(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】成形装置、そのような成形装置を備える製造設備、およびガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
C03B17/06
(21)【出願番号】P 2021567436
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047660
(87)【国際公開番号】W WO2021132150
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019238256
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】中野 正徳
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048278(JP,A)
【文献】特表2014-515721(JP,A)
【文献】特開2007-197303(JP,A)
【文献】特表2017-502910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを成形してガラスリボンを形成する成形装置であって、
本体と、
該本体の、少なくともガラスと接触する部分に設置された板部材と、
を有し、
前記板部材は、厚さが0.5mm~100mmの範囲であり、前記ガラスに対して不活性な材料で構成され
、
前記板部材は、石英、ジルコニア、ムライト、ジルコン、およびマグネシアからなる群から選定された1つ以上の材料で構成される、成形装置。
【請求項2】
前記本体は、該本体の室温における熱伝導率をκ(W/mK)とし、熱膨張率をρ(10
-6/K)としたとき、比κ/ρが1以上となる材料で構成されている、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記本体は、カーボン(C)、炭化ケイ素(SiC)、シリカ焼結体、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、およびステンレス鋼からなる群から選定された1つ以上の材料で構成される、請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項4】
ガラス板を連続的に製造する製造設備であって、
溶融ガラスを成形して、ガラスリボンを形成する成形装置を有し、
前記成形装置は、
本体と、
該本体の、少なくともガラスと接触する部分に設置された板部材と、
を有し、
前記板部材は、厚さが0.5mm~100mmの範囲であり、前記ガラスに対して不活性な材料で構成され
、
前記板部材は、石英、ジルコニア、ムライト、ジルコン、およびマグネシアからなる群から選定された1つ以上の材料で構成される、製造設備。
【請求項5】
前記本体は、該本体の室温における熱伝導率をκ(W/mK)とし、熱膨張率をρ(10
-6/K)としたとき、比κ/ρが1以上となる材料で構成されている、請求項
4に記載の製造設備。
【請求項6】
前記本体は、カーボン(C)、炭化ケイ素(SiC)、シリカ焼結体、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、およびステンレス鋼からなる群から選定された1つ以上の材料で構成される、請求項
4または
5に記載の製造設備。
【請求項7】
ガラス板の製造方法であって、
成形装置を使用して、溶融ガラスからガラスリボンを形成するステップを有し、
前記成形装置は、
本体と、
該本体の、少なくともガラスと接触する部分に設置された板部材と、
を有し、
前記板部材は、厚さが0.5mm~100mmの範囲であり、前記ガラスに対して不活性な材料で構成され
、
前記板部材は、石英、ジルコニア、ムライト、ジルコン、およびマグネシアからなる群から選定された1つ以上の材料で構成される、製造方法。
【請求項8】
前記本体は、該本体の室温における熱伝導率をκ(W/mK)とし、熱膨張率をρ(10
-6/K)としたとき、比κ/ρが1以上となる材料で構成されている、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記本体は、カーボン(C)、炭化ケイ素(SiC)、シリカ焼結体、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、およびステンレス鋼からなる群から選定された1つ以上の材料で構成される、請求項
7または
8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造設備用の成形装置、そのような成形装置を備える製造設備、およびガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板は、例えば、フュージョン法およびスリットダウンドロー法等のような方法を用いて、連続的に製造することができる。
