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特許7601229光ファイバ状態測定装置及び光ファイバ状態測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光ファイバ状態測定装置及び光ファイバ状態測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/322 20210101AFI20241210BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20241210BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20241210BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01K11/322
G01B11/16 Z
G01H9/00 E
G01D5/353 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023534552
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2021026691
(87)【国際公開番号】W WO2023286252
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 千尋
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-80048(JP,A)
【文献】特開2010-217029(JP,A)
【文献】特表平5-505063(JP,A)
【文献】特開2009-98020(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104729751(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/32-11/324
G01B 11/16
G01H 9/00
G01D 5/353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光ファイバの温度、歪み又は振動を測定する光ファイバ状態測定装置であって、
前記被測定光ファイバより長い光ファイバ長を有し、同一入射波長に対して温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態の前記被測定光ファイバと異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有し、同一入射波長に対して互いに異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有する第1参照用光ファイバ及び第2参照用光ファイバと、
前記被測定光ファイバへと、パルス状の測定用試験光を入射し、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバへと、前記測定用試験光と同一波長を有する連続光又はパルス状の第1参照用試験光及び第2参照用試験光を入射する試験光入射部と、
前記被測定光ファイバから、パルス状の測定用ブリルアン散乱光を入力し、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバから、連続光又はパルス状の第1参照用ブリルアン散乱光及び第2参照用ブリルアン散乱光を入力する散乱光入力部と、
前記測定用ブリルアン散乱光と前記第1参照用ブリルアン散乱光とを合波しこれらの第1ビート周波数を検出し、前記測定用ブリルアン散乱光と前記第2参照用ブリルアン散乱光とを合波しこれらの第2ビート周波数を検出するビート周波数検出部と、
前記被測定光ファイバの温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、前記被測定光ファイバの温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、前記第1ビート周波数及び前記第2ビート周波数に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向つまり符号を検出するシフト量変化検出部と、
を備えることを特徴とする光ファイバ状態測定装置。
【請求項2】
前記シフト量変化検出部は、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記第1ビート周波数の変化の方向及び前記第2ビート周波数の変化の方向に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向を検出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバ状態測定装置。
【請求項3】
前記シフト量変化検出部は、請求項2において確定できなければ、前記非定常状態又は前記印加状態での、前記第1ビート周波数と前記第2ビート周波数との間の大小関係に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向を確定する
ことを特徴とする、請求項2に記載の光ファイバ状態測定装置。
【請求項4】
前記シフト量変化検出部は、前記定常状態又は前記非印加状態及び前記非定常状態又は前記印加状態での、前記第1ビート周波数及び前記第2ビート周波数に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の大きさつまり絶対値を検出する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ状態測定装置。
【請求項5】
前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバの互いに異なる一定のブリルアン周波数シフト量は、前記被測定光ファイバの前記定常状態又は前記非印加状態のブリルアン周波数シフト量と比べて、ブリルアン利得帯域幅以上離れている
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバ状態測定装置。
