(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】膵島移植保護用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20241210BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20241210BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20241210BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
A61K35/39
A61P1/18
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2022559717
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 KR2021004022
(87)【国際公開番号】W WO2021201609
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039408
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン-マン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ギュリ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ハン・シン・イ
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0075638(KR,A)
【文献】J. Clin. Med.,2009年11月,Vol.8, No.11, 1763,pp.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/071
A61K 35/39
A61P 1/18
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として下記式(1)
【化1】
[式中、nは0又は1であり;
Xは、Cであり、nが1であり;
R
1は、水素又はC
1-C
6アルキルであり;
R
2は、フェニルであり;
R
3は、水素又はC
1-C
6アルキルであり;
R
4は、-CH
2-(1,1-ジオキソ-チオモルホリン-4-イル)又は-CH
2-(2-オキソピペラジン-4-イル)であり;
R
5は、水素、C
1-C
6アルキル又はC
3-C
6シクロアルキルであり;
R
6は、テトラヒドロピラン、又はテトラヒドロフランで
ある。]で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、
酸化ストレス及び活性酸素種(ROS)の量を減少させることによって膵島を保護するための、膵島移植保護用組成物。
【請求項2】
前記式(1)で示される化合物が、下記式(2)
【化2】
で示される(テトラヒドロピラン-4-イル)-[2-フェニル-5-(1,1-ジオキソ-チオモルホリン-4-イル)メチル-1H-インドール-7-イル]アミンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(1)で示される化合物が、膵島を分離中に処理されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)で示される化合物が、分離された膵島を血清欠乏(serum-deprived)培養中に処理されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)で示される化合物が、c-junN-末端キナーゼ、HMGB1(high mobility group box-1)及び炎症誘発性(proinflammatory)サイトカインの発現を減少させることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記炎症誘発性サイトカインが、インターロイキン-1β、インターロイキン-6及び腫瘍壊死因子(TNF)-αであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(1)で示される化合物が、アミロイド及び毒性IAPP(islet amyloid polypeptide)オリゴマーの蓄積を減少させることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵島移植時に保護効果を有する組成物に関し、より詳細には、式(1)
【化1】
