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特許7601538オルガノポリシロキサン、その製造方法、および熱伝導性シリコーン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン、その製造方法、および熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/20 20060101AFI20241210BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20241210BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241210BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20241210BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20241210BHJP
   C09K 5/10 20060101ALI20241210BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08G77/20
C08G77/38
C08K3/22
C08L83/07
C08L83/05
C09K5/10 E
C09K5/14 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021553712
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040773
(87)【国際公開番号】W WO2021085586
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2019197782
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 弘
(72)【発明者】
【氏名】外山 香子
(72)【発明者】
【氏名】岸本 典久
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-009657(JP,A)
【文献】特開2006-169411(JP,A)
【文献】特開平08-034922(JP,A)
【文献】特開平07-138267(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133430(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0249326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/20
C08G 77/38
C08K 3/22
C08L 83/07
C09K 5/10
C09K 5/14
C07F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】
(式中、Rは同じかまたは異なる炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なり、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なる炭素数1~3のアルキル基であり、nは10~500の整数であり、aは0または1である。)
で表されるオルガノポリシロキサン。
【請求項2】
無機質粉末の表面処理剤である、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
無機質粉末が熱伝導性粉末である、請求項2に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項4】
一般式:
【化2】
(式中、Rは炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なり、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは10~500の整数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンと、一般式:
Si(OR)(3-a)
(式中、Rは前記と同じかまたは異なる炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは前記と同じかまたは異なる脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なる炭素数1~3のアルキル基であり、aは0または1である。)
で表されるアルコキシシランを脱アルコール縮合反応することを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項5】
(A)一般式:
【化3】
(式中、Rは同じかまたは異なる炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なり、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なる炭素数1~3のアルキル基であり、nは10~500の整数であり、aは0または1である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、および
(B)熱伝導性充填剤
から少なくともなる熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
(B)成分の平均粒径が0.01~100μmである、請求項5に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項7】
(B)成分がアルミナ粉末である、請求項5に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項8】
(B)成分が、(B)平均粒径が5~50μm(但し、5μmを含まない。)である球状もしくは丸み状アルミナ粉末と(B)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物からなる、請求項7に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項9】
(B)成分が、(B)成分30~90質量%と(B)成分10~70質量%からなる、請求項8に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項10】
(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して500~3,000質量部である、請求項5に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項11】
