(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241210BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241210BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241210BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B27/01
B60J1/00 G
B60R11/02 Z
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2021571235
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2021001091
(87)【国際公開番号】W WO2021145387
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2020004523
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】定金 駿介
(72)【発明者】
【氏名】西澤 佑介
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/190959(WO,A1)
【文献】特開2019-182738(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077688(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/133187(WO,A1)
【文献】特開2019-164239(JP,A)
【文献】特開2018-162044(JP,A)
【文献】特開2017-105665(JP,A)
【文献】特開2007-223883(JP,A)
【文献】国際公開第2006/035587(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361579(US,A1)
【文献】国際公開第2016/181740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60J 1/00
B60R 11/02
B60K 35/23
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせガラスの車外側に虚像を表示する車両用のヘッドアップディスプレイシステムであって、
車内側の面と車外側の面とを有する合わせガラスと、
前記合わせガラスにP偏光の可視光を出射する光源と、
前記合わせガラスの前記P偏光の可視光が入射する領域に少なくとも有するP偏光反射部材と、を備え、
前記合わせガラスの車内側の面への前記P偏光の可視光の入射角は、42deg以上72deg以下であり、
前記P偏光の可視光の入射角が57degの場合における前記P偏光の可視光反射率は5%以上であり、
前記虚像は、前記合わせガラスに前記P偏光の可視光を入射させた際に分離して見える像のうち、最も高い輝度で観測される主像と、前記主像より低い輝度で観測される副像と、を含み、
前記P偏光の可視光の入射角の全範囲内で、前記主像の反射率に対する前記副像の反射率の割合は30%以下であ
り、
前記P偏光反射部材はP偏光反射コートであって、前記合わせガラスのa*_Rout-a*R55の絶対値が10以下であり、かつ前記合わせガラスのb*_Rout-b*R55の絶対値が10以下である、ヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項2】
前記主像の反射率に対する前記副像の反射率の割合は、25%以下である請求項1に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項3】
前記合わせガラスは、前記入射角が57degの場合の前記P偏光の可視光反射率が10%以上である請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項4】
前記合わせガラスは、前記入射角が57degの場合の前記P偏光の可視光反射率が25%以下である請求項1乃至3の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項5】
前記入射角は、47deg以上67deg以下である請求項1乃至4の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項6】
前記P偏光反射部材は、前記合わせガラスの車内側の面に配置されている請求項1乃至5の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項7】
前記ヘッドアップディスプレイシステムは、前記光源と前記合わせガラスとの間の光路上に配置された凹面鏡を有し、
前記凹面鏡の最小半径が100mm以上700mm以下である請求項1乃至6の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項8】
SAE J1757-2(2018)に基づくアイボックスの中心から前記虚像の焦点位置までの距離が、3000mm以上である請求項7に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項9】
前記凹面鏡の最小半径は、100mm以上600mm以下である請求項7又は8に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項10】
前記合わせガラスは、ガラス板(車内側)とガラス板(車外側)と中間膜とを有し、前記ガラス板(車内側)の楔角は0mradよりも大きく1.0mrad以下であり、前記中間膜の楔角は0mradよりも大きく1.0mrad以下である請求項1乃至9の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項11】
前記P偏光反射部材はP偏光反射コートであって、前記P偏光反射コートは、少なくとも1つの高屈折率材料層と少なくとも1つの低屈折率材料層を含む請求項1乃至10の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項12】
前記合わせガラスは、車内側ガラス板と、車外側ガラス板と、前記車内側ガラス板と前記車外側ガラス板を接合する中間膜と、を有し、
前記合わせガラスにおいて、前記車内側ガラス板、前記車外側ガラス板、前記中間膜のうち、前記P偏光反射部材よりも車外側に位置する部材の少なくとも1つは、前記合わせガラスを車両に取り付けた状態で前記合わせガラスの下辺側から上辺側に向かうにつれて板厚が厚くなる断面楔形状の領域を備えている請求項1乃至
11の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項13】
前記P偏光反射部材は、前記車内側ガラス板と前記車外側ガラス板との間に前記中間膜に接して配置され、
前記合わせガラスにおいて、前記P偏光反射部材よりも車外側に位置する前記車内側ガラス板及び/又は前記中間膜、並びに、前記P偏光反射部材よりも車内側に位置する前記車内側ガラス板及び/又は前記中間膜は、前記断面楔形状の領域を備えている請求項
12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項14】
前記P偏光反射部材は、前記車内側ガラス板の車内側に面に配置され、
前記合わせガラスにおいて、前記車内側ガラス板、前記車外側ガラス板、前記中間膜のうちの少なくとも1つは、前記断面楔形状の領域を備えている請求項
12に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項15】
前記P偏光反射部材よりも車外側に位置する部材の楔角の合計、及び/又は、前記P偏光反射部材よりも車内側に位置する部材の楔角の合計は、0mradよりも大きく1.0mrad以下である請求項
12乃至
14の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項16】
前記合わせガラスは、前記断面楔形状の複数の部材を有し、前記複数の部材の楔角の合計が1.2mrad以下である請求項
12乃至
15の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項17】
前記主像と前記副像との分離量は、1mrad以下である請求項
12乃至
16の何れか一項に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のフロントガラスに画像を反射させて運転者の視界に所定の情報を表示するヘッドアップディスプレイ(以下、HUDとも言う。)の導入が進んでいる。HUDにおける課題の一つはHUD像の視認性の向上であり、そのために二重像や三重像を低減する試みがなされている。
【0003】