(式中、n、X、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、本明細書で定義したものと同義である。)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、膵島移植時に酸化ストレス及び炎症などに対する保護効果を提供することができる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1型糖尿病又は近年急増している長期にわたる2型糖尿病は、膵臓β-細胞破壊によりインスリンに大きく依存し、生命を脅かす低血糖及び糖尿病合併症の発生率が高くなっている。膵島移植とは、脳死から提供された膵臓を生化学的に処理して純粋な膵島を分離し、レシピエントに投与する手術を指す。手術の目的は、糖尿病患者がインスリンを投与せずに血糖を正常にコントロールできるようにすることである。移植された膵島は、インスリンを分泌するため、レシピエントはインスリンを投与しなくても通常の生活を送ることができる。
【0003】
同種異系膵島移植は、低血糖に対する認識障害を合併した1型糖尿病患者において、重度の低血糖を除去し、正常血糖を達成するための有望な戦略であった。しかし、移植前後(peri-transplant)の期間中に移植された膵島質量の実質的な損失は、広範囲な臨床使用にとって重要なハードルのままである。
【0004】
移植前後の期間中、低酸素症/再酸素化(reoxygenation)に誘発される損傷及びHMGB1などの損傷関連分子パターン(DAMPs)の放出は、先天性免疫及び炎症誘発性(proinflammatory)サイトカイン産生の強力な活性化剤としてますます認められている。細胞死の非炎症性又は抗炎症性モードでさえあるアポトーシスとは対照的に、ネクロトーシス(necroptosis)又は壊死(necrosis)は高度に免疫原性(immunogenic)である。少なくとも部分的には、壊死細胞から放出されたDAMPs及び壊死プロセス中のヌクレオチド結合オリゴマー化(NOD)様受容体タンパク質3(NLRP3)インフラマソーム(inflammasome)の細胞固有の活性化の両方が、このような免疫原性の原因となっている。
【0005】
ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mPTP)の開放を誘導するミトコンドリアの活性酸素種(ROS)の生成は、ネクロトプシス及び壊死プロセスを促進する主要なプレーヤー(player)の1つである。β-細胞は、カタラーゼ、スーパーオキシド・ジスムターゼ及びグルタチオン・ペルオキシダーゼなどの坑酸化酵素遺伝子の発現が低いため、酸化ストレスの影響を非常に受けやすいことが知られているため、移植された膵島のネクロトーシス及び壊死におけるミトコンドリアROSの役割は重要である可能性がある。従って、様々な膵島移植過程で生成された酸化ストレスと低酸素症/再酸素化誘発損傷が重大なβ-細胞損傷と移植膵島の主な損失において重要な役割を果たす可能性がある。これに関連して様々な抗酸化剤がいくつかの研究で使用されており、酸化的損傷に対する膵島の保護に可能な影響を与え、インビトロでの膵島の生存力及びインスリン分泌を高め、膵島移植手順を改善させる。しかし、これらの接近法の臨床的適用の可能性は、臨床グレードの物質のより強力な効能及び利用の可能性を求め得いる。さらに、ミトコンドリアROSの産生は、以前の研究では特定の標的ではなく、これらの研究は主にアポトーシスの減少に焦点を当てていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の技術的課題は、膵島移植時に膵島を効率的に膵島を保護できる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、有効成分として下記式(1)
【化2】
[式中、nは0又は1であり;XはC又はNであり、ただし、XがNの場合は、nが0であり、XがCの場合は、nが1であり;R
1は、水素又はC
1-C
6アルキルであり;R
2は、フェニル又はピリジンであり;R
3は、水素、ハロゲン又はC
1-C
6アルキルであり;R
4は、水素、ハロゲン、2-カルボキシ-ピロリジン-1-イル、ピロリジン-1-イル、4-酢酸-1,3-チアゾリン-2-イル、-CH
2-(1,1-ジオキソ-チオモルホリン-4-イル)又は-CH
2-(2-オキソピペラジン-4-イル)であり;R
5は、水素、C
1-C
6アルキル又はC
3-C
6シクロアルキルであり;R
6は-D-W-R
7(ここで Dは、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン又はピペリジンであり、Wは、直接結合、-SO
2-、-CO-、-C(O)O-である)であり;R
7は、水素、ヒドロキシ又はC
1-C
6アルキルである。]で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む膵島移植保護用組成物を提供する。
【0008】
本発明による1つの実施形態において、前記式(1)で示される化合物が、下記式(2)
【化3】
で示される(テトラヒドロピラン-4-イル)-[2-フェニル-5-(1,1-ジオキソ-チオモルホリン-4-イル)メチル-1H-インドール-7-イル]アミンである。
【0009】