【請求項6】
前記シフト量変化検出部は、前記非定常状態又は前記印加状態において、前記第1ビート周波数又は前記第2ビート周波数が明瞭に測定できなければ、前記被測定光ファイバの前記定常状態又は前記非印加状態のブリルアン周波数シフト量並びに前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバの互いに異なる一定のブリルアン周波数シフト量と異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有する第3参照用光ファイバを利用する
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の光ファイバ状態測定装置。
【請求項7】
被測定光ファイバの温度、歪み又は振動を測定する光ファイバ状態測定方法であって、
前記被測定光ファイバより長い光ファイバ長を有し、同一入射波長に対して温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態の前記被測定光ファイバと異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有し、同一入射波長に対して互いに異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有する第1参照用光ファイバ及び第2参照用光ファイバを利用して、
前記被測定光ファイバへと、パルス状の測定用試験光を入射し、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバへと、前記測定用試験光と同一波長を有する連続光又はパルス状の第1参照用試験光及び第2参照用試験光を入射する試験光入射ステップと、
前記被測定光ファイバから、パルス状の測定用ブリルアン散乱光を入力し、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバから、連続光又はパルス状の第1参照用ブリルアン散乱光及び第2参照用ブリルアン散乱光を入力する散乱光入力ステップと、
前記測定用ブリルアン散乱光と前記第1参照用ブリルアン散乱光とを合波しこれらの第1ビート周波数を検出し、前記測定用ブリルアン散乱光と前記第2参照用ブリルアン散乱光とを合波しこれらの第2ビート周波数を検出するビート周波数検出ステップと、
前記被測定光ファイバの温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、前記被測定光ファイバの温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、前記第1ビート周波数及び前記第2ビート周波数に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向つまり符号を検出するシフト量変化検出ステップと、
を順に備えることを特徴とする光ファイバ状態測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被測定光ファイバの温度、歪み又は振動を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量に基づいて、被測定光ファイバの温度、歪み又は振動を測定する技術が、特許文献1等に開示されている。
【0003】
一般の技術では、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量に基づいて、上記定常状態又は上記非印加状態から上記非定常状態又は上記印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化を検出する。ここで、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量は、10GHzのオーダーであるため、広帯域な受光装置が必要となり、光ファイバ状態測定の装置構成が複雑化する。
【0004】
特許文献1では、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量と、参照用光ファイバの一定のブリルアン周波数シフト量と、の間のビート周波数に基づいて、上記定常状態又は上記非印加状態から上記非定常状態又は上記印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化を検出する。ここで、2つのブリルアン周波数シフト量の間のビート周波数は、100MHzのオーダーであるため、広帯域な受光装置が不要となり、光ファイバ状態測定の装置構成が簡略化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】飯田 大輔、伊藤 文彦、“誘導ブリルアン散乱参照光を用いた低周波温度センシング”、信学技報、社団法人 電子情報通信学会、ОFT2008-43、vоl.108、nо.245、pp.45-50、2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、2つのブリルアン周波数シフト量の間のビート周波数は、2つのブリルアン周波数シフト量の間の差分の絶対値を示すものであり、2つのブリルアン周波数シフト量の間の差分の符号を示すものではない。よって、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の大きさを検出することはできるが、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向を検出することはできない。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、広帯域な受光装置を不要とし、光ファイバ状態測定の装置構成を簡略化し、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向及び大きさを検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量と、「2本以上」の参照用光ファイバの一定のブリルアン周波数シフト量と、の間の「2種以上」のビート周波数に基づいて、上記定常状態又は上記非印加状態から上記非定常状態又は上記印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向を「正方向及び負方向のうちの一方向」に確定する。
