(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】紫外線検出物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/80 20060101AFI20241210BHJP
C01F 7/16 20220101ALI20241210BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20241210BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241210BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20241210BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20241210BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C09K11/80
C01F7/16
C09K11/08 B
C08L101/00
C08L29/14
C08L33/04
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2021016876
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀内 道夫
(72)【発明者】
【氏名】津野 将弥
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-248895(JP,A)
【文献】特開平04-239587(JP,A)
【文献】特開2008-195807(JP,A)
【文献】特開2006-152210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
C01F 7/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン、及びマンガンを含む複合酸化物と、有機物重合体と、を含み、
前記複合酸化物は、結晶相においてSrAl
12
O
19
を主相とし、Al
2
O
3
を副相とし、
セリウム、ランタン、及びマンガンは、X線回折では検出されない形で前記複合酸化物中に存在し、
310nmより長い波長の電磁波では励起されず、310nm以下の波長の電磁波で励起されて480nm以上700nm以下に発光波長のピークを有する光を発する、紫外線検出物。
【請求項2】
励起波長ピークは、280nm以下である、請求項1に記載の紫外線検出物。
【請求項3】
前記有機物重合体は、260nmの波長の電磁波の透過率が50パーセント以上である、請求項1又は2に記載の紫外線検出物。
【請求項4】
前記複合酸化物の含有率が50重量パーセント以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紫外線検出物。
【請求項5】
前記有機物重合体は、エタノールに対して溶解性がある、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の紫外線検出物。
【請求項6】
前記有機物重合体は、ポリビニルブチラール樹脂又はポリアクリレート樹脂である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の紫外線検出物。
【請求項7】
前記複合酸化物は、平均粒径が100μm以上である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の紫外線検出物。
【請求項8】
アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン、及びマンガンを含む複合酸化物の粉末を作製する工程と、
前記複合酸化物の粉末と、有機物重合体の粉末と、の混合物を作製する工程と、
前記混合物に溶媒を加えて混錬する工程と、を有し、
前記複合酸化物の粉末を作製する工程は、
アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン、及びマンガンを含む複数種類の酸化物の粉末を混合して大気中で1200℃以上の温度で焼成して複合酸化物の焼結体を作製する工程と、
前記焼結体を粉砕し、前記複合酸化物の粉末を作製する工程と、を含み、
前記複合酸化物は、結晶相においてSrAl
12
O
19
を主相とし、Al
2
O
3
を副相とし、
セリウム、ランタン、及びマンガンは、X線回折では検出されない形で前記複合酸化物中に存在し、
310nmより長い波長の電磁波では励起されず、310nm以下の波長の電磁波で励起されて480nm以上700nm以下に発光波長のピークを有する光を発する、紫外線検出物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線検出物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紫外線とは波長が400nm以下の電磁波のことを指すが、紫外線には、波長が315~400nmのUV-A、波長が280~315nmのUV-B、及び波長が280nm以下のUV-Cなどが含まれる。このような紫外線を検出する様々な方法が検討されている。
【0003】
