(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241210BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20241210BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20241210BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 573
G03F7/11 503
G03F7/11 502
C08G61/12
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2021565526
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046020
(87)【国際公開番号】W WO2021125036
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019228038
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 光
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043410(WO,A1)
【文献】特開2016-060886(JP,A)
【文献】特開2013-035243(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208542(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/172156(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
C08G 4/00
12/26
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式(1)において、
基Aは芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基を表し、
基Bは芳香族環、又は縮合芳香族環を有する有機基を表し、
基Eは単結合、又は置換されていても良く、エーテル結合及び/又はカルボニル基を含んでもよい分岐若しくは直鎖の炭素数1~10のアルキレン基を表し、
基Dは
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立にフッ素原子、又は直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基であり、R
1、R
2、R
3の任意の2つは相互に結合して環を形成していてもよい。)で表される炭素原子数1乃至15の有機基を表し、
nは1-5の数を表す。]
で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂
であって、
当該樹脂のみを溶媒に溶解させて基板上に塗布し、240℃で焼成したとき76°以上の純水に対する接触角を示し、かつ、350℃で焼成したとき70°以上の純水に対する接触角を示すノボラック樹脂を含む
ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
基Dはtert-ブチル基、又はトリフルオロメチル基である請求項1に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
基Aにおける芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基が、1又は複数のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、又はベンゼン環とヘテロ環若しくは脂肪族環との縮合環を有する有機基である請求項1又は2に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
基Aにおける芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基が、環上、環内、又は環間にN、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数6乃至30の有機基である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
基Aが下記から選択される少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【化3】
(式中、i、j、m、nはそれぞれ独立に1又は2である。Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化4】
L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC
1-3アルキル基を表す。)
【請求項6】
基Bがフェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、フェナントレンジイルである請求項1乃至5のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
基Eが単結合、又は炭素数1~6の直鎖アルキレン基である請求項1乃至6のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
基Eが単結合である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項9】
更に架橋剤を含む請求項1乃至8のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項10】
下記式(1):
【化1】
[式(1)において、
基Aは芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基を表し、
基Bは芳香族環、又は縮合芳香族環を有する有機基を表し、
基Eは単結合、又は置換されていても良く、エーテル結合及び/又はカルボニル基を含んでもよい分岐若しくは直鎖の炭素数1~10のアルキレン基を表し、
基Dは
【化2】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
はそれぞれ独立にフッ素原子、又は直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基であり、R
1
、R
2
、R
3
の任意の2つは相互に結合して環を形成していてもよい。)で表される炭素原子数1乃至15の有機基を表し、
nは1-5の数を表す。]
で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂、及び架橋剤を含み、
350℃で焼成したとき65°以上の純水に対する接触角を示す
ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項11】
更に酸、その塩及び酸発生剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む請求項1乃至10のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項12】
350℃で焼成したとき65°以上の純水に対する接触角を示す請求項
9又は11に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の硬化物であるレジスト下層膜。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することを含むレジスト下層膜の製造方法。
【請求項15】
半導体基板上に請求項1乃至12のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、
前記レジスト下層膜上に硬化性組成物を適用する工程、
前記硬化性組成物とモールドとを接触させる工程、
前記硬化性組成物に光又は電子線を照射して硬化膜とする工程、及び
前記硬化膜と前記モールドとを引き離す工程、
を含むパターン形成方法。
【請求項16】
前記レジスト下層膜上に硬化性組成物を適用する工程が、前記レジスト下層膜上に密着層及び/又は99質量%以下のSiを含むシリコーン層を塗布又は蒸着により形成し、その上に硬化性組成物を適用することを含む請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
半導体基板上に請求項1乃至12のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、
その上にレジスト膜を形成する工程、
光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
形成されたレジストパターンにより該下層膜をエッチングする工程、及び
パターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項18】
半導体基板上に請求項1乃至12のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、
その上にハードマスクを形成する工程、
更にその上にレジスト膜を形成する工程、
光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
形成されたレジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、
パターン化されたハードマスクにより該下層膜をエッチングする工程、及び
パターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物、当該組成物からなる塗布膜の硬化物であるレジスト下層膜、当該レジスト下層膜の製造方法、並びに当該レジスト下層膜を利用したパターン形成方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細化が求められる半導体デバイスやMEMS等の製造においては、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成できる光ナノインプリント技術が注目されている。これは、基板(ウエハ)上に硬化性組成物(レジスト)を塗布し、これに表面に微細な凹凸パターンが形成されたモールド(型)を押し付け、その状態のままレジストを熱又は光によって硬化させ、モールドの凹凸パターンをレジスト硬化膜に転写し、モールドを引き離して、パターンを基板上に形成する技術である。
【0003】
一般的な光ナノインプリント技術では、まず、基板上のパターン形成領域にインクジェット法等を用いて、液状のレジスト組成物を滴下し、レジスト組成物の液滴を基板上に広げる(プレスプレッド)。次に、このレジスト組成物を、照射光に対して透明で、パターン形成されたモールド(型)を用いて成形する。このとき、レジスト組成物の液滴は毛細管現象により基板とモールドの間隙の全域へ拡がる(スプレッド)。レジスト組成物はまた、モールド上の凹部の内部へも毛細管現象により充填される(フィル)。スプレッドとフィルが完了するまでの時間が充填時間である。レジスト組成物の充填が完了した後、光を照射してレジスト組成物を硬化させ、次いで両者を引き離す。これらの工程を実施することにより、所定の形状を有するレジストのパターンが基板上に形成される。
【0004】
光ナノインプリント技術の離型工程においては、レジスト組成物と基材との間の密着性が重要である。レジスト組成物と基材との間の密着性が低いと、離型工程においてモールドを引き離す際に、レジスト組成物を硬化させて得られた光硬化物の一部がモールドに付着したまま剥がれてしまう、パターン剥がれ欠陥が発生してしまう場合があるからである。レジスト組成物と基材との間の密着性を向上させる技術として、レジスト組成物と基材との間に、レジスト組成物と基材とを密着させるための層である密着層を形成する技術が提案されている。
【0005】
