(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】複合成形体
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20241210BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/16
(21)【出願番号】P 2022578174
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2021048026
(87)【国際公開番号】W WO2022163250
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2024-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2021010418
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄田 広明
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】福川 裕二
(72)【発明者】
【氏名】阿宮 友輔
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-113785(JP,A)
【文献】特開2018-202704(JP,A)
【文献】特開2004-223970(JP,A)
【文献】特開2010-111045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って位置する凸部及び前記凸部と隣接し、長手方向に沿って位置する凹部を有する第一の一次成形部材と、
長手方向に沿って位置し、前記凸部が嵌合される第一の凹部、及び前記第一の凹部に隣接し、かつ長手方向に沿って位置し、前記第一の一次成形部材の前記凹部と対面する第二の凹部を有する第二の一次成形部材と、
前記第一の一次成形部材の前記凸部を、前記第二の一次成形部材の前記第一の凹部に嵌合させた際に前記第一の一次成形部材の凹部と前記第二の凹部とが対面することで形成された第一の空間に充填されている二次成形部材と、を備え、
長手方向と直交する、前記凸部の断面及び前記第一の凹部の断面のそれぞれにて前記二次成形部材側の少なくとも一部の領域が弧状である複合成形体。
【請求項2】
前記第一の一次成形部材の前記凸部を、前記第二の一次成形部材の前記第一の凹部に嵌合させた際に前記二次成形部材側に形成される前記凸部と前記第一の凹部との間の第二の空間に、前記二次成形部材に含まれる成形材料が充填されている請求項1に記載の複合成形体。
【請求項3】
前記第二の空間は、前記二次成形部材側からその反対側に向かって前記凸部の表面と前記第一の凹部の表面との間が徐々に狭くなっている請求項2に記載の複合成形体。
【請求項4】
前記凸部の表面及び前記第一の凹部の表面のそれぞれにて前記二次成形部材側全体が弧状である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複合成形体。
【請求項5】
長手方向と直交する、前記第一の空間の断面が円形状である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の複合成形体。
【請求項6】
前記第一の空間の最大幅に対する前記第一の凹部の最大幅の比率である第一の凹部の最大幅/第一の空間の最大幅が0.2~1.5である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の複合成形体。
【請求項7】
前記第一の空間の最大高さに対する前記第一の凹部の最大深さの比率(第一の凹部の最大深さ/第一の空間の最大高さ)が0.1~1である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の複合成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイスライドインジェクション成形(DSI成形)は、内部に空間を有する構造を射出成形により形成するための技術であり、様々な製品の製造に利用されている。
【0003】
ダイスライドインジェクション成形を用いた技術としては、例えば、2つに分割した1次成形品を突き合わせて、突き合わせ面および接合溝を形成し、該接合溝に樹脂を充填して一体となった成形品を得る成形方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように接合溝を形成し、該接合溝に樹脂を充填して一体となった成形品を得る方法では、2つに分割した1次成形品を突き合わせることで接合溝に隣接する位置に嵌合された凹凸形状部分が有する構成とすることが考えられる。例えば、凹部を有する1次成形品と、前記凹部と嵌合する凸部を有する1次成形品とを突き合わせることで接合溝に隣接する位置に嵌合された凹凸形状部分が形成される。このように嵌合された凹凸部を設けることにより、接合溝に樹脂を充填する際に突き合わせた面の隙間から二次樹脂が漏れることを防いでいる。