例えば、UV-Cを励起源とする蛍光特性に優れる紫外線励起蛍光シートや紫外線励起蛍光インクが挙げられる。具体的には、波長200~280nmのUV-Cを励起源として、波長400~700nmにピークを有する蛍光を発生する無機蛍光体を含む無機物質粉末と、熱可塑性樹脂と、を有する紫外線検出物が挙げられる。この紫外線検出物において、無機蛍光体は、カルサイト型(三方晶系菱面体晶)の炭酸カルシウム等を含有する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、最近では、紫外線の殺菌効果やウイルス不活化効果が注目されている。これに伴って、人体にも影響を及ぼす紫外線を正確に検出することが望まれている。殺菌効果及びウイルス不活化効果が高いのはUV-Cである(例えば、非特許文献1、2参照)。また、人体への影響が大きいのもUV-Cである。すなわち、殺菌効果があるのは波長200~300nmの紫外線であり、UV-Cの殺菌効果が最も高い。同様に、人体への影響があるのは波長200~310nmの紫外線であり、UV-Cが人体に与える影響が最も大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Rattanakul et al, Inactivation kinetics and efficiencies of UV-LEDs against Pseudomonasaeruginosa, Legionella pneumophila, and surrogate microorganisms, Water Research 130 (2018) 31-37)
【文献】Beggs et al, Upper-room ultraviolet air disinfection might help to reduce COVID-19 transmission in buildings, medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.06.12.20129254; (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、比較的短波長のUV-Cが生物及びウイルスに大きな影響を及ぼすにも関わらず、従来の紫外線検出では、紫外線の波長域が区別できないため、UV-Cのみを検出することが困難であった。上記の特許文献1に記載の紫外線検出物も、UV-Cのみで励起される旨の記載はなく、UV-C以外の励起波長でも励起されると考えられる。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、UV-Cの波長域を区別して検出できる紫外線検出物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本紫外線検出物は、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン、及びマンガンを含む複合酸化物と、有機物重合体と、を含み、前記複合酸化物は、結晶相においてSrAl
12
O
19
を主相とし、Al
2
O
3
を副相とし、セリウム、ランタン、及びマンガンは、X線回折では検出されない形で前記複合酸化物中に存在し、310nmより長い波長の電磁波では励起されず、310nm以下の波長の電磁波で励起されて480nm以上700nm以下に発光波長のピークを有する光を発する。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、UV-Cの波長域を区別して検出できる紫外線検出物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る紫外線検出物の特性例を示す図(その1)である。
【
図2】本実施形態に係る紫外線検出物の特性例を示す図(その2)である。
【
図3】本実施形態に係る紫外線検出物に含まれる複合酸化物のX線回折パターンの一例である。
【
図4】本実施形態に係る紫外線検出物の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
[紫外線検出物]
本実施形態に係る紫外線検出物(以降、便宜上、紫外線検出物10とする)は、複数種類の酸化物が複合した複合酸化物と、有機物重合体との混合物である。紫外線検出物10に含まれる複合酸化物は、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン、及びマンガンの酸化物を含む。
【0014】
紫外線検出物10は、310nmより長い波長の電磁波では励起されず、310nm以下の波長の電磁波で励起されて480nm以上700nm以下に発光波長のピークを有する光を発する。すなわち、紫外線検出物10は、UV-Aが照射されても励起されないが、UV-Cが照射されると励起されて発光する。UV-Cで励起されやすくするため、紫外線検出物10の励起波長ピークは、280nm以下であることが好ましい。なお、紫外線検出物10において、発光に寄与するのは複合酸化物であり、有機物重合体は発光には寄与しない。
【0015】
紫外線検出物10に含まれる有機物重合体は、260nmの波長の電磁波透過率が50パーセント以上であることが好ましい。また、紫外線検出物10中の複合酸化物の混合量(含有率)は、50重量パーセント以上であることが好ましい。すなわち、有機物重合体は一般に紫外線の透過性が低いため、特にUV-Cの領域である280nm以下の透過性が高いものを選び、使用量はなるべく少なくすることが好ましい。つまり、有機物重合体は、複合酸化物の粒子を結着するのに必要最小限の使用量にすることが好ましい。
【0016】
有機物重合体の種類による紫外線の透過性の差は、例えば、280nm以下では、ポリビニルブチラールやポリアクリレートは比較的高い透過性を示すのに対し、ポリプロピレンはやや劣り、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニルは著しく劣る。また、有機物重合体と合わせて多用される可塑剤成分は、一般に300nm以下の波長の透過性は殆どない。従って、紫外線検出物10は可塑剤成分を含有しないことが好ましい。
【0017】
