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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電圧制御発振器およびバイアス生成回路
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/18 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H03B5/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023500231
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006159
(87)【国際公開番号】W WO2022176117
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】徐 照男
(72)【発明者】
【氏名】長谷 宗彦
(72)【発明者】
【氏名】野坂 秀之
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0149431(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0072916(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0093637(US,A1)
【文献】国際公開第2021/005679(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の単位セルと第1のコンデンサと前記第1の単位セルに接続する伝送線路とが接続する第1の開ループと、第2の単位セルと第2のコンデンサと前記第2の単位セルに接続する伝送線路と前記第1の単位セルに接続する伝送線路が接続する第2の開ループとを備え、前記第1の開ループと前記第2の開ループとの少なくともいずれかにより発振する電圧制御発振器であって、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの間に、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルと並列に接続される補償用単位セルと、
前記補償用単位セルに接続する第3のコンデンサと
を備え、
前記第1の単位セルと、前記第2の単位セルと、前記補償用単位セルとが増幅器であり、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとに対称的な電圧が供給され、
前記補償用単位セルに固定バイアスが供給され、
前記補償用単位セルが、前記第1の単位セル前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる利得を補償することにより、前記発振が持続されることを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項2】
第1の単位セルと、
前記第1の単位セルと並列に接続される第2の単位セルと、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの間に、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルと並列に接続される補償用単位セルと、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルと前記補償用単位セルの電源電圧用端子と、
出力端子と、
前記第1の単位セルの前記電源電圧用端子側に接続される第1のコンデンサと、
前記第2の単位セルの前記電源電圧用端子側に接続される第2のコンデンサと、
前記補償用単位セルの前記電源電圧用端子側に接続される第3のコンデンサと、
前記第1の単位セルと前記補償用単位セルとの間で、前記出力端子側と前記電源電圧用端子側それぞれに並列に接続される伝送線路と、
前記第2の単位セルと前記補償用単位セルとの間で、前記出力端子側と前記電源電圧用端子側それぞれに並列に接続される伝送線路と、
前記第2の単位セルの前記出力端子側と前記電源電圧用端子側それぞれに接続される伝送線路と、
前記電源電圧用端子に接続される入力終端抵抗とを備え、
前記第1の単位セルと、前記第2の単位セルと、前記補償用単位セルとが増幅器であり、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとに対称的な電圧が供給され、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる発振が生じ、
前記補償用単位セルに固定バイアスが供給され、
前記補償用単位セルが、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる利得を補償することにより、前記発振が持続されることを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項3】
順に、出力端子と、
第1の伝送線路と、
第2の伝送線路と、
第3の伝送線路と、
第4の伝送線路と、
第5の伝送線路と、
第6の伝送線路と、
第7の伝送線路と、