【0006】
しかしながら、接合溝に樹脂等の成形材料を充填する際の圧力を嵌合された凹凸形状部分が受けることにより、凹凸形状部分の一部が変形したり、破壊したりするおそれがある。
【0007】
本開示は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、嵌合された凹凸形状部分の変形及び破壊が抑制された複合成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 長手方向に沿って位置する凸部及び前記凸部と隣接し、長手方向に沿って位置する凹部を有する第一の一次成形部材と、
長手方向に沿って位置し、前記凸部が嵌合される第一の凹部、及び前記第一の凹部に隣接し、かつ長手方向に沿って位置し、前記第一の一次成形部材の前記凹部と対面する第二の凹部を有する第二の一次成形部材と、
前記第一の一次成形部材の前記凸部を、前記第二の一次成形部材の前記第一の凹部に嵌合させた際に前記第一の一次成形部材の凹部と前記第二の凹部とが対面することで形成された第一の空間に充填されている二次成形部材と、を備え、
長手方向と直交する、前記凸部の断面及び前記第一の凹部の断面のそれぞれにて前記二次成形部材側の少なくとも一部の領域が弧状である複合成形体。
<2> 前記第一の一次成形部材の前記凸部を、前記第二の一次成形部材の前記第一の凹部に嵌合させた際に前記二次成形部材側に形成される前記凸部と前記第一の凹部との間の第二の空間に、前記二次成形部材に含まれる成形材料が充填されている<1>に記載の複合成形体。
<3> 前記第二の空間は、前記二次成形部材側からその反対側に向かって前記凸部の表面と前記第一の凹部の表面との間が徐々に狭くなっている<2>に記載の複合成形体。
<4> 前記凸部の表面及び前記第一の凹部の表面のそれぞれにて前記二次成形部材側全体が弧状である<1>~<3>のいずれか1つに記載の複合成形体。
<5> 長手方向と直交する、前記第一の空間の断面が円形状である<1>~<4>のいずれか1つに記載の複合成形体。
<6> 前記第一の空間の最大幅に対する前記第一の凹部の最大幅の比率である第一の凹部の最大幅/第一の空間の最大幅が0.2~1.5である<1>~<5>のいずれか1つに記載の複合成形体。
<7> 前記第一の空間の最大高さに対する前記第一の凹部の最大深さの比率(第一の凹部の最大深さ/第一の空間の最大高さ)が0.1~1である<1>~<6>のいずれか1つに記載の複合成形体。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、嵌合された凹凸形状部分の変形及び破壊が抑制された複合成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第一実施形態の複合成形体の要部の概略断面図である。
【
図2A】
図2Aは、第一実施形態にて、第一の空間及び嵌合された凹凸形状部分を形成したときの概略断面図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aにて第一の空間に樹脂を充填させて第一実施形態の複合成形体を製造する際の概略断面図である。
【
図3】
図3は、第二実施形態の複合成形体の要部の概略断面図である。
【
図4】
図4は、第三実施形態の複合成形体の要部の概略断面図である。
【
図5】
図5は、複合成形体を形成するための金型が型開きされた状態を示す端面図である。
【
図7】
図7は、複合成形体を形成するための金型が一次射出時に型閉じされた状態を示す端面図である。
【
図8】
図8は、第二の金型が矢印A方向へスライド移動した後の状態を示す端面図である。
【
図9】
図9は、第二の金型がスライド移動した後に第一の金型と第二の金型とが型閉じされ、第二の樹脂材料が二次射出された状態を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、第一の空間及び嵌合された凹凸形状部分を形成したときの要部の概略断面図である。
【
図11B】
図11Bは、
図11Aにて第一の空間に樹脂を充填させて比較対象となる複合成形体を製造する際の要部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の複合成形体を、図面を参照しながら説明する。なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0012】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0013】
〔複合成形体〕
