(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08C 19/25 20060101AFI20241210BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20241210BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241210BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08C19/25
C08L15/00
C08K3/04
C08K3/34
(21)【出願番号】P 2022555151
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(86)【国際出願番号】 KR2021015817
(87)【国際公開番号】W WO2022103060
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0153156
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088035
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】スク・ジュン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・スン・イ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/164053(WO,A1)
【文献】特開2002-145965(JP,A)
【文献】特開2012-102248(JP,A)
【文献】特開2019-108451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00 - 8/50
C08C 19/00 - 19/44
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位と、変性剤由来の官能基と、を含み、
示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry、DSC)で測定した際に、ガラス転移が発生するガラス転移開始温度(onset、T
g-on)とガラス転移終了温度(offset、T
g-off)との差が10℃以上30℃以下であり、
ARES(Advanced Rheometric Expansion System)による動的粘弾性分析から導出される温度に応じたtanδグラフにおいて、-100℃~100℃の温度範囲に現れるtanδピークの半値全幅(Full width at half maximum、FWHM)値が20℃以上であり、
前記ARESは、動的機械分析器を用いて、ねじれモードで、周波数10Hz、変形率(Strain)0.5%、および昇温速度5℃/minの条件下で測定される、変性共役ジエン系重合体。
【請求項2】
前記ガラス転移開始温度(T
g-on)とガラス転移終了温度(T
g-off)との差が15℃以上30℃以下である、請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項3】
ガラス転移温度(Tg)が-100℃以上20℃以下である、請求項1または2に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
前記tanδピークの半値全幅値は、30℃以上80℃以下である、請求項
1から3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項5】
前記tanδピークは、-80℃~20℃の温度範囲に現れる、請求項
1から4のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体。
【請求項6】
ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量分布曲線がユニモーダルであり、分子量分布が1.0~3.0である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項7】
前記変性剤は、N-含有官能基を含むアルコキシシラン系化合物である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体および充填剤を含む、ゴム組成物。
【請求項9】
前記変性共役ジエン系重合体100重量部を基準として0.1重量部~200重量部の充填剤を含む、請求項
8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記充填剤は、シリカ系充填剤またはカーボンブラック系充填剤である、請求項
8または
9に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月16日付けの韓国特許出願第10-2020-0153156号および2021年07月05日付けの韓国特許出願第10-2021-0088035号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に記載された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ウェットスキッド抵抗性および走行抵抗性にバランスよく優れ、耐摩耗性が改善された変性共役ジエン系重合体およびそれを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、走行抵抗が少なく、耐摩耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性に代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの走行抵抗を減少させるためには、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられる。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい長所は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節可能であり、カップリング(coupling)や変性(modification)などにより分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であり、鎖末端の結合や変性により鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられる。
【0006】
前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして末端に官能基を導入する技術が用いられている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
また、前記溶液重合によるSBRをゴム材料として用いる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、走行抵抗などのタイヤに求められる物性を調節することができるが、ビニルの含量が高い場合、制動性能および耐摩耗性が不利になるという側面がある。よって、SBR中のスチレンの含量が一定レベル以上に維持されなければならないが、この場合、高いビニルの含量から発現される効果が現れないという問題がある。
【0008】
このような問題により、溶液重合によるSBRとして、スチレンおよびビニルの含量に勾配を有する2つのブロック共重合体単位を含むブロック共重合体SBRを用いて、走行抵抗性およびウェットスキッド抵抗性をバランスよく改善させることが試みられたが、改善が微々たるものにすぎず、耐摩耗性を改善するためにガラス転移温度の低いSBRを適用する場合にウェットスキッド抵抗性が悪化する傾向がある。
【0009】
そこで、基本的に引張特性および燃費特性に対して製品要求性能を備えた状態で、ウェットスキッド抵抗性および耐摩耗性を同時に向上できる重合体の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、優れた引張特性および燃費特性は維持した状態で、ウェットスキッド抵抗性および耐摩耗性がバランスよく改善された特性を有するタイヤを実現するために、重合体の微細構造の制御により、ガラス転移温度において開始温度および終了温度が特定の範囲の格差を有する変性共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、変性剤由来の官能基と、を含み、示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry、DSC)で測定した際に、ガラス転移が発生するガラス転移開始温度(onset、Tg-on)とガラス転移終了温度(offset、Tg-off)との差が10℃以上30℃以下である、変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記変性共役ジエン系重合体および充填剤を含む、ゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、重合体の微細構造の制御により、ガラス転移の開始温度および終了温度の間の差が特定の範囲に制御されることで、低いガラス転移温度を有するにもかかわらず、ウェットスキッド抵抗性および走行抵抗性にバランスよく優れるとともに耐摩耗性が改善されるという効果がある。
【0016】
また、本発明に係る変性共役ジエン系重合体は、微細構造の制御により、優れた耐摩耗性およびウェットスキッド抵抗性を実現可能であるとともに、さらには、変性剤の導入および分岐度の調節により、優れた加工性、燃費特性、および引張特性も実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の具体的な実施形態を例示するものであり、前述した発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は、その図面に記載された事項にのみ限定して解釈してはならない。
【0018】
【
図1】ARES(Advanced Rheometric Expansion System)による動的粘弾性分析から導出される温度に応じたtanδグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0020】
用語の定義
本明細書において、用語「重合体」は、同一種類であるか異種類であるかを問わず、単量体を重合することで製造された重合体化合物を指す。これにより、一般用語の重合体は、1種の単量体から製造された重合体を指す際に通常用いられるホモポリマー(homopolymer)という用語、および以下に規定されたような共重合体(copolymer)という用語を網羅する。
【0021】
本明細書において、用語「共重合体」は、少なくとも2種の異なる単量体の重合により製造された重合体を指す。これにより、一般用語の共重合体は、2種の異なる単量体から製造された重合体を指す際に通常用いられる2員共重合体、および2種以上の異なる単量体から製造された重合体を含む。
【0022】
本明細書において、用語「1,2-ビニル結合含量」は、重合体中の共役ジエン系単量体(ブタジエンなど)由来の部分(重合されたブタジエンの総量)に基づく、前記重合体の重合体鎖中の1,2-番位置に内包されるブタジエンの質量(もしくは重量)パーセントを指す。
【0023】
本明細書において、用語「スチレン結合含量」は、重合体中の芳香族ビニル系単量体(スチレンなど)に由来した前記重合体の重合体鎖に内包されるスチレンの質量(もしくは重量)パーセントを指す。
本明細書において、用語「常温」は、加熱または冷却していない自然状態のままの温度を意味し、20±5℃の温度である。
【0024】
本明細書において、用語「置換」は、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換されたことを意味し得、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換される場合には、前記官能基、原子団、または化合物中に存在する水素の個数に応じて1個または2個以上の複数の置換基が存在してもよく、複数の置換基が存在する場合、それぞれの置換基は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0025】
本明細書において、用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基;イソプロピル(isopropyl)、sec-ブチル(sec-butyl)、tert-ブチル(tert-butyl)、およびネオペンチル(neo-pentyl)などの分岐状アルキル基;および環状の飽和炭化水素、または不飽和結合を1個または2個以上含む環状の不飽和炭化水素をいずれも含む意味であり得る。
【0026】
本明細書において、用語「アルキレン基(alkylene group)」は、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンなどの2価の脂肪族飽和炭化水素を意味し得る。
本明細書において、用語「シクロアルキル基(cycloalkyl group)」は、環状の飽和炭化水素を意味し得る。
【0027】
本明細書において、用語「アリール基(aryl group)」は、芳香族炭化水素を意味し、また、1個の環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2個以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)をいずれも含む意味であり得る。
【0028】
本明細書において、用語「アラルキル基(aralkyl)」は、アルアルキルとも呼ばれるものであって、アルキル基を構成する炭素に結合された水素原子がアリール基で置換されて形成されたアルキル基とアリール基の組み合わせ基を意味し得る。
【0029】
本明細書において、用語「単結合」は、別の原子または分子団を含まない単共有結合自体を意味し得る。
本明細書において、用語「由来の単位」、「由来の繰り返し単位」、および「由来の官能基」は、ある物質に起因した成分、構造、またはその物質自体を意味し得る。
【0030】
