(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ガイドロープ
(51)【国際特許分類】
A63K 99/00 20060101AFI20241210BHJP
G09B 21/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A63K99/00
G09B21/00 A
(21)【出願番号】P 2023532940
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025588
(87)【国際公開番号】W WO2023281649
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】駒▲崎▼ 掲
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 淳司
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-239065(JP,A)
【文献】特開2002-153573(JP,A)
【文献】中国実用新案第209734920(CN,U)
【文献】米国特許第4346902(US,A)
【文献】中国実用新案第207545426(CN,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2018-0001696(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63K 1/00-99/00
G09B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2人の利用者の間での意思の伝達に用いるガイドロープであって、
前記2人のうちの第1利用者が把持するための第1把持部品と、前記2人のうちの第2利用者が把持するための第2把持部品と、第1接続部品と、第2接続部品と、が環状に接続されたものであって、
前記第1把持部品と前記第2把持部品のそれぞれは、2個の接続部(以下、「第1接続部」と「第2接続部」という)を備えた外殻を有する中空の立体物であり、
前記第1接続部品と前記第2接続部品のそれぞれは、2個の端部(以下、「第1端部」と「第2端部」という)を備えた管であり、
前記第1把持部品の前記第1接続部と前記第1接続部品の第1端部が接続されており、
前記第1把持部品の前記第2接続部と前記第2接続部品の第2端部が接続されており、
前記第2把持部品の前記第1接続部と前記第2接続部品の第1端部が接続されており、
前記第2把持部品の前記第2接続部と前記第1接続部品の第2端部が接続されており、
前記第1把持部品の中空の内部と、前記第1接続部品の中空の内部と、前記第2把持部品の中空の内部と、前記第2接続部品の中空の内部と、により1つの密閉空間が形成されており、
前記第1把持部品と前記第2把持部品のそれぞれの外殻は、内部の空気の圧力の変化、外部から加わる力の変化、のいずれによっても容易に変形するように形成されており、
前記第1接続部品と前記第2接続部品のそれぞれの外殻は、内部からの空気の圧力の変化、外部から加わる力の変化、のいずれによっても容易に変形しないように、かつ、前記第1把持部品を把持した前記第1利用者と前記第2把持部品を把持した前記第2利用者の相対位置関係の変化によって容易に変形しないように、形成されている
ガイドロープ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドロープであって、
前記第1把持部品と前記第2把持部品のそれぞれの前記立体物は、直径が略6.6cmの略球体である
ガイドロープ。
【請求項3】
請求項2に記載のガイドロープであって、
前記第1把持部品と前記第2把持部品のそれぞれにおいて、前記第1接続部と前記第2接続部のそれぞれは、前記立体物の重心を通る直線と前記立体物の外殻との接点を含むように設けられている
ガイドロープ。
【請求項4】
請求項3に記載のガイドロープであって、
前記立体物の前記外殻は、厚みが略1mmのゴムシートにより形成されている
ガイドロープ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のガイドロープであって、
前記第1接続部品と前記第2接続部品のそれぞれの長さは略30cmである
ガイドロープ。
【請求項6】
請求項5に記載のガイドロープであって、
前記第1接続部品と前記第2接続部品のそれぞれは、外径が略6mmであり、内径が略4mmであり、軟質PVCにより形成されている
ガイドロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマラソンにおける伴走者が視覚障がい者を誘導することなどのように、補助者が視覚障がい者をガイドするために用いられるガイドロープに関する。
【背景技術】
【0002】