【0009】
具体的には、本開示は、被測定光ファイバの温度、歪み又は振動を測定する光ファイバ状態測定装置であって、前記被測定光ファイバより長い光ファイバ長を有し、同一入射波長に対して温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態の前記被測定光ファイバと異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有し、同一入射波長に対して互いに異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有する第1参照用光ファイバ及び第2参照用光ファイバと、前記被測定光ファイバへと、パルス状の測定用試験光を入射し、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバへと、前記測定用試験光と同一波長を有する連続光又はパルス状の第1参照用試験光及び第2参照用試験光を入射する試験光入射部と、前記被測定光ファイバから、パルス状の測定用ブリルアン散乱光を入力し、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバから、連続光又はパルス状の第1参照用ブリルアン散乱光及び第2参照用ブリルアン散乱光を入力する散乱光入力部と、前記測定用ブリルアン散乱光と前記第1参照用ブリルアン散乱光とを合波しこれらの第1ビート周波数を検出し、前記測定用ブリルアン散乱光と前記第2参照用ブリルアン散乱光とを合波しこれらの第2ビート周波数を検出するビート周波数検出部と、前記被測定光ファイバの温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、前記被測定光ファイバの温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、前記第1ビート周波数及び前記第2ビート周波数に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向つまり符号を検出するシフト量変化検出部と、を備えることを特徴とする光ファイバ状態測定装置である。
【0010】
また、本開示は、被測定光ファイバの温度、歪み又は振動を測定する光ファイバ状態測定方法であって、前記被測定光ファイバより長い光ファイバ長を有し、同一入射波長に対して温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態の前記被測定光ファイバと異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有し、同一入射波長に対して互いに異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有する第1参照用光ファイバ及び第2参照用光ファイバを利用して、前記被測定光ファイバへと、パルス状の測定用試験光を入射し、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバへと、前記測定用試験光と同一波長を有する連続光又はパルス状の第1参照用試験光及び第2参照用試験光を入射する試験光入射ステップと、前記被測定光ファイバから、パルス状の測定用ブリルアン散乱光を入力し、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバから、連続光又はパルス状の第1参照用ブリルアン散乱光及び第2参照用ブリルアン散乱光を入力する散乱光入力ステップと、前記測定用ブリルアン散乱光と前記第1参照用ブリルアン散乱光とを合波しこれらの第1ビート周波数を検出し、前記測定用ブリルアン散乱光と前記第2参照用ブリルアン散乱光とを合波しこれらの第2ビート周波数を検出するビート周波数検出ステップと、前記被測定光ファイバの温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、前記被測定光ファイバの温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、前記第1ビート周波数及び前記第2ビート周波数に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向つまり符号を検出するシフト量変化検出ステップと、を順に備えることを特徴とする光ファイバ状態測定方法である。
【0011】
これらの構成によれば、広帯域な受光装置を不要としたうえで、光ファイバ状態測定の装置構成を簡略化することができ、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向つまり符号を検出することができる。
【0012】
また、本開示は、前記シフト量変化検出部は、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記第1ビート周波数の変化の方向及び前記第2ビート周波数の変化の方向に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向を検出することを特徴とする光ファイバ状態測定装置である。
【0013】
この構成によれば、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、2種以上のビート周波数の変化の方向つまり符号(大きさつまり絶対値を問わない)に基づいて、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向つまり符号を簡易に検出することができる。
【0014】
また、本開示は、前記シフト量変化検出部は、上記において確定できなければ、前記非定常状態又は前記印加状態での、前記第1ビート周波数と前記第2ビート周波数との間の大小関係に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向を確定することを特徴とする光ファイバ状態測定装置である。
【0015】
