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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】モード変換デバイス及び設計方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/14 20060101AFI20241210BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B6/14
G02B6/02 416
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023500172
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005851
(87)【国際公開番号】W WO2022176046
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽子
(72)【発明者】
【氏名】森 崇嘉
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】中島 和秀
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156641(JP,A)
【文献】特開昭62-229110(JP,A)
【文献】米国特許第05216739(US,A)
【文献】FANG, Jian et al.,Low-DMD few-mode fiber with distributed long-period grating,Optics Letters,FANG,2015年08月17日,Vol. 40, No. 17,pp. 3937 - 3940
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/14
G02B 6/02
IEEE Xplore
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの伝搬モードで光を伝搬できる、ステップインデックス構造の光ファイバのコアに長周期グレーティングを有するモード変換デバイスであって、
前記長周期グレーティングが数C1の関係を満たしていることを特徴とするモード変換デバイス。
【数C1】
ただし、
λは波長(nm)、半値全幅FWHMは中心波長におけるモード変換の結合効率と比較して結合効率が半分になる波長帯域(nm)、Cは結合効率、Lは完全結合長(cm)、Lはグレーティング長(cm)、Λはグレーティングピッチ(μm)、Δβはモード変換対象の中心波長における2つの前記伝搬モードの伝搬定数差(μm-1)、|dΔβ/dλ|の単位は(1015 -2 )である。
【請求項2】
光の伝搬方向において前記長周期グレーティングの後段にあり、前記光ファイバのコアを伝搬する光の内、前記長周期グレーティングが1のモードから他のモードへ変換した所望の波長の光を前記光ファイバの側面から出力するタップ導波路をさらに備えており、
前記タップ導波路は、前記コアの中心から角度αで前記光ファイバの側面に向けて伸びることを特徴とする請求項1に記載のモード変換デバイス。
【請求項3】
前記長周期グレーティングと前記タップ導波路との組が前記光ファイバに縦列されていることを特徴とする請求項2に記載のモード変換デバイス。
【請求項4】
前記長周期グレーティングは、前記1のモードから前記他のモードへ変換する光の波長が互いに異なるように、数C1に記載される設計パラメータがそれぞれ異なることを特徴とする請求項3に記載のモード変換デバイス。
【請求項5】
前記長周期グレーティングは、前記1のモードから前記他のモードへ変換する光の波長が同じ且つ前記結合効率が異なるように、前記グレーティング長Lgがそれぞれ異なることを特徴とする請求項3に記載のモード変換デバイス。
【請求項6】
少なくとも2つの伝搬モードで光を伝搬できる、ステップインデックス構造の光ファイバのコアに設置する長周期グレーティングの設計パラメータを決定する設計方法であって、
前記光ファイバのコア半径a(μm)、比屈折率差Δ(%)、モード変換を行う光の中心波長λ(nm)、結合効率C、及び半値全幅FWHM(nm)が与えられること、
前記光ファイバのコア半径a(μm)と比屈折率差Δ(%)から、モード変換対象の前記中心波長λ(nm)における2つの前記伝搬モードの伝搬定数差Δβ(μm-1)及びその波長微分dΔβ/dλをモード解析で取得すること、