本開示の複合成形体は、長手方向に沿って位置する凸部及び前記凸部と隣接し、長手方向に沿って位置する凹部を有する第一の一次成形部材と、長手方向に沿って位置し、前記凸部が嵌合される第一の凹部、及び前記第一の凹部に隣接し、かつ長手方向に沿って位置し、前記第一の一次成形部材の前記凹部と対面する第二の凹部を有する第二の一次成形部材と、前記第一の一次成形部材の前記凸部を、前記第二の一次成形部材の前記第一の凹部に嵌合させた際に前記第一の一次成形部材の凹部と前記第二の凹部とが対面することで形成された第一の空間に充填されている二次成形部材と、を備え、長手方向と直交する、前記凸部の断面及び前記第一の凹部の断面のそれぞれにて前記二次成形部材側の少なくとも一部の領域が弧状である。
【0014】
本開示の複合成形体では、嵌合された凹凸形状部分の変形及び破壊が抑制される。その理由は以下のように推測される。
【0015】
まず、比較対象となる複合成形体について、
図11を用いて説明する。
図11Aは、第一の一次成形部材の凸部と第二の一次成形部材の凹部とを嵌合させて第一の空間及び嵌合された凹凸形状部分を形成したときの要部の概略断面図であり、
図11Bは、第一の空間に樹脂を充填させたときの要部の概略断面図である。
図11では、長手方向と直交する断面の形状を図示している。
【0016】
図11Aに示すように、凸部103を有する第一の一次成形部材101と、凹部104を有する第二の一次成形部材102とは、それぞれ台形形状の凸部103及び凹部104を嵌合することで円形状の第一の空間105を形成している。さらに、第一の空間105側には、嵌合された凸部103と凹部104との間には第二の空間106が形成されており、第一の空間105側の反対側では、凸部103を構成する斜面及び凹部104を構成する斜面が接している。第一の空間105と、第二の空間106とは樹脂が流れる流路108を介して連結している。
【0017】
図11Bに示すように、第一の空間105に樹脂が充填されることで、第一の一次成形部材101及び第二の一次成形部材102を接合する二次成形部材107が形成される。第一の空間105に供給された樹脂は、樹脂を介して第二の空間106にも供給される。以上により、複合成形体100が製造される。
【0018】
第一の空間105に供給された樹脂が第二の空間106にも供給される際、
図11Bの矢印Aにて示すように、第一の空間105に樹脂を充填する際の圧力を凹凸形状部分が面で受けることになり、凹凸形状部分に応力が集中し易くなる。その結果、凹凸形状部分のエッジである点線部X、点線部Y等を起点とする変形及び破壊が生じやすくなる。
【0019】
一方、本開示の複合成形体では、凹凸形状部分を構成する凸部の断面及び凹部の断面のそれぞれにて二次成形部材側の少なくとも一部の領域が弧状となっている。これにより、第一の空間に樹脂等の成形材料を充填する際の圧力の少なくとも一部が第一の一次成形部材側の方向に分散され、凹凸形状部分への応力の集中が緩和される。その結果、凹凸形状部分の変形及び破壊が生じにくくなる。
【0020】
<第一実施形態>
本開示の複合成形体の一例である第一実施形態の複合成形体について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、第一実施形態の複合成形体の要部の概略断面図である。
図2Aは、第一実施形態にて、第一の空間及び嵌合された凹凸形状部分を形成したときの要部の概略断面図であり、
図2Bは、
図2Aにて第一の空間に樹脂を充填させて第一実施形態の複合成形体を製造する際の要部の概略断面図である。
図1では、複合成形体の長手方向と直交する断面の形状を図示している。
【0021】
図1に示すように、複合成形体10は、凸部3を有する第一の一次成形部材1と、凹部4(第一の凹部)を有する第二の一次成形部材2と、第一の一次成形部材1の凹部と第二の一次成形部材2の凹部(第二の凹部)とが対面することで形成された第一の空間に充填されている二次成形部材7と、を備える。さらに、複合成形体10では、凸部3の断面及び凹部4の断面のそれぞれが円弧状となっている。また、点Oは、円弧状の凸部の中心を表している。
【0022】
第一の空間を形成する第一の一次成形部材1の凹部及び第二の一次成形部材2の凹部(第二の凹部)は、長手方向に沿って位置している。そのため、第一の空間に充填されている二次成形部材7も長手方向に沿って位置している。
【0023】
第一の一次成形部材1では長手方向に沿って棒状の凸部3が位置しており、第2の一次成形部材2では長手方向に沿って溝状の凹部4が位置している。これにより、嵌合された凹凸形状部分が長手方向に沿って存在している。嵌合された凹凸形状部分は、第一の空間に充填されている二次成形部材7に沿って存在していることが好ましい。
なお、長手方向とは、幅方向(
図1中の左右方向)及び高さ方向(
図1中の上下方向)に直交する方向を意味する。
