(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】密封材組成物及びこれを含む有機電子装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/844 20230101AFI20241210BHJP
H10K 59/40 20230101ALI20241210BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20241210BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20241210BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H10K50/844
H10K59/40
H10K71/00
H10K71/12
C08F20/10
(21)【出願番号】P 2023536193
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(86)【国際出願番号】 KR2021020342
(87)【国際公開番号】W WO2022146099
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189178
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、タエ ソブ
(72)【発明者】
【氏名】リム、ヨーン ビン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハ ヌル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ジェガル、クァン
(72)【発明者】
【氏名】リム、イ スル
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0054900(KR,A)
【文献】特開2020-057580(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070488(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0186999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 - 102/20
C08F 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つ以上の
アクリル基を有するラジカル硬化性化合物を含む密封材組成物であって、
前記ラジカル硬化性化合物は、単官能脂環族化合物(X1)、多官能脂環族化合物(X2)、および直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)を含み、
前記直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)は、単官能脂肪族化合物(Y1)を含み、
前記単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して前記単官能脂肪族化合物(Y1)を20~97重量部で含み、
組成物分極率が1.
6以下であり(ここで、組成物分極率は、前記密封材組成物を成すそれぞれの「ラジカル硬化性化合物の化合物分極率」と「密封材組成物に対する当該ラジカル硬化性化合物の重量割合」を掛けた値の総和である)、前記化合物分極率は、下記一般式1で計算され、
硬化後に110~250kHzのうちいずれか一つの周波数及び25℃温度で2.8以下の誘電率を有する、密封材組成物:
[一般式1]
化合物分極率=(当該ラジカル硬化性化合物の分子構造内に含まれた炭素の個数と酸素の個数を合わせた値)/(当該ラジカル硬化性化合物の分子構造内に含まれた炭素の個数から酸素の個数を引いた値)。
【請求項2】
単官能脂環族化合物(X1)は、10~60重量%で含まれる、請求項
1に記載の密封材組成物。
【請求項3】
単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して多官能脂環族化合物(X2)を20~120重量部で含む、請求項
1に記載の密封材組成物。
【請求項4】
単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)を30~300重量部で含む、請求項
1に記載の密封材組成物。
【請求項5】
単官能脂肪族化合物(Y1)は、炭素数12~24のアルキル基を有する脂肪族化合物を含む、請求項
1に記載の密封材組成物。
【請求項6】
直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)は、
多官能脂肪族化合物(Y2)を含み、
前記単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して前記多官能脂肪族化合物(Y2)を20~200重量部で含む、
請求項
1から
5のいずれか一項に記載の密封材組成物。
【請求項7】
光開始剤をさらに含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の密封材組成物。
【請求項8】
界面活性剤をさらに含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の密封材組成物。
【請求項9】
無溶剤タイプのインク組成物である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の密封材組成物。
【請求項10】
基板;基板上に形成された有機電子素子;及び前記有機電子素子の前面を密封し、請求項1~請求項
9のうちいずれか一項に記載の密封材組成物により形成される有機層を含む、有機電子装置。
【請求項11】
前記有機電子素子と前記有機層の間又は前記有機層上に形成される無機層を含む、請求項1
0に記載の有機電子装置。
【請求項12】
上部に有機電子素子が形成された基板上に、請求項1~請求項
9のうちいずれか一項に記載の密封材組成物が前記有機電子素子の前面を密封するように有機層を形成する段階を含む、有機電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封材組成物及びこれを含む有機電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサーは、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、電界放出表示装置(Field Emission Display、FED)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel、PDP)、電界発光表示装置(Electroluminescence Device、ELD)、電気泳動表示装置などのような画像表示装置に設置されてユーザーが画像表示装置を見ながらタッチパネルを加圧して(押したりタッチしたりして)予め定まった情報を入力する入力装置の一種類を言う。