数C2で前記長周期グレーティングのグレーティングピッチΛ(μm)を計算すること、
数C3で係数bを計算すること、
数C4で完全結合長L(cm)を計算すること、及び
数C5でグレーティング長L(cm)を計算すること
を特徴とする設計方法。
【数C2】
【数C3】
【数C4】
ただし、半値全幅FWHM(nm)は中心波長λ(nm)におけるモード変換の結合効率と比較して結合効率が半分になる波長帯域、|dΔβ/dλ|の単位は(1015 -2 )である。
【数C5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバに長周期グレーティング(LPG;Long Period Grating)が形成されたモード変換デバイス及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、ある波長の光のみを選択的に光ファイバのクラッドモードへ結合させるLPGについて開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Craig D. Poole, etc.,“Helical-Grating Two-Mode Fiber Spatial-Mode Coupler”,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL 9, NO 5. MAY 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LPGにおいて結合効率と半値全幅の関係は一意に求まるが、完全結合長、ファイバ構造、及び中心波長のいずれかの値が変わると、結合効率と半値全幅の関係も変化する。このため、LPGを備えるモード変換デバイスは、任意に結合効率と半値全幅を設計することが困難という課題があった。なお、「半値全幅」とは、中心波長におけるモード変換の結合効率と比較して結合効率が半分になる波長帯域を意味し、モード変換デバイスのモード変換可能な波長域である。
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、任意の結合効率と半値全幅を設計することができるモード変換デバイス及びその設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るモード変換デバイスは、変換する2つのモード間の伝搬定数差Δβの波長微分と結合効率及び半値全幅との関係に基づいてパラメータを調整することとした。
【0007】
具体的には、本発明に係るモード変換デバイスは、 少なくとも2つの伝搬モードで光を伝搬できる、ステップインデックス構造の光ファイバのコアに長周期グレーティングを有するモード変換デバイスであって、前記長周期グレーティングが数C1の関係を満たしていることを特徴とする。
【数C1】
ただし、
λは波長(nm)、半値全幅FWHMは中心波長におけるモード変換の結合効率と比較して結合効率が半分になる波長帯域(nm)、Cは結合効率、Lは完全結合長(cm)、Lはグレーティング長(cm)、Λはグレーティングピッチ(μm)、Δβはモード変換対象の中心波長における2つの前記伝搬モードの伝搬定数差(μm-1)、|dΔβ/dλ|の単位は(1015 -2 )である。
【0008】
コア半径a、コアの比屈折率差Δの光ファイバのコアに、数C1の関係を満たすグレーティングピッチΛとグレーティング長LgのLPGを形成することで、所望の波長において所望の半値全幅FWHMと結合効率Cのモード変換デバイスを得ることができる。
【0009】
具体的な設計方法は、少なくとも2つの伝搬モードで光を伝搬できる、ステップインデックス構造の光ファイバのコアに設置する長周期グレーティングの設計パラメータを決定する設計方法であって、
前記光ファイバのコア半径a(μm)、比屈折率差Δ(%)、モード変換を行う光の中心波長λ(nm)、結合効率C、及び半値全幅FWHM(nm)が与えられること、
前記光ファイバのコア半径a(μm)と比屈折率差Δ(%)から、モード変換対象の前記中心波長λ(nm)における2つの前記伝搬モードの伝搬定数差Δβ(μm-1)及びその波長微分dΔβ/dλをモード解析で取得すること、
数C2で前記長周期グレーティングのグレーティングピッチΛ(μm)を計算すること、
数C3で係数bを計算すること、
数C4で完全結合長L(cm)を計算すること、及び
数C5でグレーティング長L(cm)を計算すること