本明細書において、「含む」、「有する」という用語、およびこれらの派生語は、これらが具体的に開示されているか否かを問わず、任意の追加の成分、ステップもしくは手順の存在を排除することを意図しない。如何なる不確実性も避けるために、「含む」という用語の使用により請求された全ての組成物は、反対に述べられない限り、重合体であるかもしくはその他のものであるかを問わず、任意の追加の添加剤、補助剤もしくは化合物を含んでもよい。これとは対照的に、「から本質的に構成される」という用語は、操作性において必須ではないものを除き、任意のその他の成分、ステップもしくは手順を任意の連続する説明の範囲から排除する。「から構成される」という用語は、具体的に述べられるか挙げられていない任意の成分、ステップもしくは手順を排除する。
【0031】
測定方法および条件
本明細書において、「1,2-ビニル結合含量」および「スチレン結合含量」は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて、重合体単位中のビニル(Vinyl)の含量およびスチレンの含量を測定し分析したものである。NMRの測定時、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを用い、溶媒ピーク(solvent peak)は6.0ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとして全体重合体中の1,2-ビニル結合含量とスチレン結合含量をそれぞれ計算して測定したものである。
【0032】
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」、「分子量分布(MWD)」、および「ユニモーダル特性」は、GPC(Gel permeation chromatograph)(PL GPC220、Agilent Technologies)により、下記の条件で重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布曲線を得た。分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して得た。
【0033】
-カラム:PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用
-溶媒:テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を混合使用
-流速:1ml/min
-試料濃度:1~2mg/ml(THFに希釈)
-注入量:100μL
-カラム温度:40℃
-検出器(Detector):屈折率(Refractive index)
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(三次関数で補正)
【0034】
本明細書において、「ガラス転移温度(Tg)」は、ISO 22768:2006に準じて、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、DSCQ100、TA社)を用いて、窒素50ml/minの流通下、-100℃から10℃/minで昇温させながら示差走査熱量曲線(DSC曲線)を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
【0035】
本明細書において、「ガラス転移開始温度(onset、Tg-on)」および「ガラス転移終了温度(offset、Tg-off)」は、ISO 22768:2006に準じて、窒素50ml/minの流通下、-100℃から10℃/minで昇温させながら示差走査熱量曲線(DSC曲線)を記録し、この曲線において、ガラス転移が始まる温度をガラス転移開始温度とし、ガラス転移が終わる温度をガラス転移終了温度とする。
【0036】
本明細書において、「tanδピーク」は、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)による動的粘弾性分析から導出される温度に応じたtanδグラフに現れるピークであって、動的機械分析器(TA社、ARES-G2)を用いて、ねじれモード(Torsional mode)で、周波数10Hz、変形率(Strain)0.5%、および昇温速度5℃/minの条件下で測定される。
【0037】
本明細書において、「Siの含量」は、ICP分析方法により、誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES;Optima 7300DV)を用いて測定されたものであって、前記誘導結合プラズマ発光分析器を用いて、約0.7gの試料を白金ルツボ(Pt crucible)に入れ、濃硫酸(98重量%、Electronic grade)約1mLを入れ、300℃で3時間加熱し、試料を電気炉(Thermo Scientific、Lindberg Blue M)にて、下記ステップ1~3のプログラムで灰化を行った後、
【0038】
1)ステップ1:initial temp 0℃、rate(temp/hr)180℃/hr、temp(holdtime)180℃(1hr);
2)ステップ2:initial temp 180℃、rate(temp/hr)85℃/hr、temp(holdtime)370℃(2hr);
3)ステップ3:initial temp 370℃、rate(temp/hr)47℃/hr、temp(holdtime)510℃(3hr);
【0039】
残留物に濃硝酸(48重量%)1mL、濃フッ酸(50重量%)20μLを加え、白金ルツボを密封して30分以上振った(shaking)後、試料にホウ酸(boric acid)1mLを入れ、0℃で2時間以上保管した後、超純水(ultrapure water)30mLに希釈し、灰化を行って測定した。
【0040】
本発明において、「Nの含量」は、NSX分析方法により測定されてもよく、前記NSX分析方法は、極微量窒素定量分析器(NSX-2100H)を用いて測定されてもよい。具体的に、極微量窒素定量分析器(Auto sampler、Horizontal furnace、PMT & Nitrogen detector)をオンにし、Arを250ml/min、O2を350ml/min、オゾナイザ(ozonizer)を300ml/minにキャリアガス流量を設定し、ヒータを800℃に設定した後、約3時間待機して分析器を安定化させた。分析器の安定化後、窒素標準(Nitrogen standard)(AccuStandard S-22750-01-5ml)を用いて、検量線範囲5ppm、10ppm、50ppm、100ppm、および500ppmの検量線を作成し、各濃度に該当するエリア(Area)を得た後、濃度に対するエリアの割合を用いて直線を作成した。その後、試料20mgが入ったセラミックボートを前記分析器のオートサンプラー(Auto sampler)に置いて測定してエリアを得た。得られた試料のエリアおよび前記検量線を用いて、窒素原子の含量を計算した。
【0041】
この際、上記のNSX分析方法に用いられる試料は、スチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した変性共役ジエン系重合体試料であって、残留モノマーおよび残留変性剤を除去した試料であってもよい。また、上記の試料にオイルが添加されていれば、オイルが抽出(除去)された後の試料であってもよい。
【0042】
変性共役ジエン系重合体
本発明は、優れた引張特性および走行抵抗性(燃費特性)は維持した状態で、ウェットスキッド抵抗性および耐摩耗性がバランスよく改善された特性を有するタイヤを実現できる微細構造の制御により、特定の範囲のガラス転移開始温度とガラス転移終了温度の差を有する変性共役ジエン系重合体を提供する。
【0043】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位と、変性剤由来の官能基と、を含み、示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry、DSC)で測定した際に、ガラス転移が発生するガラス転移開始温度(onset、Tg-on)とガラス転移終了温度(offset、Tg-off)との差が10℃以上30℃以下であることを特徴とする。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、後述する特徴的な製造方法の適用により特定の微細構造の重合体を実現することで、重合体のガラス転移温度においてガラス転移開始温度とガラス転移終了温度との差を10℃以上30℃以下に制御し、引張特性および走行抵抗性に優れ、ウェットスキッド抵抗性および耐摩耗性にバランスよく優れることができる。
【0045】
重合体のガラス転移開始温度およびガラス転移終了温度
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系共重合体は、示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry、DSC)で測定した際に、ガラス転移開始温度(onset、Tg-on)とガラス転移終了温度(offset、Tg-off)との差が10℃以上30℃以下である。
【0046】
一般的に重合方法により製造されて微細構造が制御されていない変性重合体の場合は、ガラス転移開始温度およびガラス転移終了温度が実質的にガラス転移温度と同一であり、ガラス転移温度から±10℃未満の範囲内にあるため、開始温度および終了温度の差は10℃以上にならない。この場合には、ガラス転移温度が低いことにより改善が期待できる耐摩耗特性は有することができるが、ウェットスキッド抵抗性における物性の劣化を伴うという問題があり、ガラス転移温度の高い重合体を適用する場合には、その逆の現象が現れるという問題があり、耐摩耗性およびウェットスキッド抵抗性は、変性剤の構造変形や、官能基の種類、分岐度の制御などにより容易に制御することが難しい。
【0047】
しかしながら、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、重合体の微細構造を制御する製造方法により製造されているという点で、既存の変性共役ジエン系重合体と同一のガラス転移温度を有しても、ガラス転移開始温度とガラス転移終了温度との差を特定の範囲に制御することで、ウェットスキッド抵抗性および耐摩耗性が同時に上昇する効果を実現することができる。
【0048】
この際、前記ガラス転移開始温度と終了温度との差が10℃よりも小さい場合には、ウェットスキッド抵抗性および耐摩耗性の同時改善という効果の実現が不可能であり、30℃超過にガラス転移開始温度と終了温度との差が大きく広がると、加工性が低下する問題が発生し、引張特性が低下する問題が発生し得る。したがって、ガラス転移開始温度とガラス転移終了温度との差が10℃以上30℃以下となるように制御する必要があり、前述した効果を最適に実現するためには、その差を15℃以上30℃以下とすることが好ましい。
【0049】
重合体の動的粘弾性挙動
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、上記のガラス転移開始温度および終了温度の差を満たし、かつ、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)による動的粘弾性分析から導出される温度に応じたtanδグラフにおいて、-100℃~100℃の温度範囲に現れるtanδピークの半値全幅(Full width at half maximum、FWHM)値が20℃以上であってもよい。
【0050】
一般的に重合方法により製造されて微細構造が制御されていない重合体の場合は、前記tanδピークが2以上現れるか、ピークの幅が非常に狭く形成されるなど、ピーク幅が広く形成されない。これはガラス転移温度とも関連性があり得るが、ブロック共重合体のように重合体中の単位が区切られていて、このブロック間のガラス転移温度差が大きい場合には、前記tanδピークの幅が狭く、2以上のピークが現れ得る。また、ランダム共重合体の場合は、微細構造を精密に制御することなく最終的な重合体におけるビニルの含量やスチレンの含量だけを調節すると、ピーク幅が非常に狭く現れるのが一般的である。
【0051】
この場合、ガラス転移温度は、前記ブロック共重合体やランダム共重合体のいずれも同一であり得るが、ウェットスキッド抵抗性に大きな差を示し、このような問題を解決するために、ガラス転移温度の変化を甘受しつつウェットスキッド抵抗性を改善しようとする努力がある。しかし、ガラス転移温度が変化すると、耐摩耗性に変化が発生し、基本的な重合体の物性が異なる問題が発生するという点で、改善された性能を有する重合体を実現することが依然として課題として存在する。すなわち、耐摩耗性とウェットスキッド抵抗性のバランスを合わせることが難しく、この2つの特性は変性工程を介して同時改善がよくなされない傾向を示すという点で、解決がさらに難しい課題として残っている。しかし、本発明の一実施形態に係る共役ジエン系重合体は、重合体の微細構造を制御する製造方法により製造されているという点で、既存の変性共役ジエン系重合体と同一のガラス転移温度を有しても、特有のtanδピークを有することになり、ウェットスキッド抵抗性および耐摩耗性が同時に上昇する効果を実現することができる。
【0052】
この際、前記tanδピークは、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)による動的粘弾性分析から導出される温度に応じたtanδグラフにおいて、-100℃~100℃の温度範囲に現れ、tanδピークの半値全幅が25℃以上であることを特徴とする。前記温度範囲に現れるtanδピークの数は、通常1つであってもよいが、2個以上であってもよく、2個以上のピークが現れる場合には、複数のピークのうち1個のピークの半値全幅が25℃以上であることを意味し得る。
【0053】
前記tanδピークの半値全幅値は、25℃以上であり、好ましくは30℃以上であってもよい。また、前記半値全幅値は、最大80℃であってもよく、好ましくは70℃以下であってもよい。また他の例として、前記tanδピークの半値全幅値は、30℃以上80℃以下、または35℃以上60℃以下であってもよい。前記半値全幅が25℃未満である場合には、同一のガラス転移温度においてウェットスキッド抵抗性が顕著に低下する問題が発生し、ピークの半値全幅が80℃よりも大きくなる場合は実現される可能性が低いが、実現されるとしても、相分離が発生するか、高温でのヒステリシスが大きくなる問題が必然的に伴い、これにより、燃費特性が劣悪になる問題が発生し得る。