【0003】
最近、表示装置の大型化及び薄型化に従って上述した表示装置に用いられるタッチセンサーの構造のフォームファクターが変化しているのが実情である。これに伴い、タッチセンサーを密封層上に直接形成する表示装置が開発されている。
【0004】
一方、このように表示装置の薄型化によってタッチセンサーを成すタッチセンサー用電極と画像表示装置内の上部電極の間の間隔が狭くなるので、寄生電流を発生させてタッチセンサーのタッチ感度が低くなる問題が発生し得る。
【0005】
したがって、密封層の誘電率を低めてユーザーのタッチ感度を高めるのが主要解決課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、低誘電率の特性に基づいて優れたタッチ敏感度を具現し得る密封材組成物を提供することにある。本発明の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及しなかったまた他の技術的課題は、下の記載から当業者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示して詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。
【0008】
層、領域又は基板のような要素が他の構成要素「上(on)」に存在すると言及したとき、これは直接的に他の要素上に存在するか又はその間に中間要素が存在し得るものと理解すべきである。
【0009】
本出願で用いた用語は、ただし、特定の実施例を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に別に説明しない限り、複数の表現を含む。本出願で「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
【0010】
別に定義しない限り、技術的や科学的な用語を含んでここで用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者により一般的に理解されるものと同一な意味を有している。一般的に用いられる辞典に定義されている用語と同じ用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈しなければならず、本出願で明白に定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味で解釈されない。
【0011】
<密封材組成物>
【0012】
本出願は、有機電子素子の密封材組成物に関する。前記密封材組成物は、例えば、OLEDなどのような有機電子装置を封止又はカプセル化することに適用される密封材であってもよい。一つの例示で、本出願の密封材組成物は、有機電子素子の前面を封止又はカプセル化することに適用され得る。したがって、前記密封材組成物がカプセル化に適用された後には、有機電子装置の前面を密封する形態で存在し得る。
【0013】
本明細書で、用語「有機電子装置」は、互いに対向する一対の電極の間に正孔及び電子を利用して電荷の交流を発生する有機材料層を含む構造を有する物品又は装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッター及び有機発光ダイオード(OLED)などが挙げられるが、これに制限されるものではない。本出願の一つの例示で、前記有機電子装置は、OLEDであってもよい。
【0014】
本出願は、前面発光型有機電子素子上に直接前記素子と接触するように適用される密封材組成物を提供することによって、硬化後に優れた光学特性を有し、組成物の硬化時に発生するアウトガスによる素子の劣化を防止しなければならない。特に、本出願の密封材組成物は、インクジェット工程に適用するために優れた吐出性、広がり性及び低粘度を具現し、硬化後に高い表面硬度を具現することによって密封層内の無機層の形成工程によるダメージを防止し、低誘電率特性に基づいて薄膜の有機電子装置に優れたタッチ敏感度を具現しなければならない。したがって、本出願は、後述するような特定組成を利用して、前記光学特性、素子信頼性、低粘度性、高硬度だけでなく低誘電率を同時に具現し得る有機電子素子封止用組成物を提供することができる。
【0015】
本出願で、前記密封材組成物は、ラジカル硬化性化合物を含むことができる。ラジカル硬化性化合物とは、光の照射によってラジカル重合により硬化され得る組成物を意味するものであって、少なくとも一つ以上のラジカル硬化性官能基を有することができる。ここで、照射される光は、例えば、マイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線又はガンマ線のような電磁気波はもちろん、アルファ-粒子線(alpha-particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、ニュートロンビーム(neutron beam)及び電子線(electron beam)のような粒子ビームの照射により行われ得る。一例として、ラジカル硬化性官能基は、特に言及しない限り、制限されないが、一例として、(メト)アクリル基としてアクリル基又はメタクリル基であってもよく、より詳しくは、多官能脂肪族化合物は、多官能脂肪族(メト)アクリル化合物、単官能脂環族化合物は、単官能脂環族(メト)アクリル化合物、多官能脂環族化合物は、多官能脂環族(メト)アクリル化合物、単官能脂肪族化合物は、単官能脂肪族(メト)アクリル化合物であってもよい。
【0016】
一具体例で、本出願の密封材組成物は、少なくとも一つ以上のラジカル硬化性官能基を有するラジカル硬化性化合物を含み、組成物分極率が1.8以下、1.79以下、1.78以下、1.77以下、1.76以下、1.75以下、1.74以下、1.73以下、1.72以下、1.71以下、1.7以下、1.69以下、1.68以下、1.67以下、1.66以下、1.65以下、1.64以下、1.63以下、1.62以下、1.61以下、1.6以下、1.59以下、1.58以下、1.57以下、1.56以下、1.55以下、1.54以下、1.53以下、1.52以下、1.51以下、1.5以下、1.49以下、1.48以下、1.47以下、1.46以下、1.45以下、1.44以下、1.43以下、1.42以下、1.41以下、1.4以下、1.39以下、1.38以下、1.37以下又は1.36以下であってもよい。また、組成物分極率の下限は、1以上であってもよい。
【0017】
ここで、組成物分極率は、前記密封材組成物を成すそれぞれの「ラジカル硬化性化合物の化合物分極率」と「密封材組成物100重量部に対する当該ラジカル硬化性化合物重量部(すなわち、密封材組成物に対する当該ラジカル硬化性化合物の重量割合)」を掛けた値の総和であり、前記化合物分極率は、下記一般式1で計算され得る。
【0018】
[一般式1]
【0019】
