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特許7601459新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20241210BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20241210BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241210BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
C09K11/06 660
H10K85/60
H10K50/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023533381
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2022000036
(87)【国際公開番号】W WO2022146123
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2021-0000315
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0000238
(32)【優先日】2022-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・クァン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンウク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソヨン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】シン・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ユン・イム
(72)【発明者】
【氏名】ボムシン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンジュ・チェ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03723151(EP,A1)
【文献】国際公開第2020/045681(WO,A1)
【文献】特表2021-504373(JP,A)
【文献】国際公開第2020/218079(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/102118(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0328351(US,A1)
【文献】国際公開第2020/251049(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0140744(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0070141(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C09K
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1-1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1-1
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環;または置換または非置換のN、OおよびSのうちのいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロ芳香族環であり、
Rのうちの少なくとも1つはベンゾフラニルであり、残りはそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;ニトリル;ニトロ;アミノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル基;または置換または非置換の炭素数6~60のアリールであるか、または隣接した2つのRが互いに結合して置換または非置換の炭素数3~6のアルキレンを形成する。
【請求項2】
ArおよびArはそれぞれ独立して、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、ジメチルフルオレン、ジフェニルフルオレン、ジメチルベンゾフルオレン、またはジフェニルベンゾフルオレン環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rのうちの少なくとも1つはベンゾフラニルであり、残りはそれぞれ独立して、水素;重水素;または置換または非置換の炭素数1~10のアルキルであるか;または隣接した2つのRが互いに結合して
【化2】
を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rのうちの少なくとも1つはベンゾフラニルであり、残りはそれぞれ独立して、水素;重水素;メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;ブチル;イソブチル;またはtert-ブチルであるか;または隣接した2つのRが互いに結合して
【化3】
を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Rのうちの1~3つがベンゾフラニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記ベンゾフラニルはベンゾフラン-2-イルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記化学式1-1は、下記化学式2~4のうちのいずれか1つで表される、請求項1に記載の化合物:
【化4】
【化5】
前記化学式2~4中、
ArおよびArは請求項1で定義した通りであり、
Rのうちの少なくとも1つはベンゾフラニルであり、残りはそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;ニトリル;ニトロ;アミノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル基;または置換または非置換の炭素数6~60のアリールである。
【請求項8】
前記化学式1-1で表される化合物は、下記で構成される群より選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の化合物:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【請求項9】
第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機発光素子。
【請求項10】
前記化合物を含む有機物層は、発光層である、請求項に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年1月4日付の韓国特許出願第10-2021-0000315号および2022年1月3日付の韓国特許出願第10-2022-0000238号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れて多くの研究が進められている。
【0004】
有機発光素子は、一般的に正極と負極および前記正極と負極との間に有機物層を含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるために、それぞれ異なる物質で構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけると、正極からは正孔が、負極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が接した時、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時、光が出るようになる。
【0005】