さらに、(C)架橋剤を含有する、請求項5に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオルガノポリシロキサン、その製造方法、およびこのオルガノポリシロキサンを用いた熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、分子鎖片末端にケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンが、多量の熱伝導性充填剤を充填して高熱伝導性のシリコーン組成物を得るための熱伝導性充填剤の表面処理剤として作用することが開示されている。しかし、このようなオルガノポリシロキサンを使用しても、アルミナ等の熱伝導性充填剤を高充填しようとすると、得られるシリコーン組成物の粘度が急激に上昇して、その取扱作業性や成形性が著しく低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-213133号公報
【文献】特開2004-262972号公報
【文献】特開2008-038137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、分子鎖両末端に脂肪族不飽和一価炭化水素基を有し、分子鎖片末端にケイ素原子結合加水分解性基を有する新規なオルガノポリシロキサンを提供することにあり、また、このような新規なオルガノポリシロキサンの製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、このようなオルガノポリシロキサンを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤とし、熱伝導性充填剤を多量に含有しても、取扱作業性が良好な熱伝導性シリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のオルガノポリシロキサンは、一般式:
【化1】
(式中、Rは同じかまたは異なる炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なり、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なる炭素数1~3のアルキル基であり、nは1~500の整数であり、aは0または1である。)
で表される。
【0006】
上記オルガノポリシロキサンは、無機質粉末の表面処理剤として好適であり、特に、熱伝導性粉末の表面処理剤として好適である。
【0007】
本発明のオルガノポリシロキサンの製造方法は、一般式:
【化2】
(式中、Rは炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なり、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは1~500の整数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンと、一般式:
Si(OR)(3-a)
(式中、Rは前記と同じかまたは異なる炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは前記と同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なる炭素数1~3のアルキル基であり、aは0または1である。)
で表されるアルコキシシランを脱アルコール縮合反応することを特徴とする。
【0008】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)一般式:
【化3】
(式中、Rは同じかまたは異なる炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なり、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、Rは同じかまたは異なる炭素数1~3のアルキル基であり、nは1~500の整数であり、aは0または1である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、および
(B)熱伝導性充填剤
から少なくともなる。
【0009】
(B)成分の平均粒径は0.01~100μmであることが好ましい。また、(B)成分はアルミナ粉末であることが好ましく、さらには、(B)平均粒径が5~50μm(但し、5μmを含まない。)である球状もしくは丸み状アルミナ粉末と(B)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物であることが好ましく、特に、(B)成分と(B)成分との混合物である場合、(B)成分30~90質量%と(B)成分10~70質量%からなる混合物であることが好ましい。
【0010】
上記組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して500~3,000質量部の範囲内であることが好ましい。
【0011】
上記組成物は、さらに、(C)架橋剤を配合することより、硬化性の熱伝導性シリコーン組成物とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端に脂肪族不飽和一価炭化水素基を有し、分子鎖片末端にケイ素原子結合加水分解性基を有する新規な化合物であり、また、本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、このようなオルガノポリシロキサンを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤としているので、高熱伝導性のシリコーン組成物を得るために熱伝導性充填剤を多量に含有しても、取扱作業性が良好であるという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、本発明のオルガノポリシロキサンを詳細に説明する。
本発明のオルガノポリシロキサンは、一般式:
【化4】
で表される。
【0014】
上式中、Rは同じかまたは異なる炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の直鎖状アルケニル基;iso-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-10-ウンデセニル基等の分岐鎖状アルケニル基;ビニルシクロヘキシル基等の脂肪族不飽和環状アルキル基;ビニルフェニル基等の脂肪族不飽基含有アリール基;ビニルベンジル基、ビニルフェネチル基等の脂肪族不飽和基含有アラルキル基が例示され、好ましくは、直鎖状アルケニル基であり、特に好ましくは、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基である。R中の脂肪族不飽和結合の位置は限定されないが、Rが結合するケイ素原子より遠い位置であることが好ましい。
【0015】
