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特許7601334変性共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/00 20060101AFI20241210BHJP
   C08C 19/42 20060101ALI20241210BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20241210BHJP
   C08F 236/10 20060101ALI20241210BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241210BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08C19/00
C08C19/42
C08F36/04
C08F236/10
C08K3/013
C08L15/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021548573
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 KR2020013373
(87)【国際公開番号】W WO2021066543
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-08-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121197
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ロ-ミ
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ミン-シク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ノ-マ
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】▲吉▼澤 英一
【審判官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-107141(JP,A)
【文献】特開2015-218284(JP,A)
【文献】特開2009-227858(JP,A)
【文献】国際公開第2008/013090(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C08C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記数学式1で表される、100℃で測定されたムーニー大緩和面積(MLRA)が1500MU-s以上であり、
少なくとも一末端にアミノアルコキシシラン系変性剤およびエポキシ系変性剤由来の官能基を含む、変性共役ジエン系重合体。
【数5】
前記数学式1中、
Aは、ムーニー大緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータ作動を停止させてから1秒後のムーニー切片であり、
aは、ムーニー粘度の変化の傾きの絶対値であり、
oは、ムーニー緩和開始時点(1秒)であり、
fは、ムーニー緩和完了時点(120秒)である。
【請求項2】
前記ムーニー大緩和面積は1500~4000MU-sである、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項3】
前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、下記化学式1~化学式3で表される化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物である、請求項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【化22】
前記化学式1中、
a1およびRa4は、互いに独立して、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
a2およびRa3は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
a5は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、もしくは3置換のアルキルシリル基、または-N[Ra6Si(ORa7n3(Ra83-n32であり、ここで、Ra6は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、Ra7およびRa8は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、n3は1~3の整数であり、
1は1~3の整数であり、
2は0~2の整数であり、
【化23】
前記化学式2中、
b2~Rb4は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
b5~Rb8は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
b12~Rb14は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
b15~Rb18は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
1、m2、m3、およびm4は、互いに独立して、1~3の整数であり、
【化24】
前記化学式3中、
e1およびRe2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
e3~Re6は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Re7SiRe8e9e10であり、Re3~Re6のうち少なくとも1つは、-Re7SiRe8e9e10であり、ここで、Re7は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
e8~Re10は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルコキシ基であり、Re8~Re10のうち少なくとも1つは、炭素数1~10のアルコキシ基である。
【請求項4】
前記エポキシ系変性剤は、下記化学式4~化学式7で表される化合物からなる群から選択される1つ以上の化合物である、請求項またはに記載の変性共役ジエン系重合体。
【化25】
前記化学式4中、
d1~Rd3は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Rd4d5であり、Rd1~Rd3のうち少なくとも1つは、-Rd4d5であり、ここで、Rd4は、ヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~10のアルキレン基であり、Rd5は、エポキシ基であり、
【化26】
前記化学式5中、
e1およびRe2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
e3~Re6は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Re7e8であり、Re3~Re6のうち少なくとも1つは、-Re7e8であり、ここで、Re7は、N、S、およびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~10のアルキレン基であり、Re8は、エポキシ基であり、
【化27】
前記化学式6中、
Xは、OまたはSであり、
f1およびRf2は、互いに独立して、単結合であるか、または炭素数1~10のアルキレン基であり、
f3~Rf8は、互いに独立して、水素、炭素数1~15のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数7~14のアラルキル基、または-Rf9f10であり、Rf3~Rf8のうち少なくとも1つは、-Rf9f10であり、ここで、Rf9は、ヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~12のアルキレン基であり、Rf10は、エポキシ基であり、
【化28】
前記化学式7中、
g1~Rg4は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、または-Rg5ORg6であり、Rg1~Rg4のうち少なくとも1つは、-Rg5ORg6であり、ここで、Rg5は、単結合であるか、または炭素数1~10のアルキレン基であり、Rg6は、炭素数3~10のエポキシアルキル基であり、
Yは、CまたはNであり、YがNである場合、Rg4は存在しない。
【請求項5】
前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000g/mol~2,000,000g/molであり、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~3,000,000g/molであり、分子量分布(PDI)が1.5以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項6】
前記共役ジエン系重合体は、
共役ジエン系単量体の単独重合体、または
共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体の共重合体である、請求項1~のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項7】
炭化水素溶媒中で、重合開始剤の存在下、共役ジエン系単量体、または芳香族ビニル系単量体および共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(S1)と、
前記(S1)ステップで製造された活性重合体と第1変性剤および第2変性剤を反応またはカップリングさせるステップ(S2)と、を含み、
前記第1変性剤はアミノアルコキシシラン系変性剤であり、
第2変性剤はエポキシ系変性剤である、請求項1~のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記重合開始剤は、単量体100gに対して0.01mmol~10mmolを用いる、請求項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記第1変性剤および第2変性剤は、順次あるいは一括で投入して活性重合体と反応またはカップリングさせるものであり、
前記第1変性剤および第2変性剤は10:1~5:1のモル比で用いる、請求項またはに記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記変性剤の総使用量は、単量体の総100gに対して0.01mmol~10mmolであり、