【0024】
複合成形体10では、二次成形部材7側にて凸部3と凹部4との間に形成された第二の空間に二次成形部材7を構成する樹脂が充填されている。なお、第二の空間には樹脂以外の成形材料、例えば、金属、その他の成分等を含む材料、樹脂、金属、その他の成分等を含む材料などの成形材料が充填されることで二次成形部材7が形成されてもよい。金属としては、鉄、ステンレス、アルミ、銅、合金等が挙げられる。その他の成分としては、粒子状の充填材、繊維状の充填材、離型剤等が挙げられる。
これら部材に含まれるその他の成分の含有量は、複合成形体の用途に応じて適宜設定されてもよい。
その他の成分としては、無機材料の表面を改質する表面処理剤等であってもよい。
【0025】
複合成形体10の製造工程の一部について、
図2を用いて説明する。
図2Aに示すように、円弧状の凸部3及び凹部4を嵌合し、かつ第一の一次成形部材1の凹部と第二の一次成形部材2の凹部(第二の凹部)とを対面させることで、円形状の第一の空間5を形成している。さらに、凹部4の底部にて凹部4と凸部3とが接することで、第一の空間5側の嵌合された凸部3と凹部4との間には第二の空間6が形成されており、第一の空間5側とは反対側においても、嵌合された凸部3と凹部4との間には空間が形成されている。
図2Aでは、当該空間と、第二の空間6とは、点Oを通る線分に対し線対称となっているが、この構成に限定されない。
第一の空間5側とは反対側において、嵌合された凸部3と凹部4との間には空間が存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0026】
図2Aでは、第一の空間5と、第二の空間6とは樹脂が流れる流路8を介して連結している。
図2Aでは、正面から見て第一の空間5の左側にて円弧状の凸部3及び凹部4が嵌合された凹凸形状部分が形成されているが、正面から見て第一の空間5の右側にも円弧状の凸部及び凹部が嵌合された凹凸形状部分が形成されていることが好ましい。第一の空間5を中心として左右対称に円弧状の凸部及び凹部が嵌合された凹凸形状部分がそれぞれ形成されていることがより好ましい。
【0027】
図2Bに示すように、第一の空間5に樹脂が充填されることで、第一の一次成形部材1及び第二の一次成形部材2を接合する二次成形部材7が形成される。第一の空間5に供給された樹脂は、流路8を介して第二の空間6にも供給される。以上により、複合成形体10が製造される。
【0028】
第一実施形態では、凹凸形状部分を構成する凸部3の断面及び凹部4の断面のそれぞれにて二次成形部材7側の領域が円弧状となっている。これにより、第一の空間5に供給された樹脂が第二の空間6にも供給される際、
図2Bの矢印Bにて示すように、第一の空間5に樹脂を充填する際の圧力が第一の一次成形部材1側の方向である点Oの方向に加わる。従って、凹凸形状部分への応力の集中が緩和され、その結果、凹凸形状部分の変形及び破壊が生じにくくなる。
【0029】
図2Bに示すように、第二の空間5は、二次成形部材7側からその反対側に向かって(つまり、正面から見て右側から左側に向かって)凸部3と凹部4との間が徐々に狭くなっていってもよい。これにより、第一の空間5を介して第二の空間6に樹脂が供給される際、第一の空間5に樹脂を充填する際の圧力が第一の一次成形部材1側の方向である点Oの方向に加わりやすくなり、凹凸形状部分の変形及び破壊が好適に抑制される傾向にある。
【0030】
図2Aに示すように、長手方向と直交する、第一の空間5の断面は円形状であることが好ましい。これにより、第一の空間5に樹脂を充填する際に第一の空間に加わる圧力が全方向に均一に分散されやすくなる。
なお、第一の空間の断面は円形状に限定されず、四角形状、楕円形状等であってもよい。
【0031】
第一実施形態のように、凸部の断面及び凹部の断面のそれぞれにて、二次成形部材側全体の領域が弧状であってもよく、二次成形部材側の一部の領域が弧状であってもよい。また、本開示では、長手方向に沿って、二次成形部材側全体の領域が弧状であってもよく、二次成形部材側の一部の領域が弧状であってもよい。
【0032】
本開示において、弧状としては、曲面形状であれば特に限定されず、円弧状、楕円状、アーチ状等であってもよい。
【0033】
第一の一次成形部材及び第二の一次成形部材を構成する成形材料としては、特に限定されず樹脂、前述の金属、その他の成分等が挙げられる。
第一の一次成形部材及び第二の一次成形部材並びに二次成形部材を構成し得る樹脂としては、複合成形体の用途に応じて従来から公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。
これら部材を構成し得る樹脂は、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂、エラストマー等が挙げられる。
【0034】
