(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】送風装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241210BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20241210BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G21/16
B41J2/01 125
B41J2/01 121
(21)【出願番号】P 2021102400
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】今田 高広
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良州
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-133630(JP,A)
【文献】特開2011-133691(JP,A)
【文献】特開平11-167322(JP,A)
【文献】特開2015-152842(JP,A)
【文献】特開2010-181667(JP,A)
【文献】特開2008-090197(JP,A)
【文献】特開2013-068773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置に送風される気流を発生させる気流発生部材と、
前記気流発生部材から前記加熱装置へ気流を案内する複数の流路形成部材を備える送風装置であって、
前記複数の流路形成部材は、相対的に接近離間可能に構成され、
前記相対的に接近離間する流路形成部材は、互いに直接的又は間接的に接触して前記流路形成部材同士の位置決めを行う位置決め部を有
し、
前記相対的に接近離間する流路形成部材のうち、送風方向上流側に配置される前記流路形成部材において、前記位置決め部が設けられている側壁に対向する反対側の側壁は、送風方向下流に向かって内側を向く傾斜部を有することを特徴とする送風装置。
【請求項2】
加熱装置に送風される気流を発生させる気流発生部材と、
前記気流発生部材から前記加熱装置へ気流を案内する複数の流路形成部材を備える送風装置であって、
前記複数の流路形成部材は、相対的に接近離間可能に構成され、
前記相対的に接近離間する流路形成部材は、互いに直接的又は間接的に接触して前記流路形成部材同士の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記相対的に接近離間する流路形成部材のうち、送風方向上流側に配置される前記流路形成部材において、前記位置決め部が設けられている側壁に対向する反対側の側壁は、送風方向下流側に配置される前記流路形成部材の側壁に対して重なるように配置されることを特徴とする送風装置。
【請求項3】
前記相対的に接近離間する流路形成部材は、複数組あり、
前記流路形成部材同士の位置決めは、前記組ごとに独立して行われる請求項1又は2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記位置決め部は、互いに面接触する請求項1から3のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項5】
前記位置決め部は、弾性部材を介して互いに間接的に接触する請求項1から4のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項6】
前記加熱装置へ気流を吹き出す前記流路形成部材の送風口は、最大幅の記録媒体が前記加熱装置を通過する最大記録媒体通過領域の幅方向外側に配置される請求項1から5のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項7】
前記相対的に接近離間する流路形成部材のうち、送風方向下流側に配置される前記流路形成部材は、前記加熱装置に取り付けられている請求項1から6のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項8】
加熱装置と、
前記加熱装置に送風する請求項1から7のいずれか1項に記載の送風装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記加熱装置は、
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触しニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、
前記定着ベルトの内周面に接触する加熱源を備える定着装置である請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記加熱源は、前記定着ベルトの長手方向に配列される複数の抵抗発熱体を有し、
前記加熱装置へ気流を吹き出す前記流路形成部材の送風口は、前記長手方向の両端に配置される各抵抗発熱体のうちの少なくとも一方の前記抵抗発熱体に間接的に対向して配置される請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、無端状ベルト又はローラなどの一対の回転体によって用紙を挟みながら加熱し、用紙上の画像を定着させる定着装置が知られている。