前記変性剤の総使用量は、第1変性剤および第2変性剤の合計量である、請求項のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体および充填剤を含むゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~200重量部の充填剤を含む、請求項11に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年09月30日付けの韓国特許出願第10-2019-0121197号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に記載された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、加工性に優れながらも、引張強度および粘弾性特性に優れた、変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、回転抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの回転抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などによって分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であるとともに、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられている。
【0006】
かかる溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として用いられる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させて走行抵抗および制動力のようなタイヤに要求される物性を調節することができるだけでなく、ガラス転移温度を適宜調節することで、燃料消費を低減することができる。前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして用いている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
一方、前記SBRまたはBRの重合は、回分式(batch)または連続式重合により実施することができるが、回分式重合による場合は、製造された重合体の分子量分布が狭いため物性の改善面では長所があるが、生産性が低く、加工性が劣悪であるという問題があり、連続式重合による場合は、重合が連続的に行われて生産性に優れるとともに加工性の改善面では長所があるが、分子量分布が広いため物性が劣悪であるという問題がある。そこで、SBRまたはBRの製造時、生産性、加工性、および物性を何れも同時に改善させるための研究が求められ続けている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US4397994 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、高分子量を有しながらも、調節されたムーニー大緩和面積を有しており、ゴム組成物の配合後、ムーニー粘度が低いためタイヤの製造時に加工性に優れながらも、引張特性などの物性に優れるとともに、粘弾性特性に優れた、変性共役ジエン系重合体、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、下記数学式1で表される、100℃で測定されたムーニー大緩和面積(MLRA)が1500MU-s以上である、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0011】
【数1】
【0012】
前記数学式1中、
Aは、ムーニー大緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータ作動を停止させてから1秒後のムーニー切片であり、
aは、ムーニー緩和率であり、
oは、ムーニー緩和開始時点であり、
fは、ムーニー緩和完了時点である。
【0013】
また、本発明は、炭化水素溶媒中で、重合開始剤の存在下、共役ジエン系単量体、または芳香族ビニル系単量体および共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記(S1)ステップで製造された活性重合体と第1変性剤および第2変性剤を反応またはカップリングさせるステップ(S2)と、を含み、前記第1変性剤はアミノアルコキシシラン系変性剤であり、第2変性剤はエポキシ系変性剤である、変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体および充填剤を含むゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、ムーニー大緩和面積が1500MU-s以上の値を有し、高分子量を有するにもかかわらず、ゴム組成物の配合後にムーニー粘度が低い値を有することができる。これにより、加工性に優れながらも、引張特性および粘弾性特性に優れることができる。
また、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、少なくとも一側末端に2種の変性剤由来の官能基を含むことで、引張特性および粘弾性特性がさらに向上することができる。
【0015】
また、本発明に係る変性共役ジエン系重合体の製造方法は、活性重合体と第1変性剤および第2変性剤をともに反応またはカップリングさせるステップを含むことで、前述したムーニー大緩和面積に調節され、分子中に第1および第2変性剤由来の官能基を含む、加工性、引張特性、および粘弾性特性に優れた、上記の変性共役ジエン系重合体を容易に製造することができる。
【0016】
さらに、本発明に係るゴム組成物は、上記のムーニー大緩和面積を有する変性共役ジエン系重合体を含むことで、加工性、引張特性、および粘弾性特性に優れた成形品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0018】
[用語の定義]
本発明において、用語「ムーニー大緩和面積(MLRA、Mooney Large Relaxation Area)」は、溶融した重合体中の鎖緩和の測定値(尺度)であり、加えられた変形の除去後に、さらに長いまたは分岐化した重合体鎖がさらに多いエネルギーを貯蔵することができ、緩和にさらに長い時間を必要とするということを示唆する。例えば、超高分子量または長鎖分岐化重合体のムーニー大緩和面積は、同一なムーニー粘度を有する重合体との比較時、広いか狭い分子量の重合体より大きくてもよい。
【0019】
本発明において、用語「置換」は、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換されたことを意味し、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換される場合、前記官能基、原子団、または化合物中に存在する水素の個数に応じて、1個または2個以上の複数の置換基が存在してもよく、複数の置換基が存在する場合、それぞれの置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0020】
本発明において、用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基;イソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、およびネオペンチル(neo-pentyl)などの分岐状アルキル基;および環状の飽和炭化水素、または不飽和結合を1個または2個以上含む環状の不飽和炭化水素を全て含む意味であり得る。
【0021】
本発明において、用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどのような2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
本発明において、用語「シクロアルキル基(cycloalkyl group)」は、環状の飽和炭化水素を意味し得る。
【0022】
本発明において、用語「アリール基(aryl group)」は、芳香族炭化水素を意味し、また、1個の環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2個以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)を両方とも含む意味であり得る。
【0023】
本発明において、用語「複素環基」は、環状の飽和炭化水素、または不飽和結合を1個以上含む環状の不飽和炭化水素であり、炭化水素中の炭素原子が1個以上のヘテロ原子で置換されたものであってもよく、ここで、ヘテロ原子は、N、O、およびSから選択されたものであってもよい。
【0024】
本発明において、用語「1価の炭化水素基」は、炭化水素基から誘導された1価の置換基を示すものであり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和結合を1個以上含むシクロアルキル基、およびアリール基などの炭素と水素が結合された1価の原子団を示し、前記1価の原子団は、その結合の構造に応じて、直鎖状または分岐状構造を有してもよい。
【0025】
本発明において、用語「2価の炭化水素基」は、炭化水素基から誘導された2価の置換基を示すものであり、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、不飽和結合を1個以上含むシクロアルキレン基、およびアリーレン基などの炭素と水素が結合された2価の原子団を示し、前記2価の原子団は、その結合の構造に応じて、直鎖状または分岐状構造を有してもよい。
【0026】
本発明において、用語「単結合」は、別の原子または分子団を含まない、単一共有結合自体を意味し得る。
本発明において、用語「由来の単位」および「由来の官能基」は、ある物質に起因した成分、構造、またはその物質自体を意味し得る。
【0027】
[測定方法および条件]
本発明において、「重量平均分子量(Mw)」、「数平均分子量(Mn)」、および「分子量分布(MWD)」は、GPC(Gel permeation chromatograph)分析により分子量を測定し、分子量分布曲線を得て測定したものである。また、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算する。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社製)カラム2本とPLgel Mixed-C(Polymer Laboratories社製)カラム1本を組み合わせて用い、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard Material)としてPS(polystyrene)を用いて実施する。GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を混合して製造する。