を特徴とする。
【数C2】
【数C3】
【数C4】
ただし、半値全幅FWHM(nm)は中心波長λ(nm)におけるモード変換の結合効率と比較して結合効率が半分になる波長帯域、|dΔβ/dλ|の単位は(1015 -2 )である。
【数C5】
【0010】
従って、本発明は、任意の結合量と半値全幅を設計することができるモード変換デバイス及びその設計方法を提供することができる。
【0011】
本発明に係るモード変換デバイスは、光の伝搬方向において前記長周期グレーティングの後段にあり、前記光ファイバのコアを伝搬する光の内、前記長周期グレーティングが1のモードから他のモードへ変換した所望の波長の光を前記光ファイバの側面から出力するタップ導波路をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
本モード変換デバイスは、光ファイバを伝搬する光から所望波長の光を所望のパワーで取り出すことができる。
【0013】
ここで、本発明に係るモード変換デバイスは、前記長周期グレーティングと前記タップ導波路との組が前記光ファイバに縦列されていることでもよい。
【0014】
この場合、前記長周期グレーティングは、前記1のモードから前記他のモードへ変換する光の波長が互いに異なるように、数C1に記載される設計パラメータがそれぞれ異なることとする。それぞれのタップ導波路から異なる波長の光を取り出すことができる。
【0015】
この場合、前記長周期グレーティングは、前記1のモードから前記他のモードへ変換する光の波長が同じ且つ前記結合効率が異なるように、前記グレーティング長Lgがそれぞれ異なることとしてもよい。それぞれのタップ導波路から異なる所望のパワーの光を取り出すことができる。
【0016】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、任意の結合効率と半値全幅を設計することができるモード変換デバイス及びその設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】長周期グレーティング(LPG)を有するモード変換デバイスの概要を説明する図である。
図2】長周期グレーティング(LPG)を形成した場合の透過スペクトルの一例を説明する図である。
図3】長周期グレーティング(LPG)を形成した場合の結合量と半値全幅(FWHM)の関係の一例を説明する図である。
図4】FWHMと結合量の関係の一例を説明する図である。
図5】FWHMとLcの積とdΔβ/dλの関係を説明する図である。
図6】結合効率Cと係数bの関係を説明する図である。
図7】本発明に係る設計方法を説明する図である。
図8】本発明に係るモード変換デバイスを説明する図である。
図9】本発明に係るモード変換デバイスを説明する図である。
図10】本発明に係るモード変換デバイスを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
(実施形態1)
図1は、長周期グレーティング(LPG)を有するモード変換デバイスの概要を説明する図である。周期的に摂動を加えることで入射したモード(モード1)が別のモード(モード2)に変換する。このとき摂動を加える周期(Λ)と中心波長(λ)におけるモード1とモード2の伝搬定数差(Δβ)が式(1)の関係を満たす必要がある。
【数1】
【0021】
ここで、入射したモード1がモード2に完全結合する長さを完全結合長(Lc)と呼ぶ。Lcは摂動1か所あたりのモード変換量によって決定し、1か所あたりのモード変換量が大きいと、完全結合長が短くなる。一方で1か所あたりのモード変換量が大きいとモード不整合による損失が増大する。また、グレーティング長をLgと定義する。Lg=Lcの場合、前述の通り図1(a)に示すようにモード1は完全にモード2へ変換する。また、Lgを調整することで、図1(b)に示すようにモード1からモード2への結合量(C)を制御することができる。
【0022】
このときの、波長λにおける結合効率Cは式(2)で示される。
【数2】
Lg=Lcの場合、モード1は完全にモード2へ結合し、C=1となる。
【0023】
図2は、コア半径(a)4.5μm、且つクラッドに対するコアの比屈折率差(Δ)0.35%の光ファイバに、Lc=3cmのグレーティングを形成した場合の中心波長(λ)1350nmの光の透過率の一例を説明する図である。図1で説明したモード1及びモード2を、それぞれLP01モード及びLP11aモードとしている。ここで「透過率」とは、LP01モードを入射した際のLP01モードの透過率である。「結合効率」は、中心波長で減衰している量である。図2の各ラインはLg/Lcを変化させた場合の透過率を示しており、Lg/Lcを制御することで結合効率を制御できること、及び結合効率が増加する(Lgを大きくする)と帯域幅が狭くなる傾向があることがわかる。
