(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 9/06 20060101AFI20241210BHJP
B29B 7/48 20060101ALI20241210BHJP
B29B 7/82 20060101ALI20241210BHJP
B29B 7/90 20060101ALI20241210BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
B29B9/06
B29B7/48
B29B7/82
B29B7/90
B29K67:00
(21)【出願番号】P 2024516131
(86)(22)【出願日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2023009196
(87)【国際公開番号】W WO2023203914
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2022070657
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田尻 敏之
(72)【発明者】
【氏名】武塙 勝
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/123824(WO,A1)
【文献】特開2004-276598(JP,A)
【文献】特開2015-229755(JP,A)
【文献】特開2021-003856(JP,A)
【文献】特開平09-239803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/06
B29B 7/48
B29B 7/82
B29B 7/90
B29C 48/00
B29K 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエステル樹脂10~60質量%、(B)ガラス繊維40~70質量%、及び(C)その他のポリマーまたは添加剤0~50質量%(各成分の合計は100質量%)からなるガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物を二軸押出機で製造する方法であって、該ガラス繊維強化ポリエステル
系樹脂組成物の265℃、91/secの剪断粘度が400~2000Pa・sであり、
二軸押出機の先端のダイホルダに備え付けられた横方向平ダイからストランドを押し出す際、平ダイの中央のダイ穴からのストランドの温度が295~340℃であり、平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度が、平ダイ中央のダイ穴からのストランドの温度より4~14℃低いことを特徴とするガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
平ダイから出るときのダイ内の樹脂圧が2~9MPaとなるように押し出す請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ダイホルダの温度が240~340℃である請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物の製造方法に関し、詳しくは、二軸押出機を用いて、高濃度のガラス繊維を配合したガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物を、ストランド切れを抑制し、連続安定生産を可能とし、生産性を高く、良好なペレット形状を保持したペレットとして、製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂に代表されるポリエステル樹脂は、射出成形用を中心として各種電気電子部品、機械部品および自動車部品などに広く使用されている。特にガラス繊維を高い含量で配合したガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性等に優れ、自動車分野、電気電子機器分野等の部品として利用されている。
【0003】
特許文献1には、ポリブチレンテレフタレート樹脂にガラス繊維を5~80%を配合した樹脂組成物が、また特許文献2には、ポリエステル樹脂100質量部にガラス繊維を10~150質量部を配合したガラス繊維強化ポリエステル樹脂組成物が記載されている。
【0004】
然しながら、ガラス繊維を40質量%以上というような高濃度で配合したポリエステル系樹脂組成物は、二軸押出機で生産中にダイから押し出す際にストランド破断が発生しやすい。それにより、生産性が低下し、切れたストランドはペレタイザーに入れる際に、ストランド同士が重なり、ストランドの流れが乱れ、長ペレットが発生しやすい。また、ストランドの切れも悪くなり、ペレットの断面が鋭利でなく、切粉の発生も多くなる。この傾向はガラス繊維が高濃度になるほど顕著となる。長ペレットや切粉は射出成形機での成形の際に可塑化不良が発生し易く、計量時間が長くなり、射出成形機が停止したり、生産性が低下したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭51-7702号公報
【文献】特開2006-16577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題(目的)は、ガラス繊維を高含量で配合したガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物を二軸押出機で生産する際に、ダイから出たストランドの破断を抑制し、連続安定生産を可能とし、長ペレットの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ガラス繊維を40~70質量%という高含量で含有するポリエステル系樹脂組成物を二軸押出機製造する場合、樹脂組成物の粘度は高粘度となるが、これを400~2000Pa・sの剪断粘度(265℃、91/sec)とし、且つ、ストランド温度を特定の温度とし、また、ダイ中央のストランドに対するダイ端のストランドの温度を4~14℃低くすることにより、ストランド破断を抑制し、連続安定生産を可能とし、長ペレットの発生を大幅に抑制できることを見出し、本発明に到達した。
また、その際、ダイホルダの温度は260~340℃と高い温度とすることが好ましいこと、また、ダイ内の樹脂圧を2~9MPaとすること、あるいはダイホルダの温度を240~340℃とすることが好ましいことが見出された。
本発明は以下の製造方法に関する。
【0008】
1.(A)ポリエステル樹脂10~60質量%、(B)ガラス繊維40~70質量%、及び(C)その他のポリマーまたは添加剤0~50質量%(各成分の合計は100質量%)からなるガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物を二軸押出機で製造する方法であって、該ガラス繊維強化ポリエステル樹脂組成物の265℃、91/secの剪断粘度が400~2000Pa・sであり、
二軸押出機の先端のダイホルダに備え付けられた横方向平ダイからストランドを押し出す際、平ダイの中央のダイ穴からのストランドの温度が295~340℃であり、平ダイの端のダイ穴からのストランドの温度が、平ダイ中央のダイ穴からのストランドの温度より4~14℃低いことを特徴とするガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物の製造方法。
2.平ダイから出るときのダイ内の樹脂圧が2~9MPaとなるように押し出す上記1に記載の製造方法。