【0003】
定着装置においては、用紙が通過しない非通紙領域の熱が用紙によって奪われにくい傾向にあるため、複数枚の用紙を連続通紙した場合に、非通紙領域における回転体の熱が次第に蓄積し、温度上昇が顕著となる問題がある。このような問題に対して、例えば下記特許文献1(特許第5401441号公報)に記載の画像形成装置においては、ファンを用いて回転体の非通紙領域へ送風することにより、非通紙領域の温度上昇を抑制することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、上記特許文献1に記載の画像形成装置においては、ファンによって発生させた気流を定着装置へ案内するため、流路形成部材としてのダクトが設けられている。ダクトを介して気流を案内することにより、定着装置の所望の箇所に対して効率良く気流を吹き付けることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のダクトは、画像形成装置本体側に設けられた部分と、画像形成装置のカバー部材に設けられた部分とに分けて構成されているため、カバー部材が開閉されると、これに伴ってカバー部材側のダクトと画像形成装置本体側のダクトとの相対的位置がずれる虞がある。仮に、ダクト同士の相対的位置がずれると、送風方向における上流側のダクト(カバー部材側のダクト)から下流側のダクト(画像形成装置本体側のダクト)へ気流を効率良く案内しにくくなる。斯かる課題に対して、特許文献1においては何ら検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、加熱装置に送風される気流を発生させる気流発生部材と、前記気流発生部材から前記加熱装置へ気流を案内する複数の流路形成部材を備える送風装置であって、前記複数の流路形成部材は、相対的に接近離間可能に構成され、前記相対的に接近離間する流路形成部材は、互いに直接的又は間接的に接触して前記流路形成部材同士の位置決めを行う位置決め部を有し、前記相対的に接近離間する流路形成部材のうち、送風方向上流側に配置される前記流路形成部材において、前記位置決め部が設けられている側壁に対向する反対側の側壁は、送風方向下流に向かって内側を向く傾斜部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、相対的に接近離間する流路形成部材同士の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図3】画像形成装置に搭載された定着装置及び送風装置を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る送風装置が備えるダクトの外観斜視図である。
【
図6】上流側ダクトと下流側ダクトの手前側の側壁同士が重なり合うように構成された例を示す図である。
【
図7】ダクトと最大通紙領域の位置関係を示す図である。
【
図8】上流側ダクトを突起側から見た外観斜視図である。
【
図12】上流側ダクトの位置決め部に弾性部材が貼り付けられた例を示す図である。
【
図13】上流側ダクトと下流側ダクトが手前側で位置決めされる例を示す図である。
【
図14】ダクトとヒータの位置関係を示す図である。
【
図15】ダクトが定着ベルト側に配置された例を示す図である。
【
図16】ダクトが定着ベルト側と加圧ローラ側の両方に配置された例を示す図である。
【
図17】本発明を適用可能な他の定着装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する画像形成部200と、記録媒体に画像を定着させる定着部300と、記録媒体を画像形成部200へ供給する記録媒体供給部400と、記録媒体を装置外へ排出する記録媒体排出部500を備えている。
【0012】
画像形成部200には、作像ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkと、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkが備える感光体2に静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体に画像を転写する転写装置8が設けられている。
【0013】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電部材3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面を清掃するクリーニング部材5を備えている。
【0014】
転写装置8は、中間転写ベルト11と、一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を備えている。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ12が中間転写ベルト11を介して各感光体2に接触することにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0015】