本発明による別の実施形態において、前記薬学的に許容される塩は、薬学的に許容されるアニオンを含有する無毒性酸付加塩を形成する酸、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸;酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸などの有機カルボン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸などによって形成された酸付加塩が含まれる。また、薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される塩基付加塩、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどによって形成されたアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩;リシン、アルギニン、グアニジンなどのアミノ酸塩;ジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジエタノールアミン、コリン、トリエチルアミンなどの有機塩などが含まれるが、これらに限定されない。本発明による前記式(1)で示される化合物は、従来の方法によってそれらの塩に変換することができ、塩の製造は別の説明なしに前記式(1)の構造に基づいて当業者によって容易に実施することができる。
【0010】
膵島(膵臓小島、pancreatic islet)移植は、膵臓からインスリンを産生する膵島細胞のみを取り出してレシピエントに移植する手術であり、固形臓器ではなく細胞治療の代表的な例である。
【0011】
しかし、β-細胞は、坑酸化防御システムが弱いため、酸化ストレスに対して脆弱である。膵島の分離中に、低体温、機械的ストレス及びコラゲナーゼへの曝露などの様々な要因が酸化ストレスの生成に寄与し、最終的に細胞死を引き起こす。膵島移植及び血管再生術(revascularization)の過程で酸素と栄養素が不足すると、膵島でアポトーシス(apoptosis)、オートファジー(autophagy)、壊死及びネクロトーシス(necroptosis)が発生する。アポトーシスは、壊死とは対照的に、通常は炎症反応を伴わないが、低酸素症による膵島の一次アポトーシスは、切断された形ではなく、切断されていないカスパーゼ-9及びカスパーゼ-3を提供する免疫活性化を誘導する可能性がある。これは、二次アポトーシスではなく、損傷-関連分子パターン(DAMPs)の放出を誘導する壊死への主な細胞死プロセスをしている。DAMPは、HMGB1、dsDNA、尿酸などの分子で、細胞内空間から放出され、主に先天免疫系に関与するToll様受容体(TLR)によって主に認識される。DAMPsは、壊死及びネクロトーシスによる細胞死の結果として虚血及び再灌流損傷中に放出され、膵島移植失敗における炎症カスケードの寄与するため、アポトーシス又はオートファジーよりも壊死及びネクロトーシスを抑制することは、膵島移植期間中のDAMPs放出と関連する免疫反応を減らすための好ましい戦略である可能性がある。
【0012】
HMGB1は、細胞死の際に損傷した細胞又は壊死細胞から分泌され、DAMPシグナル及び炎症誘発性サイトカインとして機能し、様々な炎症性疾患の病因に関連している。インターロイキン(IL)-1β、インターフェロン(IFN)-γ及び腫瘍壊死因子(TNF)-αなどのいくつかの炎症誘発性サイトカインは、ROS形成及びJNK活性化、及びNF-kBの電位(translocation)を含む一連の細胞内シグナル伝達経路を介してβ-細胞機能障害及びアポトーシスを誘導することも知られており、NF-kBは、NADPHオキシダーゼを制御する転写因子であり、酸化ストレスの発生につながっている。炎症誘発性サイトカインの共同作用は、誘導性酸化窒素シンターゼ(iNOS)の発現を誘導し、iNOS活性の遮断又はマンガン過酸化物ジスムターゼ(MnSOD)の発現増加は、インスリン産生細胞株のインビトロ条件下でサイトカイン-誘導されたNF-kB活性化を弱化させた。
【0013】
安全規制のための動物製品の使用を避けるために、分離されたヒト膵島は、一般に、臨床同種膵島移植前に血清欠乏の培養条件下で培養される。血清欠乏条件下での膵島の培養中、膵島はさらに、培地から様々なストレス、栄養素の欠乏、様々な炎症誘発性サイトカイン、外分泌膵臓からの酵素及び十分な酸素供給の欠如にさらされている。このようなストレスは、β-細胞に有害であり、過剰なROSの蓄積を誘導する。また、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)の毒性は2型糖尿病におけるβ-細胞量の漸減及び膵島繊維化の原因であると考えられており、正常血糖状態での血清欠乏培養が毒性のあるhIAPPオリゴマー蓄積を誘発すると考えられていた。IL-1/IL-1受容体軸の阻害は、血清欠乏培養によって引き起こされる膵島の炎症反応及び機能障害を弱化することはできるが、IL-1封鎖(blockade)は血清欠乏培養中の毒性オリゴマーの蓄積を弱めることができない。
【0014】
