(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】硬化性重合体組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08F 290/12 20060101AFI20241210BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241210BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20241210BHJP
C08F 257/02 20060101ALI20241210BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20241210BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20241210BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20241210BHJP
【FI】
C08F290/12
B32B27/30 A
C08F2/44 C
C08F257/02
C08F265/06
C09D4/00
C09D7/65
(21)【出願番号】P 2022176709
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2018014230の分割
【原出願日】2018-01-31
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉秀
(72)【発明者】
【氏名】内野 健太郎
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-106290(JP,A)
【文献】特開2012-167185(JP,A)
【文献】特開2008-116493(JP,A)
【文献】特開2009-075248(JP,A)
【文献】特開2011-128607(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124323(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C08F
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体A、前記重合体Aと溶解度パラメータ(SP値)が異なり前記重合体Aに非相溶性の重合体B及び多官能(メタ)アクリレートCを含む硬化性重合体組成物であって、
前記重合体Aは、重量平均分子量が
40,000より大きく200,000以下である(メタ)アクリル系重合体であり、
前記重合体Bは、スチレン系単量体由来の構成単位及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の構成単位の少なくとも一方を含み、
前記硬化性重合体組成物100質量部中の前記重合体Aの含有量が30~90質量部、前記重合体Bの含有量が5~40質量部、前記多官能(メタ)アクリレートCの含有量が1~49質量部であり、
以下の(1)、(2)を満足する硬化性重合体組成物。
(1)SPA-SPB≧0.5
(2)重合体Aが不飽和二重結合を有し、二重結合当量が0.1mmol/g以上4mmol/g以下
(SPA、SPBはそれぞれ、前記重合体A、前記重合体Bの溶解度パラメータを示
し、単位は(cal/cm
3
)
1/2
である。)
【請求項2】
前記重合体Bが、(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の構成単位を含む、請求項1に記載の硬化性重合体組成物。
【請求項3】
以下の(3)を満足する請求項1
又は2に記載の硬化性重合体組成物。
(3)SPC-SPB≦(SPA-SPC)×2.5
(SPCは前記多官能(メタ)アクリレートCの溶解度パラメータを示
し、単位は(cal/cm
3
)
1/2
である。)
【請求項4】
前記重合体Bの重量平均分子量が2,000より大きく200,000以下である請求項1
~3のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物。
【請求項5】
前記硬化性重合体組成物を硬化させた硬化塗膜を延伸率100%に延伸させた時の延伸前後の60°光沢度変化値が30以下である請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物の硬化塗膜を有する積層体。
【請求項6】
前記硬化性重合体組成物を硬化させた硬化塗膜のクラックを生じる延伸率が50%以上である前記請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物の硬化塗膜を有する積層体。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物の硬化塗膜を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防眩性と延伸性を有するハードコート層を形成し得る硬化性重合体組成物及びその硬化塗膜を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルディスプレイ等の画像表示装置の表面に防眩性を付与する技術として、表面に微細な凹凸を有するフィルムを、ディスプレイ等の樹脂成形体を成形するのと同時に、インサート成形する方法が知られている。
たとえば特許文献1には、SP値(溶解性パラメータ)の異なる2種の重合体を含む組成物により、表面に凹凸を発現させた防眩性フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1記載の方法は、成形加工の際の延伸性が不十分であり、表面の耐擦傷性も不十分であった。
本発明はこれらの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は以下の[1]~[9]を要旨とする。
