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特許7601279情報処理装置、情報処理システム、プログラム、及び材料組成探索方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、プログラム、及び材料組成探索方法
(51)【国際特許分類】
   G16C 10/00 20190101AFI20241210BHJP
   G06N 10/60 20220101ALI20241210BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20241210BHJP
【FI】
G16C10/00
G06N10/60
G06N99/00 180
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024504664
(86)(22)【出願日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2023006789
(87)【国際公開番号】W WO2023167107
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2022031084
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂口 俊
(72)【発明者】
【氏名】角田 皓亮
(72)【発明者】
【氏名】奥野 好成
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086817(JP,A)
【文献】特開2021-127418(JP,A)
【文献】田村 亮,マテリアルズ・インフォマティクスにおける量子アニーリングの活用,電子情報通信学会2019年基礎・境界ソサイエティ/NOLTAソサイエティ大会講演論文集,一般社団法人電子情報通信学会,2019年08月27日,SS-47,[検索日 2022.08.23] インターネット:<URL: https://www.sdk.co.jp/news/2022/41712.html>,ISSN:2189-700X
【文献】淺原 彰規,マテリアルズインフォマティクスを支えるアナリティクスとITプラットホーム,電子情報通信学会誌,一般社団法人電子情報通信学会,2022年01月01日,第105巻 第1号,p.52-57,ISSN:0913-5693
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16C 10/00-99/00
G06N 10/60
G06N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成を支援する情報処理装置であって、
前記イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した、混合材料の物性を予測するための学習済みの機械学習モデルにより、前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係を算出する算出部と、
前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性との関係に基づき、前記目標物性のための前記1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を決定する決定部と、
決定した前記1つ以上の説明変数の最適値を前記関数における前記1つ以上の説明変数の目標値として出力すると共に、決定した前記1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて前記関数における前記1つ以上の説明変数の重み係数を出力する出力部と、
前記出力部が出力した前記1つ以上の説明変数の目標値及び前記1つ以上の説明変数の重み係数を前記イジングモデルに変換する関数に代入する変換部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記1つ以上の説明変数は、前記材料組成の割合の加重平均で記述できる前記混合材料の特性であること
を特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記許容変化幅が大きい前記説明変数ほど重み係数を小さく、前記許容変化幅が小さい前記説明変数ほど重み係数を大きく、出力すること
を特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記目標物性のずれ許容の閾値に基づき、前記1つ以上の説明変数ごとの許容変化幅を決定すること
を特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記機械学習モデルは、前記材料組成の割合の加重平均で記述できる前記混合材料の特性と、前記混合材料の物性との関係を、実験データにより学習済みであること
を特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記変換部は、前記出力部が出力した前記1つ以上の説明変数の目標値及び前記1つ以上の説明変数の重み係数を代入した前記関数を前記イジングモデルに変換すること
特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項7】
イジングモデルを用いたアニーリング方式の計算装置と、目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題を前記計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成を支援する情報処理装置と、を有する情報処理システムであって、