すなわち、紫外線検出物10に用いる好適な有機物重合体としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂やポリアクリレート樹脂が挙げられる。これらの樹脂を用いると、UV-Cの透過を大きく妨げることなく、UV-Cがある程度透過できるため、紫外線検出物10は、UV-Cが照射されると励起されて可視光領域の波長で発光できる。
【0018】
紫外線検出物10に含まれる有機物重合体は、エタノールに対して溶解性があることが好ましい。紫外線検出物10が不要になった場合に容易に除去できるからである。なお、ポリビニルブチラール樹脂及びポリアクリレート樹脂は、エタノールに対して溶解性がある。
【0019】
図1は、本実施形態に係る紫外線検出物の特性例を示す図(その1)であり、紫外線検出物10を265nm近傍の励起波長の電磁波で励起された場合の発光強度を示している。
図1において、紫外光領域である300nm~350nmと、可視光領域である500nm~550nm(緑色帯、ピーク波長は約520nm)に強い発光が確認できる。すなわち、紫外線検出物10は、265nm近傍の電磁波が照射されると励起され、可視光領域(例えば、緑色帯)の波長で発光する。
図1において、破線で囲んだ2つの部分はレイリー散乱(測定上のノイズ)であり、紫外線検出物10の発光ではない。
【0020】
図2は、本実施形態に係る紫外線検出物の特性例を示す図(その2)であり、紫外線検出物10を520nmで発光させることが可能な電磁波の励起波長を示している。
図2より、紫外線検出物10は、280nm以下の波長の電磁波で強く励起され、280nmより長く310nm以下の波長の電磁波でもわずかに励起されることが確認できる。また、
図2より、紫外線検出物10は、310nmより長い波長の電磁波が照射されても励起されないことが確認できる。
【0021】
図2において、破線で囲んだ部分はレイリー散乱(測定上のノイズ)であり、紫外線検出物10の発光ではない。また、
図2に示す特性の測定には光源としてキセノンランプを用いたため、250nm以上の励起波長で測定が行われている。しかし、
図2に示すスペクトルの短波長側の形状から推測すると、紫外線検出物10は200nm以上250nm未満の励起波長でも励起されて可視光領域の波長で発光すると考えられる。なお、200nm未満の波長は、酸素や窒素を容易に吸収してしまう真空紫外と称される領域になるため、殺菌効果及びウイルス不活化効果、人体への影響等に関しては議論する必要性が低い。そこで、本願では、200nm以上の波長について考えれば十分である。
【0022】
なお、紫外線検出物10は、310nm以下の波長の電磁波で励起されて480nm以上700nm以下に発光波長のピークを有する光を発すればよく、発光波長のピークは500nm~550nm以外の範囲にあってもよい。
【0023】
図3は、本実施形態に係る紫外線検出物に含まれる複合酸化物のX線回折パターンの一例である。
図3に示すように、紫外線検出物10は、結晶相においてSrAl
12O
19(六方晶系)を主相とし、Al
2O
3(コランダム)を副相とする。Ce、La、及びMnは、X線回折では検出されていない。言い換えれば、Ce、La、及びMnは、X線回折では検出されない形で複合酸化物中に存在している。
【0024】
ストロンチウムは、焼成中に酸化アルミニウムと反応し、複合酸化物の主相であるSrAl12O19相を作り、発光中心元素のホストとなっていると考えられる。また、アルミニウムは、焼成中に炭酸ストロンチウムあるいはその脱炭酸酸化物と反応し、複合酸化物の主相であるSrAl12O19相を作り、発光中心元素のホストとなるとともに、単体のコランダム相としても安定的に存在していると考えられる。
【0025】
[紫外線検出物の製造方法]
図4は、本実施形態に係る紫外線検出物の製造方法を示すフロー図である。
図4に示すように、紫外線検出物10を製造するには、まず、ステップS101で、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン、及びマンガンを含む複数種類の酸化物の粉末を乾式混合する。例えば、酸化アルミニウム粉末、炭酸ストロンチウム粉末、酸化セリウム粉末、及びランタンストロンチウムマンガン酸化物粉末を乾式混合する。
【0026】
次に、ステップS102で、ステップS101で乾式混合した複数種類の酸化物の粉末を所定形状に成形し、大気中で1200℃以上の温度(例えば、1500℃)で焼成する。これにより、上記酸化物を含む複合酸化物の焼結体が作製される。ステップS102で作製される焼結体の結晶相において主相となるのは、SrAl12O19である。なお、1200℃未満の温度で焼成すると、UV-Cの波長域を区別して検出できる紫外線検出物の収率が著しく劣る。
【0027】
次に、ステップS103で、ステップS102で作製した焼結体を粉砕し、複合酸化物の粉末を作製する。粉砕には、例えば、汎用の粉砕機を使用できる。粉砕機の粉砕条件を調整することで、複合酸化物の粉末の平均粒径を制御可能である。UV-C照射時に安定して可視光で発光させるためには、複合酸化物の粉末の平均粒径は、100μm以上であることが好ましい。一方、塗布、印刷、成形性の観点から、複合酸化物の粉末の平均粒径は、500μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径は、通常の粒度分布測定機を用いた方法あるいはストークス則を用いて液媒中の粒子の沈降速度から求める方法などにより測定できる。
【0028】
次に、ステップS104で、有機物重合体の粉末を準備し、複合酸化物の粉末と有機物重合体の粉末とを混合して混合物Aを作製する。ステップS104で使用する有機物重合体は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂やポリアクリレート樹脂等である。
【0029】