【0028】
変性共役ジエン系重合体
本発明は、高分子量の重合体が形成されるにもかかわらず、ゴム組成物の配合後、ムーニー粘度が低いため加工性に優れながらも、引張特性および粘弾性特性に優れた、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0029】
本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、下記数学式1で表される、100℃で測定されたムーニー大緩和面積(MLRA)が1500MU-s以上であることを特徴とする。
【0030】
【数2】
【0031】
前記数学式1中、
Aは、ムーニー大緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータ作動を停止させてから1秒後のムーニー切片であり、
aは、ムーニー緩和率であり、
oは、ムーニー緩和開始時点であり、
fは、ムーニー緩和完了時点である。
【0032】
ここで、ムーニー緩和開始時点は、ロータ作動を停止させてから1秒後の時点を示し、これは、ムーニートルクがk値を有する際の時点を意味る。また、ムーニー緩和完了時点は、ムーニー緩和測定試験において、ムーニー緩和測定が完了した時点を示。すなわち、tf-toは、ムーニー緩和時間を示
【0033】
また、本発明の一実施形態によると、前記toは1秒であってもよく、tfは80秒~150秒であってもよい。換言すると、本発明の一実施形態に係るムーニー大緩和面積は、1秒から、80秒~150秒までのムーニートルク-緩和時間曲線下の積分面積であってもよい。また、前記tfは、具体的に、90秒~130秒、または100秒~120秒であってもよい。
【0034】
一方、一般的に重合体の分子量とムーニー粘度物性は、比例関係にある物性であって、互いに同一な傾向性を示し、高分子量重合体の場合、ムーニー粘度も高く、そこで加工性は良くないという問題がある。しかし、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、ムーニー大緩和面積が1500MU-s以上の値を有することで、加工性が著しく改善されるという効果がある。
【0035】
本発明の変性共役ジエン系重合体において、ムーニー大緩和面積が1500MU-s以上であることは、加工性に優れながらも、引張特性および粘弾性特性に優れた特性を有するようにする1つの技術的手段であり、前記ムーニー大緩和面積が1500MU-s以上であると、本発明が目的とする効果を発現することができる。但し、前記ムーニー大緩和面積が非常に大きい値を有する場合には加工性が低下し得るし、より優れた加工性を有し、且つ、引張特性および粘弾性特性が何れもバランスよく優れた特性を発現するようにする面で、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体のムーニー大緩和面積は4000MU-s以下であってもよい。
【0036】
具体的に、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、ムーニー大緩和面積が1500MU-s以上、好ましくは1500~4000MU-s、より好ましくは1800~3000MU-s、2000~3000MU-s、2000~2800MU-s、または2400~2800MU-sであってもよい。前記ムーニー大緩和面積は、時間に応じたムーニートルクグラフをプロットし、前記数学式1から算出する値であってもよい。この際、前記ムーニー粘度(MV、ML1+4、@100℃)は、MV-2000(ALPHA Technologies社製)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定した。この際、用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した値であってもよい。
【0037】
また、ムーニー粘度の測定後、ロータを停止し、トルクが解除されるにつれて現れるムーニー粘度の変化の傾き値を測定し、その絶対値であるムーニー緩和率(a)を得ることができる。また、ムーニー大緩和面積は、ロータが停止して1秒後(to)から120秒(tf)間のムーニー緩和曲線の積分値から得ることができ、この積分値は、前記数学式1から算出することができる。前記ムーニー大緩和面積が上記の範囲を満たす場合に、ゴム組成物の配合時に加工性が改善されるという効果を得ることができる。特にムーニー粘度が70以上、好ましくは80以上の条件下でムーニー大緩和面積が前記範囲を満たす場合、さらに大きい加工性の改善効果を得ることができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体の単独重合体;または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体の共重合体であってもよく、ここで、前記共役ジエン系単量体の単独重合体は、共役ジエン系単量体が重合して形成される共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体を意味し、前記共重合体は、共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体が共重合して形成される共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体を意味し得る。前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0039】
前記芳香族ビニル系単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)-α-methylstyrene)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0040】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体に由来した繰り返し単位であってもよく、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。前記変性共役ジエン系重合体がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、前記変性共役ジエン系重合体は、ジエン系単量体由来の繰り返し単位を0超過重量%~1重量%、0超過重量%~0.1重量%、0超過重量%~0.01重量%、または0超過重量%~0.001重量%で含んでもよい。この範囲内である場合、ゲルの生成を防止するという効果がある。
【0041】
また、前記変性共役ジエン系重合体が上記の共重合体である場合、前記共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、この場合、各物性間のバランスに優れるという効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体をなす繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
また、本発明に係る前記変性共役ジエン系重合体は、少なくとも一側末端にアミノアルコキシシラン系変性剤由来の官能基およびエポキシ系変性剤由来の官能基を含んでもよい。
【0042】
従来、変性共役ジエン系重合体は、充填剤親和性を改善させ、且つ、粘弾性特性を向上させるために、共役ジエン系重合体の末端をアミノアルコキシシラン系変性剤で変成させて製造された。しかし、アミノアルコキシシラン系変性剤で変成された変性共役ジエン系重合体は、粘弾性特性は改善されるものの、引張特性および加工性が低下するという問題がある。
【0043】
その反面、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、アミノアルコキシシラン系変性剤由来の官能基およびエポキシ系変性剤由来の官能基を同時に含むことで、引張特性および加工性に優れながらも、粘弾性特性が著しく改善されるという効果がある。
【0044】
他の例として、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、一側末端にアミノアルコキシシラン系変性剤由来の官能基を含む少なくとも1つの第1重合体鎖;および一側末端にエポキシ系変性剤由来の官能基を含む少なくとも1つの第2重合体鎖を含んでもよい。
【0045】
一方、前記変性剤は、具体的な例として、シリカ親和性変性剤であってもよい。前記シリカ親和性変性剤は、変性剤として用いられる化合物中にシリカ親和性官能基を含有する変性剤を意味し、前記シリカ親和性官能基は、充填剤、特にシリカ系充填剤との親和性に優れ、シリカ系充填剤および変性剤由来の官能基の間の相互作用が可能な官能基を意味し得る。
【0046】
具体的に、本発明の一実施形態によると、前記アミノアルコキシシラン系変性剤は、下記化学式1~化学式3で表される化合物からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0047】
【化1】
【0048】
前記化学式1中、
a1およびRa4は、互いに独立して、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
a2およびRa3は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、
【0049】
a5は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または-N[Ra6Si(ORa7n3(Ra83-n32であり、ここで、Ra6は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、Ra7およびRa8は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、n3は1~3の整数であり、
1は1~3の整数であり、
2は0~2の整数である。
【0050】
【化2】
【0051】
前記化学式2中、Rb2~Rb4は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、Rb5~Rb8は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、Rb13およびRb14は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、Rb15~Rb18は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、m1、m2、m3、およびm4は、互いに独立して、1~3の整数である。
【0052】
【化3】
【0053】