触覚を用いて視覚障がい者をガイドする技術としては、非特許文献1の技術がある。非特許文献1には、ロープを環状にした伴走ガイドロープが開示されている。伴走者と視覚障がい者がこの伴走ガイドロープを握ることで、例えば伴走者が視覚障がい者に進むべき方向の指示をするなどのように、利用者間で力の方向と大きさを用いて意思を伝達することができる。
【0003】
触覚を用いて相互に意思伝達をする技術としては、非特許文献2の技術がある。非特許文献2には、複数のゴムボールとゴム製の空気チューブで繋いで環状にして1つの空気室を形成した意思伝達用品が開示されている。ある人が非特許文献2の意思伝達用品のある1つのボールの握りを強めると、空気チューブを介して別の人が握っている別のボールに空気が送り込まれて、別の人が握っているボールは膨れるか膨れようとする。これにより、非特許文献2の意思伝達用品を用いることで、利用者間で触覚を用いて意思を伝達することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“伴走ガイド(基礎編)”、[online]、特定非営利活動法人日本ブラインドマラソン協会、[令和3年4月15日検索]、インターネット<URL: https://jbma.or.jp/challenge/guiderunnner/preparation/>
【文献】“空気伝話”、[online]、NTT INTERCOMMUNICATION CENTER、[令和3年4月15日検索]、インターネット<URL: https://www.ntticc.or.jp/ja/archive/works/communication-by-air/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の伴走ガイドロープによれば、利用者間で力の方向と大きさを用いて意思を伝達することができる。しかしながら、伴走ガイドロープは、力の方向と大きさのみを用いて意思を伝達するものであることから、伝えられる情報が限られるという課題がある。
【0006】
非特許文献2の技術によれば、利用者間で触覚を用いて意思を伝達することができる。しかしながら、ゴム製の柔軟な空気チューブを用いていることから、力の方向と大きさを用いて意思を伝達するのは難しく、ガイドロープとして用いることができないという課題がある。
【0007】
本発明は、力の方向と大きさに限られない触覚を用いた利用者間での意思の伝達を可能とするガイドロープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様によれば、ガイドロープは、2人の利用者の間での意思の伝達に用いる。ガイドロープは、2人のうちの第1利用者が把持するための第1把持部品と、2人のうちの第2利用者が把持するための第2把持部品と、第1接続部品と、第2接続部品と、が環状に接続されたものであって、第1把持部品と第2把持部品のそれぞれは、2個の接続部(以下、「第1接続部」と「第2接続部」という)を備えた外殻を有する中空の立体物であり、第1接続部品と第2接続部品のそれぞれは、2個の端部(以下、「第1端部」と「第2端部」という)を備えた管であり、第1把持部品の第1接続部と第1接続部品の第1端部が接続されており、第1把持部品の第2接続部と第2接続部品の第2端部が接続されており、第2把持部品の第1接続部と第2接続部品の第1端部が接続されており、第2把持部品の第2接続部と第1接続部品の第2端部が接続されており、第1把持部品の中空の内部と、第1接続部品の中空の内部と、第2把持部品の中空の内部と、第2接続部品の中空の内部と、により1つの密閉空間が形成されており、第1把持部品と第2把持部品のそれぞれの外殻は、内部の空気の圧力の変化、外部から加わる力の変化、のいずれによっても容易に変形するように形成されており、第1接続部品と第2接続部品のそれぞれの外殻は、内部からの空気の圧力の変化、外部から加わる力の変化、のいずれによっても容易に変形しないように、かつ、第1把持部品を把持した第1利用者と第2把持部品を把持した第2利用者の相対位置関係の変化によって容易に変形しないように、形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガイドロープによれば、力の方向と大きさに限られない触覚を用いた利用者間での意思の伝達が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ガイドロープ100の外観を例示した図である。
【
図2】
図2Aは、ガイドロープ100を例示した平面図である。
図2Bは、ガイドロープ100を例示した側面図である。
【
図3】
図3Aは、把持部品110-iの構成を説明するための模式的な断面図である。
図3Bは、把持部品110-iの構成を説明するための模式的な側面図である。
【
図4】
図4Aは、接続部品120-jの構成を説明するための模式的な断面図である。
図4Bは、接続部品120-jの構成を説明するための模式的な側面図である。
【
図5】
図5は、ガイドロープ100における各部品の接続状態を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態のガイドロープ100は、