本発明の式(1)で示される化合物は、膵島分離中に処理される場合、酸化ストレス及び活性酸素種(ROS)の量を減少させることによって膵島を保護することができる。
【0015】
また、本発明の式(1)で示される化合物が、分離された膵島を血清欠乏の培養中に処理される場合、c-junN-末端キナーゼ、HMGB1及び炎症誘発性サイトカイン(例えば、インターロイキン-1β、インターロイキン-6及び腫瘍壊死因子(TNF)-α)の発現が減少し、強力なミトコンドリア活性酸素種(ROS)消去活性により、アミロイド及び毒性IAPP(膵島アミロイドポリペプチド)オリゴマーの蓄積を減少することができる。
【0016】
本発明の式(1)で示される化合物は、膵島の分離又は分離された膵島を血清欠乏の培養中に処理される場合、前記のような作用機序を通じて膵島を効率的に保護し、それによって、膵島移植後の糖尿病の回復率を劇的に改善させることができる。
【0017】
本発明の別の実施形態において、本発明の組成物は、必要に応じて、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。本明細書において「担体(carrier)」とは、細胞又は組織への化合物の投与を容易にする物質を意味し、特に限定されない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の組成物は、膵島細胞に対する優れた保護効果を提供することにより、膵島移植の成功率を有意に改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】分離されたhIAPP
+/-マウス膵島のインビトロでの生残率、機能及び炎症誘発性サイトカインの発現に対する分離中の化合物1の効果を評価した結果を示す図である。
【
図2】分離されたC57BL/6マウス膵島のインビトロでの生残率、機能及び炎症誘発性サイトカインの発現に対する分離中の化合物1の効果を評価した結果を示す図である。
【
図3】hIAPP
+/-マウス膵島の移植後のインビボ結果に対する分離中の化合物(1)の効果を評価した結果を示す図である。
【
図4】RINm5F細胞及びhIAPP
+/-マウス膵島の細胞生残率及びROSに対する血清欠乏培養中の化合物1の効果を評価した結果を示す図である。
【
図5】非ヒト霊長類(NHP)膵島における細胞生残率及びROSに対する血清欠乏培養中の化合物1の効果を評価した結果を示す図である。
【
図6】分離されたhIAPP
+/-マウス膵島のインビトロでの生残率、機能、炎症誘発性サイトカインの発現及びオリゴマー蓄積に対する血清欠乏培養中の化合物1の効果を評価した結果を示す図である。
【
図7】hIAPP
+/-マウス膵島の移植後のインビボ結果に対する血清欠乏培養中の化合物1の効果を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、製造例及び実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらの例は例示に過ぎず、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0021】
I.実験物質及び方法
1.化合物
(テトラヒドロピラン-4-イル)-[2-フェニル-5-(1,1-ジオキソ-チオモルホリン-4-イル)メチル-1H-インドール-7-イル]アミン(以下、‘化合物1’という)は、国際公開公報WO2009/025478号の実施例36で開示した方法に従って調製した。
【0022】
2.実験動物及び細胞株
異型接合性ヒト膵島アミロイドポリペプチド(human islet amyloid polypetide)遺伝子移植(hIAPP+/-)FVB/Nマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME, USA)、C58BL/6マウス(Orientbio, 韓国)及びカニクイザル(Orientbio, 韓国)から膵島を分離した。更なるインビトロ研究のために、ラットインスリノーマ細胞(RINm5F細胞)をtert-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP)曝露又は血清欠乏条件下での培養中に、化合物1の存在下又は非存在下で処理した。RINm5F細胞を100IU/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有するDMEM培地(Gibco, Grand Island, NY, USA)に懸濁し、十分に加湿された5%CO2雰囲気で37℃で培養した。この研究のすべての実験プロトコルは、サムスン生命科学研究所の動物実験倫理委員会(IACUC)により承認された。
【0023】
3.膵島分離