3.ダイホルダの温度が240~340℃である上記1に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、ガラス繊維を高含量で含有するガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物(ペレット)を、ストランド破断を抑制し、連続安定生産を可能とし、良好なペレット形状で、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明で使用される二軸押出機からペレタイザーに至る工程の一例を示す概念図である。
【
図2】本発明で使用される二軸押出機のダイ部の一例を示す図である。
【
図3】本発明で使用される横方向平ダイの一例を示す断面図である。
【
図4】本発明で使用される横方向平ダイの他の例を示す断面図である。
【
図5】実施例又は比較例で使用した押出機のスクリュー構成の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本発明の製造方法では、(A)ポリエステル樹脂10~60質量%、(B)ガラス繊維40~70質量%、及び(C)その他のポリマーまたは添加剤0~50質量%からなるガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物を二軸押出機で製造する。
【0013】
本発明で使用する押出機は、ベント式二軸押出機であり、好ましくは噛合い型同方向回転二軸スクリュー押出機で、バレル内部に同方向に回転する2本のスクリューを有し、そのスクリュー途中には、複数枚のニーディングディスクによって構成される混練部が相互に噛み合う形態で設けられているものが好ましい。
【0014】
ベント式二軸押出機は、
図1に示すように、主原料ホッパー1、開放ベント2、サイドフィードホッパー3、減圧ベント4を備えたシリンダーにフランジ6を介してダイホルダ8を先端に有する。シリンダー内にあるスクリューは、スクリュー接続部14とギアボックス15を介してモーター16により駆動され、回転する。
【0015】
(A)ポリエステル樹脂と(C)その他のポリマーまたは添加剤は、主原料ホッパー1から供給し、第1混練部で混練する(第1工程)。(B)ガラス繊維は、通常、第1混練部の下流部にあるサイドフィードホッパー3からサイドフィードされ、第2混練部で混練される(第2工程)。次いで、第2混練部の下流部でベント4を減圧にして脱揮し昇圧し、ダイホルダ8に備え付けられたダイから押し出す(第3工程)。そして、ダイから出たストランド10は水冷し、ペレタイザー11でカット(第4工程)し、樹脂組成物のペレット12が得られる。
【0016】
第1工程では、(A)ポリエステル樹脂と(C)その他のポリマーまたは添加剤を、主原料ホッパー1から押出機内に供給してスクリューで加熱、混練して溶融化させる。スクリュー途中には、複数枚のニーディングディスクによって構成される第1混練部が構成される。第1混練部は、(A)ポリエステル樹脂と(C)その他のポリマーまたは添加剤を入れた後に混練する混練部であり、(B)ガラス繊維が入る前までの混練部を意味する。そのスクリュー構成は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリュー、またはロータスクリューのうちの2種以上を組み合わせて構成することが好ましく、長さは5.0~9.0D(Dはシリンダー径)とすることが好ましい。第1混練部は、(A)ポリエステル樹脂と(C)その他のポリマーまたは添加剤を入れた後に混練する混練部であり、(B)ガラス繊維が入る前までの混練部である。
【0017】
この第1混練部は一つに纏められていてもよいし、複数に分割されていてもよい。即ち、第1混練部も分割し、その間に送りのスクリューを入れてもよい。分割した場合も合計の混練部長さを5.0~9.0Dの範囲にすることが好ましい。
【0018】
Rニーディングディスク(以下、Rと称することもある。)は順送りニーディングディスクエレメントであり、通常羽根が2枚以上で、その羽根ねじれ角度θは10度から75度であることが好ましい。このように羽根を所定角度ずらして設置していくことにより擬似スクリュー構造を形成し樹脂を送り方向に送り出しつつ強い剪断力を加え、混練を行うゾーンとなる。
Lニーディングディスク(以下、Lと称することもある。)は逆送りニーディングディスクエレメントであり、通常羽根が2枚以上で、かつ羽のねじれ角度θが-10度から-75度であることが好ましい。逆送りニーディングディスクエレメントは、送られてくる樹脂を堰止めたり、送られてくる樹脂を送り戻す方向に働く昇圧能力のあるエレメントであり、混練を促進するエレメントの下流側に設けることにより樹脂を堰きとめ、強力な混練効果を発揮させるものである。
Nニーディングディスク(以下、Nと称することもある。)は、直交ニーディングディスクエレメントであり、通常羽根が2枚以上で、かつ羽根のねじれ角度θが75度から105度である。羽根が略90度ずらして設置されているため樹脂を送り出す力は弱いが混練力は強い。
【0019】
Lスクリューは逆送りスクリューであり、シールリングはシールリング部の各隙間によって上流部の流れを制限するものであり、ミキシングスクリューはスクリューの山(フライト部)を切り欠いたスクリューエレメントであり、ロータスクリューは1条または複数の条が外周面上に設けられたスクリューエレメントである。
【0020】
これらの中では、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスクが好ましく、これらを複数組み合わせた構成とすることが好ましい。
【0021】
第1工程の第1混練部のスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。したがって、第1混練部では、上流側からR、N及びLから選ばれる2種以上を、R→N→Lの順で配置するのが好ましく、各R、N及びLは複数個配置することも好ましい。特に上流にR、次いで複数個のN、そのあとにLを配置する構成が好ましい。
【0022】
第1混練部のスクリュー長さは、シリンダー径をDとすると、5.0~9.0Dの範囲にすることが好ましく、このようなスクリュー長さとすることで、(A)ポリエステル樹脂の溶融可塑化は十分となり、樹脂組成物の分解の発生も抑止することができる。第1混練部のスクリュー長さが5.0Dより短いと、剪断不足により樹脂の溶融可塑化が不十分となりやすく、9.0Dを超えると過剰混練により局部的な樹脂組成物の分解が進行する傾向にあり、組成物の機械物性が劣ることになりやすい。
【0023】
第1工程で(A)ポリエステル樹脂の混練溶融後は、開放ベント2によりベントすることが好ましい。開放ベント2の下流にはシールリングを設けることが好ましい。
【0024】
第2工程では、上記した第1工程後に、(B)ガラス繊維を、第1混練部の下流部にあるサイドフィードホッパー3からサイドフィードし、(B)ガラス繊維と溶融化した(A)ポリエステル樹脂とを第2混練部で混練する。
第2混練部は、(B)ガラス繊維が入り、それを開繊し混練する混練部を意味する。第2混練部のスクリュー構成は、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、Lスクリュー、シールリング、ミキシングスクリューのうち1種または2種以上を組み合わせた構成とすることが好ましく、このようなスクリュー構成で混練すると(B)ガラス繊維の開繊と分散が十分となりやすい。上記の中でも、ミキシングスクリュー、特に順送り切欠き型ミキシングスクリュー、逆送り切欠き型ミキシングスクリューを少なくとも有する構成とすることが好ましい。
