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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】植生土嚢
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20241210BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20241210BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20241210BHJP
   A01N 59/06 20060101ALI20241210BHJP
   A01N 59/14 20060101ALI20241210BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20241210BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20241210BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20241210BHJP
   E02B 3/04 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A01N59/00 C
A01N25/08
A01P21/00
A01N59/06 Z
A01N59/14
A01N59/16 Z
A01N59/20 Z
A01M21/04 Z
A01M21/04 C
E02B3/04 301
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020138822
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034896
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋田 慎之介
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-061555(JP,A)
【文献】特開2001-032281(JP,A)
【文献】特開平10-136776(JP,A)
【文献】特開平06-193070(JP,A)
【文献】特開2010-252766(JP,A)
【文献】特開2016-220636(JP,A)
【文献】特開2017-000077(JP,A)
【文献】特開2020-090442(JP,A)
【文献】特開2005-029472(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006388(WO,A1)
【文献】実開平07-035520(JP,U)
【文献】特開2013-194339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/00
A01N 25/08
A01P 21/00
A01N 59/06
A01N 59/14
A01N 59/16
A01N 59/20
A01M 21/04
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の成育を調整する機能剤と、
機能剤が収容された土嚢袋とを備え、
前記土嚢袋には、前記機能剤の流出を抑制する流出阻止手段を有し、
前記機能剤は、
植物の育成を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤であり、
前記流出阻止手段は、
前記土嚢袋が、キレート繊維からなる吸着性繊維で形成されている
ことを特徴とする植生土嚢。
【請求項2】
請求項1に記載の植生土嚢において、
前記金属元素は、
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうち、少なくとも一種類を含む
ことを特徴とする植生土嚢。
【請求項3】
請求項2に記載の植生土嚢において、
前記抑制剤は石炭灰を含む
ことを特徴とする植生土嚢。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を所望の状態に成長させるための機能成分を土嚢袋に収容した植生土嚢に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線の敷地、河川堤防、道路法面、中央分離帯、空港着陸帯等の土木分野では、土嚢が広く用いられている。また、土嚢の袋内に土等の栽培資材や、肥料、植物種子等の機能成分が混入された土嚢が知られ、植生土嚢として緑化面の施工に広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
土等の栽培資材に加え、肥料などの機能成分が収容された土嚢では、土嚢から機能成分が溶出して拡散すると、本来の機能が得られず、所望の植物の生育状態が得られないことになる。
【0004】
また、近年は、石炭灰を用いて土木材料としての造粒物を製造し、廃棄物である石炭灰を有効利用する技術が知られてきている。石炭灰が由来の造粒物を土嚢の収容物とすることが考えられるが、環境に影響を及ぼす石炭灰の成分が溶出することが懸念される。
【0005】