この構成によれば、上記の2種以上のビート周波数の変化の方向つまり符号を用いて確定できなければ、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態での、2種以上のビート周波数の間の大小関係(各周波数の絶対値を問わない)に基づいて、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向つまり符号を確実に確定することができる。
【0016】
また、本開示は、前記シフト量変化検出部は、前記定常状態又は前記非印加状態及び前記非定常状態又は前記印加状態での、前記第1ビート周波数及び前記第2ビート周波数に基づいて、前記定常状態又は前記非印加状態から前記非定常状態又は前記印加状態への、前記被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の大きさつまり絶対値を検出することを特徴とする光ファイバ状態測定装置である。
【0017】
この構成によれば、広帯域な受光装置を不要としたうえで、光ファイバ状態測定の装置構成を簡略化することができ、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の大きさつまり絶対値を検出することができる。
【0018】
また、本開示は、前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバの互いに異なる一定のブリルアン周波数シフト量は、前記被測定光ファイバの前記定常状態又は前記非印加状態のブリルアン周波数シフト量と比べて、ブリルアン利得帯域幅以上離れていることを特徴とする光ファイバ状態測定装置である。
【0019】
この構成によれば、いずれのビート周波数についても、ベースバンド周波数に落ちにくくなるため、100MHz又は10MHzのオーダーで検出することができる。そして、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化量として、広範囲のブリルアン周波数シフト量の変化量を検出することができる。
【0020】
また、本開示は、前記シフト量変化検出部は、前記非定常状態又は前記印加状態において、前記第1ビート周波数又は前記第2ビート周波数が明瞭に測定できなければ、前記被測定光ファイバの前記定常状態又は前記非印加状態のブリルアン周波数シフト量並びに前記第1参照用光ファイバ及び前記第2参照用光ファイバの互いに異なる一定のブリルアン周波数シフト量と異なる一定のブリルアン周波数シフト量を有する第3参照用光ファイバを利用することを特徴とする光ファイバ状態測定装置である。
【0021】
この構成によれば、いずれかのビート周波数については、ベースバンド周波数に落ちたとしても、そのビート周波数に代わるビート周波数については、ベースバンド周波数に落ちにくくなるため、100MHz又は10MHzのオーダーで検出することができる。そして、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化量として、広範囲のブリルアン周波数シフト量の変化量を検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本開示は、広帯域な受光装置を不要とし、光ファイバ状態測定の装置構成を簡略化し、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバのブリルアン周波数シフト量の変化の方向及び大きさを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の光ファイバ状態測定装置の構成を示す図である。
図2】本開示の光ファイバ状態測定処理の手順を示す図である。
図3】第1実施形態の光ファイバ状態測定処理の具体例を示す図である。
図4】第1実施形態の光ファイバ状態測定処理の具体例を示す図である。
図5】第2実施形態の光ファイバ状態測定処理の具体例を示す図である。
図6】第2実施形態の光ファイバ状態測定処理の具体例を示す図である。
図7】第1、2参照用光ファイバのブリルアン周波数シフト量を示す図である。
図8】第3参照用光ファイバのブリルアン周波数シフト量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0025】
(本開示の光ファイバ状態測定装置の構成)
本開示の光ファイバ状態測定装置の構成を図1に示す。本開示の光ファイバ状態測定処理の手順を図2に示す。光ファイバ状態測定装置Dは、BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry、ブリルアン光時間領域反射法)を用いて、被測定光ファイバMの温度、歪み又は振動を測定する。
【0026】
光ファイバ状態測定装置Dは、光源1、分岐部2、パルス化部3、サーキュレータ4、分岐部5、サーキュレータ6、第1参照用光ファイバ7、サーキュレータ8、第2参照用光ファイバ9、分岐部10、合波部11、第1ビート周波数検出部12、合波部13、第2ビート周波数検出部14及びシフト量変化検出部15を備える。第1ビート周波数検出部12、第2ビート周波数検出部14及びシフト量変化検出部15は、図2に示した光ファイバ状態測定プログラムをコンピュータにインストールし実現することができる。
【0027】
第1参照用光ファイバ7は、被測定光ファイバMより長い光ファイバ長を有し、同一入射波長λに対して、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態の被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量BFSと異なる、一定のブリルアン周波数シフト量BFSR1(≠下記のBFSR2)を有する。第2参照用光ファイバ9は、被測定光ファイバMより長い光ファイバ長を有し、同一入射波長λに対して、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態の被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量BFSと異なる、一定のブリルアン周波数シフト量BFSR2(≠上記のBFSR1)を有する。
【0028】
