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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/10 20090101AFI20241210BHJP
【FI】
H04W48/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023515899
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2021015898
(87)【国際公開番号】W WO2022224315
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 朗
(72)【発明者】
【氏名】井上 保彦
(72)【発明者】
【氏名】永田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0014911(US,A1)
【文献】特表2016-535496(JP,A)
【文献】特開2019-057956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第1の無線信号処理部と、
前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成された第2の無線信号処理部と、
前記第1の無線信号処理部から第1のビーコンが周期的に送信されるように前記第1の無線信号処理部のビーコンの送信を管理し、前記第2の無線信号処理部から前記第1のビーコンと前記第1のビーコンに含まれる情報よりも簡易化された情報を含む第2のビーコンとが周期的に切り替えられて送信されるように前記第2の無線信号処理部のビーコンの送信を管理するビーコン管理部と、
を備える基地局。
【請求項2】
前記ビーコン管理部は、さらに、前記第1の無線信号処理部からも前記第1のビーコンと前記第2のビーコンとが周期的に送信されるように前記第1の無線信号処理部のビーコンの送信を管理し、
前記第1の無線信号処理部から送信される前記第1のビーコンの送信頻度は、前記第2の無線信号処理部から送信される前記第1のビーコンの送信頻度よりも多い、
請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記ビーコン管理部は、さらに、前記第1の無線信号処理部からも前記第1のビーコンと前記第2のビーコンとが周期的に送信されるように前記第1の無線信号処理部のビーコンの送信を管理し、
前記第1の無線信号処理部による前記第1のビーコンの送信タイミングと前記第2の無線信号処理部による前記第1のビーコンの送信タイミングとがずれている、
請求項1に記載の基地局。
【請求項4】
前記第1のビーコンは、前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部を用いたマルチリンクの確立に必要な情報を含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の基地局。
【請求項5】
前記第2のビーコンは、S1Gビーコン又はFILS方式で送信されるビーコンである、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の基地局。
【請求項6】
前記第1のチャネルは、前記第1の無線信号処理部と前記第2の無線信号処理部を用いたマルチリンクの確立のために用いられるチャネルである、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局と端末との間を無線で接続する無線システムとして、無線LAN(Local Area Network)が知られている。また、無線LANでは、基地局と端末との間を複数種類の帯域(チャネル)を用いて無線接続するマルチリンクが用いられることもある。このようなマルチリンクを確立する際のセットアップ及びマルチリンクの運用情報の通知のためにビーコンが利用されることがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】IEEE Std 802.11-2016,“Figure 4-25 Establishing the IEEE 802.11 association”and“11.3 STA authentication and association”, 7 December 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、複数のチャネルを用いて効率よくビーコンを送信できる基地局を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の基地局は、第1の無線信号処理部と、第2の無線信号処理部と、ビーコン管理部とを含む。第1の無線信号処理部は、第1のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成されている。第2の無線信号処理部は、第1のチャネルと異なる第2のチャネルを用いて無線信号を送受信可能に構成されている。ビーコン管理部は、第1の無線信号処理部から第1のビーコンが周期的に送信されるように第1の無線信号処理部のビーコンの送信を管理し、第2の無線信号処理部から第1のビーコンと第1のビーコンに含まれる情報よりも簡易化された情報を含む第2のビーコンとが周期的に切り替えられて送信されるように第2の無線信号処理部のビーコンの送信を管理する。
【発明の効果】
【0006】
実施形態によれば、複数のチャネルを用いて効率よくビーコンが送信できる基地局が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る無線システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る無線システムにおいて、基地局及び端末間の通信で使用されるMACフレームのフォーマットの具体例を示す図である。
図3図3は、基地局の構成の一例を示す図である。
図4図4は、基地局の機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、端末の構成の一例を示す図である。
図6図6は、端末の機能構成の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る無線システムにおけるマルチリンクのセットアップ処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、通常ビーコンに含まれる情報の一例を示す図である。
図9図9は、マネジメントフレームのフレームフォーマットの一例を示す図である。
図10図10は、簡易ビーコンに含まれる情報の一例を示す図である。
図11図11は、S1Gビーコンフレームのフレームフォーマットの一例を示す図である。
図12図12は、チャネル毎のビーコン選択処理について示すフローチャートである。
図13図13は、周期毎のビーコン選択処理について示すフローチャートである。
図14図14は、アンカーリンクとして用いられるチャネルと、アンカーリンクとしては用いられないその他のチャネルのそれぞれで送信されるビーコンを示す図である。
図15図15は、変形例1におけるチャネル毎のビーコン選択処理について示すフローチャートである。
図16図16は、変形例1におけるアンカーリンクとして用いられるチャネルと、アンカーリンクとしては用いられないその他のチャネルのそれぞれで送信されるビーコンを示す図である。
図17図17は、変形例2における周期毎のビーコン選択処理について示すフローチャートである。