化合物分極率=(当該ラジカル硬化性化合物の分子構造内に含まれた炭素の個数と酸素の個数を合わせた値)/(当該ラジカル硬化性化合物の分子構造内に含まれた炭素の個数から酸素の個数を引いた値)
【0020】
一般式1で、当該ラジカル硬化性化合物の分子構造内に含まれた炭素(又は水素)の個数は、ラジカル硬化性化合物の構造式(structural formula)を成している全ての炭素(又は水素)個数の総和を示す。一例として、密封材組成物がラジカル硬化性化合物(X)、ラジカル硬化性化合物(Y)及びラジカル硬化性化合物(Z)からなる場合、組成物分極率は、(X化合物の分極率*密封材組成物に対するX化合物の重量割合)+(Y化合物の分極率*密封材組成物に対するY化合物の重量割合)+(Z化合物の分極率*密封材組成物に対するZ化合物の重量割合)で計算され得る。ここで、ラジカル硬化性化合物の重量割合を計算するとき、密封材組成物内に含まれた全ての組成の重量総和を基準として計算したものであって、ラジカル硬化性化合物だけはなく光開始剤や界面活性剤などを全て含んで計算する。
【0021】
すなわち、本出願は、組成物を成すラジカル硬化性化合物の組成物分極率を制御して本出願が目的とする組成物を提供することができる。
【0022】
一つの例示で、ラジカル硬化性化合物は、脂環族化合物(X)を含むことができる。ここで、脂環族化合物は、脂環族炭化水素系として分子構造内に環形構造を1個以上有するモノマーであって、ベンゼン環など芳香族基を含まないものであってもよい。一例として、脂環族化合物(X)は、二環又は三環化合物を含むことができる。二環又は三環化合物は、分子構造内にそれぞれ2個又は3個の環が結合された環であって、互いに異なる環に属する原子の間の共有結合を通じて連結された環とは異なり、それぞれの環は、少なくとも一つ以上の共通原子(atom)又は共通結合(bond)を共有することを意味する。より詳しくは、二環又は三環化合物は、スピロ(spiro)化合物、縮合環(fused-ring)化合物又は橋かけ環(bridged-ring)化合物であってもよく、一つの例として、前記二環又は三環化合物は、カルボビシクロ化合物であってもよい。カルボビシクロ化合物は、結合された2個の環を構成する原子が全て炭素原子である化合物を意味する。このように、本出願による組成物は、バルキーな構造の脂環族化合物(X)を含むことによって、組成物のモル体積を増加させ、立体障害などを通じて分極現象を防止して組成物の低誘電率特性を具現することができる。
【0023】
一つの例示で、脂環族化合物(X)は、密封材組成物を基準として10~100重量%で含まれ得、より詳しくは、13重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、20重量%以上、23重量%以上、25重量%以上、27重量%以上、30重量%以上、33重量%以上、35重量%以上、37重量%以上、40重量%以上、43重量%以上、45重量%以上、47重量%以上、50重量%以上、53重量%以上、55重量%以上、57重量%以上、60重量%以上、63重量%以上、65重量%以上、68重量%以上、70重量%以上、73重量%以上又は75重量%以上で含まれ得、97重量%以下、95重量%以下、93重量%以下、90重量%以下、87重量%以下、85重量%以下、83重量%以下、80重量%以下、77重量%以下、75重量%以下、73重量%以下、70重量%以下、67重量%以下、65重量%以下、63重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下又は40重量%以下であってもよい。本出願は、密封材組成物の前記組成を通じて、組成物の誘電率を低く調節して回路間の干渉を効果的に防止することができる。一般的に、誘電率を低めるために同種業界で多様な方法を採択できるが、これはインクジェッティング物性の具現とは別個である。本出願によると、前記インクジェッティング物性を維持すると共に硬化後に優れた硬化感度を満足し、それと同時に低誘電率及び水分遮断性の具現が可能な密封材組成物を提供することができる。
【0024】
一つの例示で、前記脂環族化合物(X)は、単官能脂環族化合物(X1)を含むことができる。ここで、単官能脂環族化合物(X1)は、脂環族化合物であるが、分子内に一つの官能基を有することを意味し、一例として、単官能脂環族化合物(X1)は、これに制限されるものではないが、イソボニル(メト)アクリレート、1,3-アダマンタンジオール(メト)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メト)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メト)アクリレート、1-アダマンチル(メト)アクリレートなどが挙げられる。また、下記化学式1の化合物を含むことができ、一例として、化学式1の化合物は、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル(メト)アクリレートであってもよい。
【0025】
【0026】
前記化学式1で、R1及びR2は、それぞれ独立的に炭素数1~6の直鎖又は分枝鎖アルキル基であってもよい。
【0027】
一例として、R1及びR2は、これに制限されるものではないが、メチル基、イソプロピル基又はt-ブチル基であってもよい。特に、アルキル基が分枝構造である場合、双極子モーメントが低くなり得るので、分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)がより好ましいことがある。
【0028】
また、一つの例示で、単官能脂環族化合物(X1)は、密封材組成物を基準として10~60重量%で含まれ得、より詳しくは、12重量%以上、14重量%以上、16重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、22重量%以上、30重量%以上、35重量%以上又は40重量%以上で含まれ得、58重量%以下、56重量%以下、54重量%以下、52重量%以下、50重量%以下、48重量%以下、46重量%以下、44重量%以下、42重量%以下、30重量%以下又は25重量%以下であってもよい。
【0029】
また、一つの例示で、前記脂肪族化合物(X)は、多官能脂環族化合物(X2)を含むことができる。ここで、多官能脂環族化合物(X2)は、脂環族化合物として、分子内に官能基を2個以上含むことを意味し、一例として、多官能脂環族化合物(X2)は、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Tricyclodecane dimethanol diacrylate)又はトリシクロデカンジメタノールジ(メト)アクリレート(Tricyclodecane dimethanol di(meth)acrylate)などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0030】