被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量は、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態では、BFSであるが、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態では、BFS’へ変化する。第1参照用光ファイバ7及び第2参照用光ファイバ9の一定のブリルアン周波数シフト量BFSR1、BFSR2は、第1参照用光ファイバ7及び第2参照用光ファイバ9を温度調整が可能な恒温槽内に収容することにより一定値に設定してもよく、第1参照用光ファイバ7及び第2参照用光ファイバ9の材質、断面内の屈折率の分布又は種別を異ならせることにより一定値に設定してもよい。
【0029】
光源1、分岐部2、パルス化部3及びサーキュレータ4は、被測定光ファイバMへと、パルス状の測定用試験光を入射する。光源1、分岐部2、分岐部5及びサーキュレータ6は、第1参照用光ファイバ7へと、測定用試験光と同一波長λを有する連続光又はパルス状の第1参照用試験光を入射する。光源1、分岐部2、分岐部5及びサーキュレータ8は、第2参照用光ファイバ9へと、測定用試験光と同一波長λを有する連続光又はパルス状の第2参照用試験光を入射する。第1参照用試験光及び第2参照用試験光として、連続光を入射することにより、高強度なブリルアン散乱光を得ることができる。
【0030】
サーキュレータ4及び分岐部10は、被測定光ファイバMから、パルス状の測定用ブリルアン散乱光を入力する。サーキュレータ6は、第1参照用光ファイバ7から、連続光又はパルス状の第1参照用ブリルアン散乱光を入力する。サーキュレータ8は、第2参照用光ファイバ9から、連続光又はパルス状の第2参照用ブリルアン散乱光を入力する。第1参照用ブリルアン散乱光及び第2参照用ブリルアン散乱光として、連続光を入力することにより、高精度なブリルアン周波数シフト量を得ることができる。
【0031】
合波部11及び第1ビート周波数検出部12は、測定用ブリルアン散乱光と第1参照用ブリルアン散乱光とを合波し、測定用ブリルアン散乱光と第1参照用ブリルアン散乱光との間の第1ビート周波数を検出する(ステップS1)。測定用ブリルアン散乱光と第1参照用ブリルアン散乱光との間の第1ビート周波数は、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態では、ΔR1=|BFS-BFSR1|であるが、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態では、ΔR1’=|BFS’-BFSR1|である。
【0032】
合波部13及び第2ビート周波数検出部14は、測定用ブリルアン散乱光と第2参照用ブリルアン散乱光とを合波し、測定用ブリルアン散乱光と第2参照用ブリルアン散乱光との間の第2ビート周波数を検出する(ステップS1)。測定用ブリルアン散乱光と第2参照用ブリルアン散乱光との間の第2ビート周波数は、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態では、ΔR2=|BFS-BFSR2|であるが、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態では、ΔR2’=|BFS’-BFSR2|である。
【0033】
第1ビート周波数検出部12及び第2ビート周波数検出部14は、被測定光ファイバMのある地点に対応する遅延時間で入力した1パルスの測定用ブリルアン散乱光について、1回以上の第1ビート周波数及び第2ビート周波数の検出を可能としてもよい。
【0034】
シフト量変化検出部15は、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、第1ビート周波数ΔR1、ΔR1’及び第2ビート周波数ΔR2、ΔR2’に基づいて、上記定常状態又は上記非印加状態から上記非定常状態又は上記印加状態への、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化ΔBFSの方向つまり符号を検出する(ステップS2)。被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化ΔBFSの符号は、sgn(ΔBFS)=sgn(BFS’-BFS)であり、第1、2実施形態において詳しく説明する。
【0035】
このように、広帯域な受光装置を不要としたうえで、光ファイバ状態測定の装置構成を簡略化することができ、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化ΔBFSの方向つまり符号を検出することができる。
【0036】
シフト量変化検出部15は、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態と、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態と、における、第1ビート周波数ΔR1、ΔR1’及び第2ビート周波数ΔR2、ΔR2’に基づいて、上記定常状態又は上記非印加状態から上記非定常状態又は上記印加状態への、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化ΔBFSの大きさつまり絶対値を検出する(ステップS3)。被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化ΔBFSの絶対値は、|ΔBFS|=|BFS’-BFS|であり、第1、2実施形態において詳しく説明する。
【0037】
このように、広帯域な受光装置を不要としたうえで、光ファイバ状態測定の装置構成を簡略化することができ、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化ΔBFSの大きさつまり絶対値を検出することができる。
【0038】
(第1実施形態の光ファイバ状態測定処理の具体例)
第1実施形態の光ファイバ状態測定処理の具体例を図3及び図4に示す。変化前状態S11は、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態である。変化後状態S12~S17は、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態である。