前記イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した、混合材料の物性を予測するための学習済みの機械学習モデルにより、前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性との関係を算出する算出部と、
前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性との関係に基づき、前記目標物性のための前記1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を決定する決定部と、
決定した前記1つ以上の説明変数の最適値を前記関数における前記1つ以上の説明変数の目標値として出力すると共に、決定した前記1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて前記関数における前記1つ以上の説明変数の重み係数を出力する出力部と、
前記出力部が出力した前記1つ以上の説明変数の目標値及び前記1つ以上の説明変数の重み係数を代入した前記関数を前記イジングモデルに変換する変換部と、
前記イジングモデルを用いて、前記目標値に漸近する材料組成の最適解を算出する最適解算出部と、
前記目標値に漸近する材料組成の最適解を表示する表示部と、
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成を支援する情報処理装置を、
前記イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した、混合材料の物性を予測するための学習済みの機械学習モデルにより、前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性との関係を算出する算出部、
前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性との関係に基づき、前記目標物性のための前記1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を決定する決定部、
決定した前記1つ以上の説明変数の最適値を前記関数における前記1つ以上の説明変数の目標値として出力すると共に、決定した前記1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて前記関数における前記1つ以上の説明変数の重み係数を出力する出力部、
前記出力部が出力した前記1つ以上の説明変数の目標値及び前記1つ以上の説明変数の重み係数を前記イジングモデルに変換する関数に代入する変換部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
イジングモデルを用いたアニーリング方式の計算装置と、目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題を前記計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成を支援する情報処理装置と、を有する情報処理システムの材料組成探索方法であって、
前記イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した、混合材料の物性を予測するための学習済みの機械学習モデルにより、前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性との関係を算出し、
前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性との関係に基づき、前記目標物性のための前記1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を決定し、
決定した前記1つ以上の説明変数の最適値を前記関数における前記1つ以上の説明変数の目標値として出力すると共に、決定した前記1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて前記関数における前記1つ以上の説明変数の重み係数を出力し、
出力した前記1つ以上の説明変数の目標値及び前記1つ以上の説明変数の重み係数を代入した前記関数を前記イジングモデルに変換し、
前記イジングモデルを用いて、前記目標値に漸近する材料組成の最適解を算出し、
前記目標値に漸近する材料組成の最適解を表示する、
を有することを特徴とする材料組成探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理システム、プログラム、及び材料組成探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば最適な物性を持つ材料組成の探索など、様々な要素の組み合わせの中から最適な組み合わせを選択する組み合わせ最適化問題が存在する。組み合わせ最適化問題は、要素の数が増えると組み合わせの数が爆発的に増えるため、現実的な時間内に解けないこともある。例えば100種類の材料を1%刻みで組み合わせて混合材料を生成する場合、組み合わせの数は5×1058となる。
【0003】
このような組み合わせ最適化問題を解くことに特化したアーキテクチャとして、イジングモデルを用いたアニーリングマシンが提案されている。アニーリングマシンは、イジングモデルに変換された組み合わせ最適化問題を効率良く解くことができる。
【0004】