【0025】
第2混練部のスクリュー長さは、2.5~5.0Dの範囲にすることが好ましい。この第2混練部は、1つに纏められていてもよいし、複数に分割されていてもよい。即ち、第2混練部を分割しその間に送りのスクリューを入れてもよい。いずれの構成でも合計の混練部長さを2.5~5.0Dの範囲にすることが好ましい。第2混練部のスクリュー長さをこのようにすることで(B)ガラス繊維の開繊と分散が良好となり、樹脂組成物の強度が向上しやすい。
【0026】
第2工程での樹脂温度(シリンダー温度)は、通常は260℃程度で運転することが一般的であるが、本発明の方法では、150~220℃と通常より低い温度とすることが好ましい。この第2混練部は(B)ガラス繊維が入り、(A)ポリエステル樹脂と(C)その他のポリマーまたは添加剤と混練される工程であり、樹脂温度が上昇しやすい。この部分のシリンダー温度を150~220℃という通常より低い温度範囲にすることにより、ダイホルダ8から出たときのストランド10の破断を抑制するのに効果的である。150℃より低いと樹脂の粘度が高くなりやすく、(B)ガラス繊維への含侵がうまくいかず、混練が不均一になり、ストランドが切れ易くなりやすい。一方、220℃より高いと樹脂の温度が高くなりやすく、熱分解ガスが発生しやすく、ストランドが切れやすくなりやすい。第2工程での樹脂温度(シリンダー温度)は、より好ましくは160℃以上、210℃以下である。
【0027】
二軸押出機のスクリュー回転数は250~800rpmが好ましく、300~700rpmがより好ましい。また吐出量はTEX44αIIIでは200~650kg/hが好ましく、250~630kg/hがより好ましい。サイズの異なる押出機ではシリンダー径比の2.5乗に比例した吐出量が好ましい範囲となる。
【0028】
第2工程の後、第3工程で、第2混練部の下流部で減圧ベント4を減圧にして脱揮し昇圧し、ダイホルダ8に備え付けられたダイから押し出す。減圧ベント4での減圧脱揮する際の真空度は-0.097MPa~-0.07MPaとすることが好ましい。ここで、真空度はゲージ圧を意味する。
【0029】
第3工程では、スクリュー先端で昇圧し、ダイからストランドとして押し出す。押し出すときのダイ内の樹脂圧は2~9MPaとなるようにすることが好ましい。
ダイ内の樹脂圧(ダイ圧ともいう)とは、スクリュー先端部の位置の樹脂圧のことである。この位置の圧力が最も高い。通常この位置に樹脂圧計7が設置され、圧力が経時的に測定できる。このダイ内の樹脂圧は2MPa以上9MPa以下とすることが好ましい。(B)ガラス繊維は通常フィード時は束状であり、ダイ内の樹脂圧を2MPa以上9MPa以下とすることにより、樹脂と一緒に混練され、適正な圧力が加わることで、(B)ガラス繊維束の中に樹脂が含侵し易くなり、均一な混練が可能となり、ストランド切れの発生を抑制しやすくなる。2MPa未満であれば樹脂と(B)ガラス繊維の混練状態に不均一が発生し、ストランドがダイから出た際にストランドが破断しやすい。(B)ガラス繊維は通常フィード時は束状であり、樹脂と一緒に混練され、圧力が加わることで、(B)ガラス繊維束の中に樹脂が含侵し易くなり、均一な混練が可能となる。より好ましいダイ内の樹脂圧は2.5Mpa以上であり、更に好ましくは3MPa以上である。また、一方、樹脂圧が高すぎると、スクリュー先端での滞留域が長くなり、熱分解によりガスが発生し易くなり、ダイからストランドが出た際にガスによりストランドが破断し易くなる。より好ましい樹脂圧は8MPa以下であり、更に好ましくは7MPa以下である。
【0030】
ダイホルダ8の温度は、通常より高い温度とすることが好ましく、240℃以上、340℃以下が好ましい。このような温度とすることでストランド切れを抑制しやすくなる。240℃未満だと、ダイの温度は当該樹脂組成物の樹脂温度より低く、ダイ両端のストランド温度は中央のストランドより低くなる。そのためにストランド間で粘度の違いが発生し、ストランドが切れやすくなる。ダイホルダ8の温度は、より好ましくは250℃以上、中でも260℃以上、270℃以上、更に好ましくは280℃以上である。340℃を超えると、ダイ内部の熱滞留により、ガスが発生し易くなり、やはりストランドが切れやすくなる。ダイホルダ8の温度は、より好ましくは330℃以下。更に好ましくは320℃以下である。
【0031】
押出機のシリンダー、およびダイホルダ8には熱電対5やダイホルダ熱電対9が挿しこまれていて、シリンダーとダイホルダの温度を測定できるようになっている。更にシリンダーやダイホルダにはヒーターが組み込まれていて、温度制御できるようになっている。シリンダーの温度やダイホルダの温度とは、挿し込まれた熱電対により測定された温度である。
【0032】
本発明の方法では、二軸押出機の先端のダイホルダ8に横方向平ダイを設け、これからストランドを押し出す際、横方向平ダイの中央のダイ穴からの押し出されるストランドの温度は295~340℃とし、横方向平ダイの端のダイ穴から押し出されるストランドの温度が平ダイ中央のダイ穴からのストランド温度より4~14℃低くする。
【0033】
図2は、本発明で使用される二軸押出機のダイ部の一例を示す図であり、ダイ部をその底面に平行な面で切断したときの断面図である。
【0034】
二軸押出機1のスクリュー21から、溶融したポリエステル系樹脂組成物はダイ部に送り込まれる。ダイ部は、ブレーカープレート23(あるいはリングプレート)、ダイホルダ8、フランジ6、マニホールド部24、横方向平ダイ25から構成される。場合によりダイホルダはダイプレート、フランジはヒンジプレートと呼ばれることもある。
【0035】
ブレーカープレート23内にはスクリーンメッシュを装着することができる。異物等がろ過により除去される。スクリーンメッシュは、金属メッシュを1種又は2種以上組み合わせて使用されていてもよい。金属メッシュの目開きとしては、好ましくは#10~#300、より好ましくは#20~#200、特には#30~#200が好ましく、これらの中から選ばれる2種~5種を組み合わせ、重ね合わせて使用することが好ましい。
ブレーカープレート23には、所望の径d、ランド長Lの穴が所望の数で設けられる。特にスクリーンメッシュを使用しない場合は、リング状のプレートであるリングプレート23を設置するのが普通である。本願の実施例、比較例ではリングプレートを設置した。このブレーカープレートやリングプレートにより樹脂漏れを防ぐことができる。
【0036】
横方向平ダイとは、横方向に並んだダイ穴を有するダイのことである。例えば、
図3(a)にあるような横1列に並んだ複数のダイ穴31、32、33を有するダイ、あるいは、
図3(b)にあるように千鳥状に横方向に複数のダイ穴31、32、33が並んだダイ、あるいは、
図4(d)のように上下2列に横方向にダイ穴31、32、33が並んだダイを意味する。
【0037】
上下2列に横方向に並ぶ場合は、
図4(d)にあるように、端部のダイ穴32、33は上ダイ穴の下側に、下ダイ穴の上側に配置されることが多い。これは横方向平ダイ25の中で上下2列の間に分離板34を設け、上下に樹脂流路を分けた場合、このような配置となる。
【0038】
その他、
図4(e)のように、横方向にランダムにダイ穴が配置される場合もある。その場合はダイの左右端のダイ穴32、33が端部のダイ穴、ダイの幾何学的中央に一番近いダイ穴31がダイ中央のダイ穴となる。横方向平ダイ25は、樹脂がダイホルダの中で横方向に流路が広がるマニホールド部24の先端に位置するのが一般的であり、横方向に並んだダイ穴を有するダイのことである。各ダイ穴の径dは全てが同じ径である必要はなく、ダイ穴のランド長Lも同じ長さで有る必要はなく、ダイ穴毎に径dやランド長Lを変えても構わない。