【0039】
変化前状態S11では、BFSR1<BFS<BFSR2が成立する。BFSは、BFSR1とBFSR2とのほぼ中央に位置する。sgn(ΔBFS)は、シフトなしを示し、|ΔBFS|=0、ΔR1-ΔR1’=0、ΔR2-ΔR2’=0が成立する。
【0040】
変化後状態S12では、BFS’は、BFSを起点として、ΔR1と比べて小さいシフト幅でダウンシフトする。sgn(ΔBFS)は、ダウンシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1-ΔR1’=ΔR2’-ΔR2、ΔR1-ΔR1’>0、ΔR2-ΔR2’<0が成立し、ΔR1+ΔR2=ΔR1’+ΔR2’も成立する。
【0041】
変化後状態S13では、BFS’は、BFSを起点として、ΔR2と比べて小さいシフト幅でアップシフトする。sgn(ΔBFS)は、アップシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1’-ΔR1=ΔR2-ΔR2’、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’>0が成立し、ΔR1+ΔR2=ΔR1’+ΔR2’も成立する。
【0042】
変化後状態S14では、BFS’は、BFSを起点として、ΔR1と比べて大きいシフト幅でダウンシフトする。sgn(ΔBFS)は、ダウンシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2’-ΔR2、ΔR1-ΔR1’>0、ΔR2-ΔR2’<0が成立し、ΔR1+ΔR2=ΔR2’-ΔR1’も成立する。
【0043】
変化後状態S15では、BFS’は、BFSを起点として、ΔR2と比べて大きいシフト幅でアップシフトする。sgn(ΔBFS)は、アップシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1’-ΔR1=ΔR2+ΔR2’、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’>0が成立し、ΔR1+ΔR2=ΔR1’-ΔR2’も成立する。
【0044】
変化後状態S16では、BFS’は、BFSを起点として、変化後状態S14と比べて大きいシフト幅でダウンシフトする。sgn(ΔBFS)は、ダウンシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2’-ΔR2、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’<0が成立し、ΔR1’<ΔR2’も成立する。
【0045】
変化後状態S17では、BFS’は、BFSを起点として、変化後状態S15と比べて大きいシフト幅でアップシフトする。sgn(ΔBFS)は、アップシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1’-ΔR1=ΔR2+ΔR2’、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’<0が成立し、ΔR1’>ΔR2’も成立する。
【0046】
シフト量変化検出部15は、既知の情報ΔR1、ΔR1’、ΔR2、ΔR2’に基づいて、未知の情報sgn(ΔBFS)、|ΔBFS|を検出する必要がある。
【0047】
シフト量変化検出部15は、ΔR1-ΔR1’>0、ΔR2-ΔR2’<0に基づいて、sgn(ΔBFS)=ダウンシフトを検出することができるが、|ΔBFS|を検出することはできない(変化後状態S12、S14を参照)。そこで、シフト量変化検出部15は、ΔR1+ΔR2=ΔR1’+ΔR2’に基づいて、|ΔBFS|=ΔR1-ΔR1’=ΔR2’-ΔR2を検出することができる(変化後状態S12を参照)。一方で、シフト量変化検出部15は、ΔR1+ΔR2=ΔR2’-ΔR1’に基づいて、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2’-ΔR2を検出することができる(変化後状態S14を参照)。
【0048】
シフト量変化検出部15は、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’>0に基づいて、sgn(ΔBFS)=アップシフトを検出することができるが、|ΔBFS|を検出することはできない(変化後状態S13、S15を参照)。そこで、シフト量変化検出部15は、ΔR1+ΔR2=ΔR1’+ΔR2’に基づいて、|ΔBFS|=ΔR1’-ΔR1=ΔR2-ΔR2’を検出することができる(変化後状態S13を参照)。一方で、シフト量変化検出部15は、ΔR1+ΔR2=ΔR1’-ΔR2’に基づいて、|ΔBFS|=ΔR1’-ΔR1=ΔR2+ΔR2’を検出することができる(変化後状態S15を参照)。
【0049】
シフト量変化検出部15は、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’<0に基づいて、sgn(ΔBFS)を検出することができない(変化後状態S16、S17を参照)。そこで、シフト量変化検出部15は、ΔR1’<ΔR2’に基づいて、sgn(ΔBFS)=ダウンシフト、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2’-ΔR2を検出することができる(変化後状態S16を参照)。一方で、シフト量変化検出部15は、ΔR1’>ΔR2’に基づいて、sgn(ΔBFS)=アップシフト、|ΔBFS|=ΔR1’-ΔR1=ΔR2+ΔR2’を検出することができる(変化後状態S17を参照)。
【0050】
なお、シフト量変化検出部15は、|ΔBFS|として、2種類の検出値のうち、いずれかの検出値を採用してもよく、両方の平均値を採用して精度を向上させてもよい。
【0051】
(第2実施形態の光ファイバ状態測定処理の具体例)
第2実施形態の光ファイバ状態測定処理の具体例を図5及び図6に示す。変化前状態S21は、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態である。変化後状態S22~S26は、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態である。