【0006】
[1]重合体A、前記重合体Aと溶解度パラメータ(SP値)が異なり前記重合体Aに非相溶性の重合体B及び多官能(メタ)アクリレートCを含む硬化性重合体組成物であって、以下の(1)、(2)を満足する硬化性重合体組成物。
(1)SPA-SPB≧0.5
(2)重合体Aが不飽和二重結合を有し、二重結合当量が0.1mmol/g以上4mmol/g以下
(SPA、SPBはそれぞれ、前記重合体A、前記重合体Bの溶解度パラメータを示す。)
[2]以下の(3)を満足する[1]に記載の硬化性重合体組成物。
(3)SPC-SPB≦(SPA-SPC)×2.5
(SPCは前記多官能(メタ)アクリレートCの溶解度パラメータを示す。)
[3]前記重合体Aの重量平均分子量が2,000より大きく200,000以下である[1]又は[2]に記載の硬化性重合体組成物。
[4]前記重合体Bの重量平均分子量が2,000より大きく200,000以下である[1]~[3]のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物。
[5]前記重合体A,重合体Bの両方に良溶媒である有機溶媒(溶媒X)と、重合体Aに対しては良溶媒であるが、重合体Bに対しては貧溶媒である有機溶媒(溶媒Y)を含む[1]~[4]のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物。
[6]前記硬化性重合体組成物100質量部中の重合体Aの含有量が30~90質量部、重合体Bの含有量が5~40質量部、多官能(メタ)アクリレートCの含有量が1~49質量部である[1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物。
[7]前記硬化性重合体組成物を硬化させた硬化塗膜を延伸率100%に延伸させた時の延伸前後の60°光沢度変化値が30以下である[1]~[6]のいずれか1項に記載の
硬化性重合体組成物の硬化塗膜を有する積層体。
[8]前記硬化性重合体組成物を硬化させた硬化塗膜のクラックを生じる延伸率が50%以上である[1]~[6]のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物の硬化塗膜を有する積層体。
[9][1]~[6]のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物の硬化塗膜を有する積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた防眩性と延伸性を有するハードコート層を形成し得る硬化性重合体組成物及びその硬化塗膜を有する積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の硬化性重合体組成物は、重合体A、前記重合体Aと溶解度パラメータ(SP値)が異なり前記重合体Aに非相溶性の重合体B及び多官能(メタ)アクリレートCを含む硬化性重合体組成物であって、以下の(1)~(2)を満足する。
(1)SPA-SPB≧0.5
(2)重合体Aが不飽和二重結合を有し、二重結合当量が0.1mmol/g以上4mmol/g以下
(SPA、SPBはそれぞれ、前記重合体A、前記重合体Bの溶解度パラメータを示す。)
【0009】
本発明において、重合体Aと重合体Bは溶解度パラメータ(SP値)が異なり、重合体Aと重合体Bは非相溶性となることが必要である。非相溶性とは相互に溶解しないことを意味する。本発明では重合体Aと重合体Bが非相溶性であるために相分離し、本発明の硬化性重合体組成物を含む硬化物の表面に微細な凹凸が形成され、防眩性が発現する。
【0010】
本発明ではSPA-SPB≧0.5を満足することにより、重合体Aが凹部、重合体Bが凸部を構成する。SPAとSPBの差が0.5未満では重合体Aと重合体Bが相溶性となり、本発明の硬化性重合体組成物の硬化塗膜を形成する際に凹凸形成がされにくくなって防眩性が発現しにくくなる。SPAとSPBの差は、防眩性発現の点で0.8以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が特に好ましい。
【0011】
なお、SPBをSPAより低くするためには、例えば、前記重合体Aの側鎖に極性が高い官能基を多く含むようにすればよい。側鎖に極性が高い官能基を導入する方法としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の高極性(メタ)アクリレート系単量体や、ジメチルアクリルアミドや、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクロイルモルホリン等の高極性アクリルアミド系単量体を共重合する方法が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグルシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を共重合した後に、(メタ)アクリル酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸等の不飽和カルボン酸類を付加することで水酸基を導入する方法が挙げられる。
【0012】
また本発明では、重合体Aが不飽和二重結合を有し、二重結合当量が0.1mmol/g以上4mmol/g以下であることが必要である。前記二重結合当量が0.1mmol/g未満では、本発明の硬化性重合体組成物から得られた硬化物の耐擦傷性が不十分となり、4mmol/gを超えると、重合体Aの架橋密度が高くなり延伸性が不十分となる。
前記、不飽和二重結合当量は、1mmol/g以上3mmol/g以下が好ましく、1.2mmol/g以上2.5mmol/g以下がより好ましい。
【0013】
更に本発明では、耐擦傷性の向上の観点から、多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートCのSP値(SPC)が、重合体AのSP値(SPA)及び重合体C(SPC)のSP値との関係において、SPC-SPB≦(SPA