図18図18は、変形例2におけるアンカーリンクとして用いられるチャネルと、アンカーリンクとしては用いられないその他のチャネルのそれぞれで送信されるビーコンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る無線システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、無線システム1は、例えば基地局10、端末20、及びサーバ30を備えている。
【0009】
基地局10は、ネットワークNWに接続され、無線LANのアクセスポイント(AP)として使用される。例えば、基地局10は、ネットワークNWから受信したデータを、無線で端末20に配信することができる。また、基地局10は、一種類の帯域又は複数種類の帯域を用いて、端末20に接続され得る。本明細書では、基地局10と端末20との間における複数種類の帯域を用いた無線接続のことを、“マルチリンク”と呼ぶ。基地局10と端末20との間の通信は、例えばIEEE802.11規格に基づいている。今回は、IEEE802.11規格に基づいた通信を例として記載するが、これに限られるものではない。
【0010】
端末20は、スマートフォンやタブレットPC等の無線端末である。端末20は、無線で接続された基地局10を介して、ネットワークNW上のサーバ30との間でデータを送受信することができる。端末20は、デスクトップコンピュータやラップトップコンピュータ等、その他の電子機器であってもよい。端末20は、少なくとも基地局10と通信可能であればよい。
【0011】
サーバ30は、様々な情報を保持することが可能であり、例えば端末20を対象としたコンテンツのデータを保持している。サーバ30は、例えばネットワークNWに有線で接続され、ネットワークNWを介して基地局10と通信可能に構成される。尚、サーバ30は、少なくとも基地局10と通信可能であればよい。つまり、基地局10とサーバ30との間の通信は、有線であっても無線であってもよい。
【0012】
実施形態に係る無線システム1において、基地局10と端末20との間の無線通信は、IEEE802.11規格に準じている。IEEE802.11規格は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルの第1層と第2層のMAC副層を規定する。OSI参照モデルでは、通信機能が7階層(第1層:物理層、第2層:データリンク層、第3層:ネットワーク層、第4層:トランスポート層、第5層:セッション層、第6層:プレゼンテーション層、第7層:アプリケーション層)に分割される。また、データリンク層は、例えばLLC(Logical Link Control)層と、MAC(Media Access Control)層とを含んでいる。LLC層では、例えば上位のアプリケーションから入力されたデータに、DSAP(Destination Service Access Point)ヘッダやSSAP(Source Service Access Point)ヘッダ等が付加されることでLLCパケットが形成される。MAC層では、例えばLLCパケットにMACヘッダが付加されることでMACフレームが形成される。今回の説明では、IEEE802.11規格が規定する第1層と第2層のMAC副層についての処理が中心に説明され、他の層の処理についての説明は省略されている。
【0013】
図2は、実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20間の通信で使用されるMACフレームのフォーマットの具体例を示す図である。図2に示すように、MACフレームは、例えばFrame Controlフィールド、Durationフィールド、Address1フィールド、Address2フィールド、Address3フィールド、Sequence Controlフィールド、Address4フィールド、QoS Controlフィールド、HT Controlフィールド、Frame Bodyフィールド、及びFCS(Frame Check Sequence)フィールドを含む。これらのフィールドは、無線フレームの種類により含まれるものと含まれないものがある。
【0014】
Frame ControlフィールドからHT Controlフィールドまでは、MACヘッダに対応している。Frame Bodyフィールドは、MACペイロードに対応している。FCSフィールドは、MACヘッダとFrame Bodyフィールドとの誤り検出符号を格納している。FCSフィールドは、MACフレームにおけるエラーの有無の判定に使用される。
【0015】
Frame Controlフィールドは、様々な制御情報、例えばType値、Subtype値、To DS(Distribution System)値及びFrom DS値を含んでいる。Type値は、そのMACフレームがマネジメントフレームであるのか、制御フレームであるのか、データフレームであるのかを示す。Subtype値は、Type値と組み合わせて使用されることでMACフレームのフレームタイプを示す。例えば、“00/1000(Type値/Subtype値)”は、そのMACフレームがビーコンであることを示す。また、“00/0100(Type値/Subtype値)”は、そのMACフレームがプローブリクエストであることを示す。また、“00/0101(Type値/Subtype値)”は、そのMACフレームがプローブレスポンスであることを示す。To DS値及びFrom DS値は、その組み合わせにより異なる意味を有する。例えば、MACフレームがデータフレームであるときのTo DS値“0”は受信局が端末であることを示し、“1”は受信局が基地局であることを示す。また、MACフレームがデータフレームであるときのFrom DS値“0”は送信局が端末であることを示し、“1”は送信局が基地局であることを示す。一方、MACフレームがマネジメントフレーム又は制御フレームであるときのTo DS値及びFrom DS値は、例えば“0”に固定される。
【0016】
Durationフィールドは、無線回線を使用する予定期間を示す。Addressフィールドは、BSSID、送信元MACアドレス、あて先MACアドレス、送信者端末のアドレス、受信者端末のアドレス等を示す。使用されるAddressフィールドの数は、フレームタイプによって変化する。Sequence Controlフィールドは、MACフレームのシーケンス番号と、フラグメントのためのフラグメント番号とを示す。QoS Controlフィールドは、MACフレームにおけるQoS(Quality of Service)機能に利用される。QoS Controlフィールドは、トラヒック種別(TID)サブフィールドを含んでいてよい。HT Controlフィールドは、高スループット機能のためのControl フィールドである。Frame Bodyフィールドは、フレームタイプに応じた情報を含んでいる。例えば、フレームタイプがデータフレームである場合のFrame Bodyフィールドには送信データが格納される。
【0017】
図3は、基地局10の構成の一例を示す図である。図3に示すように、基地局10は、例えばCPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、無線通信モジュール14、及び有線通信モジュール15を備えている。
【0018】
CPU11は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、基地局10の全体の動作を制御する。ROM12は、不揮発性の半導体メモリであり、基地局10を制御するためのプログラムや制御データ等を保持している。RAM13は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU11の作業領域として使用される。無線通信モジュール14は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。また、無線通信モジュール14は、例えば複数の周波数帯にそれぞれ対応する複数の通信モジュールを含んでいる。有線通信モジュール15は、有線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、ネットワークNWに接続される。