【0039】
押出ダイの形状は特に制限はなく、公知のものが使用される。ダイ穴の径dは所望するペレットの寸法にもよるが、通常2~5mm、好ましくは3~4mm程度である。
【0040】
ガラス繊維強化ポリエステル含有樹脂組成物ペレットを生産する場合は、この横方向平ダイを使用することが、生産性向上する上で有利である。これ以外に
図3(c)に示すような丸ダイ、つまり、ダイ穴が円周上に配置したダイもあるが、高吐出を狙った場合はダイ穴の数が多くなる。そうすると、円周の直径が大きくなり、円周の上のダイ穴から出たストランドは水槽までの距離が長くなり、不安定化し、ストランドが簡単に切れるようになる。このように生産性向上のためには横方向平ダイが安定生産に有利となる。
然しながら、横方向平ダイの場合、端部のダイ穴32,33からのストランドが、内側のダイ穴31からのストランドより切れやすくなる。端部のダイ穴32,33から出たストランドはダイ中央から見て、外側へ屈曲し易くなる。カーリングと言われる現象で、端部のダイ穴32、33から出たストランドは、外側に回りながら、螺旋(カーリング)を描こうとする。このカーリングにより、端部のダイ穴からのストランドは切れやすくなる。これはガラス繊維が高濃度になる程顕著となる。
【0041】
このカーリングの原因は明らかでないが、端部のダイ穴32,33はダイホルダの壁面からの影響を受け易い。樹脂とダイホルダの壁面での摩擦力が残留応力として残り、外側に屈曲する(カーリング)現象を引き起こすと考えている。本発明では、中央のダイ穴からのストランドの温度を295~340℃とし、ダイ中央と端部ダイからのストランドに4~14℃の温度差をつけることにより、端部のストランド切れを無くすこと、或いは極力少なくすること、そして、全てのストランドのストランド切れを抑制することができる。
【0042】
ダイ中央のストランド温度とは、ダイの幾何学的中心に一番近いダイ穴31から出た直後のストランド温度のことである。横方向に等間隔で並んだダイでダイ穴の本数が奇数であれば、ダイ中央のダイ穴、偶数であればダイ中央の2本のストランドの温度の平均値のことで、ダイから出た直後の温度である。
このダイ中央のストランド温度は熱電対を接触させ直接的に測定することができる。また、赤外線温度測定器により測定することもできる。このダイ中央のストランド温度は、ダイの中の樹脂温度に近いと考えられる。
【0043】
ダイ端部のストランドの温度とは、ダイに向かって、左右ダイ両端32、33の各1本のストランド温度である。左右のストランドの温度が異なる場合にはその平均値とする。同じく、ダイから出た直後のストランド温度である。ダイ端部のストランドの温度は、ダイホルダ、フランジ、ダイの温度の影響を受けやすい。然しながら、ダイホルダ、フランジ、ダイは押出機毎に変わるために、それらの温度と、端部のストランド温度の関係は一律には決まらない。
【0044】
ダイ中央のストランドの温度からダイ両端のストランドの温度を引いた温度(ΔT)は4℃以上14℃以下とする。ΔTをこのようにすることで、端部のストランド切れを無くし、全てのストランドのストランド切れを抑制することができる。ΔTが4℃未満であれば、ストランドの温度が高いため、端部のストランドの弾性回復力が低下し、カーリングにより破断し易くなる(カーリングからの弾性回復力が弱い)。一方、ΔTが14℃より大きければ、カーリングを起こす力そのものが強くなり、カーリングにより破断する。ΔTを4℃以上14℃以下に調整するには、例えば、ダイホルダの温度をダイ内の樹脂温度より少し低く設定することで可能である。
好ましいΔTは4.5℃以上、更に好ましくは5℃以上であり、好ましくは12℃以下、より好ましくは10℃以下である。
【0045】
ダイ中央からのストランドの温度は295℃以上、340℃以下でなくてはならない。このような温度とすることにより、樹脂組成物の樹脂分がガラス繊維束への含侵が良好となり、上記したΔTとすることにより、ストランド切れを無くすことができる。295℃未満だと、樹脂組成物の樹脂分の粘度が高く、ガラス繊維束への含侵が悪く、束状の繊維が残り、ダイから出たときにストランドに応力集中点ができ簡単に破断する。好ましいダイ中央からのストランドの温度は300℃以上、更に好ましくは310℃以上である。一方、340℃を超える温度であると、ポリエステル樹脂が熱分解し、ガスが発生し、ダイから出たときにガスにより容易のストランドが断線する。ダイ中央からのストランドの温度は、好ましくは335℃以下、更に好ましくは330℃以下である。
【0046】
そして、第4工程では、ダイから出たストランド10を水冷し、ペレタイザー11でカットする.ストランドカットするときのストランド温度は100℃以上150℃以下が好ましい。このような温度とすることにより、切粉の発生や不良形状のペレット発生を抑えやすくなる。100℃未満だと、ストランドが硬く、ペレタイザーでカットする際に切粉が発生しやすい。それにより、射出成形等の成形時に可塑化が不安定となりやすい。150℃を超えると、カットしたペレットの楕円柱状の扁平率が大きくなり、これによっても可塑化不良となる場合がある。ストランドカットするときのストランド温度は、より好ましくは110℃以上、140℃以下である。
【0047】
ガラス繊維を高濃度で配合したガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物は、ダイから出てから冷却、ストランドカットの前までに破断しやすい。樹脂成分が少なく、粘弾性的性質が弱くなり、ストランドの靭性が失われ、脆く、切れやすくなる。またガラス繊維の量が多いため、開繊性の悪い繊維束が発生しやすい。開繊性の悪い繊維束はストランド引き(延伸)に対して破断の開始点となりやすい。更に、繊維束への樹脂の充填が少ないとその部分が破断の開始点となる場合もある(ガラス繊維束への樹脂含侵不足)。そしてガラス繊維が高濃度のために、樹脂の粘度が高くなり、樹脂温度が上昇しやすい。それにより熱分解ガスが発生し、ダイから出たときにストランドが切れる原因となる。このようにストランド靭性の低下、ガラス繊維束の開繊不足、ガラス繊維束への樹脂の含侵不足、ガス発生などにより、ストランドを安定的にカットすることは困難となる。ストランドが切れると、人手によりそのストランドをペレタイザーに再度入れる必要がある。その時に全体のストランドの流れが乱れ、カッターに対してストランドが斜め方向に入り、長ペレットが発生しやすい。そしてガラス繊維が高濃度で、ストランドが硬いためにペレタイザーによるカット面が鋭利にならず、鈍くなり、切粉が発生する。切粉の発生を抑制するためにはストランドカット温度を上げることが必要である。それにより鋭利に切れ、切粉は減少する。然しストランドカット温度を上げ過ぎると、ストランドが柔らかくなり、ペレタイザーの引き取りロールにより押しつぶされて、楕円柱状のペレットの偏心率が大きくなる。これらの長ペレットや切粉が多く、扁平率が大きくなるほど、ペレットを用いて射出成形する際の可塑化不良を引き起こしやすく、生産性の低下をきたす。長ペレット(通常、ペレットの長さの2倍以上)の数は1kg中に5個以下が好ましい。切粉は全質量(ペレット+切粉)のうち300質量ppm以下が好ましい。また扁平率(長軸/単軸)は1.30以下が好ましい。
【0048】
ストランド10は、引き取りローラーによって引き取られ、水と接触され、冷却される。水との接触は、冷却水槽13に溜められた水中を搬送されるようにして冷却されてもよいし、ストランド10に水をかけて水と接触させて冷却してもよく、メッシュベルトコンベアでストランドを引き、そこに放水装置にて水をかける方法でもよい。ストランドがダイから押し出されてから水冷却、あるいは水に入るまでの時間は短い方がよい。通常は、ダイから押し出されてから1秒以内に水中に入るのがよい。