前記化学式3中、Re1およびRe2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、Re3~Re6は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Re7SiRe8e9e10であり、Re3~Re6のうち少なくとも1つは、-Re7SiRe8e9e10であり、ここで、Re7は、単結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、Re8~Re10は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルコキシ基であり、Re8~Re10のうち少なくとも1つは、炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0054】
具体的に、前記化学式1中、Ra1およびRa4は、互いに独立して、単結合または炭素数1~5のアルキレン基であり、Ra2およびRa3は、互いに独立して、炭素数1~5のアルキル基であり、Ra5は、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基、または-N[Ra6Si(ORa7n3(Ra83-n32であり、ここで、Ra6は、単結合または炭素数1~5のアルキレン基であり、Ra7およびRa8は、互いに独立して、炭素数1~5のアルキル基であり、n3は2または3の整数であり、n1は2または3の整数であり、n2は0~2の整数であってもよい。
【0055】
より具体的に、前記化学式1で表される化合物は、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(dimethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(triethoxysilyl)propan-1-amine)、トリ(トリメトキシシリル)アミン(tri(trimethoxysilyl)amine)、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(tri-(3-(trimethoxysilyl)propyl)amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-1,1,1-トリメチルシランアミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-1,1,1-trimethlysilanamine)、およびN1,N1,N3,N3-テトラキス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-ジアミン(N1,N1,N3,N3-tetrakis(3-(trimethoxysilyl)propyl)propane-1,3-diamine)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0056】
また他の例として、前記化学式2中、Rb2~Rb4は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキレン基であり、Rb5~Rb8は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基であり、Rb13およびRb14は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキレン基であり、Rb15~Rb18は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基であり、m1、m2、m3、およびm4は、互いに独立して、1~3の整数である。
【0057】
より具体的に、前記化学式2で表される化合物は、3,3’-(ピペラジン-1,4-ジイル)ビス(N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)(3,3’-(piperazine-1,4-diyl)bis(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine))であってもよい。
【0058】
また他の例として、前記化学式3中、Re1およびRe2は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキレン基であり、Re3~Re6は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基または-Re7SiRe8e9e10であり、Re3~Re6のうち少なくとも1つは、-Re7SiRe8e9e10であり、ここで、Re7は、単結合または炭素数1~6のアルキレン基であり、Re8~Re10は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基であり、Re8~Re10のうち少なくとも1つは、炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0059】
より具体的に、前記化学式3で表される化合物は、N,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン))ビス(3-(トリトキシシリル)-N-(3-(トリトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)(N,N’-(cyclohexane-1,3-diylbis(methylene))bis(3-(triethoxysilyl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine))であってもよい。
【0060】
本発明の一実施形態によると、前記エポキシ系変性剤は、下記化学式4~化学式7で表される化合物の中から選択されてもよい。
【0061】
【化4】
【0062】
前記化学式4中、
d1~Rd3は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Rd4d5であり、Rd1~Rd3のうち少なくとも1つは、-Rd4d5であり、ここで、Rd4は、ヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~10のアルキレン基であり、Rd5は、エポキシ基であり、
【0063】
【化5】
【0064】
前記化学式5中、
e1およびRe2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、
e3~Re6は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Re7e8であり、Re3~Re6のうち少なくとも1つは、-Re7e8であり、ここで、Re7は、N、S、およびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~10のアルキレン基であり、Re8は、エポキシ基であり、
【0065】
【化6】
【0066】
前記化学式6中、
Xは、OまたはSであり、
f1およびRf2は、互いに独立して、単結合であるか、または炭素数1~10のアルキレン基であり、
【0067】
f3~Rf8は、互いに独立して、水素、炭素数1~15のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数7~14のアラルキル基、または-Rf9f10であり、Rf3~Rf8のうち少なくとも1つは、-Rf9f10であり、ここで、Rf9は、ヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~12のアルキレン基であり、Rf10は、エポキシ基であり、
【0068】
【化7】
【0069】
前記化学式7中、
g1~Rg4は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、または-Rg5ORg6であり、Rg1~Rg4のうち少なくとも1つは、-Rg5ORg6であり、ここで、Rg5は、単結合であるか、または炭素数1~10のアルキレン基であり、Rg6は、炭素数3~10のエポキシアルキル基であり、
Yは、CまたはNであり、YがNである場合、Rg4は存在しない。
【0070】
具体的に、前記化学式4中、Rd1~Rd3は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基、または-Rd4d5であり、Rd1~Rd3のうち少なくとも1つは、-Rd4d5であり、ここで、Rd4は、ヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~6のアルキレン基であり、Rd5は、エポキシ基であり、前記ヘテロ原子は、O(酸素原子)であってもよい。
【0071】
より具体的に、前記化学式2で表される化合物は、下記化学式4-1で表される化合物であってもよい。
【0072】
【化8】
【0073】
また、前記化学式5中、Re1およびRe2は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキレン基であり、Re3~Re6は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基または-Re7e8であり、Re3~Re6のうち少なくとも1つは、-Re7e8であり、ここで、Re7は、ヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~6のアルキレン基であり、Re8は、エポキシ基であり、前記ヘテロ原子は、Oであってもよい。
【0074】
より具体的に、前記化学式5で表される化合物は、下記化学式5-1で表される化合物であってもよい。
【0075】
【化9】
【0076】
また、前記化学式6中、Xは、OまたはSであり、Rf1およびRf2は、互いに独立して、単結合であるか、または炭素数1~6のアルキレン基であり、Rf3~Rf8は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または-Rf9f10であり、Rf3~Rf8のうち少なくとも1つは、-Rf9f10であり、ここで、Rf9は、ヘテロ原子を含むかまたは含まない炭素数1~6のアルキレン基であり、Rf10は、エポキシ基であり、前記ヘテロ原子は、Oであってもよい。
【0077】
より具体的に、前記化学式6で表される化合物は、下記化学式6-1または化学式6-2で表される化合物であってもよい。
【0078】
【化10】
【0079】
【化11】
【0080】
また、前記化学式7中、Rg1~Rg4は、互いに独立して、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または-Rg5ORg6であり、Rg1~Rg4のうち少なくとも1つは、-Rg5ORg6であり、ここで、Rg5は、単結合であるか、炭素数1~6のアルキレン基であり、Rg6は、炭素数3~6のエポキシアルキル基であり、Yは、CまたはNであり、YがNである場合、Rg4は存在しない。