定着部300においては、定着装置20が設けられている。定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、加圧部材としての加圧ローラ22などを備えている。定着ベルト21と加圧ローラ22は互いに圧接し、定着ベルト21と加圧ローラ22との間にニップ部(定着ニップ)が形成されている。
【0016】
記録媒体供給部400には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0017】
記録媒体排出部500には、用紙Pを画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙Pを載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0018】
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0019】
画像形成装置100において印刷動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙Pに転写される画像が形成されるまで用紙Pの搬送が一旦停止される。
【0020】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3によって、感光体2の表面を均一な高電位に帯電させる。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4がトナーを供給し、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、画像形成装置100においては、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkのいずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つのプロセスユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材5によって各感光体2上の残留トナーなどが除去される。
【0021】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。その後、用紙Pは、定着装置20へと搬送され、定着ベルト21と加圧ローラ22によって用紙P上のトナー画像が加熱及び加圧されることにより、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、記録媒体排出部500へ搬送され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出される。これにより、一連の印刷動作が終了する。
【0022】
続いて、
図2に基づき、本実施形態に係る定着装置20の構成について説明する。
【0023】
図2に示されように、定着装置20は、定着ベルト21及び加圧ローラ22のほか、加熱源としてのヒータ23と、加熱源保持部材としてのヒータホルダ24と、支持部材としてのステー25を備えている。
【0024】
定着ベルト21は、用紙Pに未定着トナーT(トナー画像)を定着させる定着部材として機能する回転体(第1回転体)である。また、定着ベルト21は、その両端の内側に挿入される一対のベルト保持部材によって、いわゆるフリーベルト方式で(少なくとも非回転時においては張力が付与されない状態で)保持される。例えば、定着ベルト21は、外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)を主成分とする筒状の基材を有する無端状のベルトから成る。基材の材料は、ポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂、あるいは、ニッケル又はSUSなどの金属材料であってもよい。基材の材料として金属材料を用いた場合は、基材の内周面にポリイミド又はPTFEなどから成る摺動層を設けてもよい。
【0025】
また、定着ベルト21の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFA又はPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成されている。また、基材と離型層の間に、厚さ50~500μmのゴム等から成る弾性層を設けてもよい。
【0026】
加圧ローラ22は、定着ベルト21に対向して配置される回転体(第2回転体)である。また、加圧ローラ22は、定着ベルト21に加圧されてニップ部Nを形成する加圧部材でもある。具体的に、加圧ローラ22は、鉄などの金属製の芯金と、芯金の外周面に設けられた弾性層と、弾性層の外周面に設けられた離型層を有するローラから成る。弾性層は、例えば厚みが3.5mmのシリコーンゴムで形成され、離型層は、例えば厚みが40μm程度のフッ素樹脂層によって形成されている。
【0027】
加圧ローラ22は、バネなどの付勢部材によって定着ベルト21側へ押圧され、定着ベルト21の外周面に圧接されている。これにより、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(接触箇所)に、ニップ部Nが形成されている。