-SPC)×2.5を満足することが好ましい。本条件を満足することにより、多官能(
メタ)アクリレートCが凸部となる前記重合体Bへの親和性が高くなり、凸部の架橋密度が上がり耐擦傷性が向上する。
【0014】
なお本発明において、溶解度パラメータ(SP値)は次の方法により実測される値である。
サンプル0.5gを100ml三角フラスコに秤量し、プロピレングリコールモノメチルエーテル10mlを加えて樹脂を溶解させる。ここへ、マグネチックスターラーで攪拌しながら、ヘキサンを滴下していき、溶液に濁りが生じた点(濁点)のヘキサンの滴下量(vh)を求める。次に、ヘキサンの代わりに脱イオン水を使用したときの、濁点における脱イオン水の滴下量(vd)を求める。
vh、vdより、SP値は参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A-1、5、1671~1681(1967)により示された式を用いて求めることができる。また、SPCは、上記のSPA及びSPCの測定方法において、プロピレングリコールモノメチルエーテルの代わりにアセトンを使用して求めるものとする。
なお、サンプルがプロピレングリコールモノメチルエーテルやアセトンに溶解しない等、溶解性パラメーターが上記の方法により求めることができない場合には、Fedorsらが提案した方法によって計算する。具体的には「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(147~154頁)」を参照して求めることができる。
【0015】
また本発明では、重合体Aと重合体Bのガラス転移温度の差(ΔTg=TgB-TgA)がΔTg<40℃であるのが好ましく、ΔTg<20℃であるのが更に好ましい。重合体Aと重合体Bのガラス転移温度の差を小さくすることで、本発明の硬化性重合体組成物の硬化物を延伸した場合に、前記硬化物全体が均一に延伸され、延伸前後の凸部面積と凹部面積の比率が大きく変わることを抑制し、延伸前後の光沢変化を少なくすることができる。
【0016】
<重合体A>
本発明において重合体Aは、本発明の硬化性重合体組成物を含む硬化物の凹部を構成する。
前記重合体Aは、不飽和二重結合を有していることが必要である。不飽和二重結合を有する重合体Aは、例えば、あらかじめ、エポキシ基を有する単量体と脂肪族の単量体を共重合した後に、不飽和二重結合とカルボキシル基の両方を含む単量体により開環付加させることで製造することができる。
前記エポキシ基を有する単量体としてはグリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグルシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリ
レート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等がある。エポ
キシ基の開環付加反応性が良好である点でグリシジル(メタ)アクリレート好ましい。
前記脂肪族の単量体としてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、i-ペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アク
リレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;フェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
前記(メタ)アクリル系単量体の中でも、良好な硬化性を発揮させる点で、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
不飽和二重結合とカルボキシル基の両方を含む単量体としては(メタ)アクリル酸、イタコン酸、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2,2,2,-トリスアクリロイルオキシメチルエチルフタル酸等が挙げられる。
これらの中でも、活性エネルギー線による硬化性が良好である点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
なお、本発明において、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0017】
更に本発明では、硬化塗膜の耐擦傷性を向上する点で、前記重合体Aの重量平均分子量は、2,000より大きく200,000以下が好ましく、6,000より大きく150,000以下がより好ましく40,000より大きく100,000以下が特に好ましい。なお、前記重量体Aの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算よる値である。
【0018】
また本発明において、硬化性を良好にする点で、前記重合体Aの含有量は硬化性重合体組成物100質量部に対し30~90質量部が好ましく、40~85質量部がより好ましく、50~80質量部がより好ましい。
【0019】
<重合体B>
本発明において重合体Bは、本発明の硬化性重合体組成物を含む硬化物の凸部を構成する。
前記重合体Bを構成する単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-テンシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-フェニルスチレン、3,4-ジシクロシルスチレン等のスチレン系単量体や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、i-ペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステ
ル系単量体が挙げられる。
これらの中でも、SP値を低下させやすく、良好な防眩性を発現する点からスチレン、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0020】