従来、組み合わせ最適化問題に特化した計算機アーキテクチャを用いて、混合冷媒の熱物性を最適化する技術が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「デジタルアニーラを用いた混合冷媒の熱物性最適化」、No.19-303日本機械学会熱工学コンファレンス2019講演論文集[2019.10.12-13,名古屋]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えばアニーリングマシンで目標の物性値に漸近(近似)する材料組成の組み合わせ最適化問題を解きたいユーザは、イジングモデルに変換する関数を準備する必要がある。イジングモデルに変換する関数は、説明変数群を含むように記述されており、最小値のときの変数群が最適化結果(最適な混合材料の組成)である、という制約条件を満たしている必要がある。また、イジングモデルに変換する関数には、説明変数の目標値及び重み係数などの任意の定数が含まれており、それらの定数の調整が必要である。
【0007】
このように、アニーリングマシンで目標の物性値に漸近(近似)する材料組成の組み合わせ最適化問題を解く場合は、イジングモデルに変換する関数の作成に手間が掛かるという問題があった。
【0008】
本開示は、目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成の手間を軽減できる情報処理装置、情報処理システム、プログラム、及び材料組成探索方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下に示す構成を備える。
【0010】
[1] 目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成を支援する情報処理装置であって、
前記イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した、混合材料の物性を予測するための学習済みの機械学習モデルにより、前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係を算出する算出部と、
前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係に基づき、前記目標物性のための前記1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を決定する決定部と、
決定した前記1つ以上の説明変数の最適値を前記関数における前記1つ以上の説明変数の目標値として出力すると共に、決定した前記1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて前記関数における前記1つ以上の説明変数の重み係数を出力する出力部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【0011】
[2] 前記1つ以上の説明変数は、前記材料組成の割合の加重平均で記述できる前記混合材料の特性であること
を特徴とする[1]記載の情報処理装置。
【0012】
[3] 前記出力部は、前記許容変化幅が大きい前記説明変数ほど重み係数を小さく、前記許容変化幅が小さい前記説明変数ほど重み係数を大きく、出力すること
を特徴とする[1]又は[2]記載の情報処理装置。
【0013】
[4] 前記決定部は、前記目標物性のずれ許容の閾値に基づき、前記1つ以上の説明変数ごとの許容変化幅を決定すること
を特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の情報処理装置。
【0014】
[5] 前記機械学習モデルは、前記材料組成の割合の加重平均で記述できる前記混合材料の特性と、前記混合材料の物性との関係を、実験データにより学習済みであること
を特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の情報処理装置。
【0015】
[6] 前記出力部が出力した前記1つ以上の説明変数の目標値及び前記1つ以上の説明変数の重み係数を代入した前記関数を前記イジングモデルに変換する変換部、
を更に有する[1]乃至[5]の何れか一項記載の情報処理装置。
【0016】
[7] イジングモデルを用いたアニーリング方式の計算装置と、目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題を前記計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成を支援する情報処理装置と、を有する情報処理システムであって、
前記イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した、混合材料の物性を予測するための学習済みの機械学習モデルにより、前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係を算出する算出部と、
前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係に基づき、前記目標物性のための前記1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を決定する決定部と、
決定した前記1つ以上の説明変数の最適値を前記関数における前記1つ以上の説明変数の目標値として出力すると共に、決定した前記1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて前記関数における前記1つ以上の説明変数の重み係数を出力する出力部と、
前記出力部が出力した前記1つ以上の説明変数の目標値及び前記1つ以上の説明変数の重み係数を代入した前記関数を前記イジングモデルに変換する変換部と、