また、ナノインプリントでのパターン形成に高エッチング耐性層が用いられる場合がある。高エッチング耐性層の材料としては、有機系材料、シリコーン系材料が一般的に用いられる。更に、ナノインプリント用レジスト下層膜上に、密着層やSiを含むシリコーン層を、塗布又は蒸着により形成することができる。これらの密着層やSiを含むシリコーン層が疎水性で、高い純水接触角を示す場合には、下層膜もまた疎水性で、高い純水接触角を示す方が、膜間の密着性が高まり、剥離しにくくなることが期待される。
【0006】
He、H2、N2、空気などは室温で比較的疎水性なことが分かっているので、高接触角の膜とは親和性が高く、ガス透過性が上がると期待される。このため、下層膜材料としても水接触角の高いものが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、良好な平坦化性を示し、焼成により高い疎水性を有する膜を与え、疎水性の上層膜との密着性を高めることが可能であり、しかも樹脂の分子骨格を変更することによりプロセスに適応する光学定数やエッチング速度に調整することのできるナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下を包含する。
[1] 下記式(1):
【化1】
[式(1)において、
基Aは芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基を表し、
基Bは芳香族環、又は縮合芳香族環を有する有機基を表し、
基Eは単結合、又は置換されていても良く、エーテル結合及び/又はカルボニル基を含んでもよい分岐若しくは直鎖の炭素数1~10のアルキレン基を表し、
基Dは
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立にフッ素原子、又は直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基であり、R
1、R
2、R
3の任意の2つは相互に結合して環を形成していてもよい。)で表される炭素原子数1乃至15の有機基を表し、
nは1-5の数を表す。]
で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂を含む
ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[2] 基Dはtert-ブチル基、又はトリフルオロメチル基である[1]に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[3] 基Aにおける芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基が、1又は複数のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、又はベンゼン環とヘテロ環若しくは脂肪族環との縮合環を有する有機基である[1]又は[2]に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[4] 基Aにおける芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基が、環上、環内、又は環間にN、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数6乃至30の有機基である[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【0010】
[5] 基Aが下記から選択される少なくとも1種である[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【化3】
(式中、i、j、m、nはそれぞれ独立に1又は2である。Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化4】
L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC
1-3アルキル基を表す。)
[6] 基Bがフェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、フェナントレンジイルである[1]乃至[5]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[7] 基Eが単結合、又は炭素数1~6の直鎖アルキレン基である[1]乃至[6]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[8] 基Eが単結合である[1]乃至[7]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[9] 240℃で焼成したとき76°以上の純水に対する接触角を示し、かつ、350℃で焼成したとき70°以上の純水に対する接触角を示す[1]乃至[8]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[10] 更に架橋剤を含む[1]乃至[9]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[11] 更に酸、その塩及び酸発生剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む[1]乃至[10]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
[12] 350℃で焼成したとき65°以上の純水に対する接触角を示す[10]又は[11]に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物。
【0011】
[13] [1]乃至[12]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の硬化物であるレジスト下層膜。
[14] [1]乃至[12]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することを含むレジスト下層膜の製造方法。
[15] 半導体基板上に[1]乃至[12]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、
前記レジスト下層膜上に硬化性組成物を適用する工程、
前記硬化性組成物とモールドとを接触させる工程、
前記硬化性組成物に光又は電子線を照射して硬化膜とする工程、及び
前記硬化膜と前記モールドとを引き離す工程、
を含むパターン形成方法。
[16] 前記レジスト下層膜上に硬化性組成物を適用する工程が、
前記レジスト下層膜上に密着層及び/又は99質量%以下、又は50質量%以下のSiを含むシリコーン層を塗布又は蒸着により形成し、その上に硬化性組成物を適用すること
を含む[15]に記載のパターン形成方法。
[17] 半導体基板上に[1]乃至[12]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、
その上にレジスト膜を形成する工程、
光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
形成されたレジストパターンにより該下層膜をエッチングする工程、及び
パターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程
を含む半導体装置の製造方法。
[18] 半導体基板上に[1]乃至[12]のいずれか一項に記載のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物からレジスト下層膜を形成する工程、
その上にハードマスクを形成する工程、
更にその上にレジスト膜を形成する工程、
光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
形成されたレジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、
パターン化されたハードマスクにより該下層膜をエッチングする工程、及び
パターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るノボラック樹脂は、低温焼成時に限らず、高温焼成時も特異的に高い純水接触角(=疎水性)を示す。また、本発明に係るノボラック樹脂は、架橋剤、酸触媒及び界面活性剤を混合し、材料とした際も、高温焼成時に特異的に高い純水接触角(=疎水性)を示す。これにより、疎水性の上層膜との密着性を高めることが可能であり、また疎水性ガスに対して良好な透過性を示すことが期待できる。更に、本発明に係るノボラック樹脂は、良好な平坦化性を示し、分子骨格を変更することで、プロセスに適応する光学定数やエッチング速度に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物]
本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物は、下記式(1):
【化5】
[式(1)において、
基Aは芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基を表し、
基Bは芳香族環、又は縮合芳香族環を有する有機基を表し、
基Eは単結合、又は置換されていても良く、エーテル結合及び/又はカルボニル基を含んでもよい分岐若しくは直鎖の炭素数1~10のアルキレン基を表し、
基Dは
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立にフッ素原子、又は直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基であり、R
1、R
2、R
3の任意の2つは相互に結合して環を形成していてもよい。)で表される炭素原子数1乃至15の有機基を表し、
nは1-5の数を表す。]
で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂を含み、任意選択的に溶剤、その他の成分を含むものである。以下に順に説明する。
【0014】
[式(1)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂]
基A及び基Bにおける「芳香族環を有する有機基」とは、単環で芳香族性を示す炭化水素を有する基をいう。例えば、ベンゼン、シクロオクタテトラエンのほか、任意の置換基を有するトルエン、キシレン、メシチレン、クメン、スチレンに由来する基が挙げられる。更に、ベンゼンのような芳香族環とシクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセンのような脂肪族環との縮合環を有する有機基、ベンゼンのような芳香族環とフラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンのようなヘテロ環との縮合環を有する有機基も含まれる。
【0015】
基A及び基Bにおける「縮合芳香族環を有する有機基」とは、縮合環で芳香族性を示す炭化水素を有する基をいう。例えば、インデン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、トリフェニレン、ピレン、クリセンに由来する基が挙げられる。
【0016】
基Aにおける「縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基」とは、縮合環で芳香族性を示し、ヘテロ原子を含む炭化水素を有する基をいう。例えば、インドール、プリン、キノリン、イソキノリン、クロメン、チアントレン、フェノチアジン、フェノキサジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、カルバゾールに由来する基が挙げられる。
上記芳香族環、縮合芳香族環、及び縮合芳香族ヘテロ環は相互にアルキレン基などで連結されていてもよい。
【0017】
好ましくは、基Aにおける芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基は、炭素原子数6乃至30の有機基である。
