(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム、及び車両用防音材
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20241210BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20241210BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C08G18/00 M
B60R13/08
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2021567572
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048266
(87)【国際公開番号】W WO2021132387
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019236123
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】藤原 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 崇
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 孝太郎
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-300294(JP,A)
【文献】特開2005-272806(JP,A)
【文献】特開平11-124496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
B60R 13/08
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮層と、その内部に形成される内部発泡層とを有するポリウレタンフォームであって、
厚さが3~25mmであり、周波数1000Hzでの垂直入射吸音率が10mm厚さで0.
50以上であり、
前記表皮層の骨格率をSS、前記内部発泡層の骨格率をSIとしたときの、骨格率比率SS/SIが2.8~5.0であることを特徴とする、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記表皮層は、骨格率測定において、サンプル表面から、骨格率が50%を下回る部分までの厚さの層であって、前記厚さが0.2~1mmである、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記骨格率比率SS/SIが2.8~4.0である、請求項1
又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記表皮層の骨格率SSが60%~85%である、請求項1
~3のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記内部発泡層の骨格率SIが24%~30%である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項6】
表皮層直下骨格率が40%以上である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項7】
密度が20~120kg/m
3である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項8】
前記内部発泡層の発泡セルの残膜率が40%以上94%未満である、請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項9】
前記発泡セルの平均骨格径を平均セル径で除した値が0.10~0.50であり、かつ、前記発泡セルの平均セル径が100~400μmである、請求項
8に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームを含む車両用防音材。
【請求項11】
請求項
10に記載の車両用防音材を備えたフェンダーライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム、及び車両用防音材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、モーター、エンジン、タイヤなどからの車外への騒音の抑制を目的として、防音材がアンダーカバーやフェンダーライナーカバーとして装着されている。防音材としては、ポリエステル繊維若しくはポリオレフィン繊維の不織布又はポリウレタンフォームが用いられている。ポリウレタンフォームは、ポリエステル繊維及びポリオレフィン繊維に比べて安価であるが、単独では低周波数領域の吸音性能が不足するため、ゴム、熱可塑性エラストマー又は熱可塑性樹脂のシートとの複合体として利用されてきた。しかし、ポリウレタンフォームと他の素材との複合体では、製造コストの上昇及び質量の増加という問題が生じていた。
【0003】
特許文献1には、高分子量ポリオキシアルキレンポリオール、有機ポリイソシアネート化合物、発泡剤及び触媒を含む原料組成物を用いて密閉された金型内で発泡させて製造するポリウレタンフォームが記載されている。一方、特許文献2には、多孔質の内部本体と、この内部本体の表面に形成された緻密な表皮とを備える吸音体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-113134号公報
【文献】特開平10-121597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、500Hz前後の吸音性が良好なポリウレタンフォームが記載されている。500Hz前後の低周波数領域での吸音性は、吸音材の厚さを厚くすることで発現可能であるが、特許文献1では、十分な吸音性を発現させるためには26mm厚まで厚膜化する必要がある。一方、特許文献2に記載された吸音体は中周波数から高周波数領域(2000Hz以上)では優れた吸音特性を示すものの、低周波数領域(1000Hz以下、特に500Hz以下)の吸音性能は、吸音体の厚さを30mmまで厚くしても十分ではなかった。
