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特許7600745積層体、その製造方法およびクロロスルホン化ポリオレフィン接合用接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】積層体、その製造方法およびクロロスルホン化ポリオレフィン接合用接着剤
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/00 20060101AFI20241210BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B25/00
B32B37/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021025850
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127710
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊裕
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-268942(JP,A)
【文献】特開2004-210995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 25/00
B32B 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層を有する積層体であって、クロロスル
ホン化ポリオレフィン加硫物層とクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層の間に、クロ
ロプレンゴム100重量部に対しケイ素化合物を20~100重量部含むクロロプレンゴ
ム加硫物層を有する積層体。
【請求項2】
クロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層が配合剤として無機の補強剤または充填剤、
および加硫剤および/または加硫促進剤を含み、その配合剤の種類および/または量が積
層される層ごとに異なることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物成形体を、クロロスルホン化ポリエチレ
ン未加硫物成形体の間に配置した後、加硫することを特徴とする請求項1又は2に記載の
積層体の製造方法。
【請求項4】
ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物を溶剤に溶解し、その溶解液をクロロス
ルホン化ポリエチレン未加硫物成形体に塗布し、ついで別のクロロスルホン化ポリエチレ
ン未加硫物成形体を重ね合わせ積層体を形成した後、加硫することを特徴とする請求項1
又は2に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層を有する積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロスルホン化ポリオレフィンとしては、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)やアルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)が市販されている。クロロスルホン化ポリオレフィンは、加工性、機械的強度や耐摩耗性などの力学的物性、および、耐熱性、対候性、耐油性、耐薬品性などの耐久性が優れるゴムである。
【0003】
一般的に合成ゴム素材の特性は、その原料ゴムの種類だけでなく、カーボン等に代表される補強剤や、コストダウンのための充填剤、加工性を改善するオイルや加工助剤、加硫と呼ばれる架橋反応をおこなう薬剤など、いわゆる配合剤の種類にも大きく影響される。
補強剤としては一般的にカーボンが用いられるが、クロロスルホン化ポリオレフィンは一般的に着色性や明色安定性に優れるため、黒以外で用いられることも多い。しかし、補強材としてカーボンを用いた場合は黒い加硫ゴムとなるため、その他の色の加硫ゴムを得るためにはカーボンでは無く無機質の白色の補強剤が用いられることも多い。クロロスルホン化ポリオレフィンの加硫の方法として、大きく分類して、チウラム系化合物を用いた硫黄系加、マレイミド系化合物を用いたマレイミド加硫、過酸化物を用いた過酸化物加硫などが挙げられる。硫黄系加硫では、破断伸びや強度などの力学物性がより優れ、過酸化物加硫では耐熱性や耐黄変性などがより優れるというように加硫系によって特徴があるため、目的によって使い分けられるのが一般的である。そのため、例えば表と裏で異なる色相や特徴が要求される場合などは、要求にあわせて補強剤の種類や加硫系など、各種配合剤を選定し、それらを積層体とすることで要求物性を満たすことができる。一般的に、同じゴム同士、例えばクロロプレンゴム同士であれば、配合が異なっても未加硫物同士を同時に加硫して接着するいわゆる加硫接着が可能である。しかし、クロロスルホン化ポリオレフィンは接着性に乏しく、同じ加硫系を用いた場合でも加硫接着が困難であった。
【0004】