好ましくは、基Aにおける芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基は、1又は複数のベンゼン環、ナフタレン環、又はベンゼン環とヘテロ環若しくは脂肪族環との縮合環を有する有機基である。
【0018】
好ましくは、基Aにおける芳香族環、縮合芳香族環、又は縮合芳香族ヘテロ環を有する有機基は、環上、環内、又は環間にN、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数6乃至30の有機基である。環上に含まれるヘテロ原子としては、例えば、アミノ基(例えば、プロパルギルアミノ基)、シアノ基に含まれる窒素原子、ホルミル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、 アルコキシ基(例えば、プロパルギルオキシ基)に含まれる酸素原子、ニトロ基に含まれる窒素原子と酸素原子が挙げられる。環内に含まれるヘテロ原子としては、例えば、キサンテンに含まれる酸素原子、カルバゾールに含まれる窒素原子が挙げられる。環間に含まれるヘテロ原子としては、-NH-結合、-NHCO-結合、-O-結合、-COO-結合、-CO-結合、-S-結合、-SS-結合、-SO2-結合に含まれる窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。
【0019】
好ましくは、基Aは下記から選択される少なくとも1種である。
【化7】
(式中、i、j、m、nはそれぞれ独立に1又は2である。Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化8】
L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC
1-3アルキル基を表す。)
【0020】
好ましくは、基Aは下記から選択される少なくとも1種である。
【化9】
【0021】
好ましくは、基Bはフェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、フェナントレンジイルである。
【0022】
基Dは上記式(2)で表される炭素原子数1乃至15の有機基、好ましくは炭素原子数1乃至12、炭素原子数1乃至10、炭素原子数1乃至8、炭素原子数1乃至6、炭素原子数1乃至5、又は炭素原子数1乃至4の有機基を表す。
【0023】
R1、R2、R3における「直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基が挙げられる。更に、R1、R2、R3の任意の2つは相互に結合して環を形成していてもよい。
好ましくは、基Dはtert-ブチル基、又はトリフルオロメチル基である。
【0024】
基Eは単結合、又は炭素数1~6の直鎖アルキレン基である。直鎖アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられる。好ましくは、基Eは単結合である。
【0025】
nは1-5、1-4、又は1-3の数であり、好ましくは、1、2、3、4、又は5、より好ましくは1、2、3、又は4、最も好ましくは1、2、又は3である。
【0026】
[合成方法]
式(1)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂は、公知の方法によって調製することができる。例えば、H-A-Hで表される含環化合物とOHC-B-E-Dで表されるアルデヒド化合物を縮合させることにより調製することができる(式中、A、B、E、Dは上記と同義である)。含環化合物、アルデヒド化合物は共に1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この縮合反応においては、含環化合物1モルに対して、アルデヒド化合物を0.1乃至10モル、好ましくは0.1乃至2モルの割合で用いることができる。
【0027】
縮合反応で用いられる触媒としては、例えば硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸一水和物、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類を使用することができる。触媒の使用量は、使用する触媒の種類によって異なるが、含環化合物(複数種の場合はそれらの合計)100質量部に対して、通常0.001乃至10,000質量部、好ましくは0.01乃至1,000質量部、より好ましくは0.05乃至100質量部である。
【0028】
縮合反応は無溶剤でも行われるが、通常は溶剤を用いて行われる。溶剤としては反応基質を溶解することができ、反応を阻害しないものであれば特に限定されない。例えば、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。縮合反応温度は通常40℃乃至200℃、好ましくは100℃乃至180℃である。反応時間は反応温度によって異なるが、通常5分乃至50時間、好ましくは5分乃至24時間である。
【0029】
式(1)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂の重量平均分子量は、通常500-100,000、好ましくは600-80,000、800-60,000、又は1,000-50,000である。
【0030】
本発明に係る式(1)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂は、架橋剤等の添加剤を加えることなく、溶媒に溶かして基板(シリコンウェハー)上に塗布し、240℃で焼成したとき76°以上の純水に対する接触角を示し、350℃で焼成したとき70°以上の純水に対する接触角を示す。
【0031】
[溶剤]
本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物は、溶剤を含むことができる。当該溶剤は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂と、必要に応じて添加される任意成分とを溶解することができるものであれば特に限定されない。特に、本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物は均一な溶液状態で用いられるものであるため、その塗布性能を考慮すると、リソグラフィー工程に一般的に使用される溶剤を併用することが推奨される。
【0032】
そのような溶剤としては、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、4-メチル-2-ペンタノール、及びγ-ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で、または二種以上の組み合わせで使用することができる。
【0033】
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが更に好ましい。
【0034】
[架橋剤]
本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物は、架橋剤を含むことができる。その架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコールウリル(例えば、テトラメトキシメチルグリコールウリル)、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
【0035】
また、上記架橋剤としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を好ましく用いることができる。
【0036】
この化合物は下記式(4)の部分構造を有する化合物や、下記式(5)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【化10】
上記R
11、R
12、R
13、及びR
14は水素原子又は炭素数1乃至10のアルキル基であり、これらのアルキル基は上述の例示を用いることができる。n1は1~4の整数であり、n2は1~(5-n1)の整数であり、(n1+n2)は2~5の整数を示す。n3は1~4の整数であり、n4は0~(4-n3)であり、(n3+n4)は1~4の整数を示す。オリゴマー及びポリマーは繰り返し単位構造の数が2~100、又は2~50の範囲で用いることができる。
【0037】
式(4)及び式(5)の化合物、ポリマー、オリゴマーは以下に例示される。
【化11】
【化12】
【化13】
【0038】
上記化合物は旭有機材工業株式会社、本州化学工業株式会社の製品として入手することができる。例えば、上記架橋剤の中で、式(4-23)の化合物は本州化学工業株式会社、商品名TMOM-BPとして、式(4-24)の化合物は旭有機材工業株式会社、商品名TM-BIP-Aとして、式(4-28)の化合物は商品名PGME-BIP-Aとして入手することができる。
架橋剤の添加量は、使用する塗布溶媒、使用する基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、全固形分に対して0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.5質量%以上、又は1.0質量%以上であり、80質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記重合体中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0039】
[酸及び/又はその塩及び/又は酸発生剤]
本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物は、酸及び/又はその塩及び/又は酸発生剤を含むことができる。
【0040】
酸としては例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、サリチル酸、5-スルホサリチル酸、4-フェノールスルホン酸、カンファースルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。
塩としては前述の酸の塩を用いることもできる。塩としては限定されるものではないがトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアンモニア誘導体塩やピリジン誘導体塩、モルホリン誘導体塩等を好適に用いることができる。
酸及び/又はその塩は一種のみを使用することができ、または二種以上を組み合わせて使用することができる。配合量は全固形分に対して、通常0.0001乃至20質量%、好ましくは0.0005乃至10質量%、さらに好ましくは0.01乃至5質量%である。
【0041】
酸発生剤としては、熱酸発生剤や光酸発生剤が挙げられる。
熱酸発生剤としては、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、K-PURE〔登録商標〕CXC-1612、同CXC-1614、同TAG-2172、同TAG-2179、同TAG-2678、同TAG2689、同TAG2700(King Industries社製)、及びSI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150(三新化学工業(株)製)その他有機スルホン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0042】
光酸発生剤は、レジストの露光時に酸を生ずる。そのため、下層膜の酸性度の調整ができる。これは、下層膜の酸性度を上層のレジストとの酸性度に合わせるための一方法である。また、下層膜の酸性度の調整によって、上層に形成されるレジストのパターン形状の調整ができる。
本発明のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物に含まれる光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、及びジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0043】