そのため、特許文献1や特許文献2に記載される吸音材を、10mm程度までの薄膜化が要求される用途(例えば、車両用フェンダーライナーやアンダーカバーなど)に適用した場合、低周波数領域において十分な吸音性能を発現させることは困難であった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、低周波数領域(500~2000Hz)の吸音率が良好であり、従来と同等以上の吸音性能を維持しながら薄型軽量化でき、車両用防音材として使用可能なポリウレタンフォーム、及び車両用防音材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は以下の構成により解決される。
[1]表皮層と、その内部に形成される内部発泡層とを有するポリウレタンフォームであって、厚さが3~25mmであり、周波数1000Hzでの垂直入射吸音率が10mm厚さで0.40以上であり、前記表皮層の骨格率をSS、前記内部発泡層の骨格率をSIとしたときの、骨格率比率SS/SIが2.8~5.0であることを特徴とする、ポリウレタンフォーム。
[2]前記骨格率比率SS/SIが2.8~4.0である、[1]に記載のポリウレタンフォーム。
[3]前記表皮層の骨格率SSが60%~85%である、[1]又は[2]に記載のポリウレタンフォーム。
[4]前記内部発泡層の骨格率SIが24%~30%である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
[5]表皮層直下骨格率が40%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
[6]密度が20~120kg/m3である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
[7]前記内部発泡層の発泡セルの残膜率が40%以上94%未満である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
[8]前記発泡セルの平均骨格径を平均セル径で除した値が0.10~0.50であり、かつ、前記発泡セルの平均セル径が100~400μmである、[7]に記載のポリウレタンフォーム。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のポリウレタンフォームを含む車両用防音材。
[10][9]に記載の車両用防音材を備えたフェンダーライナー。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリウレタンフォームは、薄い厚さであっても500~2000Hzの低周波数領域の吸音特性が良好なので、車両用防音材として適する。吸音率が良好な周波数はロードノイズの周波数帯のため、フェンダーライナーやアンダーカバー用途、特にフェンダーライナー用途での適用が好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明の技術的範囲は、以下に記載する実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0010】
[ポリウレタンフォーム]
本発明のポリウレタンフォームは、緻密な表皮層と、その内部に形成される内部発泡層とを有する。
当該表皮層は、ポリウレタンフォームの外面を覆うように形成される。当該表皮層は、吸音特性の向上に大きく寄与する層である。表皮層の厚さは、後述する骨格率測定において、サンプル表面から、骨格率が50%を下回る部分までの厚さで定義する。
表皮層の厚さは、特に限定されないが、0.2~1mmが好ましく、0.2~0.6mmがより好ましい。前記値がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能を確保できる。
内部発泡層は、表皮層の内部に形成される、多孔質の内部本体を指す。
【0011】
本発明のポリウレタンフォームの厚さは、3~25mmであり、3~20mmが好ましい。
前記厚さが上記の下限値以上であることで、良好な吸音性能を発揮できる。一方、前記厚さが上記の上限値以下であることで、本発明のポリウレタンフォームは、軽量でありながら、良好な吸音性能を発揮しやすい。
本発明のポリウレタンフォームの、周波数1000Hzでの垂直入射吸音率は、10mm厚さで0.40以上である。当該垂直入射吸音率は、0.40~1が好ましく、0.50~1がより好ましい。
前記吸音率がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能が優れる。
前記吸音率がこの範囲内のポリウレタンフォームは、車両用の防音材としての利用に適している。特に、設置部位が狭窄部や複雑形状である場合は、薄い状態で使用されることとなり、本発明のポリウレタンフォームの利点が生かされることとなる。
【0012】
吸音率は、ポリウレタンフォームを鋭利な刃物を用いて切断した、厚さが10mmの測定用サンプルを用い、JIS A 1405-2:2007「音響管による吸音率及びインピーダンスの測定」に準拠した方法により測定する。
【0013】
本発明のポリウレタンフォームは、表皮層の骨格率をSS、内部発泡層の骨格率をSIとしたときの、骨格率比率SS/SIが2.8~5.0であり、2.8~4.0が好ましい。
SS/SIが下限値以上であると、吸音に影響を及ぼす表皮層の密度が高いため、低周波数領域の音の内部発泡層への透過が遮蔽され、慣性力による相互作用で、内部発泡層による低周波数の吸音特性が向上する。
一方、SS/SIが上限値以下であると、表皮層における音の反射の影響を抑えられる。さらに、内部発泡層の強度も保てる。
その結果、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能がより向上する。