一例として、合わせガラスにP偏光を反射するコートやフィルムからなるP偏光反射部材を付与し、合わせガラスにP偏光を入射することで、二重像や三重像を抑えつつ、主にP偏光反射部材のみの反射でHUD像を鮮明に投影させる技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、合わせガラスにP偏光を入射する際の入射角がある範囲を外れると、合わせガラスの車外側の面や車内側の面での反射が増え、二重像や三重像等の副像が目立ってしまいHUD像の視認性が低下する。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、P偏光の可視光を車内側から合わせガラスに入射する車両用のヘッドアップディスプレイシステムにおいて、HUD像の視認性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本ヘッドアップディスプレイシステムは、合わせガラスの車外側に虚像を表示する車両用のヘッドアップディスプレイシステムであって、車内側の面と車外側の面とを有する合わせガラスと、前記合わせガラスにP偏光の可視光を出射する光源と、前記合わせガラスの前記P偏光の可視光が入射する領域に少なくとも有するP偏光反射部材と、を備え、前記合わせガラスの車内側の面への前記P偏光の可視光の入射角は、42deg以上72deg以下であり、前記P偏光の可視光の入射角が57degの場合における前記P偏光の可視光反射率は5%以上であり、前記虚像は、前記合わせガラスに前記P偏光の可視光を入射させた際に分離して見える像のうち、最も高い輝度で観測される主像と、前記主像より低い輝度で観測される副像と、を含み、前記P偏光の可視光の入射角の全範囲内で、前記主像の反射率に対する前記副像の反射率の割合は30%以下であり、前記P偏光反射部材はP偏光反射コートであって、前記合わせガラスのa*_Rout-a*R55の絶対値が10以下であり、かつ前記合わせガラスのb*_Rout-b*R55の絶対値が10以下である。
【発明の効果】
【0008】
開示の一実施態様によれば、P偏光の可視光を車内側から合わせガラスに入射する車両用のヘッドアップディスプレイシステムにおいて、HUD像の視認性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るHUDシステムを例示する模式図である。
【
図2A】第1実施形態に係る合わせガラスを例示する平面図である。
【
図3A】副像について説明する合わせガラスの部分拡大断面図(その1)である。
【
図3B】副像について説明する合わせガラスの部分拡大断面図であって、
図3Aに示す場合の入射角からずれる場合である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るHUDシステムを例示する模式図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る合わせガラスを例示する部分拡大断面図(その1)である。
【
図6】副像について説明する合わせガラスの部分拡大断面図(その2)である。
【
図7】第3実施形態に係る合わせガラスを例示する部分拡大断面図(その2)である。
【
図8】第1実施形態の変形例1に係る合わせガラスを例示する断面図(その1)である。
【
図9】第1実施形態の変形例1に係る合わせガラスを例示する部分拡大断面図(その2)である。
【
図10】第1実施形態の変形例1に係る合わせガラスを例示する部分拡大断面図(その3)である。
【
図11】第1実施形態の変形例1に係る合わせガラスを例示する部分拡大断面図(その4)である。
【
図12】第1実施形態の変形例1に係る合わせガラスを例示する部分拡大断面図(その5)である。
【
図14】例8-1乃至8-3及び比較例1の光学パラメータについて説明する表である。
【
図15】例8-1乃至8-3及び比較例1の他の光学パラメータについて説明する表である。
【
図16】例8-4及び8-5の光学パラメータについて説明する表である。
【
図17】例8-4及び8-5の他の光学パラメータについて説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。又、各図面において、本発明の内容を理解しやすいように、大きさや形状を一部誇張している場合がある。
【0011】
なお、車両とは、代表的には自動車であるが、電車、船舶、航空機等を含む、合わせガラスを有する移動体を指すものとする。
【0012】
又、平面視とは合わせガラスの所定領域を合わせガラスの車内側の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは合わせガラスの所定領域を合わせガラスの車内側の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
〈第1実施形態〉
[HUDシステム]
図1は、第1実施形態に係るHUDシステムを例示する模式図である。
図1に示すHUDシステム1は、合わせガラス10と、光源50と、第1光学系60と、画像表示素子70と、第2光学系80と、凹面鏡90とを有する。HUDシステム1は、合わせガラス10の車外側に虚像を表示する車両用のヘッドアップディスプレイシステムである。なお、HUDシステム1において、第1光学系60及び第2光学系80は、必要に応じて設ければよい。
【0014】
合わせガラス10は、例えば、車両用のウィンドシールドであり、P偏光の可視光が車内側から入射する。合わせガラス10は、P偏光の可視光が入射する領域にP偏光反射部材の一種であるP偏光反射フィルム15を備えている。
【0015】
光源50は、P偏光の可視光を出射する光源であり、例えば、発光ダイオードやレーザ等である。光源50は、S偏光をP偏光に変換する偏光板やレンズ等の光学部品を含んでもよい。光源50は、例えば、赤色光源、緑色光源、及び青色光源の3つの光源により構成される。
【0016】
第1光学系60は、例えば、複数の光源から出射された光を合成するプリズムやレンズ等から構成される。画像表示素子70は、中間像を生成する素子であり、例えば、液晶表示素子や有機発光素子等である。第2光学系80は、例えば、レンズや反射ミラー等により構成される。凹面鏡90は、中間像を所定の曲率を有する反射面で反射する光学部品であり、光源50と合わせガラス10との間の光路上に配置される光学部品の中で、合わせガラス10に最も近い位置に配置されている。
【0017】
HUDシステム1において、光源50から出射された光は第1光学系60を経由して画像表示素子70に至り、画像表示素子70に中間像が形成される。画像表示素子70で形成された中間像は、第2光学系80及び凹面鏡90を経由することで拡大され、合わせガラス10に投射される。合わせガラス10に投射された中間像は、主に合わせガラス10のP偏光反射フィルム15に反射されて搭乗者の視点位置Pに導かれ、搭乗者は合わせガラス10の前方に中間像を虚像V(HUD像)して認識する。搭乗者は、例えば、車両の運転者である。
【0018】
なお、HUDシステム1は、少なくとも合わせガラス10と、光源50と、凹面鏡90とを有していれば、その他の構成は任意として構わない。HUDシステム1は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等からなる光走査部によりレーザ光を走査するレーザ走査方式等であってもよい。
【0019】
[合わせガラス]
図2A及びBは、第1実施形態に係る合わせガラスを例示する図であり、
図2Aは合わせガラスを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した平面図、
図2Bは
図2AのA-A線に沿う部分拡大断面図である。
【0020】
図2A及びBに示すように、合わせガラス10は、ガラス板(車内側)11と、ガラス板(車外側)12と、中間膜13と、遮蔽層14と、P偏光反射フィルム15と、接着層16とを有する車両用の合わせガラスである。
【0021】
合わせガラス10は、例えば、車両に取り付けたときの垂直方向及び水平方向の両方に湾曲した複曲形状であるが、垂直方向のみに湾曲した単曲形状や水平方向のみに湾曲した単曲形状であってもよい。合わせガラス10が湾曲している場合、車外側に向けて凸となるように湾曲していることが好ましい。
【0022】
合わせガラス10が湾曲している場合、曲率半径は1000mm以上100000mm以下であることが好ましい。ガラス板11とガラス板12の曲率半径は同じでもよいし、異なっていてもよい。ガラス板11とガラス板12の曲率半径が異なっている場合は、ガラス板11の曲率半径の方がガラス板12の曲率半径よりも小さい。
【0023】
ガラス板11とガラス板12は互いに対向する一対のガラス板であり、中間膜13、P偏光反射フィルム15、及び接着層16は一対のガラス板の間に位置している。ガラス板11とガラス板12とは、中間膜13、P偏光反射フィルム15、及び接着層16を挟持した状態で固着されている。
【0024】
中間膜13は、ガラス板11とガラス板12を接合する膜である。中間膜13の外周はエッジ処理されていることが好ましい。すなわち、中間膜13の端部(エッジ)は、ガラス板11及び12の端部(エッジ)から大きく飛び出さないように処理されていることが好ましい。中間膜13の端部のガラス板11及び12の端部からの飛びだし量が150μm以下であると、外観を損なわない点で好適である。
【0025】
遮蔽層14は、不透明な層であり、例えば、合わせガラス10の周縁部に沿って帯状に設けることができる。遮蔽層14は、例えば、不透明な(例えば、黒色の)着色セラミック層である。遮蔽層14は、遮光性を持つ着色中間膜や着色フィルム、着色中間膜と着色セラミック層の組み合わせであってもよい。着色フィルムは赤外線反射フィルム等と一体化されていてもよい。
【0026】
合わせガラス10に不透明な遮蔽層14が存在することで、合わせガラス10の周縁部を車体に保持するウレタン等の樹脂からなる接着剤が紫外線により劣化することを抑制できる。
【0027】
遮蔽層14は、例えば、黒色顔料を含有する溶融性ガラスフリットを含むセラミックカラーペーストをガラス板上にスクリーン印刷等により塗布し、焼成することで形成できるが、これには限定されない。遮蔽層14は、例えば、黒色又は濃色顔料を含有する有機インクをガラス板上にスクリーン印刷等により塗布し、乾燥させて形成してもよい。
【0028】
合わせガラス10において、平面視で遮蔽層14に囲まれた領域は透視領域であり、透視領域にはHUDで使用するHUD表示領域R(点線で示す領域)が画定されている。なお、HUD表示領域Rは1か所には限定されず、例えば、透視領域において垂直方向の複数個所に分けて配置されてもよいし、水平方向の複数個所に分けて配置されてもよい。
【0029】