一つの例示で、多官能脂環族化合物(X2)は、単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して20~120重量部で含まれ得る。詳しくは、多官能脂環族化合物(X2)の下限は、単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して、23重量部以上、25重量部以上、27重量部以上、30重量部以上、33重量部以上、35重量部以上、37重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、75重量部以上、80重量部以上又は90重量部以上であってもよく、その上限は、110重量部以下、105重量部以下、100重量部以下、95重量部以下、93重量部以下、91重量部以下、90重量部以下、80重量部以下、70重量部以下、60重量部以下、50重量部以下又は45重量部以下であってもよい。
【0031】
一具体例で、ラジカル硬化性化合物は、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)を含むことができる。ここで、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)は、脂肪族炭化水素系として分子構造内に直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有するモノマーを意味するもので、分子構造内に環形構造がない点で前記脂環族化合物(X)と区別され得、芳香族基を有しないものであってもよい。特に、脂肪族化合物(Y)内のアルキル基が分枝構造である場合、双極子モーメントが低くなり得るので、分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)がより好ましいことがある。
【0032】
一つの例示で、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)は、単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して30~300重量部で含まれ得る。詳しくは、単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)の下限は、35重量部以上、40重量部以上、45重量部以上、50重量部以上、55重量部以上、60重量部以上、61重量部以上、62重量部以上、70重量部以上、80重量部以上、100重量部以上、200重量部以上又は250重量部以上であってもよく、その上限は、280重量部以下、270重量部以下、260重量部以下、200重量部以下、150重量部以下、100重量部以下、90重量部以下、80重量部以下、70重量部以下、60重量部以下又は50重量部以下であってもよい。
【0033】
また、一つの例示で、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)は、脂環族化合物(X)100重量部に対して5~250重量部で含まれ得る。詳しくは、脂環族化合物(X)100重量部に対して、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)の下限は、15重量部以上、25重量部以上、35重量部以上、45重量部以上、55重量部以上、60重量部以上、80重量部以上、100重量部以上、120重量部以上又は140重量部以上であってもよく、その上限は、200重量部以下、150重量部以下、100重量部以下、70重量部以下、50重量部以下又は30重量部以下であってもよい。
【0034】
また、一具体例で、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)は、単官能脂肪族化合物(Y1)を含むことができ、ここで、単官能脂肪族化合物(Y1)は、脂肪族化合物として分子内に官能基を1個有することを意味する。
【0035】
また、一つの例示で、単官能脂肪族化合物(Y1)は、また炭素数12~24のアルキル基を有する脂肪族化合物を含むことができる。例えば、n-ドデシル(メト)アクリレート、イソドデシル(メト)アクリレート、n-トリデシル(メト)アクリレート、イソトリデシル(メト)アクリレート、n-ペンタデシル(メト)アクリレート、イソペンタデシル(メト)アクリレート、n-ヘキサデシル(メト)アクリレート、イソヘキサデシル(メト)アクリレート、n-ヘプタデシル(メト)アクリレート、イソヘプタデシル(メト)アクリレート、ステアリル(メト)アクリレート、イソオクタデシル(メト)アクリレート、n-ノナデシル(メト)アクリレート、イソノナデシル(メト)アクリレート、n-ドデシル(メト)アクリレートなどであってもよく、これに制限されるものではない。このように、長鎖骨格の脂肪族化合物を導入して、分子全体の極性を低減させて組成物の低誘電率化を具現することができる。
【0036】
一つの例示で、単官能脂肪族化合物(Y1)は、単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して20~120重量部で含まれ得る。詳しくは、単官能脂肪族化合物(Y1)の下限は、単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、45重量部以上、47重量部以上、50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、80重量部以上又は90重量部以上であってもよく、その上限は、110重量部以下、107重量部以下、105重量部以下、103重量部以下、100重量部以下、97重量部以下、95重量部以下、93重量部以下、91重量部以下、80重量部以下、70重量部以下、60重量部以下又は50重量部以下であってもよい。
【0037】
一具体例で、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を有する脂肪族化合物(Y)は、多官能脂肪族化合物(Y2)を含むことができる。ここで、多官能脂肪族化合物(Y2)は、脂肪族化合物として分子内に官能基を少なくとも二つ以上有することを意味する。
【0038】
また、一つの例示で、多官能脂肪族化合物(Y2)は、2官能~8官能である脂肪族化合物を含むことができ、一例として、ヘキサンジオールジ(メト)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メト)アクリレート、エチレングリコールジ(メト)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メト)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メト)アクリレート(メト)、グリセリンプロポキシル化トリ(メト)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メト)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メト)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メト)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メト)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メト)アクリレートなどが挙げられ、これらの2種以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