また、上式中、Rは同じかまたは異なり、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖状アルキル基;iso-プロピル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、アリール基であり、さらに好ましくは、炭素原子数1~4のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0016】
また、上式中、Rは同じかまたは異なる炭素数1~3のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基が例示され、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0017】
また、上式中、nは1~500の整数であり、好ましくは、nは少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、あるいは少なくとも20であり、一方、多くとも400、多くとも300、あるいは多くとも200である。このnの範囲は、前記の上限と下限とを組み合わせた任意の範囲とすることができる。これは、nが上記範囲の下限以上であると、揮発性が乏しくなるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、無機充填剤、特に、熱伝導性充填剤の表面を十分に処理できるからである。
【0018】
また、上式中、aは0または1であり、好ましくは、0である。
【0019】
このようなオルガノポリシロキサンを調製する方法としては、例えば、一般式:
【化5】
で表されるオルガノポリシロキサンと、一般式:
Si(OR)(3-a)
で表されるアルコキシシランを脱アルコール縮合反応する方法が挙げられる。
【0020】
上記オルガノポリシロキサン中のR、R、およびnは前記と同じである。このようなオルガノポリシロキサンは、例えば、米国特許第5486635号明細書(特開平7-292109号公報)または特開平10-7801号公報に開示されているように、アルキルリチウムやリチウムシラノレートを重合開始剤とし、分子量調節剤である分子鎖片末端に水酸基を有するオルガノシランもしくはオルガノシロキサンの存在下または非存在下で、環状トリシロキサンを非平衡重合反応させた後、酸でこの非平衡重合反応を停止することにより調製することができる。なお、環状トリシロキサン中に存在する微量のシラノール基含有不純物を予めシリル化またはアセチル化した後、非平衡重合反応を、ニトリル化合物またはエステル化合物、および活性水素を有しない極性溶媒の存在下で行うことが好ましい。これにより、環状トリシロキサンの重合中に副反応として起こるα-ヒドロキシジオルガノポリシロキサンの二量化反応や平衡化反応による両末端無官能性ジオルガノポリシロキサンや両末端官能性ジオルガノポリシロキサンの副生を抑制することができる。
【0021】
また、上記アルコキシシラン中のR、RおよびRは前記と同じである。また、上記アルコキシシラン中のaは0または1であり、好ましくは、0である。このようなアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、オクテニルトリエトキシシランが例示される。このアルコキシシランは、上記オルガノポリシロキサンに対して等モル以上添加することが好ましく、副生成物を抑制できることから、過剰量添加することが好ましい。
【0022】
上記オルガノポリシロキサンと上記アルコキシシランを脱アルコール縮合反応することにより、本発明のオルガノポリシロキサンを調製することができる。この脱アルコール縮合反応を促進するため、酸触媒を添加してもよい。この酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸が例示される。この脱アルコール縮合反応は、室温でも進行するが、加熱することにより促進することができ、特に、減圧下で、縮合反応により生成するアルコールを除去することが好ましい。
【0023】
このような本発明のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、式:
【化6】
で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化7】
で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化8】
で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化9】
で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化10】
で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化11】
で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化12】
で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化13】
で表されるジメチルポリシロキサン、式:
【化14】
で表されるジメチルポリシロキサンが挙げられ、本発明のオルガノポリシロキサンを後述する無機質粉末の表面処理剤として使用する場合には、上記重合開始剤に由来する副生成物を少量含有してもよい。
【0024】
このような本発明のオルガノポリシロキサンは、無機質粉末の表面処理剤として有用であり、特に、熱伝導性粉末の表面処理剤として有用である。本発明のオルガノポリシロキサンが適用できる無機質粉末としては、アルミニウム粉末、銅粉末、ニッケル粉末等の金属系粉末;アルミナ粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化ベリリウム粉末、酸化クロム粉末、酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末、酸化鉄粉末等の金属酸化物系粉末;窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末等の金属窒化物系粉末;炭化ホウ素粉末、炭化チタン粉末、炭化珪素粉末等の金属炭化物系粉末;表面に導電性を付与するために金属を被覆してなる金属酸化物系粉末;その他、ヒュームドシリカ、疎水化ヒュームドシリカ、沈降法シリカ、溶融シリカ、珪藻土、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、水酸化セリウムが例示される。これらの無機質粉末の表面を処理する方法は限定されず、周知の方法により処理することができる。
【0025】
次に、本発明の熱伝導性シリコーン組成物を詳細に説明する。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)一般式:
【化15】