前記イジングモデルを用いて、前記目標値に漸近する材料組成の最適解を算出する最適解算出部と、
前記目標値に漸近する材料組成の最適解を表示する表示部と、
を有することを特徴とする情報処理システム。
【0017】
[8] 目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成を支援する情報処理装置を、
前記イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した、混合材料の物性を予測するための学習済みの機械学習モデルにより、前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係を算出する算出部、
前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係に基づき、前記目標物性のための前記1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を決定する決定部、
決定した前記1つ以上の説明変数の最適値を前記関数における前記1つ以上の説明変数の目標値として出力すると共に、決定した前記1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて前記関数における前記1つ以上の説明変数の重み係数を出力する出力部、
として機能させるためのプログラム。
【0018】
[9] イジングモデルを用いたアニーリング方式の計算装置と、目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題を前記計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成を支援する情報処理装置と、を有する情報処理システムの材料組成探索方法であって、
前記イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した、混合材料の物性を予測するための学習済みの機械学習モデルにより、前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係を算出し、
前記1つ以上の説明変数及び前記混合材料の物性の関係に基づき、前記目標物性のための前記1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を決定し、
決定した前記1つ以上の説明変数の最適値を前記関数における前記1つ以上の説明変数の目標値として出力すると共に、決定した前記1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて前記関数における前記1つ以上の説明変数の重み係数を出力し、
前記出力部が出力した前記1つ以上の説明変数の目標値及び前記1つ以上の説明変数の重み係数を代入した前記関数を前記イジングモデルに変換し、
前記イジングモデルを用いて、前記目標値に漸近する材料組成の最適解を算出し、
前記目標値に漸近する材料組成の最適解を表示する、
を有することを特徴とする材料組成探索方法。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置に解かせるためのイジングモデルの作成の手間を軽減できる情報処理装置、情報処理システム、プログラム、及び材料組成探索方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。
図2】本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。
図3】本実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。
図4】本実施形態に係る情報処理システムを用いた材料組成探索方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。
図5】イジングモデルに変換する関数の一例の説明図である。
図6A】組み合わせ最適化問題として解く課題例の説明図である。
図6B】組み合わせ最適化問題として解く課題例の説明図である。
図6C】組み合わせ最適化問題として解く課題例の説明図である。
図7】組み合わせ最適化と機械学習との連携について説明する図である。
図8】材料情報の一例の構成図である。
図9】実験データの一例の構成図である。
図10】算出した説明変数Xと変数Zとの関係を示す一例の図である。
図11】説明変数Xの最適値及び許容変化幅を説明する一例の図である。
図12】説明変数Xの重み係数Aを決定する処理の一例の説明図である。
図13】最小の変数Zからのずれ許容の閾値Cと、目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域の形状との関係を説明する一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。図1に示した情報処理システム1は、アニーリング方式の計算装置10、及び情報処理装置12を有する構成である。アニーリング方式の計算装置10及び情報処理装置12はローカルエリアネットワーク(LAN)又はインターネットなどの通信ネットワーク18を介してデータ通信可能に接続されている。
【0023】
アニーリング方式の計算装置10は、イジングモデルを用いて組み合わせ最適化問題を解く装置の一例である。アニーリング方式の計算装置10は、例えばイジングモデルを用いたアニーリングマシンである。アニーリング方式の計算装置10は、量子コンピュータで実現してもよいし、アニーリング方式をデジタル回路で実現した計算機アーキテクチャであるデジタルアニーラ(登録商標)などで実現してもよい。