【0028】
定着ベルト21の内側には、ヒータ23、ヒータホルダ24及びステー25が配設されている。
【0029】
ヒータ23は、定着ベルト21の長手方向(用紙搬送方向に交差する用紙幅方向)に渡って長手状に伸びる板状のヒータであり、定着ベルト21の内周面に接触するように配置されている。このため、ヒータ23が発熱すると、定着ベルト21がその内側から加熱される。また、サーミスタなどの温度センサによって検知されたヒータ23の温度に基づいてヒータ23の出力が制御されることにより、定着ベルト21の温度が所定の温度となるように維持される。この状態で、
図2に示されるように、未定着トナーTを担持する用紙Pが、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)に進入すると、定着ベルト21と加圧ローラ22によって未定着トナーTが加圧及び加熱され、用紙Pにトナー画像が定着される。
【0030】
本実施形態に係るヒータ23は、板状の基材231と、基材231のニップ部N側の面に設けられた抵抗発熱体232と、抵抗発熱体232を覆う絶縁層233を有している。基材231は、アルミナ又は窒化アルミなどのセラミック、ガラス、マイカ、ポリイミドなどの耐熱性と絶縁性に優れる材料によって構成される。また、基材231は、ステンレス(SUS)、鉄又はアルミニウムなどの金属材料(導電性材料)の上に絶縁層を形成したものであってもよい。特に、基材231の材料が、アルミニウム、銅、銀、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導材料である場合は、ヒータ23の均熱性が向上し、画像品質を高めることができる。抵抗発熱体232は、例えば、銀パラジウム(AgPd)及びガラス粉末などを調合したペーストを基材231の表面にスクリーン印刷などにより塗工し、その後、基材231を焼成することによって形成される。また、抵抗発熱体232の材料として、銀合金(AgPt)又は酸化ルテニウム(RuO2)などの抵抗材料を用いることも可能である。絶縁層233は、アルミナ又は窒化アルミなどのセラミック、ガラス、マイカ、ポリイミドなどの耐熱性と絶縁性に優れる材料によって構成される。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、本実施形態のような板状のヒータ以外に、ハロゲンヒータ又はカーボンヒータなどの他の加熱源を用いてもよい。さらに、加熱源は、定着ベルト21のほか、加圧ローラ22側に設けられていてもよい。
【0031】
ヒータホルダ24は、ヒータ23を保持する部材である。ヒータホルダ24は、ヒータ23の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料によって構成されることが好ましい。特に、ヒータホルダ24が、LCP又はPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂によって構成される場合は、ヒータホルダ24の耐熱性を確保しつつ、ヒータ23からヒータホルダ24への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト21を加熱できる。
【0032】
ステー25は、ヒータホルダ24を支持する部材である。ステー25によってヒータホルダ24のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ24が加圧ローラ22の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト21と加圧ローラ22との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。また、ステー25は、その剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0033】
ここで、
図3に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100においては、定着装置20の過度な温度上昇を抑制するため、定着装置20へ送風する送風装置(冷却装置)30が設けられている。送風装置30は、気流を発生させる気流発生部材としてのファン31と、ファン31により生じる気流を定着装置20へ案内する流路形成部材としてのダクト32を有している。
【0034】
本実施形態において、定着装置20は、画像形成装置本体101に設けられている。これに対して、ファン31は、画像形成装置本体101に対して開閉可能なカバー部材102に設けられている。このため、
図3における二点鎖線で示されるように、カバー部材102が開放されると、ファン31はカバー部材102と一緒に移動する。また、カバー部材102が閉鎖された場合も同様に、ファン31はカバー部材102と一緒に移動する。
【0035】
このように、本実施形態においては、ファン31がカバー部材102の開閉動作に連動して移動するため、ファン31から定着装置20へ気流を案内するダクト32は、カバー部材102側に設けられた上流側ダクト33と、画像形成装置本体101側に設けられた下流側ダクト34に分けて構成されている。すなわち、ダクト32のうち、上流側ダクト33は、カバー部材102が開閉されると、カバー部材102とこれに設けられたファン31と一緒に移動するように構成されている。