マウス膵島は、前記に記載されているように、10~12週齢のhIAPP+/-及びC57BL/6マウスから分離した。簡単に説明すると、20μM化合物1を含む又は含まないHBSS緩衝溶液(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)中の0.8mg/mLのコラゲナーゼを総胆管で注入して、マウスの膵臓を処理(digestion)した。Ficoll(Biochrom, Berlin, Germany)勾配を使用して処理されたマウスの膵臓から膵島を精製し、1xHBSSで数回洗浄した。分離された膵島は、10mLのRPMI1640(Gibco, Grand Island, NY, USA)で浮遊しながら培養された。エクスビボ及びインビボ研究の前に、37℃及び5%CO2培養で10%熱不活性化FBS(ウシ胎児血清)を培地に補充した。
【0024】
4.非ヒト霊長類膵島の分離
解剖された非ヒト霊長類(NHP)の膵臓に、冷たいリベラーゼMTFC/T溶液(4mL/g膵臓;Roche)を管内注射した。処理(digestion)及び分離は、前記説明したRicordiの自動分離技術を使用して行った。すべての分離されたNHP膵島は、インビトロ及びインビボ研究の前に、37℃及び5%CO2培養で10%熱不活性化ブタ血清が補充されたCMRL培地で培養した。
【0025】
5.分離された膵島の血清欠乏のエクスビボ培養
精製されたhIAPP+/-FVB/N及びC57BL/6Jマウスを、100IU/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有するRPMI1640(Gibco, Grand Island, NY, USA)に懸濁し、十分に加湿された5%CO2雰囲気で37℃で培養した。精製されたNHP膵島は、100IU/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含有するCMRL1066培地(Corning Life Sciences, Tewksbury, MA, USA;カタログ番号99-663-CV)に懸濁され、十分に加湿された5%CO2雰囲気で37℃で培養した。マウス膵島のエクスビボ培養中に、hIAPP+/-FVB/N及びC57BL/6Jマウス膵島を使用した実験用に3つの実験群を指定した:10%FBS(Tissue Culture Biologicals, Los Alamitos, CA, USA;カタログ番号101)が添加された培地(FBS群)、0.625%BSA(Qbiogene, Carlsbad, CA, USA;カタログ番号BSA003)が添加された培地(BSA群)、及び0、0.1、1、10及び20μMの化合物1+0.625%BSAが添加された培地(BSA+化合物1群)。NHP膵島を使用した実験では、培地に10%FBS(FBS群)及び0-20μMの化合物1+0.625%ヒト血清アルブミン(HSA; Greencross, Yongin, Korea)を添加し、血清欠乏培養中の処理のための化合物1の最適濃度を決定した。また、培地に10%FBS(FBS群)、20μMの化合物1+10%FBS(FBS+化合物1群)、0.625%ヒト血清アルブミン(HSA; Greencross, Yongin, Korea;HSA群)又は20μM化合物1+0.625%HSA(HSA+化合物1群)が添加された。
【0026】
6.Alamar Blueアッセイによる膵島生残率の評価
製造元のプロトコル(Invitrogen, Grand Island, NY, USA)に従ってAlamar Blue染色を使用して膵島の生残率を評価した。簡単に説明すると、hIAPP+/-マウスから分離された膵島を、化合物1の有無にかかわらず、10%FBS及び0.625%BSAを含むRPMI 1640で24-ウェルプレートで、ウェル当たり100個の膵島当量(IE)の密度で培養した。1日後及び3日後、10xAlamarBlue溶液を各ウェルに直接添加し、膵島を直接光から保護しながら37℃で4時間培養した。各ウェルの蛍光強度をGloMax-Multi Plus Detection システム(Promega, Fitchburg, WI, USA)を使用して570/585nm(励起/放出)で測定し、値をブランク(blank)に対して標準化した。
【0027】
7.アクリジンオレンジ/ヨウ化プロピジウム(AO/PI)アッセイ
分離及び培養後の膵島生残率は、アクリジンオレンジ(0.67μmol/L)及びヨウ化プロピジウム(75μmol/L)(AO/PI)染色で二重蛍光を使用して評価し、生きている膵島細胞と死んだ膵島細胞を同時に視覚化した。蛍光イメージングは、蛍光顕微鏡(Nikon ECLIPSE 80i, Tokyo, Japan)で行い、NIS-E lement AR3.0(Nikon)を使用して生きている領域及び死んだ領域を定量化した。膵島の生残率(%)は、生きている膵島細胞/総膵島細胞×100として計算した。
【0028】
8.ATPアッセイ
膵島のATP含量は、発光測定法によって分析した。サンプルを、最初にイミダゾールバッファー(100mM、pH7.75)で再構成した、ホタルルシフェラーゼ及びルシフェリンを含む市販の凍結乾燥ATPモニタリング試薬(ATP Bioluminescence Assay KIT CLS II, Roche Diagnostics)200μLと混合した。放出された光は、照度計(LKB 1250照度計)で測定した。サンプル中のアデニンヌクレオチド含量は、対照群(膵島又は細胞なし)の補正後に決定され、サンプルと同じ方法で処理されたATP標準を参照して計算した。