【0081】
より具体的に、前記化学式7で表される化合物は、下記化学式7-1~化学式7-4で表される化合物の中から選択されてもよい。
【0082】
【化12】
【0083】
【化13】
【0084】
【化14】
【0085】
【化15】
【0086】
また他の例として、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、変性剤由来の官能基が含まれている一側末端の他に、他側末端に変性開始剤由来の官能基を含んでもよく、ここで、前記変性開始剤は、N-官能基含有化合物と有機金属化合物との反応生成物であってもよい。
【0087】
具体的に、前記N-官能基含有化合物は、置換基で置換または非置換のアミノ基、アミド基、アミノ基、イミダゾール基、ピリミジル基、または環状アミノ基を含むN-官能基を含む芳香族炭化水素化合物であってもよく、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシシリル基であってもよい。
【0088】
より具体的に、前記N-官能基含有化合物は、下記化学式8で表される化合物であってもよい。
【0089】
【化16】
【0090】
前記化学式8中、
1~R3は、互いに独立して、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;または炭素数3~30の複素環基であり、
【0091】
4は、単結合;置換基で置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換または非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0092】
5は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;または下記化学式8aまたは化学式8bで表される官能基であり、
【0093】
nは1~5の整数であり、R5のうち少なくとも1つは、下記化学式8aまたは化学式8bで表される官能基であり、nが2~5の整数である場合、複数のR5は互いに同一でも異なっていてもよく、
【0094】
【化17】
【0095】
前記化学式8a中、
6は、置換基で置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換または非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0096】
7およびR8は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基で置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、
【0097】
9は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;または炭素数3~30の複素環基であり、
Zは、N、O、またはSであり、ZがOまたはSである場合、R9は存在せず、
【0098】
【化18】
【0099】
前記化学式8b中、
10は、置換基で置換または非置換の炭素数1~20のアルキレン基;置換基で置換または非置換の炭素数5~20のシクロアルキレン基;または置換基で置換または非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、ここで、前記置換基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であり、
【0100】
11およびR12は、互いに独立して、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;または炭素数3~30の複素環基であるか、前記R11およびR12は、互いに連結され、Nとともに炭素数2~20の複素環基を形成する。
【0101】
より具体的に、前記化学式8で表される化合物は、化学式8中、R1~R3は、互いに独立して、水素;炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;または炭素数2~10のアルキニル基であり、R4は、単結合;または非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R5は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;または下記化学式8aまたは化学式8bで表される官能基であり、前記化学式8a中、R6は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R7およびR8は、互いに独立して、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R9は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数5~20のアリール基;または炭素数3~20の複素環基であり、前記化学式8b中、R10は、非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、R11およびR12は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;または炭素数3~20の複素環基であるか、R11およびR12は、互いに連結され、Nとともに炭素数2~20の複素環基を形成してもよい。
【0102】
さらに具体的に、前記化学式8で表される化合物は、下記化学式8-1~化学式8-3で表される化合物であってもよい。
【0103】
【化19】
【0104】
【化20】
【0105】
【化21】
【0106】
また、前記有機金属化合物は、有機アルカリ金属化合物であってもよく、例えば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、および有機セシウム化合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0107】
具体的に、前記有機金属化合物は、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0108】
また、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000g/mol~2,000,000g/mol、200,000g/mol~1,000,000g/mol、または400,000g/mol~800,000g/molであってもよく、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~3,000,000g/mol、400,000g/mol~2,000,000g/mol、または800,000g/mol~1,500,000g/molであってもよい。この範囲内である場合、回転抵抗およびウェットスキッド抵抗性に優れるという効果がある。また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布(PDI;MWD;Mw/Mn)が1.5以上または1.5~3.0であってもよい。この範囲内である場合、引張特性および粘弾性特性に優れるとともに、各物性間のバランスに優れるという効果がある。これと同時に、前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線がユニモーダル(unimodal(単峰性))形態を有するものであり、これは、連続式重合により重合された重合体に現れる分子量分布であり、変性共役ジエン系重合体が均一な特性を有することを意味し得る。すなわち、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、連続式重合により製造され、ユニモーダル形態の分子量分布曲線を有しながらも、分子量分布が1.5以上であってもよい。
【0109】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、100℃で測定されたムーニー緩和率(-S/R値)が0.5以下、0.4以下、または0.3以下であってもよく、ムーニー緩和率の下限値は、特に制限されず、例えば、0.1以上または0.2以上であってもよい。
【0110】
ここで、前記ムーニー緩和率は、同一量の変性(strain)に対する反応として現れるストレス(stress)の変化を示すものであり、ムーニー粘度計を用いて測定してもよい。具体的に、前記ムーニー緩和率は、Monsanto社製のMV2000EのLarge Rotorを用い、100℃およびRotor Speed 2±0.02rpmの条件で、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(platen)を作動させ、トルク(torque)を印加しながらムーニー粘度を測定し、その後、トルクが解除されるにつれて現れるムーニートルク変化の傾き値を測定して得た。
【0111】
一方、ムーニー緩和率は、当該重合体の分岐構造の指標として用いることができ、例えば、ムーニー粘度が同等な重合体を比較する場合、分岐が多いほど、ムーニー緩和率が小さくなるため、分岐度の指標として用いることができる。
【0112】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ムーニー粘度(Mooney viscosity)が、100℃で、70以上、80~150、または80~120であってもよい。この範囲内である場合、加工性および生産性に優れるという効果がある。
【0113】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ビニルの含量が、5重量%以上、10重量%以上、または10重量%~60重量%であってもよい。ここで、前記ビニルの含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体とからなる共役ジエン系共重合体100重量%に対して、1,4-添加ではない、1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味し得る。
【0114】
前述したように、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、1500MU-s以上の高いムーニー大緩和面積を有してもよく、その上、一側末端に第1および第2変性剤由来の官能基をそれぞれ含む第1および第2重合体鎖を含んでもよい。一方、前記変性共役ジエン系重合体は、後述する製造方法により製造されることが上記の特徴を満たせるのに好ましいが、上記の特徴を全て満たす場合には、本発明が実現しようとする効果を達成することができる。
【0115】
変性共役ジエン系重合体の製造方法