【0019】
図4は、基地局10の機能構成の一例を示す図である。図4に示すように、基地局10は、例えばLLC処理部110、リンクマネジメント部120、並びに無線信号処理部130、140及び150を備える。LLC処理部110、リンクマネジメント部120、並びに無線信号処理部130、140及び150は、無線通信モジュール14、又はCPU11と無線通信モジュール14の組み合わせによって実現される。
【0020】
LLC処理部110は、入力されたデータに対して、LLC層の処理を実行し得る。例えば、LLC処理部110は、ネットワークNWを介してサーバ30から入力されたデータに対してDSAP(Destination Service Access Point)ヘッダ及びSSAP(Source Service Access Point)ヘッダ等を付加してLLCパケットを生成する。そして、LLC処理部110は、LLCパケットをリンクマネジメント部120に出力する。また、LLC処理部110は、リンクマネジメント部120から入力されたMACフレームからデータを抽出する。そして、LLC処理部110は、データを、ネットワークNWを介してサーバ30に送信する。
【0021】
リンクマネジメント部120は、入力されたデータに対して、例えばMAC層の処理を実行し得る。また、リンクマネジメント部120は、無線信号処理部130、140及び150からの通知に基づいて端末20との間のリンクを管理する。リンクマネジメント部120は、データ処理部121と、ビーコン管理部122と、マネジメント部123と、MACフレーム処理部124とを備える。
【0022】
データ処理部121は、LLC処理部110からLLCパケットを受け取った場合に、LLCパケットにMACヘッダを付与してMACフレームを生成する。そして、データ処理部121は、MACフレームをMACフレーム処理部124に出力する。また、データ処理部121は、MACフレーム処理部124からMACフレームを受け取った場合にはMACフレームからLLCパケットを抽出する。そして、データ処理部121は、LLCパケットをLLC処理部110に出力する。また、データ処理部121は、マルチリンクにより、分割されたデータが複数の無線信号処理部から送信されてきたときには、MACフレーム処理部124から受け取ったMACフレームから復元されるMPDU(MAC Protocol Data Unit)をシーケンスナンバーに従って並び替える。そして、データ処理部121は、並び順が揃ったときに、LLCパケットをLLC処理部110に出力する。なお、MPDUの並び替えは、データ処理部121以外で行われてもよい。
【0023】
ビーコン管理部122は、リンク毎のビーコンの送信を管理する。ビーコン管理部122は、例えば、リンク毎のビーコンの送信周期を管理する。また、ビーコン管理部122は、例えば、リンク毎に送信されるビーコンを通常ビーコンにするか又は簡易ビーコンにするかを管理する。通常ビーコンは、マルチリンクのセットアップ等に用いられる情報がすべて含まれているビーコンである。簡易ビーコンは、通常ビーコンに対して簡易化された情報が含まれているビーコンである。通常ビーコン及び簡易ビーコンについては後で詳しく説明する。
【0024】
マネジメント部123は、無線信号処理部130、140及び150からMACフレーム処理部124を介して受信した通知に基づいて、端末20との間のリンクを管理する。例えばマネジメント部123は、無線信号処理部130、140及び150の何れかを介した端末20からの要求に応じてマルチリンクセットアップを実施する。マルチリンクセットアップにおいては、マネジメント部123は、無線信号処理部130、140及び150の何れかを介して端末20から接続要求を受信した場合に、アソシエーションに関するプロトコルを実行する。そして、マネジメント部123は、接続要求に続いて認証に関するプロトコルを実行する。
【0025】
MACフレーム処理部124は、データ処理部121から受け取ったときにはその受け取ったMACフレームを一時的に格納する。そして、MACフレーム処理部124は、ランダム時間にわたってキャリアセンスを行い、無線信号を送信するリンクにおいて使用されるチャネルの状況を確認する。チャネルが空いているときには、MACフレーム処理部124は、MACフレームを無線信号処理部130、140、150のうちの無線信号を送信するリンクと対応した無線信号処理部に出力する。また、MACフレーム処理部124は、無線信号処理部130、140、150からMACフレームを受け取ったときには、受け取ったMACフレームをデータ処理部121に出力する。
【0026】
無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、入力された無線信号に対して、例えば物理層の処理を実行し得る。つまり、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、基地局10と端末20との間での無線信号の送受信を取り扱う。無線信号処理部130は、2.4GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部140は、5GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部150は、6GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部130、140及び150は、基地局10のアンテナを共有していてもよいし、共有していなくてもよい。
【0027】
例えば、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、MACフレーム処理部124からMACフレームを受け取ったときには、MACフレームにPHY(物理)ヘッダを付与してPHYフレームを生成する。そして、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、PHYフレームに対して所定の変調動作を行ってPHYフレームを無線信号に変換し、アンテナを介して無線信号を送信する。所定の変調動作は、例えば、畳み込み符号化、インタリーブ、サブキャリア変調、逆高速フーリエ変換(IFFT;Inverse Fast Fourier Transform)、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調、及び周波数変換を含む。
【0028】
また、無線信号処理部130、140及び150のそれぞれは、アンテナを介して無線信号を受信したときには、受信した無線信号に対して所定の復調動作を行ってPHYフレームを復元する。所定の復調動作は、例えば、周波数変換、OFDM復調、高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)、サブキャリア復調、デインタリーブ、及びビタビ復号を含む。そして、無線信号処理部130、140、150のそれぞれは、PHYフレームからMACフレームを抽出し、抽出したMACフレームをMACフレーム処理部124に出力する。
【0029】
図5は、端末20の構成の一例を示す図である。図5に示すように、端末20は、例えばCPU21、ROM22、RAM23、無線通信モジュール24、ディスプレイ25、及びストレージ26を備えている。
【0030】