【0003】
例えば、フュージョン法では、ガラス原料を溶解することにより得られた溶融ガラスが、成形用の装置(以下、「成形装置」と称する)の上部に供給される。成形装置は、断面が下向きに尖った略くさび状となっており、溶融ガラスは、この成形装置の対向する2つの側面に沿って流下される。両側面に沿って流下する溶融ガラスは、成形装置の下側端部(「合流点」ともいう)で合流、一体化され、ガラスリボンが成形される。その後、このガラスリボンは、ローラなどの牽引部材により、徐冷されながら下向きに牽引され、所定の寸法で切断される(例えば特許文献1)。
【0004】
また、スリットダウンドロー法では、溶融ガラスを収容する成形装置は、底部にスリット状の開口を有する。溶融ガラスは、この開口を介して流下された後に、ガラスリボンとなる。その後ガラスリボンが徐冷された後、切断され、ガラス板が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような方法または別の方法で、ガラス板を製造する製造設備において、ガラス板の製造効率向上等の観点から、成形装置に対しては、迅速な昇温および降温に耐え得る構成が望まれている。ただし、そのためには、成形装置として、熱衝撃に強い材料を採用する必要がある。
【0007】
しかしながら、通常、そのような耐熱衝撃性を有する材料は、ガラスに対する反応性が高い場合が多く、成形装置の材料として使用することは難しいという問題がある。このため、従来の成形装置では、昇温速度および降温速度をあまり高めることができず、従って、ガラス板の製造効率を高めることが難しいという問題がある。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、従来に比べて、迅速な昇温および降温が可能な、ガラス板の製造設備用の成形装置を提供することを目的とする。また、本発明では、そのような成形装置を備えるガラス板の製造設備を提供することを目的とする。さらに、本発明では、従来に比べて、迅速な昇温および降温が可能となる、ガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、溶融ガラスを成形してガラスリボンを形成する成形装置であって、
本体と、
該本体の、少なくともガラスと接触する部分に設置された板部材と、
を有し、
前記板部材は、厚さが0.5mm~100mmの範囲であり、前記ガラスに対して不活性な材料で構成される、成形装置が提供される。
【0010】
また、本発明では、ガラス板を連続的に製造する製造設備であって、
溶融ガラスを成形して、ガラスリボンを形成する成形装置を有し、
前記成形装置は、
本体と、
該本体の、少なくともガラスと接触する部分に設置された板部材と、
を有し、
前記板部材は、厚さが0.5mm~100mmの範囲であり、前記ガラスに対して不活性な材料で構成される、製造設備が提供される。
【0011】
さらに、本発明では、ガラス板の製造方法であって、
成形装置を使用して、溶融ガラスからガラスリボンを形成するステップを有し、
前記成形装置は、
本体と、
該本体の、少なくともガラスと接触する部分に設置された板部材と、
を有し、
前記板部材は、厚さが0.5mm~100mmの範囲であり、前記ガラスに対して不活性な材料で構成される、製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、従来に比べて、迅速な昇温および降温が可能な、ガラス板の製造設備用の成形装置を提供することができる。また、本発明では、そのような成形装置を備えるガラス板の製造設備を提供することができる。さらに、本発明では、従来に比べて、迅速な昇温および降温が可能となる、ガラス板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるガラス板の製造設備の構成例を模式的に示した図である。
【
図2】
図1に示したガラス板の製造設備のA-A線に沿った断面を模式的に示した断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態によるガラス板の製造設備の構成例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
(本発明の一実施形態によるガラス板の製造設備)
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態によるガラス板の製造設備について説明する。
【0016】
図1および
図2には、本発明の一実施形態によるガラス板の製造設備(以下、「第1の製造設備」と称する)100の構成を概略的に示す。第1の製造設備100では、フュージョン法により、ガラス板を連続的に製造することができる。