このような有機発光素子に使用される有機物に対して新たな材料の開発が要求され続けている。
【0006】
一方、最近では工程費用の節減のために既存の蒸着工程の代わりに溶液工程、特にインクジェット工程を利用した有機発光素子が開発されている。草創期にはすべての有機発光素子層を溶液工程でコーティングして有機発光素子を開発しようとしたが、現在の技術では限界があり、順構造形態でHIL、HTL、EMLのみを溶液工程で行い、その後の工程は、既存の蒸着工程を活用するハイブリッド(hybrid)工程が研究中である。
【0007】
そこで本発明では、有機発光素子に用いられ、かつ溶液工程に使用可能な新規な有機発光素子の素材を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許公開第10-2000-0051826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記化学式1で表される化合物を提供する:
【化1】
前記化学式1中、
A1~A5はそれぞれ独立して、炭素数6~60の芳香族環;またはN、OおよびSのうちのいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロ芳香族環であり、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環;または置換または非置換のN、OおよびSのうちのいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロ芳香族環であり、
Rのうちの少なくとも1つはベンゾフラニルであり、残りはそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;ニトリル;ニトロ;アミノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル基;または置換または非置換の炭素数6~60のアリールであるか、または隣接した2つのRが互いに結合して置換または非置換の炭素数3~6のアルキレンを形成する。
【0011】
また、本発明は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上述した化学式1で表される化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として用いられ、また、溶液工程に使用可能であり、有機発光素子で効率の向上、低い駆動電圧および/または寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】基板1、正極2、発光層3、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子注入および輸送層8、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。
【0015】
(用語の定義)
本明細書において、
【化2】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0016】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロアリールからなる群より選択される1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換または非置換されることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0017】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化3】
【0018】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化4】
【0019】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【0020】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0023】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。さらに一つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに一つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化6】
などであってもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、ヘテロアリールは、異種元素としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含むヘテロアリールであって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロアリールの例としては、キサンテン(xanthene)、チオキサンテン(thioxanthen)、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基、アリールシリル基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。
【0030】
(化合物)
本発明は、前記化学式1で表される化合物を提供する。
前記化学式1で表される化合物は、分子構造内にアミン置換基を導入して化合物のvibronic peakが減少し、これにより発光スペクトルの半値幅が減少して有機発光素子の色純度を向上させることができる。
【0031】
前記化学式1中、好ましくは、A2およびA3が同一であり、A4およびA5が同一である。
【0032】
好ましくは、A1~A5はそれぞれ独立して、炭素数6~10の芳香族環;またはN、OおよびSのうちのいずれか1つ以上を含む炭素数2~12のヘテロ芳香族環である。より好ましくは、A1~A5はそれぞれ独立して、ベンゼン、ナフタレン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、1-フェニルインドール、または9-フェニルインドールである。より好ましくは、A1~A5は全てベンゼンである。
【0033】
好ましくは、前記化学式1は、下記化学式1-1で表される:
【化7】
前記化学式1-1中、
Ar、ArおよびRは上記定義の通りである。
【0034】
好ましくは、ArおよびArはそれぞれ独立して、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、ジメチルフルオレン、ジフェニルフルオレン、ジメチルベンゾフルオレン、またはジフェニルベンゾフルオレンである。ここで、前記ジメチルベンゾフルオレンおよびジフェニルベンゾフルオレンは、好ましくは、それぞれ下記の構造を有する。
【0035】
【化8】
【0036】
好ましくは、Rのうちの少なくとも1つはベンゾフラニルであり、残りはそれぞれ独立して、水素;重水素;または置換または非置換の炭素数1~10のアルキルであるか;または隣接した2つのRが互いに結合して
【化9】
を形成する。
【0037】
好ましくは、Rのうちの少なくとも1つはベンゾフラニルであり、残りはそれぞれ独立して、水素;重水素;メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;ブチル;イソブチル;またはtert-ブチルであるか;または隣接した2つのRが互いに結合して
【化10】
を形成する。
【0038】
好ましくは、Rのうちの1~3個がベンゾフラニルである。
【0039】
好ましくは、前記ベンゾフラニルはベンゾフラン-2-イル
【化11】
である。
【0040】
好ましくは、前記化学式1は、下記化学式2~4のうちのいずれか1つで表される:
【化12】
【化13】
【0041】
前記化学式2~4中、
ArおよびArは上記定義の通りであり、
Rのうちの少なくとも1つはベンゾフラニルであり、残りはそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;ニトリル;ニトロ;アミノ;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数2~60のアルケニル基;または置換または非置換の炭素数6~60のアリールである。