CPU21は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、端末20の全体の動作を制御する。ROM22は、不揮発性の半導体メモリであり、端末20を制御するためのプログラムや制御データ等を保持している。RAM23は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU21の作業領域として使用される。無線通信モジュール24は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。また、無線通信モジュール24は、例えば複数の周波数帯にそれぞれ対応する複数の通信モジュールを含んでいる。ディスプレイ25は、アプリケーションソフトに対応するGUI(Graphical User Interface)等を表示する。ディスプレイ25は、端末20の入力インターフェースとしての機能を有していてもよい。ストレージ26は、不揮発性の記憶装置であり、端末20のシステムソフトウェア等を保持する。
【0031】
図6は、端末20の機能構成の一例を示す図である。図6に示すように、端末20は、例えばLLC処理部210、リンクマネジメント部220、無線信号処理部230、240及び250並びにアプリケーション実行部260を備える。LLC処理部210、リンクマネジメント部220、無線信号処理部230、240及び250は、無線通信モジュール24、又はCPU21と無線通信モジュール24の組み合わせによって実現される。また、アプリケーション実行部260は、CPU21によって実現される。
【0032】
LLC処理部210は、入力されたデータに対して、LLC層の処理を実行し得る。例えば、LLC処理部210は、アプリケーション実行部260から入力されたデータに対してDSAPヘッダ及びSSAPヘッダ等を付加してLLCパケットを生成する。そして、LLC処理部110は、LLCパケットをリンクマネジメント部220に出力する。また、LLC処理部210は、リンクマネジメント部220から入力されたMACフレームからデータを抽出する。そして、LLC処理部210は、データを、アプリケーション実行部260に出力する。
【0033】
リンクマネジメント部220は、入力されたデータに対して、例えばMAC層の処理を実行し得る。また、リンクマネジメント部220は、無線信号処理部230、240及び250からの通知に基づいて基地局10との間のリンクを管理する。リンクマネジメント部220は、データ処理部221と、マネジメント部223と、MACフレーム処理部224とを備える。
【0034】
データ処理部221は、LLC処理部210からLLCパケットを受け取った場合に、LLCパケットにMACヘッダを付与してMACフレームを生成する。そして、データ処理部221は、MACフレームをMACフレーム処理部224に出力する。また、データ処理部221は、MACフレーム処理部224からMACフレームを受け取った場合にはMACフレームからLLCパケットを抽出する。そして、データ処理部221は、LLCパケットをLLC処理部210に出力する。また、データ処理部221は、マルチリンクにより、分割されたデータが複数の無線信号処理部から送信されてきたときには、MACフレーム処理部224から受け取ったMACフレームから復元されるMPDUをシーケンスナンバーに従って並び替える。そして、データ処理部221は、並び順が揃ったときに、LLCパケットをLLC処理部210に出力する。なお、MPDUの並び替えは、データ処理部221以外で行われてもよい。
【0035】
マネジメント部223は、無線信号処理部230、240及び250からMACフレーム処理部224を介して受信した通知に基づいて、基地局10との間のリンクを管理する。例えばマネジメント部223は、無線信号処理部230、240及び250の何れかを介して基地局10に対してマルチリンクの接続要求をする。また、マネジメント部223は、無線信号処理部230、240及び250の何れかを介した基地局10からの要求に応じてアソシエーションに関するプロトコル及び認証に関するプロトコルを実行する。
【0036】
MACフレーム処理部224は、データ処理部221から受け取ったときにはその受け取ったMACフレームを一時的に格納する。そして、MACフレーム処理部224は、ランダム時間にわたってキャリアセンスを行い、無線信号を送信するリンクにおいて使用されるチャネルの状況を確認する。チャネルが空いているときには、MACフレーム処理部224は、MACフレームを無線信号処理部230、240、250のうちの無線信号を送信するリンクと対応した無線信号処理部に出力する。また、MACフレーム処理部224は、無線信号処理部230、240、250からMACフレームを受け取ったときには、受け取ったMACフレームをデータ処理部221に出力する。
【0037】
無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、入力された無線信号に対して、例えば物理層の処理を実行し得る。つまり、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、基地局10と端末20との間での無線信号の送受信を取り扱う。無線信号処理部230は、2.4GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部240は、5GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部250は、6GHz帯の無線信号を取り扱う。無線信号処理部230、240及び250は、端末20のアンテナを共有していてもよいし、共有していなくてもよい。
【0038】
例えば、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、MACフレーム処理部224からMACフレームを受け取ったときには、MACフレームにPHYヘッダを付与してPHYフレームを生成する。そして、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、PHYフレームに対して所定の変調動作を行ってPHYフレームを無線信号に変換し、アンテナを介して無線信号を送信する。所定の変調動作は、例えば、畳み込み符号化、インタリーブ、サブキャリア変調、逆高速フーリエ変換、OFDM変調、及び周波数変換を含む。
【0039】
また、無線信号処理部230、240及び250のそれぞれは、アンテナを介して無線信号を受信したときには、受信した無線信号に対して所定の復調動作を行ってPHYフレームを復元する。所定の復調動作は、例えば、周波数変換、OFDM復調、高速フーリエ変換、サブキャリア復調、デインタリーブ、及びビタビ復号を含む。そして、無線信号処理部230、240、250のそれぞれは、PHYフレームからMACフレームを抽出し、抽出したMACフレームをMACフレーム処理部224に出力する。
【0040】
アプリケーション実行部260は、LLC処理部210から入力されたデータを利用することが可能なアプリケーションを実行する。例えば、アプリケーション実行部260は、アプリケーションの情報をディスプレイ25に表示することができる。また、アプリケーション実行部260は、入力インターフェースの操作に基づいて動作し得る。
【0041】
以上で説明された実施形態に係る無線システム1では、基地局10の無線信号処理部130、140及び150が、それぞれ端末20の無線信号処理部230、240及び250と接続可能に構成される。つまり、無線信号処理部130及び230間は、2.4GHz帯を用いて無線接続され得る。無線信号処理部140及び240間は、5GHz帯を用いて無線接続され得る。無線信号処理部150及び250間は、6GHz帯を用いて無線接続され得る。本明細書において、それぞれの無線信号処理部は、“STA機能”と呼ばれてもよい。すなわち、実施形態に係る無線システム1は、複数のSTA機能を備えている。ここで、以下の説明では、無線信号処理部130及び230の間のリンクがリンク#1、無線信号処理部140及び240の間のリンクがリンク#2、無線信号処理部150及び250の間のリンクがリンク#3と表記されることがある。