一つの例示で、多官能脂肪族化合物(Y2)は、単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して20~200重量部で含まれ得る。詳しくは、多官能脂肪族化合物(Y2)の下限は、単官能脂環族化合物(X1)100重量部に対して、23重量部以上、25重量部以上、27重量部以上、30重量部以上、33重量部以上、35重量部以上、37重量部以上、40重量部以上、80重量部以上、100重量部以上、130重量部以上又は160重量部以上であってもよく、その上限は、195重量部以下、193重量部以下、190重量部以下、187重量部以下、185重量部以下、183重量部以下、180重量部以下、178重量部以下、175重量部以下、173重量部以下、170重量部以下、168重量部以下、100重量部以下、80重量部以下又は50重量部以下であってもよい。
【0040】
上述したように、本出願は、密封材組成物の特定組成配合を通じて有機電子素子にインクジェット方式で塗布され得、塗布された密封材組成物は、硬化された以後に優れた硬化感度を有する有機層を提供することができる。硬化感度が不足する場合、未硬化分が発生したり、組成物内にアウトガスが発生し、これは、有機電子素子上に直接適用される本出願の密封材組成物の特性上深刻な耐久信頼性の問題をもたらし得る。また、前記密封材組成物は、低誘電率特性を具現することができる。
【0041】
本明細書で用語「モノマー」は、重量平均分子量が150~1,000g/mol、173~980g/mol、188~860g/mol、210~823g/mol又は330~780g/molの範囲内にある化合物を指し得る。本発明は、密封材組成物に含まれるモノマーの重量平均分子量を低く調節することによって、密封材の硬化後の硬化完了度を向上させると共に組成物の粘度が過度に高くなってインクジェット工程を不可能にすることを防止することができ、同時に水分遮断性及び優れた硬化感度を提供することができる。本明細書で重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。一つの例示で、250~300mmの長さ、4.5~7.5mmの内径を有する金属管からなっているコラムに3~20mmのPolystyrene beadを充填する。測定しようとする物質をTHF溶媒に溶かした希釈した溶液をコラムに通過させると、流出する時間によって重量平均分子量を間接的に測定可能である。コラムからサイズ別に分離されて出る量を時間別にPlotして検出することができる。
【0042】
一具体例で、本発明による密封材組成物は、光開始剤を含むことができる。光開始剤は、光ラジカル開始剤であってもよく、具体的な種類は、硬化速度などを考慮して適切に選択され得る。例えば、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系又はホスフィンオキシド系光開始剤などを用いることができ、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアニノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン(thioxanthone)、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどを用いることができ、前記光開始剤は、1種単独で用いるか、2種以上に組み合わせて用いることができる。
【0043】
一つの例示で、光開始剤は、密封材組成物を基準として0.01~10重量%以下、詳しくは、0.01~5重量%以下で含まれ得る。光開始剤の含量範囲を調節することによって、有機電子素子上に直接適用される本出願の密封材組成物の特性上、前記素子への物理的化学的損傷を最小化することができる。
【0044】
一具体例で、密封材組成物は、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤としては、これに制限されるものではないが、シリコーン系界面活性剤、フルオリン系界面活性剤剤又はアクリル系界面活性剤が好ましい。
【0045】
シリコーン系界面活性剤の具体的な例としては、BYK-Chemie社のBYK-077、BYK-085、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-335、BYK-341v344、BYK-345v346、BYK-348、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358、BYK-361、BYK-370、BYK-371、BYK-375、BYK-380又はBYK-390などがあり、前記フルオリン系界面活性剤の具体的な例としては、DIC(DaiNippon Ink & Chemicals)社のF-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF1132、TF1027SF、TF-1441又はTF-1442などがあるが、これに限定されるものではない。本発明による密封材組成物の表面張力を制御するために、組成物内に添加される界面活性剤は、密封材組成物を基準として0.1~1重量%で含まれ得る。
【0046】
本出願による密封材組成物には、上述した構成外にも上述した発明の效果に影響を及ぼさない範囲で多様な添加剤が含まれ得る。例えば、密封材組成物は、消泡剤、粘着付与剤、紫外線安定剤又は酸化防止剤などを目的とする物性によって適正範囲の含量で含むことができる。
【0047】
本出願の具体例で、本出願の密封材組成物は、常温、例えば、25℃で液状であってもよい。一具体例で、前記密封材組成物は、無溶剤タイプの液状であってもよい。ここで、無溶剤タイプは、溶剤を0.05%以下で含有することを意味する。また、一具体例で、密封材組成物は、インク組成物であってもよい。すなわち、本出願による密封材組成物は、非接触式でパターニングが可能なインクジェットプリンティングを利用して基板に吐出されたとき、適切な物性を有するように設計され得る。
【0048】
一つの例示で、密封材組成物は、25℃の温度、90%のトルク及び20rpmのせん断速度で、ブルックフィールド社のDV-3で測定した粘度が50cP以下、1~46cP、3~44cP、4~38cP、5~33cP又は14~24cPの範囲内であってもよい。本出願は、組成物の粘度を前記範囲に制御することによって、有機電子素子に適用される時点でのインクジェッティング可能な物性を具現することができ、また、コーティング性を優秀にして薄膜の封止材を提供することができる。
【0049】
