に、式(2)で表される部分構造又は2価有機基であり、加えて、-A11-及び-A13-は、単結合であってもよいが、-A11-及び-A13-が、ともに単結合であることはない。
【0115】
重合性液晶化合物(1)としては、前記式(1A)、(1B)、(1E)又は(1F)で表される化合物であることが高い配向性得られる傾向がある理由で好ましい。
【0116】
光学異方性組成物の硬化膜の厚みは、光学機能を担保する観点から100nm以上が好ましく、300nm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましい。
一方、厚さの上限は、画像表示装置の薄膜化に寄与する観点から50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。
【0117】
<その他の実施態様>
本実施形態の積層フィルムは、基材フィルムにおける硬化樹脂層(X)が設けられた面とは反対側の面に、硬化樹脂層(Y)を更に備えることができる。硬化樹脂層(Y)を更に備えることにより、積層フィルムの収縮を抑制し、平面性を更に向上させることができる。硬化樹脂層(Y)としては、前述した硬化樹脂層(X)と同様のものを例示することができる
また、本実施形態の塗布型偏光素子付き積層フィルムは、本実施形態の積層フィルムと、積層フィルムの硬化樹脂層(X)上に形成された塗布型偏光素子と、を備える。
本実施形態における塗布型偏光素子付き積層フィルムの構成は、例えば、塗布型偏光素子/硬化樹脂層(X)/基材フィルム、塗布型偏光素子/硬化樹脂層(X)/易接着層/基材フィルム、塗布型偏光素子/硬化樹脂層(X)/基材フィルム/易滑層、塗布型偏光素子/硬化樹脂層(X)/基材フィルム/硬化樹脂層(Y)、塗布型偏光素子/硬化樹脂層(X)/易接着層/基材フィルム/硬化樹脂層(Y)、塗布型偏光素子/硬化樹脂層(X)/基材フィルム/易接着層/硬化樹脂層(Y)、塗布型偏光素子/硬化樹脂層(X)/易接着層/基材フィルム/易接着層/硬化樹脂層(Y)、塗布型偏光素子/硬化樹脂層(Z)/硬化樹脂層(X)/基材フィルム等の構成が例示される。
なお、上記の硬化樹脂層(Z)は塗布型偏光素子と硬化樹脂層(X)との間に設けられる機能層を意味する。必要に応じて、帯電防止、易接着、レベリング等の各種機能を付与することができる。
【0118】
<語句の説明等>
本実施形態においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本実施形態において、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例】
【0119】
次に、実施例により本発明を更に詳しく説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0120】
<評価方法>
種々の物性及び特性の測定及び評価方法は、以下の通りである。
【0121】
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0122】
(2)粒子の平均粒径
走査型電子顕微鏡(HITACHI製、「S3400N」)を用いて、粉体を観察した。
得られた画像データから粒子10個の直径をそれぞれ測定し、粒子10個の直径の平均値を平均粒径とした。
【0123】
(3)数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)「HLC-8120」(東ソー株式会社製)を用いて測定した。カラムとしては、TSKgel G5000HXL*GMHXL-L(東ソー株式会社製)を使用した。また、標準ポリスチレンとして、F288/F80/F40/F10/F4/F1/A5000/A1000/A500(東ソー株式会社製)及びスチレンを使用して検量線を作成した。重合体をテトラヒドロフランに濃度が0.4質量%になるように溶解した溶液100μLを使用してカラムオーブン温度40℃で測定を行った。標準ポリスチレン換算にて数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0124】
(4)硬化樹脂層表面の表面粗さ(Sa)
ISO25178に準拠して、表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクサイエンスの「VertScan」(登録商標)R5500)を用いて、積層フィルムの硬化樹脂層表面において、237.65μm×178.25μmの領域における表面の凹凸形状を光干渉法にて測定し、以下の条件で補完及びベースライン補正を行い、データを読み取り、硬化樹脂層表面の表面粗さ(Sa)を算出した。なお、測定時における対物レンズの倍率は20倍に設定した。
(補正条件)
・補完補正:完全
・ベースライン補正:面補正(多項式近似4次)
【0125】
(5)積層フィルムの収縮率
実施例及び比較例で得られた積層フィルムから、15cm×1.5cmの試験片を切り出し、試験片の中央部に、長辺方向(測定する方向)に平行な長さ10cmの標線を描いた。次いで、標線を描いた試験片に対して、無張力状態で150℃に保った熱風式オーブン中、30分間加熱処理し、その前後の標線間長さを測定して次式にて収縮率を算出した。
得られた収縮率から収縮率差(MD-TD)の絶対値を求めた。
収縮率(%)={(L0-L1)/L0}×100
(上記式中、L0は加熱処理前の標線間長さ、L1は加熱処理後の標線間長さを表す。)