また本発明では、硬化塗膜の耐傷付性を向上する点で、前記重合体Bの重量平均分子量は2,000より大きく200,000以下が好ましく、6,000より大きく150,000以下がより好ましく40,000より大きく100,000以下が特に好ましい。
なお、前記重量体Bの平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算よる値である。
【0021】
前記重合体Bは光重合法、懸濁重合法等の一般的な重合法によって製造することができる。
【0022】
また本発明において、硬化性重合体組成物の防眩性と透明性の両立の点で、前記重合体Bの含有量は、硬化性重合体組成物100質量部に対し5~40質量部が好ましく、15~30質量部がより好ましい。
【0023】
<多官能(メタ)アクリレートC>
本発明において多官能(メタ)アクリレートCとは(メタ)アクリロイル基を有し、一分子中に2つ以上の不飽和二重結合を有する化合物で、多価アルコールと(メタ)アクリレートとの脱アルコール反応物、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、前記重合体Bで挙げられた樹脂の低分子量物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも得られる硬化物の耐傷付性が高い又は硬化性が良好な点でウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
また本発明において、延伸性と耐傷付性を両立する点で、前記多官能(メタ)アクリレートCの含有量は、硬化性重合体組成物100質量部に対し1~49質量部が好ましく、15~40質量部がより好ましく、25~35質量部が更に好ましい。
【0025】
<硬化性重合体組成物>
本発明の硬化性重合体組成物は有機溶媒、重合開始剤、レべリング剤、無機粒子、その他の成分を含んでいてもよい。
【0026】
<有機溶媒>
本発明の硬化性重合体組成物は、重合体A,重合体Bの両方に良溶媒である有機溶媒(溶媒X)と、重合体Aに対しては良溶媒であるが、重合体Bに対しては貧溶媒である有機溶媒(溶媒Y)の両方を含有することが好ましい。前記有機溶媒を含有させることで硬化性重合体組成物の塗布作業における作業性と、硬化塗膜の防眩性が向上する。
【0027】
<溶剤X>
溶剤Xとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール
等のケトン系溶媒;ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル等のエステル系溶媒;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0028】
<溶剤Y>
溶剤Yは、重合体Aに対しては良溶媒であり、重合体Bに対しては貧溶媒であるのが好ましい。重合体Bの貧溶媒であるとは、重合体Bが溶解しない溶媒であることを意味する。
溶剤Yとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン,メチルエチルケトン、メチルプロピ
ルケトン 、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンジアセト
ンアルコール等のケトン系溶媒;ノルマルプロピルアルコールジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル等のエステル系溶媒;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0029】
<光重合開始剤>
本発明の硬化性重合体組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタンノン-1等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
<レべリング剤>
本発明の重合体組成物は、レベリング剤を含有することが好ましい。レベリング剤の具体例を挙げると、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。
アクリル系レベリング剤としては、共栄社化学社製ポリフローシリーズを挙げることができる。
【0031】
シリコーン系レベリング剤としては、共栄社化学社製ポリフローシリーズ、BYK Chemie社製BYKシリーズ、日信化学工業社製シルフェイスSAGシリーズ、東レダウコーニング社製FGシリーズ、Lシリーズ、SHシリーズ、SFシリーズ、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製SILWETL等を挙げることができる。
【0032】
フッ素系レベリング剤としては、DIC社製メガファックシリーズ、共栄社化学社製フローレンシリーズ、ネオス社製フタージェントシリーズ、ダイキン社製DSN-403N、NS-9013等を挙げることができる。また、レベリング剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい
【0033】
<無機粒子>
本発明の重合体組成物は、無機粒子を含有することが好ましい。
無機粒子としては、シリカ(オルガノシリカゾルを含む)、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられ、これらの中でもシリカが好ましい。また、以上に挙げた無機粒子は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機粒子は、硬度を向上させる点でシランカップリング剤で表面修飾された無機粒子として本発明の重合体組成物に配合されることが好ましい。
【0034】
無機粒子の平均一次粒子径は通常、1μm以下であるが、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。無機粒子の平均一次粒子径の下限値は特段限定されないが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上である。平均一次粒子径が1μmを超える無機粒子を使用すると、粒子の自重により沈降が生じ硬化性重合体組成物の塗液の貯蔵安定性が低下しやすくなる。