HUD表示領域Rは、車内からの投影像を反射して情報を表示する表示領域である。HUD表示領域Rは、SAE J1757-2(2018)に基づくアイボックスにおいて、車内に配置された凹面鏡90を回転させる、もしくは第1光学系60や第2光学系80によってHUD表示位置を移動させた際に、凹面鏡90からの光が合わせガラス10に照射される範囲とする。又、本願明細書において、透視領域とはJIS R3211で定められる試験領域Cの領域を指す。
【0030】
HUD表示領域Rは、例えば、合わせガラス10の下方に位置している。HUD表示領域R及びその近傍領域にはP偏光反射フィルム15が配置されている。本実施形態では、P偏光反射フィルム15は、接着層16を介してガラス板11の車外側の面に貼付されている。P偏光反射フィルム15は、例えば、HUD表示領域Rの全体を含み、外周部が遮蔽層14とオーバーラップするように配置されてもよい。
【0031】
P偏光反射フィルム15は、凹面鏡90から入射するP偏光の可視光を車内側に反射するフィルムである。P偏光反射フィルム15は、可視光に対して透明である。P偏光反射フィルム15としては、例えば、屈折率の異なる2種類以上の高分子からなる高分子多層膜からなる複屈折干渉型の偏光子や、ワイヤーグリッド型と呼ばれる微細な凹凸構造を有する偏光子、コレステリック液晶層からなる偏光子を含むフィルム等を採用できる。
【0032】
P偏光反射フィルム15の厚みは、25μm以上200μm以下であることが好ましい。P偏光反射フィルム15の厚みは、150μm以下とすることがより好ましく、100μm以下とすることが更に好ましい。P偏光反射フィルム15の厚みを200μm以下とすることで、合わせガラス作製時の脱気性が良くなり、150μm以下とすることで脱気性が更に良くなり、100μm以下とすることで脱気性が特に良くなる。P偏光反射フィルム15の厚みを25μm以上とすることで、合わせガラス作製時の作業性がよくなる。
【0033】
P偏光反射フィルム15の取り付け位置は、
図2Bにおいて、ガラス板11の車外側となる面であることが反射効率の点で好ましい。なお、以下の説明において、4面とはガラス板11の車内側の面、3面とはガラス板11の車外側の面、2面とはガラス板12の車内側の面、1面とはガラス板12の車外側の面である。
【0034】
接着層16の材料は、P偏光反射フィルム15を固着する機能を有していれば特に限定されないが、例えば、アクリル系、アクリレート系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、ポリオレフィン系、変性オレフィン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアルコール系、塩化ビニル系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスチレン系、ポリビニルブチラール系の材料が挙げられる。接着層16の材料は、可視光に対して透明である。
【0035】
接着層16の厚みは、0.2μm以上70μm以下であることが好ましい。接着層16の厚みを0.2μm以上とすることで、合わせガラス作製時の圧着の際に、接着層16がガラス板11とP偏光反射フィルム15との熱収縮率差を緩和する。そのため、P偏光反射フィルム15の車内側及び車外側の面の平滑性が維持され、HUD像の歪を低減できる。又、接着層16の厚みを0.2μm以上とすることで、合わせガラスを高温高湿の環境下に繰り返し置いた際の接着層16のエッジ劣化を抑制できる。
【0036】
又、接着層16の厚みを70μm以下とすることで、P偏光反射フィルム15の車内側及び車外側の面がガラス板11の車外側の平滑面に追従するため、P偏光反射フィルム15の車内側及び車外側の面の平滑性が維持され、HUD像の歪を低減できる。特に、凹面鏡90で拡大した画像を曲面の合わせガラス10で更に拡大させて反射させる構成では、P偏光反射フィルム15の車内側及び車外側の面の僅かなうねりがHUD像に大きな歪を生じさせる。そのため、P偏光反射フィルム15の車内側及び車外側の面の平滑性を向上することが極めて重要である。接着層16の厚みを70μm以下とすることで、凹面鏡90で拡大した画像を曲面の合わせガラスで更に拡大させて反射させる際にも、HUD像の歪を低減できる。
【0037】
HUD像のFOV(Field Of View:視野角)が4deg×1deg以上の場合、合わせガラス10に従来よりも大きなHUD像を投影することになりP偏光反射フィルム15がうねりやすくなる。そのため、接着層16の厚みを制御してHUD像の歪を低減する意義が大きくなる。HUD像のFOVが5deg×1.5deg以上、6deg×2deg以上、7deg×3deg以上となるにつれ、合わせガラス10に従来よりもいっそう大きなHUD像を投影することになり、P偏光反射フィルム15のうねりによるHUD像の歪が目立ちやすくなる。そのため、接着層16の厚みを制御してHUD像の歪を低減する意義がいっそう大きくなる。
【0038】
車両に取り付けた状態で、合わせガラス10のHUD表示領域Rにおいて、水平方向の曲率は半径1000mm以上100000mm以下であることが好ましい。又、車両に取り付けた状態で、合わせガラス10のHUD表示領域Rにおいて、垂直方向の曲率は半径4000mm以上20000mm以下であることが好ましく、半径6000mm以上20000mm以下であることがより好ましい。垂直方向及び水平方向の曲率が上記の範囲内であれば、P偏光反射フィルム15に投影したHUD像の歪を低減できる。半径が小さいとフィルムにしわが入りやすくなってしまう。
【0039】
HUDシステム1では、P偏光反射フィルム15が配置された領域において、合わせガラス10の車内側の面に入射するP偏光の可視光の入射角θ(
図1参照)が57deg(ブリュースター角)となるように、凹面鏡90の角度等が調整されている。
【0040】
入射角θが57degの場合は、
図3Aに示すように、凹面鏡90から合わせガラス10の車内側の面101(ガラス板11の車内側の面)に入射するP偏光の可視光Laは、P偏光反射フィルム15で反射される主像反射光Mのみとなる。
【0041】
しかし、入射角θが57degからずれると、
図3Bに示すように、凹面鏡90から合わせガラス10の車内側の面101に入射するP偏光の可視光は、P偏光反射フィルム15、合わせガラス10の車内側の面101、及び合わせガラス10の車外側の面102(ガラス板12の車外側の面)の3カ所で反射される。
図3Bにおいて、主像反射光Mは、凹面鏡からの光LaがP偏光反射フィルム15で反射された光である。又、第1副像反射光Saは、凹面鏡からの光Lbが合わせガラス10の車内側の面101で反射された光、第2副像反射光Sbは、凹面鏡からの光Lcが合わせガラス10の車外側の面102で反射された光である。そのため、合わせガラス10にP偏光の可視光を入射させた際に、虚像が分離して見えてしまう場合がある。この分離して見える像(二つに分離する場合は二重像、三つに分離する場合は三重像)のうち、最も高い輝度で観測される像が主像であり、主像より低い輝度で観測される像が副像である。虚像が二つに分離する場合の副像を二重像、虚像が三つに分離する場合の副像を三重像と呼ぶ。
【0042】
実際には、合わせガラス10の曲面形状や凹面鏡90の位置等により、入射角θが57degからずれる場合があるが、本実施形態では、入射角θの範囲は42deg以上72deg以下(57deg±15deg)に抑えられている。この場合、
図3Bの状態となるため三重像が発生するが、本実施形態では副像反射率/主像反射率(主像反射率に対する副像反射率の割合)を30%以下とすることで、三重像が目立たないようにしている。
【0043】
図3Bにおいて、P偏光反射フィルム15で反射される光を主像反射光M、合わせガラス10の車内側の面101で反射される光を第1副像反射光Sa、合わせガラス10の車外側の面102で反射される光を第2副像反射光Sbとする。このとき、副像反射率/主像反射率とは、第1副像反射光Saの可視光Lbに対する強度/主像反射光Mの可視光Laに対する強度、及び第2副像反射光Sbの可視光Lcに対する強度/主像反射光Mの可視光Laに対する強度である。
副像反射率/主像反射率=(Sa/Lb)/(M/La)
副像反射率/主像反射率=(Sb/Lc)/(M/La)
【0044】
第1副像反射光Saの可視光Lbに対する強度/主像反射光Mの可視光Laに対する強度、及び第2副像反射光Sbの可視光Lcに対する強度/主像反射光Mの可視光Laに対する強度を直接測定することは困難であるため、本実施形態では、副像反射率/主像反射率を主像輝度と副像輝度との比として測定する。
【0045】
すなわち、副像反射率/主像反射率は、合わせガラス10に車内側からP偏光を入射させた際の主像輝度(=主反射面で反射する像の輝度)と副像輝度をそれぞれ輝度計で計測した際の、主像輝度に対する副像輝度の割合である。輝度は、SAE J1757-2(2018)に基づいて測定される。ここで、主反射面とは、合わせガラス10に車内側からP偏光を入射させた際に観測される複数の像のうち、最も高い輝度で観測される像が反射する面であり、本実施形態では、P偏光反射フィルム15の車内側の面である。
【0046】
三重像を更に目立たないようにするため、入射角θの範囲は47deg以上67deg以下(57deg±10deg)であることが好ましく、52deg以上62deg以下(57deg±5deg)であることがより好ましい。
【0047】
又、副像反射率/主像反射率は25%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましく、15%以下が更に好ましく、10%以下が更に好ましく、7%以下が更に好ましく、5%以下が特に好ましい。副像反射率/主像反射率が小さくなるほど、主像の輝度が高くなるため、三重像が一層目立たなくなる。
【0048】