これまでに、ハイドロタルサイト化合物およびケイ素含有化合物を配合したクロロスルホン化ポリオレフィン組成物とニトリルゴム組成物とクロロプレンゴム組成物とを加硫接着させる技術が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この方法では、クロロスルホン化ポリオレフィンの配合にハイドロタルサイト化合物やケイ素化合物が必須であり、配合が限定されて任意の配合ができないため、必ずしも要求される色や物性などの要求を満たすことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-113769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は複数のクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層界面が強固に積層された積層体およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、ケイ素含有化合物を含むクロロプレンゴムを介することでクロロスルホン化ポリエチレン加硫物層を強固に接着可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の各態様は、以下の[1]~[6]である。
[1] 複数のクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層を有する積層体であって、クロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層とクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層の間に、クロロプレンゴム100重量部に対しケイ素化合物を20~100重量部含むクロロプレンゴム加硫物層を有する積層体。
[2] クロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層が配合剤として無機の補強剤または充填剤、並びに加硫剤および/または加硫促進剤を含み、その配合剤の種類および/または量が積層される層ごとに異なることを特徴とする、[1]に記載の積層体。
[3] ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物成形体を、クロロスルホン化ポリエチレン未加硫物成形体の間に配置した後、加硫することを特徴とする[1]又は[2]に記載の積層体の製造方法。
[4] ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物を溶剤に溶解し、その溶解液をクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物成形体に塗布し、ついで別のクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物成形体を重ね合わせ積層体を形成した後、加硫することを特徴とする[1]又は[2]に記載の積層体の製造方法。
[5] ケイ素化合物、クロロプレンゴム及び加硫剤、又はケイ素化合物、クロロプレンゴム及び加硫促進剤を含むクロロスルホン化ポリオレフィン接合用接着剤。
[6] さらに溶剤を含む[5]に記載のクロロスルホン化ポリオレフィン接合用接着剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、界面が強固に接合された任意の配合のクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物積層体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を更に詳細に説明する。
【0012】
本発明の一態様である積層体は、複数のクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層を有するものであり、隣接するそれぞれのクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層の間にケイ素化合物を含むクロロプレンゴム加硫物層を有する。
【0013】
クロロスルホン化ポリオレフィンとは、各種ポリオレフィンを塩素化およびクロロスルホン化したものをいう。原料となるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの単独重合体や、エチレンとプロピレン、エチレンとブテン、エチレンと酢酸ビニルの共重合体(EVA)などが挙げられるが、ポリエチレンを原料としたクロロスルホン化ポリエチレンが代表的である。クロロスルホン化ポリエチレンとしては、東ソー(株)製 TOSO-CSM(登録商標)やextos(登録商標)などが挙げられる。
【0014】
本発明の一態様である積層体を構成するクロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層には、加硫をするための配合剤として、無機の補強剤または充填剤、および加硫剤および/または加硫促進剤を含む。例えば、上層は耐油性に優れ、中間層は柔軟性に優れ、下層は耐水性に優れるなど、積層された各層が異なる特性を示すことができるようその配合剤の種類および/または量が積層される層ごとに異なることが好ましい。
【0015】
無機の補強剤としては、カーボンブラックやシリカ、ホワイトカーボンなどが挙げられる。無機の充填剤としては、炭酸カルシウムやクレー、シリカなどが挙げられる。加硫剤としては、多官能性モノマーが使用され、例えばトリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。加硫促進剤としては、チオウレア化合物やチウラム化合物、マレイミド化合物、過酸化物などが挙げられる。また、この他に、一般的にクロロスルホン化ポリオレフィンに用いられる配合剤を用いることができる。
【0016】