下で詳述するように、前記密封材組成物は、光の照射により架橋を誘導して有機層を形成することができる。前記光を照射することは、約250~約450nm又は約300~約450nm領域帯の波長範囲を有する光を300~6,000mJ/cm2の光量又は500~4,000mJ/cm2の光量で照射することを含むことができる。
【0050】
このとき、下で後述するように、有機層は、25μm以下の厚さを有することができる。一例として、その厚さは、23μm以下、22μm以下、21μm以下又は20μm以下であってもよく、その下限は、1μm以上又は2μm以上であってもよい。本出願は、有機層の厚さを薄く提供して薄形の有機電子装置を提供することができる。
【0051】
本出願の具体例で、密封材組成物は、硬化後硬化物の表面エネルギーが10~50mN/m、12~45mN/m、15~40mN/m、18~35mN/m又は20mN/m~30mN/mの範囲内であってもよい。前記表面エネルギーの測定は、当業界において公知の方法で測定され得、例えば、Ring Method方法で測定され得る。本出願は、前記表面エネルギー範囲を満足することによって、インクジェット工程でインクジェットヘッドからの吐出が容易となる。
【0052】
一例として、表面エネルギー(γsurface、mN/m)は、γsurface=γdispersion+γpolarで計算され得、水滴型分析器(Drop Shape Analyzer、KRUSS社のDSA100製品)を用いて測定され得る。例えば、表面エネルギーは、測定しようとする密封材組成物をSiNx基板に約50μmの厚さと4cm2のコーティング面積(横:2cm、縦:2cm)で塗布して封止膜を形成した後(スピンコーター)、窒素雰囲気下で常温で約10分程度乾燥させた後に、1000mW/cm2の強度で4000mJ/cm2の光量を通じてUV硬化させる。硬化後、前記膜に表面張力(surface tension)が公知の脱イオン化水を落としてその接触角を求める過程を5回繰り返して、得られた5個の接触角数値の平均値を求め、同時に、表面張力が公知のジヨードメタン(diiodomethane)を落としてその接触角を求める過程を5回繰り返して、得られた5個の接触角数値の平均値を求める。その後、求めた脱イオン化水とジヨードメタンに対する接触角の平均値を利用してOwens-Wendt-Rabel-Kaelble方法によって溶媒の表面張力に関する数値(Strom値)を代入して表面エネルギーを求めることができる。
【0053】
本出願の具体例で、前記密封材組成物は、20μmの厚さを有する薄膜で硬化した後、110~250kHzのうちいずれか一つの周波数及び25℃の温度条件で、2.8以下、2.79以下、2.78以下、2.77以下、2.76以下、2.75以下、2.74以下、2.73以下、2.72以下、2.71以下、2.7以下、2.69以下又は2.68以下の誘電率を有することができる。一例として、それぞれの誘電率は、150~250kHzのうちいずれか一つの周波数で測定したものであってもよく、より詳しくは、250kHzの周波数で測定したものであってもよい。
【0054】
一例として、誘電率は、ガラス上にアルミニウムを約50nm程度となるように蒸着し、その上に密封材組成物をインクジェット印刷方式のコーティング及び約1,000mJ/cm2の光量でUV硬化して厚さが約20μm程度の有機層を形成した後、前記有機層上にアルミニウムを約50nm程度となるように蒸着した試験片に対してImpedence/gain-phase測定器のHP 4194Aを利用して測定することができる。
【0055】
従来技術で量産されるフィルムの誘電率は、約3.4以上~4.5範囲内であって、電極間の寄生キャパシタンスにより大型ディスプレイには使用が不適合である面があった。また、一般的に厚さが薄くなるほど高い誘電率値を示す傾向を有するが、本出願は、前記20μm以下の薄い厚さでも前記のように低い誘電率値を有することができる。このように、前記構成の組成物から形成された有機層は、前記の誘電率範囲を満足することによって、厚さが薄い有機層を下記説明する有機電子装置に適用しても回路間の干渉問題が発生せず、したがって、薄型化が可能な有機電子装置を提供することができる。誘電率を低めるのがタッチセンサーの感度改善に有利であるので、誘電率の下限は、特に制限されないが、一例として、0.01又は0.1であってもよい。
【0056】
本出願の具体例で、硬化後、25℃で1.5GPa以上、1.7GPa以上、1.9GPa以上、2.1GPa以上、2.2GPa以上、2.3GPa以上、2.4GPa以上、2.5GPa以上、2.6GPa以上又は2.7GPa以上であってもよい。前記のようなモジュラスを満足するによって、表面硬度に優れ、無機層を形成するCVDなどの工程で封止材組成物の硬化物である有機層の損傷を防止することができる。
【0057】
前記モジュラスは、ガラス基板上に密封材組成物を所定の厚さで成膜してLED UVランプを通じて1000mW/cm2のUV条件で硬化させ、横及び縦が全て20cmであり、厚さが3μmである試験片を製造して測定され得る。特に、硬化された試験片に対してナノインデンターHM-2000(Fisher社)で試験片を5秒間ローディング(loading)し、2秒間維持(hold loading)した後、また5秒間除去(unloading)して測定したものであってもよく、測定条件は、Experimental mode:Indentation Mode(Berkovitzを使用)、Control mode:Force control、Maximum force:2mN、250kHz及び25℃の条件であってもよい。
【0058】
また、本出願の具体例で、前記密封材組成物は、硬化後、可視光線領域での光透過度が90%以上、92%以上又は95%以上であってもよい。前記範囲内で本出願は、密封材組成物を前面発光型有機電子装置に適用して、高解像度、低消費電力及び長い寿命の有機電子装置を提供する。また、本出願の密封材組成物は、硬化後、JIS K7105標準試験によるヘイズが3%以下、2%以下又は1%以下であってもよく、下限は、特に限定されないが、0%であってもよい。前記ヘイズ範囲内で密封材組成物は、硬化後に優れた光学特性を有することができる。本明細書で、上述した光透過度又はヘイズは、前記密封材組成物を有機層で硬化した状態で測定したものであってもよく、前記有機層の厚さを2~20μmのうちいずれか一つの厚さであるときに測定した光学特性であってもよい。本出願の具体例で、前記光学特性を具現するために上述した水分吸着剤又は無機フィラーは含まなくてもよい。
【0059】
<有機電子装置>
【0060】
また、本出願は、有機電子装置に関する。例示的な有機電子装置3は、
図1に示したように、基板31;前記基板31上に形成された有機電子素子32;及び前記有機電子素子32の前面を密封し、上述した密封材組成物により形成される有機層33を含むことができる。
【0061】