合わせガラス10において、入射角θが57degの場合のP偏光の可視光反射率は5%以上である。入射角θが57degの場合のP偏光の可視光反射率が5%以上であれば、主像が十分に明るくなるため、HUD像の視認性が向上する。
【0049】
入射角θが57degの場合のP偏光の可視光反射率は、10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。入射角θが57degの場合のP偏光の可視光反射率が高くなるほど、主像の輝度が更に高くなるため、HUD像の視認性が更に向上する。
【0050】
P偏光反射フィルム15において、入射角θが57degの場合のP偏光の可視光反射率は25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。入射角θが57degの場合のP偏光の可視光反射率が25%以下であると、車両のインストルメントパネル等の内装材の映り込みを抑制でき、20%以下であると映り込みを更に抑制できる。
【0051】
なお、P偏光の可視光反射率とは、所定の入射角において可視波長におけるP偏光を入射光としてJIS R3106に記載された分光反射率を測定し、更にこれを元にJIS R3106に記載された可視光反射率の算定方法に従って算出したものである。
【0052】
ここで、ガラス板11、ガラス板12、及び中間膜13について詳述する。
【0053】
〔ガラス板〕
ガラス板11及び12は、無機ガラスであっても有機ガラスであってもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。合わせガラス10の外側に位置するガラス板12は、耐傷付き性の観点から無機ガラスであることが好ましく、成形性の観点からソーダライムガラスであることが好ましい。ガラス板11及びガラス板12がソーダライムガラスである場合、クリアガラス、鉄成分を所定量以上含むグリーンガラス及びUVカットグリーンガラスが好適に使用できる。
【0054】
無機ガラスは、未強化ガラス、強化ガラスの何れでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。
【0055】
強化ガラスは、例えば風冷強化ガラス等の物理強化ガラス、化学強化ガラスの何れでもよい。物理強化ガラスである場合は、例えば、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させる等、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス表面を強化できる。
【0056】
化学強化ガラスである場合は、例えば、曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化できる。又、紫外線又は赤外線を吸収するガラスを用いてもよく、更に、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板を用いてもよい。
【0057】
一方、有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート、例えばポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の透明樹脂が挙げられる。
【0058】
ガラス板11及び12の形状は、特に矩形状に限定されるものではなく、種々の形状及び曲率に加工された形状であってもよい。ガラス板11及び12の曲げ成形には、重力成形、プレス成形、ローラー成形等が用いられる。ガラス板11及び12の成形法についても特に限定されないが、例えば、無機ガラスの場合はフロート法等により成形されたガラス板が好ましい。
【0059】
ガラス板12の板厚は、最薄部が1.1mm以上3mm以下であることが好ましい。ガラス板12の板厚が1.1mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が十分であり、3mm以下であると、合わせガラス10の質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。ガラス板12の板厚は、最薄部が1.8mm以上2.8mm以下がより好ましく、1.8mm以上2.6mm以下が更に好ましく、1.8mm以上2.2mm以下が更に好ましく、1.8mm以上2.0mm以下が更に好ましい。ガラス板12の板厚が薄くなるほど、主像と副像との分離量が小さくなるため、二重像や三重像が一層目立たなくなる。
【0060】
ガラス板11の板厚は、0.3mm以上2.3mm以下であることが好ましい。ガラス板11の板厚が0.3mm以上であることにより作業性がよく、2.3mm以下であることにより質量が大きくなり過ぎない。又、ガラス板11の板厚は、1.8mm以下がより好ましく、1.6mm以下が更に好ましく、1.3mm以下が更に好ましく、1.0mm以下が更に好ましく、0.7mm以下が更に好ましく、0.5mm以下が特に好ましい。ガラス板11の板厚が薄くなるほど、主像と副像との分離量が小さくなるため、二重像や三重像が一層目立たなくなる。
【0061】
又、ガラス板11及び12は、平板形状であっても湾曲形状であってもよい。しかし、ガラス板11及び12が湾曲形状であり、かつガラス板11の板厚が適切でない場合、ガラス板11及び12として特に曲がりが深いガラスを2枚成形すると、2枚の形状にミスマッチが生じ、圧着後の残留応力等のガラス品質に大きく影響する。
【0062】
しかし、ガラス板11の板厚を0.3mm以上2.3mm以下とすることで、残留応力等のガラス品質を維持できる。ガラス板11の板厚を0.3mm以上2.3mm以下とすることは、曲がりの深いガラスにおけるガラス品質の維持に特に有効である。
【0063】
ガラス板11及び/又は12の外側に撥水、紫外線や赤外線カットの機能を有する被膜や、低反射特性、低放射特性を有する被膜を設けてもよい。又、ガラス板11及び/又は12の中間膜13と接する側に、紫外線や赤外線カット、低放射特性、可視光吸収、着色等の被膜を設けてもよい。
【0064】
ガラス板11及び12が湾曲形状の無機ガラスである場合、ガラス板11及び12は、フロート法による成形の後、中間膜13による接着前に、曲げ成形される。曲げ成形は、ガラスを加熱により軟化させて行われる。曲げ成形時のガラスの加熱温度は、大凡550℃乃至700℃である。
【0065】
〔中間膜〕
中間膜13としては熱可塑性樹脂が多く用いられ、例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂等の従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。又、日本国特許第6065221号に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。
【0066】
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。その他の可塑化樹脂についても同様である。
【0067】
但し、中間膜13にP偏光反射フィルム15等を封入する場合、封入する物の種類によっては特定の可塑剤により劣化することがあり、その場合には、その可塑剤を実質的に含有していない樹脂を用いることが好ましい。つまり、中間膜13が可塑剤を含まないことが好ましい場合がある。可塑剤を含有していない樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂等が挙げられる。
【0068】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(以下、必要に応じて「PVA」と言うこともある)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール系樹脂、PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、必要に応じて「PVB」と言うこともある)等が挙げられ、特に、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、PVBが好適なものとして挙げられる。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
但し、中間膜13を形成する材料は、熱可塑性樹脂には限定されない。又、中間膜13は、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、発光剤等の機能性粒子を含んでもよい。又、中間膜13は、シェードバンドと呼ばれる着色部を有してもよい。着色部を形成するために用いられる着色顔料としては、プラスチック用として使用できるものであって、着色部の可視光線透過率が40%以下となるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、アンスラキノン系、イソインドリノ系などの有機着色顔料や、酸化物、水酸化物、硫化物、クロム酸、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、砒酸塩、フェロシアン化物、炭素、金属粉などの無機着色顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。着色顔料の添加量は、着色部の可視光線透過率が40%以下となるものであるかぎり、目的の色調に合わせて任意で良く、特に限定されるものではない。
【0070】
中間膜13の膜厚は、最薄部で0.5mm以上であることが好ましい。なお、中間膜13が複数層からなる場合、中間膜13の膜厚とは、各層の膜厚を合計した膜厚である。中間膜13の最薄部の膜厚が0.5mm以上であると合わせガラスとして必要な耐衝撃性が十分となる。又、中間膜13の膜厚は、最厚部で3mm以下であることが好ましい。中間膜13の膜厚の最大値が3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎない。中間膜13の膜厚の最大値は2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下が更に好ましい。