【0024】
アニーリングマシンは、イジングモデルに帰着させた組み合わせ最適化問題を、そのイジングモデルの収束動作により解く。イジングモデルとは、磁性体の振る舞いを表す統計力学上のモデルである。イジングモデルは磁性体のスピン間の相互作用によりエネルギー(ハミルトニアン)が最小となるようにスピンの状態が更新され、最終的にエネルギーが最小となるという性質がある。アニーリングマシンは、組み合わせ最適化問題をイジングモデルに帰着させ、エネルギーが最小となる状態を求めることにより、その状態を組み合わせ最適化問題の最適解として得ることができる。
【0025】
情報処理装置12は、PC、タブレット端末、又はスマートフォンなどのユーザが操作する装置である。情報処理装置12は、イジングモデルに帰着させた組み合わせ最適化問題を、アニーリング方式の計算装置10に解かせる為に必要な情報の入力をユーザから受け付け、イジングモデルをアニーリング方式の計算装置10に解かせる。
【0026】
なお、イジングモデルに帰着させた組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置10に解かせる為に必要な情報には、イジングモデルに変換する関数の情報が含まれている。情報処理装置12は、ユーザに対して、イジングモデルに変換する関数の作成を後述のように支援することで、イジングモデルの作成を支援する。
【0027】
また、情報処理装置12は、アニーリング方式の計算装置10が解いた組み合わせ最適化問題の最適解を受信し、その最適解を表示装置に表示するなど、ユーザが確認できるように出力する。
【0028】
なお、図1の情報処理システム1は一例であって、通信ネットワーク18を介して情報処理装置12と接続されたユーザ端末(図示せず)から、ユーザが情報処理装置12にアクセスして利用する形態であってもよい。
【0029】
また、アニーリング方式の計算装置10はクラウドコンピューティングのサービスとして実現してもよい。例えばアニーリング方式の計算装置10は、通信ネットワーク18経由でAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を呼び出すことにより利用可能であってもよい。
【0030】
さらに、アニーリング方式の計算装置10はクラウドコンピューティングのサービスとして実現されたものに限定されず、オンプレミスにより実現されてもよいし、他社が運用するものであってもよい。アニーリング方式の計算装置10は、複数台のコンピュータにより実現してもよい。
【0031】
また、ユーザが情報処理装置12にアクセスして利用する形態では、情報処理装置12をクラウドコンピューティングのサービスとして実現してもよいし、オンプレミスにより実現されてもよいし、他社が運用するものであってもよいし、複数台のコンピュータにより実現してもよい。図1の情報処理システム1は、用途や目的に応じて様々なシステム構成例があることは言うまでもない。
【0032】
<ハードウェア構成>
図1の情報処理装置12は、例えば図2に示すハードウェア構成のコンピュータ500により実現する。
【0033】
図2は、本実施形態に係るコンピュータの一例のハードウェア構成図である。図2のコンピュータ500は、入力装置501、表示装置502、外部I/F503、RAM504、ROM505、CPU506、通信I/F507、及びHDD508などを備えており、それぞれがバスBで相互に接続されている。なお、入力装置501及び表示装置502は接続して利用する形態であってもよい。
【0034】
入力装置501は、ユーザが各種信号を入力するのに用いるタッチパネル、操作キーやボタン、キーボードやマウスなどである。表示装置502は、画面を表示する液晶や有機ELなどのディスプレイ、音声や音などの音データを出力するスピーカ等で構成されている。通信I/F507はコンピュータ500がデータ通信を行うためのインタフェースである。
【0035】
また、HDD508は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置の一例である。格納されるプログラムやデータには、コンピュータ500全体を制御する基本ソフトウェアであるOS、及びOS上において各種機能を提供するアプリケーションなどがある。なお、コンピュータ500はHDD508に替えて、記憶媒体としてフラッシュメモリを用いるドライブ装置(例えばソリッドステートドライブ:SSDなど)を利用するものであってもよい。
【0036】
外部I/F503は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、記録媒体503aなどがある。これにより、コンピュータ500は外部I/F503を介して記録媒体503aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。記録媒体503aにはフレキシブルディスク、CD、DVD、SDメモリカード、USBメモリなどがある。
【0037】
ROM505は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROM505にはコンピュータ500の起動時に実行されるBIOS、OS設定、及びネットワーク設定などのプログラムやデータが格納されている。RAM504はプログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。
【0038】
CPU506は、ROM505やHDD508などの記憶装置からプログラムやデータをRAM504上に読み出し、処理を実行することで、コンピュータ500全体の制御や機能を実現する演算装置である。本実施形態に係る情報処理装置12は、後述するような各種機能を実現できる。なお、アニーリング方式の計算装置10のハードウェア構成については説明を省略する。