オニウム塩化合物としてはジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート及びビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のスルホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0044】
スルホンイミド化合物としては、例えばN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド及びN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられる。
【0045】
ジスルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、及びメチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられる。
【0046】
酸発生剤は一種のみを使用することができ、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
酸発生剤が使用される場合、その割合としては、ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の固形分100質量部に対して、0.01乃至10質量部、または0.1乃至8質量部、または0.5乃至5質量部である。
【0047】
本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物は、上記以外の任意成分を含有していてもよい。以下各成分について説明する。
【0048】
[その他の成分]
本発明のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストリエーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(株式会社トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R-40、R-40N、R-40LM(DIC株式会社製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子株式会社製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また二種以上の組み合わせで使用することもできる。界面活性剤が使用される場合、その割合としては、ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の固形分100質量部に対して0.0001乃至5質量部、または0.001乃至1質量部、または0.01乃至0.5質量部である。
【0049】
本発明のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物には、吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤などを添加することができる。レオロジー調整剤は、下層膜形成組成物の流動性を向上させるのに有効である。接着補助剤は、半導体基板またはレジストと下層膜の密着性を向上させるのに有効である。
【0050】
吸光剤としては例えば、「工業用色素の技術と市場」(CMC出版)や「染料便覧」(有機合成化学協会編)に記載の市販の吸光剤、例えば、C.I.Disperse Yellow 1,3,4,5,7,8,13,23,31,49,50,51,54,60,64,66,68,79,82,88,90,93,102,114及び124;C.I.Disperse Orange1,5,13,25,29,30,31,44,57,72及び73;C.I.Disperse Red 1,5,7,13,17,19,43,50,54,58,65,72,73,88,117,137,143,199及び210;C.I.Disperse Violet 43;C.I.Disperse Blue 96;C.I.Fluorescent Brightening Agent 112,135及び163;C.I.Solvent Orange2及び45;C.I.Solvent Red 1,3,8,23,24,25,27及び49;C.I.Pigment Green 10;C.I.Pigment Brown 2等を好適に用いることができる。上記吸光剤は通常、ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で配合される。
【0051】
レオロジー調整剤は、主にナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、レジスト下層膜の膜厚均一性の向上やホール内部へのナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0052】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストとナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルメチロールクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメチロールエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、メチロールトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0053】
本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物の固形分は通常0.1乃至70質量%、好ましくは0.1乃至60質量%とする。固形分はナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物から溶剤を除いた全成分の含有割合である。固形分中における上記重合体の割合は、1乃至100質量%、1乃至99.9質量%、50乃至99.9質量%、50乃至95質量%、50乃至90質量%の順で好ましい。
【0054】
ナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物が均一な溶液状態であるかどうかを評価する尺度の一つは、特定のマイクロフィルターの通過性を観察することであるが、本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物は、孔径0.1μmのマイクロフィルターを通過し、均一な溶液状態を呈する。
【0055】
上記マイクロフィルター材質としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などのフッ素系樹脂、PE(ポリエチレン)、UPE(超高分子量ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PSF(ポリスルフォン)、PES(ポリエーテルスルホン)、ナイロンが挙げられるが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製であることが好ましい。
【0056】
本発明に係る式(1)で表される繰り返し単位構造を有するノボラック樹脂は、溶剤その他の任意成分を配合してナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物とし、基板(シリコンウェハー)上に塗布し、350℃で焼成したとき65°以上の純水に対する接触角を示す。
【0057】
以下、本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物を用いたレジスト下層膜の製造方法、パターン形成方法及び半導体装置の製造方法について説明する。
【0058】
[ナノインプリント用レジスト下層膜の製造方法]
半導体装置の製造に使用される基板(例えば、シリコンウエハー基板、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、及び低誘電率材料(low-k材料)被覆基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物を塗布し、その後、焼成することによりレジスト下層膜が形成される。焼成する条件としては、焼成温度80℃乃至400℃、焼成時間0.3乃至60分間の中から適宜選択される。好ましくは、焼成温度150℃乃至350℃、焼成時間0.5乃至2分間である。ここで、形成される下層膜の膜厚としては、例えば、10乃至1000nmであり、又は20乃至500nmであり、又は30乃至400nmであり、又は50乃至300nmである。また、基板として石英基板を用いれば、石英インプリントモールドのレプリカ(モールドレプリカ)を作製することができる。
【0059】
また、本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜上に密着層及び/又は99質量%以下、又は50質量%以下のSiを含むシリコーン層を塗布又は蒸着により形成することもできる。例えば、特開2013-202982号公報や特許第5827180号公報に記載の密着層、WO2009/104552A1に記載のシリコン含有レジスト下層膜(無機レジスト下層膜)形成組成物をスピンコートで形成する方法の他、Si系の無機材料膜をCVD法などで形成することができる。
【0060】
また、本発明に係るナノインプリント用レジスト下層膜形成組成物を、段差を有する部分と段差を有しない部分とを有する半導体基板(いわゆる段差基板)上に塗布し、焼成することにより、当該段差を有する部分と段差を有しない部分との段差が3~70nmの範囲内である、レジスト下層膜を形成することができる。
【0061】
[パターン形成方法]
本発明に係るパターン形成方法は、
本発明に係るレジスト下層膜の製造方法によって形成されたレジスト下層膜上に硬化性組成物を適用する工程、
前記硬化性組成物とモールドとを接触させる工程、
前記硬化性組成物に光又は電子線を照射して硬化膜とする工程、及び
前記硬化膜と前記モールドとを引き離す工程、
を含む。
【0062】
[硬化性組成物]
レジスト下層膜の上に形成されるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学工業株式会社製商品名PAR710、及び信越化学工業株式会社製商品名SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0063】
[硬化性組成物を適用する工程]
本工程は、本発明に係るレジスト下層膜の製造方法によって形成されたレジスト下層膜上に硬化性組成物を適用する工程である。硬化性組成物を適用する方法としては、例えば、インクジェット法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を用いることができる。硬化性組成物を液滴として適用するためにはインクジェット法が適しており、硬化性組成物を塗布するためにはスピンコート法が適している。本工程において、レジスト下層膜上に密着層及び/又は99質量%以下、又は50質量%以下のSiを含むシリコーン層を塗布又は蒸着により形成し、その上に硬化性組成物を適用することもできる。
【0064】
[硬化性組成物とモールドとを接触させる工程]
本工程では、硬化性組成物とモールドとを接触させる。例えば、液体である硬化性組成物と、パターン形状を転写するための原型パターンを有するモールドとを接触させれば、硬化性組成物がモールド表面の微細パターンの凹部に充填された液膜が形成される。
【0065】
後述する光又は電子線を照射する工程を考慮して、光透過性材料を基材とするモールドを用いることが推奨される。モールド基材は、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が好ましい。熱膨張係数が小さくパターン歪みが小さいことから、モールド基材はより好ましくは石英である。
【0066】