【0017】
なお、
図2は、
図1における第1の製造設備100のA-A線に沿った断面を模式的に示した図である。
【0018】
図1および
図2に示すように、第1の製造設備100は、成形装置110と、該成形装置110を収容する炉150と、成形装置110の下方に配置された複数のローラ160とを備える。なお、図には示されていないが、第1の製造設備100は、さらに、炉150の下方に、切断部材を有する。
【0019】
成形装置110は、溶融ガラスMGからガラスリボンGRを成形する機能を有する。成形装置110は、供給管105と接続されており、該供給管105を介して、成形装置110に溶融ガラスMGが供給される。
【0020】
成形装置110は、本体120と、板部材130とを有する。
【0021】
成形装置110の本体120は、
図2に示すような断面略くさび状の形状を有する。より具体的には、本体120は、該本体120の上面121に設けられた凹部122と、相互に対向する第1の側面124aおよび第2の側面124bと、第1の側面124aと第2の側面124bの交差部である下側端部129とを有する。
【0022】
凹部122は、本体120の長手方向、すなわち
図1および
図2におけるX方向に沿って形成されている。
【0023】
第1の側面124aは、第1の上側面126aと、第1の下側面128aとを有する。同様に、第2の側面124bは、第2の上側面126bと、第2の下側面128bとを有する。
【0024】
第1の上側面126aおよび第2の上側面126bは、いずれも、本体120の略長手方向(X方向)および略鉛直方向(Z方向)に延在しており、従ってXZ面と略平行に配置される。一方、第1の下側面128aおよび第2の下側面128bは、鉛直方向(Z方向)に対して傾斜しており、本体120の下側端部129で相互に交差するように配置される。
【0025】
第1の下側面128aの上部は、第1の上側面126aの下部と接続され、第2の下側面128bの上部は、第2の上側面126bの下部と接続されている。
【0026】
また、成形装置110の板部材130は、本体120の露出表面のうち、少なくともガラスと直接接触する箇所に設置される。
【0027】
例えば、
図2に示した例では、板部材130は、本体120の上面121、凹部122、第1の側面124a(第1の上側面126aおよび第1の下側面128a)、および第2の側面124b(第2の上側面126bおよび第2の下側面128b)を覆うように設置されている。
【0028】
なお、成形装置110は、本体120の形状と略共形の形状を有する。すなわち、成形装置110は、上面111、凹部112、第1の側面114a(第1の上側面116aおよび第1の下側面118a)、第2の側面114b(第2の上側面116bおよび第2の下側面118b)、および下側端部119を有し、これらの箇所は、いずれも本体120の対応するそれぞれの箇所と類似の形状を有する。また、これらの箇所は、いずれも板部材130の露出表面で構成される。
【0029】
各ローラ160は、ガラスリボンGRの厚さを調整しながら、ガラスリボンGRを下方に搬送する役割を有する。
【0030】
このような第1の製造設備100を用いてガラス板を製造する場合、まず、供給管105を介して、成形装置110に溶融ガラスMGが供給される。
【0031】
成形装置110に供給された溶融ガラスMGは、凹部112に収容される。ただし、凹部112の収容容積を超える溶融ガラスMGが供給されると、溶融ガラスMGは、成形装置110の第1の側面114aおよび第2の側面114bに沿って溢れ、下方に流出する。
【0032】
これにより、成形装置110の第1の上側面116aに、第1の溶融ガラス部分190aが形成され、成形装置110の第2の上側面116bに、第2の溶融ガラス部分190bが形成される。
【0033】
その後、第1の溶融ガラス部分190aは、成形装置110の第1の下側面118aに沿って、さらに下方に流出する。同様に、第2の溶融ガラス部分190bは、成形装置110の第2の下側面118bに沿って、さらに下方に流出する。
【0034】
その結果、第1の溶融ガラス部分190aおよび第2の溶融ガラス部分190bは、成形装置110の下側端部119に至り、ここで一体化される。これにより、ガラスリボンGRが形成される。
【0035】
なお、その後、ガラスリボンGRは、ローラ160により、さらに鉛直方向に下方に牽引され、その過程で徐冷される。
【0036】
その後、十分に徐冷されたガラスリボンGRは、炉150から排出され、切断手段(図示されていない)により、所定の寸法に切断される。
【0037】
以上の工程により、ガラス板を連続的に製造することができる。
【0038】