一般的にクロロスルホン化ポリオレフィンの加硫に用いられる加硫系としては、例えばチウラム系化合物を用いた硫黄系加硫、マレイミド系化合物を用いたマレイミド加硫、過酸化物を用いた過酸化物加硫などが挙げられ、硫黄系加硫では、破断伸びや強度などの力学物性がより優れ、過酸化物加硫では耐熱性や耐黄変性などがより優れるというように、加硫系によって特徴がある。また、加硫の際に発生する塩素化合物を補足するために受酸剤が用いられる。一般的にロロスルホン化ポリオレフィンに用いられる受酸剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの金属酸化物や、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。本発明で用いる受酸剤は特に限定するものでは無いが、受酸が不十分であると加硫の進行を妨げる為、十分な受酸剤量を添加する事が好ましい。一般的に、酸化マグネシウムであればクロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に対し2重量部以上、ハイドロタルサイトであれば8重量部以上が用いられる。
【0017】
本発明の一態様である積層体は、ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム加硫物層を有する。クロロプレンゴムは、2-クロロ-1,3ブタジエンの単量体、または、2-クロロ-1,3ブタジエンの単量体と、2-クロロ-1,3ブタジエンの単量体と共重合可能な他の単量体を1種類以上共重合したものをいい、各社から市販されている。例えば、東ソー(株)製のスカイプレンなどが挙げられる。クロロプレンゴムには、硫黄を共重合した硫黄変性クロロプレンゴムと非硫黄変性クロロプレンゴムが存在するが、本発明ではどちらのクロロプレンゴムでも用いることが可能である。クロロプレンゴム加硫物は、クロロプレンゴムを加硫したものである。クロロプレンゴム加硫物層はクロロプレンゴム100重量部に対しケイ素化合物を20~100重量部、好ましくは30~80重量部添加したものを加硫したものである。ケイ素化合物を20重量部以上100重量部以下とすることで、クロロスルホン化ポリオレフィン加硫物層と優れた接着強度を得ることができる。
【0018】
ケイ素化合物としては、補強剤としてシリカが一般的に用いられ、また、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸化合物、および各種クレーなどが用いられる。また、クロロプレンゴム未加硫物は、加硫を行うため、加硫促進剤、金属酸化物などの配合剤を含む事が好ましい。配合剤はクロロプレンゴムの加硫に一般的に用いられるものであれば特に限定するものでは無いが、エチレンチオウレアなどのチオウレア化合物、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系化合物などを用いることで一般的にクロロプレンゴムは優れた加硫特性,加硫物性を有することが知られている。金属酸化物としては、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛がクロロプレンゴム100重量部に対し、それぞれ2~10重量部使用されるのが一般的である。
【0019】
本発明の一態様である積層体の製造方法は、ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物成形体を、クロロスルホン化ポリエチレン未加硫物成形体の間に配置した後、加硫する、または、ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物を溶剤に溶解し、その溶解液をクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物成形体に塗布し、ついで別のクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物成形体を重ね合わせ積層体を形成した後、加硫することで積層体とすることができる。例えば、クロロスルホン化ポリオレフィン未加硫物をシート状に成型し、その上面に、ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物を重ねてから別のクロロスルホン化ポリオレフィン未加硫物を重ね合わせた状態とし、加熱等により加硫し接合する方法や、ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物を有機溶剤等に溶解し、それを箱型に成型したクロロスルホン化ポリオレフィン未加硫物の1面に塗布、乾燥後、別のクロロスルホン化ポリオレフィン未加硫物をその面に重ね合わせた状態にて加熱し、接合する方法などが挙げられる。
【0020】
クロロスルホン化ポリオレフィン未加硫物およびクロロプレンゴム未加硫物を成型する方法は特に限定するものではないが、例えば、それぞれの未加硫物を押出機により重ねて押出成形する多層成形や、それぞれの混合物をオープンロールまたはカレンダーロール等で圧延し、シート状に成型後、金型に重ねて入れて任意の形状に成型する方法などが挙げられる。本発明ではクロロスルホン化ポリオレフィン未加硫成形体の形状、大きさ、厚みについては特に限定するものではなく、任意の形状のもの同士を積層体とすることが可能である。
【0021】
ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物の形状は特に限定するものでは無いが、積層体の物性への影響を少なくしたい場合は2mm以下の薄いシート状とするのが好ましく、更には、0.5mm以下の薄膜とするのが好ましい。0.5mm以下の薄膜とする方法としては、ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物を有機溶剤等に溶解し、それを塗布する方法などが挙げられる。
【0022】
ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物を有機溶剤等に溶解する方法は特に限定するものでは無く、ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物を容器に入れ、そこに有機溶剤を加え、混合する事で作製する事ができる。有機溶剤の量は特に限定するものでは無いが、ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物の濃度が3~10%程度となるよう調整するのが好ましい。3%以上とすることで薄膜をクロロスルホン化ポリオレフィン未加硫物の上に効率よく形成することが可能となり、10%以下とすることで溶解性および塗布性に優れた接着剤を得ることができる。有機溶剤の種類は特に限定するものでは無く、単独または混合により未加硫のクロロプレンゴムを溶解可能なものであれば用いることができる。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、メチルエチルケトン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、や、ヘキサン-シクロヘキサン-酢酸エチル-アセトンの混合液などが挙げられる。
【0023】
クロロスルホン化ポリオレフィン未加硫物は、クロロスルホン化ポリオレフィンと各種の配合剤とを混合・混錬することにより得られる。クロロスルホン化ポリオレフィンと各種の配合剤を混合・混錬する手法については特に限定するものではなく、通常知られているゴムの混錬と同様の方法にておこなうことができる。例えば、受酸剤、補強剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤等をロール、ニーダーバンバリー等の混練機またはオープンロールによってクロロスルホン化ポリオレフィンと混合することができる。
【0024】
ケイ素化合物を含むクロロプレンゴム未加硫物は、クロロプレンゴムにケイ素含有化合物およびその他各種の配合剤を混合・混錬することにより得られる。クロロプレンゴムに各種の配合剤を混合・混錬する手法については特に限定するものではなく、通常知られているゴムの混錬と同様の方法にておこなうことができる。例えば、受酸剤、補強剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、過酸化物、金属酸化物等をロール、ニーダーバンバリー等の混練機またはオープンロールによってクロロプレンゴムと混合することができる。
【0025】
加硫方法については、特に限定するものではなく、通常のゴムの加硫方法にて実施することが可能であり、例えば、得られた未加硫物成形体を、熱プレスや加硫釜内部にて加熱したり、紫外線や電磁波などによりエネルギーを与えることで行うことができる。一般的には加熱加硫が行われる。加硫温度については、120~200℃にて実施可能であるが、加硫速度や加硫時のゴムの熱分解抑制の観点から、140~180℃が好ましい。また、加硫時間は加硫温度が低いほど、また、加硫するものの形状が大きく内部まで熱が伝わりにくい場合ほど長くなるが、一般的2時間以内で、小さいものであれば160℃にて20分程度で可能である。
【0026】
本発明の一態様であるクロロスルホン化ポリオレフィン接合用接着剤は、ケイ素化合物、クロロプレンゴム及び加硫剤、又はケイ素化合物、クロロプレンゴム及び加硫促進剤を含むものである。また、さらに溶剤を含んでいてもよい。
【実施例
【0027】
本発明を以下の実施例により具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
本実施例における積層体の作製およびその接着強度の測定は以下のように実施した。
<未加硫物作製>
クロロスルホン化ポリエチレンまたはクロロプレンゴムと、表1に示す所定の割合の配合剤とを3L加圧型ニーダーにて混錬後、8インチオープンロールにて間隙1.4mmでシート状に成型した。
【0029】
【表1】
【0030】
<接着剤の作製>
表1の配合で作製したクロロプレン未加硫物10gと90gのトルエンを約300ml容量の蓋つきガラス瓶に入れ、蓋をして密栓した後ボールミル架台上で室温にて16時間回転混合させ溶解し、クロロプレン未加硫物を含む溶液とした。
<積層体の作製1>
シート状に成型したクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物をハサミで裁断し、20cm×20cmのシートを2枚作製した。また、同様にクロロプレンゴム未加硫物をハサミで裁断し、20cm×20cmのシートを作製し、クロロスルホン化ポリエチレン未加硫物の上にクロロプレンゴム未加硫物を重ね、その上にクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物を重ねた後、厚4mmの金型に入れ、加熱圧縮成型機を用いて160℃にて20分間150kg/mにて圧縮成形し、積層体を得た。なお、シートを重ねる際、一部に2mm幅PETフィルムを挟むことで接着しないようにして、接着強度測定の際の掴みしろとした。
<積層体の作製2>
シート状に成型したクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物をハサミで裁断し、20cm×20cmのシートを2枚作製した。作製したシートそれぞれの片面にクロロプレン未加硫物接着剤を塗布し、23℃にて30分風乾した後、シートの接着剤塗布面を重ねて20cm×20cm、厚み5mmの金型に入れ、加熱圧縮成型機を用いて160℃にて20分間150kg/mにて圧縮成形し、積層体を得た。なお、シートを重ねる際、一部にPETフィルムを挟むことで接着しないようにして、接着強度測定の際の掴みしろとした。
<接着強度の測定>
積層体を25℃にて1日養生した後、25mm幅に打抜き、剥離試験機にて、180度剥離を行い、23℃における剥離強度の測定と剥離状態を観察した。剥離試験機に装着する際にはPETフィルムを剥がし、治具の掴みしろとし、剥離速度は200mm/minとした。
【0031】
剥離状態は、クロロプレンゴムとクロロスルホン化ポリエチレンの界面が明白な界面剥離、界面が判別できないゴム破壊、およびそれらの混在のどれに該当するかを目視で確認した。