モールドが表面に有する微細パターンは、4nm以上、200nm以下のパターン高さを有することが好ましい。基板の加工精度を上げるためには或る程度のパターン高さが必要であるが、パターン高さが低い方が、後述の硬化膜とモールドとを引き離す工程においてモールドを硬化膜から引き剥がす力が低く、また、レジストパターンが引きちぎられてマスク側に残存する欠陥数が少ない。これらを勘案して適切なバランスのパターン高さを選択、採用することが推奨される。
また、モールドを引き剥がす際の衝撃によるレジストパターンの弾性変形で隣接レジストパターン同士が接触し、レジストパターンが癒着あるいは破損する場合もある。これは、パターン幅に対してパターン高さが2倍程度以下(アスペクト比2以下)とすることにより回避できることがある。
【0067】
硬化性組成物とモールドの表面との剥離性を向上させるために、予めモールドに表面処理を行うこともできる。表面処理の方法としては、モールドの表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成する方法が挙げられる。離型剤としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤等が挙げられる。好ましくは、フッ素系および炭化水素系の離型剤である。市販品としては、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツール(登録商標)DSX等がある。離型剤は一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0068】
本工程において、モールドと硬化性組成物とを接触させる際に、硬化性組成物に加える圧力は特に限定されない。0MPa以上、100MPa以下の圧力が推奨される。圧力は、好ましくは0MPa以上であり、50MPa以下、30MPa以下、又は20MPa以下である。
【0069】
前工程(硬化性組成物を適用する工程)において硬化性組成物の液滴のプレスプレッドが進行している場合は、本工程における硬化性組成物のスプレッドは速やかに完了する。その結果、モールドと硬化性組成物とを接触させる時間を短縮することができる。接触させる時間は、特に限定はされないが、好ましくは、0.1秒以上であり、600秒以下、3秒以下、又は1秒以下である。接触時間が短すぎると、スプレッド及びフィルが不十分となり、未充填欠陥と呼ばれる欠陥が発生するおそれがある。
【0070】
本工程は、大気雰囲気下、減圧雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれの条件下でも行うことができるが、好ましくは、0.0001気圧以上、10気圧以下の圧力下で行う。酸素や水分による硬化反応への影響を防ぐため、減圧雰囲気下、又は不活性ガス雰囲気で行うことが推奨される。不活性ガス雰囲気をつくるために使用することができる不活性ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、CFC、HCFC、HFC、又はこれらの混合ガスが挙げられる。
【0071】
本工程は、凝縮性ガスを含む雰囲気(以下、「凝縮性ガス雰囲気」と称する)下で行ってもよい。本明細書において凝縮性ガスとは、モールド上に形成された微細パターンの凹部及びモールドと基板との間隙に、硬化性組成物と一緒に充填された時、充填時に発生する毛細管圧力で凝縮して液化するガスのことをいう。なお、凝縮性ガスは、本工程で硬化性組成物とモールドとが接触する前は雰囲気中に気体として存在する。凝縮性ガス雰囲気下で本工程を行うと、微細パターンの凹部に充填されたガスが硬化性組成物により発生する毛細管圧力により液化することで気泡が消滅するため、充填性が優れる。凝縮性ガスは、硬化性組成物に溶解してもよい。
【0072】
凝縮性ガスの沸点は、本工程の雰囲気温度以下であれば限定されないが、好ましくは-10℃以上、又は+10℃以上、+23℃以下である。
【0073】
本工程の雰囲気温度における凝縮性ガスの蒸気圧は、モールド圧力以下であれば特に限定されない。好ましくは0.1MPa乃至0.4MPaの範囲である。
【0074】
凝縮性ガスとして、具体的には、トリクロロフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、フルオロカーボン(FC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(CHF2CH2CF3、HFC-245fa、PFP)等のハイドロフルオロカーボン(HFC)、ペンタフルオロエチルメチルエーテル(CF3CF2OCH3、HFE-245mc)等のハイドロフルオロエーテル(HFE)等が挙げられる。
【0075】
凝縮性ガスは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。またこれら凝縮性ガスは、空気、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の非凝縮性ガスと混合して用いてもよい。凝縮性ガスと混合する非凝縮性ガスとしては、空気、ヘリウムが好ましい。
【0076】
[硬化性組成物に光又は電子線を照射して硬化膜とする工程]
本工程では、硬化性組成物に光又は電子線を照射して硬化膜とする。すなわち、モールドの微細パターンに充填された硬化性組成物にモールドを介して光又は電子線を照射し、モールドの微細パターンに充填された硬化性組成物をその状態のまま硬化させることによって、パターン形状を有する硬化膜とする。
【0077】
光又は電子線は、硬化性組成物の感度波長に応じて選択される。具体的には、150nm以上400nm以下の波長の紫外光、X線、電子線等を適宜選択して使用することができる。光又は電子線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2エキシマレーザ等が挙げられる。光源数は1つでもよく、複数でもよい。照射は、モールドの微細パターンに充填された硬化性組成物の全体に対して行ってもよく、一部領域のみに対して行ってもよい。光照射は、基板上の全領域に断続的に複数回行ってもよく、全領域に連続照射してもよい。また、基板上の一部領域に対して第一回の照射を行い、当該領域とは異なる領域に対して第二回の照射を行うこともできる。
【0078】
このようにして得られる硬化膜は、好ましくは、1nm以上、又は10nm以上、10mm以下、又は100μm以下のサイズのパターンを有する。
【0079】
[硬化膜とモールドとを引き離す工程]
本工程では、硬化膜とモールドとを引き離す。パターン形状を有する硬化膜とモールドとを引き離し、モールド上に形成された微細パターンの反転パターンとなるパターン形状を有する硬化膜が自立した状態で得られる。
【0080】
パターン形状を有する硬化膜とモールドとを引き離す方法としては、硬化膜とモールドとを相対的に離れる方向に移動させる手段であれば、パターン形状を有する硬化膜の一部が物理的に破損しない限り特に限定されず、各種条件等も特に限定されない。例えば、基板を固定してモールドを基板から遠ざかるように移動させて剥離してもよく、モールドを固定して基板をモールドから遠ざかるように移動させて剥離してもよい。或いは、基板とモールドを反対の方向へ引っ張って移動させて剥離してもよい。
【0081】
なお、前述の硬化性組成物とモールドとを接触させる工程を凝縮性ガス雰囲気下で行った場合、本工程で硬化膜とモールドとを引き離す際に、硬化膜とモールドとが接触する界面の圧力が低下することに伴って凝縮性ガスが気化する。これにより、硬化膜とモールドとを引き離すために必要な力である離型力を低減させることができる。
【0082】
以上の工程により、モールドの凹凸形状に由来する所望の凹凸パターン形状を、所望の位置に有する硬化膜を調製することができる。
【0083】
[半導体装置の製造方法]
本発明のパターン形成方法で形成されたフォトレジスト(上層)のパターンを保護膜として無機下層膜(中間層)の除去が行われ、次いでパターン化されたフォトレジスト及び無機下層膜(中間層)からなる膜を保護膜として、有機下層膜(下層)の除去が行われる。最後に、パターン化された無機下層膜(中間層)及び有機下層膜(下層)を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。
【0084】
まず、フォトレジストが除去された部分の無機下層膜(中間層)をドライエッチングによって取り除き、半導体基板を露出させる。無機下層膜のドライエッチングにはテトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等のガスを使用することができる。無機下層膜のドライエッチングにはハロゲン系ガスを使用することが好ましく、フッ素系ガスによることがより好ましい。フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられる。
【0085】
その後、パターン化されたフォトレジスト及び無機下層膜からなる膜を保護膜として有機下層膜の除去が行われる。有機下層膜(下層)は酸素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。シリコン原子を多く含む無機下層膜は、酸素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいからである。
【0086】
最後に、半導体基板の加工が行なわれる。半導体基板の加工はフッ素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。
フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられる。
【0087】
また、レジスト下層膜の上層には、フォトレジストの形成前に有機系の反射防止膜を形成することができる。そこで使用される反射防止膜組成物としては特に制限はなく、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって反射防止膜の形成を行なうことができる。
【0088】
本発明では基板上に有機下層膜を成膜した後、その上に無機下層膜を成膜し、更にその上にフォトレジストを被覆することができる。これによりフォトレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐためにフォトレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。例えば、フォトレジストに対して十分に早いエッチング速度となるフッ素系ガスをエッチングガスとしてレジスト下層膜に加工が可能であり、また無機下層膜に対して十分に早いエッチング速度となるフッ素系ガスをエッチングガスとして基板の加工が可能であり、更に有機下層膜に対して十分に早いエッチング速度となる酸素系ガスをエッチングガスとして基板の加工を行うことができる。
【0089】
レジスト下層膜形成組成物より形成されるレジスト下層膜は、また、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがある。そして、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する反射防止膜として機能することができる。さらに、本発明のレジスト下層膜形成組成物で形成された下層膜はハードマスクとしても機能し得るものである。本発明の下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用の防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散を防ぐ機能を有する層、及び半導体基板誘電体層によるフォトレジスト層のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【0090】
また、レジスト下層膜形成組成物より形成される下層膜は、デュアルダマシンプロセスで用いられるビアホールが形成された基板に適用され、ホールを隙間なく充填することができる埋め込み材として使用できる。また、凹凸のある半導体基板の表面を平坦化するための平坦化材として使用することもできる。
【実施例】
【0091】
次に実施例等を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