次に、ステップS105では、ステップS104で作製した混合物Aに所定の溶媒(エタノール等)を加えて有機物重合体の成分の溶解及び混錬を行い、液状又はペースト状の混合物Bを生成する。生成した混合物Bが紫外線検出物10である。なお、混合物B中の複合酸化物の混合量(含有率)は、50重量パーセント以上であることが好ましい。
【0030】
以下、実施例について説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
酸化アルミニウム粉末100重量部、炭酸ストロンチウム粉末12重量部、酸化セリウム粉末2.3重量部、及びランタンストロンチウムマンガン酸化物粉末2.3重量部を乾式混合した後、大気中において1500℃で10時間焼成し、焼結体を得た。各酸化物成分のモル濃度はAl2O3が89.4モルパーセント、SrOが7.6モルパーセント、CeO2が1.2モルパーセント、La2O3が0.8モルパーセント、MnO2が1.0モルパーセントである。
【0032】
上記の各酸化物成分のモル濃度は、重量から換算したものである。なお、炭酸ストロンチウム粉末は、焼成によりSrOに変わる。また、ランタンストロンチウムマンガン酸化物粉末は、焼成によりLa2O3、SrO、及びMnO2に変わる。
【0033】
次に、この焼結体を粉砕し、複合酸化物の粉末を作製した。作製した複合酸化物の粉末の平均粒径は、100μm以上500μm以下であった。そして、複合酸化物の粉末100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂の粉末10重量部とを混合し、エチルアルコールを加えて樹脂成分の溶解及び混錬を行いペースト状の紫外線検出物10Aを作製した。
【0034】
[実施例2]
実施例1と同様に準備した複合酸化物の粉末100重量部と、ポリメチルアクリレート樹脂の粉末10重量部とを混合し、酢酸エチルを加えて樹脂成分の溶解及び混錬を行いペースト状の紫外線検出物10Bを作製した。
【0035】
[発光の確認]
実施例1で作製したペースト状の紫外線検出物10Aと、実施例2で作製したペースト状の紫外線検出物10Bをポリエチレンテレフタレートフィルム上に印刷し、乾燥させた。
図5(a)は、参考のために、乾燥させた紫外線検出物10A及び10Bに蛍光灯を照射した様子を示している。
【0036】
次に、乾燥させた紫外線検出物10A及び10Bに、紫外線暴露装置で365nmと254nmの波長の紫外線を順次照射し、発光の有無を確認した。その結果、実施例1で作製した紫外線検出物10Aと、実施例2で作製した紫外線検出物10Bのいずれにおいても、励起波長が365nmでは発光せず、励起波長が254nmでは
図5(b)に示すように緑白色の強い発光が確認された。なお、365nmはUV-Aに属する紫外線であり、254nmはUV-Cに属する紫外線である。
【0037】
このように、実施例1及び2に係る紫外線検出物10A及び10Bは、UV-A及びUV-Cの照射下でそれぞれ異なる発光態様で発光した。つまり、UV-A照射下では発光しないにも関わらず、UV-C照射下では強く発光した。したがって、実施例1及び2に係る紫外線検出物10A及び10Bを用いることにより、UV-Cの照射の有無を検出することが可能となる。
【0038】
なお、上記の実施例1及び2に示した複合酸化物の各酸化物成分のモル濃度は、一例に過ぎない。各酸化物成分のモル濃度は適宜変更することが可能であり、例えば、酸化アルミニウムのモル濃度を84.9以上93.8以下モルパーセント、酸化ストロンチウムのモル濃度を7.2以上8.0以下モルパーセント、酸化セリウムのモル濃度を1.1以上1.3以下モルパーセント、酸化ランタンのモル濃度を0.8以上0.9以下モルパーセント、酸化マンガンのモル濃度を1.0以上1.1以下モルパーセントの範囲でそれぞれ変更してもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る紫外線検出物は、アルミニウム、ストロンチウム、セリウム、ランタン、及びマンガンを含む複合酸化物と、有機物重合体と、を含み、310nmより長い波長の電磁波では励起されず、310nm以下の波長の電磁波で励起されて480nm以上700nm以下に発光波長のピークを有する光を発する。このため、生物及びウイルスへの影響が大きいUV-Cの照射の有無や到達範囲を可視光領域の波長の発光により目視で確認することができ、紫外線の波長域を区別して検出することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る紫外線検出物は、UV-Cの検出にエネルギー供給の必要がなく、UV-Cの検出を低コストで迅速に簡便にできる。また、本実施形態に係る紫外線検出物は、有機物重合体との混合により、特定形状に成形したり、被検物や被検箇所に塗布したりできるため、使い方の自由度を向上できる。
【0041】
一方、比較的高い紫外線透過性を示す有機物重合体でも、長時間の紫外線暴露により透過性が低下し、機械的強度も劣化する。よって、本実施形態に係る紫外線検出物は、固定式に長期間使用するのではなく、UV-C領域の検知を迅速に簡便に行え、かつ交換が容易な状態で使用されることが好ましい。
【0042】
具体的な使用例は、本実施形態に係る紫外線検出物をフィルム状に成形して粘着層を付与した形で、被検物や被検箇所に貼り付けて、UV-Cの検知(到達や発生有無などの確認)をした後に剥がすことである。あるいは、本実施形態に係る紫外線検出物を液状やペースト状にした形で被検物や被検箇所に塗布し、UV-Cの検知後にアルコール等でふき取る等である。後者の使用方法を実現するためには、使われる有機物重合体はアルコールに溶解するものが望ましく、ポリビニルアルコールやポリビニルブチラールなどが好適に用いられる。
【0043】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0044】
10A、10B 紫外線検出物