【0035】
なお、本発明における無機粒子の平均一次粒子径は、例えば、TEM等の電子顕微鏡により観察される粒子の大きさを平均した値をいう。
【0036】
<その他の成分>
本発明の硬化性重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、チオール基を含有する化合物などの帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加しても良い。
【0037】
本発明の硬化性重合体組成物は、一般的な混合機で各成分を混合することによって製造することができる。
【0038】
<硬化性重合体組成物の硬化物>
本発明の硬化性重合体組成物の硬化物は、前記硬化性重合体組成物を基材に塗布した後、活性エネルギー線を照射し得られる。
【0039】
<基材>
本発明の硬化性重合体組成物を塗布、硬化させる基材フィルムは、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の樹脂組成物からなる透明樹脂フィルムを用いることができる。
基材フィルムとしては、フィルムインサート成形品の耐熱性を向上させる点で、ガラス転移温度が高い樹脂を選定することが好ましい。
前記樹脂のガラス転移温度は100℃以上170℃以下であることが好ましく、120℃以上160℃以下であることがより好ましく、140℃以上155℃以下であることが更に好ましい。前記フィルムインサート成形品が耐熱性を要求される前面パネルとして用いられる場合、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等を用いるのが好ましい。
基材フィルムは、全光線透過率80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0040】
<活性エネルギー線>
本発明の硬化性重合体組成物は活性エネルギー線や加熱によって硬化させることができるが、硬化反応に要する時間を短縮できること、低温硬化ができ、防眩性表面を得やすい点で、活性エネルギー線が好ましい。
【0041】
組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等が挙げられる。装置コストや生産性の観点から電子線又は紫外線を利用することが好ましく、光源としては、電子線照射装置、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He-Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波誘導水銀ランプが好ましい。
【0042】
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線の種類に応じて適宜に選ぶことがで
きる。例えば、電子線照射により硬化する場合には、その照射量は1~15Mradであることが好ましい。また、紫外線照射により硬化する場合には、50~1500mJ/cm2であることが好ましい。
硬化する際には、空気、窒素やアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下であってもよい。
【0043】
3次元加工後の意匠性や機能性の発現が良好となる点で、本発明において硬化塗膜の厚さは、目的とされる用途に応じて適宜決められるが、硬化塗膜の厚さの下限値は好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。また、内部硬化性、3次元加工適性が良好となる点で、上限値は好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
【0044】
<積層体>
本発明の硬化性重合体組成物の硬化塗膜を有する積層体とは、硬化性重合体組成物を基材に塗布し、乾燥後、活性エネルギー線で硬化させて得られる基材表面に硬化性重合体組成物の硬化物が積層された積層体を意味する。
本発明の積層体は、硬化性重合体組成物を基材に塗布し、乾燥し、活性エネルギー線で硬化させることによって得られる。
【0045】
3次元加工後の意匠性や機能性の発現が良好となる点で、本発明において硬化塗膜の厚さは、目的とされる用途に応じて適宜決められるが、硬化塗膜の厚さの下限値は好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。また、内部硬化性、3次元加工適性が良好となる点で、上限値は好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
【0046】
<硬化塗膜の光沢度>
防眩性が良好となる点から、本発明の積層体を延伸率100%に延伸した時の60°光沢度の延伸前後の変化率は、30以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。
なお、ここで「延伸率100%」とは延伸前の積層体の長さを積層体の長手方向に2.0倍の長さに延伸した延伸率を意味する。
また、前記60°光沢度の延伸前後の変化率は、日本電色工業社製グロスメーターVG2000を用いて、未延伸の積層体と延伸率100%の積層体の60°鏡面光沢度(60°グロス)をそれぞれ測定し、その差分の絶対値として測定を行った。
【0047】
<硬化塗膜の延伸率>
硬化塗膜の延伸性が良好となる点から、本発明の硬化性重合体組成物の硬化塗膜を有する積層体の表面の硬化塗膜がクラックを生じる延伸率は、50%以上が好ましく、100%以上がより好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の記載において「部」は質量部を意味する。なお、評価は以
下の方法によって行った。
【0049】
<評価方法>
以下の実施例及び比較例で調製した塗液(硬化性重合体組成物)を塗布、乾燥し、活性エネルギー線で硬化させることで製造した硬化性重合体組成物の硬化塗膜は、以下の方法により各物性を評価した。