ここで、ガラス板の製造効率向上等の観点から、ガラス板の製造設備に含まれる成形装置には、迅速な昇温および降温に耐え得る構成が望まれている。
【0039】
しかしながら、従来の製造設備では、成形装置の主要部分は耐熱レンガのような材料で構成されている場合が多く、急激な昇温および降温を行うと、熱衝撃により本体が損傷する危険がある。このため、従来の製造設備では、昇温速度および降温速度をあまり高めることができないという問題がある。ここで熱衝撃による損傷とは、急激な温度変化による材料に生じる温度分布で割れる脆性破壊と、急激な温度変化による材料に生じる大きな温度分布で変形する延性変形のいずれか一方または両方を含むものである。
【0040】
なお、このような問題に対処するため、本体の材料として、熱衝撃に強い材料を採用することが考えられる。しかしながら、一般に、良好な耐熱衝撃性を有する材料は、ガラスとの反応性が高く、成形装置の本体として使用することは難しい。
【0041】
これに対して、第1の製造設備100では、成形装置110の主要部分は、本体120と、厚さが0.5mm~100mmの範囲の板部材130とを有する。また、この板部材130は、溶融ガラスMGに対して不活性な材料で構成され、本体120の、溶融ガラスMGと接触する場所に設置される。
【0042】
このような特徴を有する第1の製造設備100では、本体120が板部材130によって保護されているため、ガラス板の製造の際に、成形装置110の本体120が溶融ガラスMGと接触する可能性が有意に抑制される。従って、本体120に、耐熱衝撃性を有する材料を選定することができる。
【0043】
また、成形装置110の板部材130は、厚さが0.5mm~100mmの範囲であり、熱衝撃を受けても割れ難いという特徴を有する。
【0044】
さらに、第1の製造設備100では、板部材130は、コーティング膜のような被膜とは異なり、「板」として本体120の上に適用される。
【0045】
一般に、コーティング膜は、被設置対象の上に、該設置対象と密着した状態で設置される。このため、成形装置の本体にコーティング膜を設置した場合、成形装置が急激な昇温および降温の負荷を受けた際に、本体とコーティング膜との間の熱膨脹の差によって、コーティング膜が本体から剥離したり、シワ状になったり、破れたりする可能性がある。
【0046】
しかしながら、本体120の上に板として設置された板部材130では、本体120と板部材130との間に、厳密な密着性は要求されない。従って、板部材130を使用した場合、本体120との熱膨張の差に起因する不具合も生じ難い。
【0047】
以上の効果により、第1の製造設備100では、成形装置110に対して、迅速な昇温および降温を行うことができる。また、これにより、第1の製造設備100では、より効率的にガラス板を製造することが可能となる。
【0048】
また、成形装置110では、板部材130は本体120から取り外すことが容易である。このため、製造するガラス板を、板部材130に対する反応性が高い別のガラス板に変更して製造する際、本発明の成形装置110は、板部材130のみを別の材料で構成される板部材130に交換するだけでよい。従って、成形装置110では、より効率的にガラス板を製造することが可能となる。
【0049】
また、従来の成形装置では、成形装置がガラス板の製造において侵食または劣化した場合、成形装置全体を交換する必要があるため、手間とコストがかかる。しかしながら、成形装置110では、板部材130は本体120から取り外すことが容易なため、ガラス板の製造において板部材130が侵食または劣化した場合、板部材130のみを交換すればよい。従って、成形装置110は、ガラス板製造時の設備の維持管理を効率的かつ低コストに行うことができる。
【0050】
(成形装置を構成する各部材)
次に、第1の製造設備100における成形装置110を構成するそれぞれの部材について、より詳しく説明する。
【0051】
(本体120)
本体120は、熱衝撃に強い材料で構成される。
【0052】
具体的には、本体120は、室温における熱伝導率をκ(W/mK)とし、熱膨張率をρ(10-6/K)としたとき、比κ/ρが1以上となる材料で構成される。
【0053】
このような材料には、室温からガラスの成形温度(例えば500℃~1500℃)まで急激に昇温したり、ガラスの成形温度から室温まで急激に降温したりしても、損傷が生じ難いという特徴がある。
【0054】
比κ/ρが1以上となる材料としては、例えば、比κ/ρが23.5のカーボン(C)、比κ/ρが60.0の炭化ケイ素(SiC)、比κ/ρが2.7のシリカ焼結体、比κ/ρが7.3のニッケル(Ni)、比κ/ρが28.8のモリブデン(Mo)、および比κ/ρが1.2のステンレス鋼、比κ/ρが4.4のアルミナ焼結体、および比κ/ρが1.2のムライト焼結体が含まれる。前記シリカ焼結体は、通常シリカ以外の成分を焼結体全体量に対して0.2~5重量%含んでいてもよい。前記アルミナ焼結体は、通常アルミナ以外の成分を焼結体全体量に対して0.2~10重量%含んでいてもよい。前記ムライト焼結体は、通常ムライト以外の成分を焼結体全体量に対して0.5~5重量%含んでいてもよい。