(式中、Rは炭素数2~12の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは同種もしくは異種の脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、Rは炭素数1~3のアルキル基であり、nは1~500の整数であり、aは0または1である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、および
(B)熱伝導性充填剤
から少なくともなることを特徴とする。
【0026】
(A)成分は、上述したオルガノポリシロキサンであり、本組成物の主剤あるいは(B)成分の表面処理剤として作用する。本組成物には、(A)成分以外に、(A)成分を調製する際の重合開始剤に由来する副生成物のオルガノポリシロキサンや、その他のオルガノポリシロキサンを含有してもよい。任意のオルガノポリシロキサンが本組成物の主剤となる場合には、(A)成分は(B)成分の表面処理剤としてもっぱら作用する。
【0027】
(A)成分以外のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、あるいは樹枝状(デンドリマー状)の分子構造を有するものが挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状のものである。具体的には、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、式:(CH)SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:(CH)(CH=CH)SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:CHSiO3/2で表されるシロキサン単位と式:(CH)SiO2/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサンコポリマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシリル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシリルエチル基封鎖ジメチルポリシロキサン、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
このようなオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、20~100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50~100,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは、50~50,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、100~50,000mPa・sの範囲内である。なお、この粘度は、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計によって測定することができる。これは、25℃における粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の物理的特性が著しく低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が著しく低下するからである。
【0029】
(B)成分の熱伝導性充填剤は、本組成物に熱伝導性を与える成分であり、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、ニッケル粉末等の金属系粉末;アルミナ粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化ベリリウム粉末、酸化クロム粉末、酸化チタン粉末等の金属酸化物系粉末;窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末等の金属窒化物系粉末;炭化ホウ素粉末、炭化チタン粉末、炭化珪素粉末等の金属炭化物系粉末;表面に導電性を付与するために金属を被覆してなる金属酸化物系粉末、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。また、(B)成分の形状としては、例えば、球状、丸み状、針状、円盤状、棒状、不定形状が挙げられる。本組成物あるいは本組成物の架橋物に電気絶縁性が要求される場合には、(B)成分は、金属酸化物系粉末、金属窒化物系粉末、または金属炭化物系粉末であることが好ましく、特に、アルミナ粉末であることが好ましい。
【0030】
(B)成分の平均粒径は限定されないが、0.1~100μmの範囲内であることが好ましく、さらには、0.1~50μmの範囲内であることが好ましい。また、(B)成分としてアルミナ粉末を用いる場合には、(B)平均粒径が5~50μm(ただし、5μmを含まない。)である球状のアルミナ粉末と(B)平均粒径が0.1~5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末との混合物であることが好ましい。さらに、この混合物において、前記の(B)成分の含有量は30~90質量%の範囲内であり、前記の(B)成分の含有量は10~70質量%の範囲内であることが好ましい。
【0031】
本組成物において、(B)成分の含有量は限定されないが、良好な熱伝導性を与えるためには、容積%については、本組成物中の少なくとも30容積%であることが好ましく、さらに、30~90容積%の範囲内であることが好ましく、さらに、60~90容積%の範囲内であることが好ましく、特に、80~90容積%の範囲内であることが好ましい。同様に、質量%については、本組成物中の少なくとも50質量%であることが好ましく、さらに、70~98質量%の範囲内であることが好ましく、特に、90~97質量%の範囲内であることが好ましい。(B)成分の含有量として、具体的には、(A)成分が主剤である場合、(A)成分100質量部に対して500~3,500質量部の範囲内であることが好ましく、さらに、500~3,000質量部の範囲内であることが好ましく、特に、800~3,000質量部の範囲内であることが好ましく、一方、(A)成分が(B)成分の表面処理剤として作用し、(A)成分以外のオルガノポリシロキサンが主剤である場合、このオルガノポリシロキサン100質量部に対して500~3,500質量部の範囲内であることが好ましく、さらに、500~3,000質量部の範囲内であることが好ましく、特に、800~3,000質量部の範囲内であることが好ましい。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の熱伝導性もしくは電気伝導性が不十分となるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の粘度が高くなったり、均一な組成物を得ることができなかったり、その取扱作業性が著しく低下するからである。