【0042】
前記化学式1で表される化合物の代表的な例は以下の通りである:
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
【化16】
【0046】
【化17】
【0047】
【化18】
【0048】
一方、本発明は、一例として、A2およびA3が同一であり、A4およびA5が同一である場合、下記反応式1のような前記化学式1で表される化合物の製造方法を提供し、残りの化合物も以下の反応式を応用して製造することができる。
【0049】
【化19】
【0050】
前記反応式1中、Xを除いた残りは上記定義の通りであり、Xはハロゲンであり、好ましくは臭素、または塩素である。
【0051】
前記段階1および段階2はアミン置換反応であって、パラジウム触媒と塩基の存在下で行うことが好ましく、アミン置換反応のための反応基は当業界で公知のものによって変更可能である。前記段階3はBIと反応させるもので、塩基の存在下で行うことが好ましい。前記製造方法は、後述する製造例でさらに具体化される。
【0052】
(コーティング組成物)
一方、本発明に係る化合物は、溶液工程で有機発光素子の有機物層、特に発光層を形成することができる。具体的には、前記化合物は発光層のドーパント材料として用いられる。そのため、本発明は、上述した本発明に係る化合物および溶媒を含むコーティング組成物を提供する。
【0053】
前記溶媒は、本発明に係る化合物を溶解または分散させることができる溶媒であれば特に限定されず、一例として、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;ブチルベンゾエート、メチル-2-メトキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;テトラリン;3-フェノキシトルエンなどの溶媒が挙げられる。また、上述した溶媒を1種単独でまたは2種以上の溶媒を混合して使用することができる。好ましくは、前記溶媒としてトルエンを使用することができる。
【0054】
また、前記コーティング組成物はホスト材料として使用される化合物をさらに含むことができ、前記ホスト材料に使用される化合物に関する説明は後述する。また、前記コーティング組成物はドーパント材料として使用される化合物を含むことができ、前記ドーパント材料に使用される化合物に関する説明は後述する。
【0055】
また、前記コーティング組成物の粘度は1cP~10cPが好ましく、上記の範囲でコーティングが容易である。また、前記コーティング組成物内の本発明に係る化合物の濃度は0.1wt/v%~20wt/v%であることが好ましい。
【0056】
また、本発明は、上述したコーティング組成物を使用して発光層を形成する方法を提供する。具体的には、正極上に、または正極上に形成された正孔輸送層上に、上述した本発明に係る発光層を溶液工程でコーティングする段階と、前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理する段階と、を含む。
【0057】
前記溶液工程は、上述した本発明に係るコーティング組成物を使用するもので、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらにのみ限定されるものではない。
【0058】
前記熱処理段階で熱処理温度は150~230℃が好ましい。また、前記熱処理時間は1分~3時間であり、より好ましくは10分~1時間である。また、前記熱処理は、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0059】
(有機発光素子)
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物を含む有機発光素子を提供する。一例として、本発明は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【0060】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層される多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有し得る。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機物層を含んでもよい。
【0061】
また、前記有機物層は発光層を含んでもよく、前記発光層は前記化学式1で表される化合物を含む。特に、本発明に係る化合物は発光層のドーパントとして用いられる。
【0062】
また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、正極、1層以上の有機物層、および負極が順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であり得る。また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、負極、1層以上の有機物層、および正極が順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であり得る。例えば、本発明の一実施形態による有機発光素子の構造は、図1および図2に例示されている。
【0063】
図1は、基板1、正極2、発光層3、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。この構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記発光層に含まれ得る。
【0064】
図2は、基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子注入および輸送層8、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。この構造において、前記化学式1で表される化合物は前記発光層に含まれ得る。
【0065】
本発明に係る有機発光素子は、前記有機物層のうちの1層以上が前記化学式1で表される化合物を含むことを除けば、当該技術分野で知られている材料および方法で製造され得る。また、前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質で形成され得る。
【0066】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、正極、有機物層、および負極を順次積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)などのPVD(physical Vapor Deposition)方法を用いて、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として用いられる物質を蒸着させて製造することができる。
【0067】
この方法以外にも、基板上に、負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を製造することができる(国際公開第2003/012890号)。但し、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0068】
一例として、前記第1電極は正極であり、前記第2電極は負極であるか、または、前記第1電極は負極であり、前記第2電極は正極である。
【0069】
前記正極物質としては、通常有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。前記正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性化合物などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0070】
前記負極物質としては、通常有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。前記負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛などの金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0071】