第8の伝送線路と、
第9の伝送線路と、
入力終端抵抗と
を備え、
第1の単位セルと、
第2の単位セルと、
補償用単位セルと、
第1のコンデンサと
第2のコンデンサと、
第3のコンデンサと
を備え、
前記第3の伝送線路と前記第4の伝送線路との間と、前記第6の伝送線路と前記第7の伝送線路との間に、前記第1の単位セルと、前記第1のコンデンサとが直列に接続され、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路との間と、前記第8の伝送線路と前記第9の伝送線路との間に、前記第2の単位セルと、前記第2のコンデンサとが直列に接続され、
前記第2の伝送線路と前記第3の伝送線路との間と、前記第7の伝送線路と前記第8の伝送線路との間に、前記補償用単位セルと、前記第3のコンデンサとが直列に接続され、
前記第1の単位セルと、前記第2の単位セルと、前記補償用単位セルとが増幅器であり、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとに対称的な電圧が供給され、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる発振が生じ、
前記補償用単位セルに固定バイアスが供給され、
前記補償用単位セルが、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる利得を補償することにより、前記発振が持続されることを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項4】
順に、出力端子と、
第4の伝送線路と、
第3の伝送線路と、
第2の伝送線路と、
第1の伝送線路と、
第5の伝送線路と、
第6の伝送線路と、
第7の伝送線路と、
第8の伝送線路と、
第9の伝送線路と、
入力終端抵抗と
を備え、
第1の単位セルと、
第2の単位セルと、
補償用単位セルと、
第1のコンデンサと
第2のコンデンサと、
第3のコンデンサと
を備え、
前記第3の伝送線路と前記第4の伝送線路との間と、前記第6の伝送線路と前記第7の伝送線路との間に、前記第1の単位セルと、前記第1のコンデンサとが直列に接続され、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路との間と、前記第8の伝送線路と前記第9の伝送線路との間に、前記第2の単位セルと、前記第2のコンデンサとが直列に接続され、
前記第2の伝送線路と前記第3の伝送線路との間と、前記第7の伝送線路と前記第8の伝送線路との間に、前記補償用単位セルと、前記第3のコンデンサとが直列に接続され、
前記第1の単位セルと、前記第2の単位セルと、前記補償用単位セルとが増幅器であり、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとに対称的な電圧が供給され、
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる発振が生じ、
前記補償用単位セルに固定バイアスが供給され、
前記補償用単位セルが、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる利得を補償することにより、前記発振が持続されることを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項5】
前記伝送線路の特性インピーダンスが、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルと前記補償用単位セルそれぞれの入出力寄生容量と、前記入力終端抵抗と整合されることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
前記第1の単位セルと前記第2の単位セルと前記補償用単位セルそれぞれが、
第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタに直列に接続される第2のトランジスタとを備え、
前記第1のトランジスタのベースが抵抗を介してバイアス端子に接続されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電圧制御発振器。
【請求項7】
前記補償用単位セルのトランジスタのサイズが、前記第1の単位セルのトランジスタのサイズより大きいことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電圧制御発振器。
【請求項8】
前記補償用単位セルのトランジスタのサイズが、前記第1の単位セルのトランジスタのサイズの2倍であることを特徴とする請求項に記載の電圧制御発振器。
【請求項9】
前記第2の単位セルの出力端子および電源電圧端子側に、第2の補償用単位セルが配置されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電圧制御発振器。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電圧制御発振器において、前記第1の単位セルに入力される電圧を前記第2の単位セルに出力するバイアス生成回路であって、
トランジスタと、
前記トランジスタのエミッタに接続されるエミッタ抵抗と、