【0049】
冷却されたストランドは、引き取りローラーによりペレタイザーに送られ、カッティングされて、ペレットとされる。
【0050】
本発明の方法において、ガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物の265℃、91/secでの剪断粘度は400Pa・s以上2000Pa・s以下とする。400~2000Pa・sの範囲とし、前記した各工程と組み合わせることで、ストランド破断を抑制し、連続安定生産を可能とする。400Pa・sを下回ると、ストランドの弾性性質が弱く、ストランドは破断しやすい。また、2000Pa・sを超えると、剪断発熱が大きくなり、樹脂温度が上昇し、熱分解し、ストランドは簡単に破断する。より好ましい範囲は500Pa・s以上、1700Pa・s以下、更に好ましい範囲は600Pa・s以上であり、好ましくは1400Pa・s以下である。
【0051】
剪断粘度は、キャピログラフ(東洋精機製作所社製キャピログラフ、1D2)を使用し、キャピラリー径1mm、キャピラリー長3mmのオリフィスを用い、JIS K7199に準拠して、265℃、剪断速度91/secで測定される値である。
【0052】
剪断粘度を前記範囲に調整するには、(B)ガラス繊維の量が多くなると剪断粘度を上げることができ、少なくすると剪断粘度は下げることができ、また、配合する(C)その他のポリマー、例えば使用するスチレン系ポリマーやポリカーボネート樹脂の量やその粘度を調整する等の方法で可能である。またポリエステルの粘度を変更することでも調整可能である。更に、押出機内の熱履歴により、樹脂成分は熱分解や加水分解を受け剪断粘度が低下する場合もある。
【0053】
次に、本発明で使用する原料成分について、説明する。
【0054】
(A)ポリエステル樹脂
(A)ポリエステル樹脂は、熱可塑性ポリエステル樹脂であり、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルのいずれであってもよい。
【0055】
(A)ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン-4,4’-ジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、アントラセン-2,5-ジカルボン酸、アントラセン-2,6-ジカルボン酸、p-ターフェニレン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
【0056】
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等をエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
【0057】
(A)ポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等の脂環式ジオール等、及びそれらの混合物等が挙げられる。
なお、少量であれば、分子量400~6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
【0058】
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0059】
(A)ポリエステル樹脂としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%以上、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族ジカルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
【0060】
中でも好ましいのは、酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレートである。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂である。これらはホモポリエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1,4-ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
【0061】
(A)ポリエステル樹脂としては、主成分(即ち50質量%以上)がポリブチレンテレフタレート樹脂あるいはポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく、特にポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0062】
(A)ポリエステル樹脂としては、固有粘度が好ましくは0.60dl/g以上1.0dl/g未満、より好ましくは0.60dl/g以上0.95dl/g未満、さらに好ましくは0.65dl/g以上0.95dl/g未満であるものを用いるのが好ましい。固有粘度が0.60dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物の機械的強度の低くなったり、耐加水分解性が悪くなったり、耐ヒートショック性が低くなったりしやすく、固有粘度が1.0dl/g以上になると、良好な流動性を得ることが難しくなりやすい。
【0063】
なお、ポリエステル樹脂の固有粘度は、1,1,2,2-テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
【0064】
また、(A)ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。60eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリエステル樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
【0065】
なお、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定して得られる値をいう。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0066】
(B)ガラス繊維
(B)ガラス繊維としては、通常ポリエステル樹脂に使用されているものであれば、Aガラス、Eガラス、ジルコニア成分含有の耐アルカリガラス組成や、チョツプドストランド、ロービングガラス、熱可塑性樹脂とガラス繊維のマスターバッチ等の配合時のガラス繊維の形態を問わず、公知のいかなるガラス繊維も使用可能である。中でも本発明に用いる(B)ガラス繊維としては、樹脂組成物の熱安定性を向上させる目的から無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。
【0067】
(B)ガラス繊維としては、長さ方向断面の異形比が2.0~6.0の範囲にあるガラス繊維を使用することも好ましい。
長さ方向断面の異形比とは、ガラス繊維の長さ方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。
【0068】
(B)ガラス繊維の長さ方向の断面積は、90μm2超300μm2以下であることが好ましく、このような断面積であることで、ポリエステル樹脂がマトリックスとなりやすく、結果的に耐熱性が向上し易い。断面積は、より好ましくは90μm2超250μm2以下、さらに好ましくは90μm2超200μm2以下である。