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)等が挙げられる。
【0035】
エラストマーの具体例としては、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0036】
第一の一次成形部材及び第二の一次成形部材を構成する成形材料は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第一の一次成形部材又は第二の一次成形部材を構成する成形材料と、二次成形部材を構成する成形材料は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
第一の一次成形部材、第二の一次成形部材及び二次成形部材を構成する成形材料としては、成形性の観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。これら部材に熱可塑性樹脂が含まれる場合、二次成形部材を構成する熱可塑性樹脂を第一の空間に充填させる際に、第一の一次成形部材、第二の一次成形部材を構成する熱可塑性樹脂を溶融又は軟化しやすくして接合強度を高める観点から、第一の一次成形部材及び第二の一次成形部材を構成する熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度が、二次成形部材を構成する熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度よりも小さいことが好ましい。
【0038】
二次成形部材が形成される第一の空間5の最大幅に対する凹部4(第一の凹部)の最大幅の比率である凹部の最大幅/第一の空間の最大幅は、0.2~1.5であればよい。
【0039】
第一の空間5の最大高さに対する凹部4の最大深さの比率である凹部の最大深さ/第一の空間の最大高さは、0.1~1であればよい。
【0040】
凹部4の最大幅に対する凸部3の最大幅は、凹部4の最大幅が凸部3の最大幅以上であればよく、凹部4の最大幅が凸部3の最大幅よりも大きくてもよい。
【0041】
凸部3の最大高さに対する凹部4の最大深さは、凸部の最大高さが凹部の最大深さ以上であればよく、凸部の最大高さが凹部の最大深さよりも大きくてもよい。
【0042】
点Oから凸部3の表面までの最大距離(凸部3の断面が円弧状の場合には、点Oを中心とし、凸部3の表面を円周とする円の半径)は点Oから凹部4の表面までの最大距離以下である。
【0043】
<第二実施形態>
本開示の複合成形体の他の一例である第二実施形態の複合成形体について、
図3を用いて説明する。
図3は、第二実施形態の複合成形体の要部の概略断面図である。
図3では、第一の一次成形部材11の凸部13を、第二の一次成形部材12の凹部14に嵌合させた構造を有する複合成形体20が示されている。第二実施形態では、凸部3の替わりに二次成形部材7側のみが存在する円弧状の凸部13とし、凸部13を凹部14に嵌合させた構造としたこと以外は第一実施形態と同様である。
【0044】
第二実施形態においても、第一の空間に供給された樹脂等の成形材料が第二の空間にも供給される際、第一の空間に樹脂等の成形材料を充填する際の圧力が第一の一次成形部材11側の方向である点Oの方向に加わる。従って、凹凸形状部分への応力の集中が緩和され、その結果、凹凸形状部分の変形及び破壊が生じにくくなる。
【0045】
<第三実施形態>
本開示の複合成形体の他の一例である第三実施形態の複合成形体について、
図4を用いて説明する。
図4は、第三実施形態の複合成形体の要部の概略断面図である。
図4では、第一の一次成形部材21の凸部23を、第二の一次成形部材22の凹部24に嵌合させた構造を有する複合成形体30が示されている。
図1に示される第一実施形態の複合成形体10では、円弧状の凸部3の中心である点Oから凸部3の表面までの最大距離と凸部3の最大高さとが略等しくなっているが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、第三実施形態の複合成形体30のように、円弧状の凸部23の中心である点O’から凸部23の表面までの最大距離が凸部23の最大高さよりも大きくなっていてもよい。これにより、
図4に示される複合成形体30では、
図1及び
図3に示される複合成形体10及び20よりも凸部の形状がより緩やかになっている。
【0046】
第三実施形態においても、第一の空間に供給された樹脂等の成形材料が第二の空間にも供給される際、第一の空間に樹脂等の成形材料を充填する際の圧力が第一の一次成形部材21側の方向である点O’の方向に加わる。従って、凹凸形状部分への応力の集中が緩和され、その結果、凹凸形状部分の変形及び破壊が生じにくくなる。
【0047】
本発明の複合成形体は前述の第一実施形態~第三実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で種々の変型例を含む。