前記トランジスタのコレクタに接続されるコレクタ抵抗と、
前記トランジスタのベースに接続される容量と、
前記トランジスタと前記エミッタ抵抗と並列に接続される、直列接続された2つの抵抗と
を備えるバイアス生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域で動作する電圧制御発振器およびバイアス生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数の可変レンジが広い電圧制御発振器(Voltage-controlled oscillator、 以下、「VCO」という。)は、光通信や無線通信、レーダ等の様々なアプリケーションで必要とされている。高い中心周波数および広い可変レンジを実現できるVCOのアーキテクチャとして、図7に示すリバースゲインモードの分布型(distributed)VCOが提案されている(非特許文献1)。
【0003】
基本構成は、分布型増幅回路(以下、「分布アンプ」という。)をベースとしており、例えば、複数の単位セル51、52と伝送線路53_1~53_7、入力終端抵抗54から構成される。従来では、隣り合う一対(2個)の単位セル51、52を用いて、両者に与えるバイアス電圧を対称的に変化させることにより、信号が伝搬するループの時定数を変化させ、発振周波数を変化させることが可能である。
【0004】
ここで、「対称的に変化させる」とは、一方の単位セルに供給するバイアス電圧を増加させ、この増加させた電圧分、他方に供給するバイアス電圧を減少させることをいう。換言すれば、一方の単位セルに供給するバイアス電圧と他方に供給するバイアス電圧との和が一定になるように、両方の単位セルに供給するバイアス電圧を変化させることをいう。
【0005】
発振周波数は、以下の通り、決定される。図7に示すように、単位セル(1)51が完全なON状態(利得特性が最も高い状態)となるようにバイアス端子55_1に高い電圧Vb1を与え、単位セル(2)52が完全なOFF状態(利得特性が最も低い状態)となるようにバイアス端子55_2に低い電圧Vb2を与える。このとき、図中、点線矢印で示すように、短いループが形成され、VCOの発振周波数は最高発振周波数fmaxとなる(図中、5_1)。
【0006】
一方、単位セル(1)51が完全なOFF状態となるようにバイアス端子55_1に低い電圧Vb1を与え、単位セル(2)52が完全なON状態となるようにバイアス端子55_2に高い電圧Vb2を与える。このとき、図中、点線矢印で示すように、長いループが形成され、VCOの出力は最低発振周波数fminとなる(図中、5_2)。
【0007】
この構成において、単位セル(1)51と単位セル(2)52の状態を、ONとOFFの中間となるようにバイアス端子55_1とバイアス端子55_2に対称的に電圧を与えることによって、VCOの発振周波数をfminからfmaxの間で連続的に変化させることが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Acampora, A., A. Collado, and A. Georgiadis. "Nonlinear analysis and optimization of a distributed voltage controlled oscillator for cognitive radio." 2010 IEEE International Microwave Workshop Series on RF Front-ends for Software Defined and Cognitive Radio Solutions (IMWS). IEEE, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の構成においてバイアス端子55_1とバイアス端子55_2の電圧が共に中間電位の場合、発振が停止する可能性がある。
【0010】
図8は、従来の構成において、バイアス端子55_1とバイアス端子55_2の電圧を変化させた時の発振周波数および出力パワーのシミュレーション結果である。バイアス端子55_1の電圧Vb1が-2.9V~-2.8V、バイアス端子55_2の電圧Vb2が-2.8V~-2.9Vの領域で、発振が停止する。
【0011】
発振が止まる原因は、以下の通り、開ループ特性を用いて説明できる。一般的に、発振が持続する条件として、開ループの位相回転が360度となる周波数において、利得が0dB以上である必要がある。
【0012】
図9に、発振が持続する場合(バイアス端子55_1とバイアス端子55_2の電圧Vb1、Vb2がそれぞれ-3.4Vと-2.3Vの場合、図中実線)と、発振が停止する場合(バイアス端子55_1とバイアス端子55_2の電圧Vb1、Vb2がそれぞれ-2.9Vと-2.8Vの場合、図中破線)における開ループ特性を示す。開ループ特性において、バイアスを印加することにより利得と位相が変化して、発振状態になる。ここで、バイアスの変化により発振周波数が変化する。
【0013】
発振が持続する場合(Vb1=-3.4V、Vb2=-2.3V)、位相は、周波数の増加に伴い回転して、周波数が70GHz程度で360度になる。また、利得は、周波数の増加に伴い減少して、周波数が70GHz程度のときに4dB程度である。このように、 位相が360度となる周波数の利得が、0(零)dB以上である。