(B)ガラス繊維の太さは、特に限定されるものではないが、短径が2~20μm、長径が5~50μm程度であることが好ましい。
【0069】
(B)ガラス繊維は、集束剤や表面処理剤により処理がなされていてもよい。また、本発明の樹脂組成物製造時に、未処理のガラス繊維とは別に、集束剤や表面処理剤を添加し、表面処理してもよい。
【0070】
集束剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂エマルジョン等が挙げられる。
表面処理剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系化合物、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン等のクロロシラン系化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン系化合物、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、エポキシ系化合物などが挙げられる。
【0071】
これらの集束剤や表面処理剤は2種以上を併用してもよく、その使用量(付着量)は、(B)ガラス繊維の質量に対し、通常10質量%以下、好ましくは0.05~5質量%である。付着量を10質量%以下とすることにより、必要十分な効果が得られ、経済的である。
【0072】
(B)ガラス繊維は、要求される特性に応じて2種以上を併用してもよい。
【0073】
(B)ガラス繊維の含有量は、(A)ポリエステル樹脂、(B)ガラス繊維及び(C)その他のポリマーまたは添加剤の合計100質量%に対し、40~70質量%と高い含有量とする。(B)ガラス繊維の含有量が40質量%未満では剛性が不十分となりやすく、逆に70質量%を超えると耐衝撃性や流動性が不十分となりやすく、また生産が困難となりやすい。(B)ガラス繊維の含有量は、より好ましくは42質量%以上であり、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下であることが好ましい。
【0074】
(C)その他のポリマーまたは添加剤は、(A)ポリブチレンエステル樹脂以外のその他のポリマー及び/又は他の各種の添加剤である。
【0075】
他の添加剤としては、各種の樹脂用添加剤が挙げられ、例えば、(B)ガラス繊維以外の充填剤(タルク、ガラスフレーク、マイカ、雲母、カオリン、セラミックビーズ、クレー、ゼオライト、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫化亜鉛等)、難燃剤、難燃助剤、安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、滑剤、染顔料等の着色剤、触媒失活剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、結晶核剤、結晶化促進剤等が挙げられる。
【0076】
その他のポリマーとしては、例えば、各種エラストマー;後記するスチレン系ポリマー;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。
なお、他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0077】
(C)その他のポリマーまたは添加剤の量は、(A)~(C)の合計100質量%基準で、0~50質量%であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、中でも3質量%以上、4質量%以上、特に好ましくは5質量以上%である。
【0078】
スチレン系ポリマーとしては、例えば、スチレンの単独重合体、ゴムの存在下スチレンを重合してなるグラフト共重合体、スチレンと(メタ)アクリロニトリルとの共重合体、スチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンと(メタ)アクリロニトリルと他の共重合可能な単量体との共重合体、ゴムの存在下スチレンと(メタ)アクリロニトリルとをグラフト重合してなるグラフト共重合体等が挙げられる。具体的には、ポリスチレン(一般用ポリスチレン、GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン、HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS樹脂)、水添スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(水添SBS)、水添スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)及びスチレン-IPN型ゴム共重合体等の樹脂、又は、これらの混合物が挙げられる。
【0079】
これらの中でも、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましく、特にアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましい。
【0080】
スチレン系ポリマーとしては、スチレン系エラストマーも使用できる。
スチレン系エラストマーとしては、ビニル芳香族化合物を重合成分とした重合体ブロックと、共役ジエンを重合成分とした重合体ブロックとからなるブロック共重合体及びその水素添加物が好ましい。
【0081】
ビニル芳香族炭化水素の重合体ブロックを構成するビニル芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、低級アルキル置換スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のスチレンまたはその誘導体などが挙げられる。これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0082】
共役ジエンブロックを構成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。
【0083】
スチレン系ポリマーは、1種を単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
スチレン系ポリマーの量は、(A)~(C)の合計100質量%基準で、5~45質量%であることが好ましい。
【0084】
ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
【0085】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。
【0086】
ポリカーボネート樹脂の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン又は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0087】
ポリカーボネート樹脂は、1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。
【0088】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、制限はないが、粘度平均分子量(Mv)は、通常は10,000~100,000程度であり、好ましくは12,000~35,000程度である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。