【0042】
次に、実施形態に係る無線システム1のマルチリンクに関連する動作の一例について説明する。図7は、実施形態に係る無線システム1におけるマルチリンクのセットアップ処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS10の処理において、端末20は、基地局10にプローブリクエストを送信する。プローブリクエストは、端末20の周辺に基地局10が存在するか否かを確認する信号である。プローブリクエストのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0100(Type値/Subtype値)”を含んでいる。基地局10は、プローブリクエストを受信すると、ステップS11の処理を実行する。
【0044】
ステップS11の処理において、基地局10は、端末20にプローブレスポンスを送信する。プローブレスポンスは、基地局10が端末20からのプローブリクエストに対する応答に使用される信号である。プローブレスポンスのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0101(Type値/Subtype値)”を含んでいる。端末20は、プローブレスポンスを受信すると、ステップS12の処理を実行する。ここで、プローブレスポンスは、後で説明する通常ビーコンと同等のマルチリンクの確立に必要な情報を含んでいる。
【0045】
ステップS12の処理において、端末20は、少なくとも1つのSTA機能を介して、基地局10にアソシエーションリクエストを送信する。アソシエーションリクエストは、基地局10にマルチリンクの確立を要求するための信号を含む。例えば、アソシエーションリクエストは、端末20のリンクマネジメント部220によって生成される。アソシエーションリクエストのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0000(Type値/Subtype値)”を含んでいる。基地局10のリンクマネジメント部120は、マルチリンクの確立を要求するための信号を含むアソシエーションリクエストを受信すると、ステップS13の処理を実行する。なお、アソシエーションリクエストとしては、通常のアソシエーションリクエストにマルチリンク接続のための情報が付加されたものが使用されてよい。
【0046】
ステップS13の処理において、基地局10のマネジメント部123は、1つのSTA機能を使用したマルチリンクアソシエーション処理を実行する。具体的には、まず基地局10は、端末20との間で、1つ目のSTA機能のアソシエーション処理を実行する。そして、1つ目のSTA機能において無線接続(リンク)が確立されると、基地局10のマネジメント部123は、リンクが確立されている1つ目のSTA機能を用いて、2つ目のSTA機能のアソシエーション処理を実行する。つまり、リンクが確立されていないSTA機能のアソシエーション処理に、リンクが確立されているSTA機能が使用される。少なくとも2つのSTA機能のアソシエーション処理が完了すると、基地局10は、マルチリンクを確立し、ステップS14の処理を実行する。
【0047】
ステップS14の処理において、基地局10のマネジメント部123は、リンク管理情報を更新する。リンク管理情報は、STA機能のID毎の、対応するSTA機能を用いたリンクが確立しているか否かを示す情報、対応しているSTA機能で取り扱われる周波数帯(チャネル)の情報、対応しているSTA機能がアンカーリンクに用いられているか否かを示す情報、対応するSTA機能のリンクで取り扱われるデータのトラフィック種別といった情報を含む。ここで、アンカーリンクは、他のリンクと区別され、一般動作に加えて特別な動作を実行するリンクである。例えば、特別な動作は、マルチリンクの動作に関連する制御情報の送受信等である。後で説明するように、マルチリンクの動作に関連する制御情報は、マルチリンクケイパビリティ情報と、アンカーリンク情報と、リンク毎の運用情報を含む。アンカーリンクは、マネジメント部123によって設定されてよい。
【0048】
ステップS15の処理において、基地局10は、端末20にマルチリンク確立レスポンスを送信する。マルチリンク確立レスポンスは、基地局10が端末20からのマルチリンクリクエストに対する応答に使用される信号である。マルチリンク確立レスポンスのFrame Controlフィールドは、例えば“00/0001(Type値/Subtype値)”を含んでいる。端末20のリンクマネジメント部220は、マルチリンク確立レスポンスを受信したことに基づいて、基地局10との間のマルチリンクが確立されたことを認識する。端末20は、マルチリンク確立レスポンスを受信すると、ステップS16の処理を実行する。
【0049】
ステップS16の処理において、端末20のマネジメント部223は、リンク管理情報を更新する。端末20において管理されるリンク管理情報は、基地局10において管理されるリンク管理情報と同一であってよい。
【0050】
基地局10及び端末20の双方でリンク管理情報が更新されることにより、マルチリンクのセットアップが完了する。以後、マルチリンクを用いたデータ通信が、基地局10と端末20との間において可能となる。例えば、入力されたデータが複数のリンクに振り分けて送信され得る。また、あるリンクのチャネルが空いていないときに別のリンクを用いてデータが送信され得る。
【0051】
ここで、図7の例では、端末20からのプローブリクエスト及び基地局10からのプローブレスポンスの後で、マルチリンクの確立のための接続処理が実施される。これに対し、基地局10が周期的にビーコンを送信し、このビーコンを受信した端末20がマルチリンクの確立のためのアソシエーションリクエストを送信し、これによってマルチリンクの確立のための接続処理が実施されてもよい。
【0052】
次に、基地局10によるビーコンの送信処理を説明する。実施形態では、基地局10は、周期的にそれぞれのチャネルを用いてビーコンを送信する。このとき、ビーコン管理部122は、それぞれのチャネル毎のビーコン選択処理と周期毎のビーコン選択処理とを実施してビーコンの送信の設定を管理する。MACフレーム処理部124は、ビーコン管理部122で管理されているビーコンの送信の設定に基づき、それぞれのチャネルを用いて通常ビーコン又は簡易ビーコンの何れかを送信させる。
【0053】
図8は、通常ビーコンに含まれる情報の一例を示す図である。実施形態における通常ビーコンは、マルチリンクの確立及び運用に必要な情報を含む。図8に示すように、通常ビーコンは、マルチリンクケイパビリティ情報と、アンカーリンク情報と、リンク#1の運用情報と、リンク#2の運用情報と、リンク#3の運用情報とを含む。通常ビーコンは、図8で示した以外の情報を含んでいてもよい。
【0054】
マルチリンクケイパビリティ情報は、基地局10がマルチリンクを設定できるかどうかを示す情報である。例えば、マルチリンクケイパビリティ情報が“0”である場合、マルチリンクが設定できないことを示す。一方、マルチリンクケイパビリティ情報が“1”である場合、マルチリンクが設定できることを示す。
【0055】
アンカーリンク情報は、アンカーリンクのIDを示す情報である。実施形態の基地局10のように3つのSTA機能を有する場合、アンカーリンク情報は、例えば“0”、“1”、“2”の3つ数値の何れかであってよい。この場合、例えば、アンカーリンク情報が“0”、である場合、リンク#1がアンカーリンクであることを示す。また、アンカーリンク情報が“1”、である場合、リンク#2がアンカーリンクであることを示す。また、アンカーリンク情報が“2”、である場合、リンク#3がアンカーリンクであることを示す。