下記合成例1で得られた樹脂(ポリマー)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する。)による測定結果である。測定には東ソー株式会社製GPC装置を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:Shodex KF803L、Shodex KF802、Shodex KF801〔登録商標〕(昭和電工株式会社)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0ml/分
標準試料:ポリスチレン(東ソー株式会社製)
【0093】
ドライエッチング速度の測定に用いたエッチャー及びエッチングガスは以下のものを用いた。
RIE-10NR(サムコ製):CF4
【0094】
[合成例1]
100mL二口フラスコに4-tert-ブチルベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)9.71g、カルバゾール(東京化成工業株式会社製)10.00g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以降、PGMEAと記載)48.68g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.15gを入れた。その後150℃まで加熱し、30分間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-1)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,900であった。
【化14】
【0095】
[合成例2]
100mL二口フラスコに4-(トリフルオロメチル)-ベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)10.42g、カルバゾール(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA50.34g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.15gを入れた。その後150℃まで加熱し、3.5時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-2)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,200であった。
【化15】
【0096】
[合成例3]
100mL二口フラスコに4-tert-ブチルベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)8.39g、2-フェニルインドール(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA45.24g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.99gを入れた。その後150℃まで加熱し、17時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール/水混合液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-3)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,200であった。
【化16】
【0097】
[合成例4]
100mL二口フラスコに4-(トリフルオロメチル)-ベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)9.01g、2-フェニルインドール(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA46.68g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.99gを入れた。その後150℃まで加熱し、17時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール/水混合液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-4)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,200であった。
【化17】
【0098】
[合成例5]
100mL二口フラスコに4-tert-ブチルベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)7.40g、N-フェニル-1-ナフチルアミン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA18.50g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.10gを入れた。その後150℃まで加熱し、10分間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-5)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,000であった。
【化18】
【0099】
[合成例6]
100mL二口フラスコに4-(トリフルオロメチル)-ベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)7.95g、N-フェニル-1-ナフチルアミン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA18.50g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.55gを入れた。その後150℃まで加熱し、10分間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-6)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは30,000であった。
【化19】
【0100】
[合成例7]
100mL二口フラスコに4-tert-ブチルベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)4.63g、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA22.77g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.55gを入れた。その後150℃まで加熱し、5.5時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール/水混合液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-7)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,000であった。
【化20】
【0101】
[合成例8]
100mL二口フラスコに4-(トリフルオロメチル)-ベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)4.97g、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA23.28g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.55gを入れた。その後150℃まで加熱し、5.5時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール/水混合液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-8)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは10,000であった。
【化21】
【0102】
[合成例9]
100mL二口フラスコに4-tert-ブチルベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)10.13g、1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA49.77g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.20gを入れた。その後150℃まで加熱し、1時間45分還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール/水混合液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-9)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,200であった。
【化22】
【0103】
[合成例10]
100mL二口フラスコに4-(トリフルオロメチル)-ベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)10.87g、1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA51.50g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.20gを入れた。その後150℃まで加熱し、2時間15分還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-10)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,300であった。
【化23】
【0104】
[合成例11]
100mL二口フラスコに4-tert-ブチルベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)4.69g、ビスフェノールM(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA35.56g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.56gを入れた。その後150℃まで加熱し、16時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール/水混合液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-11)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,000であった。
【化24】
【0105】
[合成例12]
100mL二口フラスコに4-(トリフルオロメチル)-ベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)5.03g、ビスフェノールM(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA36.36g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.56gを入れた。その後150℃まで加熱し、5時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール/水混合液中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(2-12)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,500であった。
【化25】
【0106】
[比較合成例1]