本出願の具体例で、有機電子素子32は、第1電極層、前記第1電極層上に形成されて少なくとも発光層を含む有機材料層及び前記有機材料層上に形成される第2電極層を含むことができる。前記第1電極層は、透明電極層又は反射電極層であってもよく、第2電極層も透明電極層又は反射電極層であってもよい。より具体的に、前記有機電子素子32は、基板上に形成された反射電極層、前記反射電極層上に形成されて少なくとも発光層を含む有機材料層及び前記有機材料層上に形成される透明電極層を含むことができる。
【0062】
本出願で有機電子素子32は、有機発光ダイオードであってもよい。
【0063】
一つの例示で、本出願による有機電子装置は、前面発光(top emission)型であってもよいが、これに限定されるものではなく、背面発光(bottom emission)型に適用され得る、
【0064】
前記有機電子装置3は、前記有機電子素子32の電極及び発光層を保護するものであって、有機電子素子32と有機層の間に無機層35を追加で含むことができる。無機層35は、化学気象蒸着(CVD、chemical vapor deposition)よる保護層であってもよい。一例として、無機層35は、Al、Zr、Ti、Hf、Ta、In、Sn、Zn及びSiからなる群より選択された一つ以上の金属酸化物又は窒化物であってもよい。無機層の厚さは、10~70nm又は約20~約60nmであってもよい。一つの例示で、本出願の無機層35は、ドーパントが含まれない無機物であるか、又はドーパントが含まれた無機物であってもよい。ドーピングできる前記ドーパントは、Ga、Si、Ge、Al、Sn、Ge、B、In、Tl、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択された1種以上の元素又は前記元素の酸化物であってもよいが、これに限定されない。
【0065】
一つの例として、有機電子装置3は、前記有機層33上に形成された無機層34を追加で含むことができる。無機層34は、有機電子素子32と有機層の間に形成される無機層35と同一であるか、異なる素材を利用することができ、前記無機層34は、前記無機層35と同一な方法で形成され得る。
【0066】
また、有機層は、25μm以下の厚さを有することができる。一例として、その厚さは、23μm以下、22μm以下、21μm以下又は20μm以下であってもよく、その下限は、1μm以上又は2μm以上であってもよい。本出願は、有機層の厚さを薄く提供して薄形の有機電子装置を提供することができる。
【0067】
一つの例として、本出願の有機電子装置3は、上述した有機層33及び無機層34を含む封止構造を含むことができ、前記封止構造は、少なくとも一つ以上の有機層33及び少なくとも一つ以上の無機層34を含み、有機層33及び無機層34が繰り返して積層され得る。例えば、前記有機電子装置は、基板/有機電子素子/無機層/(有機層/無機層)nの構造を有することができ、前記nは、1~100の範囲内の数であってもよい。
図1は、nが1であるときを例示的に示した断面図である。
【0068】
一つの具体例で、少なくとも一つ以上の有機層及び少なくとも一つ以上の無機層を含む封止構造36を含み、前記封止構造上に形成されるタッチセンサー37を含むことができる。
【0069】
一具体例で、タッチセンサー37は、封止構造36上に直接形成され得る。すなわち、タッチセンサー37と封止構造36の間に粘着層又は接着層のような別途の層が介在されず、タッチセンサー37と封止構造36は、互いに直接的に接する構造であってもよい。このような積層構造をTOE(Touch On Encapsulation)構造と称することができる。このようなTOE構造を有することによって、従来に比べて有機電子装置の厚さを減少させ得る。
【0070】
一方、有機電子装置の薄形化に従ってタッチセンサー37用電極(すなわち、導電層)とタッチパネルと接した有機電子素子用電極の間の間隔が狭くなるので、これらの間で寄生電流が発生するようになってタッチセンサーの感度が低くなる問題が発生し得る。したがって、TOE構造では、特にタッチ感度が低くなることを防止するために低誘電率を有する封止材用有機層を要求するので、本出願では、このような必要性によって密封材組成物を提供することとなった。
【0071】
タッチセンサー37は、ユーザーとの接触を通じて得られた入力情報を認識できる装置を意味するものであって、関連された技術分野において知られているセンサーであってもよい。例えば、前記センサーは、ユーザーの身体接触部位(例えば、手)から発生する静電気とそれによる電流変化に基づいてタッチを認識する静電容量式センサー;又はユーザーが加えた圧力によってタッチセンサーの上板と下板の伝導性層が接触しながら発生する電気容量変化に基づいてタッチを認識する減圧式センサーであってもよい。各方式でユーザーの接触を認識できるようにするセンサーの構成は、関連技術分野で公知のものであってもよい。
【0072】
一つの例示で、前記タッチセンサー37は、一面又は両面に導電層(図示せず)を含むことができる。前記導電層の材料は、特に制限されず、例えば、ITOのような透明性導電フィルムや金属ナノワイヤなどが用いられ得る。前記導電層は、電気が流れるチャンネルと電気が流れない非チャンネル領域を有することができる。このような領域は、蝕刻又はフォトリソグラフィーなどの方法を通じて形成され得る。
【0073】
一つの例示で、前記有機電子装置3は、最上部面にカバー基材(図示せず)をさらに含むことができる。すなわち、本発明による有機電子装置3は、封止構造36、タッチセンサー37、カバー基材を順に含むことができる。このとき、カバー基材とタッチセンサーを通称してタッチパネルと称することができる。前記タッチパネル上に封止材が位置してTOE構造を具現することができる。
【0074】
前記カバー基材は、例えば、可視光に対する透過率が80%以上である場合のように、透光性を有することができる。透光性を有する場合、前記カバー基材が含む材料の種類は、特に制限されない。例えば、前記カバー基材は、高分子樹脂又はガラス成分を含むことができる。一つの例示で、フレキシブル特性の付与が必要な場合、前記カバー基材は、高分子樹脂を含むことができる。特に制限されないが、例えば、前記カバー基材は、例えば、PC(Polycarbonate)、PEN(poly(ethylene naphthalate))又はPET(poly(ethylene terephthalate))のようなポリエステルフィルム;PMMA(poly(methylmethacrylate)のようなアクリルフィルム、又はPE(polyethylene)又はPP(polypropylene)のようなポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;又はポリアミドフィルムなどを含むことができる。
【0075】
<有機電子装置の製造方法>
【0076】
また、本出願は、有機電子装置の製造方法に関する。
【0077】
一つの例示で、前記製造方法は、上部に有機電子素子32が形成された基板31上に上述した密封材組成物が前記有機電子素子32の前面を密封するように有機層33を形成する段階を含むことができる。
【0078】