図1と
図2に例示する立体物であり、
図2Aに例示する通り、第1把持部品110-1と第2把持部品110-2と第1接続部品120-1と第2接続部品120-2により構成されている。より具体的には、ガイドロープ100は、第1把持部品110-1と第1接続部品120-1と第2把持部品110-2と第2接続部品120-2が順に環状に接続されたものである。第1把持部品110-1は、視覚障がい者と補助者の2人の利用者のうちのいずれか一方の利用者(以下、「第1利用者」という)が把持するためのものである。第2把持部品110-2は、視覚障がい者と補助者の2人の利用者のうちの第1利用者ではないほうの利用者(以下、「第2利用者」という)が把持するためのものである。補助者は晴眼者であってもよいし視覚障がい者であってもよい。
【0012】
[第1把持部品110-1、第2把持部品110-2]
第1把持部品110-1と第2把持部品110-2は、構造は同じであるので、以下では、第1把持部品110-1の場合はiを1とし、第2把持部品110-2の場合はiを2として、把持部品110-iとして説明する。
【0013】
図3Aは、
図3Bの破線IIIa-IIIaに沿って切断した模式的な断面図である。把持部品110-iは、
図3Aに断面図を例示する通り、2個の接続部である第1接続部111-iと第2接続部112-iを備えた外殻113-iを有する中空の立体物である。以下では、把持部品110-iの中空の部分のことを内部114-iという。外殻113-iは、内部114-iに気体が充填されたときに立体物となるようにされている。当該立体物の形状は任意であり、球体であってもよいし、回転楕円体であってもよいし、その他の形状であってもよい。立体物の大きさは、利用者が把持可能な大きさであれば任意であり、例えば、内部114-iに充填された気体を含む体積が略150cm
3であるとよく、立体物が球体である場合には直径が略6.6cmであるとよい。外殻113-iは、内部114-iの気体の圧力の変化、外部から加わる力の変化、のいずれによっても容易に変形するように形成されている。すなわち、外殻113-iは、弾性体により形成されているとよく、例えば、硬度が低い薄いゴムシートにより形成されていればよい。硬度が低い薄いゴムシートの例は、厚みが略1mmのゴム製(天然ゴム製または合成ゴム製)のシートである。更に具体的には、例えば、軟式テニスボールに第1接続部111-iと第2接続部112-iを設けたものを把持部品110-iとすればよい。
【0014】
第1接続部111-iと第2接続部112-iのそれぞれは、立体物の重心を通る直線が外殻113-iと接する点を含むように設けられているとよい。第1接続部111-iと第2接続部112-iを設けた軟式テニスボールを把持部品110-iとして用いる場合には、内部114-iに気体が充填されたときの立体物の形状は球体であり、立体物の重心は球体の中心であることから、第1接続部111-iと第2接続部112-iのそれぞれは、球体の中心を通る直線が外殻113-iと接する点を含むように設けられているとよい。
【0015】
図3Bは、把持部品110-iを第1接続部111-i側から見たときと、把持部品110-iを第2接続部112-i側から見たときの側面図である。第1接続部111-iには開口部111A-iと接合部111B-iが設けられている。第2接続部112-iには開口部112A-iと接合部112B-iが設けられている。
【0016】
[第1接続部品120-1、第2接続部品120-2]
第1接続部品120-1と第2接続部品120-2は、構造は同じであるので、以下では、第1接続部品120-1の場合はjを1とし、第2接続部品120-2の場合はjを2として、接続部品120-jとして説明する。
【0017】
図4Aは、
図4Bの破線IVa-IVaに沿って切断した模式的な断面図である。接続部品120-jは、
図4Aに断面図を例示する通り、2個の端部である第1端部121-jと第2端部122-jを備えた管である。以下では、接続部品120-jの管の部分を外殻123-jといい、接続部品120-jの中空の部分を内部124-jという。
図4Bは、接続部品120-jを第1端部121-j側から見たときと、接続部品120-jを第2端部122-j側から見たときの側面図である。接続部品120-jの第1端部121-jは、中空の内部124-jの端部である開口部121A-jと、外殻123-iの端部である接合部121B-jと、により構成されている。接続部品120-jの第2端部122-jは、中空の内部124-jの端部である開口部122A-jと、外殻123-iの端部である接合部122B-jと、により構成されている。
【0018】
図5は、ガイドロープ100における第1把持部品110-1と第1接続部品120-1と第2把持部品110-2と第2接続部品120-2の接続状態を模式的に示す断面図であり、
図2Bの破線V-Vに沿って切断した模式的な断面図である。なお、