【0039】
<構成>
本実施形態に係る情報処理システム1の構成について説明する。図3は本実施形態に係る情報処理システムの一例の構成図である。なお、図3の構成図は、本実施形態の説明に不要な部分について適宜省略している。
【0040】
図3に示した情報処理システム1のアニーリング方式の計算装置10は呼出受付部20及び最適解算出部22を有する。また、情報処理装置12は、入力受付部30、算出部32、決定部34、出力部36、変換部38、連携部40、表示部42、実験データ記憶部50、数式記憶部52、及び材料情報記憶部54を有する。
【0041】
入力受付部30は、ユーザからイジングモデルに帰着させた組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置10に解かせる為に必要な情報の入力を受け付ける入力インタフェースである。イジングモデルに帰着させた組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置10に解かせる為に必要な情報には、イジングモデルに変換する関数の情報が含まれている。なお、イジングモデルに変換する関数は、1つ以上の説明変数(説明変数群)を含むように記述されている。
【0042】
算出部32は、イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数を用いて記述した学習済みの機械学習モデルにより、1つ以上の説明変数と混合材料の物性との関係を算出する。また、機械学習モデルの記述に用いる説明変数は、材料組成の割合の加重平均で記述できる混合材料の特性であることが好ましい。機械学習モデルは、材料組成の割合の加重平均で記述できる混合材料の特性と、混合材料の物性との関係を、実験データにより学習済みであるものとする。
【0043】
決定部34は、算出部32が算出した1つ以上の説明変数と混合材料の物性との関係に基づき、目標物性のための1つ以上の説明変数の最適値及び許容変化幅を後述するように決定する。
【0044】
出力部36は、決定部34が決定した1つ以上の説明変数の最適値を、イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数の目標値として出力する。また、出力部36は決定部34が決定した1つ以上の説明変数の許容変化幅に基づいて、イジングモデルに変換する関数の1つ以上の説明変数の重み係数を後述するように出力する。
【0045】
変換部38は、出力部36が出力した1つ以上の説明変数の目標値及び1つ以上の説明変数の重み係数を代入した関数を、アニーリング方式の計算装置10が利用可能なデータ形式のイジングモデルに変換する。
【0046】
連携部40は、変換部38により変換されたイジングモデルをアニーリング方式の計算装置10に送信する。また、連携部40はアニーリング方式の計算装置10が算出した最適解を受信する。
【0047】
表示部42は、連携部40が受信した最適解を表示装置502に表示して、ユーザに確認させる。表示装置502に表示される最適解は、ユーザが分かりやすい例えば混合材料の混合比として表示される。
【0048】
実験データ記憶部50は、機械学習モデルの学習に利用する実験データを記憶する。数式記憶部52は、イジングモデルに変換する関数及び機械学習モデルを記憶する。材料情報記憶部54は、材料の特性などの材料情報を記憶する。
【0049】
呼出受付部20は、情報処理装置12からの呼び出しを受け付け、利用可能なデータ形式に変換されたイジングモデルを情報処理装置12から受信する。最適解算出部22は呼出受付部20が受信したイジングモデルのエネルギー(ハミルトニアン)が最小となる状態を求めることで、物性が目標値に漸近する混合材料の混合比の最適解を探索する。呼出受付部20は探索した最適解を情報処理装置12に送信する。
【0050】
なお、図3の構成図は一例である。本実施形態に係る情報処理システム1の構成は様々考えることができる。
【0051】
<処理>
図4は、本実施形態に係る情報処理システムを用いた材料組成探索方法の処理手順の一例を示したフローチャートである。ステップS100において、ユーザはイジングモデルに変換する関数を作成する。イジングモデルに変換する関数は、例えば図5に示すような構成となる。
【0052】
図5は、イジングモデルに変換する関数の一例の説明図である。図5に示すイジングモデルに変換する関数は、1つ以上の説明変数X(i=1、2、…)の値を含む。Xibestは、説明変数Xの目標値である。説明変数Xは、材料組成の割合の加重平均で記述する、例えばHSP値又は分子量などの混合材料の特性である。
【0053】
図5において、最終項以外の項は、それぞれの説明変数Xが目標値Xibestに近付くほど小さい値となる。また、混合比制約項は材料の混合比の総和が「100%」のときに「0」となる項である。また、図5のイジングモデルに変換する関数において、Aは説明変数Xの重み係数である。Bは混合比制約項の重み係数である。
【0054】
アニーリング方式の計算装置10は、例えば図5の関数が最小となる状態を最適化結果として求めるものであるため、説明変数Xが目標値Xibestに近く、材料の混合比の総和が「100%」である状態を、材料組成の最適解として算出する。
【0055】
本実施形態は、ユーザが調整していた目標値Xibest及び重み係数Aを、情報処理装置12に出力させるようにしたことで、イジングモデルに変換する関数の作成を支援するものである。
【0056】