【0056】
リンク#1の運用情報は、リンク#1で使用されるオペレーショナルパラメータを示す。リンク#2の運用情報は、リンク#2で使用されるオペレーショナルパラメータを示す。リンク#3の運用情報は、リンク#3で使用されるオペレーショナルパラメータを示す。オペレーショナルパラメータは、例えばEDCA(Enhanced Distributed Channel Access)のアクセスパラメータを含む。
【0057】
通常ビーコンは、例えばマネジメントフレームを用いて送信され得る。図9は、マネジメントフレームのフレームフォーマットの一例を示す図である。図9に示すように、マネジメントフレームは、例えばFrame Controlフィールド、Durationフィールド、Address1フィールド、Address2フィールド、Address3フィールド、Sequence Controlフィールド、HT Controlフィールド、Frame Bodyフィールド、及びFCS(Frame Check Sequence)フィールドを含む。前述したように、マネジメントフレームがビーコンフレームとして用いられるときには、Frame Controlフィールドは、“00/1000(Type値/Subtype値)”を含む。図9で示した情報は、ビーコンフレームの例えばFrame Bodyフィールドに格納される。
【0058】
一方、図10は、簡易ビーコンに含まれる情報の一例を示す図である。図10に示すように、簡易ビーコンは、簡易化された情報を含む。簡易化された情報は、通常ビーコンに含まれる情報要素の少なくとも一部が簡易化された状態で含まれている情報である。簡易化は、通常ビーコンに含まれる情報要素の一部の省略、置き換え等を含む。
【0059】
簡易ビーコンは、例えばIEEE802.ahで規定されるS1G(Sub 1Giga)ビーコンフレームであってよい。図11は、S1Gビーコンフレームのフレームフォーマットの一例である。S1GビーコンフレームのFrame Bodyフィールドにおいて規定されているS1G Capabilitiesが簡易的なマルチリンクケイパビリティ情報として使用され得る。同様に、S1GビーコンフレームのFrame Bodyフィールドにおいて規定されているS1G Operationが簡易的なリンクの運用情報として使用され得る。
【0060】
簡易ビーコンは、S1Gビーコンフレームで送信されるものに限らない。簡易ビーコンは、IEEE802.aiに規定されるFILS(Fast Initial Link Setup)方式を用いて送信されてもよい。このように、簡易ビーコンは、通常ビーコンよりも短時間で送信できる任意の方式のビーコンであってよい。
【0061】
図12は、チャネル毎のビーコン選択処理について示すフローチャートである。
【0062】
ステップS20において、ビーコン管理部122は、パラメータnを1に設定する。パラメータnは、基地局10が利用するチャネルのIDを示すパラメータである。例えば、基地局10が利用するチャネルがチャネル#1、チャネル#2、チャネル#3の3つである場合、パラメータnは、0、1、2の3つの値をとり得る。
【0063】
ステップS21において、ビーコン管理部122は、パラメータnがアンカーリンクのIDと一致しているか否かを判定する。ステップS21において、パラメータnがアンカーリンクのIDと一致していると判定されたときには、処理はステップS22に移行する。ステップS21において、パラメータnがアンカーリンクのIDと一致していないと判定されたときには、処理はステップS23に移行する。
【0064】
ステップS22において、ビーコン管理部122は、チャネル#nにおいて周期的に通常ビーコンが送信されるように設定する。ステップS23において、ビーコン管理部122は、チャネル#nにおいて周期毎のビーコン選択処理が行われるように設定する。ステップS22又はステップS23の後、処理はステップS24に移行する。
【0065】
ステップS24において、ビーコン管理部122は、パラメータnが閾値nmaxに達したか否かを判定する。閾値nmaxは、基地局10が利用するチャネルの数である。例えば、基地局10が利用するチャネルがチャネル#1、チャネル#2、チャネル#3の3つである場合、閾値nmaxは3である。ステップS24において、パラメータnが閾値nmaxに達していないと判定されたときには、処理はステップS25に移行する。ステップS24において、パラメータnが閾値nmaxに達したと判定されたときには、ビーコン管理部122は、図12の処理を終了する。
【0066】
ステップS25において、ビーコン管理部122は、nを1だけインクリメントする。その後、ビーコン管理部122は、処理をステップS21に戻す。この場合、次のチャネルにおいてステップS21-S24の処理が実施される。
【0067】
図13は、周期毎のビーコン選択処理について示すフローチャートである。周期毎のビーコン選択処理は、既定のビーコンの送信周期が経過する毎に、アンカーリンクとして用いられるチャネル以外のそれぞれのチャネルについて実施される。例えば、基地局10が利用するチャネルがチャネル#1、チャネル#2、チャネル#3の3つであり、チャネル#1がアンカーリンクとして用いられるチャネルである場合、周期毎のビーコン選択処理は、チャネル#2及びチャネル#3について実施される。ここで、アンカーリンクとして用いられないチャネルが2以上であるとき、それぞれのチャネルについての周期毎のビーコン選択処理は、並列に実施されてもよいし、順次に実施されてもよい。
【0068】
ステップS30において、ビーコン管理部122は、パラメータmがmperiodに達したか否かを判定する。パラメータmは、現在のビーコンの送信周期を表すパラメータである。パラメータmの初期値は例えば0である。また、mperiodは、アンカーリンクとして用いられるチャネルではないチャネルにおける通常ビーコンの送信周期を示す閾値である。mperiodは、例えば自然数である。ステップS30において、パラメータmが閾値mperiodに達したと判定されたときには、処理はステップS31に移行する。ステップS30において、パラメータmが閾値mperiodに達していないと判定されたときには、処理はステップS33に移行する。
【0069】
ステップS31において、ビーコン管理部122は、通常ビーコンを送信するようにマネジメント部123を介してMACフレーム処理部124を設定する。これを受けてMACフレーム処理部124は、通常ビーコンを生成し、生成した通常ビーコンを、対応するチャネルのSTA機能を介して送信する。通常ビーコンの生成は、MACフレーム処理部124ではなく、データ処理部121で行われてもよい。
【0070】
ステップS32において、ビーコン管理部122は、パラメータmを0にリセットする。その後、ビーコン管理部122は、図13の処理を終了する。
【0071】
ステップS33において、ビーコン管理部122は、簡易ビーコンを送信するようにマネジメント部123を介してMACフレーム処理部124を設定する。これを受けてMACフレーム処理部124は、簡易ビーコンを生成し、生成した簡易ビーコンを、対応するチャネルのSTA機能を介して送信する。簡易ビーコンの生成は、MACフレーム処理部124ではなく、データ処理部121で行われてもよい。
【0072】
ステップS34において、ビーコン管理部122は、パラメータmを1だけインクリメントする。その後、ビーコン管理部122は、図13の処理を終了する。
【0073】