このような状況から、土嚢の中の機能成分が溶出しないようにする技術が望まれているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-148840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、内部の機能成分が溶出することがないようにした植生土嚢を提供することを目的とする。
【0008】
特に、機能成分として、植物の成長を制御(抑制)する金属元素を含む抑草成分が栽培資材と共に土嚢袋に収容された土嚢で、抑草成分が拡散しない植生土嚢を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の植生土嚢は、植物の成育を調整する機能剤と、機能剤が収容された土嚢袋とを備え、前記土嚢袋には、前記機能剤の流出を抑制する流出阻止手段を有し、前記機能剤は、植物の育成を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤であり、流出阻止手段は、土嚢袋の内面に備えられ、前記抑制剤を吸着する多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナンからなる吸着手段であることが好ましい。
【0010】
これにより、土嚢袋に備えられた流出阻止手段により、機能剤の流出を抑制する(防止する)ことができる。このため、内部の機能成分が溶出することがないようにすることが可能になる。
そして、土嚢袋の内面に備えられた吸着手段に機能剤を吸着させることで、機能剤の流出を抑制する(防止する)ことができる。吸着手段としては、多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナン等を用いることができる。
また、抑草作用を有する金属元素の流出を抑制する(防止する)ことができ、土嚢を設置した部位の植物の形態(大きさや色、開花時期等)を確実に調節し、植物の形態を所望の状態で維持する(制御する)ことが可能になる。
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の植生土嚢は、機能剤が収容された土嚢袋とを備え、前記土嚢袋には、前記機能剤の流出を抑制する流出阻止手段を有し、前記機能剤は、植物の育成を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤であり、前記流出阻止手段は、前記土嚢袋が、キレート繊維からなる吸着性繊維で形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1に係る本発明では、土嚢袋に備えられた流出阻止手段により、機能剤の流出を抑制する(防止する)ことができる。このため、内部の機能成分が溶出することがないようにすることが可能になる。
そして、土嚢袋を形成する繊維に機能剤を吸着させることで、機能剤の流出を抑制する(防止する)。吸着性繊維としては、キレート繊維(N-グルカミン型樹脂)等を用いることができる。
また、抑草作用を有する金属元素の流出を抑制する(防止する)ことができ、土嚢を設置した部位の植物の形態(大きさや色、開花時期等)を確実に調節し、植物の形態を所望の状態で維持する(制御する)ことが可能になる。
【0017】
また、請求項2に係る本発明の植生土嚢は、請求項1に記載の植生土嚢において、前記金属元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうち、少なくとも一種類を含むことを特徴とする。
【0018】
また、少なくとも一種類の金属元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)のうちのいずれかであることが好ましい。
【0019】
請求項2に係る本発明では、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調節することができる。
【0020】
また、請求項3に記載の植生土嚢は、請求項2記載の植生土嚢において、機能剤は石炭灰を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の本発明では、石炭灰に含まれる金属元素を、植物の育成を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素として用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の植生土嚢は、内部の機能成分が溶出することがないようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例に係る植生土嚢の外観図である。
図2】本発明の一実施例に係る植生土嚢の概略の概念図である。
図3】本発明の他の実施例に係る植生土嚢の概略の概念図である。
図4】機能剤としてホウ素(B)を用いた場合の効果の説明図である。
図5】本発明の一実施例に係る植生土嚢の使用例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には本発明の一実施例に係る植生土嚢の外観を示してあり、図1(a)は土嚢袋に中身を詰めている状態、図1(b)は所望の状態に中身を詰め終わって土嚢とした状態を示してある。また、図2には本発明の一実施例に係る植生土嚢の概略の断面状況、図3には本発明の他の実施例に係る植生土嚢の概略の断面状況を示してある。