【0054】
また、前記tanδピークは、-100℃~100℃に現れ、好ましくは-80℃~20℃、より好ましくは-70℃~0℃に現れるピークであってもよい。前記範囲にピークが現れる場合には、耐摩耗性においてさらに有利な効果を期待することができる。
【0055】
前記ARESによる動的粘弾性分析は、動的機械分析器(TA社、ARES-G2)を用いて、ねじれモード(Torsional mode)で、周波数10Hz、変形率(Strain)0.5%、昇温速度5℃/minで、温度範囲-100℃~100℃での温度に応じたtanδを測定するものであり、この際に導出されるグラフは、温度に対するtanδ値である。
【0056】
単量体由来の繰り返し単位
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を主要単位とし、前記共役ジエン系単量体は、例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0057】
また、前記共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体の他に、追加的に芳香族ビニル系単量体が含まれ、その由来の繰り返し単位をさらに含んでもよく、前記芳香族ビニル系単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)-α-methylstyrene)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0058】
また他の例として、前記共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体に由来した繰り返し単位であってもよく、前記共役ジエン系単量体とは異なるジエン系単量体は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。前記共役ジエン系重合体がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、前記共役ジエン系重合体は、ジエン系単量体由来の繰り返し単位を0超過重量%~1重量%、0超過重量%~0.1重量%、0超過重量%~0.01重量%、または0超過重量%~0.001重量%で含んでもよい。この範囲内にて、ゲルの生成を防止するという効果がある。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系重合体の鎖に単量体が2以上含まれる場合には、ランダム共重合体およびブロック共重合体の中間形態の鎖構造を有することができ、この場合、微細構造の制御が容易であり、そこで、各物性間のバランスに優れるという効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体をなす繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味し得る。
【0060】
重合体のガラス転移温度
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、ガラス転移温度が-100℃~20℃であってもよい。ガラス転移温度は、重合体の微細構造に応じて変わる値であるが、耐摩耗性を改善するためには、前記範囲を満たすように重合体を製造することが好ましく、より好ましくは-100℃~0℃、さらに好ましくは-90℃~-10℃、さらに好ましくは-80℃~-20℃であってもよい。
【0061】
前記ガラス転移温度は、重合体単位中の共役ジエン系単量体の結合方式(1,2-結合または1,4-結合)、芳香族ビニル系由来の繰り返し単位の有無、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位の含量、重合方法および重合条件に応じた各単位中の微細構造(1,2-ビニル結合含量およびスチレン結合含量)により流動的に調節されてもよい。
【0062】
一例として、前記共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を0重量%~50重量%、具体的には0重量%~45重量%、好ましくは0重量%超過30重量%以下で含んでもよく、ここで、0重量%の芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を含むとは、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を含まず、共役ジエン系単量体のみからなることを意味する。また、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して1,2-ビニル結合含量が10重量部~80重量部であってもよく、好ましくは20~60重量部、より好ましくは20~50重量部であってもよい。このように微細構造が制御される場合、引張特性および燃費特性に優れ、かつ、耐摩耗性およびウェットスキッド抵抗性のバランスの取れた改善を期待することができる。
【0063】
重合体のSiおよびNの含量
一方、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、重合体の全体重量を基準として、SiおよびNの含量がそれぞれ50ppm以上、または50ppm~1000ppmであってもよく、下限の場合、好ましくは、それぞれ100ppm以上であってもよく、150ppm以上であってもよく、上限の場合、好ましくは700ppm以下、好ましくは500ppm以下であってもよい。この範囲内にて、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の引張特性および粘弾性特性などの機械的物性に優れるという効果がある。一方、前記SiおよびNは、後述する変性剤、変性開始剤、または変性単量体などの変性官能基を有する化合物が導入されることにより、この化合物に由来したものであってもよい。
【0064】
変性剤
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、変性剤由来の官能基を含み、前記変性剤は、重合体の末端を変性させるためのものであって、具体的な例としては、シリカ親和性変性剤として、アルコキシシラン系変性剤であってもよい。前記シリカ親和性変性剤は、変性剤として用いられる化合物中にシリカ親和性官能基を含有する変性剤を意味し、前記シリカ親和性官能基は、充填剤、特にシリカ系充填剤との親和性に優れるため、シリカ系充填剤と変性剤由来の官能基との間の相互作用が可能な官能基を意味し得る。
【0065】
前記変性剤は、一例として、アルコキシシラン系変性剤であってもよく、具体的な例として、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子などのヘテロ原子を1個以上含有するアルコキシシラン系化合物であってもよい。前記アルコキシシラン系化合物を変性剤として用いる場合、活性重合体の片末端に位置したアニオン活性部位と、アルコキシシラン系化合物のアルコキシ基との間の置換反応を介して、活性重合体の片末端がシリル基と結合した形態に変性が行われることができ、これにより、重合体単位の片末端に存在する前記変性剤由来の官能基から前記変性共役ジエン系重合体の無機充填剤などとの親和性が向上することができる。そこで、変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の粘弾性特性がさらに向上するという効果がある。さらに、前記アルコキシシラン系化合物が窒素原子を含有する場合には、前記シリル基に由来する効果の他にも、窒素原子に由来する付加的な物性の上昇効果を期待することができる。このような効果を最適に実現するためには、N-含有官能基を含むアルコキシシラン系化合物を適用することが好ましい。
【0066】
本発明の一実施形態によると、前記変性剤は、下記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0067】
【0068】
前記化学式1中、R1は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、R4は、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または炭素数2~10のヘテロ環基であってもよく、R21は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または-[R42O]j-であってもよく、R42は、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、aおよびmは、それぞれ独立して、1~3から選択された整数であってもよく、nは、0、1、または2の整数であってもよく、jは、1~30から選択された整数であってもよい。
【0069】
具体的な例として、前記化学式1中、R1は、単結合、または炭素数1~5のアルキレン基であってもよく、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5のアルキル基であってもよく、R4は、水素、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基、または炭素数2~5のヘテロ環基であってもよく、R21は、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、または-[R42O]j-であってもよく、R42は、炭素数1~5のアルキレン基であってもよく、aは、2または3の整数であってもよく、mは、1~3から選択された整数であってもよく、nは、0、1、または2の整数であってもよく、この際、m+n=3であってもよく、jは、1~10から選択された整数であってもよい。
【0070】
前記化学式1中、R4がヘテロ環基である場合、前記ヘテロ環基は、3置換のアルコキシシリル基で置換もしくは非置換であってもよく、前記ヘテロ環基が3置換のアルコキシシリル基で置換された場合、前記3置換のアルコキシシリル基は、炭素数1~10のアルキレン基により前記ヘテロ環基に連結されて置換されていてもよく、前記3置換のアルコキシシリル基は、炭素数1~10のアルコキシ基で置換されたアルコキシシリル基を意味し得る。
【0071】
より具体的な例として、前記化学式1で表される化合物は、N,N-ビス(3-(ジメトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(dimethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-メチル-1-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-methyl-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(trimethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ジエチル-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(triethoxysilyl)propan-1-amine)、トリ(トリメトキシシリル)アミン(tri(trimethoxysilyl)amine)、トリ(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミン(tri-(3-(trimethoxysilyl)propyl)amine)、N,N-ビス(3-(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)-1,1,1-トリメチルシランアミン(N,N-bis(3-(diethoxy(methyl)silyl)propyl)-1,1,1-trimethylsilanamine)、N,N-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-(トリエトキシシリル)メタン-1-アミン(N,N-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-(triethoxysilyl)methan-1-amine)、N-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリメトキシシリル)-N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(N-(3-(1H-1,2,4-triazole-1-yl)propyl)-3-(trimethoxysilyl)-N-(trimethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)、3-(トリメトキシシリル)-N-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-N-(3-(1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(trimethoxysilyl)-N-(3-(trimethoxysilyl)propyl)-N-(3-(1-(3-(trimehtoxysilyl)propyl)-1H-1,2,4-triazol-3-yl)propyl)propan-1-amine)、N,N-ビス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)-3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-アミン(N,N-bis(2-(2-methoxyethoxy)ethyl)-3-(triethoxysilyl)propan-1-amine)、N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-アミン(N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)-2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-amine)、N-(2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-イル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデカン-16-アミン(N-(2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-yl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)-2,5,8,11,14-pentaoxahexadecan-16-amine)、およびN-(3,6,9,12-テトラオキサヘキサデシル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-3,6,9,12-テトラオキサヘキサデカン-1-アミン(N-(3,6,9,12-tetraoxahexadecyl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)-3,6,9,12-tetraoxahexadecan-1-amine)からなる群から選択された1種であってもよい。