次に、アンカーリンクとして用いられるチャネルにおける通常ビーコンの送信処理について説明する。アンカーリンクとして用いられるチャネルについては、ビーコン管理部122は、規定のビーコンの送信周期が経過する毎に通常ビーコンを送信するようにマネジメント部123を介してMACフレーム処理部124を設定する。これを受けてMACフレーム処理部124は、通常ビーコンを生成し、生成した通常ビーコンを、アンカーリンクとして用いられるチャネルのSTA機能を介して送信する。通常ビーコンの生成は、MACフレーム処理部124ではなく、データ処理部121で行われてもよい。
【0074】
図14は、アンカーリンクとして用いられるチャネルと、アンカーリンクとしては用いられないその他のチャネルのそれぞれで送信されるビーコンを示す図である。図14では、アンカーリンクとして用いられるチャネルはチャネル#1であり、その他のチャネルはチャネル#2、チャネル#3である。
【0075】
図14に示すように、アンカーリンクであるチャネル#1では、通常ビーコンが一定周期で送信される。一方、チャネル#2及びチャネル#3では、原則的には、簡易ビーコンが送信され、特定の周期の時だけ通常ビーコンが送信される。
【0076】
ここで、通常ビーコンを送信する特定の周期は、ビーコンを送信する各リンクのリンク品質(チャネル使用率、フレーム送信のエラー率、チャネルに応じて伝送される高優先フレームと低優先フレームの送信比率等)に応じて個別に変更されてもよい。例えば、チャネル使用率が高い、フレーム送信のエラー率が高い、高優先フレームの送信比率が高い場合には、通常ビーコンを送信する周期は、他のチャネルと比較して長くされてもよい。この場合、閾値mperiodの値はこれらのリンク品質に応じて設定され、チャネル毎に異なるものとなる。これにより、リンク品質に応じた効率的なビーコン送信が可能となる。なお、リンク品質の各パラメータに基づいて品質クラスが定義され、定期的に各パラメータを評価することにより品質クラスが選択され、当該品質クラスに対応付けられた閾値mperiodの値が使用されてもよい。
【0077】
以上説明したように実施形態によれば、複数のチャネルを使用してマルチリンクに関連する情報を含むビーコンが送信される。複数のチャネルでビーコンが送信されることにより、リンクに使用されているチャネルの情報を、リンクが確立されていない周囲の基地局及び端末にも認識させることができる。
【0078】
ここで、すべてのチャネルで情報量の多いビーコンが送信されることは、無線システムとしてのチャネルの運用効率の低下に繋がり得る。これに対し、実施形態では、ビーコン管理部122は、アンカーリンクとして用いられるチャネル以外のチャネルについては、通常ビーコンと簡易ビーコンが切り替えられて一定周期で送信されるようにビーコンの送信を管理する。このように、実施形態では、マルチリンクの確立及び運用に必要な情報の報知をアンカーリンクとして用いられるチャネルに主に実施させることにより、他のチャネルでの伝送効率が高められ得る。このようにして、実施形態では、複数のチャネルを用いてビーコンが効率よく伝送され得る。
【0079】
[変形例1]
以下、実施形態の変形例を説明する。実施形態では、アンカーリンクとして用いられるチャネルでは常に通常ビーコンが送信されるとされている。これに対し、アンカーリンクとして用いられるチャネルにおいても簡易ビーコンが送信されるように設定されてもよい。この場合、アンカーリンクとして用いられるチャネルにおける通常ビーコンの送信頻度は、アンカーリンクとして用いられないチャネルにおける通常ビーコンの送信頻度よりも多くされる。
【0080】
図15は、変形例1におけるチャネル毎のビーコン選択処理について示すフローチャートである。ステップS40において、ビーコン管理部122は、パラメータnを1に設定する。パラメータnは、前述した基地局10が利用するチャネルのIDを示すパラメータである。
【0081】
ステップS41において、ビーコン管理部122は、パラメータnがアンカーリンクのIDと一致しているか否かを判定する。ステップS41において、パラメータnがアンカーリンクのIDと一致していると判定されたときには、処理はステップS42に移行する。ステップS41において、パラメータnがアンカーリンクのIDと一致していないと判定されたときには、処理はステップS43に移行する。
【0082】
ステップS42において、ビーコン管理部122は、チャネル#nにおいて周期毎のビーコン選択処理が行われるように設定する。また、ビーコン管理部122は、チャネル#nについての周期毎のビーコン選択処理における閾値mperiodをmaに設定する。ステップS43において、ビーコン管理部122は、チャネル#nにおいて周期毎のビーコン選択処理が行われるように設定する。また、ビーコン管理部122は、チャネル#nについての周期毎のビーコン選択処理における閾値mperiodをmoに設定する。ここで、ma<moである。ステップS42又はステップS43の後、処理はステップS44に移行する。
【0083】
ステップS44において、ビーコン管理部122は、パラメータnが閾値nmaxに達したか否かを判定する。閾値nmaxは、前述した基地局10が利用するチャネルの数である。ステップS44において、パラメータnが閾値nmaxに達していないと判定されたときには、処理はステップS45に移行する。ステップS44において、パラメータnが閾値nmaxに達したと判定されたときには、ビーコン管理部122は、図15の処理を終了する。
【0084】
ステップS45において、ビーコン管理部122は、nを1だけインクリメントする。その後、ビーコン管理部122は、処理をステップS41に戻す。この場合、次のチャネルにおいてステップS41-S44の処理が実施される。
【0085】
チャネル毎のビーコン選択処理の後、ビーコン管理部122は、規定のビーコンの送信周期毎に、アンカーリンクとして用いられるチャネルも含むそれぞれのチャネルについて周期毎のビーコン選択処理を実施する。周期毎のビーコン選択処理は、図13と同様でよい。ただし、ステップS30における閾値mperiodの値がチャネル毎に異なる。つまり、アンカーリンクとして用いられるチャネルである場合には、閾値maが用いられ、アンカーリンクとして用いられるチャネルではないその他のチャネルである場合には、閾値moが用いられる。
【0086】
図16は、変形例1におけるアンカーリンクとして用いられるチャネルと、アンカーリンクとしては用いられないその他のチャネルのそれぞれで送信されるビーコンを示す図である。図16では、アンカーリンクとしては用いられるチャネルはチャネル#1であり、その他のチャネルはチャネル#2、チャネル#3である。
【0087】
図16に示すように、変形例1では、アンカーリンクとして用いられるチャネルであるチャネル#1及びその他のチャネルであるチャネル#2、チャネル#3のすべてで、簡易ビーコンの送信の間の特定の周期で通常ビーコンが送信される。ただし、ma<moであるので、チャネル#1のほうが通常ビーコンの送信頻度が多い。
【0088】
ここで、通常ビーコンを送信する特定の周期は、ビーコンを送信する各リンクのリンク品質(チャネル使用率、フレーム送信のエラー率、チャネルに応じて伝送される高優先フレームと低優先フレームの送信比率等)に応じて個別に変更されてもよい。例えば、チャネル使用率が高い、フレーム送信のエラー率が高い、高優先フレームの送信比率が高い場合には、通常ビーコンを送信する周期は、他のチャネルと比較して長くされてもよい。この場合、閾値moの値はこれらのリンク品質に応じて設定され、チャネル毎に異なるものとなる。一方で、閾値maの値は変更されない。これにより、リンク品質に応じた効率的なビーコン送信が可能となる。なお、リンク品質の各パラメータに基づいて品質クラスが定義され、定期的に各パラメータを評価することにより品質クラスが選択され、当該品質クラスに対応付けられた閾値moの値が使用されてもよい。
【0089】