【0032】
このような本組成物は、非架橋性のグリース状であってもよく、また、さらに(C)架橋剤を含有して、架橋性とし、架橋により増粘あるいは硬化することができる。この架橋反応は限定されず、例えば、ヒドロシリル化反応、縮合反応、または有機過酸化物によるフリーラジカル反応が挙げられる。
【0033】
本組成物がヒドロシリル化反応する場合には、(C)成分は、一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと白金系触媒からなる。このオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合に結合している基としては、前記と同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくはアルキル基、アリール基であり、特に好ましくはメチル基、フェニル基である。また、このオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は限定されないが、好ましくは1~1,000mm/sの範囲内であり、特に好ましくは1~500mm/sの範囲内である。なお、この動粘度はJIS Z8803に準拠したウベローデ型粘度計によって測定することができる。
【0034】
このようなオルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、樹枝状(デンドリマー状)が挙げられる。このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、これらの分子構造を有する単一重合体、これらの分子構造からなる共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、式:(CH)SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:(CH)HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサンコポリマー、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0036】
本組成物において、このオルガノポリシロキサンの含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、(A)成分および(A)成分以外の任意のオルガノポリシロキサン中の脂肪族不飽和一価炭化水素基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~10モルの範囲内となる量であることが好ましく、さらに、0.1~5モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に、0.1~3.0モルの範囲内となる量であることが好ましい。これは本成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物が非常に硬質な硬化物となり、表面に多数のクラックを生じたりするからである。
【0037】
また、白金系触媒は本組成物の架橋を促進するための触媒であり、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体が挙げられる。
【0038】
本組成物において、白金系触媒の含有量は、本組成物の架橋を促進するに十分な量であり、具体的には、(A)成分および(A)成分以外の任意のオルガノポリシロキサンに対して本成分中の白金金属が質量単位で0.01~1,000ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特に、0.1~500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、本成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えるを配合しても、得られる組成物の架橋反応は著しく促進されないからである。
【0039】
特に、本組成物がヒドロシリル化反応により架橋する場合、その架橋速度を調節し、取扱作業性を向上させるため、2-メチル-3-ブチン-2-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアセチレン系化合物;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエン-イン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有シクロシロキサン;その他、ヒドラジン系化合物、フォスフィン系化合物、メルカプタン系化合物等の反応抑制剤を含有することが好ましい。この反応抑制剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して0.0001~1.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0040】
また、本組成物が縮合反応により架橋する場合には、(C)成分は、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するシランもしくはその部分加水分解物および/または縮合反応用触媒からなる。このシラン中のケイ素原子結合加水分解性基としては、前記と同様のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシロキシ基、ケトオキシム基、アルケノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基が例示される。また、このシランのケイ素原子には上記の加水分解性基以外に、例えば、前記と同様の直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基を結合していてもよい。このようなシランもしくはその部分化水分解物としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルオルソシリケートが挙げられる。
【0041】
本組成物において、このシランもしくはその部分加水分解物の含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、(A)成分もしくは(A)成分以外の任意のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01~20質量部の範囲内であることが好ましく、特には、0.1~10質量部の範囲内であることが好ましい。これは、このシランもしくはその部分加水分解物の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下したり、また、接着性が低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の架橋反応が著しく遅くなったりするからである。