【0072】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式2で表される化合物を含んでもよい。
【0073】
【0074】
前記化学式2中、R
5、R
6、およびR
9は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、R
7、R
8、R
10、およびR
11は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、R
12は、水素または炭素数1~10のアルキル基であってもよく、bおよびcは、それぞれ独立して、0、1、2、または3であり、b+c≧1であってもよく、Aは、
【化3】
であってもよく、この際、R
13、R
14、R
15、およびR
16は、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
【0075】
具体的な例として、前記化学式2で表される化合物は、N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(トリエトキシシリル)-N-(3-(トリエトキシシリル)プロピルプロパン-1-アミン)(N-(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-3-(triethoxysilyl)-N-(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine))、および3-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-1-イル)-N,N-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)プロパン-1-アミン(3-(4,5-dihydro-1H-imidazol-1-yl)-N,N-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)propan-1-amine)からなる群から選択された1種であってもよい。
【0076】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式3で表される化合物を含んでもよい。
【0077】
【0078】
前記化学式3中、A1およびA2は、それぞれ独立して、酸素原子を含むか含まない炭素数1~20の2価の炭化水素基であってもよく、R17~R20は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であってもよく、L1~L4は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換された1置換、2置換、または3置換のアルキルシリル基、または炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、L1およびL2と、L3およびL4は、互いに連結されて炭素数1~5の環を形成してもよく、L1およびL2と、L3およびL4が互いに連結されて環を形成する場合、形成された環は、N、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を1個~3個含んでもよい。
【0079】
具体的な例として、前記化学式3中、A1およびA2は、それぞれ独立して、1~10のアルキレン基であってもよく、R17~R20は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、L1~L4は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基で置換されたトリアルキルシリル基、炭素数1~10のアルキル基であるか、L1およびL2と、L3およびL4は、互いに連結されて炭素数1~3の環を形成してもよく、L1およびL2と、L3およびL4が互いに連結されて環を形成する場合、形成された環は、N、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を1個~3個含んでもよい。
【0080】
より具体的な例として、前記化学式3で表される化合物は、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルプロパン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylpropan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジエチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-diethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine)、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジメチルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dimethylmethan-1-amine))、3,3’-(1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(N,N-ジプロピルメタン-1-アミン)(3,3’-(1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(N,N-dipropylmethan-1-amine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-(trimethylsilyl)silanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、N,N’-((1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1,1,1-トリメチル-N-フェニルシランアミン)(N,N’-((1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane-1,3-diyl)bis(propan-3,1-diyl))bis(1,1,1-trimethyl-N-phenylsilanamine))、1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetramethoxydisiloxane)、1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetraethoxydisiloxane)、および1,3-ビス(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-1,1,3,3-テトラプロポキシジシロキサン(1,3-bis(3-(1H-imidazol-1-yl)propyl)-1,1,3,3-tetrapropoxydisiloxane)からなる群から選択された1種であってもよい。
【0081】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式4で表される化合物を含んでもよい。
【0082】
【0083】
前記化学式4中、R22およびR23は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、または-R28[OR29]f-であり、R24~R27は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基であってもよく、R28およびR29は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であってもよく、R47およびR48は、それぞれ独立して、炭素数1~6の2価の炭化水素基であってもよく、dおよびeは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択された整数であり、この際、d+eは、1以上の整数であり、fは、1~30の整数であってもよい。
【0084】
具体的に、前記化学式4中、R22およびR23は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基、または-R28[OR29]f-であってもよく、R24~R27は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、R28およびR29は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、dおよびeは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択された整数であり、この際、d+eは、1以上の整数であってもよく、fは、1~30から選択された整数であってもよい。
【0085】
より具体的に、前記化学式4で表される化合物は、下記化学式4a、化学式4b、または化学式4cで表される化合物であってもよい。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
前記化学式4a、化学式4b、および化学式4c中、R22~R27、d、およびeは前述したとおりである。
【0090】
より具体的な例として、前記化学式4で表される化合物は、1,4-ビス(3-(3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(3-(triethoxysilyl)propoxy)propyl)piperazine)、1,4-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,4-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,4-ビス(3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル)ピペラジン(1,4-bis(3-(dimethoxymethylsilyl)propyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチルシリル)プロピル)-4-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethylsilyl)propyl)-4-(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチル)プロピル)-4-(3-(トリエトキシシリル)メチル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethyl)propyl)-4-(3-(triethoxysilyl)methyl)piperazine)、1-(3-(エトキシジメチル)メチル)-4-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ピペラジン(1-(3-(ethoxydimethyl)methyl)-4-(3-(triethoxysilyl)propyl)piperazine)、1,3-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)イミダゾリジン(1,3-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)imidazolidine)、1,3-ビス(3-(ジメトキシエチルシリル)プロピル)イミダゾリジン(1,3-ビス(3-(dimethoxyethylsilyl)propyl)imidazolidine)、1,3-ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ヘキサヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(trimethoxysilyl)propyl)hexahydropyrimidine)、1,3-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ヘキサヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(triethoxysilyl)propyl)hexahydropyrimidine)、および1,3-ビス(3-(トリブトキシシリル)プロピル)-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン(1,3-bis(3-(tributoxysilyl)propyl)-1,2,3,4-tetrahydropyrimidine)からなる群から選択された1種であってもよい。
【0091】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式5で表される化合物を含んでもよい。
【0092】
【0093】
前記化学式5中、R30は、炭素数1~30の1価の炭化水素基であってもよく、R31~R33は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、R34~R37は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、gおよびhは、それぞれ独立して、0、または1~3から選択された整数であり、この際、g+hは、1以上の整数であってもよい。