積層フィルムの標線間長さは、フィルム長手方向(MD)と幅方向(TD)について5点ずつ測定し、それぞれの方向の平均値を求めた。
得られたMD方向の収縮率及びTD方向の収縮率から収縮率差(MD-TD)の絶対値を求めた。
【0126】
(6)塗布型偏光素子組成物の塗布性評価
積層フィルムの硬化樹脂層(X)表面に下記組成から構成される光配向膜組成物、重合性液晶組成物を順次塗布、硬化させ、塗布型偏光素子を形成した。
【0127】
(光配向膜組成物の調製)
下記式で示される感光性ポリマー(Sigma-Aldrich Japan製、ポリビニルシンナメート)2質量部、シクロペンタノン98質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-361N)0.02質量部を均一に混合し、光配向膜組成物を得た。
【化1】
【0128】
(重合性液晶組成物の調製)
下記式で示される重合性液晶(Ambeed社製、2-メチル-1,4-フェニレンビス(4-(((4-(アクリロキシ)ブトキシ)カルボニル)オキシ)ベンゾエート))30質量部、トルエン70質量部、光重合開始剤(IGM Resins社製、OMNIRAD907)0.3質量部、レベリング剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、BYK-361N)0.03質量部を均一に混合し、重合性液晶組成物を得た。
【化2】
【0129】
(塗布型偏光素子付き積層フィルムの作製)
積層フィルムの硬化樹脂層(X)表面(平滑面)に、光配向膜組成物をバーコートにて乾燥後の厚みが0.5μmになるように塗布した。塗布面に広帯域ワイヤーグリッド偏光板を介して紫外線を照射(積算光量で250mJ/cm2)することによって、配向規制力を有する光配向膜が形成されたフィルムを得た。
前記フィルムの光配向膜形成面に、重合性液晶組成物をバーコートにて厚み(乾燥後)が2μmになるように塗布し、80℃、2分間加熱した後、室温に冷却し、その後、紫外線を照射(積算光量で500mJ/cm2)して、塗布型偏光素子を形成し、塗布型偏光素子付きフィルムを得た。
得られた塗布型偏光素子付きフィルムの外観について、以下の判定を行った。
(判定基準)
○:塗布欠陥がないか、あっても極微小なレベルである。
×:明瞭に塗布欠陥が確認できる。
【0130】
各実施例及び比較例における積層フィルムの材料は、以下のとおりである。
(易接着層付き基材フィルム)
・PETフィルムF1:易接着層付きPETフィルム、PETフィルム厚み:38μm
PETフィルムF1は以下の方法により製造した。
まず、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、アルコール成分がエチレングリコール98mol%とジエチレングリコール2mol%であるポリエステルであって、固有粘度(IV)が0.64dl/gであるポリエステルAを用意した。
また、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、アルコール成分がエチレングリコール98mol%とジエチレングリコール2mol%であり、固有粘度(IV)が0.62dl/gであるポリエステルと、平均粒径3μmのシリカ粒子を0.2質量%とを含む、ポリエステル組成物Bを用意した。
次いで、中間層として、ポリエステルAを、280℃に設定したメインのベント付き二軸押出機に送り込んだ。また表面層として、ポリエステルAを50質量%、及びポリエステル組成物Bを50質量%含むポリエステル組成物のチップを、280℃に設定したサブのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
メイン押出機からのポリマーが中間層、サブ押出機からのポリマーが表面層となるように2種3層(表面層/中間層/表面層=1:8:1の吐出量(質量比))の層構成で共押出して口金から押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を30℃に設定した冷却ロール上で急冷固化させ、未延伸シートを得た。次いで、得られた未延伸シートを、長手方向(MD)に85℃で3.5倍延伸した後、テンターに導き、下記易接着層組成物からなる易接着層を厚み(乾燥後)が0.1μmになるように塗布し、次いで幅方向(TD)に100℃で4.4倍に延伸した後、200℃で10秒間熱処理を施し、厚み38μmのPETフィルムF1を得た。
【0131】
(易接着層組成物の配合条件)
下記化合物をX1:X2:Y1:Y2:Y3=60:10:10:10:10(固形分の質量%)で混合。
(バインダー樹脂)
(X1):下記の組成で共重合した、縮合多環構造を有するポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6-ナフタレンジカルボン酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
(X2):下記の組成で重合した、アクリル樹脂水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(架橋剤)
(Y1):ヘキサメトキシメチロール化メラミン
(Y2):水溶性ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
(Y3):オキサゾリン基含有アクリルポリマー(エポクロス(登録商標)、オキサゾリン基量4.5mmol/g、株式会社日本触媒製)