<評価サンプル>
実施例で得られた硬化性重合体組成物の塗布液を、厚み100μmの易成形PETフィルム(帝人デュポン(株)製、FT7-100)に#20のバーコーターで塗布し、得られた塗膜を70℃に加熱した熱風乾燥機で60秒間乾燥を行うことで溶剤を揮発させた。次いで、東芝ライテック社製のUVコンベアを用いて、高圧水銀灯により空気下で塗膜の硬化を行ったものを評価サンプルとした。
【0050】
<全光線透過率・ヘイズ>
本発明の積層体の全光線透過率・及びヘイズは、JIS Z8722Z(透過物体の照
射及び受光の幾何条件)及びJIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)JIS K7136(プラスチック-透明材料のヘ-ズの求め方)に準拠し、日本電色工業製SH7000を用いて波長550nmにおける値を測定した。
【0051】
<光沢度>
本発明の積層体の光沢度(グロス)は、JIS Z 8741に準拠し、日本電色工業社
製グロスメーターVG2000を用いて、60°鏡面光沢度(60°グロス)として測定を行った。
【0052】
<防眩性>
本発明の積層体を、積層体の高さ2.5mから蛍光灯を灯し、目視外観にて防眩性(蛍光灯の映り込み)を評価した。
3点:積層体の表面の蛍光灯の反射像は、強くぼやけており、蛍光灯の輪郭が確認できない。
2点:積層体の表面の蛍光灯の反射像は、ぼやけているが、うっすらと輪郭を確認することができる。
1点:積層体の表面の蛍光灯の反射像から、蛍光灯の輪郭を確認することができる。
【0053】
<延伸率>
本発明の積層体を10mm幅に切断し、引張荷重測定機((株)イマダ製「MX2-500N」)を用いて、温度140℃、引張速度40mm/分、チャック間距離40mmの条件で延伸して破断伸度(目視にてクラックが観察されるまでの伸度)を測定し、以下の基準で評価した。
3点:延伸率100%以上。
2点:延伸率50%以上100%未満。
1点:延伸率50%未満。
【0054】
<延伸前後の60°光沢度変化>
本発明の積層体を10mm幅に切断し、引張荷重測定機((株)イマダ製「MX2-500N」)を用いて、温度140℃、引張速度40mm/分、チャック間距離40mmの条件で100%に延伸した後の積層体の60°グロス値(GA)と、延伸前の積層体の60°グロス値(GB)を測定した。GBとGAとの差(ΔGE(ΔGE=GB-GAの絶対値))を求めて、以下の基準で評価した。
3点:ΔGE≦15.0
2点:15.0<ΔGE≦30.0
1点:30.0<ΔGE
【0055】
<ギラツキ性>
本発明の積層体を緑色の画像を表示させたアップル社製iPad(MD513KH/A)シリーズ上に貼り合わせ、真上より目視にて樹脂フィルムのギラツキを評価した。
2点:ギラツキに伴う色ムラが見られず、良好なディスプレイの視認性を維持する。
1点:ギラツキに伴う色ムラが見られ、僅かにディスプレイの視認性が低下する。
【0056】
<耐擦傷性>
本発明の積層体について、耐擦傷試験前に測定した60°グロス値をG1とした。一方、23℃、55%RHの雰囲気下、ボンスター製スチールウール(#0000)に200gの錘(面積1.70cm2)を載せ、硬化塗膜面を学振磨耗試験機(東洋精機製)で10往復擦り、直後に測定した60°グロス値をG2とした。G2とG1との差(ΔGT(ΔG=G2-G1の絶対値))を求めて、以下の基準で評価した。
3点:6.0<ΔGT≦9.9
2点:10.0<ΔGT≦19.9
1点:20.0<ΔGT
【0057】
<製造例1:不飽和二重結合を含む重合体A-1の合成>
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル376.4部、グリシジルメタクリレート40.0部、メチルメタクリレート158.0部、エチルアクリレート2.0部、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.2部を入れ、65℃で3時間反応させた。
その後、更に2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.6部を加え3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル43.6部、p-メトキシフェノール1.0部を加え100℃まで加熱した。
次に、アクリル酸20.7部、及びトリフェニルホスフィン2.65部を添加して、110℃で6時間反応させることで、固形分35%の重合体A-1得た。
重合体A-1のアクリロイル当量(アクリロイル基の導入量)は1.24mmol/g、2級水酸基は1.24mmol/g含む(メタ)であり、また、ガラス転移温度は84℃、SP値は15.0、重量平均分子量は48,800であった。
【0058】
<製造例2:不飽和二重結合を含む重合体A-2の合成>
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル517.6部、グリシジルメタクリレート110.0部、メチルメタクリレート162.3部、エチルアクリレート2.8部、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.7部を入れ、65℃で3時間反応させた。
その後、更に2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8部を加え3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル101.0部、p-メトキシフェノール1.4部を加え100℃まで加熱した。
次に、アクリル酸56.8部、及びトリフェニルホスフィン4.0部を添加して、110℃で6時間反応させることで、固形分35%の重合体A-2を得た。
重合体A-2のアクリロイル当量(アクリロイル基の導入量)は2.27mmol/g、2級水酸基は2.27mmol/g含む(メタ)であり、また、ガラス転移温度は55℃、SP値は15.8、重量平均分子量は50,000であった。
【0059】