【0014】
骨格率は、ポリウレタンフォームを鋭利な刃物を用いて切断して測定用サンプルとし、サンプルの厚さ方向の断面を、光学顕微鏡を用いて撮像した結果から算出する。詳細な算出方法は後述する。
【0015】
表皮層の骨格率SSは、サンプルの表面から0.3mmの深さにおいて測定した骨格率の平均値で定義する。SSは特に限定されないが、60%~85%が好ましく、70%~85%がより好ましい。
前記値がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能がより向上する。
【0016】
内部発泡層の骨格率SIは、サンプルの表面から3.5~4.5mmの深さにおいて測定した骨格率の平均値で定義する。SIは特に限定されないが、24%~30%が好ましく、25%~29%がより好ましい。
前記値がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能がより向上する。
【0017】
表皮層直下骨格率は、表皮層厚さの2倍の深さの位置を表皮層直下と定義し、サンプルの表面から表皮層直下の深さにおいて測定した骨格率の平均値で定義する。表皮層直下骨格率は、特に限定されないが、40%以上が好ましく、40~70%がより好ましい。
前記値がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能がより向上する。
【0018】
本発明のポリウレタンフォームの密度は、20~120kg/m3であり、30~100kg/m3が好ましく、55~90kg/m3がより好ましい。
前記密度がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、吸音性能を従来と同等以上に維持しながら、軽量化できる。
特に、近年の車両用防音材は、軽量化の要求が強く、本発明のポリウレタンフォームの利点を生かすことができる。また、フェンダーライナーなど複雑な形状の部位にも使用できる。
【0019】
前記密度は、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に従って測定した密度(単位:kg/m3)である。
【0020】
本発明のポリウレタンフォームの内部発泡層における発泡セルの残膜率は、40%以上94%未満であり、40~90%が好ましく、50~85%がより好ましく、55~85%がさらに好ましい。
前記発泡セルの残膜率がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能が優れる。
また、前記残膜率がこの範囲内であると、ポリウレタンフォームの成形時に収縮が起きにくく、成形しやすい。
なお、前記発泡セルの残膜率は、測定用サンプルの断面を、光学顕微鏡を用いて撮像した結果から算出する。詳細な算出条件は後述する。
【0021】
内部発泡層の発泡セルの平均セル径は、特に限定されないが、100~400μmが好ましく、150~350μmがより好ましく、150~300μmがさらに好ましい。 前記発泡セルの平均セル径がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能が優れる。
【0022】
内部発泡層の発泡セルの平均骨格径を平均セル径で除した値は、特に限定されないが、0.10~0.50が好ましく、0.15~0.45がより好ましく、0.27~0.45がさらに好ましい。
前記値がこの範囲内であると、本発明のポリウレタンフォームは、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能がより向上する。
【0023】
なお、内部発泡層の平均骨格径及び平均セル径は、測定用サンプルの断面を、光学顕微鏡を用いて撮像した結果から算出する。詳細な算出条件は後述する。
【0024】
[ポリウレタンフォームの製造方法]
本発明のポリウレタンフォームは、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールA、有機ポリイソシアネート化合物B、発泡剤C及び触媒Dを含む原料組成物Gを用いて発泡させて製造できる。
【0025】
<原料組成物G>
原料組成物Gは、ポリオキシアルキレンポリオールA、有機ポリイソシアネート化合物B、発泡剤C及び触媒Dを含む。原料組成物Gは、通常、有機ポリイソシアネート化合物B以外の原料を含むポリオールシステム液Hと、有機ポリイソシアネート化合物Bとを混合して調製する。
【0026】
(ポリオキシアルキレンポリオールA)
ポリオキシアルキレンポリオールA(以下「ポリオールA」という。)は、通常、触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合して合成する。
ポリオールAは、3官能のポリオキシアルキレンポリオール、すなわち、1分子中に3個の水酸基を有するポリオキシアルキレンポリオールを含む。3官能のポリオキシアルキレンポリオール以外のポリオキシアルキレンポリオールは、特に限定されないが、例えば、2官能又は4官能以上のポリオキシアルキレンポリオールである。
ポリオールAの1分子当たりの水酸基数(以下「平均水酸基数」という。)は2以上であれば特に限定されないが、2~8が好ましく、2~4がより好ましく、2.2~3.9がさらに好ましく、2.4~3.7がいっそう好ましい。
平均水酸基数がこの範囲内であると、ポリウレタンフォームの軟らかさがより適度になり、圧縮永久歪がより改善し、伸び等の機械物性がより良好になり、防音性能がより向上する傾向がある。ポリオキシアルキレンポリオールの1分子の水酸基数は、そのポリオキシアルキレンポリオールの合成に用いた開始剤の活性水素含有基数と一致する。
【0027】
ポリオールAの数平均分子量は、特に限定されないが、1000~20000が好ましく、1000~16000がより好ましく、1500~12000がさらに好ましい。分子量がこの範囲内であると、ポリウレタンフォームにおける発泡セルの残膜率を適度な範囲としやすく、500~2000Hzの低周波数領域の吸音性能を改善しやすい。