【0025】
図1(a)に示すように、所定の大きさ(例えば、40cm×60cm)の土嚢袋1には、土(植生土)や砂利等の栽培資材2と、機能剤として、植物の成育を阻害して成長を抑制する抑草作用を有する金属元素を含む抑制剤3とが収容される。栽培資材2と抑制剤3との割合は、例えば、7:3の割合に調整される。
【0026】
抑制剤3としては、例えば、石炭灰やスラグが適用され、抑草作用を有する金属元素は、石炭灰やスラグが由来とされる。図1(b)に示すように、土嚢袋1に栽培資材2と抑制剤3が収容され、口が閉められることで植生土嚢5が構成される。
【0027】
植生土嚢5には植物の成育を阻害して成長を調節する抑草作用を有する金属元素を含んでいる。このため、抑草作用を有する金属元素により、植物の成育が阻害されて成長が調節される。即ち、植物の形態である、葉、根、茎、の大きさや色、開花時期等が調節されて成長の状態が制御され、所望の大きさや色等の状態が維持される。
【0028】
従って、植物の形態(大きさや色、開花時期等)を調節し、植物の形態を維持する(制御する)ことが可能になる。つまり、植生土嚢5を必要な場所の必要な範囲に敷き詰めることで、所望の範囲の場所で、植物(葉)の色、大きさ、質感等を場所に応じた状態に維持・制御することができる。
【0029】
機能剤としては、例えば、成長を助ける剤、除草剤、植物の種、土壌改良剤(保水力調整剤、pHを調整する剤等)を適用することができる。
【0030】
植生土嚢5に用いられる土嚢袋1は、抑制剤3(機能剤)に含まれる金属元素の流出を抑制する流出阻止手段を有している。土嚢袋1に備えられた流出阻止手段により、金属元素の流出を抑制する(防止する)ことができる。このため、内部の金属元素(機能成分)が溶出することがないようにすることが可能になる。
【0031】
図2に示すように、流出阻止手段として、土嚢袋1の内面に金属元素を吸着する吸着手段としての吸着材8が備えられている。吸着材8は、例えば、多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナン等の吸着手段により構成されている。
【0032】
尚、多孔質硫酸ジルコニウム、グルコマンナン等の吸着手段を土嚢袋1の内面に直接塗る等して、流出阻止手段を設けることも可能である。
【0033】
土嚢袋1の内面に吸着材8を備えたことにより、土嚢袋1の内周面近傍の金属元素Mが吸着材8に吸着される。これにより、金属元素Mが土嚢袋1の外に溶出・拡散することがなく、植物の形態を維持する(制御する)機能の効果範囲を、植生土嚢5を設置した範囲だけで設定することが可能になる。このため、簡単な土嚢袋1を用いて安全性を確保した状態で、機能成分の過剰な拡散を防止することが可能になる。
【0034】
図3に示すように、流出阻止手段として、土嚢袋1Aの袋自体が吸着性繊維で作られている。吸着性繊維としては、キレート繊維(N-グルカミン型樹脂)等を用いることができる。
【0035】
土嚢袋1Aの袋自体を吸着性繊維で作成したことにより、土嚢袋1Aの内周面近傍の金属元素Mが袋自体の繊維に吸着される。これにより、金属元素Mが土嚢袋1Aの外に溶出・拡散することがなく、植物の形態を維持する(制御する)機能の効果範囲を、植生土嚢5を設置した範囲だけで設定することが可能になる。このため、簡単な土嚢袋1を用いて安全性を確保した状態で、機能成分の過剰な拡散を防止することが可能になる。
【0036】
金属元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうち、少なくとも一種類が含まれている。少なくとも一種類の金属元素は、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)のうちのいずれかであることが好ましい。
【0037】
以上の金属元素を用いることで、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調節することができる。
【0038】
同じ敷地の中で、建築物や建設物等の保護を目的として植物を成長させる場合や、見栄えを優先することを目的として植物を成長させる場合等、場所に応じて抑制剤3(図1参照)の種類が異なる植生土嚢5(図1参照)を設置することができる。
【0039】
これにより、任意の植生土嚢5(図1参照)を準備して設置することで、必要な建築物や建設物等が存在する地域の特性等に応じて、簡単に、しかも、複数の形態の選択肢の状況から任意の目的の緑地、任意の景観の緑地を構築することができる。しかも、植生土嚢5(図1参照)を交換することで、簡単に変更することができる。
【0040】
上述した金属元素を用いた場合の植物の形態制御の状況は、土嚢袋1(図1参照)に収容する抑制剤3(図1参照)の金属元素の種類、組み合わせ等により、任意の状況を得ることができる。
【0041】
例えば、葉の面積を抑制し、重量はあまり抑制せずに質感は保つ状況に調整したり、葉の面積はあまり抑制せず、重量を抑制して質感を軽くしたり、葉の面積、及び、重量を抑制し、植物全体の見た目、質感ともに軽度の状態にしたりすることができる。
【0042】
図4には、抑制剤3植物の形態制御剤の金属元素として、ホウ素(B)を用いた場合の効果の説明を示してある。
【0043】