<製造例3:不飽和二重結合を含む重合体A-3の合成>
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル304.1部、グリシジルメタクリレート196.0部、メチルメタクリレート2.0部、エチルアクリレート2.0部、メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.8
部、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.0部を入れ、65℃で3時間反応させた。
その後、更に2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1.0部を加え3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル271.9部、p-メトキシフェノール0.9部を加え100℃まで加熱した。
次に、アクリル酸101.4部、及びトリフェニルホスフィン3.66部を添加して、110℃で6時間反応させることで、固形分35%の重合体A-2得た。
重合体A-3のアクリロイル当量(アクリロイル基の導入量)は4.47mmol/g、2級水酸基は4.47mmol/g含む(メタ)であり、また、ガラス転移温度は32℃、SP値は17.4、重量平均分子量は18,800であった。
【0060】
<製造例4:分散剤の製造>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメチルメタクリレート12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、メチルメタクリレートを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。滴下終了後、反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10%の分散剤を得た。
【0061】
<製造例5:重合体B-1の合成>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤(固形分10%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、スチレン75部、メチルメタアクリレート25部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)1.5部を加え水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、75℃に昇温して1時間反応し、更に重合率を上げるため、後処理温度として98℃に昇温して30分保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、50℃で16時間乾燥して、重合体Aに非相溶性の重合体B-1を得た。
重合体B-1のガラス転移温度は93℃、SP値は10.2、重量平均分子量は64,
300であった。
【0062】
<製造例6:重合体B-2の合成>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤(固形分10%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレート100部、オクチルメルカプタン0.2部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を加え水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、75℃に昇温して1時間反応し、更に重合率を上げるため、後処理温度として98℃に昇温して30分保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、50℃で16時間乾燥して、ア重合体Aに非相溶性の重合体B-2を得た。
重合体B-2のガラス転移温度は104℃、SP値は13.4、重量平均分子量は97,300であった。
【0063】
本発明の硬化性重合体組成物で使用した重合体A、重合体B及び多官能(メタ)アクリレートCのSP値、二重結合量、及び重合体A、重合体Bのガラス転移温度を表1に示す。
【0064】
【0065】
<実施例1>
撹拌子を備えたフラスコ中に、重合体AとしてA-1を樹脂固形分で75部、重合体BとしてB-1を樹脂固形分で25部、光開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Resins社製 Omnirad 184)を3部加えた。
この混合物に対して、重合体Bに対して不溶性である溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル、重合体A及びBに対して良溶媒であるメチルエチルケトンの重量比1対1の混合溶剤を添加し、固形分13.0%の塗布液となるよう調製した。
この塗布液を、厚み100μmの易成形PETフィルム(帝人デュポン(株)製、FT7-100)に#20のバーコーターで塗布し、70℃に加熱した熱風乾燥機で60秒間乾燥を行うことで溶剤を揮発させた。次いで、東芝ライテック社製のUVコンベアを用いて、高圧水銀灯により空気下で塗膜の硬化を行った。光硬化は、波長300~390nmの積算光量が、岩崎電気株式会社製の照度計(アイ紫外線積算照度計 UVPF―A1、
PD-365)で測定した際に、300mJ/cm2(250mW/J/cm2)となる
ように調整し、1回の露光を行った。
【0066】
<実施例2~6及び比較例1>
硬化性重合体組成物の組成を表2に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様に活性エネルギー線重合性組成物を調製し、これを用いて硬化塗膜付の樹脂積層体を作製し、評価を行った。実施例1~6及び比較例1の評価結果を表2に示す
【0067】
【0068】
表2からもわかるように、二重結合当量が4mmol/gよりも大きい比較例1は延伸性が低く、総合評価点が低かった。