【0036】
ところで、このような構成の場合、カバー部材102が閉鎖されたときに、下流側ダクト34に対して上流側ダクト33が位置ずれすると、上流側ダクト33と下流側ダクト34との間で気流が漏れやすくなり、効率の良い送風ができなくなる虞がある。従って、効率の良い送風が行われるようにするには、カバー部材102が閉鎖された際のダクト33,34同士の相対的位置精度が重要である。そのため、本実施形態においては、次のようにしてダクト33,34同士の位置ずれを抑制し、相対的位置精度を向上させるようにしている。
【0037】
以下、本実施形態に係るダクト33,34同士の位置決め構造について説明する。
【0038】
図4は、本実施形態に係る上流側ダクト33及び下流側ダクト34の外観斜視図、
図5は、各ダクト33,34の断面斜視図である。
【0039】
図4及び
図5に示されるように、上流側ダクト33と下流側ダクト34は、いずれも断面形状が矩形(長方形又は正方形)の筒状部材であり、送風方向の上流端と下流端のそれぞれに開口部33a,33b,34a,34bが形成されている。上流側ダクト33の上流側開口部33aは、ファン31に対向するように配置され、下流側ダクト34の下流側開口部34bは、定着装置20の加圧ローラ22の外周面に対向するように配置されている(
図3参照)。
【0040】
図4及び
図5に示される状態は、上流側ダクト33の下流側開口部33bが、下流側ダクト34の上流側開口部34aに向かい合うように配置され、各ダクト33,34が互いに連通した状態である。すなわち、
図4及び
図5は、上記カバー部材102が閉鎖されて、ファン31から定着装置20へ送風可能な状態を示す。また、
図4及び
図5において、矢印A方向は、上流側ダクト33が、カバー部材102の開放動作に連動して下流側ダクト34から離間する方向を示す。反対に、矢印B方向は、上流側ダクト33が、カバー部材102の閉鎖動作に連動して下流側ダクト34に接近する方向を示す。
【0041】
具体的に、上流側ダクト33及び下流側ダクト34の位置決めは、上流側ダクト33に設けられた位置決め部(第1位置決め部)としての突起33cと、下流側ダクト34に設けられた位置決め部(第2位置決め部)としての受け部34cとの接触により行われる。突起33cは、上流側ダクト33を構成する4つの側壁のうち、上流側ダクト33の接近方向前方(矢印B方向)を向く奥側の側壁331の外面に設けられている。このため、上流側ダクト33が、上記カバー部材102の閉鎖動作に伴って下流側ダクト34に接近すると、突起33cがこれと向かい合う下流側ダクト34の奥側の側壁341に設けられた受け部34c(内面)に接触する。これにより、上流側ダクト33の接近方向の移動が規制され、上流側ダクト33が下流側ダクト34に対して位置決めされる。
【0042】
このように、本実施形態においては、カバー部材が閉鎖された際に、上流側ダクト33及び下流側ダクト34の各位置決め部同士(突起33c及び受け部34c)が互いに接触することにより、ダクト33,34同士が位置決めされる。これにより、ダクト33,34同士の位置決め精度が向上するため、ダクト間の気流漏れを抑制でき、加圧ローラ22へ効率良く送風できる。これにより、良好な冷却効果が得られるようになる。
【0043】
また、本実施形態においては、ダクト間の気流漏れをより効果的に抑制すべく、上流側ダクト33の下流側開口部33bの縁に傾斜部33dが設けられている。傾斜部33dは、突起33cが設けられている奥側の側壁331に対向する手前側(反対側)の側壁332の下流端に設けられ、下流に向かって内側を向くように傾斜している。これより、気流が上流側ダクト33から下流側ダクト34へ案内される際に、傾斜部33dによって気流が内側へ誘導され外部へ漏れ出にくくなる。
【0044】
特に、本実施形態においては、上流側ダクト33が下流側ダクト34に接近して位置決めされる際、上流側ダクト33が下流側ダクト34の手前側の側壁342(受け部34cが設けられた側壁341に対向する反対側の側壁342)と干渉しないように、下流側ダクト34の手前側の側壁342は、上流側ダクト33の移動軌跡から退避した位置に配置される必要がある。このため、下流側ダクト34の手前側の側壁342と、これに接近して配置される上流側ダクト33の手前側の側壁332との間には、隙間が発生しやすい。そこで、本実施形態においては、このような隙間が発生しやすい箇所からの気流漏れを抑制するため、上流側ダクト33の手前側の側壁332の下流端に傾斜部33dを設け、傾斜部33dによって気流を内側へ誘導している。
【0045】
また、
図6に示される例のように、上流側ダクト33の手前側の側壁332が、下流側ダクト34の手前側の側壁342に対して重なるようにしてもよい。すなわち、上流側ダクト33の手前側の側壁332の下流端が、下流側ダクト34の手前側の側壁342の上流端よりも下流側に位置するようにしてもよい。特に、各側壁332,342が重なり合う部分において、側壁332,342同士が互いに接触する場合は、ダクト間の気流漏れが効果的に抑制される。また、各側壁332,342が互いに非接触の場合であったとしても、側壁332,342同士が重なるように近接して配置されていれば、側壁332,342同士が重ならない場合に比べて、ダクト間の気流漏れを抑制可能である。