図2Bは、ガイドロープ100を第2把持部品110-2側から見たときの側面図である。第1接続部品120-1の第1端部121-1は第1把持部品110-1の第1接続部111-1と接続されており、第1接続部品120-1の第2端部122-1は第2把持部品110-2の第2接続部112-2と接続されており、第2接続部品120-2の第1端部121-2は第2把持部品110-2の第1接続部111-2と接続されており、第2接続部品120-2の第2端部122-2は第1把持部品110-1の第2接続部112-1と接続されている。これらの4つの接続がされていることにより、第1把持部品110-1と第1接続部品120-1と第2把持部品110-2と第2接続部品120-2が順に環状に接続されている。
【0019】
接続部品120-jの長さは、2人の利用者が接触せずにそれぞれの把持部品110-iを把持できる長さであれば任意であり、例えば、略30cmであるとよい。管の内径は、把持部品110-iの外殻113-iの外部の圧力の変化により生じる空気の流れを阻害したり、空気の流れに大きな抵抗を与えたりしない内径であれば任意であり、例えば略4mmであるとよい。外殻123-iは、内部の気体の圧力の変化、外部から加わる力の変化、のいずれによっても容易に変形しないように、かつ、第1把持部品を把持した第1利用者と第2把持部品を把持した第2利用者の相対位置関係の変化によって容易に変形しないように、形成されたものであり、例えば、厚みが略2mmの軟質PVC(軟質ポリ塩化ビニル)により形成されている。すなわち、例えば、長さが略30cm、内径が略4mm、外径が略6mmの軟質PVCにより形成された管を接続部品120-iとして用いることができる。
【0020】
[接続部分]
ガイドロープ100における第1把持部品110-1と第1接続部品120-1と第2把持部品110-2と第2接続部品120-2の接続状態の詳細を、
図5を参照して説明する。
【0021】
第1把持部品110-1の第1接続部111-1と第1接続部品120-1の第1端部121-1との接続部分においては、第1把持部品110-1の第1接続部111-1の接合部111B-1と第1接続部品120-1の第1端部121-1の接合部121B-1とが接合されており、この接合により、第1把持部品110-1の第1接続部111-1の開口部111A-1と第1接続部品120-1の第1端部121-1の開口部121A-1とが接続されている。
【0022】
第1把持部品110-1の第2接続部112-1と第2接続部品120-2の第2端部122-2との接続部分においては、第1把持部品110-1の第2接続部112-1の接合部112B-1と第2接続部品120-2の第2端部122-2の接合部122B-2とが接合されており、この接合により、第1把持部品110-1の第2接続部112-1の開口部112A-1と第2接続部品120-2の第2端部122-2の開口部122A-2とが接続されている。
【0023】
第2把持部品110-2の第1接続部111-2と第2接続部品120-2の第1端部121-2との接続部分においては、第2把持部品110-2の第1接続部111-2の接合部111B-2と第2接続部品120-2の第1端部121-2の接合部121B-2とが接合されており、この接合により第2把持部品110-2の第1接続部111-2の開口部111A-2と第2接続部品120-2の第1端部121-2の開口部121A-2とが接続されている。
【0024】
第2把持部品110-2の第2接続部112-2と第1接続部品120-1の第2端部122-1との接続部分においては、第2把持部品110-2の第2接続部112-2の接合部112B-2と第1接続部品120-1の第2端部122-1の接合部122B-1とが接合されており、この接合により、第2把持部品110-2の第2接続部112-2の開口部112A-2と第1接続部品120-1の第2端部122-1の開口部122A-1とが接続されている。
【0025】
以上で説明したように各開口部の接続がされていることにより、第1把持部品110-1の中空の内部114-1と第1接続部品120-1の中空の内部124-1と第2把持部品110-2の中空の内部114-2と第2接続部品120-2の中空の内部124-2によって1つの密閉空間が形成されている。形成された密閉空間の内部には気体が充填されている。密閉空間の内部に充填される気体は、把持部品110-iと接続部品120-jを浸食したり劣化させたりしない気体であればどのようなものであってもよく、例えば空気を用いればよい。密閉空間の内部の気圧は、第1把持部品110-1の外殻113-1と第2把持部品110-2の外殻113-2のそれぞれが利用者に把持されたときに上述した形状を維持できる程度とすればよい。
【0026】
[利用方法]