【0032】
実施例1
クロロプレンゴムとして、東ソー(株)製のクロロプレンゴムであるスカイプレンTSR-51を、クロロスルホン化ポリエチレンとして、東ソー(株)製のTOSO-CSM TS-530を用いた。表1のCR配合において、ケイ素含有化合物としてシリカ(東ソー・シリカ(株)製VN3)30重量部を配合し、上記<積層体の作製1>に従い、ケイ素化合物含有クロロプレン未加硫物シートを作製し、配合1のクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物シートと重ね、さらにその上に配合2のクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物シートを重ねた後、加熱圧縮成型機を用いて積層体を作製した。積層体の各層の間の剥離強度は大きく、剥離状態はゴム破壊であった。
【0033】
実施例2
表1のCR配合において、ケイ素含有化合物としてデキシクレーを40重量部配合した以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。強度は大きく、剥離状態はゴム破壊であった。
【0034】
実施例3
表1のCR配合において、ケイ素含有化合物としてデキシクレーを80重量部配合した以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。強度は大きく、剥離状態はゴム破壊であった。
【0035】
実施例4
用いるクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物を配合1と3に変更した以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。強度は大きく、剥離状態はゴム破壊であった。
【0036】
実施例5
用いるクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物を配合1と4に変更した以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。強度は大きく、剥離状態はゴム破壊であった。
【0037】
実施例6
上記<積層体の作製2>に従い、クロロプレン未加硫物をトルエンに溶解して接着剤として塗布した以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。強度は大きく、剥離状態はゴム破壊であった。
【0038】
実施例7
上記<積層体の作製2>に従い、クロロプレン未加硫物をトルエンに溶解して接着剤として塗布した以外は実施例3と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。強度は大きく、剥離状態はゴム破壊であった。
【0039】
【表2】
【0040】
比較例1
クロロプレンゴムに配合するシリカの量を10重量部とした以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。結果を表3に示す。強度は小さく、剥離状態は界面破壊であった。
【0041】
比較例2
クロロプレンゴムに配合するケイ素含有化合物をデキシクレー15重量部とした以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。結果を表3に示す。強度は小さく、剥離状態は界面破壊であった。
【0042】
比較例3
クロロプレンゴムに配合するケイ素含有化合物をデキシクレー120重量部とした以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。結果を表3に示す。強度は小さく、剥離状態は界面破壊であった。
【0043】
比較例4
クロロプレンゴムに配合するシリカの量を10重量部とし、用いるクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物配合を1と3に変更した以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。結果を表3に示す。強度は小さく、剥離状態は界面破壊であった。
【0044】
比較例5
クロロプレンゴムに配合するシリカの量を10重量部とし、用いるクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物配合を1と4に変更した以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。結果を表3に示す。強度は小さく、剥離状態は界面破壊であった。
【0045】
比較例6
クロロプレンゴムにケイ素化合物を配合しなかった以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。結果を表3に示す。強度は小さく、剥離状態は界面破壊であった。
【0046】
比較例7
クロロプレンゴムにケイ素化合物を配合せず、用いるクロロスルホン化ポリエチレン未加硫物配合を1と3に変更した以外は実施例1と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。結果を表3に示す。強度は小さく、剥離状態は界面破壊であった。
【0047】
比較例8
ケイ素化合物を含まないクロロプレン未加硫物をトルエンに溶解して接着剤として接合する面に塗布・乾燥した以外は実施例3と同様に積層体を作製し、剥離強度と剥離状態を確認した。結果を表3に示す。強度は小さく、剥離状態は界面破壊であった。
【0048】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のクロロスルホン化ポリオレフィンが強固に接着した積層体、およびその接着用組成物は、クロロスルホン化ポリオレフィンの優れた性能を有する2層ホースや被覆材作成などに利用することができる。