【0089】
なお、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、25℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、以下のSchnellの粘度式から算出される値である。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0090】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0091】
また、ポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされた芳香族ポリカーボネート樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては、光学ディスクなどの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、再生ポリカーボネート樹脂としては、製品の不適合品、スプルー、またはランナーなどから得られた粉砕品、またはそれらを溶融して得たペレットなども使用可能である。
【0092】
ポリカーボネート樹脂を含有する場合の量は、(A)~(C)の合計100質量%基準で、5~45質量%であることが好ましい。
【0093】
本発明の方法で製造されたガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物は高い強度の成形品が可能なので、軽量化、薄肉化、強度の要求性能を十分に満足することが出来、例えば電気・電子機器分野、コンピュータ等のOA機器分野、精密機器分野、光学機器分野、自動車分野、その他の各種工業分野等における成形品あるいは部品等に幅広く利用することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0095】
実施例及び比較例で使用した原料の(A)ポリエステル樹脂、(B)ガラス繊維、(C)その他のポリマーは、以下の表1に記載の通りである。
【0096】
【0097】
以下の実施例及び比較例で、押出機は、ベント式噛み合い型同方向回転二軸スクリュー押出機(日本製鋼所社製「TEX44αIII」、シリンダー径D=47mm)を使用した。
【0098】
スクリュー構成を
図5に示した。
C1はフィードシリンダー、C7とC12はベントシリンダー、C7は開放ベント、C12は減圧ベント、C9はサイドフィードシリンダーとした。(A)ポリエステル樹脂と(C)その他のポリマーを溶融混練する第1混練部はC5からC6に配置し、そのスクリュー構成を各1Dで5枚パドルのRRNNLとした(1D=44mm)。(B)ガラス繊維はC9からサイドフィードした。(B)ガラス繊維を混練する第2混練部は1Dで5枚パドルのRと、同じく1Dのバックミキシングスクリュー(リード0.25D)を3つ、
図2のように配置した。
【0099】
(A)ポリエステル樹脂と(C)その他のポリマーを添加し、(B)ガラス繊維がフィードされるまでの混練部が第1混練部であり、C1からC9までの間が第1工程である。
次に(B)ガラス繊維が押出機に入り、減圧ベントまでの混練部が第2混練部であり、C10からC11までが第2工程である。C12からC14の、ダイホルダを含み、ダイから混練樹脂が出てくるまでを第3工程である。更に、ダイから出たストランドを水冷し、ペレタイザーでカットし、ペレットを得る工程が第4工程である。
【0100】
以下の実施例1~9及び比較例1~4では、上記表1の処方1に記載した原料割合で、樹脂組成物を製造した。
【0101】
実施例1
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT2)を65kg/h、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を50kg/h、エラストマー(EL)を10kg/hを主原料ホッパーから二軸押出機「TEX44αIII」のC1フィードバレルに供給し、更に、ガラス繊維(GF)125kg/hをサイドフィードホッパーからC9のサイドフィードシリンダーに供給した。原料のフィード量は合計で250kg/hであり、スクリュー回転数は300rpmとした。
【0102】
C2からC9のシリンダー、及びC12~C14のシリンダーの設定温度を250℃とした。第2混練部のC10、C11のシリンダー設定温度を170℃とした。第3工程にあるダイホルダの設定温度は300℃とした。フランジの温度も300℃とした。また横方向平ダイとしてダイ穴の穴径3.8mm、ランド長20mm、穴数10穴のものを使用した。この時のダイホルダの樹脂圧は4.8MPaであった。ダイ中央の2本のストランドの平均温度は325℃であった。ダイ両端のストランドの平均温度は318℃であった。本願実施例、比較例ではフランジの温度はダイホルダの温度と同じとした。
【0103】
ペレタイザーの引き取り速度は40m/分とした。この条件で1時間押出を継続した。10本全てのストランドは安定し1回も切れることはなかった。ダイ両端のストランドは少し外側に向かうカーリングらしきものが見られたが切れることはなかった。
ダイから出てきたストランドは水槽で冷却し、ペレタイザーでストランドカットし、平均長さ3mmのペレットを得た。
【0104】
得られたペレットを120℃で5時間乾燥し、東洋精機製作所社製「Capilograph 1D2」を使用し、キャピラリー径1mm、キャピラリー長3mmのオリフィスを用い、温度265℃で剪断速度91/秒の剪断粘度を求めた。剪断粘度は910Pa・sであった。
できたペレット1kgを目視で確認し、長ペレット(6mm以上の長さのペレット)の数を数えた。結果を表2に記載した。
【0105】
得られたペレットを120℃、5時間乾燥し、株式会社東洋精機製作所社製「Capilograph 1D2」を使用し、キャピラリー径1mm、キャピラリー長3mmのオリフィスを用い、温度265℃で剪断速度91/秒の剪断粘度を求めた。
【0106】
ストランド破断評価は、以下の基準で判定した。
A:ストランド破断回数0回/時
B:ストランド破断回数1~2回/時
C:ストランド破断回数3~5回/時
D:ストランド破断回数6~9回/時
E:ストランド破断回数≧10回/時
結果を表2に示す。
【0107】
実施例2
横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を10mmとした以外は実施例1と同様に行った。
【0108】
実施例3
横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を30mmとした以外は実施例1と同様に行った。
【0109】
実施例4
ダイホルダの温度を270℃とした以外は実施例1と同様に行った。
【0110】
実施例5
ダイホルダの温度を320℃とした以外は実施例1と同様に行った。
【0111】
実施例6
ダイホルダの温度を250℃とした以外は実施例1と同様に行った。
【0112】
実施例7
ダイホルダの温度を330℃とした以外は実施例1と同様に行った。
【0113】
実施例8
横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を5mmとした以外は実施例1と同様に行った。ダイ内部の樹脂圧は1.7MPaであった。ダイの内側、ダイ両端のストランドともが切れやすくストランドにも繊維状の毛羽が見られた。樹脂圧が低く、繊維の開繊性が不足したいたと判断した。
【0114】
実施例9