【0048】
本開示の複合成形体は、いかなる方法により製造されてもよく、例えば、後述するようなダイスライドインジェクション(DSI)成形法により製造されたものであってもよい。以下、樹脂材料を用いたDSI成形法による一実施形態の複合成形体の製造方法について
図5~
図10を用いて説明する。
【0049】
始めに、DSI成形法に用いられる金型について説明する。
図5は、複合成形体を形成するための金型が型開きされた状態を示す端面図である。
図7は、複合成形体を形成するための金型が一次射出時に型閉じされた状態を示す端面図である。
【0050】
図5及び
図7に示すように、金型48は、ダイスライドインジェクション(DSI)成形を行う不図示の成形機に設けられている。金型48は、第一の金型50と第二の金型52とを備えている。第一の金型50及び第二の金型52は、ステンレス鋼等の金属材料から形成されている。
【0051】
第一の金型50には、第一の一次成形部材1を形成するためのキャビティ部54が設けられている。キャビティ部54は、第一の一次成形部材1の外部形状に対応した凹部が形成されている。
第二の金型52には、キャビティ部54とともに第一の一次成形部材1を形成するためのコア部55が設けられている。コア部55は、第一の一次成形部材1の内部形状に対応した凸部が形成されている。コア部55の両端部の領域αには、
図6Aに示すように、第一の一次成形部材1の凸部3を形成するための凹部44、及び第二の一次成形部材2と組み合わせることで第一の空間を形成するための凹部を形成するための凸部46が設けられている。また、第二の金型52には、第一の一次成形部材1の他の内部形状を形成可能とするような凹凸形状が形成されていてもよい。
【0052】
第二の金型52には、第二の一次成形部材2を形成するためのキャビティ部56が設けられている。キャビティ部56は、第二の一次成形部材2の外部形状に対応した凹部が形成されている。
第一の金型50には、キャビティ部56とともに第二の一次成形部材2を形成するためのコア部53が設けられている。コア部53は、第二の一次成形部材2の内部形状に対応した凸部が形成されている。コア部53の両端部の領域βには、
図6Bに示すように、第二の一次成形部材2の凹部4を形成するための凸部40、及び第一の一次成形部材1と組み合わせることで第一の空間を形成するための凹部を形成するための凸部42が設けられている。また、第一の金型50には、第二の一次成形部材2の他の内部形状を形成可能とするような凹凸形状が形成されていてもよい。
【0053】
第一の金型50には、キャビティ部54及びキャビティ部56に一次射出用の第一の樹脂材料を射出するためのゲート62が形成されている。ゲート62の射出口の位置は特に限定されない。
【0054】
さらに、第一の金型50には、二次射出用の第二の樹脂材料を射出するためのゲートが形成される。本実施形態では、一次射出用の第一の樹脂材料を射出するためのゲート62が二次射出用の第二の樹脂材料を射出するためのゲートを兼ねる構成としているが、二次射出用の第二の樹脂材料を射出するためのゲートは、一次射出用の第一の樹脂材料を射出するためのゲート62とは独立して設けられていてもよい。
なお、第一の樹脂材料に含まれ得る成分としては、第一の一次成形部材及び第二の一次成形部材を構成し得る樹脂、前述の金属、その他の成分等が挙げられる。
第二の樹脂材料に含まれ得る成分としては、二次成形部材を構成し得る樹脂、前述の金属、その他の成分等が挙げられる。
【0055】
成形機は、金型48のほか、ゲート62から一次射出用の第一の樹脂材料及び二次射出用の第二の樹脂材料を射出する射出機64、第一の金型50及び第二の金型52の型閉じ及び型開きを切り替えるための第一駆動手段、並びに、第一の金型50及び第二の金型52が型開きの状態で第二の金型52を第一の金型50に対してスライド移動させる第二駆動手段を備える。
さらに、成形機は、射出機64、第一駆動手段、第二駆動手段等の各種装置の動作を制御するための制御部を備えている。制御部は、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサ等により構成される。
【0056】
次に、一実施形態の複合成形体の製造方法を実施するために用いられる成形機の動作について説明する。
一実施形態では、成形機の制御部がプログラムを実行して第一駆動手段、第二駆動手段、射出機64等の動作を制御することで、複合成形体の製造方法が実施される。
【0057】
成形機により第一の一次成形部材1及び第二の一次成形部材2を形成する前段階では、
図5に示すように、第一の金型50と第二の金型52とは型開きされた状態である。
【0058】
次いで、第一の一次成形部材1及び第二の一次成形部材2の成形開始のため、