【0028】
ポリオールAの水酸基1個当たりの数平均分子量(以下「分子量/水酸基数」という。)は、特に限定されないが、通常、500以上であり、500~5000が好ましく、1000~3500がより好ましい。分子量/水酸基数がこの範囲内であると、ポリウレタンフォームの収縮がより起こりにくく、弾性がより良好になる。本発明では、分子量/水酸基数が500未満のポリオキシアルキレンポリオールは、通常、後述する架橋剤Fに分類する。
【0029】
ポリオールAの製造の際に用いる開始剤は、1分子中に活性水素含有基を2~8個有する化合物が好ましい。このような化合物としては、2~8価の多価アルコール、多価フェノール又はアミンが好ましい。
前記2~8価の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、meso-エリスリトール、メチルグルコシド、グルコース、デキストロース、ソルビトール又はショ糖が挙げられるが、これらに限定されない。
前記多価フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロガロール又はヒドロキノンが挙げられるが、これらに限定されない。
前記アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ヘキサメチレンジアミン及びプロピレンジアミン等のポリアミン、並びにポリアミンとフェノール樹脂又はノボラック樹脂を縮合反応させて得られる縮合系化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
また、前記多価アルコール、前記多価フェノール、又は前記アミンにアルキレンオキシドを少量開環付加重合して得られる分子鎖末端に水酸基を有する低分子量ポリエーテルポリオールも開始剤として使用できる。このような低分子量ポリエーテルポリオールの水酸基当たりの分子量は、通常、1200以下であり、200~500が好ましく、200~350がより好ましい。
【0030】
開始剤としては、1分子中に水酸基を2~4個有する化合物がより好ましく、2~4価の多価アルコール又は2~4価の低分子量ポリエーテルポリオールが好ましい。中でも、3価以上の多価アルコール又は低分子量ポリエーテルポリオールを開始剤として用いて製造したポリオールは、ポリウレタンフォームの防音性能、発泡安定性及び物性のバランスがより良好である。開始剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
アルキレンオキシドは、特に限定されないが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド及びスチレンオキシドから選択される1種類以上が好ましく、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選択される1種類以上がより好ましい。エチレンオキシドの含有量が多くなると、ポリオキシアルキレン鎖の結晶性が向上し、ポリウレタンのソフトセグメントが剛直になる傾向がある。ポリオールAのポリオキシアルキレン鎖の、エチレンオキシドに由来する単位の含有量(以下「EO含有量」という。)は、特に限定されないが、ポリオキシアルキレン鎖の総質量の0~20質量%が好ましく、0~15質量%がより好ましい。EO含有量がこの範囲内であると、ポリオキシアルキレン鎖の親水性がより好ましくなり、得られるポリウレタンフォームにおける発泡セルの残膜率がより適度な範囲内になりやすい。
【0032】
開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合する際の触媒としては、従来使用されている触媒が用いられる。触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、ホスファゼニウム化合物、ボロントリフロリド化合物又は複合金属シアン化物錯体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
ポリオールAは、ポリマー微粒子をポリオールA中に分散して含んでいてもよい。ポリマー微粒子は、分散媒としてのベースポリオール中にポリマー微粒子が安定的に分散する。ポリマー微粒子としては、付加重合系ポリマー及び縮重合系ポリマーが挙げられる。ポリマー微粒子を構成するポリマーとしては、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート及びその他のビニルモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー等の付加重合系ポリマー、又はポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン若しくはメラミン樹脂等の縮重合系ポリマーが好ましく、アクリロニトリル、スチレンのホモポリマー又はコポリマーがより好ましい。
【0034】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法においては、ポリオールA以外のポリオールを併用してもよい。このようなポリオールとしては、ポリエステルポリオール等の他の高分子量ポリオールが挙げられる。ポリオールA以外のポリオールの使用量は、ポリオールAの合計100質量部に対して、0~20質量部が好ましく、0~10質量部がより好ましく、0質量部、すなわち、使用しないこと、がさらに好ましい。
【0035】
以下、原料組成物G中のポリオールA以外の成分の含有量を、100質量部のポリオールAに対する含有量として定義する。
ポリオールAは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
(有機ポリイソシアネート化合物B)
本発明のポリウレタンフォームの製造に用いる有機ポリイソシアネート化合物Bは、特に限定されないが、例えば、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート、及びポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