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、炭化水素溶媒中で、重合開始剤の存在下、共役ジエン系単量体、または芳香族ビニル系単量体および共役ジエン系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記(S1)ステップで製造された活性重合体と第1変性剤および第2変性剤を反応またはカップリングさせるステップ(S2)と、を含み、前記第1変性剤はアミノアルコキシシラン系変性剤であり、第2変性剤はエポキシ系変性剤であってもよい。
前記アミノアルコキシシラン系変性剤およびエポキシ系変性剤は前述したとおりである。
【0116】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0117】
前記重合開始剤は、単量体1.0当量に対して、0.1当量~3.0当量を用いてもよく、好ましくは0.1当量~2.0当量、より好ましくは0.5当量~1.5当量であってもよい。
【0118】
また他の例として、前記重合開始剤は、単量体の総100gに対して、0.01mmol~10mmol、0.05mmol~5mmol、0.1mmol~2mmol、0.1mmol~1mmol、または0.15~0.8mmolで用いてもよい。ここで、前記単量体の総100gは、共役ジエン系単量体であるか、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体の合計量を示してもよい。
【0119】
一方、前記重合開始剤は、有機金属化合物であってもよく、例えば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、および有機セシウム化合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0120】
具体的に、前記有機金属化合物は、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
また他の例として、前記重合開始剤は、変性開始剤であってもよく、前記変性開始剤は、N-官能基含有化合物と前記有機金属化合物との反応生成物であってもよい。
【0121】
前記(S1)ステップの重合は、一例として、アニオン重合であってもよく、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応により、重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。また、前記(S1)ステップの重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。前記定温重合は、重合開始剤を投入した後、任意に熱を加えずにそれ自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、前記重合開始剤を投入した後、任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、前記重合開始剤を投入した後、熱を加えて熱を増加させるか熱を奪って重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味し得る。
【0122】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの重合は、前記共役ジエン系単量体の他に、炭素数1~10のジエン系化合物をさらに含んで実施されてもよい。この場合、長時間の運転時、反応器の壁面にゲルが形成されるのを防止するという効果がある。前記ジエン系化合物は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。
【0123】
前記(S1)ステップの重合は、一例として、80℃以下、-20℃~80℃、0℃~80℃、0℃~70℃、または10℃~70℃の温度範囲で実施されてもよい。この範囲内である場合、重合体の分子量分布を狭く調節して、物性の改善に優れるという効果がある。
【0124】
前記(S1)ステップにより製造された活性重合体は、重合体アニオンと有機金属カチオンが結合された重合体を意味し得る。
前記(S1)ステップは、連続式重合方法またはバッチ式重合方法を適宜選択して行ってもよく、生産性および加工性を改善する面で、好ましくは、連続式重合方法で行ってもよい。
【0125】
本発明において、用語「重合物」は、(S1)ステップまたは(S2)ステップが完了して、活性重合体、または変性共役ジエン系重合体を得るに先立ち、(S1)ステップの実施中、各反応器内で重合が実施されている重合体形態の中間体を意味し、反応器内で重合が実施されている、重合転換率95%未満の重合体を意味し得る。
【0126】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップで製造された活性重合体の分子量分布(PDI、polydispersed index;MWD、molecular weight distribution;Mw/Mn)は1.5以上または1.3~3.0であってもよい。この範囲内である場合、加工性の改善に優れるという効果がある。
【0127】
一方、前記(S1)ステップの重合は、極性添加剤を含んで実施されてもよく、前記極性添加剤は、単量体の総100gに対して、0.001g~50g、0.001g~10g、または0.005g~0.1gの割合で添加してもよい。また他の例として、前記極性添加剤は、重合開始剤の総1mmolに対して、0.001g~10g、0.005g~5g、0.005g~4gの割合で添加してもよい。
【0128】
前記極性添加剤は、一例として、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、ターシャリー-ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)、および2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2-ethyl tetrahydrofurfuryl ether)からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)、または2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2-ethyl tetrahydrofurfuryl ether)であってもよい。前記極性添加剤を含む場合、共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる場合、これらの反応速度差を補うことで、ランダム共重合体を容易に形成できるように誘導するという効果がある。
【0129】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップの反応またはカップリングは、変性反応器において実施されてもよく、具体的に、活性重合体と第1変性剤および第2変性剤を反応またはカップリングさせて行ってもよい。ここで、前記第1変性剤と第2変性剤は、順次あるいは一括で投入して活性重合体と反応またはカップリングさせてもよく、前記第1変性剤および第2変性剤は、10:1~5:1または2:1~1:1のモル比で用いてもよい。
【0130】
この際、前記変性剤は、単量体の総100gに対して、0.01mmol~10mmolの量で用いてもよい。また他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップの重合開始剤1モルに対して、1:0.1~10、1:0.1~5、または1:0.1~1:3のモル比で用いてもよい。
【0131】
また、本発明の一実施形態によると、前記変性剤は、変性反応器に投入されてもよく、前記(S2)ステップは、変性反応器において実施されてもよい。また他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップで製造された活性重合体を、(S2)ステップを実施するための変性反応器に移送するための移送部に投入されてもよく、前記移送部内で活性重合体と変性剤の混合により反応またはカップリングが進行してもよい。
【0132】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前述した変性共役ジエン系重合体の特性を満たせる方法であり、上記のように、本発明が達成しようとする効果は、上記の特徴を満たした場合に達成可能であり、この他の重合条件の場合は多様に制御されることで、本発明に係る変性共役ジエン系重合体が有する物性を実現することができる。
【0133】
ゴム組成物
さらに、本発明は、上記の変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供する。
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を10重量%以上、10重量%~100重量%、または20重量%~90重量%の量で含んでもよい。この範囲内である場合、引張強度、耐摩耗性などの機械的物性に優れるとともに、各物性間のバランスに優れるという効果がある。
【0134】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体の他に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して、90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的な例として、前記他のゴム成分は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0135】
前記ゴム成分は、一例として、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-co-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0136】
前記ゴム組成物は、一例として、本発明の変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~200重量部、または10重量部~120重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、一例として、シリカ系充填剤であってもよく、具体的な例として、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよく、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ(wet grip)性の両立効果が最も優れた湿式シリカであってもよい。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボンブラック系充填剤をさらに含んでもよい。
【0137】