上記で、有機電子素子32の基板31として、例えば、ガラス又は高分子フィルムのような基板31上に真空蒸着又はスパッタリングなどの方法で反射電極又は透明電極を形成し、前記反射電極上に有機材料層を形成して製造され得る。前記有機材料層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層及び/又は電子輸送層を含むことができる。引き続き、前記有機材料層上に第2電極をさらに形成する。第2電極は、透明電極又は反射電極であってもよい。
【0079】
本出願の製造方法は、前記基板31上に形成された第1電極、有機材料層及び第2電極上に無機層35を形成する段階をさらに含むことができる。その後、前記基板31上に前記有機電子素子32を前面カバーするように上述した有機層33を適用する。このとき、前記有機層33を形成する段階は、特に限定されず、前記基板31の前面に上述した密封材組成物をインクジェット印刷(Inkjet)、グラビアコーティング(Gravure)、スピンコーティング、スクリーン印刷又はリバースオフセットコーティング(Reverse Offset)などの工程を用いることができる。
【0080】
また、前記製造方法は、前記有機層に光を照射する段階をさらに含むことができる。本発明では、有機電子装置を封止する有機層に対して硬化工程を行うこともできるが、このような硬化工程は、例えば、加熱チャンバ又はUVチャンバで進行され得、好ましくは、UVチャンバで進行され得る。一つの例示で、上述した密封材組成物をインクジェット印刷方式で塗布し、光の照射で塗布された密封材組成物の架橋を誘導して有機層を形成することができ、これは上述したように、250~450nmの波長範囲及び300~6,000mJ/cm2の光量範囲で光を照射して有機層を形成することができる。
【0081】
本出願の製造方法は、前記有機層33上に無機層34を形成する段階をさらに含むことができる。前記無機層34を形成する段階は、当業界の公知の方法が用いられ得、上述した無機層(
図1の35)形成方法と同一であるか、異なっていてもよい。
【0082】
また、前記有機層33又は無機層(35、34)、すなわち、封止構造36上にタッチセンサー37を配置する段階を追加することができる。
【発明の効果】
【0083】
上述したように、本発明の実施例による密封材組成物は、隣接するタッチセンサーのタッチ感度を改善し、外部環境に対する優れた保護機能を提供することができる。しかし、本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及しなかったまた他の効果は、下の記載から当業者に明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】本発明の一つの例示による有機電子装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例をより詳細に説明する。本発明を説明するにおいて、全体的な理解を容易にするために図面上の同一な構成要素に対しては同一な参照符号を用い、同一な構成要素に対する重複説明は省略する。
【0086】
<実験例>
【0087】
1.組成物分極率
【0088】
組成物分極率は、前記密封材組成物を成すそれぞれの「ラジカル硬化性化合物の化合物分極率」と「密封材組成物100重量部に対する当該ラジカル硬化性化合物の重量部(すなわち、密封材組成物に対する当該ラジカル硬化性化合物の重量割合)」を掛けた値の総和であり、前記化合物分極率は、下記一般式1で計算された。
【0089】
すなわち、密封材組成物がラジカル硬化性化合物(X)、ラジカル硬化性化合物(Y)及びラジカル硬化性化合物(Z)からなる場合、組成物分極率は、(X化合物の分極率*密封材組成物に対するX化合物の重量割合)+(Y化合物の分極率*密封材組成物に対するY化合物の重量割合)+(Z化合物の分極率*密封材組成物に対するZ化合物の重量割合)で計算され得る。ここで、硬化性化合物の重量割合を計算するとき、密封材組成物内に含まれた全ての組成の重量総和を基準として計算したものであって、ラジカル硬化性化合物だけでなく光開始剤や界面活性剤などをすべて含んで計算する。
【0090】
[一般式1]
【0091】
化合物分極率=(当該ラジカル硬化性化合物の分子構造内に含まれた炭素の個数と酸素の個数を合わせた値)/(当該ラジカル硬化性化合物の分子構造内に含まれた炭素の個数から酸素の個数を引いた値)
【0092】
2.硬化率
【0093】
実施例及び比較例によって製造された密封材組成物を洗浄されたBare glass上にインクジェットコーティングし、N2雰囲気でLED UVランプを用いて1,000mJ/cm2の光量で硬化を進行して10μm厚さの有機層を形成した。その後、Cary 5660 FT-IR(製造社Agilent)装備で組成物と硬化物である有機層のピークを測定し、1420cm-1領域の積分値を通じて硬化率を測定した。
【0094】
硬化率(%)=(1-1420cm-1領域の有機層積分値/1420cm-1領域の組成物積分値)X100
【0095】
3.誘電率
【0096】
洗浄されたBare glass上にAlプレート(Conductive plate)を150nmで蒸着した。前記蒸着されたAlプレート面に実施例及び比較例で製造した密封材組成物をインクジェットコーティングし、コーティングされた組成物に対してLED UVランプを通じて1,000mJ/cm2の光量で硬化を進行して10μm厚さの有機層を形成した。前記有機層上に再びAlプレート(Conductive plate)を150nmで蒸着して試験片を製造した。その後、Impedence/gain-phase測定器HP 4194Aを利用して250kHz及び25℃条件で製造された試験片の誘電率を測定した。本出願で誘電率は、真空であるときの誘電率を1としたとき、前記真空での誘電率に対する相対値(割合)を意味することができる。
【0097】
<実施例>
【0098】
実施例1~3
【0099】
下記表1による組成及び含量(組成物100重量部を基準としてそれぞれの重量部を示す)を準備し、25℃で3時間以上混合して実施例1~3による組成物を製造した。
【0100】
比較例1~3
【0101】
下記表1による組成及び含量(組成物100重量部を基準としてそれぞれの重量部を示す)を準備し、25℃で3時間以上混合して比較例1~3による組成物を製造した。
【0102】
【0103】
下記表2は、前記実施例及び比較例による実験例のデータを整理したものである。
【0104】
【0105】
以上、実施例を参照して説明したが、該当技術分野の熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載した本発明の思想及び領域から脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更が可能であることを理解できるであろう。
【符号の説明】
【0106】
3:有機電子装置
31:基板
32:有機電子素子
36:封止構造
35:無機層
33:有機層
34:無機層
37:タッチセンサー