【0071】
なお、中間膜13は、2層以上の層を有していてもよい。例えば、中間膜を3層以上から形成し、両側の層を除く何れかの層のせん断弾性率を可塑剤の調整等により両側の層のせん断弾性率よりも小さくすることにより、合わせガラス10の遮音性を向上できる。この場合、両側の層のせん断弾性率は同じでもよいし、異なってもよい。
【0072】
又、中間膜13に含まれる各層は、同一の材料で形成することが望ましいが、各層を異なる材料で形成してもよい。但し、ガラス板11及び12との接着性、或いは合わせガラス10の中に入れ込む機能材料等の観点から、中間膜13の膜厚の50%以上は上記の材料を使うことが望ましい。
【0073】
中間膜13を作製するには、例えば、中間膜となる上記の樹脂材料を適宜選択し、押出機を用い、加熱溶融状態で押し出し成形する。押出機の押出速度等の押出条件は均一となるように設定する。その後、押し出し成形された樹脂膜を、合わせガラスのデザインに合わせて、上辺及び下辺に曲率を持たせるために、例えば必要に応じ伸展することで、中間膜13が完成する。
【0074】
〔合わせガラス〕
合わせガラス10の総厚は、2.8mm以上10mm以下であることが好ましい。合わせガラス10の総厚が2.8mm以上であれば、十分な剛性を確保できる。又、合わせガラス10の総厚が10mm以下であれば、十分な透過率が得られると共にヘイズを低減できる。
【0075】
合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれが1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。ここで、ガラス板11とガラス板12の板ずれとは、すなわち、平面視におけるガラス板11の端部とガラス板12の端部のずれ量である。
【0076】
合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれが1.5mm以下であると、外観を損なわない点で好適である。合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれが1.0mm以下であると、外観を損なわない点で更に好適である。
【0077】
合わせガラス10を製造するには、ガラス板11の車外側の面に接着層16を介してP偏光反射フィルム15を貼り付けた後、ガラス板11とガラス板12との間に、中間膜13を挟んで積層体とする。そして、例えば、この積層体をゴム袋やラバーチャンバー、樹脂製の袋等の中に入れ、-65乃至-100kPaの真空中で温度約70乃至110℃で接着する。加熱条件、温度条件、及び積層方法は、P偏光反射フィルム15の性質に配慮して、例えば、積層中に劣化しないように適宜選択される。
【0078】
更に、例えば100乃至150℃、圧力0.6乃至1.3MPaの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、より耐久性の優れた合わせガラス10を得られる。但し、場合によっては工程の簡略化、並びに合わせガラス10中に封入する材料の特性を考慮して、この加熱加圧工程を使用しない場合もある。
【0079】
つまり、ガラス板11又はガラス板12のうち、何れか一方、又は両方のガラス板が互いに弾性変形した状態で接合されている、「コールドベンド」と呼ばれる方法を使用してもよい。コールドベンドは、テープ等の仮止め手段によって固定されたガラス板11(P偏光反射フィルム15が貼り付けられている)、ガラス板12、及び中間膜13からなる積層体と、従来公知であるニップローラー又はゴム袋、ラバーチャンバー等の予備圧着装置及びオートクレーブを用いることで達成できる。
【0080】
ガラス板11とガラス板12との間に、本願の効果を損なわない範囲で、中間膜13及びP偏光反射フィルム15の他に、電熱線、赤外線反射、発光、発電、調光、タッチパネル、可視光反射、散乱、加飾、吸収等の機能を持つフィルムやデバイスを有してもよい。又、合わせガラス10の表面に防曇、撥水、遮熱、低反射等の機能を有する膜を有していてもよい。又、ガラス板11の車外側の面やガラス板12の車内側の面に遮熱、発熱等の機能を有する膜を有していてもよい。
【0081】
このように、HUDシステム1では、合わせガラス10はP偏光の可視光が入射する領域にP偏光反射フィルム15を備え、合わせガラス10の車内側の面へのP偏光の可視光の入射角θは42deg以上72deg以下である。そして、入射角θが57degの場合のP偏光の可視光反射率が5%以上であり、入射角θの全範囲内で主像の反射率に対する副像の反射率の割合が30%以下である。これにより、主像が副像に対して十分高い輝度となるため、副像が目立たなくなり、HUD像の視認性が向上する。
【0082】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、第1実施形態のHUDシステムにおいて凹面鏡の反射面の半径を調整する例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0083】
図4は、第2実施形態に係るHUDシステムを例示する模式図である。
図4に示すHUDシステム2では、凹面鏡90の反射面の最小半径Rは100mm以上700mm以下である。なお、凹面鏡90の反射面の最小半径R=100mmは、凹面鏡90の成形限界である。ここで、凹面鏡90の反射面の最小半径Rは、凹面鏡90の重心を通りXZ平面に平行な平面が、凹面鏡90と交わってできる曲線における最小半径である。なお、
図4において、合わせガラス10を搭載する車両の前後方向をX、車両の左右方向をY、XY平面に垂直な方向をZとする。
【0084】
凹面鏡90の反射面の最小半径Rを700mm以下とすることで、HUD像距離Lを伸ばすことができる。凹面鏡90の反射面の最小半径Rは、600mm以下が好ましく、500mm以下がより好ましい。凹面鏡90の反射面の最小半径Rが小さくなるほど、HUD像距離Lを伸ばすことができる。
【0085】
ここで、HUD像距離Lは、SAE J1757-2(2018)に基づくアイボックスの中心から虚像Vの焦点位置までの距離である。HUDの焦点距離の測定方法は、SAE J1757-2(2018)に基づく。
【0086】
HUD像距離Lが長くなると、副像が暗くなると共に、副像の主像に対する分離量を抑えられるため、三重像が目立たなくなる。又、HUD像距離Lが長くなると、虚像V(HUD像)が運転者の運転中の焦点距離に近づくため、HUD像の視認性が向上する。HUD像距離Lは、3000mm以上が好ましく、5000mm以上がより好ましい。HUD像距離Lが長くなるほど、副像の主像に対する分離量を更に抑えられるため、三重像が一層目立たなくなる。
【0087】
このように、HUDシステム2では、HUDシステム1の要件に加え、凹面鏡90の反射面の最小半径Rが100mm以上700mm以下であるという要件を備えている。これにより、HUD像距離Lが長くなって副像が目立たなくなり、HUD像の視認性が一層向上する。
【0088】
〈第3実施形態〉
第3実施形態では、第1実施形態に係るHUDシステムにおいて合わせガラスを断面楔形状とする例を示す。なお、第3実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0089】
図5は、第3実施形態に係る合わせガラスを例示する部分拡大断面図である。第3実施形態に係るHUDシステムは、第1実施形態に係るHUDシステム1において、合わせガラス10を合わせガラス10Aに置換したものである。
図5に示す合わせガラス10Aでは、合わせガラス10と異なり、少なくともHUD表示領域Rにおいて、ガラス板11A及び中間膜13Aが断面楔形状である。
【0090】
つまり、ガラス板11Aは、少なくともHUD表示領域Rにおいて、合わせガラス10Aを車両に取り付けたときの垂直方向の上端側の厚さが下端側よりも厚い断面視楔状であり、断面視楔状の領域の楔角はδ1である。又、中間膜13Aは、少なくともHUD表示領域Rにおいて、合わせガラス10Aを車両に取り付けたときの垂直方向の上端側の厚さが下端側よりも厚い断面視楔状であり、断面視楔状の領域の楔角はδ2である。なお、ガラス板12の板厚は一定である。
なお、楔角は、以下の式によって定義される。
楔角=(上端厚み-下端厚み)/上端と下端とを結ぶガラス沿いの距離
(上端(下端)厚み:HUD表示領域の重心を通る縦断面における上端(下端)のガラス厚み)。
なお、ガラス以外の基材(例えば、フィルム)なども同様に定義される。
【0091】
このように、HUD表示領域Rにおいて、P偏光反射フィルム15よりも車内側に位置する部材、及びP偏光反射フィルム15よりも車外側に位置する部材を断面視楔状に形成し、楔角δ
1及びδ
2を適切な値とする。これにより、
図6に示すように三重像が目立たなくなる。
【0092】
つまり、
図6に示すように、主像反射光M、第1副像反射光Sa、及び第2副像反射光Sbが略一致するため、三重像を目立たなくできる。ここで、主像反射光Mは、凹面鏡からの光LaがP偏光反射フィルム15で反射された光である。又、第1副像反射光Saは、凹面鏡からの光Lbが合わせガラス10の車内側の面101で反射された光、第2副像反射光Sbは、凹面鏡からの光Lcが合わせガラス10の車外側の面102で反射された光である。
【0093】