【0055】
(板部材130)
板部材130は、使用されるガラスに対して不活性な材料で構成される。例えば、板部材130用の材料は、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等の金属酸化物が挙げられる。これら金属酸化物を1種のみからなるものでもよいが、2種以上からなるものとすることもできる。また、これら金属酸化物を構成する金属2種以上の複合酸化物を含んでいても良い。また、モリブデン等の金属を含んでいても良い。具体的には、石英、ジルコニア、ムライト、ジルコン、マグネシア、アルミナ、およびモリブデンからなる群から選定された1つ以上の材料で構成されても良い。板部材130を構成する材料は、材料に含まれる不純物は、材料全体量に対して1重量%以下であることが好ましい。
【0056】
使用されるガラスの成分組成の違いにより、ガラスに対して不活性な材料は変化する。従って、板部材130を構成する材料としては、使用されるガラスに対して反応性の低い材料、すなわち不活性な材料が適宜選択される。
【0057】
板部材130の厚さは、前述のように、0.5mm~100mmの範囲である。厚さは、0.75mm~50mmの範囲であることが好ましく、1mm~30mmの範囲であることがより好ましい。
【0058】
なお、板部材130は、形状が実質的に等しい、または形状が異なる、複数の板状ピースを組み合わせて構成されても良い。例えば、板部材130は、本体120の必要な表面に、板部材130用の複数のピースを取り付けることにより、構成されても良い。あるいは、板部材130は、本体120の必要な表面に、板部材130用の複数のピースを配置した後、これらのピースを相互に結合することにより、構成されても良い。
【0059】
(本発明の一実施形態による別のガラス板の製造設備)
次に、
図3を参照して、本発明の別の実施形態によるガラス板の製造設備について説明する。
【0060】
図3には、本発明の別の実施形態によるガラス板の製造設備(以下、「第2の製造設備」と称する)200の一構成例を概略的に示す。第2の製造設備200では、スリットダウンドロー法により、ガラス板を連続的に製造することができる。
【0061】
図3に示すように、第2の製造設備200は、成形装置210と、該成形装置210を収容する炉250と、成形装置210の下方に配置された複数のローラ260とを備える。なお、図には示されていないが、第2の製造設備200は、さらに、炉250の下方に、切断部材を有する。
【0062】
成形装置210は、溶融ガラスMGからガラスリボンGRを成形する機能を有する。成形装置210は、供給管(図示されていない)と接続されており、該供給管を介して、成形装置210に溶融ガラスMGが供給される。
【0063】
成形装置210は、本体220と、板部材230とを有する。
【0064】
成形装置210の本体220は、
図3に示すような「箱状」の断面形状を有する。より具体的には、本体220は、内部側面221、内部底面225、外部底面227、およびスリット229を有する。スリット229は、内部底面225から外部底面227まで貫通している。
【0065】
成形装置210の板部材230は、本体220の露出表面のうち、少なくともガラスと直接接触する箇所に設置される。
【0066】
例えば、
図3に示した例では、板部材230は、本体220の内部側面221、内部底面225、およびスリット229を覆うように設置されている。
【0067】
成形装置210は、本体220の形状と略共形の形状を有する。例えば、成形装置210は、内部側面211、内部底面215、およびスリット219を有し、これらの箇所は、いずれも本体220の対応するそれぞれの箇所と類似の形状を有する。また、これらの箇所は、いずれも板部材230の露出表面で構成される。
【0068】
なお、
図3からは明確ではないが、成形装置210の各部材は、紙面と垂直な方向に延在している。従って、
図3に示した成形装置210は、長手方向(X方向)に沿った、細長い形状を有する。
【0069】
各ローラ260は、成形装置210から排出されるガラスリボンGRの厚さを調整しながら、ガラスリボンGRを下方に搬送する役割を有する。
【0070】
このような第2の製造設備200を用いてガラス板を製造する場合、まず、供給管(図示されていない)を介して、成形装置210に溶融ガラスMGが供給される。
【0071】
成形装置210に供給された溶融ガラスMGは、まず、内部側面211および内部底面215で区画される内部に収容される。