【0029】
9.蛍光ベースの細胞内フリーラジカル検出及び脂質過酸化
hIAPP+/-マウス膵島の酸化ストレスレベルは、膵島の分離直後及び分離された膵島のエクスビボ培養後に測定された。膵島の酸化ストレスは、蛍光ベースの細胞内ROS検出方法を使用して、脂質過酸化の副産物であるマロンジアルデヒド(MDA)の濃度を推定することによって定量化した。総ROS、スーパーオキシドイオン及び一酸化窒素の形成は、ROS検出キット(ENZ-51011)(Enzo Life Sciences, Farmingdale, New York, USA)を使用して決定した。ROS含量は、DHR123蛍光レベルによって測定した。キットは、製造元のプロトコルに従って適用した。
【0030】
10.グルコース-刺激インスリン分泌(GSIS)アッセイ
膵島を精選(hand-picking)し、PBSで洗浄をした後、直径12mmのインサートウェル(insert well)(Merck Millipore, Billerica, MA, USA)にウェル当たり10個の膵島で播種し、60mg/dLグルコースが添加されたKreb’s-Ringerバッファー(KRB:129mM NaCl、4.8mM KCl、2.5mM CaCl2、1.2mM KH2PO4、5mM NaHCO3、10mM HEPES及び0.2%BSA)で37℃で90分間予備培養した。洗浄後、膵島を300mg/dLのグルコース-KRBと1時間培養し、続いて60mg/dLグルコース-KRBとさらに1時間培養した。マウス膵島による上清へのインスリン放出は、それぞれELISA(ALPCO, Salem, NH, USA)及びマルチプレックスキット(Merck Millipore)によって測定された。
【0031】
11.RNA分離及びcDNA合成
回収された膵島を500μLのTrizol(Life Technologies, Grand Island, NY, USA)で処理した後、100μLのクロロホルムを加えた。4℃で5分間培養した後、混合物を12,000rpmで15分間遠心分離し、250μLのイソプロピルアルコールを加えて全RNAを沈殿させた。RNAペレットを75%エタノールで洗浄し、RNase-free water(WelGene, Daegu, South Korea)を使用してペレットからRNAを溶出させた。RNA純度は、NanoDrop(Thermo Scientific, Wilmington, DE, USA)及びアガロースゲル電気泳動によって評価された。RNAの純度は、260/230及び260/280の光学密度(OD)の比率に基づいて、1.9~2.0の範囲であった。製造元のプロトコルに従って、SuperScript(登録商標)II逆転写システム(Life Technologies)を使用して、遺伝子の発現を定量するために全RNAを逆転写した。
【0032】
12.リアルタイム定量的逆転写(qRT)-PCR
リアルタイムqRT-PCRは、遺伝子特異的プライマーペアを使用して行った(表1)。増幅されたPCR産物は、同じサンプルから増幅されたβ-アクチンPCR産物に対して標準化した。PCR産物を1%アガロースゲルで分離し、Gel DocTM XR機器(Bio-Rad, Hercules, CA, USA)を使用して画像を得た。遺伝子の発現レベルを定量化するために、製造元のプロトコルに従って、SYBRプレミックスキット(Takara Bio Inc., Tokyo, Japan)及びABI Prism 7000(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を使用してリアルタイムPCRを行った。
【表1】
【0033】
13.hIAPP+/-膵島のインビボ膵島機能
限界質量腎被膜下膵島移植モデル(marginal mass renal subcapsular islet transplantation model)を使用して、hMAPP+/-マウスのインビボ膵島機能を評価した。糖尿病を誘導するために、180mg/kgのストレプトゾトシン(STZ, Sigma-Aldrich)を8~10週齢のhIAPP-/-FVB/Nマウスに投与した。血糖数値が2回連続して300mg/dLを超えた場合、マウスは糖尿病であると見なされた。エクスビボ培養中の膵島質量及び機能に対する化合物1の複合効果を評価するために、hIAPP+/-マウスから分離された同量(レシピエント1人あたり400IEQの膵島)の膵島を、次の2つの群に割り当てた:0.625%BSA(BSA群)及び0.625%BSA+化合物1(BSA+化合物1群)。72時間培養した後、膵島を糖尿病性hIAPP-/-マウスの腎肩甲下腔に移植した。IE番号は、Ricordiアルゴリズムを使用して、膵島を直径に従って分類することによって計算した。膵島移植後、最初の2週間は週3回、最後の2週間は週2回、非空腹時血糖値を測定した。
【0034】