【0094】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式6で表される化合物を含んでもよい。
【0095】
【0096】
前記化学式6中、A3およびA4は、それぞれ独立して、1~10のアルキレン基であってもよく、R38~R41は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基であってもよく、iは、1~30から選択された整数であってもよい。
【0097】
また他の例として、前記変性剤は、3,4-ビス(2-メトキシエトキシ)-N-(4-(トリエトキシシリル)ブチル)アニリン(3,4-bis(2-methoxyethoxy)-N-(4-(triethylsilyl)butyl)aniline)、N,N-ジエチル-3-(7-メチル-3,6,8,11-テトラオキサ-7-シラトリデカン-7-イル)プロパン-1-アミン(N,N-diethyl-3-(7-methyl-3,6,8,11-tetraoxa-7-silatridecan-7-yl)propan-1-amine)、2,4-ビス(2-メトキシエトキシ)-6-((トリメチルシリル)メチル)-1,3,5-トリアジン(2,4-bis(2-methoxyethoxy)-6-((trimethylsilyl)methyl)-1,3,5-triazine)、および3,14-ジメトキシ-3,8,8,13-テトラメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,8,13-トリシラペンタデカン(3,14-dimethoxy-3,8,8,13-tetramethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,8,13-trisilapentadecane)からなる群から選択された1種以上を含んでもよい。
【0098】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式7で表される化合物を含んでもよい。
【0099】
【0100】
前記化学式7中、R43、R45、およびR46は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよく、R44は、炭素数1~10のアルキレン基であってもよく、kは、1~4から選択された整数であってもよい。
【0101】
より具体的な例として、前記化学式7で表される化合物は、8,8-ジブチル-3,13-ジメトキシ-3,13-ジメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンナペンタデカン(8,8-dibutyl-3,13-dimethoxy-3,13-dimethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、8,8-ジメチル-3,13-ジメトキシ-3,13-ジメチル-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンナペンタデカン(8,8-dimehyl-3,13-dimethoxy-3,13-dimethyl-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、8,8-ジブチル-3,3,13,13-テトラメトキシ-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンナペンタデカン(8,8-dibutyl-3,3,13,13-tetramethoxy-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)、および8-ブチル-3,3,13,13-テトラメトキシ-8-((3-(トリメトキシシリル)プロピル)チオ)-2,14-ジオキサ-7,9-ジチア-3,13-ジシラ-8-スタンナペンタデカン(8-butyl-3,3,13,13-tetramethoxy-8-((3-(trimethoxysilyl)propyl)thio)-2,14-dioxa-7,9-dithia-3,13-disila-8-stannapentadecane)からなる群から選択された1種であってもよい。
【0102】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式8で表される化合物を含んでもよい。
【0103】
【0104】
前記化学式8中、Rb2~Rb4は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、Rb5~Rb8は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、Rb13およびRb14は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、Rb15~Rb18は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基であり、m1、m2、m3、およびm4は、互いに独立して、1~3の整数である。
【0105】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式9で表される化合物を含んでもよい。
【0106】
【0107】
前記化学式9中、Re1およびRe2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキレン基であり、Re3~Re6は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、または-Re7SiRe8Re9Re10であり、この際、Re3~Re6のうち少なくとも1つは、-Re7SiRe8Re9Re10であり、ここで、Re7は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、Re8~Re10は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基であり、この際、Re8~Re10のうち少なくとも1つは、炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0108】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式10で表される化合物を含んでもよい。
【0109】
【0110】
前記化学式10中、Xは、OまたはSであり、Rf1およびRf2は、互いに独立して、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Rf3~Rf8は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数5~10のシクロアルキル基、または炭素数7~14のアラルキル基であり、pは、0または1の整数であり、pが0である場合、Rf1は、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0111】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式11で表される化合物を含んでもよい。
【0112】
【0113】
前記化学式11中、Rg1~Rg4は、互いに独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、または-Rg5SiORg6であり、この際、Rg1~Rg4のうち少なくとも1つは、-Rg5SiORg6であり、ここで、Rg5は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、Rg6は、炭素数1~10のアルキル基であり、Yは、CまたはNであり、この際、YがNである場合、Rg4は存在しない。
【0114】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式12で表される化合物を含んでもよい。
【0115】
【0116】
前記化学式12中、Rh1およびRh2は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基であり、Rh3は、単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、A3は、-Si(Rh4Rh5Rh6)、または-N[Si(Rh7Rh8Rh9)]2であり、ここで、Rh4~Rh9は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基である。
【0117】
また他の例として、前記変性剤は、下記化学式13で表される化合物を含んでもよい。
【0118】
【0119】
前記化学式13中、Rg1~Rg3は、互いに独立して、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシ基であり、Rg4は、炭素数1~10のアルコキシ基であり、qは、2~100の整数である。
【0120】
その他の特性
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定により求められる収縮因子(g’)が0.1以上、好ましくは0.1以上1.0以下、より具体的には0.3以上0.9以下であってもよい。
【0121】
ここで、前記GPC-光散乱法測定により求められる収縮因子(g’)は、同一の絶対分子量を有する直鎖状重合体の固有粘度に対する分岐を有する重合体の固有粘度の割合であって、分岐を有する重合体の分岐構造の指標、すなわち、分岐が占める割合の指標として用いることができ、例えば、前記収縮因子が減少するにつれて当該重合体の分岐数は増加する傾向があり、よって、絶対分子量が同等な重合体を比較する場合、分岐が多いほど収縮因子が小さくなるため、分岐度の指標として用いることができる。
【0122】
また、前記収縮因子は、粘度検出器付きGPC-光散乱測定装置を用いてクロマトグラムを測定し、溶液粘度および光散乱法に基づいて算出したものであって、具体的には、ポリスチレン系ゲルを充填剤とした2本のカラムが連結された光散乱検出器および粘度検出器付きGPC-光散乱測定装置を用いて、絶対分子量と、各絶対分子量に該当する固有粘度を得、前記絶対分子量に該当する直鎖状重合体の固有粘度を算出した後、各絶対分子量に対応する固有粘度の比として収縮因子を求めた。例示的に、前記収縮因子は、光散乱検出器および粘度検出器付きGPC-光散乱測定装置(Viscotek TDAmax、Malvern社)に試料を注入し、光散乱検出器から絶対分子量を得、光散乱検出器と粘度検出器から絶対分子量に対する固有粘度[η]を得た後、下記数学式1により前記絶対分子量に対する直鎖状重合体の固有粘度[η]0を算出し、各絶対分子量に対応する固有粘度の比([η]/[η]0)の平均値を収縮因子として示した。この際、溶離液としてはテトラヒドロフランとN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンの混合溶液(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン20mLをテトラヒドロフラン1Lに混合させて調整する)を用い、カラムとしてはPL Olexix(Agilent社)用い、オーブン温度40℃、THFの流量1.0mL/分の条件で測定し、試料は10mLのTHFに重合体15mgを溶解させて準備した。
【0123】
[数学式1]
[η]0=10-3.883M0.771
前記数学式1中、Mは絶対分子量である。
【0124】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ビニルの含量が5重量%以上、10重量%以上、または10重量%~60重量%であってもよい。ここで、前記ビニルの含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体とからなる共役ジエン系重合体100重量%に対して、1,4-添加ではなく、1,2-添加された共役ジエン系単量体の含量を意味し得る。
【0125】
また他の例として、前記変性共役ジエン系重合体は、100℃で測定されたムーニー応力緩和率が0.7未満であってもよく、0.7~3.0であってもよい。具体的に、前記ムーニー応力緩和率は、分岐度が大きい分岐状重合体である場合、0.7未満、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、最も好ましくは0.4以下であってもよく、分岐度が小さい直鎖状重合体である場合、好ましくは0.7~2.5、より好ましくは0.7~2.0であってもよい。
【0126】
ここで、前記ムーニー応力緩和率は、同一量の変形率(strain)に対する反応として現れるストレス(stress)の変化を示すものであって、ムーニー粘度計を用いて測定してもよい。具体的に、前記ムーニー応力緩和率は、Monsanto社のMV2000EのLarge Rotorを用いて、100℃およびRotor Speed 2±0.02rpmの条件で、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させ、トルク(torque)を印加しながらムーニー粘度を測定し、その後、トルクが解除されるにつれて現れるムーニー粘度の変化の傾き値を測定して得た。
【0127】
一方、ムーニー応力緩和率は、当該重合体の分岐構造の指標として用いることができ、例えば、ムーニー粘度が同等な重合体を比較する場合、分岐が多いほどムーニー応力緩和率が小さくなるため、分岐度の指標として用いることができる。
【0128】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、変性剤由来の官能基が含まれている片末端の他に、他末端に変性開始剤由来の官能基を含んでもよく、ここで、前記変性開始剤は、N-官能基含有化合物と有機金属化合物の反応生成物であってもよい。
【0129】
具体的に、前記N-官能基含有化合物は、置換基で置換もしくは非置換のアミノ基、アミド基、アミノ基、イミダゾール基、ピリミジル基、または環状アミノ基を含むN-官能基を含む芳香族炭化水素化合物であってもよく、前記置換基は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、または炭素数1~10のアルコキシシリル基であってもよい。