【0042】
また、縮合反応用触媒は、例えば、(C)成分として、アミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等の加水分解性基を有するシランを用いる場合には必須ではない。この縮合反応用触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機アルミニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ブチルスズ-2-エチルヘキソエート等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、硝酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0043】
本組成物において、この縮合反応用触媒の含有量は、本組成物の架橋を促進するに十分な量であればよく、具体的には、(A)成分または(A)成分以外の任意のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01~20質量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1~10質量部の範囲内であることが好ましい。これは、この触媒が必須である場合、この触媒の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下するからである。
【0044】
また、本組成物が有機過酸化物によるフリーラジカル反応により架橋する場合には、(C)成分は有機過酸化物である。この有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチルビス(2,5-tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエートが挙げられる。
【0045】
この有機過酸化物の含有量は、本組成物を架橋させるに十分な量であり、具体的には、上記(A)成分あるいは(A)成分以外の任意のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~5質量部の範囲内となる量であることが好ましい。
【0046】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、ヒュームド酸化チタン等の充填剤、この充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水化処理した充填剤;その他、顔料、染料、蛍光染料、耐熱添加剤、トリアゾール系化合物以外の難燃性付与剤、可塑剤、接着付与剤を含有してもよい。
【0047】
このような本組成物が架橋性である場合、その架橋方法は限定されず、例えば、本組成物を成形後、室温で放置する方法、本組成物を成形後、50~200℃に加熱する方法が挙げられる。また、このようにして得られる架橋物の性状は限定されないが、例えば、増粘したグリース状、あるいは硬化した、ゲル状、低硬度のゴム状、あるいは高硬度のゴム状が挙げられ、放熱材料として部材に十分に密着させることができる。
【実施例
【0048】
本発明のオルガノポリシロキサン、その製造方法、および熱伝導性シリコーン組成物を実施例、比較例により詳細に説明する。なお、実施例中の特性は25℃における値である。
【0049】
[実施例1]
1L-フラスコに、窒素気流下、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシロキサン 211g(950.5ミリモル)とトルエン 165gを混合して、これを1時間共沸脱水した。脱水後、30℃まで冷却し、これに、n-ブチルリチウムの1.6N-ヘキサン溶液 5.5ミリリットル(n-ブチルリチウム=8.8ミリモル)を投入して30℃で10分間攪拌した。次いで、この混合物に、トリメチルクロロシラン 0.88g(8.12ミリモル)を投入して、30℃で30分間攪拌した後、ビニルジメチルシラノール 11.0g(107.6ミリモル)、ジメチルホルムアミド 16.9gおよびアセトニトリル 52.7gの混合物を投入し、非平衡重合反応を開始した。非平衡重合反応開始6.5時間経過後、反応混合物に、酢酸 1.37g(22.74ミリモル)を投入して、非平衡重合反応を停止させて、中間体である分子鎖片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖、他の分子鎖片末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサンを得た。このときの1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシロキサンの転化率は95%であった。次に、得られた中間体から低沸点物を95℃で加熱減圧留去した。
【0050】
続いて、低沸点物を減圧留去した中間体に、ビニルトリメトキシシラン 170.5g(1150.2ミリモル)と酢酸 0.53グラム(8.83ミリモル)を投入し、130℃で4時間攪拌し、さらに、150℃で低沸点物を減圧留去した。冷却後、非平衡重合反応停止時に生成した塩をろ別することにより、ジメチルポリシロキサン 212gを得た。
【0051】
このジメチルポリシロキサンを29Si-NMRにより分析したところ、平均式:
【化16】
で表されるジメチルポリシロキサンと平均式:
【化17】
で表されるジメチルポリシロキサンとの質量比92:8の混合物(ビニル基の含有量:2.6質量%)であることがわかった。
【0052】
[実施例2]
実施例1において、ビニルジメチルシラノールを3.39g(33.16ミリモル)とし、低沸点物を減圧留去した中間体に投入するビニルトリメトキシシランを53.2g(358.9ミリモル)および酢酸を0.28g(4.66ミリモル)とした以外は実施例1と同様にして、ジメチルポリシロキサン 191gを得た。
【0053】
このジメチルポリシロキサンを29Si-NMRにより分析したところ、平均式:
【化18】
で表されるジメチルポリシロキサンと平均式:
【化19】
で表されるジメチルポリシロキサンとの質量比81:19の混合物(ビニル基の含有量:0.91質量%)であることがわかった。
【0054】
[実施例3]