【0014】
一方、発振が停止する場合(Vb1=-2.9V、Vb2=-2.8V)、位相は、周波数の増加に伴い回転して、周波数が100GHz程度で360度になる。また、利得は、周波数の増加に伴い減少して、周波数が55GHz程度で0(零)dBになり、周波数が100GHz程度のときに0(零)dB以下になる。
【0015】
このように、位相が360度となる周波数の利得が、発振が持続する場合には0dB以上であることに対して、発振が停止する場合には0dB以下である。
【0016】
したがって、バイアス電圧によって発振が停止するコンディションを有する発振器は、fminからfmaxまで周波数を連続的に変化させることができなくなるため、可変レンジ(周波数帯域)が狭くなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る電圧制御発振器は、第1の単位セルと第1のコンデンサと前記第1の単位セルに接続する伝送線路とが接続する第1の開ループと、第2の単位セルと第2のコンデンサと前記第2の単位セルに接続する伝送線路と前記第1の単位セルに接続する伝送線路が接続する第2の開ループとを備え、前記第1の開ループと前記第2の開ループとの少なくともいずれかにより発振する電圧制御発振器であって、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの間に、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルと並列に接続される補償用単位セルと、前記補償用単位セルに接続する第3のコンデンサとを備え、前記第1の単位セルと、前記第2の単位セルと、前記補償用単位セルとが増幅器であり、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとに対称的な電圧が供給され、前記補償用単位セルに固定バイアスが供給され、前記補償用単位セルが、前記第1の単位セル前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる利得を補償することにより、前記発振が持続されることを特徴とする。
また、本発明に係る電圧制御発振器は、第1の単位セルと、前記第1の単位セルと並列に接続される第2の単位セルと、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの間に、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルと並列に接続される補償用単位セルと、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルと前記補償用単位セルの電源電圧用端子と、出力端子と、前記第1の単位セルの前記電源電圧用端子側に接続される第1のコンデンサと、前記第2の単位セルの前記電源電圧用端子側に接続される第2のコンデンサと、前記補償用単位セルの前記電源電圧用端子側に接続される第3のコンデンサと、前記第1の単位セルと前記補償用単位セルとの間で、前記出力端子側と前記電源電圧用端子側それぞれに並列に接続される伝送線路と、前記第2の単位セルと前記補償用単位セルとの間で、前記出力端子側と前記電源電圧用端子側それぞれに並列に接続される伝送線路と、前記第2の単位セルの前記出力端子側と前記電源電圧用端子側それぞれに接続される伝送線路と、前記電源電圧用端子に接続される入力終端抵抗とを備え、前記第1の単位セルと、前記第2の単位セルと、前記補償用単位セルとが増幅器であり、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとに対称的な電圧が供給され、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる発振が生じ、前記補償用単位セルに固定バイアスが供給され、前記補償用単位セルが、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる利得を補償することにより、前記発振が持続されることを特徴とする。
また、本発明に係る電圧制御発振器は、順に、出力端子と、第1の伝送線路と、第2の伝送線路と、第3の伝送線路と、第4の伝送線路と、第5の伝送線路と、第6の伝送線路と、第7の伝送線路と、第8の伝送線路と、第9の伝送線路と、入力終端抵抗とを備え、第1の単位セルと、第2の単位セルと、補償用単位セルと、第1のコンデンサと第2のコンデンサと、第3のコンデンサとを備え、前記第3の伝送線路と前記第4の伝送線路との間と、前記第6の伝送線路と前記第7の伝送線路との間に、前記第1の単位セルと、前記第1のコンデンサとが直列に接続され、前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路との間と、前記第8の伝送線路と前記第9の伝送線路との間に、前記第2の単位セルと、前記第2のコンデンサとが直列に接続され、前記第2の伝送線路と前記第3の伝送線路との間と、前記第7の伝送線路と前記第8の伝送線路との間に、前記補償用単位セルと、前記第3のコンデンサとが直列に接続され、前記第1の単位セルと、前記第2の単位セルと、前記補償用単位セルとが増幅器であり、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとに対称的な電圧が供給され、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる発振が生じ、前記補償用単位セルに固定バイアスが供給され、前記補償用単位セルが、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる利得を補償することにより、前記発振が持続されることを特徴とする。