【0046】
また、
図7に示されるように、本実施形態においては、上流側ダクト33及び下流側ダクト34が、加圧ローラ22の長手方向(回転軸方向)Xにおける両端側にそれぞれ配置されている。また、各下流側ダクト34において、加圧ローラ22へ気流を吹き出す送風口(下流側開口部34b)は、全体的に最大幅の用紙Pが定着装置20を通過する最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)Wの幅方向外側(非通紙領域)に配置されている。なお、ここでいう最大通紙領域通紙領域の「幅方向外側」とは、最大通紙領域に対してその幅方向(
図7における矢印X方向)に直交する方向に存在する空間の外側の空間を意味する。また、通紙領域の「幅方向」とは、用紙が搬送される方向に対して交差又は直交する方向であって、定着ベルト21の長手方向、あるいは、加圧ローラ22の回転軸方向と同じ方向を意味する。
【0047】
このように、本実施形態においては、各下流側ダクト34の送風口(下流側開口部34b)が、最大通紙領域Wの幅方向外側に配置されているため、最大幅の用紙Pが複数枚連続通紙された場合に、非通紙領域における温度が上昇したとしても、加圧ローラ22の非通紙領域に気流を吹き付けることができる。これにより、非通紙領域における温度上昇が抑制される。これに対して、各下流側ダクト34の送風口(下流側開口部34b)が、最大通紙領域Wの幅方向内側における両端側に配置されると、最大幅の用紙Pの両端側が十分に加熱されず、トナーが良好に定着されない、いわゆる端部オフセットなどの画像不良が発生する虞がある。このため、本実施形態においては、各下流側ダクト34の送風口(下流側開口部34b)を、最大通紙領域Wの幅方向外側に配置している。
【0048】
また、
図7に示されるように、上流側ダクト33及び下流側ダクト34の組み合わせが、複数組ある場合は、各組のダクト33,34同士の位置決めが、組ごとに独立して行われることが好ましい。すなわち、本実施形態の場合、一方の組のダクト33,34同士の位置決めが、他方の組のダクト33,34同士の位置決めの影響を受けないようにすることが好ましい。これにより、各組における位置決めを確実に行うことができ、ダクト間の気流漏れを効果的に抑制できる。
【0049】
図8は、上流側ダクト33を突起33c側から見た外観斜視図である。
【0050】
図8に示されるように、本実施形態においては、上流側ダクト33に設けられた突起33cが平面状の接触面330を有している。このため、突起33cは下流側ダクト34の平面状の受け部34cに対して面接触する(
図4、
図5参照)。このように、突起33cが、受け部34cに対して、点接触ではなく、面接触することにより、位置決め精度が向上する。
【0051】
なお、突起33cは、
図8に示されるような形状に限らず、
図9に示されるような半球状であってもよい。この場合、突起33cは、受け部34cに対して点接触する。さらに、
図10に示される例のように、半球状の突起33cが複数設けられていてもよい。また、
図11に示される例のように、上流側ダクト33及び下流側ダクト34の各位置決め部が、互いに係合可能なテーパ状の凸部33e及びテーパ状の凹部34eによって構成されてもよい。この場合、凸部33eと凹部34eが係合することにより、下流側ダクト34に対する上流側ダクト33の接近方向Bの位置決めのほか、接近方向Bに交差する方向の位置決めもなされるので、ダクト同士の相対的位置精度が向上し、ダクト間の気流漏れをより確実に抑制できる。また、位置決め部としての突起又は凸部、及び、受け部又は凹部は、上流側ダクト33と下流側ダクト34のいずれに設けられていてもよい。
【0052】
上記実施形態においては、上流側ダクト33及び下流側ダクト34の各位置決め部(突起33c及び受け部34c)は互いに直接的に接触しているが(
図4、
図5参照)、各位置決め部は他の部材を介して間接的に接触してもよい。例えば、
図12に示される例のように、上流側ダクト33の位置決め部にスポンジ又はゴムなどの弾性部材35を貼り付け、この弾性部材35を介して上流側ダクト33と下流側ダクト34の各位置決め部が間接的に接触するようにしてもよい。この場合、下流側ダクト34の位置決め部に対する弾性部材35の密着性により、位置決め部同士の間に隙間が生じにくくなり、ダクト間の気流漏れをより効果的に抑制できるようになる。また、弾性部材35は、
図12に示される例のように、上流側ダクト33の突起33cを有しない面に貼り付けられてもよいし、突起33c上に貼り付けられていてもよい。また、弾性部材35は、上流側ダクト33ではなく、下流側ダクト34に貼り付けられていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、位置決め部(突起33c及び受け部34c)が、上流側ダクト33及び下流側ダクト34のそれぞれの奥側の側壁331,341に設けられているが(
図4、