【0132】
・PETフィルムF2:易接着層付きPETフィルム、PETフィルム厚み:25μm
PETフィルムF1において、PETフィルム厚みを25μmに変更する以外はPETフィルムF1と同様に製造し、易接着層が設けられた、厚み25μmのPETフィルムF2を得た。
【0133】
(硬化性樹脂組成物)
(A1)ウレタン(メタ)アクリレート
製造例
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー及び窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(a1-1)66質量部、水酸基価50mgKOH/gのジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(a1-2)94質量部(a1-1/a1-2=0.28/0.72(mol/mol))、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.6質量部、及び反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.05質量部を仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、アクリロイル当量107g/eqのウレタン(メタ)アクリレート系組成物(A1)を得た。
得られたウレタン(メタ)アクリレート系組成物(A1)の重量平均分子量は1,600、60℃での粘度は1,500mPa・sであった。
【0134】
(A2)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(A-TMMT:新中村化学工業株式会社製)
粘度:215mPa・s/40℃
【0135】
(B1)(メタ)アクリル系重合体:(BR87、三菱ケミカル株式会社製)
重量平均分子量(Mw)25,000、酸価9.8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)106℃のMMA系共重合体(メタクリル酸メチルを主たる構成単位とする重合体)
(C)溶媒
メチルエチルケトン(MEK)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)の混合溶媒(塗布液のMEKとPGMの溶媒比率が3:7となるように配合)
(D1)光開始剤
IGMレジン社製、Omnirad127
(D2)レベリング剤
ポリフロー75(アクリル系ポリマー:共栄社化学株式会社製)
(D3)ナノシリカ粒子
SIRMIBK15WT%-B04(CIKナノテック株式会社製)
【0136】
[実施例1]
PETフィルムF1の易接着層上に、下記硬化性樹脂組成物(X1)を、厚み(硬化後)が4.5μmとなるようにバーコートによって塗布し、80℃、30秒間乾燥後、紫外線照射(積算光量で200mJ/cm2)して硬化樹脂層(X1)を形成した。次に下記硬化性樹脂組成物(Y)を、厚み(硬化後)が4.5μmとなるようにバーコートによって、PETフィルムF1における硬化樹脂層(X)が形成された面とは反対側の面に塗布し、80℃、30秒間乾燥後、紫外線照射(積算光量で200mJ/cm2)して硬化樹脂層(Y1)を形成した。得られた積層フィルムを評価し、評価結果を表1に示す。
(硬化性樹脂組成物(X1)の配合条件)
A1/B1/C/D1/D2=100/5/325/3/0.48(質量部)
(硬化性樹脂組成物(Y1)の配合条件)
A1/A2/B1/C/D1/D3=80/20/3/342/3/8(質量部)
【0137】
[実施例2]
PETフィルムF1の易接着層上に、下記硬化性樹脂組成物(X2)を、厚み(硬化後)が3.0μmとなるようにバーコートによって塗布し、80℃、30秒間乾燥後、紫外線照射(積算光量で200mJ/cm2)して硬化樹脂層(X2)を形成した。得られた積層フィルムを評価し、評価結果を表1に示す。
(硬化性樹脂組成物(X2)の配合条件)
A1/B1/C/D1/D2=100/5/325/3/0.48(質量部)
【0138】
[比較例1]
PETフィルムF2の易接着層上に、下記硬化性樹脂組成物(X3)を、厚み(硬化後)が1.5μmとなるようにバーコートによって塗布し、80℃、30秒間乾燥後、紫外線照射(積算光量で200mJ/cm2)して硬化樹脂層(X3)を形成した。得られた積層フィルムを評価し、評価結果を表1に示す。
(硬化性樹脂組成物(X3)の配合条件)
A1/A2/B1/C/D1/D3=80/20/3/342/3/8(質量部)
【0139】
【0140】
(考察)
実施例1及び2では、光配向膜組成物及び重合性液晶組成物等の塗布型偏光素子組成物を塗布後、得られた塗布型偏光素子の外観が、総じて比較例1より良好であった。すなわち、実施例1及び2の積層フィルムは塗布型偏光素子形成時に塗布欠陥がなく、更に収縮率差が低いためカール、熱シワ等が生じ難く、平面性に優れていた。
また、比較例1は、従来の基材フィルム表面の平滑性レベルとしては、全く問題なく使用できるレベルではあるが、塗布型偏光素子形成用としては、特に高度なレベルの平滑性が必要とされるため、適用困難となる。更に、基材フィルムには、ロールtoロールプロセスにも適用可能なように、高度なレベルで良好な平面性が必要とされる。フィルム表面の微細な凹凸、あるいはフィルムのわずかな寸法変化が塗布型偏光素子の性能(特に偏光特性)に影響を及ぼすことが懸念されるためである。