100mL二口フラスコにベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)6.35g、カルバゾール(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA40.84g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.15gを入れた。その後150℃まで加熱し、約30分間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(1-1)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは52,300であった。
【化26】
【0107】
[比較合成例2]
100mL二口フラスコにベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)5.49g、2-フェニルインドール(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA16.49g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.99gを入れた。その後150℃まで加熱し、約5時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(1-2)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,600であった。
【化27】
【0108】
[比較合成例3]
100mL二口フラスコにベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)4.84g、N-フェニル-1-ナフチルアミン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA36.67g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.88gを入れた。その後150℃まで加熱し、約15分間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(1-3)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,900であった。
【化28】
【0109】
[比較合成例4]
100mL二口フラスコにベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)3.03g、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA32.68g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.55gを入れた。その後150℃まで加熱し、約17.5時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(1-4)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは10,300であった。
【化29】
【0110】
[比較合成例5]
100mL二口フラスコにベンズアルデヒド(東京化成工業株式会社製)6.62g、1,5-ジヒドロキシナフタレン(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA41.58g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.20gを入れた。その後150℃まで加熱し、約1.5時間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(1-5)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,300であった。
【化30】
【0111】
[比較合成例6]
100mL二口フラスコにp-トルアルデヒド(東京化成工業株式会社製)7.19g、カルバゾール(東京化成工業株式会社製)10.00g、PGMEA42.80g、メタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)1.15gを入れた。その後150℃まで加熱し、約30分間還流撹拌した。反応終了後、この溶液をメタノール中に滴下し、再沈殿させた。得られた沈殿物を吸引ろ過し、ろ物を60℃で一晩減圧乾燥した。得られたポリマーは式(1-6)に相当した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,900であった。
【化31】
【0112】
実施例に使用した原料の化学構造(例示)と略称は以下のとおりである。
【化32】
【化33】
【0113】
[実施例1]
合成例1で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0114】
[実施例2]
合成例2で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0115】
[実施例3]
合成例3で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0116】
[実施例4]
合成例4で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0117】
[実施例5]
合成例5で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0118】
[実施例6]
合成例6で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0119】
[実施例7]
合成例7で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0120】
[実施例8]
合成例8で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0121】
[実施例9]
合成例9で得られた樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテル(以降、PGMEと記載)に溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0122】
[実施例10]
合成例10で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0123】
[実施例11]
合成例11で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0124】
[実施例12]
合成例12で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0125】
[実施例13]
合成例1で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。この樹脂溶液2.65gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.12g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.09g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.45g、PGMEA4.34g、PGME2.35gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0126】
[実施例14]
合成例2で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は20.1質量%)を得た。この樹脂溶液3.00gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.12g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.09g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.34g、PGMEA4.00g、PGME2.49gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0127】
[実施例15]
合成例3で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は19.0質量%)を得た。この樹脂溶液1.94gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.07g、PGME-BIP-A(ファインケム株式会社製)0.18g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.46g、PGMEA2.91g、PGME1.43gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0128】
[実施例16]
合成例4で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は20.8質量%)を得た。この樹脂溶液2.02gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.08g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.06g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.31g、PGMEA2.88g、PGME1.64gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0129】
[実施例17]
合成例5で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は19.1質量%)を得た。この樹脂溶液3.01gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.12g、PGME-BIP-A(ファインケム株式会社製)0.19g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.43g、PGMEA3.96g、PGME2.29gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0130】
[実施例18]
合成例6で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は20.5質量%)を得た。この樹脂溶液2.92gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.12g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.09g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.45g、PGMEA4.07g、PGME2.35gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0131】
[実施例19]
合成例7で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.2質量%)を得た。この樹脂溶液2.56gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.11g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.11g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.85g、PGMEA4.41g、PGME1.95gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0132】
[実施例20]