図6A図6Cは、組み合わせ最適化問題として解く課題例の説明図である。図6Aは分子量が既知の複数の溶媒(溶媒群)を混合して平均分子量がMに漸近(近似)する混合溶媒を作ることが目的であることを示している。
【0057】
溶媒群を混合した混合溶媒の平均分子量Mは、図6Bに示す式により算出することができる。また、溶媒群を混合した混合溶媒の平均分子量MがMに漸近する混合溶媒であるほど、小さい値となる関数は例えば図6Cに示すように記述できる。平均分子量M及びMは、混合した溶媒群の混合率の加重平均で記述できる混在溶媒の特性の一例である。
【0058】
図4に戻り、ステップS102において、ユーザはイジングモデルに変換する関数に含まれている説明変数Xを用いて記述した、混合材料の物性Yを予測するための機械学習モデルを作成する。ステップS102の処理について図7を参照しながら説明する。
【0059】
図7は組み合わせ最適化と機械学習との連携について説明する図である。図7は物性Yのポリマーを作るために最適なモノマー種の混合比を、組み合わせ最適化問題として解く例を示している。
【0060】
図7の組み合わせ最適化問題を解くためのイジングモデルに変換する関数には、図5等を用いて説明したように、モノマー種の混合比の加重平均で記述できる説明変数群Xが含まれている。したがって、ポリマーの説明変数群Xとポリマーの物性Yとの関係は、ポリマーの説明変数群Xを用いて記述したポリマーの物性を予測するための機械学習モデルを作成し、実験データを学習させることで得ることができる。
【0061】
このように、本実施形態では、ポリマーの説明変数群Xとポリマーの物性Yとの関係を学習済みの機械学習モデルにより、目標物性のポリマーを得るための説明変数空間における説明変数群の領域を後述のように得ることができる。図7の説明変数空間において目標物性のポリマーを得るための説明変数群Yの領域を得ることで、本実施形態は、図5に示した説明変数Xの最適値及び許容変化幅を後述のように決定し、説明変数Xの目標値Xibest及び重み係数Aの出力に利用する。
【0062】
図4に戻り、ステップS104において、ユーザはステップS102で作成した機械学習モデルを実験データで学習させる。なお、機械学習モデルの種類には制約がなく、LASSO又はランダムフォレストなどを利用できる。機械学習モデルの学習には、例えば図8に示すような材料情報と図9に示すような実験データを利用する。
【0063】
図8は材料情報の一例の構成図である。図8の材料情報は、材料ごとに特性の値が設定されている。また、図9は実験データの一例の構成図である。図9の実験データは混合材料の配合比と、その配合比で配合された混合材料の物性の値とが設定されている。説明変数図8の材料情報と、図9に示される混合材料の配合比と、に基づき、算出することができる。
【0064】
図4に戻り、ステップS106において、ユーザはステップS104で学習済みの機械学習モデルを用いて、目標物性に漸近する混合材料ほど、小さい値が出力される変数Zを作成する。情報処理装置12の算出部32は、例えば説明変数空間上で網羅計算を行うためにグリッド点を決めて、変数Zの網羅計算を行い、図10に示すような説明変数Xと変数Zとの関係を算出する。
【0065】
図10は、算出した説明変数Xと変数Zとの関係を示す一例の図である。変数Zは値が小さいほど、目標物性に漸近する混合材料となる。したがって、図10に示した値が最小の変数Zに対応する説明変数Xが、その説明変数Xの最適値となる。また、最小の変数Zの値からのずれ許容の閾値(例えば変数Zの値からc%のずれを許容するなど)を設定しておくことで、最小の変数Zの値からのずれ許容の閾値内の複数の変数Zの値を選択できる。
【0066】
図4に戻り、ステップS108において、決定部34は変数Zが最小のときの説明変数Xの値を、説明変数Xの最適値に決定する。出力部36は決定した説明変数Xの最適値を、説明変数Xの目標値Xibestとして出力する。
【0067】
また、ステップS110において、決定部34は最小の変数Zの値からのずれ許容の閾値内の複数の変数Zの値を選択し、選択した変数Zの説明変数Xの値を用いて、説明変数Xの許容変化幅を決定する。
【0068】
図11は説明変数Xの最適値及び許容変化幅を説明する一例の図である。図11は説明変数Xが二次元の例である。説明変数Xの最適値はX1bestの値となる。また、説明変数Xの最適値はX2bestの値となる。
【0069】
また、図11に示した楕円の領域は、最小の変数Zの値からのずれ許容の閾値内の複数の変数Zの説明変数X及び説明変数Xの値を用いて描画できる。図11に示した楕円の領域が、目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域となる。なお、図11は目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域が楕円の例を示したが、楕円に限定されない。
【0070】
決定部34は図11に示した楕円の領域から説明変数X及び説明変数Xごとの許容変化幅を決定する。例えば説明変数Xの許容変化幅は、図11に示した楕円の短軸の距離である。また、例えば説明変数Xの許容変化幅は、図11に示した楕円の長軸の距離である。
【0071】
図4に戻り、ステップS112において、出力部36は決定した説明変数Xごとの許容変化幅から説明変数Xの重み係数Aを、例えば図12に示すような方法で決定して出力する。
【0072】
図12は説明変数Xの重み係数Aを決定する処理の一例の説明図である。例えば説明変数Xの重み係数Aは、楕円の領域の軸距離rとした場合、1/rで算出することができる。図12の例では、説明変数Xの重み係数Aが1/rとなる。図12の例では、説明変数Xの重み係数Aが1/rとなる。
【0073】