【0072】
次に、溶融ガラスMGは、成形装置210のスリット219を介して下方に流出し、その途中で降温される。これにより、ガラスリボンGRが形成される。
【0073】
その後、ガラスリボンGRは、ローラ260により、さらに鉛直方向に下方に牽引され、その過程で徐冷される。
【0074】
その後、十分に徐冷されたガラスリボンGRは、炉250から排出され、切断手段(図示されていない)により、所定の寸法に切断される。
【0075】
第2の製造設備200では、以上の工程により、ガラス板を連続的に製造することができる。
【0076】
ここで、第2の製造設備200では、成形装置210の主要部分は、本体220と、厚さが0.5mm~100mmの範囲の板部材230とを有する。また、この板部材230は、溶融ガラスMGに対して不活性な材料で構成され、本体220の、ガラスと接触する場所に設置される。
【0077】
このような特徴を有する第2の製造設備200では、本体220が板部材230によって保護されているため、ガラス板の製造の際に、成形装置210の本体220がガラスと接触する可能性が有意に抑制される。従って、本体220に、耐熱衝撃性を有する材料を選定することができる。
【0078】
また、成形装置210の板部材230は、厚さが0.5mm~100mmの範囲であり、熱衝撃を受けても割れ難いという特徴を有する。
【0079】
さらに、第2の製造設備200では、板部材230は、コーティング膜のような被膜とは異なり、「板」として本体220の上に適用される。従って、板部材230と本体220との間の熱膨張の差に起因する不具合も生じ難い。
【0080】
以上の効果により、第2の製造設備200では、成形装置210に対して、迅速な昇温および降温を行うことができる。また、これにより、第2の製造設備200では、より効率的にガラス板を製造することが可能となる。
【0081】
また、成形装置210では、板部材230は本体220から取り外すことが容易である。従って、製造するガラス板を、板部材230に対する反応性が高い別のガラス板に変更して製造する際、成形装置210は、板部材230のみを別の材料で構成される板部材230に交換するだけでよい。従って、成形装置210は、より効率的にガラス板を製造することが可能となる。
【0082】
また、従来の成形装置では、成形装置がガラス板の製造において侵食または劣化した場合、成形装置全体を交換する必要があるため非常に手間とコストがかかる。しかしながら、成形装置210では、板部材230は本体220から取り外すことが容易なため、ガラス板の製造において板部材230が侵食または劣化した場合、板部材230のみを交換すればよい。従って、成形装置210は、ガラス板製造時の設備の維持管理を効率的かつ低コストに行うことができる。
【0083】
なお、成形装置210の本体220および板部材230としては、それぞれ、前述の成形装置110における本体120および板部材130記載が参照できる。従って、ここではこれ以上説明しない。
【0084】
以上、第1の製造設備100の成形装置110、および第2の製造設備200の成形装置210を参照して、本発明の一実施形態による構成および特徴について説明した。
【0085】
しかしながら、これらは単なる一例であって、本発明によるガラス板の製造設備、さらには成形装置が、その他の構成を有しても良いことは、本願に接した当業者には明らかである。
【0086】
本願は、2019年12月27日に出願した日本国特許出願第2019-238256号に基づく優先権を主張するものであり、同日本国出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0087】
100 第1の製造設備
105 供給管
110 成形装置
111 成形装置の上面
112 成形装置の凹部
114a 成形装置の第1の側面
114b 成形装置の第2の側面
116a 成形装置の第1の上側面
116b 成形装置の第2の上側面
118a 成形装置の第1の下側面
118b 成形装置の第2の下側面
119 成形装置の下側端部
120 本体
121 本体の上面
122 本体の凹部
124a 本体の第1の側面
124b 本体の第2の側面
126a 本体の第1の上側面
126b 本体の第2の上側面
128a 本体の第1の下側面
128b 本体の第2の下側面
129 本体の下側端部
130 板部材
150 炉
160 ローラ
190a 第1の溶融ガラス部分
190b 第2の溶融ガラス部分
200 第2の製造設備
210 成形装置
211 成形装置の内部側面
215 成形装置の内部底面
219 成形装置のスリット
220 本体
221 本体の内部側面
225 本体の内部底面
227 本体の外部底面
229 本体のスリット
230 板部材
250 炉
260 ローラ
GR ガラスリボン
MG 溶融ガラス