また、本発明に係る電圧制御発振器は、順に、出力端子と、第4の伝送線路と、第3の伝送線路と、第2の伝送線路と、第1の伝送線路と、第5の伝送線路と、第6の伝送線路と、第7の伝送線路と、第8の伝送線路と、第9の伝送線路と、入力終端抵抗とを備え、第1の単位セルと、第2の単位セルと、補償用単位セルと、第1のコンデンサと第2のコンデンサと、第3のコンデンサとを備え、前記第3の伝送線路と前記第4の伝送線路との間と、前記第6の伝送線路と前記第7の伝送線路との間に、前記第1の単位セルと、前記第1のコンデンサとが直列に接続され、前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路との間と、前記第8の伝送線路と前記第9の伝送線路との間に、前記第2の単位セルと、前記第2のコンデンサとが直列に接続され、前記第2の伝送線路と前記第3の伝送線路との間と、前記第7の伝送線路と前記第8の伝送線路との間に、前記補償用単位セルと、前記第3のコンデンサとが直列に接続され、前記第1の単位セルと、前記第2の単位セルと、前記補償用単位セルとが増幅器であり、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとに対称的な電圧が供給され、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる発振が生じ、前記補償用単位セルに固定バイアスが供給され、前記補償用単位セルが、前記第1の単位セルと前記第2の単位セルとの少なくともいずれかによる利得を補償することにより、前記発振が持続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発振周波数帯域が広い電圧制御発振器およびバイアス生成回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御発振器の構成を示す回路図である。
図1B図1Bは、本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御発振器における単位セルの構成を示す回路図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御発振器の動作を説明するための図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御発振器の動作を説明するための図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る電圧制御発振器の構成を示す回路図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る電圧制御発振器の構成を示す回路図である。
図6図6は、本発明の第2の実施の形態に係る電圧制御発振器におけるバイアス生成回路の構成を示す回路図である。
図7図7は、従来の電圧制御発振器の動作を説明するための図である。
図8図8は、従来の電圧制御発振器の動作を説明するための図である。
図9図9は、従来の電圧制御発振器の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る電圧制御発振器について図1A図3を参照して説明する。
【0021】
<電圧制御発振器の構成>
本実施の形態に係る電圧制御発振器1は、分布型電圧制御発振器(VCO)であり、図1Aに示すように、バイアス端子14_1を有する第1の単位セル11と、バイアス端子14_2を有する第2の単位セル12と、補償用単位セル13と、伝送線路(TL1~TL9)16_1~16_9と、入力終端抵抗17とを備える。
【0022】
ここで、第1の単位セル11と第2の単位セル12が、伝送線路を介して並列に接続され、補償用単位セル13が、第1の単位セル11と第2の単位セル12との間に並列に接続される。第1の単位セル11と第2の単位セル12と補償用単位セル13それぞれにACカップリングコンデンサ15_1~15_3が接続される。
【0023】
また、バイアス端子14_1に電圧Vb1が印加され、バイアス端子14_2に電圧Vb2が印加される。また、補償用単位セル13には、常時作動状態(ON)になるように電圧が供給される(固定バイアス状態)。
【0024】
また、各単位セルの電源電圧VCC用の端子18に入力終端抵抗17が接続され、入力終端抵抗17の一端から各単位セルの電源電圧VCCが供給される。
【0025】
また、出力端子19より発振信号が出力される。
【0026】
第1の単位セル11と第2の単位セル12と補償用単位セル13それぞれの回路構成には、例えば、図1Bに示すようにカスコード接続回路を用いる。カスコード接続回路では、2つのトランジスタ111、112が直列に接続され、一方のトランジスタ111のエミッタに電圧VEEが供給され、ベースがVic端子に接続され、抵抗113を介してVb1用バイアス端子14_1に接続される。他方のトランジスタ112では、ベースに電圧Vcasが入力され、コレクタにVio端子が接続される。このカスコード接続回路により、ミラー効果を軽減させ、開ループの利得特性を向上させることが可能である。