有機ポリイソシアネート化合物Bとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、これらのポリイソシアネートのプレポリマー変性体、イソシアヌレート変性体、ウレア変性体及びカルボジイミド変性体が挙げられ、TDI、MDI、クルードMDI及びこれらの変性体からなる群から選択される少なくとも1種が入手性の点で好ましい。TDIは2,4-TDI及び2,6-TDIのいずれでもよく、混合物でもよい。MDIは2,2’-MDI、2,4’-MDI及び4,4’-MDIのいずれでもよく、これらのうち2種類又は3種類の混合物でもよい。有機ポリイソシアネート化合物Bとしては、TDIが特に好ましい。
【0037】
原料組成物G中の有機ポリイソシアネート化合物Bの含有量は、特に限定されないが、有機ポリイソシアネート化合物Bのイソシアネート基の総モル数をポリオールAの水酸基の総モル数で除して100倍した値(イソシアネートインデックス)が、75~120となる量が好ましく、80~120となる量がより好ましく、80~110となる量がさらに好ましい。イソシアネートインデックスがこの範囲内であると、硬化を充分に進行させることができ、かつ、硬化が過剰に進行することなく、適切な硬化度の発泡体を得ることができる。
有機ポリイソシアネート化合物Bは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
(発泡剤C)
本発明のポリウレタンフォームの製造に用いる発泡剤は、水を含む。
また、発泡体の密度を低くする目的で、水以外の発泡剤を用いることができる。水以外の発泡剤としては、低沸点の不活性化合物が好ましい。このような不活性化合物としては、例えば、不活性ガス、及び沸点が70℃以下で、炭素数が8以下の炭化水素化合物をさらに含み、前記炭化水素化合物の炭素原子に結合する水素原子の一部がハロゲン原子に置換されていてもよい飽和炭化水素(以下「飽和炭化水素X」という。)が挙げられる。前記ハロゲン原子は、例えば、塩素原子又はフッ素原子である。
飽和炭化水素Xとしては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロエタン及び各種フロン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
原料組成物G中の発泡剤Cとしての水の含有量は、ポリオールAの100質量部に対して、1.5質量部以上が好ましく、2~5質量部がより好ましい。当該範囲とすることで、発泡を充分に進行させ、発泡体の密度を所望の範囲としやすくなる。
また、原料組成物G中の水以外の発泡剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオールAの100質量部に対して、0~25質量部が好ましく、0~20質量部がより好ましい。
発泡剤Cは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
(触媒D)
本発明のポリウレタンフォームの製造に用いる触媒Dは、アミン系触媒及びスズ系触媒からなる群から選択される少なくとも1種である。
触媒Dは、ポリオキシアルキレンポリオールと有機ポリイソシアネート化合物とを反応させる際に使用する触媒である。
触媒Dは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
前記アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノ-6-ヘキサノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノールに2モルのエチレンオキシドを付加した化合物、又は5-(N,N-ジメチル)アミノ-3-メチル-1-ペンタノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
原料組成物G中の前記アミン系触媒の含有量は、特に限定されないが、ポリオールAの100質量部に対して、0.1~5.0質量部が好ましく、0.2~3.0質量部がより好ましい。
前記アミン系触媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
前記スズ系触媒としては、2-エチルヘキサン酸スズ、ジ-n-ブチルスズオキシド、ジ-n-ブチルスズジラウレート、ジ-n-ブチルスズジアセテート、ジ-n-オクチルスズオキシド、ジ-n-オクチルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロリド、ジ-n-ブチルスズジアルキルメルカプタン及びジ-n-オクチルスズジアルキルメルカプタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
原料組成物G中の前記スズ系触媒の含有量は、特に限定されないが、ポリオールAの100質量部に対して、1.0質量部以下が好ましく、0.005~1.0質量部がより好ましい。
前記スズ系触媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
(整泡剤E)
本発明のポリウレタンフォームの製造に用いる原料組成物Gは、さらに、整泡剤Eを含んでもよい。
整泡剤Eとしては、シリコーン系整泡剤又は含フッ素化合物系整泡剤が挙げられるがこれらに限定されない。
原料組成物Gが整泡剤Eを含むと、良好な気泡を形成できる。
原料組成物G中の整泡剤Eの含有量は、特に限定されないが、ポリオールAの100質量部に対して、0.1~5.0質量部が好ましく、0.3~4.0質量部がより好ましく、0.5~3.0質量部がさらに好ましい。
整泡剤Eは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
(架橋剤F)