前記正孔注入層は電極から正孔を注入する層で、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、正極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性化合物などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0072】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層で、正孔輸送物質としては、正極や正孔注入層から正孔輸送を受けて発光層に移し得る物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、アリールアミン系の有機物、導電性化合物、および共役部分と非共役部分が共に存在するブロック共重合体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0073】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料は、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0074】
ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換または非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換または非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物で、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミノ基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換または非置換される。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0075】
前記電子注入および輸送層は、電極から電子を注入し、受け取った電子を発光層まで輸送する電子輸送層および電子注入層の役割を同時に行う層で、前記発光層または前記電子調節層上に形成される。このような電子注入および輸送物質としては、負極から電子注入をよく受けて発光層に移し得る物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な電子注入および輸送物質の例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体;トリアジン誘導体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。または、LiF、NaF、NaCl、CsF、LiO、BaO、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物、または含窒素5員環誘導体などを使用することもできるが、これらに限定されない。
【0076】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラート)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0077】
本発明に係る有機発光素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であり得る。
【0078】
また、本発明に係る化合物は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスターに含まれ得る。
【0079】
以下、前記化学式1で表される化合物およびこれを含む有機発光素子の製造を実施例により具体的に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【実施例
【0080】
[実施例]
実施例1:化合物BD8の製造
【化20】
【0081】
化合物1-a(1.1eq.)、NaOt-Bu(2.0eq.)、および化合物1-b(1.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.05M)に溶解した。浴温度120℃下でPd(t-BuP)(5mol%)を滴下し、一晩攪拌した。反応後、反応物を常温に冷却し、CHClで十分に希釈した後、CHCl/ブライン(brine)で洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-c(収率80%)を製造した。
【0082】
化合物1-c(1eq.)、NaOt-Bu(2.0eq.)、および化合物1-d(1.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.05M)に溶解した。浴温度120℃下でPd(t-BuP)(5mol%)を滴下し、一晩攪拌した。反応後、反応物を常温に冷却し、CHClで十分に希釈した後、CHCl/ブラインで洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-e(収率82%)を製造した。
【0083】
化合物1-e(1eq.)、NaOt-Bu(2.0eq.)、および化合物1-f(1.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.05M)に溶解した。浴温度120℃下でPd(t-BuP)(5mol%)を滴下し、一晩攪拌した。反応後、反応物を常温に冷却し、CHClで十分に希釈した後、CHCl/ブラインで洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物1-g(収率72%)を製造した。
【0084】
化合物1-g(1.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.03M)に溶解した。反応溶液にBI(2.0eq.)をゆっくり滴下し、浴温度80℃下で一晩攪拌した。反応後、反応物を常温に十分に冷却し、CHClで希釈した。反応物にEtNi-Pr(15.0eq.)と飽和Na(aq.)を順次滴下し、CHCl/HOで洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物BD8(収率60%)を製造した。
m/z[M+H]1154.5
【0085】
実施例2:化合物BD12の製造
【化21】
【0086】
化合物2-a(1eq.)、NaOt-Bu(4.0eq.)、および化合物2-b(2.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.05M)に溶解した。浴温度120℃下でPd(t-BuP)(10mol%)を滴下し、一晩攪拌した。反応後、反応物を常温に冷却し、CHClで十分に希釈した後、CHCl/ブラインで洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物2-e(収率70%)を製造した。
【0087】
その後、化合物1-eの代わりに化合物2-cを使用し、化合物1-fの代わりに化合物2-dを使用して化合物BD8の製造方法と同様の方法で化合物BD12を製造した。
m/z[M+H]1094.6
【0088】
実施例3:化合物BD29の製造
【化22】
【0089】
化合物2-dの代わりに化合物3-dを使用して化合物BD12の製造方法と同様の方法で化合物BD29を製造した。
m/z[M+H]1094.6
【0090】
実施例4:化合物BD37の製造
【化23】
【0091】
化合物2-bの代わりに化合物4-bを使用し、化合物2-dの代わりに化合物4-dを使用して化合物BD12の製造方法と同様の方法で化合物BD37を製造した。
m/z[M+H]1142.6
【0092】
実施例5:化合物BD44の製造
【化24】
【0093】
化合物1-bの代わりに化合物5-bを使用し、化合物1-dの代わりに化合物5-dを使用して化合物BD8の製造方法と同様の方法で化合物BD44を製造した。
m/z[M+H]1102.1
【0094】