横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を40mmとした以外は実施例1と同様に行った。ダイ内部の樹脂圧は9.2MPaと高く、ダイの内側、ダイ両端のストランドとも切れやすく、ストランドの切れる位置はダイの出口であったことからガスによるストランド切れと考えた。ストランド表面はなめらかで繊維の開繊性に問題がないと判断した。
【0115】
比較例1
ダイホルダの温度を230℃とした以外は実施例1と同様に行った。ストランドダイ中央の温度とストランドダイ両端の温度差は15℃あった。ストランド切れは全てダイ両端で起こった。カーリングが強く、ストランドがダイの外側に曲がっている様子が見えた。カーリング破断と考えられた。
【0116】
比較例2
ダイホルダの温度を350℃とした以外は実施例1と同様に行った。ストランドダイ中央の温度とストランドダイ両端の温度差ΔTは3℃と僅かであった。ストランドダイ中央温度も335℃と高く、ストランドのダイ両端で8回、内側で13回は破断した。ΔTが小さく、カーリングへの耐性がなく、切れたこと、樹脂温度も高く、ガスが発生し、内側でも切れたと考えられた。
【0117】
比較例3
スクリュー回転を200rpmとし、横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を10mmとした以外は実施例1と同様に行った。ストランドダイ中央の温度は292℃であった。
【0118】
比較例4
スクリュー回転を500rpmとした以外は実施例1と同様に行った。ストランドダイ中央の温度は344℃であった。ストランドは内側もダイ両端も同じように破断した。ストランド表面は綺麗であり、ガラス開繊不良は見られなかった。ストランド切れはダイ出口で発生していたので、ガスによる破断と考えられた。
【0119】
以上の結果を下記表2に示す。
【0120】
【0121】
以下の実施例10~18および比較例5~8は、前記した表1の処方2に記載した原料割合で、樹脂組成物を製造した。
【0122】
実施例10
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT1)を37.5kg/h、ポリスチレン樹脂(PS)62.5kg/h、ポリカーボネート樹脂(PC)12.5kg/hを主原料ホッパーから二軸押出機「TEX44αIII」のC1フィードバレルに供給し、更に、ガラス繊維(GF)137.5kg/hをサイドフィードホッパーからC9のサイドフィードシリンダーに供給した。原料の合計フィード量は250kg/hであり、スクリュー回転数は300rpmとした。
C2からC8のシリンダー、及びC12~C14のシリンダー設定温度を250℃と、第2混錬部のC9、C10のシリンダー設定温度を170℃とした。
第3工程である、ダイホルダの設定温度は300℃とした。また横方向平ダイとしてダイ穴の穴径3.8mm、ランド長20mm、穴数10穴のものを使用した。この時のダイホルダの樹脂圧は4.7MPaであった。ダイ中央の2本のストランドの平均温度は322℃であった。ダイ両端のストランドの平均温度は314℃であった。ペレタイザーの引き取り速度は40m/分とした。この条件で1時間押出を継続した。10本全てのストランドは安定し1回も切れることはなかった。ダイ両端のストランドは少し外側に向かうカーリングらしきものが見られたが切れることはなかった。
ダイから出てきたストランドは水槽冷却し、ペレタイザーでストランドカットし、ペレットを得た。できたペレットを120℃、5時間乾燥し、東洋精機製作所社製「Capilograph 1D2」を使用し、キャピラリー径1mm、キャピラリー長3mmのオリフィスを用い、温度265℃で剪断速度91/秒の剪断粘度を求めた。剪断粘度は850Pa*secであった。
【0123】
実施例11
横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を10mmとした以外は実施例10と同様に行った。
【0124】
実施例12
横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を30mmとした以外は実施例10と同様に行った。
【0125】
実施例13
ダイホルダの温度を270℃とした以外は実施例10と同様に行った。
【0126】
実施例14
ダイホルダの温度を320℃とした以外は実施例10と行った。
【0127】
実施例15
ダイホルダの温度を250℃とした以外は実施例10と同様に行った。
【0128】
実施例16
ダイホルダの温度を330℃とした以外は実施例10と同様に行った。
【0129】
実施例17
横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を5mmとした以外は実施例10と同様に行った。ダイ内部の樹脂圧は1.6MPaであった。ダイの内側、ダイ両端のストランドともが切れやすくストランドにも繊維状の毛羽が見られた。樹脂圧が低く、繊維の開繊性が不足したいたと判断した。
【0130】
実施例18
横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を40mmとした以外は実施例10と同様に行った。ダイ内部の樹脂圧は9.1MPaと高く、ダイの内側、ダイ両端のストランドとも切れやすく、ストランドの切れる位置はダイの出口であったことからガスによるストランド切れと考えた。ストランド表面はなめらかで繊維の開繊性に問題がないと判断した。
【0131】
比較例5
ダイホルダの温度を230℃とした以外は実施例10と同様に行った。ストランドダイ中央の温度とストランドダイ両端の温度差は17℃あった。ストランド切れは全てダイ両端で起こった。カーリングが強く、ストランドがダイの外側に曲がっている様子が見えた。カーリング破断と考えられた。
【0132】
比較例6
ダイホルダの温度を350℃とした以外は実施例10と同様に行った。ストランドダイ中央の温度とストランドダイ両端の温度差ΔTは2℃と僅かであった。ストランドダイ中央温度も333℃と高く、ストランドのダイ両端で10回、内側で16回は破断した。ΔTが小さく、カーリングへの耐性がなく、切れたこと、樹脂温度も高く、ガスが発生し、内側でも切れたと考えられた。
【0133】
比較例7
スクリュー回転を200rpmとし、横方向平ダイは穴径3.8mm、穴数10穴のまま、ランド長を10mmとした以外は実施例10と同様に行った。ストランドダイ中央の温度は290℃であった。
【0134】
比較例8
スクリュー回転を500rpmとした以外は実施例10と同様に行った。ストランドダイ中央の温度は342℃であった。ストランドは内側もダイ両端も同じように破断した。ストランド表面は綺麗であり、ガラス開繊不良は見られなかった。ストランド切れはダイ出口で発生していたので、ガスによる破断と考えられた。
【0135】
以上の結果を下記表3に示す。
【0136】
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の製造方法によれば、ガラス繊維を高濃度で含有するガラス繊維強化ポリエステル系樹脂組成物の高品質なペレットを安定して生産することが可能である。
【符号の説明】
【0138】
1:主原料ホッパー
3:サイドフィードホッパー
4:減圧ベント
5:第2混練部熱電対
6:フランジ
7:樹脂圧計
8:ダイホルダ
9:ダイホルダ熱電対
10:ストランド
11:ペレタイザー
12:ペレット
13:冷却水槽
15:ギアボックス
16:モーター
20:シリンダー先端部
21:スクリュー
23:リングプレート
24:マニホールド部
25:横方向平ダイ
31、32、33:ダイ穴