図5参照)、位置決め部が設けられる箇所は奥側の側壁331,341に限らない。例えば、
図13に示される例のように、上流側ダクト33及び下流側ダクト34のそれぞれの手前側の側壁332,342に、位置決め部(突起33c及び受け部34c)が設けられてもよい。
【0054】
また、下流側ダクト34は、加圧ローラ22に対する送風口(下流側開口部34b)の位置精度を向上させるため、加圧ローラ22を保持する定着装置20のフレーム29(
図3参照)などに取り付けられることが好ましい。下流側ダクト34が定着装置20に取り付けられることにより、下流側ダクト34が画像形成装置本体101に取り付けられる場合に比べて、加圧ローラ22と下流側ダクト34との間の部品の積み上げ誤差が少なくなるため、加圧ローラ22に対する下流側ダクト34の位置精度が向上する。
【0055】
図14は、定着装置が備えるヒータ23とダクト32の位置関係を示す図である。
【0056】
図14に示されるヒータ23は、基材231の長手方向(定着ベルト21又は加圧ローラ22の長手方向X)に渡って配列された複数の抵抗発熱体232を有している。各抵抗発熱体232は、基材231の長手方向一端側に設けられた2つの電極部234に対して給電線235を介して電気的に並列に接続されている。各抵抗発熱体232の表面及び各給電線235の表面は、絶縁層233によって覆われている。各電極部234に対して電圧が印加され、各電極部234間に電位差が生じることにより、各抵抗発熱体232に電流が流れ発熱する。
【0057】
図14に示される例において、最大幅Wの用紙Pが通紙される場合は、最大通紙領域Wの幅方向両外側の温度が上昇しやすいため、上記
図7に示される例と同じように、下流側ダクト34の送風口(下流側開口部34b)は、最大通紙領域Wの幅方向両外側に配置されることが好ましい。具体的に、
図14に示される例においては、下流側ダクト34の送風口(下流側開口部34b)が、基材231の長手方向の両端に配置される各抵抗発熱体232に対して(定着ベルト及び加圧ローラなどを介して)間接的に対向する位置に配置されている。また、下流側ダクト34の送風口(下流側開口部34b)は、両端に配置される各抵抗発熱体232のうち、いずれか一方の抵抗発熱体232側のみに配置されてもよい。
【0058】
また、
図7及び
図14においては、各種幅サイズの用紙がそれぞれの幅方向中央を基準に合わせて搬送される、いわゆる中央基準搬送方式の画像形成装置を例にしているが、本発明に係る送風装置は中央基準搬送方式の画像形成装置に適用される場合に限らない。本発明に係る送風装置は、各種幅サイズの用紙がそれぞれの幅方向一端を基準に合わせて搬送される、いわゆる端部基準搬送方式の画像形成装置にも適用可能である。
【0059】
また、本発明に係る送風装置は、加圧ローラ22に対して送風する場合に限らず、
図15に示される例のように、定着ベルト21に送風する場合であってもよい。また、
図16に示される例のように、ダクト32を定着ベルト21と加圧ローラ22の両側に配置し、それぞれのダクト32を介して定着ベルト21と加圧ローラ22の両方へ送風してもよい。
【0060】
上記実施形態においては、上流側ダクト33がカバー部材102と一緒に移動可能に構成され、下流側ダクト34が画像形成装置本体101に固定されているが、反対に、上流側ダクト33が画像形成装置本体101に固定され、下流側ダクト34がカバー部材102と一緒に移動可能であってもよい。そのような場合でも、上記実施形態と同じように、上流側ダクト33と下流側ダクト34が、互いに接触する位置決め部を有していることにより、ダクト同士の位置決めを行い、ダクト間の気流漏れを抑制できる。また、一方のダクトが他方のダクトに対して接近離間する移動軌跡は、上記実施形態のような円弧状の軌跡(
図4,
図5参照)に限らず、直線状の軌跡であってもよい。
【0061】
また、定着装置の構成は、上記実施形態の構成に限らない。例えば、定着装置は、
図17に示されような、定着回転体としての定着ローラ26と、加圧回転体としての加圧ローラ27と、加熱源としてのハロゲンヒータ28を備える構成であってもよい。
【0062】
また、本発明に係る送風装置は、定着装置に対して送風する場合に限らない。例えば、本発明に係る送風装置は、インクジェット式の画像形成装置において、用紙に吐出されたインクなどの液体を乾燥させるために用紙を加熱する乾燥装置(加熱装置)に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
20 定着装置(加熱装置)
21 定着ベルト(定着部材)
22 加圧ローラ(加圧部材)
30 送風装置
31 ファン(気流発生部材)
32 ダクト(流路形成部材)
33 上流側ダクト
33a 上流側開口部
33b 下流側開口部
33c 突起(位置決め部)
33d 傾斜部
34 下流側ダクト
34a 上流側開口部
34b 下流側開口部(送風口)
34c 受け部(位置決め部)
35 弾性部材
232 抵抗発熱体
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
W 最大通紙領域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】