実施例6:化合物BD45の製造
【化25】
【0095】
化合物2-bの代わりに化合物6-bを使用し、化合物2-dの代わりに化合物6-dを使用して化合物BD12の製造方法と同様の方法で化合物BD45を製造した。
m/z[M+H]992.4
【0096】
実施例7:化合物BD75の製造
【化26】
【0097】
化合物2-bの代わりに化合物7-bを使用し、化合物2-dの代わりに化合物7-dを使用して化合物BD12の製造方法と同様の方法で化合物BD75を製造した。
m/z[M+H]932.4
【0098】
実施例8:化合物BD76の製造
【化27】
【0099】
化合物1-dの代わりに化合物8-dを使用し、化合物1-fの代わりに化合物1-bを使用して化合物BD8の製造方法と同様の方法で化合物BD76を製造した。
m/z[M+H]1048.5
【0100】
実施例9:化合物BD30の製造
【化28】
【0101】
化合物2-dの代わりに化合物9-dを使用して化合物BD12の製造方法と同様の方法で化合物BD30を製造した。
m/z[M+H]1144.6
【0102】
実施例10:化合物BD82の製造
【化29】
【0103】
化合物2-dの代わりに化合物10-dを使用して化合物BD12の製造方法と同様の方法で化合物BD82を製造した。
m/z[M+H]1044.6
【0104】
[比較例]
比較例1:化合物Fの製造
【化30】
【0105】
化合物F-1(1.0eq.)、NaOt-Bu(4.0eq.)、および化合物F-2(2.05eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.1M)に溶解した。浴温度120℃下でPd(t-BuP)(5mol%)を滴下し、3日間攪拌した。反応後、反応物を常温に冷却し、CHClで十分に希釈した後、CHCl/ブラインで洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物F-3(収率75%)を製造した。
【0106】
化合物F-3(1.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.03M)に溶解した。反応物にBI(2.0eq.)をゆっくり滴下し、浴温度80℃下で一晩攪拌した。反応後、反応物を常温に十分に冷却し、CHClで希釈した。反応物にEtNi-Pr(15.0eq.)と飽和Na(aq.)を順次滴下し、CHCl/HOで洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮させた後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物F(収率87%)を製造した。
m/z[M+H]=659.6
【0107】
比較例2:化合物Gの製造
【化31】
【0108】
化合物F-2の代わりに化合物G-1を使用したことを除いては、比較例1と同様の方法で化合物Gを製造した。
m/z[M+H]=659.5
【0109】
比較例3:化合物Hの製造
【化32】
【0110】
化合物H-1(1.0eq.)、NaOt-Bu(4.0eq.)、および化合物H-2(1.05eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.1M)に溶解した。浴温度120℃下でPd(t-BuP)(5mol%)を滴下し、一晩攪拌した。反応後、反応物を常温に冷却し、CHClに十分に希釈した後、CHCl/ブラインで洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物H-3(収率79%)を製造した。
【0111】
化合物H-3(1.0eq.)を丸底フラスコに入れて無水トルエン(0.03M)に溶解した。反応物にBI(2.0eq.)をゆっくり滴下し、浴温度80℃下で一晩攪拌した。反応後、反応物を常温に十分に冷却し、CHClで希釈した。反応物にEtNi-Pr(15.0eq.)と飽和Na(aq.)を順次滴下し、CHCl/HOで洗浄して有機層を分離した。MgSOで水を除去してセライト-フロリジル-シリカ・パッドを通過させた。通過した溶液を減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物H(収率73%)を製造した。
m/z[M+H]=725.5
【0112】
[実験例]
実験例1
ITO(indium tin oxide)が500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を使用し、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルターで2次ろ過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピル、アセトンの溶剤で超音波洗浄をし、乾燥させた後、前記基板を5分間洗浄した後、グローブボックスに基板を輸送させた。
【0113】
前記ITO透明電極上に、下記化合物Oおよび化合物P(2:8の重量比)を20wt/v%シクロヘキサノンに溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(4000rpm)し、200℃で30分間熱処理(硬化)して400Åの厚さの正孔注入層を形成した。前記正孔注入層上に、下記重合体Q(Mn:27,900;Mw:35,600;Agilent 1200 seriesを用いてPCスタンダード(Standard)を利用したGPCで測定)を6wt/v%トルエンに溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(4000rpm)し、200℃で30分間熱処理して200Åの厚さの正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層上に、上記で製造した化合物BD8と下記化合物R(2:98の重量比)を2wt/v%シクロヘキサノンに溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(4000rpm)し、180℃で30分間熱処理して400Åの厚さの発光層を形成した。真空蒸着装置に移送した後、前記発光層上に、下記化合物Sを真空蒸着して350Åの厚さの電子注入および輸送層を形成した。前記電子注入および輸送層上に順次、10Åの厚さにLiFと1,000Åの厚さにアルミニウムを蒸着してカソードを形成した。
【0114】
【化33】
【0115】
上記の過程で有機物の蒸着速度は0.4~0.7Å/secを維持し、LiFは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10-7~5×10-8torrを維持した。
【0116】
実験例2~実験例10
発光層のドーパントとして化合物BD8の代わりに下記表1に記載された化合物を使用したことを除いて、前記実験例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0117】
比較実験例1~比較実験例3
発光層のドーパントとして化合物BD8の代わりに下記表1に記載された化合物を使用したことを除いて、前記実験例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0118】
前記実験例および比較実験例で製造した有機発光素子に電流を印加したとき、10mA/cmの電流密度において駆動電圧、外部量子効率(external quantum efficiency、EQE)および寿命を測定した結果を下記表1に示す。このとき、外部量子効率(EQE)は、「(放出された光子数)/(注入された電荷運搬体数)×100」から求め、寿命(T90)は、初期輝度(500nit)が90%に低下するまでの時間を意味する。また、発光層のドーパントとして使用した化合物に対する半値幅(FWHM)を測定して下記表1に併せて示す。
【0119】
【表1】
【0120】
上記表1に示すように、本発明の化合物を発光層に含む有機発光素子は、有機発光素子の効率、駆動電圧および寿命の面において優れた特性を示した。
【符号の説明】
【0121】
1 基板
2 正極
3 発光層
4 負極
5 正孔注入層
6 正孔輸送層
7 発光層
8 電子注入および輸送層
図1
図2