【0052】
変化前状態S21では、BFS<BFSR1<BFSR2が成立する。BFSR1は、BFSとBFSR2とのほぼ中央に位置する。sgn(ΔBFS)は、シフトなしを示し、|ΔBFS|=0、ΔR1-ΔR1’=0、ΔR2-ΔR2’=0が成立する。
【0053】
変化後状態S22では、BFS’は、BFSを起点として、任意のシフト幅(ΔR1、ΔR2との大小関係を問わない)でダウンシフトする。sgn(ΔBFS)は、ダウンシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1’-ΔR1=ΔR2’-ΔR2、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’<0が成立し、ΔR1’<ΔR2’も成立する。
【0054】
変化後状態S23では、BFS’は、BFSを起点として、ΔR1/ΔR2と比べて小さい/小さいシフト幅でアップシフトする。sgn(ΔBFS)は、アップシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1-ΔR1’=ΔR2-ΔR2’、ΔR1-ΔR1’>0、ΔR2-ΔR2’>0が成立し、ΔR2-ΔR1=ΔR2’-ΔR1’も成立する。
【0055】
変化後状態S24では、BFS’は、BFSを起点として、ΔR1/ΔR2と比べて大きい/小さいシフト幅でアップシフトする。sgn(ΔBFS)は、アップシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2-ΔR2’、ΔR1-ΔR1’>0、ΔR2-ΔR2’>0が成立し、ΔR2-ΔR1=ΔR1’+ΔR2’も成立する。
【0056】
変化後状態S25では、BFS’は、BFSを起点として、ΔR1/ΔR2と比べて大きい/大きいシフト幅でアップシフトする。sgn(ΔBFS)は、アップシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2+ΔR2’、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’>0が成立し、ΔR2-ΔR1=ΔR1’-ΔR2’も成立する。
【0057】
変化後状態S26では、BFS’は、BFSを起点として、ΔR1/ΔR2と比べてさらに大きい/さらに大きいシフト幅でアップシフトする。sgn(ΔBFS)は、アップシフトを示し、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2+ΔR2’、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’<0が成立し、ΔR1’>ΔR2’も成立する。
【0058】
シフト量変化検出部15は、既知の情報ΔR1、ΔR1’、ΔR2、ΔR2’に基づいて、未知の情報sgn(ΔBFS)、|ΔBFS|を検出する必要がある。
【0059】
シフト量変化検出部15は、ΔR1-ΔR1’>0、ΔR2-ΔR2’>0に基づいて、sgn(ΔBFS)=アップシフトを検出することができるが、|ΔBFS|を検出することはできない(変化後状態S23、S24を参照)。そこで、シフト量変化検出部15は、ΔR2-ΔR1=ΔR2’-ΔR1’に基づいて、|ΔBFS|=ΔR1-ΔR1’=ΔR2-ΔR2’を検出することができる(変化後状態S23を参照)。一方で、シフト量変化検出部15は、ΔR2-ΔR1=ΔR1’+ΔR2’に基づいて、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2-ΔR2’を検出することができる(変化後状態S24を参照)。
【0060】
シフト量変化検出部15は、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’>0に基づいて、sgn(ΔBFS)=アップシフトを検出することができ、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2+ΔR2’を検出することができる(変化後状態S25を参照)。
【0061】
シフト量変化検出部15は、ΔR1-ΔR1’<0、ΔR2-ΔR2’<0に基づいて、sgn(ΔBFS)を検出することができない(変化後状態S22、S26を参照)。そこで、シフト量変化検出部15は、ΔR1’<ΔR2’に基づいて、sgn(ΔBFS)=ダウンシフト、|ΔBFS|=ΔR1’-ΔR1=ΔR2’-ΔR2を検出することができる(変化後状態S22を参照)。一方で、シフト量変化検出部15は、ΔR1’>ΔR2’に基づいて、sgn(ΔBFS)=アップシフト、|ΔBFS|=ΔR1+ΔR1’=ΔR2+ΔR2’を検出することができる(変化後状態S26を参照)。
【0062】
なお、シフト量変化検出部15は、|ΔBFS|として、2種類の検出値のうち、いずれかの検出値を採用してもよく、両方の平均値を採用して精度を向上させてもよい。
【0063】
(参照用光ファイバのブリルアン周波数シフト量)
このように、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、2種以上のビート周波数の変化の方向つまり符号(大きさつまり絶対値を問わない)に基づいて、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化ΔBFSの方向つまり符号を簡易に検出することができる。
【0064】
そして、上記の2種以上のビート周波数の変化の方向つまり符号を用いて確定できなければ、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態での、2種以上のビート周波数の間の大小関係(各周波数の絶対値を問わない)に基づいて、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化ΔBFSの方向つまり符号を確実に確定することができる。
【0065】
ここで、上記の2種のビート周波数を適切に検出するために、第1参照用光ファイバ7及び第2参照用光ファイバ9の一定のブリルアン周波数シフト量BFSR1、BFSR2を、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量BFSに対して、適切に設定する。