本発明のポリウレタンフォームの製造に用いる原料組成物Gは、さらに、架橋剤Fを含んでもよい。架橋剤Fとしては、水酸基、1級アミノ基及び2級アミノ基から選ばれる活性水素含有基を2個以上有する化合物が好ましい。活性水素含有基の数は2~8が好ましい。また、架橋剤の活性水素含有基当たりの分子量は、500未満が好ましい。
【0047】
架橋剤Fとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ビスフェノールA、エチレンジアミン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン、2-クロロ-p-フェニレンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-ジアミノトルエン、1-トリフルオロメチル-3,5-ジアミノベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-クロロ-3,5-ジアミノベンゼン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)メタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、m-キシリレンジアミン、1,4-ジアミノヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びイソホロンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。また、架橋剤Fとして、上述した分子量/水酸基数が500未満のポリオキシアルキレンポリオールも使用できる。
【0048】
原料組成物G中の架橋剤Fの含有量は、特に限定されないが、ポリオールAの100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。 架橋剤Fは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
(添加剤)
本発明のポリウレタンフォームの製造に用いる原料組成物Gは、さらに、添加剤を含んでもよい。
前記添加剤としては、例えば、乳化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤、炭酸カルシウム又は硫酸バリウム等の充填剤、可塑剤、着色剤、難燃剤、抗カビ剤若しくは破泡剤等の公知の各種添加剤又は助剤が挙げられるが、これらに限定されず、従来ポリウレタンフォームに使用されている添加剤を使用できる。
原料組成物G中の前記添加剤等の含有量は、本発明の効果を妨げなければ、特に限定されない。
【0050】
<成型方法>
本発明のポリウレタンフォームの製造方法では、原料組成物Gを密閉の型に注入する成型方法が好ましい。この成型方法としては、例えば、モールド発泡と呼ばれる成型方法が挙げられる。
【0051】
[車両用防音材]
本発明の車両用防音材は、上述したポリウレタンフォームを含む。
車両としては、自動車が好ましい。
本発明のポリウレタンフォームは、薄い厚さで500~2000Hzの低周波数領域の吸音特性が良好なので、車両用防音材として適する。吸音率が良好な周波数はロードノイズの周波数帯のため、フェンダーライナーやアンダーカバー用途、特にフェンダーライナー用途での適用が好適である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、後述する実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
[合成例]
以下の手順に従って、ポリオキシアルキレンポリオールを合成した。
【0054】
<合成例1>
水酸化カリウム触媒の存在下、グリセリンを開始剤として、プロピレンオキシドを開環付加重合させた後、さらにエチレンオキシドを開環付加重合させて、ポリオキシアルキレンポリオールA1を合成した。
【0055】
<合成例2>
上記で得られたポリオキシアルキレンポリオールA1を分散媒とし、アクリロニトリルポリマー微粒子(30質量%)を分散させて、ポリオキシアルキレンポリオールA2を得た。
【0056】
<合成例3>
特開2016-006203号公報の[0021]~[0034]に記載された製造方法によって複合金属シアン化物錯体触媒(以下「DMC触媒」という。)を製造した。
DMC触媒の存在下、グリセリンを開始剤として、プロピレンオキシドを開環付加重合後、KOHを用いてエチレンオキシドを開環付加重合させて、ポリオキシアルキレンポリオールA3を得た。
【0057】
<合成例4>
水酸化カリウム触媒の存在下、グリセリンを開始剤として、プロピレンオキシドを開環付加重合させた後、さらにエチレンオキシドを開環付加重合させて、ポリオキシアルキレンポリオールA4を合成した。
【0058】
<合成例5>
水酸化カリウム触媒の存在下、グリセリンを開始剤として、プロピレンオキシドを開環付加重合させて、ポリオキシアルキレンポリオールA5を合成した。
【0059】
<合成例6>
水酸化カリウム触媒の存在下、グリセリンを開始剤として、プロピレンオキシドを開環付加重合させた後、さらにエチレンオキシドを開環付加重合させて、ポリオキシアルキレンポリオールA6を合成した。
ポリオキシアルキレンポリオールA1~A6の数平均分子量、1分子当たりの水酸基数、水酸基当たりの分子量、EO含有量は、それぞれ、表1に示すとおりである。
【0060】
【0061】
表1中、EO含有量は、ポリオキシアルキレンポリオールのポリオキシアルキレン鎖中の、エチレンオキシドに由来する単位の含有量(質量%)をいう。また、PO含有量は、ポリオキシアルキレンポリオールのポリオキシアルキレン鎖中の、プロピレンオキシドに由来する単位の含有量(質量%)をいう。
【0062】
[例1]
縦、横150mm、高さ10mmのアルミニウム製金型を準備した。
表2に示すとおり、ポリオキシアルキレンポリオールA1の60質量部、ポリオキシアルキレンポリオールA2の40質量部と、発泡剤C1の3質量部と、触媒D1の0.3質量部及び触媒D2の0.05質量部と、整泡剤E2の3質量部と架橋剤F1の3部とを、容器に入れ、高速ミキサーを用いて、3000rpmで30秒間混合した。有機ポリイソシアネート化合物以外の原料を含む混合物(以下「ポリオールシステム液1」という。)を得た。