【0024】
図3は、結合効率と半値全幅(FWHM)の関係を説明する図である。λ=1350nm、Lc=3cmとし、光ファイバ構造であるコア半径aとコア比屈折率Δをそれぞれ
(a=5μm,Δ=0.28%)、(a=4.5μm,Δ=0.35%)、(a=4μm,Δ=0.44%)とした。
【0025】
図3より、結合効率が増大する(Lgを大きくする)にしたがってFWHMが減少すること、及びFWHMと結合効率の関係は光ファイバ構造に依存することがわかる。FWHMと結合効率の関係は、光ファイバ構造だけでなく、Lc又はλを変えても同様に変化する。ここで、光ファイバ構造を示すパラメータとして波長λにおける2モードの伝搬定数差Δβの波長微分(dΔβ/dλ)を導入する。なお、2モードの伝搬定数差Δβは光ファイバ構造からモード解析によって求めることができる。
【0026】
図4は、図3で説明したFWHMと結合効率の関係をdΔβ/dλを横軸にしてプロットし直した図である。本図では、光ファイバ構造(Δ、a)および中心波長(λ)を違えたデータを重ねて表示している。図4より、ファイバ構造や中心波長に関わらず結合効率に対して、FWHMとdΔβ/dλの関係が一意に決定することがわかる。
【0027】
さらに、FWHMとLcの積を計算することで、Lcに関わらず結合効率に対してFWHMとdΔβ/dλの関係が一意に決定する。図5は、FWHMとLcの積とdΔβ/dλの関係を説明する図である。各プロットは、計算から求めたFWHMとLcの積とdΔβ/dλの関係を、破線は各結合効率に対して求めた近似関数を示す。各結合効率に対する近似関数を式(3)~(6)に示す。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0028】
式(3)~(6)に示すように、FWHMとLcの積とdΔβ/dλの関係は式(7)に示す反比例の式に近似できることがわかる。
【数7】
ここで、結合効率と反比例の係数bの関係を図6に示す。図6より、係数bは、式(8)から求められる。
【数8】
ここでCは、線形表示の結合効率である。
【0029】
これより、式(1)、式(2)、式(7)及び式(8)を満たすグレーティング構造を光ファイバに設けることで、任意の結合効率と帯域幅を有するモード変換デバイスを構成することができる。すなわち、本発明に係るモード変換デバイスは、少なくとも2つの伝搬モードで光を伝搬できる、ステップインデックス構造の光ファイバのコアに長周期グレーティングを有し、前記長周期グレーティングが数C1の関係を満たしていることを特徴とする。
【数C1】
ただし、
λは波長(nm)、半値全幅FWHMは中心波長におけるモード変換の結合効率と比較して結合効率が半分になる波長帯域(nm)、Cは結合効率、Lは完全結合長(cm)、Lはグレーティング長(cm)、Λはグレーティングピッチ(μm)、Δβはモード変換対象の中心波長における2つの前記伝搬モードの伝搬定数差(μm-1)、|dΔβ/dλ|の単位は(1015 -2 )である。
【0030】
ここでは、LP01モードとLP11モードの変換効率を例に挙げて計算を行ったが、例えばLP01モードとクラッドモードや、LP01モードとLP02モード、LP11モードとLP21モードなどほかのモード間の結合でも同様に考えることができる。また、光ファイバがステップインデックス構造に関わらず、グレーデッドインデックス構造などほかの構造でも同様に考えることができる。
【0031】
(実施形態2)
図7は、実施形態1で説明したモード変換デバイスの長周期グレーティングを設計する方法を説明するフローチャートである。当該設計方法は、少なくとも2つの伝搬モードで光を伝搬できる、ステップインデックス構造の光ファイバのコアに設置する長周期グレーティングの設計パラメータを決定する設計方法であって、
前記光ファイバのコア半径a(μm)、比屈折率差Δ(%)、モード変換を行う光の中心波長λ(nm)、結合効率C、及び半値全幅FWHM(nm)が与えられること(ステップS01)、
前記光ファイバのコア半径a(μm)と比屈折率差Δ(%)から、モード変換対象の前記中心波長λ(nm)における2つの前記伝搬モードの伝搬定数差Δβ(μm-1)及びその波長微分dΔβ/dλをモード解析で取得すること(ステップS02)、