【0027】
第1の単位セル11と第2の単位セル12と補償用単位セル13の回路構成は、これに限らず、1つのトランジスタを用いた増幅回路でもよい。
【0028】
また、各伝送線路(TL1~9)16_1~16_9の特性インピーダンスが、各単位セルの入出力寄生容量を含めて、入力終端抵抗17と整合される。
【0029】
また、各単位セルの電圧VCCが入力終端抵抗17の一端から供給される。
【0030】
電圧制御発振器1において、第1の単位セル11と第2の単位セル12とに供給するバイアスが対称的に変化させる。すなわち、一方の単位セル(例えば、第1の単位セル11)に供給するバイアス電圧を増加させ、この増加させた電圧分、他方の単位セル(例えば、第2の単位セル12)に供給するバイアス電圧を減少させる。このとき、第1の単位セル11と第2の単位セル12とに供給するバイアス電圧の和が一定になる。
【0031】
また、補償用単位セル13は、常時ON状態となるようにバイアス電圧(固定バイアス)を印加されたトランジスタを備える。補償用単位セル13によって利得特性を向上させ、単位セルの利得が共に減少する中間電位の場合でも、発振を持続させることが可能となる。
【0032】
本実施の形態に係る電圧制御発振器によれば、fminからfmaxまで連続的に周波数を変化させることが可能になり、可変レンジ(周波数帯域)を広げることが可能である。
【0033】
<電圧制御発振器の動作>
図2に、電圧制御発振器1における、発振周波数と出力パワーとの電圧Vb1、Vb2依存性を示す。この電圧Vb1、Vb2依存性は、シミュレーションにより得られる。従来の構成で発振が停止していたバイアス条件においても発振が持続し、fmin~fmaxの間で発振周波数が連続的に変化する。
【0034】
図3に、電圧制御発振器(分布型VCO)1の開ループ特性を示す。従来の構成では、発振が停止するバイアス条件(Vb1=-2.9V、Vb2=-2.8V、図中破線)において、位相回転が360度の周波数の利得が0dB以下であった。
【0035】
一方、電圧制御発振器1では、同様のバイアス条件下で、位相回転が360度のとき、利得は1dB程度であり0dB以上である。
【0036】
このように、電圧制御発振器1では、補償用単位セル13により、第1の単位セル11又は第2の単位セル12による利得を補償して利得を0dB以上にすることができるので、発振を維持できる。この構成を用いることにより可変レンジ(周波数を変化できる範囲)を従来の7GHzから38GHzに拡張することができる。
【0037】
本実施の形態に係る電圧制御発振器によれば、fminからfmaxまで連続的に周波数を変化させることが可能になり、可変レンジを広げることが可能である。
【0038】
また、VCCを入力終端抵抗から与えることにより、従来必要だったVCC供給用のインダクタを省くことが可能である。
【0039】
さらに、各伝送線路(TL1~9)の特性インピーダンスを、各伝送線路に接続される単位セルの入出力寄生容量を含めて、入力終端抵抗と整合させることにより、多重反射を防ぎ、発振の安定性を向上させることができる。
【0040】
本実施の形態に係る電圧制御発振器1では、第1の単位セル11と、第2の単位セル12と、補償用単位セル13とは、トランジスタのサイズ(エミッタ長)は異なるが、回路構成は同じものを用いた。ここで、第1の単位セル11と、第2の単位セル12と、補償用単位セル13に、異なる回路構成を用いてもよい。
【0041】
<変形例1>
本実施の形態の変形例1に係る電圧制御発振器では、補償用単位セル13内で用いるトランジスタのサイズが、第1の単位セル11および第2の単位セル12内で用いるトランジスタのサイズ(エミッタ長)よりも大きい。この他の構成は、第1の実施の形態に係る電圧制御発振器の構成と同様である。
【0042】
補償用単位セル13の利得が大きくなるので、第1の単位セル11および第2の単位セル12での発振が停止しても、補償用単位セル13により発振を維持できる。
【0043】
本変形例に係る電圧制御発振器によれば、より発振を安定させることが可能である。
【0044】
ここで、補償用単位セル13内で用いるトランジスタのサイズを増加すると、発振持続の安定性が向上するが、発振の中心周波数と可変レンジが減少する。
【0045】
そこで、補償用単位セル13内で用いるトランジスタのサイズが、第1の単位セル11および第2の単位セル12内で用いるトランジスタのサイズ(エミッタ長)の2倍であることが望ましい。例えば、第1の単位セル11および第2の単位セル12それぞれでエミッタ長が4μmのバイポーラトランジスタを用いる場合は、補償用単位セル13でエミッタ長が8μmのバイポーラトランジスタを用いる。
【0046】
本変形例に係る電圧制御発振器では、エミッタ長が8μmのバイポーラトランジスタを有する補償用単位セル13が、エミッタ長が4μmのバイポーラトランジスタを有する単位セルの2個分の利得を有する。
【0047】