HUD表示領域Rの断面楔形状の領域において、楔角δ1及びδ2は、各々0mradよりも大きく1.0mrad以下であることが好ましい。つまり、P偏光反射フィルム15よりも車外側に位置する部材の楔角の合計が0mradよりも大きく1.0mrad以下であることが好ましく、かつ、P偏光反射フィルム15よりも車内側に位置する部材の楔角の合計が0mradよりも大きく1.0mrad以下であることが好ましい。これにより、主像と副像との距離を小さくして主像と副像とをほぼ重ならせ、三重像を十分に目立たなくできる。例えば、主像と副像との距離(副像分離量)を1.0mrad以下にできる。なお、副像分離量が1.0mradとは、HUD像距離Lが1mの場合に主像と副像との距離が1mmであることを意味する。この場合、例えば、HUD像距離Lが2mの場合に、主像と副像との距離が2mmとなる。
楔角δ1及びδ2は、各々0mradよりも大きく0.2mrad以下であることがさらに好ましく、楔角δ1及びδ2双方が0mradよりも大きく0.2mrad以下であることがより好ましい。
【0094】
又、楔角δ1と楔角δ2の合計が1.2mrad以下であることが好ましい。つまり、断面楔形状の複数の部材の楔角の合計が1.2mrad以下であることが好ましい。これにより、合わせガラス10が過度に厚くなるのを防ぐことができる。
【0095】
なお、楔角δ1及びδ2は、合わせガラス10を車両に取り付けたときの垂直方向に対するHUD表示領域Rの上端及び下端における板厚の差を上下端の間のガラス沿いの距離で除したものである。ここで、板厚は楔角δ1の場合はP偏光反射フィルム15よりも車外側に位置する部材の板厚であり、楔角δ2の場合はP偏光反射フィルム15よりも車内側に位置する部材の板厚である。合わせガラス10の下端側から上端側に至る板厚の増加は、増加の割合が一定である単調増加であってもよく、増加の割合が部分的に変化してもよい。
【0096】
なお、
図5の例ではガラス板11及び中間膜13が断面視楔状に形成されているが、これには限定されない。つまり、HUD表示領域Rにおいて、ガラス板11、ガラス板12、中間膜13のうち、P偏光反射フィルム15よりも車外側に位置する部材の少なくとも1つが断面楔形状の領域を備え、かつ、P偏光反射フィルム15よりも車内側に位置する部材の少なくとも1つが断面楔形状の領域を備えていればよい。これにより、三重像を目立たなくする効果が得られる。
【0097】
例えば、
図7に示すよう合わせガラス10Bのように、中間膜13の膜厚を一定とし、ガラス板11及び12を断面視楔状に形成してもよいし、図示は省略するが、
図7の状態で更に中間膜13を断面視楔状に形成してもよい。この場合、ガラス板11及び12並びに中間膜13が断面視楔状となる。
【0098】
以上の何れの場合も、P偏光反射フィルム15よりも車外側に位置する部材の楔角の合計が0mradよりも大きく1.0mrad以下であることが好ましく、かつ、P偏光反射フィルム15よりも車内側に位置する部材の楔角の合計が0mradよりも大きく1.0mrad以下であることが好ましい。これにより、主像と副像との距離を小さくして主像と副像とをほぼ重ならせ、三重像を十分に目立たなくできる。
【0099】
なお、ガラス板11及び12は、例えばフロート法によって製造する場合は、製造条件を工夫することで断面視楔状に形成できる。具体的には、溶融金属上を進行するガラスリボンの幅方向の両端部に配置された複数のロールの周速度を調整することで、幅方向のガラス断面を凹形状や凸形状、或いはテーパー形状とし、任意の厚み変化を持つ箇所を切り出せばよい。
【0100】
このように、合わせガラス10A及び10Bでは、P偏光反射フィルム15がガラス板11とガラス板12との間に中間膜13に接して配置されている。そして、P偏光反射フィルム15よりも車外側に位置するガラス板12及び/又は中間膜13、並びに、P偏光反射フィルム15よりも車内側に位置するガラス板11が断面楔形状の領域を備えている。これにより、主像と副像との距離を小さくして主像と副像とをほぼ重ならせ、三重像を十分に目立たなくできる。
【0101】
なお、第3実施形態は、第2実施形態と組み合わせても構わない。この場合、三重像を一層目立たなくできる。
【0102】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、P偏光反射部材を配置する位置のバリエーションの例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0103】
図8乃至
図12は、第1実施形態の変形例1に係る合わせガラスを例示する図である。
図8に示す合わせガラス10Cのように、P偏光反射フィルム15は、接着層16を介してガラス板12の車内側の面に貼付されてもよい。又、
図9に示す合わせガラス10Dのように、P偏光反射フィルム15は、接着層16を介してガラス板11の車内側の面に貼付されてもよい。なお、合わせガラス10Dの場合には、凹面鏡からの光を反射する面は、P偏光反射フィルム15の車内側の面とガラス板12の車内側の面の2つであるため、三重像は形成されず、主像と二重像が形成される。
【0104】
<P偏光反射コート>
又、P偏光反射部材として、P偏光反射部材の一種であるP偏光反射フィルム15に代えてP偏光反射コート25を用いてもよい。P偏光反射フィルム15に代えてP偏光反射コート25を用いると、夜間などの低輝度の場合や、より広い視野角での視認性が優れている点で好ましい。また、膜厚などの制御もしやすい点や、反射面が平滑になりやすいことでHUD像が歪みづらい点で好ましい。P偏光反射コート25の膜厚は、例えば、50nm以上500nm以下である。P偏光反射コート25を構成する膜としては、例えば、銀、金、銅、アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化ケイ素等を採用できる。P偏光反射コート25は、例えば、スパッタ法やCVD法等によりガラス板の表面に形成できる。P偏光反射コートの取り付け位置は、
図2Bにおいて、ガラス板11の車内側となる面(4面)であることが反射効率の点で好ましい。
【0105】
合わせガラスの内側シート(4面)は、P偏光反射コートである第1のコーティングを含んでもよい。第1のコーティングは、高屈折率材料の少なくとも1つの層、および低屈折率材料の少なくとも1つの層を含む。本発明の範囲において、そのような配列は「高/低」配列(シーケンス)と呼ばれる。
【0106】
いくつかの実施形態では、第1コーティングは、高屈折率と低屈折率の層の交互を含み得る。すなわち、第1コーティングは、高屈折率材料の2つ以上の層、および/または低屈折率材料の2つ以上の層を含み得る。このような場合、「高/低」シーケンスは複数回発生する可能性があり、すなわち、シーケンスは少なくとも2回繰り返される可能性がある。最大3回または4回以上の繰り返しシーケンスが提供される場合がある。場合によっては、繰り返しシーケンスは3回以下となる。上記シーケンスの繰り返しは、1回であることが製造効率の面で好ましい。
【0107】
本発明の範囲において、第1コーティングを備えた内側シートは、熱焼戻しプロセスに耐えるのに適している。したがって、そのような内側シートは、熱焼き戻しプロセスを受ける可能性がある。
【0108】
本発明の範囲において、高屈折率層の屈折率は、550nmの波長において、典型的には1.8以上、あるいは1.9以上、あるいは2.0以上、あるいは2.1以上であり、2.5以下である。本発明の範囲において、低屈折率層の屈折率は、550nmの波長において、典型的には<1.8、あるいは≦1.7、あるいは≦1.6であり、1.2以上である。
【0109】
本発明の範囲において、第1コーティングの少なくとも1つの高屈折率層は、以下の少なくとも1つを含むことが好ましい。
Zr、Nb、Snの酸化物;
Ti、Zr、Nb、Si、Sb、Sn、Zn、Inの混合酸化物;
Si、Zrの窒化物;
Si、Zrの混合窒化物。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態では、第1コーティングの少なくとも1つの高屈折率層は、チタンジルコニウム混合酸化物、チタンシリコン混合酸化物、ニオビウムジルコニウム混合酸化物、シリコンジルコニウム混合窒化物、アルミニウムのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。または、ドープされた窒化シリコン、酸化ジルコニウム、インジウムスズ混合酸化物、亜鉛アルミニウム混合酸化物、アンチモンスズ混合酸化物、チタン亜鉛混合酸化物であることが好ましい。
【0111】
典型的には、高屈折率材料は、熱焼戻し時に主要な結晶化度の変化を受けないように選択される。したがって、そのような観点では、最初のコーティングの高屈折率層が1つしかない場合、酸化チタンは高屈折率材料として推奨されない。
【0112】
低屈折率材料の例としては、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、または混合物、例えば、ケイ素とアルミニウムの混合酸化物、ケイ素とジルコニウムの混合酸化物が含まれる。
【0113】
第1コーティングは、合わせガラスと接触している高屈折率材料の第1の層、および高屈折率材料の第1の層の上にある低屈折率材料の第1の層を含み得る。そのような実施形態では、高屈折率材料の第1の層の厚さ(幾何学的膜厚)は、任意選択で1つまたは複数の副層でできており、50から100nm、あるいは60から80nmの範囲であり得る。そのような実施形態では、任意選択で1つまたは複数の副層でできている低屈折率材料の第1の層の厚さ(幾何学的膜厚)は、独立して70から160nm、あるいは80から120nmの範囲であり得る。
【0114】
本発明の別の実施形態において、「高/低」シーケンスの繰り返しが2回であることも可能である。具体的には、第1のコーティングが、合わせガラスと接触する高屈折率材料の第1の層、および上記の低屈折率材料の第1の層を含む場合、高屈折率材料の第1の層、および低屈折率材料の第1の層の上にある高屈折率材料の第2の層、および高屈折率材料の第2の層の上にある低屈折率材料の第2の層の構成である。
【0115】
2つの「高/低」反復シーケンスのそのような実施形態では、第1コーティングは、以下の構成a、b、c及びdを有することが好ましい。膜厚は幾何学的膜厚を意味する。