以上説明したように変形例1においても、マルチリンクの確立に必要な情報の報知をアンカーリンクとして用いられるチャネルに主に実施させることにより、他のチャネルでの伝送効率が高められ得る。さらに、変形例1では、アンカーリンクとして用いられるチャネルについても簡易ビーコンの送信が実施されることで、アンカーリンクとして用いられるチャネルにおける伝送効率も高められ得る。
【0090】
[変形例2]
次に、実施形態の変形例2を説明する。変形例2は、マルチリンクの確立に必要な情報の報知をそれぞれのチャネルに均等に実施させる例である。
【0091】
図17は、変形例2における周期毎のビーコン選択処理について示すフローチャートである。変形例2における周期毎のビーコン選択処理は、アンカーリンクとして用いられるチャネルを含むそれぞれのチャネルについて実施される処理である。変形例2では、チャネル毎のビーコン選択処理は省略される。
【0092】
ステップS50において、ビーコン管理部122は、パラメータmが対応するチャネルのIDと一致したか否かを判定する。パラメータmは、基地局10が利用するチャネルのIDを示すパラメータである。また、対応するチャネルIDは、実施中の周期毎のビーコン選択処理の対象のチャネルのIDである。例えば、周期毎のビーコン選択処理がチャネル#1について実施されているとき、対応するチャネルのIDは0である。ステップS50において、パラメータmが対応するチャネルのIDと一致したと判定されたときには、処理はステップS51に移行する。ステップS50において、パラメータmが対応するチャネルのIDと一致していないと判定されたときには、処理はステップS52に移行する。
【0093】
ステップS51において、ビーコン管理部122は、通常ビーコンを送信するようにマネジメント部123を介してMACフレーム処理部124を設定する。これを受けてMACフレーム処理部124は、通常ビーコンを生成し、生成した通常ビーコンを、対応するチャネルのSTA機能を介して送信する。通常ビーコンの生成は、MACフレーム処理部124ではなく、データ処理部121で行われてもよい。ステップS52において、ビーコン管理部122は、簡易ビーコンを送信するようにマネジメント部123を介してMACフレーム処理部124を設定する。これを受けてMACフレーム処理部124は、簡易ビーコンを生成し、生成した簡易ビーコンを、対応するチャネルのSTA機能を介して送信する。簡易ビーコンの生成は、MACフレーム処理部124ではなく、データ処理部121で行われてもよい。
【0094】
ステップS53において、ビーコン管理部122は、mを1だけインクリメントする。
【0095】
ステップS54において、ビーコン管理部122は、パラメータmが閾値mmaxに達したか否かを判定する。閾値mmaxは、基地局10が利用するチャネルの数である。ステップS54において、パラメータmが閾値mmaxに達していないと判定されたときには、ビーコン管理部122は、処理をステップS50に戻す。この場合、次のチャネルにおいてステップS50-S54の処理が実施される。ステップS54において、パラメータmが閾値mmaxに達していると判定されたときには、処理はステップS55に移行する。
【0096】
ステップS55において、ビーコン管理部122は、パラメータmを0にリセットする。その後、ビーコン管理部122は、図17の処理を終了する。
【0097】
図18は、変形例2におけるアンカーリンクとして用いられるチャネルと、アンカーリンクとしては用いられないその他のチャネルのそれぞれで送信されるビーコンを示す図である。図18では、アンカーリンクとして用いられるチャネルはチャネル#1であり、その他のチャネルはチャネル#2、チャネル#3である。
【0098】
図18に示すように、変形例2においても変形例1と同様にアンカーリンクとして用いられるチャネルであるチャネル#1及びその他のチャネルであるチャネル#2、チャネル#3のすべてで、簡易ビーコンの送信の間の特定の周期で通常ビーコンが送信される。変形例2では、通常ビーコンが送信される周期がチャネル毎にずれている。
【0099】
ここで、通常ビーコンを送信する特定の周期は、ビーコンを送信する各リンクのリンク品質(チャネル使用率、フレーム送信のエラー率、チャネルに応じて伝送される高優先フレームと低優先フレームの送信比率等)に応じて個別に変更されてもよい。例えば、チャネル使用率が高い、フレーム送信のエラー率が高い、高優先フレームの送信比率が高い場合には、通常ビーコンを送信する周期は、他のチャネルと比較して長くされてもよい。この場合、閾値mmaxの値はこれらのリンク品質に応じて設定され、チャネル毎に異なるものとなる。これにより、リンク品質に応じた効率的なビーコン送信が可能となる。なお、リンク品質の各パラメータに基づいて品質クラスが定義され、定期的に各パラメータを評価することにより品質クラスが選択され、当該品質クラスに対応付けられた閾値mmaxの値が使用されてもよい。
【0100】
以上説明したように変形例2においては、マルチリンクの確立に必要な情報の報知がアンカーリンクとして用いられるチャネルによって主に実施されるのではなく、それぞれのチャネルによって均等に実施される。これにより、チャネル毎の伝送効率が均等に高められ得る。また、通常ビーコンの送信タイミングがチャネル毎にずれるようにオフセットされているので、例えば端末がスキャンしたときに何れかのチャネルでマルチリンクの情報を含む通常ビーコンを受信できる可能性が高まる。
【0101】
また、実施形態及び変形例に係る無線システム1の構成はあくまで一例であり、その他の構成であってもよい。例えば、基地局10及び端末20のそれぞれが3つのSTA機能(無線信号処理部)を備える場合について例示したが、これに限定されない。基地局10は、少なくとも2つの無線信号処理部を備えていればよい。同様に、端末20は、少なくとも2つの無線信号処理部を備えていればよい。また、各STA機能が処理することが可能なチャネルの数は、使用される周波数帯に応じて適宜設定され得る。無線通信モジュール14及び24のそれぞれは、複数の通信モジュールによって複数の周波数帯の無線通信に対応してもよいし、1つの通信モジュールによって複数の周波数帯の無線通信に対応してもよい。
【0102】
また、実施形態及びその変形例に係る無線システム1における基地局10及び端末20の機能構成は、あくまで一例である。基地局10及び端末20の機能構成は、各実施形態で説明された動作を実行することが可能であれば、その他の名称及びグループ分けであってもよい。
【0103】
また、実施形態に係る無線システム1において、基地局10及び端末20のそれぞれに含まれたCPUは、その他の回路であってもよい。例えば、CPUの替わりに、MPU(Micro Processing Unit)等が使用されてもよい。また、各実施形態において説明された処理のそれぞれは、専用のハードウェアによって実現されてもよい。各実施形態に係る無線システム1は、ソフトウェアにより実行される処理と、ハードウェアによって実行される処理とが混在していてもよいし、どちらか一方のみであってもよい。
【0104】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0105】
1 無線システム
10 基地局
11,21 CPU
12,22 ROM
13,23 RAM
14,24 無線通信モジュール
15 有線通信モジュール
20 端末
25 ディスプレイ
26 ストレージ
30 サーバ
110,210 LLC処理部
120,220 リンクマネジメント部
121,221 データ処理部
122 ビーコン管理部
123,223 マネジメント部
124,224 MACフレーム処理部
130,140,150,230,240,250 無線信号処理部
260 アプリケーション実行部
図1
図2
図3
図4
図5
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