14.組織学的分析
移植4週後、マウスの腎臓の移植部位を除去し、パラフィンに包埋(embedded)した。以下に免疫組織化学染色について簡単に説明する。脱パラフィン化後、4-μmの組織切片をポリクローナルモルモット抗インシュリン抗体(1:1000、A0546、DAKO, Denmark)、グルカゴン(1:500、ab92517、abcam, United Kingdom)及びアミロイド(1:2500、#44-344、Invitrogen)で染色した。染色されたスライドは、×10/22開口数(numeric aperture)及び×40/0.75開口数対物レンズを備えたオリンパスBX40光学顕微鏡(Olympus, Japan)を使用して観察した。デジタルカメラ(オリンパスDP50)で写真画像を収集し、Image-Pro Plus5.1ソフトウェアを使用して分析した。
【0035】
DAB標識β-細胞の定量化のために、すべてのスライドをVectra3.0の自動定量病理イメージングシステムで10Xでイメージ化し、inFormソフトウェア(すべてPerkin-Elmer, Waltham, MA, USA)を使用して分析した。移植された腎臓組織切片は、画像獲得のためにスキャンされ、移植された組織セグメンテーションを設定するために、移植された膵島細胞の代表的な領域の数と、腎組織のなどの分析から除外される領域が学習(learn-by-example)インターフェースによって調べられた。β-細胞セグメンテーションの場合、スペクトルライブラリーを使用して、移植組織内のヘマトキシリン染色核及びDAB染色細胞質(β-細胞)を特定した。これらの訓練セットを使用して、移植組織内のDAB染色細胞のみを識別するためのアルゴリズムが確認された。キャプチャされたすべての10Xの画像を分析し、DAB染色された移植β-細胞を計数した。
【0036】
15.hIAPPオリゴマー蓄積の評価
h11APPオリゴマーの蓄積は、A11Ab(抗オリゴマー抗体、Invitrogen)及びインシュリン抗体(Dako)で染色されたhIAPP+/-マウス膵島の切片を使用して評価した。膵島を10%正常ロバ血清でブロックし、1次ウサギ抗オリゴマー(1:100)と培養した。膵島を洗浄し、2次Cy3結合抗ウサギ抗体と共に1時間培養した。洗浄後、切片をモルモット抗インスリン1次抗体(1:500;Dako)、続いてAlexa Fluor 488抗モルモット2次抗体(1:200;Jackson Immuno Research Laboratories)で染色した。4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で対比染色した後にマウントされた。膵島当たりのhIAPPオリゴマーの蓄積を定量化するために、共焦点顕微鏡を使用して、全DAPI+膵島細胞中のA11染色細胞の割合を測定した。
【0037】
16.アミロイド蓄積の評価
腎臓被膜下の膵島移植片の切片を、0.5%チオフラビンS染色(Sigma)後に膵島アミロイドについて、モルモット抗インシュリン抗体(1:500;Dako, Carpenteria, CA)及びCy3結合抗モルモット2次抗体(1:200;PA, West Grove, Jackson Immuno Research Laboratories)を用いたインスリン免疫染色を使用して、β細胞について検査した。DAPIで染色した後、切片をマウントした。切片毎のアミロイドの蓄積を定量化するために、全膵島移植部位(緑色+赤色+青色の部分)中のチオフラビンS染色された細胞(緑色)の割合は、共焦点顕微鏡を用いて測定した。パネルの元の倍率は100倍であった。
【0038】
17.統計的分析
結果は、必要に応じて、平均±標準偏差(SD)又は中間値と四分位範囲として表した。必要に応じて、スチューデントの t 検定、一元配置分散分析 (ANOVA)、または Mann-Whitney U検定を使用して、連続変数を比較した。縦方向のデータは、Graphpad Prism5(Graph Pad Software, La Jolla, CA, USA)を使用したBonferroni事後テストを利用した双方向のANOVAによって分析された。p値<0.05は、比較のために統計的に有意であると認められた。
【0039】
II.結果
1.膵島分離中の酸化ストレス及び炎症反応に対する保護効果
膵島分離中の化合物1の効果を評価するために、hIAPP
+/-FVB/Nマウスからの膵島を、20μMの化合物1を補充して及び補充せずにコラゲナーゼによって分離した。Alamar Blue分析によって評価された相対的エクスビボ細胞生残率は、非処理群と比較して、化合物1処理群において有意に増加した(
図1のA)。さらに、膵島分離中の化合物1の処理は、化合物1非処理群と比較して有意に上昇したレベルのATPを示した(
図1のB)。また、膵島分離中に化合物1で処理された膵島のROS含量及び酸化ストレスレベルは、化合物1未処理の対照膵島と比較して著しく減少した(
図1のC及びD)。インビトロ島機能を示すグルコース-刺激インスリン分泌(GSIS)アッセイで得た刺激指数は、2つの群間で同様の値を示した(