a.合わせガラスと接触している、1から15nmの厚さ、あるいは2から11nmの厚さを有する高屈折率材料の第1の層
b.高屈折率材料の第1の層の上、あるいは150から210nmの厚さを有する150から220nmの低屈折率材料の第1の層
c.低屈折率材料の第1の層の上に50から100nmの厚さ、あるいは40から90nm、あるいは55から75nmの厚さを有する高屈折率材料の第2の層
d.高屈折率材料の第2の層の上に、あるいは95から115nmの、70から160nmの厚さを有する低屈折率材料の第2の層。
【0116】
2つ以上の「高/低」繰り返しシーケンスのそれらの例では、第1のコーティングの高屈折率層の少なくとも1つは、少なくとも1つを含む。
Zr、Nb、Snの酸化物;
Ti、Zr、Nb、Si、Sb、Sn、Zn、Inの混合酸化物;
Si、Zrの窒化物;
Si、Zrの混合窒化物。
【0117】
第1のコーティングに2つ以上の高屈折率層がある場合、すなわち、第1のコーティングに2つ以上の「高/低」シーケンスがある場合、高屈折率層の少なくとも1つは、少なくとも1つを含む。
Zr、Nb、Snの酸化物;
Ti、Zr、Nb、Si、Sb、Sn、Zn、Inの混合酸化物;
Si、Zrの窒化物;
Si、Zrの混合窒化物
一方、2つ以上の高屈折率層では、独立して、以下の少なくとも1つを含み得る。
Zr、Nb、Sn、Ti、Bi、Ga、Gd、Hf、Mg、W、Yの酸化物で、最終的にAl、B、F、In、Si、Sb、Snがドープされる。
Ti、Zr、Nb、Si、Sb、Sn、Zn、In、Bの混合酸化物;
Si、Zrの窒化物;
Si、Zrの混合窒化物
【0118】
このような観点から、最初のコーティングに複数の高屈折率層がある場合、酸化チタンは高屈折率材料として推奨されない場合がある。
【0119】
本発明の別の実施形態において、「高/低」のシーケンスの繰り返しが3回である場合、第1のコーティングは、合わせガラスと接触する高屈折率材料の第1の層と、高屈折率材料の第1の層の上にある低屈折率材料の第1の層とを含む。低屈折率材料の第1の層の上に高屈折率材料の第2の層、高屈折率材料の第2の層の上に低屈折率材料の第2の層、並びに第2の層の上に高屈折率材料の第3の層、低屈折率材料の層、および高屈折率材料の第3の層の上にある低屈折率材料の第3の層の構成である。
【0120】
すべての実施形態において、異なる層の厚さは、本発明によって提供される技術的効果を微調整するために、提供される制限内で独立して変化し得る。
【0121】
本発明の範囲において、「下」という用語は、基板から始まる層シーケンス内での、次の層に対する層の相対位置を示す。本発明の範囲において、「上」という用語は、基板から始まる層シーケンス内での、次の層に対する層の相対位置を示す。
【0122】
本発明の範囲において、第2のコーティングを備えてもよい。任意選択の第2のコーティング内の層の相対位置は、必ずしも直接接触を意味するわけではない。つまり、第1層と第2層の間に中間層を設けることができる。場合によっては、レイヤーは実際には複数の個別のレイヤー(またはサブレイヤー)で構成されている場合がある。場合によっては、相対位置は直接接触を意味することもある。ほとんどの場合、任意の第2のコーティングは、ガラス表面と接触する窒化物含有層を含まない。
【0123】
P偏光反射コート25を用いる場合、例えば、
図10に示す合わせガラス10Eのように、P偏光反射コート25はガラス板11の車外側の面に配置されてもよい。又、
図11に示す合わせガラス10Fのように、P偏光反射コート25はガラス板12の車内側の面に配置されてもよい。又、
図12に示す合わせガラス10Gのように、P偏光反射コート25はガラス板11の車内側の面に配置されてもよい。P偏光反射の特性の点で、P偏光反射コート25はガラス板11の車内側の面に配置することが好ましい。なお、合わせガラス10Gの場合には、凹面鏡からの光を反射する面は、P偏光反射コート25の車内側の面とガラス板12の車内側の面の2つであるため、三重像は形成されず、主像と二重像が形成される。
なお、P偏光反射コート25を用いる場合でも、段落0037~0050などに記載されたHUDシステムに関する特性等は、P偏光反射フィルム同様に該当する。
【0124】
なお、
図8乃至
図12の各形態は、第2実施形態や第3実施形態に適用してもよい。第3実施形態に適用する場合には、HUD表示領域Rにおいて、ガラス板11、ガラス板12、中間膜13のうち、P偏光反射フィルム15よりも車外側に位置する部材の少なくとも1つが断面楔形状の領域を備え、かつ、P偏光反射フィルム15よりも車内側に位置する部材の少なくとも1つが断面楔形状の領域を備えていればよい。各々の楔角を適切な値とすることにより、
図6と同様に三重像を目立たなくできる。
【0125】
又、P偏光反射フィルム15又はP偏光反射コート25よりも車外側の面もしくは車内側の面に赤外線反射などの機能を有するフィルム又はコートが配置されていてもよい。この場合は、フィルム又はコートが配置された面の間に位置する部材の楔角の合計が0mradよりも大きく1.0mrad以下であることが好ましい。
【0126】
例えば、
図8及び
図11の場合には、ガラス板11及び/又は中間膜13と、ガラス板12を断面視楔状に形成する。又、
図9及び
図12の場合には、ガラス板11、ガラス板12、中間膜13の何れか1つ以上を断面視楔状に形成する。又、
図10の場合には、ガラス板11と、ガラス板12及び/又は中間膜13を断面視楔状に形成する。
【0127】
〈実施例〉
以下、実施例について説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。
【0128】
[例1](P偏光反射フィルム)
合わせガラスとした際に内板(車内側ガラス板)となるガラス板A(AGC社製 通称FL)と、外板(車外側ガラス板)となるガラス板B(AGC社製 通称FL)を準備した。ガラス板A及びBの寸法は、何れも、300mm×300mm×板厚2mmとした。又、中間膜C(積水化学工業社製 PVB、厚み0.76mm)を準備した。ガラス板A、ガラス板B、及び中間膜Cは、何れも断面視楔状ではなく、一定の厚さである。
【0129】
次に、ガラス板Aの車外側となる面(3面)に、接着層を介してP偏光反射フィルムを貼り付けた。なお、4面とはガラスAの車内側の面、3面とはガラスAの車外側の面、2面とはガラスBの車内側の面、1面とはガラスBの車外側の面である。
【0130】
そして、接着層を介してP偏光反射フィルムを貼り付けたガラス板Aと、ガラス板Bとの間に、中間膜Cを挟んで積層体を作製し、積層体をゴム袋の中に入れ、-65乃至-100kPaの真空中で温度約70乃至110℃で接着した。そして、圧力0.6乃至1.3MPa、温度約100乃至150℃の条件で加圧及び加熱し、合わせガラスLG1を作製した。
【0131】
合わせガラスLG1について、入射角57degでのP偏光の可視光反射率、及び入射角66degでのP偏光の可視光反射率を測定したところ、各々3%及び5%であった。なお、P偏光の可視光反射率の測定方法については、前述の通りである。
【0132】
[例2]
反射率の異なるP偏光反射フィルムをガラス板Aの3面に貼り付けた以外は、例1と同様にして合わせガラスLG2を作製した。
【0133】
合わせガラスLG2について、入射角57degでのP偏光の可視光反射率、及び入射角66degでのP偏光の可視光反射率を測定したところ、各々5%及び7%であった。なお、P偏光の可視光反射率の測定方法については、前述の通りである。
【0134】
[例3]
反射率の異なるP偏光反射フィルムをガラス板Aの3面に貼り付けた以外は、例1と同様にして合わせガラスLG3を作製した。
【0135】
合わせガラスLG3について、入射角57degでのP偏光の可視光反射率、及び入射角66degでのP偏光の可視光反射率を測定したところ、各々5%及び7%であった。なお、P偏光の可視光反射率の測定方法については、前述の通りである。
【0136】
[例4]
反射率の異なるP偏光反射フィルムをガラス板Aの4面に貼り付けた以外は、例1と同様にして合わせガラスLG4を作製した。
【0137】
合わせガラスLG4について、入射角57degでのP偏光の可視光反射率、及び入射角66degでのP偏光の可視光反射率を測定したところ、各々5%及び7%であった。なお、P偏光の可視光反射率の測定方法については、前述の通りである。
【0138】
[例5]
反射率の異なるP偏光反射フィルムをガラス板Aの3面に貼り付けた以外は、例1と同様にして合わせガラスLG5を作製した。
【0139】
合わせガラスLG5について、入射角57degでのP偏光の可視光反射率、及び入射角66degでのP偏光の可視光反射率を測定したところ、各々5%及び7%であった。なお、P偏光の可視光反射率の測定方法については、前述の通りである。
【0140】
[例6]
ガラス板Aの楔角を0.1mrad、中間膜Cの楔角を0.15mradとし、反射率の異なるP偏光反射フィルムをガラス板Aの3面に貼り付けた以外は、例1と同様にして合わせガラスLG6を作製した。なお、ガラス板Bの板厚は一定である。
【0141】
合わせガラスLG6について、入射角57degでのP偏光の可視光反射率、及び入射角66degでのP偏光の可視光反射率を測定したところ、各々5%及び7%であった。なお、P偏光の可視光反射率の測定方法については、前述の通りである。
【0142】
[例7]
中間膜Cの楔角を0.25mradとし、反射率の異なるP偏光反射フィルムをガラス板Aの4面に貼り付けた以外は、例1と同様にして合わせガラスLG7を作製した。なお、ガラス板A及びBの板厚は一定である。
【0143】
合わせガラスLG7について、入射角57degでのP偏光の可視光反射率、及び入射角66degでのP偏光の可視光反射率を測定したところ、各々5%及び7%であった。なお、P偏光の可視光反射率の測定方法については、前述の通りである。