例えば図12に示した目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域(楕円)では、目標物性に対する説明変数Xの感度が説明変数Xの感度よりも高いため、説明変数Xの重要度を説明変数X>説明変数Xと判断し、重み係数A>重み係数Aとなるように出力している。図12の例では、許容変化幅が大きい(分散が大きい)説明変数Xほど重み係数Aが小さく、許容変化幅が小さい(分散が小さい)説明変数Xほど重み係数Aが大きく、出力される。
【0074】
なお、図12に示した目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域は、最小の変数Zの値からのずれ許容の閾値によって形状が変化する。図13は最小の変数Zからのずれ許容の閾値Cと、目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域の形状との関係を説明する一例の図である。
【0075】
最小の変数Zからのずれ許容の閾値Cが大き過ぎると、例えば図13の左側のグラフに示したように、目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域の形状が大きくなり過ぎ、目標物性に対する説明変数X及び説明変数Xの感度が有効に判断できない恐れがある。また、最小の変数Zからのずれ許容の閾値Cが小さ過ぎると、図13の右側のグラフに示したように、目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域の形状が小さくなり過ぎ、目標物性に対する説明変数X及び説明変数Xの感度が有効に判断できない恐れがある。
【0076】
したがって、最小の変数Zからのずれ許容の閾値Cは、図13の真ん中のグラフに示したように、説明変数Xの差が識別できるように設定することが望ましい。最小の変数Zからのずれ許容の閾値Cは、ユーザが目標物性に漸近する混合材料の説明変数領域の形状を参考に調整してもよいし、アニーリング方式の計算装置10による最適化結果が十分でないと判断した場合に、調整するようにしてもよい。
【0077】
図4に戻り、ステップS114において、変換部38はステップS108で出力された説明変数Xの目標値XibestとステップS112で出力された説明変数Xの重み係数Aを、イジングモデルに変換する関数に代入する。ステップS116において、変換部38は説明変数Xの目標値Xibestと説明変数Xの重み係数Aとを代入した関数をイジングモデルに変換(イジングモデルの数式の行列要素を計算)する。
【0078】
関数を評価関数の二次制約なし二値最適化(QUBO)形式に変換したり、アニーリング方式の計算装置10が利用可能なデータ形式のイジングモデルに変換したり、する技術は、WebAPI等として提供されており、既存の技術である。
【0079】
例えば変換部38は説明変数Xの目標値Xibestと説明変数Xの重み係数Aとを代入した関数を展開し、イジングモデルの行列要素Qi,jを計算し、連携部40は変換部38により計算された行列要素Qi,jをイジングモデルのパラメータとしてアニーリング方式の計算装置10に送信する。
【0080】
ステップS118において、イジングモデルのパラメータを受信したアニーリング方式の計算装置10の最適解算出部22は、例えば図5の関数が最小となる混合材料の混合比の最適解を探索する。呼出受付部20は探索した最適解を表す情報を情報処理装置12に送信する。
【0081】
ステップS120において、表示部42は、連携部40が最適解として受信した情報(アニーリング方式の計算装置10のビット情報)をユーザが分かりやすい混合材料の混合比などの情報に変換して出力する。例えば表示部42は、最適解の混合溶媒に含まれる材料の材料名と、その材料の配合比とを表示する。
【0082】
本実施形態では、イジングモデルに帰着させた組み合わせ最適化問題をアニーリングマシンに解かせる為にユーザが入力しなければならなかった、説明変数の目標値Xibest及び重み係数Aの入力を省略できる。
【0083】
最適解として探索した混合材料の混合比は、混合する材料、及びその混合比を指定することで混合材料を生成する。例えば混合材料生成装置の制御などに利用できる。また、上記の混合材料生成装置が生成した混合材料の物性は評価装置で評価できる。
【0084】
したがって、最適解として探索した混合材料の情報は、その混合材料の情報を指定して混合材料生成装置に生成させた混合材料の物性と比較することができ、その比較の結果をフィードバックすることで最適解の探索の精度を向上できる。
【0085】
以上、本実施形態に係る情報処理システム1によれば、目標物性に漸近する材料組成の組み合わせ最適化問題をアニーリング方式の計算装置10に解かせるためのイジングモデルの作成の手間を軽減できる。
【0086】
以上、本実施形態について説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0087】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。本願は、日本特許庁に2022年3月1日に出願された基礎出願2022―031084号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0088】
1 情報処理システム
10 アニーリング方式の計算装置
12 情報処理装置
18 通信ネットワーク
20 呼出受付部
22 最適解算出部
30 入力受付部
32 算出部
34 決定部
36 出力部
38 変換部
40 連携部
42 表示部
50 実験データ記憶部
52 数式記憶部
54 材料情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13