【0066】
第1、2参照用光ファイバのブリルアン周波数シフト量を図7に示す。第1参照用光ファイバ7及び第2参照用光ファイバ9の一定のブリルアン周波数シフト量BFSR1、BFSR2は、被測定光ファイバMの定常状態又は非印加状態のブリルアン周波数シフト量BFSと比べて、ブリルアン利得帯域幅ΔBGS以上離れている。
【0067】
図7の上段では、図3、4の第1実施形態において、BFSR1<BFS<BFSR2に設定されたうえで、ΔR1=|BFS-BFSR1|>ΔBGS、ΔR2=|BFS-BFSR2|>ΔBGSに設定されている。図7の下段では、図5、6の第2実施形態において、BFS<BFSR1<BFSR2に設定されたうえで、ΔR1=|BFS-BFSR1|>ΔBGS、ΔR2=|BFS-BFSR2|>2ΔBGSに設定されている。
【0068】
このように、いずれのビート周波数についても、ベースバンド周波数に落ちにくくなるため、100MHz又は10MHzのオーダーで検出することができる。そして、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化量ΔBFSとして、広範囲のブリルアン周波数シフト量の変化量を検出することができる。
【0069】
そして、上記の2種のビート周波数を確実に検出するために、第3参照用光ファイバ(図1に不図示)の一定のブリルアン周波数シフト量BFSR3を、新たに追加する。
【0070】
第3参照用光ファイバのブリルアン周波数シフト量を図8に示す。シフト量変化検出部15は、非定常状態又は印加状態において、第1ビート周波数ΔR1’又は第2ビート周波数ΔR2’が明瞭に測定できなければ、被測定光ファイバMの定常状態又は非印加状態のブリルアン周波数シフト量BFS並びに第1参照用光ファイバ7及び第2参照用光ファイバ9の一定のブリルアン周波数シフト量BFSR1、BFSR2と異なる一定のブリルアン周波数シフト量BFSR3を有する第3参照用光ファイバを利用する。
【0071】
図8の上段では、図3、4の第1実施形態において、ΔR1’=|BFS’-BFSR1|<ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅であるときに、BFSR3<BFSR1、|BFSR3-BFSR1|>ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅としたうえで、ΔR3’=|BFS’-BFSR3|>ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅とすればよい。一方で、図3、4の第1実施形態において、ΔR2’=|BFS’-BFSR2|<ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅であるときに、BFSR3>BFSR2、|BFSR3-BFSR2|>ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅としたうえで、ΔR3’=|BFS’-BFSR3|>ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅とすればよい。
【0072】
図8の下段では、図5、6の第2実施形態において、ΔR1’=|BFS’-BFSR1|<ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅であるときに、BFSR3<BFSR1、|BFSR3-BFSR1|>ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅としたうえで、ΔR3’=|BFS’-BFSR3|>ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅とすればよい。一方で、図5、6の第2実施形態において、ΔR2’=|BFS’-BFSR2|<ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅であるときに、BFSR3>BFSR2、|BFSR3-BFSR2|>ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅としたうえで、ΔR3’=|BFS’-BFSR3|>ブリルアン散乱スペクトルの3dB帯域幅とすればよい。
【0073】
このように、いずれかのビート周波数については、ベースバンド周波数に落ちたとしても、そのビート周波数に代わるビート周波数については、ベースバンド周波数に落ちにくくなるため、100MHz又は10MHzのオーダーで検出することができる。そして、温度の定常状態又は歪み若しくは振動の非印加状態から、温度の非定常状態又は歪み若しくは振動の印加状態への、被測定光ファイバMのブリルアン周波数シフト量の変化量ΔBFSとして、広範囲のブリルアン周波数シフト量の変化量を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の光ファイバ状態測定装置及び光ファイバ状態測定方法は、被測定光ファイバの温度変化、歪み変化又は振動状態を測定するにあたり、広帯域な受光装置を不要としたうえで、光ファイバ状態測定の装置構成を簡略化することができる。
【0075】
一般的には、試験光周波数を順次変更しながら、ブリルアン周波数シフト量の変化を検出するため、特に振動現象のような変化の速い現象を測定することができない。本開示では、ビート周波数をモニタするのみにより、ブリルアン周波数シフト量の変化を検出するため、特に振動現象のような変化の速い現象を測定することができる。
【符号の説明】
【0076】
D:光ファイバ状態測定装置
M:被測定光ファイバ
1:光源
2:分岐部
3:パルス化部
4:サーキュレータ
5:分岐部
6:サーキュレータ
7:第1参照用光ファイバ
8:サーキュレータ
9:第2参照用光ファイバ
10:分岐部
11:合波部
12:第1ビート周波数検出部
13:合波部
14:第2ビート周波数検出部
15:シフト量変化検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8