図7に示すように第一の金型50と第二の金型52とが型閉じされる。
【0059】
型閉じされた後、第一の樹脂材料が射出機64からゲート62を介してキャビティ部54及びキャビティ部56内にそれぞれ一次射出される。これにより、第一の一次成形部材1及び第二の一次成形部材2がそれぞれ形成される。なお、本実施形態では、第一の一次成形部材1及び第二の一次成形部材2を同時並行して形成する方法について説明したがこの構成に限定されない。例えば、逐次的に第一の一次成形部材1及び第二の一次成形部材2を形成してもよく、別途成形した第二の一次成形部材2をキャビティ部56に予め配置し、射出機64により第一の一次成形部材1のみを成形してもよい。
【0060】
次に、
図8に示すように、第二の金型52を矢印A方向へスライド移動させて第一の一次成形部材1と第二の一次成形部材2とを対面させる。そして、
図9に示すように、第一の金型50と第二の金型52との型閉じを行う。
【0061】
図9に示す第一の金型50と第二の金型52との型閉じが行われることで、第一の一次成形部材1の凸部3と第二の一次成形部材2の凹部4とが嵌合され、さらに第一の空間が形成される。
【0062】
次いで、
図9に示すように、第二の樹脂材料が、射出機64からゲート62を介して第一の空間内に二次射出される。二次射出された第二の樹脂材料を第一の空間に充填することで、
図9及び
図10に示すように第一の一次成形部材1と第二の一次成形部材2とが二次成形部材7により接合された中空の複合成形体10Aが得られる。このとき、第一の空間5に供給された第二の樹脂材料は、第二の空間にも供給される。
【0063】
また、本実施形態では、第一の空間を介して第二の空間に第二の樹脂材料が供給される際、第一の空間に樹脂を充填する際の圧力が第一の一次成形部材1側の方向に加わりやすくなり、凹凸形状部分の変形及び破壊が好適に抑制される傾向にある。
【実施例】
【0064】
以下、複合成形体製造時の応力発生状況をコンピュータシミュレーションで解析した。
【0065】
(解析モデル1)
解析モデル1として、それぞれ高さ17mm×幅20mm×長さ20mmの第一の一次成形部材及び第二の一次成形部材を採用した。第一の一次成形部材及び第二の一次成形部材の材質としては、ポリプラスチックス株式会社のポリフェニレンサルファイド(品名:1130T6)を採用した。第一の一次成形部材の凸部及び第二の一次成形部材の凹部の形状は、
図11に示す形状とし、第一の空間の長手方向に直交する断面形状は、直径3mmの円形状であった。また、第一の一次成形部材について、凸部の最大幅は1.4mmであり、最大高さは1.5mmであった。第二の一次成形部材について、凹部の最大幅は1.4mmであり、最大高さは1.5mmであった。第一の一次成形部材の凸部及び第二の一次成形部材の凹部を嵌合させて凹凸形状部分及び第一の空間を形成し、第一の空間にポリプラスチックス株式会社のポリフェニレンサルファイド(品名:1130T6)を35MPaで充填すると仮定したときの凹凸形状部分に加わる最大応力を解析した。解析モデル1の最大応力は、102MPaであった。
【0066】
(解析モデル2)
解析モデル2として、解析モデル1と同じ大きさ及び同じ材質の第一の一次成形部材及び第二の一次成形部材を採用した。第一の一次成形部材の凸部及び第二の一次成形部材の凹部の形状は、
図1に示す円弧状とし、第一の空間の長手方向に直交する断面形状は、直径1.8mmの円形状であった。また、第一の一次成形部材について、凸部の最大幅は0.9mmであり、最大高さは0.9mmであった。第二の一次成形部材について、凹部の最大幅は1.8mmであり、最大高さは0.9mmであった。第一の一次成形部材の凸部及び第二の一次成形部材の凹部を嵌合させて凹凸形状部分及び第一の空間を形成し、第一の空間にポリプラスチックス株式会社のポリフェニレンサルファイド(品名:1130T6)を解析モデル1と同様の条件で充填すると仮定したときの凹凸形状部分に加わる最大応力を解析した。解析モデル2の最大応力は、39MPaであった。
【0067】
解析モデル1及び2の結果から、本開示の複合成形体を製造する際の最大応力は小さく、嵌合された凹凸形状部分の変形及び破壊が抑制された複合成形体が得られることが推測された。
【0068】
2022年1月26日に出願された日本国特許出願2021-010418号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0069】
10、10A、20、30、100 複合成形体
1、11、21、101 第一の一次成形部材
2、12、22、102 第二の一次成形部材
3、13、23、103 凸部
4、14、24、104 凹部
5、105 第一の空間
6、106 第二の空間
7、107 二次成形部材
8、108 流路
48 金型
53、55 コア部
54、56 キャビティ部
62 ゲート
64 射出機