【0144】
[評価]
HUDシステムにおける凹面鏡最小R及びHUD像距離を
図13に示すように設定した。そして、例1乃至例7で作製した合わせガラスLG1乃至LG7の各々の縦方向に入射角63deg以上66deg以下の範囲で中間像を投影し、SAE J1757-2(2018)に基づくアイボックスの中心からHUD像を観測した。そして、4面反射の副像分離量(4面反射の副像と主像との距離)、及び1面反射の副像分離量(1面反射と主像との距離)を測定した。なお、4面にP偏光反射フィルムを貼り付けた場合には、4面反射の副像は生じない。
【0145】
4面反射の副像分離量及び1面反射の副像分離量は、2.0mrad以下の場合を〇(合格:可)、1.5mrad以下の場合を◎(合格:良)、1.0mrad以下の場合を☆(合格:優)、2.0mradより大きい場合を×(不合格)とした。判定結果を
図13に示す。なお、4面反射の副像分離量及び1面反射の副像分離量が2.0mrad以下であれば、HUD像の視認性が問題ないレベルとなり、更に小さな値になるとHUD像の視認性が更に向上する。
【0146】
又、入射角66deg(入射角最大)での副像反射率/主像反射率を測定した。測定方法については、前述の通りである。なお、入射角が最大のときに副像反射率/主像反射率が最大となる。従って、入射角63deg以上66deg以下の全範囲内で、副像反射率/主像反射率は、入射角66deg(入射角最大)での副像反射率/主像反射率以下となる。
【0147】
副像反射率/主像反射率は、30%以下の場合を〇(合格)、30%より大きい場合を×(不合格)とした。判定結果を
図13に示す。なお、副像反射率/主像反射率が30%以下であれば、HUD像の視認性が問題ないレベルとなる。
【0148】
図13に示すように、例1では、入射角57degでのP偏光の可視光反射率が5%より小さいため、主像が暗くなり、副像反射率/主像反射率が30%より大きくなった(不合格)。一方、例2乃至例7では、入射角57degでのP偏光の可視光反射率が5%以上であるため、主像が比較的明るく、副像反射率/主像反射率が30%以下となった(合格)。又、4面反射の副像分離量及び1面反射の副像分離量は、例1乃至例7の何れも2.0mradより大きいものはなく、全て合格であった。この結果から、入射角57degでのP偏光の可視光反射率が5%以上であれば、副像反射率/主像反射率が30%以下となり、十分なHUD像の視認性が得られるといえる。
【0149】
又、凹面鏡最小Rが700mmである例3では、凹面鏡最小Rが800mmである例1及び例2より、4面反射の副像分離量及び1面反射の副像分離量が小さくなり、凹面鏡最小Rが100mmである例5は特に小さい。この結果から、凹面鏡最小Rが小さいほど、HUD像の視認性に有利であるといえる。
【0150】
又、例4は副像の数が1面反射の1つのみのため、副像の数が複数生じるものよりもHUD像の視認性がよい。
【0151】
又、凹面鏡最小Rが700mmであり、かつガラス板及び/又は中間膜を断面楔形状とした例6及び例7では、4面反射の副像分離量及び/又は1面反射の副像分離量が0mradであった。この結果から、凹面鏡最小Rを700mm以下の適切な値に調整し、かつガラス板及び/又は中間膜を断面楔形状とすることで、副像が殆ど視認できない状態にでき、HUD像の視認性を大きく向上できるといえる。
【0152】
[例8](P偏光反射コート)
すべての光学パラメータは、反射または透過レベルについては光源D65に対して2°であり、カラーインデックス(a *およびb *)については光源D65に対して10°である。特に明記しない限り、すべての屈折率は550nmの波長で測定される。
【0153】
1.8mmの透明フロートガラスの第1シートと1.4mmの透明フロートガラスの第2シートを含み、0.76mmの透明PVBシートで積層されたグレージングが提供された。
図14乃至17の表に概説するように、「高/低」シーケンスで、いくつかの第1コーティングがガラスの内側シートの4面に堆積された。
【0154】
次に、グレージングは、光源から放出される光の経路に配置された。光源は、通常の光またはp偏光を放射するように構成された。入射光に対するグレージングの性能を
図14乃至17の表に示す。
【0155】
車外面反射(Rv(out))に関して測定された光学パラメータは次のとおりである。
a) 光源A、2°
Tv =可視範囲での透過
Rv(out)(%)=≪標準≫入射角8°での可視範囲の車外面反射
Rv(in)(%)=ブリュースター角(57°)に近い入射角での非偏光の可視範囲での車内面反射。入射角がグレージングの反対側から参照されている場合(すなわち180°-55°)は、R125(in)とも呼ばれる。
Rp_pol(%)=ブリュースター角(57°)に近い入射角でのp偏光の可視範囲での車内面反射。入射角がグレージングの反対側から参照される場合(すなわち180°-55°)、Rp_pol125°とも呼ばれる。
R172(in)(%)=標準入射角8°(またはグレージングの外面を参照した場合は172°)での可視範囲の車内面反射。
b) 光源D65、2°
Tv =可視範囲での透過
c) 光源D65、10°
a*_Rout = a * 8°での車外面反射のカラーインデックス
b*_Rout = b * 8°での車外面反射のカラーインデックス
a*_Rin = a * R125 = a * 125°での車内面反射のカラーインデックス
b*_Rin = b * R125 = b * 125°での車内面反射のカラーインデックス
a*_Rp_pol = a * R125p_pol = a * p偏光の125°での車内面反射のカラーインデックス
b*_Rp_pol = b * R125p_pol = b * p偏光の125°での車内面反射のカラーインデックス
a*R172 = a * 172°での車内面反射のカラーインデックス
b*R172 = b * 172°での車内面反射のカラーインデックス
【0156】
結果は、一般的には、以下のとおりである。
可視光の透過率は、70%よりも大であった。
8°と55°の角度のカラーインデックスで示されるように、適当な反射性能を備えた適度なレベルで維持された車外面反射であった。
55°入射でのRp_polなどの車内面反射の光学特性は、4層以上を提供すると13~14%のレベルまで向上し、55°でのグローバル車内面反射は14~17%を維持された。57°入射についても同様である。
これらの結果は、HUDシステムにおける現在の車両グレージングの適合性を示している。
色味の角度依存性の点で、a*_Rout-a*R55の絶対値が10以下であることが好ましい。同様に、b*_Rout-b*R55の絶対値が10以下であることが好ましい。
【0157】
<例8-1乃至8-5と比較例1>
1.8mmの透明フロートガラスの第1シートと1.4mmの透明フロートガラスの第2シートを含むグレージングが提供され、0.76mmの透明PVBシートと積層された。
図14及び15の表の通り、「高/低」配列で、いくつかのコーティングがガラスの内側シートに堆積された。
【0158】
例8-1乃至8-3及び比較例1は、172.3nmの同じ光学的厚さを有する高屈折率層を有し、一方、低屈折率層は、145.1nmの同じ光学的厚さを有した。なお、幾何学的厚さおよび屈折率は、幾何学的厚さ=光学的厚さ/屈折率で
図14及び15の表に概説されている。
【0159】
屈折率が2.35(550nm)の酸化チタンに基づく比較例1は、55°の入射角で10.2%のp偏光反射を有していた。57°入射についても同様である。
【0160】
屈折率2.33(550nm)を有するTZOに基づく実施例1は、55°の入射角で9.9%のp偏光反射を有していた。SiZrNを使用した実施例2では、55°の入射角で7.0%を超えるp偏光反射が見られた。SiNおよび亜鉛-酸化スズを用いた実施例3は、それぞれ、55°の入射角で4.0%を超えるp偏光反射を有していた。57°入射についても同様である。それらはすべて、カラーインデックスに関して満足のいく特性を有していた。
【0161】
例8-1乃至8-3の最初のコーティングは、熱処理に耐え、それらの光学特性を維持することができたが、比較例1は、熱処理に耐えることができなかった。
【0162】
<例8-4及び8-5>
1.8mmの透明フロートガラスの第1シートと1.4mmの透明フロートガラスの第2シートを含むグレージングが提供され、0.76mmの透明PVBシートと積層された。
図16及び17の表に概説されているように、「高屈折率膜/低屈折率膜」シーケンスで、いくつかのコーティングがガラスの内側シートに堆積された。
【0163】
例8-4の高屈折率層は、TZOおよびTSOの副層に基づいていた。2つの「高/低」配列を有する例8-5の高屈折率層は、TZOまたはTSOであった。
【0164】
光学特性は、カラーインデックスに関して満足のいく特性を有していた。
例8-4は、55°の入射角で9.0%を超えるp偏光反射を有していた。例8-5は、55°の入射角で>12.0%のp偏光反射を有していた。
例8-1乃至8-5は、表1の例4に記載されているような性能を有している。
【0165】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
なお、2020年1月15日に出願された日本特許出願第2020-004523号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0166】
1、2 HUDシステム
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G 合わせガラス
11、11A、12、12A ガラス板
13、13A 中間膜
14 遮蔽層
15 P偏光反射フィルム
16 接着層
25 P偏光反射コート
50 光源
60 第1光学系
70 画像表示素子
80 第2光学系
90 凹面鏡