ポリオールシステム液1に、有機ポリイソシアネート化合物B2の39.4質量部を加え、高速ミキサー(前記)を用いて、3000rpmで5秒間混合した。原料組成物(以下「原料組成物1」という。)を得た。
予め準備しておいた金型の上下型温度を60℃に加温してから、原料組成物1を投入し、発泡硬化させた。3分後、金型から硬化物を取り出し、押しつぶしてガス抜きを行い、軟質ポリウレタンフォーム(以下「ポリウレタンフォーム1」という。)を得た。
ポリオールシステム液1、原料組成物1及びポリウレタンフォーム1の製造は、いずれも、室温・液温ともに25℃の環境下で行った。
【0063】
[例2]
発泡剤C1の添加量を1部に変更、触媒D2を使用しない点を除いて、例1と同様にして、有機ポリイソシアネート化合物以外の原料を含む混合物(以下「ポリオールシステム液2」という。)を得た。例1と同様にして、有機ポリイソシアネート化合物B2の18.5質量部を加えて原料組成物(以下「原料組成物2」という。)を得た。原料組成物2を用いた以外は例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォーム(以下「ポリウレタンフォーム2」という。)を得た。
【0064】
[例3]
発泡剤C1の添加量を5部に変更した点を除いて、例2と同様にして、有機ポリイソシアネート化合物以外の原料を含む混合物(以下「ポリオールシステム液3」という。)を得た。例2と同様にして、有機ポリイソシアネート化合物B2の60.2質量部を加えて原料組成物(以下「原料組成物3」という。)を得た。原料組成物3を用いた以外は例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォーム(以下「ポリウレタンフォーム3」という。)を得た。
【0065】
[例4]
表2に示すとおり、ポリオキシアルキレンポリオールA3の8質量部、ポリオキシアルキレンポリオールA4の3質量部、ポリオキシアルキレンポリオールA5の72質量部、ポリオキシアルキレンポリオールA6の20質量部と、発泡剤C1の2.35質量部と、触媒D1の0.6質量部,触媒D3の0.3質量部と、触媒D4の0.3質量部と整泡剤E1の0.4質量部とを、容器に入れ、高速ミキサーを用いて、3000rpmで30秒間混合した。有機ポリイソシアネート化合物以外の原料を含む混合物(以下「ポリオールシステム液4」という。)を得た。
ポリオールシステム液4に、有機ポリイソシアネート化合物B1の29.9質量部を加え、高速ミキサー(前記)を用いて、3000rpmで5秒間混合した。原料組成物(以下「原料組成物4という。)を得た。原料組成物4を用いた以外は例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォーム(以下「ポリウレタンフォーム4」という。)を得た。
ポリウレタンフォーム1~4を、温度23℃で、湿度50%RHに調節した室内に24時間以上放置した。
【0066】
【0067】
表2中の記号の意味は以下のとおりである。
A:ポリオキシアルキレンポリオール
・A1 合成例1で合成したポリオキシアルキレンポリオールA1
・A2 合成例2で合成したポリオキシアルキレンポリオールA2
・A3 合成例3で合成したポリオキシアルキレンポリオールA3
・A4 合成例4で合成したポリオキシアルキレンポリオールA4
・A5 合成例5で合成したポリオキシアルキレンポリオールA5
・A6 合成例6で合成したポリオキシアルキレンポリオールA6
【0068】
B:有機ポリイソシアネート化合物
・B1 TDIとMDIとの混合物(コロネート1025、東ソー社製)
2,4-TDIと2,6-TDIとクルードMDIの質量比が2,4-TDI/2,6-TDI/クルードMDI=40/10/50の混合物
イソシアネート基含有率39.7質量%
・B2 TDIとMDIとの混合物(コロネート1021、東ソー社製)
2,4-TDIと2,6-TDIとクルードMDIの質量比が2,4-TDI/2,6-TDI/クルードMDI=64/16/20の混合物
イソシアネート基含有率44.8質量%
【0069】
C:発泡剤
・C1 水
【0070】
D:触媒
・D1 トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液(TEDA(登録商標) L-33、東ソー社製) アミン系触媒
・D2 2-エチルヘキサン酸スズ(DABCO(登録商標) T-9、EVONIK社製)
・D3 ビス[(2-ジメチルアミノ)エチル]エーテルのジプロピレングリコール溶液(TOYOCAT(登録商標) ET、東ソー社製)
・D4 1-イソブチル-2-メチルイミダゾール(NC-IM、三共エアプロダクツ社製)
【0071】
E:整泡剤
・E1 シリコーン系整泡剤(SRX-274C、ダウコーニング社製)
・E2 シリコーン系整泡剤(TEGOSTAB(登録商標) B8737 LF2、EVONIK社製)
【0072】
F:架橋剤
・F1 架橋剤(分子量400、官能基数4、EO含有率100質量%のポリオール) ただし、F1のEO含有率100質量%は、ポリオキシアルキレン鎖中アルキレンオキシドに由来する単位中、エチレンオキシドに由来する単位が、100質量%であることを表す。
【0073】
[評価方法]
例1~4で得られたポリウレタンフォーム1~4を、鋭利な刃物を用いて切断し、測定用サンプルを準備した。この測定用サンプルの任意の5か所の厚さを、ダイヤルシックネスゲージ式膜厚測定計(尾崎製作所社製、型式:G)で測定し、平均値を算出して得た厚さは10mmであった。この測定用サンプルを用い、吸音率、密度、残膜率、平均セル径、平均骨格径、平均骨格径を平均セル径で除した値、骨格率(表皮層骨格率SS、内部発泡層骨格率SI、SS/SI、表皮層直下骨格率)及び表皮層厚さを、以下に記載する方法によって評価し、結果を表3に示した。
【0074】
【0075】
<吸音率>