図4(a)はホウ素(B)の濃度(mg/l)と緑化の度合いであるクロロフィルの量との関係のグラフ、図4(b)はホウ素(B)の濃度(mg/l)と葉の重量との関係のグラフ、図4(c)は基準となる濃度(例えば、10mg/l)での発芽率の経日変化のグラフを示してある。
【0044】
図4(a)に示すように、ホウ素(B)を用いた場合、1(mg/l)、5(mg/l)、10(mg/l)、50(mg/l)、100(mg/l)と濃度が高くなると、緑色の度合いが低くなり、図4(b)に示すように、濃度が高くなると、重量が軽くなっている。図4(c)に示すように、例えば、10(mg/l)の濃度において、ほぼ4日まで発芽を続け、4日以降は発芽が止まる。
【0045】
抑制剤3(図1参照)の金属元素としてホウ素(B)を用いた場合、濃度が高くなるにしたがって、緑色の度合いが低くなり、葉の大きさはほとんど変化しないが、重量が軽くなる(質感が減る)ことがわかる。
【0046】
抑制剤3(図1参照)の金属元素としてアルミニウム(Al)を用いた場合、濃度が高くなっても、緑色の度合いはあまり変化せず、葉の大きさはほとんど変化しないが、重量が軽くなる(質感が減る)ことが確認されている。
【0047】
抑制剤3(図1参照)の金属元素として銅(Cu)を用いた場合、濃度が高くなるにしたがって、緑色の度合いが低くなり、葉の大きさが大幅に小さくなり、重量も軽くなる(質感が減る)ことが確認されている。
【0048】
抑制剤3(図1参照)の金属元素としてモリブデン(Mo)を用いた場合、濃度が高くなると、緑色の度合いが大幅に低くなり、葉の大きさが大幅に小さくなり、重量も大幅に軽くなる(質感が大幅に減る)ことが確認されている。
【0049】
抑制剤3(図1参照)の金属元素として鉄(Fe)を用いた場合、濃度が高くなると、緑色の度合いが低くなり、葉の大きさはほとんど変化しないが、重量が軽くなる(質感が減る)ことが確認されている。
【0050】
抑制剤3(図1参照)の金属元素としてリチウム(Li)を用いた場合、濃度が高くなると、緑色の度合いが大幅に低くなり、葉の大きさが大幅に小さくなり、重量が大幅に軽くなる(質感が大幅に減る)ことが確認されている。
【0051】
抑制剤3(図1参照)の金属元素としてコバルト(Co)を用いた場合、濃度が高くなると、緑色の度合いが大幅に低くなり、葉の大きさが大幅に小さくなり、重量が大幅に軽くなる(質感が大幅に減る)ことが確認されている。
【0052】
抑制剤3(図1参照)の金属元素として亜鉛(Zn)を用いた場合、濃度が高くなるにしたがって、緑色の度合いが低くなり、葉の大きさが小さくなり、重量も軽くなる(質感が減る)ことが確認されている。
【0053】
上述したように、土嚢袋1に収容する抑制剤3(図1参照)の金属元素として、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)のうちのいずれか、もしくは、適宜を組み合わせたものを用いることで、所定の濃度の範囲で、環境基準を満たした状態で植物の成長を調節することができる。
【0054】
図5に基づいて植生土嚢5の適用例を説明する。
【0055】
図5には本発明の一実施例に係る植生土嚢5を用いた休耕田での使用状況を示してある。
【0056】
図に示すように、休耕田15に対し、所望の柄や絵の範囲に植生土嚢5を敷き詰め、土の部分と植生土嚢5の部分とに区分けする。土の部分には背丈が高い植物が成長し、植生土嚢5の部位にだけ植物6を所定の成長度合いにより生育させる。植生土嚢5は、植物6の形態を維持する機能部材である金属元素の拡散が防止されているので、植物6が所望の状態に育成される範囲が、植生土嚢5を設置した範囲だけに設定される。
【0057】
従って、休耕田15の土の部位における背丈が高い植物に対して、形態が維持されて背丈が低い植物6によって所望の柄や絵を的確に表現することが可能になる。
【0058】
このため、所望の柄や絵の状が狙い通りに維持された状況で、植物6による柄や絵を休耕田15に表現することが可能になる。
【0059】
休耕田15に対し、所望の柄や絵の範囲に、機能剤として植物6の成長を積極的に促進する剤を用いた植生土嚢を敷き詰めることも可能である。これにより、所望の柄や絵の範囲で植物6を積極的に成長させることが可能になる。
【0060】
また、休耕田15に対し、所望の柄や絵の範囲以外の場所に、機能剤として除草剤等の農薬を用いた植生土嚢を敷き詰めることも可能である。これにより、所望の柄や絵の範囲と、それ以外の植物が生えない範囲とを明確に区分けして、植物6により表現される所望の柄や絵を際立たせることが可能になる。
【0061】
本発明の植生土嚢は、上記実施例の他に、植物の形態を維持する(制御する)機能の効果範囲を、所望の範囲に設定することが望まれる場所に適用することができる。例えば、草刈りがし難い場所や人が入ることが困難な場所で、機能剤の流出を抑制することが必要な土地に植生土嚢を敷き詰めることができる。原状復帰を行う場合、土壌の入れ替えを行うことなく植生土嚢を取り除くだけで良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は植生土嚢の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A 土嚢袋
2 栽培資材
3 抑制剤
5 植生土嚢
6 植物
8 吸着材
15 休耕田
M 金属元素

図1
図2
図3
図4
図5