また他の例として、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性の改善のためのシランカップリング剤がともに用いられてもよい。具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0138】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、ゴム成分として、活性部位にシリカとの親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量は、通常の場合よりも低減されてもよい。これにより、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して、1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部で用いられてもよい。この範囲内である場合、カップリング剤としての効果が十分に発揮されながらも、ゴム成分のゲル化を防止するという効果がある。
【0139】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、加硫剤をさらに含んでもよい。前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。この範囲内である場合、加硫ゴム組成物の必要な弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性に優れるという効果がある。
【0140】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、酸化防止剤、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0141】
前記加硫促進剤としては、一例として、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が用いられてもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0142】
前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであり、一例として、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、引張強度および耐摩耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が用いられてもよい。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよい。この範囲内である場合、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止するという効果がある。
【0143】
前記酸化防止剤は、一例として、2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール、ジブチルヒドロキシトルエニル、2,6-ビス((ドデシルチオ)メチル)-4-ノニルフェノール(2,6-bis((dodecylthio)methyl)-4-nonylphenol)、または2-メチル-4,6-ビス((オクチルチオ)メチル)フェノール(2-methyl-4,6-bis((octylthio)methyl)phenol)であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0144】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0145】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐摩耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0146】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
さらに、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0147】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の形態に変形可能であり、本発明の範囲が、以下で詳述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0148】
[実施例1]
2器の反応器が直列に連結された連続反応器中の第1反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解されたスチレン溶液を258.3g/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された1,3-ブタジエン溶液を1.41kg/h、n-ヘキサン4.68kg/h、極性添加剤としてn-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが2重量%で溶解された溶液を11.5g/h、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが2重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を29.5g/hの速度で注入した。この際、第1反応器の温度は65℃になるように維持し、重合転換率が95%になった際、移送配管を通して、第1反応器から第2反応器に重合物を移送した。
【0149】
前記第1反応器から第2反応器に重合物を移送し、変性剤として、N,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン))ビス(3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)(N,N’-(cyclohexane-1,3-diylbis(methylene))bis(3-(trimethoxysilyl)-N-(3-(trimethoxysilyl)propyl)propan-1-amine))が2重量%で溶解された溶液を92.5g/h、トリス((オキシラン-2-イルメトキシ)メチル)アミン(tris((oxiran-2-ylmethoxy)methyl)amine)が1重量%で溶解された溶液を64.5g/hの速度で第2反応器に投入した。第2反応器の温度は70℃になるように維持した。
【0150】
その後、第2反応器から排出された重合溶液に、酸化防止剤として30重量%で溶解されたIR1520(BASF社製)溶液を97.6g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去し、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0151】
[実施例2]
前記実施例1において、変性剤として、N,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン))ビス(3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)が2重量%で溶解された溶液を61.7g/h、トリス((オキシラン-2-イルメトキシ)メチル)アミンが1重量%で溶解された溶液を43.0g/hの速度で投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法により、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0152】
[実施例3]
前記実施例1において、変性剤として、N,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン))ビス(3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)が2重量%で溶解された溶液を30.8g/h、トリス((オキシラン-2-イルメトキシ)メチル)アミンが1重量%で溶解された溶液を21.5g/hの速度で投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法により、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0153】
[比較例1]
前記実施例1において、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが2重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を29.5g/h、変性剤としてN,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン))ビス(3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)が2重量%で溶解された溶液を92.5g/hの速度で投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法により、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0154】
[比較例2]
前記実施例1において、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが2重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を29.5g/h、変性剤としてトリス((オキシラン-2-イルメトキシ)メチル)アミンが1重量%で溶解された溶液を64.5g/hの速度で投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法により、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0155】
[比較例3]
前記実施例1において、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが2重量%で溶解されたn-ブチルリチウム溶液を21.0g/h、変性剤として3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))が1重量%で溶解された溶液を98.0g/hの速度で投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法により、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0156】
[比較例4]
前記実施例1において、変性剤として、N,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン))ビス(3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)が2重量%で溶解された溶液を92.5g/h、および3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)が1重量%で溶解された溶液を98.0g/hの速度で投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法により、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0157】