ガイドロープ100は、第1利用者が第1把持部品110-1を把持し、第2利用者が第2把持部品110-2を把持した状態で利用される。第1利用者が把持している第1把持部品110-1の握りを強めると、第1把持部品110-1の内部114-1にある気体の一部が第1接続部品120-1の内部124-1と第2接続部品120-2の内部124-2に押し出されて、第1接続部品120-1の内部124-1と第2接続部品120-2の内部124-2から第2把持部品110-2の内部114-2に気体が送り込まれて、第2把持部品110-2の外殻113-2が膨れるか膨れようとして、第1利用者が第1把持部品110-1の握りを強めたことを第2利用者が触覚で知覚することができる。同様に、第2利用者が第2把持部品110-2の握りを強めた場合には、第1把持部品110-1の外殻113-1が膨れるか膨れようとして、第2利用者が第2把持部品110-2の握りを強めたことを第1利用者が触覚で知覚することができる。また、第1利用者が把持している第1把持部品110-1にある方向に引く力を加えれば、第1接続部品120-1と第2接続部品120-2によって第1把持部品110-1との相対位置関係が容易に変化しないように接続された第2把持部品110-2も当該方向に引く力が加わり、第1利用者が第1把持部品110-1に当該方向に引く力を加えたことを第2利用者が触覚で知覚することができる。同様に、第2利用者が第2把持部品110-2にある方向に引く力を加えた場合には、第1把持部品110-1に当該方向に引く力が加わり、当該方向に引く力を加えたことを第1利用者が触覚で知覚することができる。以上のことから、ガイドロープ100を用いれば、電気による制御機構や電源を要することなく、第1利用者と第2利用者が、引く方向の情報と、引く力の情報と、力と方向以外の情報である握りの情報と、を含んで意思を相互に伝達することが可能となる。
【0027】
[実験結果]
発明者らは、軟式テニスボールを把持部品110-iとし、把持部品110-iの第1接続部111-iと第2接続部112-iがなす角度、接続部品120-jの硬さ、接続部品120-jの長さ、のそれぞれを2通りに設定した8通りのガイドロープ100を用いて被験者実験を行った。
【0028】
把持部品110-iの第1接続部111-iと第2接続部112-iがなす角度については、軟式テニスボールの球体のある断面における中心角が90度と180度の2通りで実験を行った。中心角が90度である把持部品110-iの場合には接続部品120-jに指が引っかかることがあった。これに対し、中心角が180度である把持部品110-iの場合には接続部品120-jに指が引っかからず把持部品110-iを握り易いことが分かった。すなわち、把持部品110-iの第1接続部111-iと第2接続部112-iのそれぞれは、把持部品110-iの立体物の重心を通る直線と立体物の外殻との接点にあるとよいことが分かった。
【0029】
接続部品120-jの硬さについては、接続部品120-jとしてソフトチューブとハードチューブの2通りを用いて実験を行った。ソフトチューブとは、外径が略6mmであり内径が略4mmであるシリコン製の管であり、ハードチューブとは、外径が略6mmであり内径が略4mmである軟質PVC製の管である。接続部品120-jとしてソフトチューブを用いたガイドロープ100の場合には、柔らかくて遊びがありすぎる、不安な感じがする、制御しにくい、回るときに大回りしてしまう、回る感じがわかりにくい、などの課題があることが分かった。これに対し、接続部品120-jとしてハードチューブを用いたガイドロープ100の場合には、安心感がある、頼りやすい、安定している、テンションがよい、などの利点があることが分かった。すなわち、接続部品120-jは、第1把持部品110-1を把持した第1利用者と第2把持部品110-2を把持した第2利用者の相対位置関係の変化によって容易に変形しないように形成されているとよく、例えば、接続部品120-jとして、外径が略6mmであり、内径が略4mmである、軟質PVCにより形成された管を用いるのがよいことが分かった。
【0030】
接続部品120-jの長さについては、15cmと30cmの2通りを用いて実験を行った。接続部品120-jの長さが15cmである場合には、遊びが少なすぎてぶつかってしまう、短すぎて手が当たる、握りにくい、などの課題があることが分かった。これに対し、接続部品120-jの長さが30cmである場合には、適度な距離である、初めての人や案内に使うのなら15cmより良い、などの利点があることが分かった。すなわち、接続部品120-jの長さは略30cmがよいことが分かった。
【0031】
<補記>
上述の本発明の実施形態の記載は、例証と記載の目的で提示されたものである。網羅的であるという意思はなく、開示された厳密な形式に発明を限定する意思もない。変形やバリエーションは上述の教示から可能である。実施形態は、本発明の原理の最も良い例証を提供するために、そして、この分野の当業者が、熟考された実際の使用に適するように本発明を色々な実施形態で、また、色々な変形を付加して利用できるようにするために、選ばれて表現されたものである。すべてのそのような変形やバリエーションは、公正に合法的に公平に与えられる幅にしたがって解釈された添付の請求項によって定められた本発明のスコープ内である。