数C2で前記長周期グレーティングのグレーティングピッチΛ(μm)を計算すること(ステップS03)、
数C3で係数bを計算すること(ステップS04)、
数C4で完全結合長L(cm)を計算すること(ステップS05)、及び
数C5でグレーティング長L(cm)を計算すること(ステップS06)
を特徴とする。
【数C2】
【数C3】
【数C4】
ただし、半値全幅FWHM(nm)は中心波長λ(nm)におけるモード変換の結合効率と比較して結合効率が半分になる波長帯域、|dΔβ/dλ|の単位は(1015 -2 )である。
【数C5】
【0032】
設計パラメータは、光ファイバ構造を示すdΔβ/dλ、Lc、Lg、Λ、λ、C及びFWHMである。まず、ステップS01において仕様値として前記光ファイバのコア半径a(μm)、比屈折率差Δ(%)、モード変換を行う光の中心波長λ(nm)、結合効率C、及び半値全幅FWHM(nm)が与えられる。
【0033】
ステップS02で、光ファイバ構造のコア半径a(μm)と比屈折率差Δ(%)から、中心波長λ(nm)における伝搬定数差Δβおよびその波長微分dΔβ/dλをモード解析によって求める。
ステップS03で、式(C2)に伝搬定数差Δβを代入し、グレーティングピッチΛ(μm)を計算する。
ステップS04で、式(C3)に仕様値である結合効率Cを代入し、係数bを計算する。
ステップS05で、式(C4)に係数b、仕様値の半値全幅FWHM、及び波長微分dΔβ/dλを代入し、完全結合長Lcを計算する。
ステップS06で、式C5に完全結合長Lcと仕様値である結合効率Cを代入してグレーティング長Lgを計算する。
【0034】
なお、ステップS03とステップ(S04~S06)とは同時に行ってもよいし、いずれか一方を先に行ってもよい。
【0035】
モード変換可能な波長域(FWHM)は、LPGを使用するデバイスによって異なる。例えば、モード多重伝送等で広い帯域で用いるような場合には広いほうが望ましい。一方で、実施形態3で説明するようなタップデバイスの場合には狭いほうが望ましい。本実施形態の設計方法は、デバイスの用途(仕様)に合わせたグレーティングピッチΛとグレーティング長Lgを導き出せることがポイントである。
【0036】
(実施形態3)
図8は、本実施形態のモード変換デバイス301を説明する図である。モード変換デバイス301は、光の伝搬方向において長周期グレーティング21の後段にあり、光ファイバ50のコア51を伝搬する光の内、長周期グレーティング21が1のモードから他のモードへ変換した所望の波長の光を前記光ファイバの側面から出力するタップ導波路53をさらに備えることを特徴とする。
【0037】
本実施形態では、1のモードが基本モード、他のモードが高次モードとして説明する。
モード変換デバイス301は、光ファイバ50のコア51を伝搬する光の内、高次モードの光を光ファイバ50の側面から出力するタップ導波路53が形成されたタップ部10と、
前記光の伝搬方向においてタップ部10の前段にあり、光ファイバ50のコア51に所望の波長の光を基本モードから前記高次モードへ変換するグレーティング21が形成されたグレーティング部20と、
を備える。
【0038】
光ファイバ50は、ステップインデックスファイバとする。光ファイバ50は、長手方向に、グレーティング部20およびタップ部10が順に形成されている。タップ導波路53へ光が入射できる方向を光導波方向とする。図8では、光導波方向は左から右への方向である。また、タップ導波路53がコア51から光ファイバ50の側面へ向いている方向をタップ方向とする。図8では、タップ方向は、光導波方向に対して順方向に傾いた方向である。
【0039】
グレーティング部20は、光ファイバ50のコア51を伝搬する光のうち、取り出したい波長の光を所望量だけ長周期グレーティング21によってLP01モードからLP11モードに変換する。グレーティング構造は、例えばフェムト秒レーザ加工、CO2レーザ加工、またはグレーティングの押し当てによって実現することができる。
【0040】
タップ部10は、コア51の中心から角度αで光ファイバ50の側面(クラッド52の界面)に向けて伸びるタップ導波路53を有している。タップ部10は、タップ導波路53とコア51との角度α、タップ導波路53の直径d、及びタップ導波路53の屈折率を制御することで、コア51からLP11モードのみを選択的に取り出す。
【0041】