合成例8で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.8質量%)を得た。この樹脂溶液2.49gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.11g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.11g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.85g、PGMEA4.47g、PGME1.95gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0133】
[実施例21]
合成例9で得られた樹脂をPGMEに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は19.7質量%)を得た。この樹脂溶液2.88gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.11g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.11g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.85g、PGMEA2.68g、PGME3.36gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0134】
[実施例22]
合成例10で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.9質量%)を得た。この樹脂溶液2.48gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.11g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.11g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.85g、PGMEA4.48g、PGME1.95gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0135】
[実施例23]
合成例11で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は17.9質量%)を得た。この樹脂溶液1.93gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.07g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.07g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.26g、PGMEA2.25g、PGME1.42gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0136】
[実施例24]
合成例12で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は17.8質量%)を得た。この樹脂溶液3.24gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.12g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.12g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.43g、PGMEA3.73g、PGME2.37gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0137】
[比較例1]
比較合成例1で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は18.4質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0138】
[比較例2]
比較合成例2で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.5質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0139】
[比較例3]
比較合成例3で得られた樹脂をシクロヘキサノンに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は17.7質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0140】
[比較例4]
比較合成例4で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は15.9質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0141】
[比較例5]
比較合成例5で得られた樹脂をPGMEに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は18.2質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0142】
[比較例6]
比較合成例6で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は26.0質量%)を得た。樹脂固形分が5%になるようにPGMEAを加えて混合させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0143】
[比較例7]
比較合成例6で得られた樹脂をPGMEAに溶解後、イオン交換を経て樹脂溶液(固形分は22.6質量%)を得た。この樹脂溶液2.19gに1質量%界面活性剤(DIC株式会社製、メガファックR-40)含有PGMEA0.11g、TMOM-BP(本州化学工業株式会社製)0.11g、2質量%ピリジニウムp-ヒドロキシベンゼンスルホナート(東京化成工業株式会社)含有PGME0.85g、PGMEA4.78g、PGME1.95gを加えて溶解させ、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製マイクロフィルターにて濾過して、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0144】
(ポリマーの接触角測定)
実施例1-12及び比較例1-6で調製したレジスト下層膜形成組成物の溶液を、それぞれスピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布し、ホットプレート上で240℃、60秒間焼成または350℃、60秒間焼成し、ポリマー膜を形成した。その後、協和界面科学株式会社製の接触角計を使用し、純水に対するポリマーの接触角を測定した。
【0145】
【0146】
上記の通り、tert-ブチル基又はトリフルオロメチル基を有するノボラック樹脂は、類似の骨格と比較して、低温焼成時に限らず、高温焼成時も特異的に高い純水接触角(=疎水性)を示し、明確に優位性がある。次項にて、tert-ブチル基又はトリフルオロメチル基を有するノボラック樹脂に架橋剤、酸触媒及び界面活性剤を混合し、材料とした際の物性の評価結果を示す。
【0147】
(材料の接触角測定)
実施例13-24及び比較例7で調製したレジスト下層膜形成組成物の溶液を、それぞれスピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布し、ホットプレート上で350℃、60秒間焼成し、200nmのレジスト下層膜を形成した。その後、協和界面科学株式会社製の接触角計を使用し、純水に対する接触角を測定した。
【0148】
【0149】
上記の通り、tert-ブチル基又はトリフルオロメチル基を有するノボラック樹脂は、材料とした際も、高温焼成時に特異的に高い純水接触角(=疎水性)を示す。これにより、疎水性の上層膜との密着性を高めることが可能であり、また疎水性ガスに対して良好な透過性を示すことが予想される。
【0150】
(レジスト溶剤への溶出試験)
実施例13-24及び比較例7で調製したレジスト下層膜形成組成物の溶液を、それぞれスピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布し、ホットプレート上で350℃、60秒間焼成し、レジスト下層膜(膜厚0.20μm)を形成した。これらレジスト下層膜を、レジストに使用する溶剤である乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びシクロヘキサノンに浸漬した。これらレジスト下層膜はこれら溶剤に不溶であった。
【0151】
(光学定数測定)
実施例13-24及び比較例7で調製したレジスト下層膜形成組成物の溶液を、それぞれスピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で350℃、60秒間焼成し、レジスト下層膜(膜厚0.05μm)を形成した。これらのレジスト下層膜を、分光エリプソメーターを用いて波長193nmでの屈折率(n値)及び光学吸光係数(k値、減衰係数とも呼ぶ)を測定した(表3)。
【0152】
【0153】
上記の通り、tert-ブチル基又はトリフルオロメチル基を有するノボラック樹脂は、分子骨格を変更することで、プロセスに適応する光学定数に調整することができる。
【0154】
[ドライエッチング速度の測定]
実施例13-24及び比較例7で調製したレジスト下層膜形成組成物の溶液を、それぞれスピンコーターを用いてシリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で350℃、60秒間焼成してレジスト下層膜(膜厚0.20μm)を形成した。エッチングガスとしてCF4ガスを使用してドライエッチング速度を測定し、実施例13-24及び比較例7のドライエッチング速度比を求めた。ドライエッチング速度比は(レジスト下層膜)/(KrFフォトレジスト)のドライエッチング速度比である(表4)。
【0155】
【0156】
上記の通り、tert-ブチル基又はトリフルオロメチル基を有するノボラック樹脂は、分子骨格を変更することで、プロセスに適応するエッチング速度に調整することができる。
【0157】
(段差基板への被覆試験)
段差基板への被覆試験として、200nm膜厚のSiO2基板で、800nmトレンチエリア(TRENCH)とパターンが形成されていないオープンエリア(OPEN)の被覆膜厚の比較を行った。実施例13-24及び比較例7で調製されたレジスト下層膜形成組成物を上記基板に塗布後、350℃、60秒間焼成して約200nmのレジスト下層膜を形成した。この基板の平坦化性を日立ハイテクノロジーズ株式会社製走査型電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察し、段差基板のトレンチエリア(パターン部)とオープンエリア(パターンなし部)との膜厚差(トレンチエリアとオープンエリアとの塗布段差でありバイアスと呼ぶ)を測定することで平坦化性を評価した。ここで、平坦化性とは、パターンが存在する部分(TRENCH(パターン部))と、パターンが存在しない部分(オープンエリア(パターンなし部))とで、その上部に存在する塗布された被覆物の膜厚差(Iso-TRENCHバイアス)が小さいことを意味する(表5)。なお、比較例に対して10nm未満の改善を確認できた実施例は△、10nm以上改善を確認できた実施例は○、比較例に対して20nm以上改善を確認できた実施例は◎と評価した。
【0158】
【0159】
上記の通り、tert-ブチル基又はトリフルオロメチル基を有するノボラック樹脂は良好な平坦化性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係るノボラック樹脂は、低温焼成時に限らず、高温焼成時も特異的に高い純水接触角(=疎水性)を示す。また、本発明に係るノボラック樹脂は、架橋剤、酸触媒及び界面活性剤を混合し、材料とした際も、高温焼成時に特異的に高い純水接触角(=疎水性)を示す。更に、本発明に係るノボラック樹脂は、良好な平坦化性を示し、分子骨格を変更することで、プロセスに適応する光学定数やエッチング速度に調整することができる。