【0130】
本発明の一実施形態によると、前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)により測定された重量平均分子量(Mw)が300,000g/mol~3,000,000g/mol、400,000g/mol~2,500,000g/mol、または500,000g/mol~2,000,000g/molであってもよい。この範囲内にて、走行抵抗性およびウェットスキッド抵抗性にさらにバランスよく優れるという効果がある。
【0131】
また、本発明の一実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が800,000g/mol以上、好ましくは1,000,000g/mol以上の高分子量重合体であってもよく、これにより、引張特性に優れた重合体を実現することができる。これは、前述した製造方法により製造する場合、微細構造の制御とともに、重合体の鎖を長く延長する効果も共に実現されることで達成されることができる。
【0132】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000g/mol~2,000,000g/mol、10,000g/mol~1,500,000g/mol、または100,000g/mol~1,200,000g/molであってもよく、前記数平均分子量は、好ましくは400,000g/mol以上、より好ましくは500,000g/mol以上であってもよい。また、ピークトップ分子量(Mp)が1,000g/mol~3,000,000g/mol、10,000g/mol~2,000,000g/mol、または100,000g/mol~2,000,000g/molであってもよい。この範囲内にて、走行抵抗およびウェットスキッド抵抗性に優れるという効果がある。
【0133】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、Gel permeation chromatography)による分子量分布曲線がユニモーダル(unimodal)であり、分子量分布が1.0~3.0であってもよく、好ましくは1.0~2.5、より好ましくは1.0~2.0、さらに好ましくは1.0以上1.7未満であってもよく、ここで、前記ユニモーダルの曲線形態および分子量分布は、後述する連続式重合により同時に満たすことができる。
【0134】
一般的に、連続式重合においては、ユニモーダルで分子量分布が広く現れるため、加工性は優れるものの、引張および粘弾性特性が劣悪であり、回分式重合においては、バイモーダルで分子量分布が狭く現れるため、引張および粘弾性特性は優れるものの、加工性が劣悪であり、生産性が低いという問題がある。しかし、本発明の一実施形態に係る後述する製造方法を適用すると、連続式で製造するにもかかわらず、選択的に分子量分布を最大限狭めることができ、これにより、加工性と引張特性および粘弾性特性の間の物性のバランスを制御することが容易である。
【0135】
また、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、ASTM D1646条件で測定したムーニー粘度(Mooney viscosity)が40~120であることを満たさなければならず、好ましくは45~100であってもよい。加工性を評価する尺度は種々のものがあり得るが、ムーニー粘度が前記範囲を満たす場合には、加工性に相当に優れることができる。
【0136】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、前述したように、スチレン結合含量、1,2-ビニル結合含量などの重合体の微細構造の制御により、ガラス転移開始温度と終了温度との差を有するように重合体構造を特定し、選択的に重量平均分子量、分子量分布曲線の形態、分子量分布、NおよびSi原子の含量、およびムーニー粘度を制御することで、引張特性、燃費特性、および加工性の優秀性を維持した状態で、耐摩耗性およびウェットスキッド抵抗性の均衡的な改善を効果として期待することができる。
【0137】
変性共役ジエン系重合体の製造方法
本発明は、前記変性共役ジエン系重合体を製造するために、下記のような変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0138】
前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、連続式製造方法により、炭化水素溶媒、重合開始剤、および極性添加剤の存在下で、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して活性重合体を製造するステップ(S1)と、前記(S1)ステップで製造された活性重合体と変性剤を反応させるステップ(S2)と、を含み、前記(S1)ステップは、2器以上の重合反応器で連続的に行われ、第1反応器の重合転換率が70%~85%である際に第2反応器に移送し、前記第2反応器に極性添加剤、または極性添加剤および共役ジエン系単量体を追加的に添加することを特徴とする。
以下では、製造された変性共役ジエン系重合体と反応に用いられる変性剤に関する説明は前述したため、製造方法を中心に記述する。
【0139】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0140】
前記重合開始剤は、単量体1.0当量を基準として0.1当量~3.0当量を用いてもよく、好ましくは0.1当量~2.0当量、より好ましくは0.5当量~1.5当量であってもよい。また他の例として、前記重合開始剤は、単量体の総100gを基準として0.01mmol~10mmol、0.05mmol~5mmol、0.1mmol~2mmol、0.1mmol~1mmol、または0.15~0.8mmolで用いてもよい。ここで、前記単量体の総100gは、共役ジエン系単量体であるか、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体の合計量を示してもよい。
【0141】
一方、前記重合開始剤は、有機金属化合物であってもよく、例えば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、および有機セシウム化合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0142】
具体的に、前記有機金属化合物は、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、およびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0143】
また他の例として、前記重合開始剤は、変性開始剤であってもよく、前記変性開始剤は、N-官能基含有化合物と前記有機金属化合物の反応生成物であってもよい。
【0144】
S1ステップ
本発明の一実施形態によると、前記製造方法において、(S1)ステップは、一例として、アニオン重合により、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体の重合反応が行われるステップである。具体的な例として、アニオンによる成長重合反応により重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であってもよい。また、前記(S1)ステップの重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。前記定温重合は、重合開始剤を投入した後に任意に熱を加えず、それ自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、前記重合開始剤を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、前記重合開始剤を投入した後に熱を加えて熱を増加させるか熱を奪うことで重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味し得る。
【0145】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの重合は、前記共役ジエン系単量体の他に、炭素数1~10のジエン系化合物をさらに含んで行われてもよく、この場合、長時間の運転時に反応器の壁面にゲルが形成されるのを防止するという効果がある。前記ジエン系化合物は、一例として、1,2-ブタジエンであってもよい。
【0146】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの重合は、2器以上の重合反応器で行われ、この際、前記重合反応器のうち第1重合反応器での重合転換率は、70%以上85%以下、または70%~80%であってもよい。すなわち、前記(S1)ステップにおいて、重合は、第1重合反応器での重合転換率が70%以上、70%以上85%以下、または70%以上80%以下になるまで重合を行うことを特徴とする。
【0147】
この範囲内にて、重合反応の開始後、重合体が形成されるにつれて発生する副反応を抑制し、重合時に重合体の微細構造の制御が容易であることで、動的粘弾性分析においてtanδピークの半値全幅が広くなり、それにより、耐摩耗性が改善される基盤を備えることができる。
【0148】
前記第1反応器での重合は、一例として、80℃以下、-20℃~80℃、0℃~80℃、0℃~70℃、または10℃~70℃の温度範囲で行われてもよい。この範囲内にて、重合体の分子量分布を狭く調節し、物性の改善に優れるという効果がある。
【0149】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップは、2器以上の反応器で行われ、第1反応器にて前述した重合転換率まで重合が行われた後には、第2反応器に移送され、第2反応器に極性添加剤または共役ジエン系単量体の追加投入が行われる。
【0150】
この際、追加投入される極性添加剤、または極性添加剤または共役ジエン系単量体は、同時に投入するか順次投入してもよく、前述した重合転換率範囲の時点のうち一時点に投入するか、前記範囲の時点のうち複数の時点に分割投入するか、または前記範囲の時点内で連続的に投入してもよい。
【0151】
極性添加剤や、極性添加剤および共役ジエン系単量体の追加投入は、前記第1反応器での重合転換率の制御とともに、製造される重合体のガラス転移温度特性を実現できる手段となり得、これは、極性添加剤が追加投入されることで、特定の重合転換率以後に重合反応に動力をさらに加えて微細構造の変形を起こすことができる。
【0152】
特に、前記極性添加剤は、共役ジエン系単量体をホモ重合する場合には、反応速度の制御により1,2-結合と1,4-結合の割合を制御することができ、共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合する場合には、これらの単量体間の反応速度の差を補正することで、ランダム共重合体を容易に形成できるように誘導するという効果がある。
【0153】
この際、追加投入される極性添加剤は、tanδピークの半値全幅が広くなる方向になるように適切な量が用いられてもよい。例えば、追加投入される極性添加剤は、重合開始で用いられた単量体の総100gを基準として0.001g~10g、または0.01g~1.0g、より好ましくは0.02g~0.5gの割合で用いてもよい。
【0154】
また、選択的に追加投入される共役ジエン系単量体は、重合開始で用いられた単量体100gを基準として5g~25g、または5g~20gの量で用いてもよい。追加投入される極性添加剤や共役ジエン系単量体が上記のような量に制御される場合には、重合体のガラス転移温度の制御が容易であり、さらに微細な調整が可能であり、動的粘弾性分析においてtanδピークの半値全幅をさらに広げることができるという長所がある。
【0155】
前記(S1)ステップの重合で用いられる極性添加剤の総使用量は、単量体の総100gを基準として0.001g~50g、または0.002g~1.0gの割合で用いてもよい。また他の例として、前記極性添加剤の総使用量は、重合開始剤の総100gを基準として0g超過~1g、0.01g~1g、または0.1g~0.9gの割合で用いてもよい。ここで、極性添加剤の総使用量は、追加投入される極性添加剤も含む含量を意味する。
【0156】
前記第2反応器での重合は、一例として、80℃以下、-20℃~80℃、0℃~80℃、0℃~70℃、または10℃~70℃の温度範囲で行われてもよい。この範囲内にて、重合体の分子量分布を狭く調節し、物性の改善に優れるという効果がある。
【0157】
一方、付加的に前記動的粘弾性分析から得られるtanδピークの半値全幅を制御するにおいては、第1反応器および第2反応器での重合温度も影響を与え得るし、この場合、第2反応器の重合温度を第1反応器の重合温度以下に制御するほど好ましく、第2反応器の重合温度は60℃以上であることが好ましい。
【0158】
前記極性添加剤は、一例として、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、tert-ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)、および2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2-ethyl tetrahydrofurfuryl ether)からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)、または2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2-ethyl tetrahydrofurfuryl ether)であってもよい。
【0159】
一方、前記重合転換率は、一例として、重合時、重合体を含む重合体溶液中の固体濃度を測定することで決定されてもよく、具体的な例として、前記重合体溶液を確保するために、各重合反応器の出口にシリンダ型容器を取り付けて一定量の重合体溶液をシリンダ型容器に満たし、前記シリンダ型容器を反応器から分離し、重合体溶液が充填されているシリンダの重さ(A)を測定した後、シリンダ型容器に充填されている重合体溶液をアルミニウム容器、一例としてアルミニウム皿に移し、重合体溶液が除去されたシリンダ型容器の重さ(B)を測定し、重合体溶液が入ったアルミニウム容器を140℃のオーブンで30分間乾燥させ、乾燥された重合体の重さ(C)を測定した後、下記数学式2により計算してもよい。