ここで、コア51からタップ導波路53へ結合する光をタップ光、コア51をそのまま伝搬する光を透過光と定義する。例えば、タップ部10の出力端(光ファイバ50の側面)に受光器54を接続することで、光ファイバ50からタップ光のみを取り出し受光することができる。
【0042】
タップ部10において、コア51からタップ導波路53への結合効率は、コア51を伝搬する光の伝搬モードに強く依存する。これは、高次モードになるほど閉じ込めが小さくなり、タップ導波路53へ結合しやすくなるためである。このため、高次モードのみをタップ導波路へ遷移させることができる。
【0043】
ここで、高次モードのみをタップ導波路53へ結合させるためには、タップ導波路53の屈折率と直径dの値が重要である。これらの値が大きすぎると、タップ導波路53のNAが大きくなり、LP01モードも結合しやすくなるため、透過光の損失が増加することになる。一方、これらの値が小さすぎると、タップ導波路53のNAが小さくなり、高次モードが結合し難くなるため、タップ光のタップ導波路53への結合効率が低下することになる。つまり、タップ導波路53の屈折率と直径dの値を適切に決定する必要がある。
【0044】
また、高次モードの光を高効率にタップ導波路53へ結合させ、基本モードの光をコア51に閉じ込めたまま伝搬させるためには、αを十分小さくし、断熱的にモードを遷移させていく必要がある。αが大きいと、LP01モードもタップ導波路51の影響を受けて放射モードに結合し、損失が発生する。このため、LP01モードの損失の観点からαの上限値が決定される。一方、αは0より大きい任意の値をとることができるが、αによってタップ部10の全長Ltapが決定されるため、タップ導波路53の伝搬損失やデバイスの全長に対する要求条件の観点からαの下限値が決定される。
【0045】
一般的なシングルモードファイバでは光ファイバ50の直径dは125μmであり、例えば、タップ部Ltapを5cm以下にするためには、αは0.07°以上に設定する必要がある。
【0046】
グレーティング部20は、ピッチΛのグレーティング21を有する。例えば、グレーティング21は、長周期ファイバグレーティング(LPG)である。グレーティング部20で任意の波長λ且つ所望の光量の光をLP01モードからLP11モードへ変換するためには、実施形態1及び2で説明した設計パラメータでグレーティング21を成型する。
【0047】
(実施形態4)
図9及び図10は、本実施形態のモード変換デバイス302を説明する図である。モード変換デバイス302は、図8で説明したモード変換デバイス301の長周期グレーティング21とタップ導波路53との組が光ファイバ50に縦列されていることを特徴とする。つまり、モード変換デバイス302は、モード変換デバイス301を多段に組み合わせたシステムである。長周期グレーティング21とタップ導波路53の組(モード変換デバイス301)は、例えば、ある程度の距離(数m~数km)ごとに配置されている。
【0048】
図9のモード変換デバイス302の長周期グレーティング21は、前記1のモードから前記他のモードへ変換する光の波長が互いに異なるように、数C1に記載される設計パラメータがそれぞれ異なることを特徴とする。
図9のモード変換デバイス302は、各モード変換デバイス(301-1、301-2、301-3)ごとに波長を割り当て、取り出す信号を波長によって制御する。取り出したい波長の波長間隔(中心波長λと帯域幅(FWHM))に合わせ、各モード変換デバイスの設計パラメータを設定することで、任意の波長間隔で信号を取り出すことができる。
【0049】
図10のモード変換デバイス302の長周期グレーティング21は、前記1のモードから前記他のモードへ変換する光の波長が同じ且つ前記結合効率が異なるように、グレーティング長Lgがそれぞれ異なることを特徴とする。
図10のモード変換デバイス302は、1波長に対して複数のモード変換デバイス(301-1、301-2、301-3)を割り当てている。1波長で信号を送り各LPGの結合効率を制御することで、少しずつ多段に信号を取り出すことができる。図10のモード変換デバイス302は、1波長で複数個所から同時に信号を出力させることができる。
【符号の説明】
【0050】
10:タップ部
20:グレーティング部
21:長周期グレーティング(LPG)
50:光ファイバ
51:コア
52:クラッド
53:タップ導波路
54:受光器
301、302:モード変換デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10