1L-フラスコに、窒素気流下、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシロキサン 221g(995.5ミリモル)とトルエン 173gを混合して、これを1時間共沸脱水した。脱水後、30℃まで冷却し、これにn-ブチルリチウムの1.6N-ヘキサン溶液 12.0ミリリットル(n-ブチルリチウム=19.2ミリモル)を投入して、30℃で1時間攪拌した。次いで、この混合物に無水酢酸 0.92g(9.01ミリモル)を投入して、100℃で30分間攪拌した後、30℃まで冷却した。この混合液に30℃で、ビニルジメチルシラノール 1.87g(18.29ミリモル)、ジメチルホルムアミド 18.1gおよびアセトニトリル 55.1gの混合物を投入し、非平衡重合反応を開始した。非平衡重合反応開始1.7時間経過後の反応混合物に、酢酸 1.47g(24.48ミリモル)を投入して、非平衡重合反応を停止させて、中間体である分子鎖片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖、他の分子鎖片末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖、ジメチルポリシロキサンを得た。このときの1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシロキサンの転化率は98%であった。次に、得られた中間体から低沸点物を95℃で加熱減圧留去した。
【0055】
続いて、低沸点物を減圧留去した中間体に、ビニルトリメトキシシラン 30.1g(203.1ミリモル)と酢酸 0.18g(3.00ミリモル)を投入し、130℃で4時間攪拌した。さらに、150℃で低沸点物を減圧留去した。冷却後、非平衡重合反応停止時に生成した塩をろ別することにより、メチルポリシロキサン 205gを得た。
【0056】
このジメチルポリシロキサンを29Si-NMRにより分析したところ、平均式:
【化20】
で表されるジメチルポリシロキサンと平均式:
【化21】
で表されるジメチルポリシロキサンとの質量比78:22の混合物(ビニル基の含有量=0.49質量%)であることがわかった。
【0057】
[実施例4]
実施例3において、ビニルジメチルシラノールを0.84g(8.22ミリモル)とし、低沸点物を減圧留去した中間体に投入するビニルトリメトキシシランを16.8g(113.3ミリモル)および酢酸を0.20g(3.33ミリモル)とした以外は実施例3と同様にして、ジメチルポリシロキサン 197gを得た。
【0058】
このジメチルポリシロキサンを29Si-NMRにより分析したところ、平均式:
【化22】
で表されるジメチルポリシロキサンと平均式:
【化23】
で表されるジメチルポリシロキサンとの質量比65:35の混合物(ビニル基の含有量=0.24質量%)であることがわかった。
【0059】
[実施例5~8、比較例1~2]
下記の成分を用いて、表1および表2に記載の組成で熱伝導性シリコーン組成物を調製した。なお、熱伝導性シリコーン組成物において、架橋剤の含有量は、(A)成分中のビニル基1モルに対して、架橋剤中のケイ素原子結合水素原子が約1.4モルとなる量とした。
【0060】
(A)成分として、次の成分を用いた。
(A-1):実施例1で調製したジメチルポリシロキサン
(A-2):実施例2で調製したジメチルポリシロキサン
(A-3):実施例3で調製したジメチルポリシロキサン
(A-4):実施例4で調製したジメチルポリシロキサン
(A-5):平均式:
【化24】
で表されるジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.95質量%)
(A-6):平均式:
【化25】
で表されるジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.23質量%)
【0061】
(B)成分として、次の成分を用いた。
(B-1):平均粒子径(d50)が34.5μmであるアルミナ粉末(デンカ株式会社製の商品名:DAW-45)
(B-2):平均粒子径(d50)2μmであるアルミナ粉末(昭和電工株式会社製の商品名:CB-P02)
(B-3):平均粒子径(d50)0.3μmであるアルミナ粉末(デンカ株式会社製の商品名:ASFP-02)
【0062】
架橋剤として、次の成分を用いた。
(C-1):分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.76質量%)
(C-2):分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.015質量%)
【0063】
架橋反応の触媒として、次の成分を用いた。
(D-1):白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の粘度400mPa・sの分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン溶液(白金含有量=約0.6質量%)
【0064】
架橋反応の抑制剤として、次の成分を用いた。
(E-1):1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニル-シクロテトラシロキサン
【0065】
[熱伝導性シリコーン組成物およびその硬化物の物性評価]
レオメーターMCR102(アントンパール社製)を使用して、熱伝導性シリコーン組成物の粘度を25℃で測定した。測定は、20mmプレートを使用し、せん断速度5/sで30秒間回転後、10分間放置して0.01/s~せん断速度を掃引して行った。表1には、せん断速度0.075/s時の粘度を示した。
【0066】
また、熱伝導性シリコーン組成物を150℃、60分間の加熱により硬化させ、幅約10mm、長さ約50mmおよび厚さ約2mmのシリコーン硬化物を作製した。レオメーターMCR302(アントンパール社製)を用いて、このシリコーン硬化物のねじり変形によるモジュラスを23℃で測定した。測定は、0.01Hz~周波数を掃引して行った。表1には、1Hzでの貯蔵弾性率と損失正接を示した。
【0067】
[熱抵抗測定]
熱抵抗測定装置(日立製作所製)を用いて、50Nの荷重下で測定を行った。厚み約1mm、1cm角のシリコーン硬化物にシリコーングリース(信越化学社製、G-750)を適量塗布し、加熱軸と冷却軸の間に挟み込んでサンプルが設定温度(50℃±1℃)に達した後、測定を開始した。得られた熱抵抗値から、予め測定しておいたシリコーングリースの熱抵抗値を差し引き、サンプルの熱抵抗値(℃/W)とした。測定は各サンプルで3回行い、その平均値を表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1および表2の結果から、実施例5~8において、成分(A-1)~(A-4)を用いることで、成分(B-1)~(B-3)を95質量%含有してもペースト状を維持でき、加熱硬化することにより硬化物を得ることができた。この結果より、成分(A-1)~(A-4)は粘度を下げる効果と架橋構造の一部として設計通り取り込まれていると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のオルガノポリシロキサンは新規な化合物であり、無機質粉末の表面処理剤、特には、熱伝導性粉末の表面処理剤として利用することができる。また、本発明のシリコーン組成物は、このようなオルガノポリシロキサンを熱伝導性充填剤の表面処理剤あるいは主剤としているので、高熱伝導性のシリコーン組成物を得るために熱伝導性充填剤を多量に含有しても、取扱作業性が良好であるので、電気・電子部品の放熱剤として利用することができる。