【0160】
【0161】
前記数学式2中、総固形分含量は、各反応器から分離した重合体溶液中の総固形分含量(単量体の含量)であって、重合体溶液100%に対する固形分の重量百分率である。例示的に、総固形分含量が20重量%である場合、前記数学式2にそれを適用する際には20/100、すなわち、0.2として代入されて計算されてもよい。
【0162】
一方、前記第2反応器で重合された重合物は、最終重合反応器まで順次移送され、最終的に重合転換率が95%以上になるまで重合が行われてもよく、第2反応器での重合後、第3反応器、または第3反応器~最後の重合反応器までの各反応器別の重合転換率は、分子量分布の調節のために各反応器別に適宜調節して行われてもよい。その後、活性部位を失活させるための反応停止剤を投入してもよく、変性共役ジエン系重合体を製造しようとする場合、変性反応工程に活性重合体を移送してもよく、前記反応停止剤は、当該技術分野で一般的に使用できる物質であれば制限されずに適用されてもよい。
また、前記(S1)ステップにより製造された活性重合体は、重合体アニオンと重合開始剤の有機金属カチオンが結合された重合体を意味し得る。
【0163】
S2ステップ
前記(S2)ステップは、(S1)ステップで製造された活性重合体と変性剤を反応させる変性ステップであって、活性重合体のアニオン活性部位と変性剤のシランに結合されたアルコキシ基が反応することができる。前記変性剤は、単量体の総100gを基準として0.01mmol~10mmolの量で用いてもよい。また他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップの重合開始剤1モルを基準として、1:0.1~10、1:0.1~5、または1:0.1~1:3のモル比で用いてもよい。
【0164】
また、本発明の一実施形態によると、前記変性剤は、変性反応器に投入されてもよく、前記(S2)ステップは、変性反応器で行われてもよい。また他の例として、前記変性剤は、前記(S1)ステップで製造された活性重合体を(S2)ステップを行うための変性反応器に移送するための移送部に投入されてもよく、前記移送部内で活性重合体と変性剤の混合により反応が行われてもよい。この際、前記反応は、変性剤が活性重合体に単純結合される変性反応であるか、変性剤を基準として活性重合体が連結されるカップリング反応であってもよい。
【0165】
一方、前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記(S2)ステップの変性反応前に、前記(S1)ステップで製造された活性重合体に共役ジエン系単量体を追加投入して反応させるステップをさらに行ってもよく、この場合、その後の変性反応にさらに有利である。この際、前記共役ジエン系単量体は、活性重合体1モルに対して1モル~100モルで投入してもよい。
【0166】
本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前述した変性共役ジエン系重合体の特性を満たすことができる方法であり、上記のように本発明が達成しようとする効果は、上記の特徴を満たした場合に達成することができるが、その他の重合条件の場合は多様に制御されることで、本発明に係る変性共役ジエン系重合体が有する物性を実現することができる。
【0167】
ゴム組成物
本発明によると、上記の変性共役ジエン系重合体および充填剤を含む、ゴム組成物が提供される。
【0168】
前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を10重量%以上、10重量%~100重量%、または20重量%~90重量%の量で含んでもよい。この範囲内にて、引張強度、耐摩耗性などの機械的物性に優れ、各物性間のバランスに優れるという効果がある。
【0169】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体の他に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的な例として、前記他のゴム成分は、前記変性共役ジエン系重合体100重量部に対して1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0170】
前記ゴム成分は、一例として、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-co-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン)、ポリ(スチレン-co-イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-co-ブタジエン)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどの合成ゴムであってもよく、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0171】
前記ゴム組成物は、一例として、本発明の変性共役ジエン系重合体100重量部に対して0.1重量部~200重量部、または10重量部~120重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、一例として、シリカ系充填剤であってもよく、具体的な例として、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよく、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ(wet grip)性の両立効果に最も優れた湿式シリカであってもよい。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボン系充填剤をさらに含んでもよい。
【0172】
また他の例として、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性の改善のためのシランカップリング剤が共に用いられてもよい。具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであってもよく、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、または3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0173】
また、本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、ゴム成分として、活性部位にシリカとの親和性が高い官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量は、通常の場合よりも低減されてもよく、これにより、前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部で用いられてもよい。この範囲内にて、カップリング剤としての効果が十分に発揮されながらも、ゴム成分のゲル化を防止するという効果がある。
【0174】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、加硫剤をさらに含んでもよい。前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。この範囲内にて、加硫ゴム組成物の必要な弾性率および強度を確保するとともに低燃費性に優れるという効果がある。
【0175】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0176】
前記加硫促進剤としては、一例として、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が用いられてもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0177】
前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、一例として、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、引張強度および耐摩耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が用いられてもよい。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよい。この範囲内にて、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止するという効果がある。
【0178】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0179】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得ることができ、成形加工後、加硫工程により、低発熱性であるとともに耐摩耗性に優れたゴム組成物を得ることができる。
【0180】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0181】
さらに、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0182】
実施例
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に詳述する実施例に限定されるものと解釈してはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0183】
実施例1
3個の連続撹拌槽型反応器(CSTR)のうち第1反応器に、n-ヘキサン5kg/hr、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された単量体溶液を1.16kg/hr、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解された単量体溶液を0.31kg/hr、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが6.6重量%で溶解された開始剤溶液を8.33g/hr、極性添加剤としてn-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが2重量%で溶解された極性添加剤溶液を2.25g/hrの流れ速度で連続的に投入した。この際、反応器の内部温度が60℃となるように維持し、重合転換率が70%となった際に、移送配管を通して第1反応器から第2反応器に重合物を移送した。
【0184】
次いで、第2反応器の温度は60℃となるように維持し、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された溶液を0.2kg/hr、極性添加剤としてn-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが10重量%で溶解された極性添加剤溶液を6g/hrで連続的に投入させて反応に参加させ、重合転換率が95%以上となった際に、移送配管を通して第2反応器から第3反応器に重合物を移送し、変性剤としてn-ヘキサンにN,N-ジメチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミンが5重量%で溶解された溶液を11.6g/hrで投入し、30分間反応を行った。
【0185】
その後、酸化防止剤として30重量%で溶解されたIR1520(BASF社)溶液を100g/hの速度で注入して撹拌した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒および水を除去し、変性共役ジエン系共重合体を製造した。
【0186】
実施例2
前記実施例1において、第1反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された単量体溶液を1.13kg/hr、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解された単量体溶液を0.28kg/hr、極性添加剤としてn-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが2重量%で溶解された極性添加剤溶液を4.0g/hrで連続的に投入し、第1反応器での重合転換率が72%である際に重合物を第1反応器から第2反応器に移送したことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0187】
実施例3
前記実施例1において、第1反応器の温度を70℃、第2反応器の温度を65℃となるように維持し、第1反応器の重合転換率が80%である際に第2反応器に移送したことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0188】
実施例4
前記実施例1において、第1反応器での重合転換率が77%である際に重合物を第1反応器から第2反応器に移送し、第2反応器に追加投入される1,3-ブタジエン溶液を第2反応器に投入していないことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0189】
実施例5
前記実施例1において、変性剤として、N,N-ジメチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミンの代わりに、n-ヘキサンにビス(3-(ジエトキシメチルシリルプロピル)-N-メチルアミン(bis(3-(diethoxymethylsilylpropyl)-N-methylamine)が5重量%で溶解された溶液を23.0g/hrで投入したことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0190】
実施例6