図1のE)。次に、化合物1を補充した場合と補充しない場合の分離後の培地でのc-JunN-末端キナーゼ及びHMGB1、及びインターロイキン(IL)-1β、IL-6及び腫瘍壊死因子(TNF)-αを含む炎症誘発性サイトカインの転写発現を調べた。これらの転写発現レベルは、非処理群と比較して、化合物1処理群で有意に減少した(
図1のF)。これらの結果は、野生型C57BL/6マウス膵島で再現された(
図2)。
【0040】
2.膵島移植後の結果向上効果
インビボでの膵島分離中の化合物1補充の効果を調べるために、化合物1の補充の有無にかかわらず分離された膵島の限界質量(marginal mass)をストレプトゾトシン(STZ)誘導された糖尿病性hIAPP
-/-FVB/Nマウスの腎肩甲下腔に移植した(
図3のA)。化合物1処理群の移植後のグルコースレベルは、非処理群より著しく低く、移植腎臓の除去により、化合物1処理群における高血糖症の回復が確認された(
図3のB)。化合物1群は、対照群と比較して、腹腔内ブドウ糖負荷試験(IPGTT)中の糖尿病逆転率及びグルコースレベルに関して、より良い移植後の結果を示した(
図3のC、D及びE)。化合物1群は、対照群と比較して、移植組織のインスリン陽性領域のより大きな割合を示した(
図3F)。
【0041】
3.血清欠乏培養中のhIAPP
+/-形質転換マウス及びNHP膵島の保護
血清欠乏条件下で、tert-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP)曝露又は膵島培養に対する化合物1の補充効果を調べた。tBHPに暴露されたRINm5F細胞は、LDH放出及びROS形成を発揮したにもかかわらず、化合物1の補充後、細胞毒性及びROS含量は著しく減少した(
図4のA及びB)。ラットインスリノーマ細胞(RINm5F細胞)及びhIAPP
+/-FVB/Nマウス由来の膵島の相滝的な細胞生残率は、0.1μM~20μMへの用量依存的な方法により、血清欠乏誘導細胞毒性を有意に増加させた(
図4のC及びD)。血清欠乏培養条件での化合物1による培地の補充は、0.1μM~20μMまで用量依存的にhINAPP
+/-FVB/NマウスのRINm5F細胞及び膵島で血清欠乏誘導ROSも減少した(
図4のE及びF)。NHP膵島でも同様の結果が観察された(
図5のA、B及びC)。
【0042】
図6のAは、AO/PI染色によって評価された化合物1の補充があるか、又はなしの血清欠乏培養中に、hIAPP
+/-FVB/Nマウス膵島の細胞生残率を示す。FBS処理された膵島と比較して、BSAで72時間培養された膵島では、赤色PI陽性細胞に見られる、より多くの細胞死を経験し、化合物1の補充によって大幅に改善された細胞生残率の低下が見られた(
図6のA及びB)。エクスビボ培養の1日及び3日後のTNF-α、IL-1β、IL-6、c-JUN及びHMGB1の転写レベルは、BSA群よりもBSA+化合物1群で有意に減少した(
図6のC及びD)。膵島の機能を評価するために、血清欠乏培養条件で化合物1を培地に添加すると、hIAPP
+/-マウス由来の膵島で刺激指数の有意な増加が観察された(
図6のE)。化合物1を含む培地又は含まない培地での血清欠乏培養条件下で、72時間培養した後、hIAPP+/-膵島におけるhIAPPオリゴマーの蓄積の割合が、BSA群と比較してBSA+化合物1群で有意に減少した(
図6のF)。
【0043】
4.移植後の血糖結果及び移植膵島アミロイド蓄積の改善
血清欠乏培養中の化合物1による培地の補充が、インビボマウスモデルにおける移植後の結果を改善するかどうかを調べた。hIAPP
+/-FVB/Nマウス由来の膵島の限界質量(marginal mass)を、化合物1の補充あり及びなしで72時間培養し、STZ誘導糖尿病性hIAPP
-/-FVB/Nマウスの腎被膜下に移植した(
図7のA)。化合物1群は、移植後のグルコースレベル、糖尿病逆転率、及びIPGTT中のグルコースレベル及びグルコースのAUCを含む移植後の結果が有意に良好であることを示した(
図7のB、C、D及びE)。移植組織のインスリン陽性面積は、対照群の割合よりも化合物1群の方が大きかった(
図7のF)。また、対照群と比較して、化合物1群の膵島移植片でアミロイド蓄積の割合が有意に減少された(
図7のG)。
【0044】
III.検討
膵島分離中に化合物1を補充すると、インビトロでの膵島細胞の生存率を増加し、酸化ストレス、活性酸素種(ROS)含量、及びc-Jun、HMGB1及び炎症誘発性サイトカインの発現が減少した。また、インビボ研究を通じて、膵島分離中の化合物1の処理による移植後の結果の改善を確認した。
【0045】
さらに、化合物1は、インビトロ膵島生残率の血清欠乏誘導損傷から保護した。さらに重要なことに、血清欠乏培養中の化合物1による培地の補充により、アミロイド及び毒性IAPPオリゴマーの蓄積が大幅に減少し、インビボ膵島移植機能が改善された。
【0046】
これらの結果から、膵島移植の過程における血清欠乏培養だけでなく、膵島分離時の本願発明の化合物1の補充による有利な効果を確認することができた。