従来の構成では、エミッタ長が4μmのバイポーラトランジスタを有する第1の単位セル11又は第2の単位セル12がONのときに得られる利得で発振が維持されるが、第1の単位セル11および第2の単位セル12がOFFになると発振が停止する。
【0048】
一方、本変形例に係る電圧制御発振器では、第1の単位セル11および第2の単位セル12がOFFになったとしても、エミッタ長が8μmのバイポーラトランジスタを有する補償用単位セル13のみによって、第1の単位セル11および第2の単位セル12がONのときと同等の利得を得られるので、発振を維持できる。
【0049】
その結果、本実施の形態の変形例1に係る電圧制御発振器では、高い中心周波数と広い可変レンジが維持されたまま、発振停止を防ぐことが可能である。
【0050】
<変形例2>
本実施の形態の変形例2に係る電圧制御発振器では、図4に示すように、変形例1の構成において第2の単位セル12の出力端子および電源電圧VCC端子側に、もう一つの常時ON状態の第2の補償用単位セル23_2を配置する。
【0051】
本変形例に係る電圧制御発振器2によれば、出力パワーを増加させることが可能である。
【0052】
第2の補償用単位セル23_2の構成は、第1の単位セル21、第2の単位セル22、補償用単位セル23と同じ構成であればよい。
【0053】
<変形例3>
本実施の形態の変形例3に係る電圧制御発振器では、図5に示すように、フォワードゲインモードで構成することによって可変レンジをさらに拡張することが可能である。
【0054】
本変形例に係る電圧制御発振器3におけるフォワードゲインモードでは、分布アンプの出力を入力に接続し、分布アンプの終端抵抗が分布VCOの出力端子となる。
【0055】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る電圧制御発振器について図6を参照して説明する。本実施の形態に係る電圧制御発振器4(図1Aと同様)は、第1の実施の形態と同様の構成を有する。また、電圧制御発振器4におけるバイアス生成回路40は、バイアス電圧Vb1からバイアス電圧Vb2を生成する。
【0056】
本実施の形態に係る電圧制御発振器4におけるバイアス生成回路40は、図6に示すように、トランジスタ41のエミッタとコレクタそれぞれに抵抗(REE)42、抵抗(RCC)43が接続され、ベースにコンデンサ47が接続されVb1が入力される。トランジスタ41と抵抗(REE)42に並列に、直列接続された2つの抵抗(R1)45、抵抗(R2)46が接続され、抵抗(R1)45と抵抗(R2)46との接点からVb2が出力される。
【0057】
バイアス生成回路40は、Vb1用バイアス端子44_1とVb2用バイアス端子44_2に接続されて、電圧制御発振器4を構成する。
【0058】
電圧制御発振器4におけるバイアス生成回路40は、電圧Vb1と対称的に変化する電圧Vb2を、電圧Vb1から自動生成する。電圧Vb1を増加させると、RCCに流れる電流が増加し、電圧Vb2が対称的に減少するように動作する。
【0059】
ここで、抵抗(REE)42と抵抗(RCC)43の比を変更することで、電圧Vb1に対する電圧Vb2の変化の傾きを変更することができる。
【0060】
また、抵抗(R1)45と抵抗(R2)46の比を変更することで、電圧Vb2にオフセットを与えることが可能になる。
【0061】
本実施の形態に係る電圧制御発振器におけるバイアス生成回路によれば、電圧Vb1のみで分布VCOの発振周波数を制御することが可能になる。
【0062】
さらに、電圧Vb1をコントロール電圧とするPLL(Phase Locked Loop)に、本実施の形態に係る電圧制御発振器4を組み込むことが可能になる。
【0063】
PLLは、本実施の形態に係る電圧制御発振器4と、位相比較器、ループフィルタ(又はローパスフィルタ)と、入力基準信号源から構成される。PLLは1つの制御端子により動作するので、本実施の形態のバイアス生成回路により制御端子を1つにできるので、PLLに組み込むことができる。
【0064】
本実施の形態では、バイアス生成回路40に図6に示す構成を用いる例を示したが、これに限らず、バイアス生成回路は、電圧Vb1に対して対称的な電圧Vb2を生成する回路であればよい。
【0065】
本実施の形態では、バイアス生成回路40を、第1の実施の形態に係る電圧制御発振器に適用する例を示したが、第1の実施の形態の変形例に係る電圧制御発振器に適用してもよい。
【0066】
本発明の実施の形態では、電圧制御発振器およびバイアス生成回路の構成などにおいて、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。電圧制御発振器およびバイアス生成回路の機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、光通信、無線通信、レーダー・センシング等に用いる機器、デバイスの電子回路に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 電圧制御発振器
11、12 単位セル
13 補償用単位セル
14_1、14_2 バイアス端子
15_1~15_3 ACカップリングコンデンサ
16_1~16_9 伝送線路(TL1~TL9)
17 入力終端抵抗
18 電源電圧端子
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9