前記実施例1において、第1反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された単量体溶液を1.08kg/hr、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解された単量体溶液を0.35kg/hr、極性添加剤としてn-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが2重量%で溶解された極性添加剤溶液を3.0g/hrで連続的に投入し、第1反応器での重合転換率が75%である際に重合物を第1反応器から第2反応器に移送し、第2反応器に追加投入される1,3-ブタジエン溶液を0.24kg/hrで連続的に投入し、変性剤として、N,N-ジメチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミンの代わりに、n-ヘキサンにビス(3-(ジエトキシメチルシリルプロピル)-N-メチルアミン(bis(3-(diethoxymethylsilylpropyl)-N-methylamine)が5重量%で溶解された溶液を23.0g/hrで投入したことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0191】
実施例7
前記実施例1において、第1反応器での重合転換率が73%である際に重合物を第1反応器から第2反応器に移送し、第2反応器に追加投入されるn-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが10重量%で溶解された極性添加剤溶液を15.0g/hrで連続的に投入したことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0192】
実施例8
前記実施例2において、第1反応器での重合転換率が73%である際に重合物を第1反応器から第2反応器に移送し、変性剤として、N,N-ジメチル-3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-アミンの代わりに、n-ヘキサンにビス(3-(ジエトキシメチルシリルプロピル)-N-メチルアミン(bis(3-(diethoxymethylsilylpropyl)-N-methylamine)が5重量%で溶解された溶液を23.0g/hrで投入したことを除いては、実施例2と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0193】
比較例1
前記実施例1において、第1反応器に、n-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが2重量%で溶解された極性添加剤溶液を17.5g/hrで投入し、第1反応器の重合転換率が78%である際に重合物を第2反応器に移送し、第2反応器に1,3-ブタジエンおよび極性添加剤を投入していないことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0194】
比較例2
前記実施例6において、第1反応器に、n-ヘキサンにジテトラヒドロフリルプロパンが2重量%で溶解された極性添加剤溶液を6.0g/hrで投入し、第1反応器の重合転換率が73%である際に重合物を第2反応器に移送し、第2反応器に1,3-ブタジエンおよび極性添加剤を投入していないことを除いては、実施例6と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0195】
比較例3
前記比較例1において、第1反応器の重合転換率が72%である際に重合物を第2反応器に移送し、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された溶液を0.2kg/hrで投入し、重合反応を行ったことを除いては、比較例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0196】
比較例4
前記比較例1において、第1反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された単量体溶液を1.08kg/hr、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解された単量体溶液を0.35kg/hr、極性添加剤溶液を12.0g/hrで投入し、第1反応器の重合転換率が76%である際に重合物を第2反応器に移送し、第2反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された溶液を0.2kg/hrで投入し、重合反応を行ったことを除いては、比較例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0197】
比較例5
前記実施例1において、第1反応器での重合転換率が65%である際に重合物を第2反応器に移送したことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0198】
比較例6
前記実施例1において、第1反応器での重合転換率が87%である際に重合物を第2反応器に移送したことを除いては、実施例1と同様に行い、変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0199】
比較例7
前記比較例1において、第1反応器に、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60重量%で溶解された単量体溶液を1.16kg/hr、n-ヘキサンにスチレンが60重量%で溶解された単量体溶液を0.31kg/hr、極性添加剤溶液を5.0g/hrで投入し、第1反応器の重合転換率が75%である際に重合物を第2反応器に移送し、変性剤の代わりに、カップリング剤としてn-ヘキサンに四塩化ケイ素(Silicon tetrachloride)が4.5重量%で溶解された溶液を3.7g/hrで連続的に供給し、カップリング反応を行ったことを除いては、比較例1と同様に行い、未変性共役ジエン系重合体を製造した。
【0200】
実験例1.重合体の特性の評価
前記実施例、比較例で製造された各変性または未変性共役ジエン系重合体に対し、重合体中のスチレン単位の含量およびビニルの含量、重量平均分子量(Mw、×103g/mol)、数平均分子量(Mn、×103g/mol)、分子量分布(PDI、MWD)、ガラス転移温度、ガラス転移開始温度、ガラス転移終了温度、tanδピークの半値全幅をそれぞれ測定した。結果を下記表1に示した。
【0201】
1)スチレン単位およびビニルの含量(重量%)
前記各重合体中のスチレン単位(SM)およびビニル(Vinyl)の含量は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて測定および分析した。
【0202】
NMRの測定時、溶媒としては1,1,2,2-テトラクロロエタンを用い、溶媒ピーク(solvent peak)は6.00ppmで計算し、7.2~6.9ppmはランダムスチレン、6.9~6.2ppmはブロックスチレン、5.8~5.1ppmは1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは1,2-ビニルのピークとしてスチレン単位およびビニルの含量を計算した。
【0203】
2)重量平均分子量(Mw、×10
3
g/mol)、数平均分子量(Mn、×10
3
g/mol)、および分子量分布(PDI、MWD)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)(PL GPC220、Agilent Technologies)により、下記の条件で数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)をそれぞれ測定し、また、重量平均分子量を数平均分子量で割って分子量分布を計算した。
【0204】
-カラム:PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせて使用
-溶媒:テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物を混合使用
-流速:1mL/min
-試料濃度:1~2mg/mL(THFに希釈)
-注入量:100uL
-カラム温度:40℃
-検出器(Detector):屈折率(Refractive index)
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(三次関数で補正)
【0205】
3)ガラス転移温度(Tg、℃)、ガラス転移開始温度(T
g-on
、℃)、およびガラス転移終了温度(T
g-off
、℃)
ISO 22768:2006に準じて、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、DSCQ100、TA社)を用いて、窒素50ml/minの流通下、-100℃から10℃/minで昇温させながら示差走査熱量曲線(DSC曲線)を記録し、この曲線において、ガラス転移が始まる温度をガラス転移開始温度とし、ガラス転移が終わる温度をガラス転移終了温度とし、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0206】
4)tanδピークの半値全幅(Full Width Half Maximum、FWHM)
前記実施例および比較例で製造された重合体に対し、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)による動的粘弾性分析のために、動的機械分析器(TA社、ARES-G2)を用いて、ねじれモード(Torsional mode)で、周波数10Hz、変形率(Strain)0.5%、昇温速度5℃/minで、温度範囲-100℃~100℃での温度に応じたtanδを測定し、
図1のようなtanδグラフを得、このグラフからピークの半値全幅を求めた。
【0207】
【0208】
前記表1を参照すると、本発明に係る製造方法により製造された変性共役ジエン系重合体の場合、ガラス転移が発生するガラス転移開始温度(onset、Tg-on)とガラス転移終了温度(offset、Tg-off)との差が20℃以上30℃以下であり、tanδピークの半値全幅値も20℃以上であることを確認することができる。
【0209】
これに対し、本発明に係る製造方法によらない比較例は、ガラス転移開始温度とガラス転移終了温度との差が10℃未満であり、tanδピークの半値全幅値も20℃未満であることが確認することができる。
【0210】
前記結果から、本発明の製造方法による場合には、重合体の微細構造の精密な制御が可能であり、ガラス転移開始温度とガラス転移終了温度との差の調節が可能であり、さらにはtanδピークの半値全幅値を大きくできることが分かる。
【0211】
実験例2.ゴム成形品の特性評価
前記実施例および比較例で製造された各変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物およびそれにより製造された成形品の物性を比較分析するために、引張特性、粘弾性特性、および耐摩耗性をそれぞれ測定し、その結果を下記表3に示した。
【0212】
1)ゴム試験片の製造
実施例および比較例の各変性または未変性共役ジエン系重合体を原料ゴムとし、下記表2に示した配合条件で配合した。表2中の原料の含量は、原料ゴム100重量部基準に対する各重量部である。
【0213】
【0214】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練においては、温度制御装置付きのバンバリーミキサーを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃の排出温度で一次配合物を得た。第2段混練においては、前記一次配合物を室温まで冷却した後、混練機に一次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPD(ジフェニルグアニジン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して二次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0215】
2)粘弾性特性
前記実施例および比較例で製造された重合体を含んで作製したゴム試験片に対し、動的機械分析器(TA社、ARES-G2)を用いて、ねじれモード(Torsional mode)で、周波数10Hz、変形率(Strain)0.5%、昇温速度5℃/minで、温度範囲-100℃~100℃での温度に応じたtanδを測定し、tanδグラフを得た。得られたtanδグラフから、0℃でのtanδ値および60℃でのtanδ値を確認した。この際、低温0℃でのtanδ値が高いほど、ウェットスキッド抵抗性に優れ、高温60℃でのtanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、走行抵抗性(燃費性)に優れることを示すが、下記表3における結果値は、比較例7の測定結果値を基準として指数化して示したため、数値が高いほど優れることを示す。
【0216】
3)耐摩耗性(DIN摩耗試験)
各ゴム試験片に対し、ASTM D5963に準じてDIN摩耗試験を行い、DIN loss index(損失体積指数(loss volume index):ARIA(Abration resistance index、Method A)で示した。下記表3における結果値は、比較例7の測定結果値を基準として指数化したものであるため、数値が高いほど優れることを示す。
【0217】
【0218】
前記表3を参照すると、本発明に係るガラス転移開始温度とガラス転移終了温度との差が10℃以上30℃以下である変性共役ジエン系重合体を含むゴム試験片の場合、ウェットスキッド抵抗性および走行抵抗性がバランスよく改善された特性を示すとともに、耐摩耗性が顕著に改善されたことを確認することができる。これに対し、ガラス転移開始温度とガラス転移終了温度との差が10℃未満である比較例1~比較例6の変性共役ジエン系重合体を含むゴム試験片の場合、走行抵抗性が実施例に比べて顕著に低下し、耐摩耗性が顕著に劣悪であることを確認することができる。
【0219】
上記の結果から、本発明の変性共役ジエン系重合体は、微細構造の制御により、ガラス転移開始温度とガラス転移終了温度との差が10℃以上30℃以下であることで、ウェットスキッド抵抗性および走行抵抗性にバランスよく優れるとともに耐摩耗性が改善されるという効果があることを確認した。