垂直入射吸音率(吸音率)は、JIS A 1405-2:2007「音響管による吸音率及びインピーダンス測定」に準拠した方法により、500~2000Hz領域について測定した。測定に用いた装置は以下のとおりである。
・垂直入射吸音測定管(40mmφ、日本音響エンジニアリング社製)
・解析ソフトウェア(WinZacMTX VER.5.0、日本音響エンジニアリング社製)
・パワーアンプ(AP15d、FOSTEX社製)
・マイクロホン(46BD、GRAS社製)
・マイクロホンアンプ(12AQ、GRAS社製)
・オーディオインターフェース(Fireface UC、RME社製)
【0076】
<密度>
密度は、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に従って測定した。密度の測定はポリウレタンフォーム全体に対して行った。
【0077】
<残膜率>
測定用サンプルの断面を、光学顕微鏡1(VHX-1000、キーエンス社製)を用いて、倍率150倍で撮像した。内部発泡層のうち、全周にわたりセル骨格を確認でき、かつ明確な周辺骨格部の破壊がない部分を観察対象とした。
観察対象のセル骨格の内周部に破損が無い膜が存在しているものを「残膜あり」と判定した。
観察対象のセル骨格の内周部に膜が無いが、又は膜が一部でも破れているものを「残膜なし」と判定した。
測定用サンプルの断面を10か所撮像し、100個のセル骨格を観察して、「残膜あり」及び「残膜なし」の数をカウントし、「残膜あり」の割合を百分率で算出した。算出した百分率を、残膜率とした。
【0078】
<平均骨格径>
測定用サンプルの断面を、光学顕微鏡1を用いて、倍率150倍で撮像した。内部発泡層のうち、骨格部とセル部及び膜部との境界が明瞭に観察できる部分を観察対象とした。 観察対象とした骨格部の平均骨格径を、画像処理ソフトウェア(ImageJ、アメリカ国立衛生研究所製)を用いて計測した。形状がくびれている骨格は、最も径の細い部分をその骨格部分の骨格径とした。
測定用サンプルの断面を10か所撮像し、70個の観察対象の骨格径を測定して、その算術平均により、平均骨格径を算出した。
【0079】
<平均セル径>
測定用サンプルの断面を、光学顕微鏡1を用いて、倍率150倍で撮像した。内部発泡層のうち、全周にわたりセル骨格を確認できる部分を観察対象とした。
観察対象としたセル内周部の輪郭を、画像処理ソフトウェア(ImageJ、アメリカ国立衛生研究所製)を用いて抽出し、その輪郭で囲まれる面積を算出した。算出した面積と等しい面積の円の直径(円換算直径)を算出し、観察対象としたセルのセル径と定義した。
測定用サンプルの断面を10か所撮像し、80個の観察対象のセル径を測定して、その算術平均により、平均セル径を算出した。
【0080】
<平均骨格径/平均セル径>
上述した方法により求めた平均骨格径及び平均セル径より、平均骨格径を平均セル径で除した値を算出した。
【0081】
<骨格率>
測定用サンプルの断面を、光学顕微鏡1を用いて撮像した。ついで、画像処理ソフトウェア(ImageJ、アメリカ国立衛生研究所製)を用いて、撮像した画像を2.5mm×3.5mmの領域に切り出した。
切り出した画像に対し、判別分析法(大津の二値化)により二値化処理を行った。
上記二値化画像において、0.02mm×3.5mmの領域毎に黒部の面積率を算出し、0.02mmずつサンプル厚さ方向に解析領域を走査しながら各位置での面積率を求め、サンプル厚さ方向の骨格率の分布(骨格率プロファイル)を算出した。
測定用サンプルの断面を5か所以上撮像し、各画像から求めた骨格率プロファイルの算術平均により、骨格率を算出した。
【0082】
<表皮層骨格率SS>
ポリウレタンフォームの表面からの深さが0.3mmの部分において測定した骨格率プロファイルの算術平均により、表皮層骨格率SSを算出した。
【0083】
<内部発泡層骨格率SI>
ポリウレタンフォームの表面からの深さが3.5~4.5mmの部分において測定した骨格率プロファイルの算術平均により、内部発泡層骨格率SIを算出した。
【0084】
<SS/SI>
上述した方法により求めた表皮層骨格率SSと内部発泡層骨格率SIより、表皮層骨格率SSを内部発泡層骨格率SIで除した値を算出した。
【0085】
<表皮層厚さ>
上述した方法により求めた骨格率プロファイルにおいて、サンプル表面から、0.02mmずつサンプル厚さ方向に解析領域を走査しながら骨格率が50%を下回る部分までの厚さを算出し、表皮層厚さとした。
【0086】
[結果の説明]
例1が実施例に該当し、例2~4が比較例に該当する。
例1のポリウレタンフォームは、残膜率が特定範囲内であり、1000Hzの低周波数の吸音特性だけではなく、低周波数領域の吸音性能にも優れることがわかる。また、例1のポリウレタンフォームは、薄くても吸音性能が高いため、軽量化や、薄膜化を要する部位に導入することで、高い吸音環境を達成できる。
例2のポリウレタンフォームは例1のポリウレタンフォームと比べて、密度が高いにもかかわらず、SS/SIが本発明の範囲を満たさず、さらに残膜率も高いため、十分な吸音特性が得られなかった。
例3のポリウレタンフォームは、SS/SIが本発明の範囲を満たさず、さらに、例1のポリウレタンフォームと比べて密度が低く、残膜率も低いため、低周波数領域での吸音特性が不十分であった。
例4のポリウレタンフォームは、例1のポリウレタンフォームと比べて、密度が高いにもかかわらず、SS/SIが本発明の範囲外であるため、十分な吸音特性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のポリウレタンフォームは、薄い厚さで500~2000Hzの低周波数領域の吸音特性が良好なので、車両用防音材として適する。吸音率が良好な周波数はロードノイズの周波数帯のため、フェンダーライナーやアンダーカバー用途、特にフェンダーライナー用途での適用が好適である。
なお、2019年12月26日に出願された日本特許出願2019-236123号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。