[比較例5]
前記実施例1において、変性剤として、トリス((オキシラン-2-イルメトキシ)メチル)アミンが1重量%で溶解された溶液を64.5g/h、および3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)が1重量%で溶解された溶液を98.0g/hの速度で投入することを除いては、前記実施例1と同様の方法により、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0158】
<実験例1>
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系重合体に対して、それぞれ重合体中のスチレン単位の含量およびビニルの含量と、重量平均分子量(Mw、X103g/mol)、数平均分子量(Mn、X103g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、カップリング数、ムーニー粘度(MV)、ムーニー緩和率(-S/R)、およびムーニー大緩和面積をそれぞれ測定した。その結果を下記表1に示した。
【0159】
1)スチレン単位およびビニルの含量(重量%)
前記各重合体中のスチレン単位(SM)およびビニル(Vinyl)の含量は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析した。
【0160】
NMR測定時に、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを用い、溶媒ピーク(solvent peak)は5.97ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとしてスチレン単位およびビニルの含量を計算した。
【0161】
2)重量平均分子量(Mw、X10 3 g/mol)、数平均分子量(Mn、X10 3 g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、およびカップリング数(coupling number、C.N)
GPC(Gel permeation Chromatography)分析により、前記重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。また、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。具体的に、前記GPCは、PLgel Olexis(Polymer Laboratories社製)カラム2本とPLgel Mixed-C(Polymer Laboratories社製)カラム1本を組み合わせて用い、分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard Material)としてPS(polystyrene)を用いて実施した。GPC測定溶媒は、テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を混合して製造した。
【0162】
また、カップリング数は、各実施例および比較例において、変性剤またはカップリング剤を投入する前に、一部の重合物を採取して重合体のピーク分子量(Mp1)を得、その後、各変性共役ジエン系重合体のピーク分子量(Mp2)を得て、下記数学式2により計算した。
【0163】
【数3】
【0164】
3)ムーニー粘度(MV)、ムーニー緩和率(-S/R)、およびムーニー緩和面積(MLRA)
前記ムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)は、MV-2000(ALPHA Technologies社製)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定した。この際、用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0165】
ムーニー粘度の測定後、トルクが解除されるにつれて現れるムーニー粘度の変化の傾き値を測定し、その絶対値であるムーニー緩和率を得た。また、ムーニー大緩和面積は、ロータが停止して1秒後から120秒間のムーニー緩和曲線の積分値であり、その計算式は、下記数学式1で表される。
【0166】
【数4】
【0167】
前記数学式1中、
Aは、ムーニー大緩和面積(MLRA)であり、
kは、ムーニー粘度計のロータ作動を停止させてから1秒後のムーニー切片であり、
aは、ムーニー緩和率であり、
oは、ムーニー緩和開始時点であり、
fは、ムーニー緩和完了時点である。
【0168】
【表1】
【0169】
*変性剤A:N,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビス(メチレン))ビス(3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン)
*変性剤B:トリス((オキシラン-2-イルメトキシ)メチル)アミン
*変性剤C:3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)
【0170】
前記表1に示されたように、本発明の一実施形態に係る実施例1~3の変性共役ジエン系重合体は、100℃で測定されたムーニー大緩和面積(MLRA)が1500MU-s以上の値を有することを確認した。この際、実施例1~実施例3の変性共役ジエン系重合体は、比較例1~5に比べて、同等なレベルであるかより大きい分子量を有しており、ムーニー緩和率(-S/R)は減少した値を示した。
【0171】
<実験例2>
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系共重合体を含むゴム組成物およびそれより製造された成形品の物性を比較分析するために、加工性特性、引張特性、粘弾性特性をそれぞれ測定し、その結果を下記表3に示した。
【0172】
1)ゴム試験片の製造
実施例および比較例の各変性または未変性の共役ジエン系重合体を原料ゴムとして下記表2に示した配合条件で配合した。表2中の原料の含量は、原料ゴム100重量部を基準とした各重量部である。
【0173】
【表2】
【0174】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練では、温度制御装置付きのバンバリーミキサーを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃~155℃の排出温度で1次配合物を得た。第2段混練では、前記1次配合物を室温まで冷却した後、混練機に1次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPG(ジフェニルグアニジン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して2次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0175】
2)引張特性
引張特性は、ASTM 412の引張試験法に準じて各試験片を製造し、前記試験片の切断時の引張強度および300%伸び時の引張応力(300%モジュラス)を測定した。具体的に、引張特性は、Universal Test Machin 4204(Instron社製)引張試験機を用いて、室温で50cm/minの速度で測定した。
【0176】
3)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析機(GABO社製)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、各測定温度(-60℃~60℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定し、tanδ値を確認した。測定値において、低温0℃でのtanδ値が高いほど、ウェットスキッド抵抗性に優れ、高温60℃でのtanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、回転抵抗性(燃費性)に優れることを示す。下記表3では、比較例1の結果値を基準としてindexで示したものであるため、高い数値であるほど優れることを示す。
【0177】
4)加工性特性
前記1)ゴム試験片の製造時に得られた2次配合物のムーニー粘度(MV、(ML1+4、@100℃)MU)を測定し、各重合体の加工性特性を比較分析した。この際、ムーニー粘度の測定値が低いほど、加工性特性に優れることを示す。
【0178】
具体的に、MV-2000(ALPHA Technologies社製)により、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用い、各2次配合物は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて4分間測定した。
【0179】
【表3】
【0180】
前記表3に示されたように、本発明の一実施形態に係る実施例1~3は、比較例1~5に比べて、粘弾性特性、引張特性、および加工性特性がバランスよく優れることを確認した。具体的に、実施例1~実施例3は、比較例1~比較例3に比べて引張特性、粘弾性特性、および加工性特性に全般的に優れつつ、比較例1および比較例3に比べて引張特性および加工性特性が、比較例2に比べて回転抵抗性が顕著に改善された。
【0181】
また、実施例1~実施例3は、比較例4および5に比べて引張特性、粘弾性特性、および加工性特性に全般的に優れつつ、比較例4に比べて引張特性および加工性特性が、比較例5に比べて引張特性および回転抵抗性が顕著に改善された。この際、比較例1および比較例3は、エポキシ系変性剤を用いずに製造された重合体であって、分子中にエポキシ系変性剤由来の官能基を含まず、ムーニー大緩和面積が1500MU-s未満の重合体であり、比較例2は、アミノアルコキシシラン系変性剤を用いずに製造された重合体であって、分子中にアミノアルコキシシラン系変性剤由来の官能基を含まず、ムーニー大緩和面積が1500MU-s未満の重合体である。一方、比較例4および比較例5は、2種の変性剤を用いているが、本発明において提示するアミノアルコキシシラン系変性剤およびエポキシ系変性剤の組み合わせではなく、他の2種の変性剤を用いて製造された、ムーニー大緩和面積が1500MU-s未満の重合体である。
前記表1および表3の結果から、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、高分子量および高分岐特性を有しながら、ムーニー大緩和面積が1500MU-s以上であることで、ゴム組成物に適用される際、引張特性および粘弾性特性に優れながらも、加工性特性が顕著に改善されるという効果があることを確認した。