(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】イオン性素子およびその製造方法、機能性デバイスならびに電子機器
(51)【国際特許分類】
H10N 70/00 20230101AFI20241210BHJP
H10N 70/20 20230101ALI20241210BHJP
H10N 99/00 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
H10N70/00 Z
H10N70/20
H10N99/00
(21)【出願番号】P 2020179329
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-08-08
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】519077687
【氏名又は名称】ウニベルシテ グルノーブル アルプ
(73)【特許権者】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サセペ ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】リーブ ヨアンナ
(72)【発明者】
【氏名】小野 新平
【審査官】渡邊 佑紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/114361(WO,A1)
【文献】小野新平,“電気 2 重層エレクトレットを用いた振動発電素子”,応用物理,2018年, Vol.87, No.12,p.917-920,DOI: 10.11470/oubutsu.87.12_917
【文献】Chikako SANO et al.,“Triboelectric energy harvesting with surface-charge-fixed polymer based on ionic liquid”,Science and Technology of Advanced Materials,2018年03月23日,Vol. 19, No. 1,p.317-323,DOI: 10.1080/14686996.2018.1448200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 70/00
H10N 70/20
H10N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層を備え、
前記イオン層内において、前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンが化学的に固定された状態で配置されていると共に、
前記一対の端面
の各々における端面自体の領域内に、
前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域と、
前記イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域と
が
、それぞれ設けられている
イオン性素子。
【請求項2】
前記イオン層内において、
前記一対の端面のうちの一方の端面の近傍領域に、前記イオンとしての陽イオンが、化学的に固定配置されていると共に、
前記一対の端面のうちの他方の端面の近傍領域に、前記イオンとしての陰イオンが、化学的に固定配置されている
請求項1に記載のイオン性素子。
【請求項3】
前記一対の端面内において、前記固定配置領域が、任意の回路の一部を構成できるようにパターニングされている
請求項1または請求項2に記載のイオン性素子。
【請求項4】
前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域での電荷量が、任意に設定可能となっている
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のイオン性素子。
【請求項5】
前記イオンと前記ポリマーとが互いに重合していることによって、前記イオンが化学的に固定配置されている
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のイオン性素子。
【請求項6】
前記イオン層における前記少なくとも一方の端面が、粘着性を有している
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のイオン性素子。
【請求項7】
前記電解質がイオン液体である
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のイオン性素子。
【請求項8】
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、
前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された被制御層と
を備え、
前記イオン層内において、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンが化学的に固定された状態で配置されていると共に、
前記一対の端面
の各々における端面自体の領域内に、
前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域と、
前記イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域と
が
、それぞれ設けられている
機能性デバイス。
【請求項9】
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、
前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された、被制御層としての半導体層と、
前記半導体層と前記イオン層との間に設けられ、前記イオン層内に電圧を印加するための複数の電極と
を備え、
前記イオン層内において、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンとしての陽イオンおよび陰イオンのうちの一方のイオンのみが、化学的に固定された状態で配置されている
機能性デバイス。
【請求項10】
前記電圧の印加状況に応じて、前記半導体層内の前記複数の電極間の領域において、電流路の形成態様が制御されるようになっており、
スイッチング素子として構成されている
請求項9に記載の機能性デバイス。
【請求項11】
前記電極が2つ設けられており、
電界効果ダイオードとして構成されている
請求項
9または請求項10に記載の機能性デバイス。
【請求項12】
前記被制御層における物性が、前記イオン層内における前記イオンの化学的な固定配置現象によって、制御されるようになっている
請求項8ないし請求項1
1のいずれか1項に記載の機能性デバイス。
【請求項13】
前記被制御層が、前記少なくとも一方の端面上に貼り付けられている
請求項8ないし請求項12のいずれか1項に記載の機能性デバイス。
【請求項14】
1または複数の機能性デバイスを備え、
前記機能性デバイスは、
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、
前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された被制御層と
を備え、
前記イオン層内において、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンが化学的に固定された状態で配置されていると共に、
前記一対の端面
の各々における端面自体の領域内に、
前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域と、
前記イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域と
が
、それぞれ設けられている
電子機器。
【請求項15】
1または複数の機能性デバイスを備え、
前記機能性デバイスは、
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、
前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された、被制御層としての半導体層と、
前記半導体層と前記イオン層との間に設けられ、前記イオン層内に電圧を印加するための複数の電極と
を備え、
前記イオン層内において、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンとしての陽イオンおよび陰イオンのうちの一方のイオンのみが、化学的に固定された状態で配置されている
電子機器。
【請求項16】
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層を形成し、
前記一対の端面上にそれぞれ、電極を取り付け、
前記電極を介して前記一対の端面間に電圧を印加することにより、前記イオン層内において前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンを配置させ、
前記イオンと前記ポリマーとを互いに重合させることにより、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンを化学的に固定された状態で配置させ、
前記一対の端面上からそれぞれ、前記電極を取り外すと共に、
前記一対の端面内における前記電圧の印加領域を制御することによって、前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域を、前記一対の端面内において任意に設定する
イオン性素子の製造方法。
【請求項17】
前記イオン層に対して、光照射、熱供給または重合開始剤の供給を行うことによって、前記イオンと前記ポリマーとを互いに重合させる
請求項16に記載のイオン性素子の製造方法。
【請求項18】
前記電圧の大きさを制御することによって、前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域での電荷量を、任意に設定する
請求項16または請求項17に記載のイオン性素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イオン層を有するイオン性素子およびその製造方法、ならびに、そのようなイオン性素子を備えた機能性デバイスおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン液体等の電解質を含んだイオン層を有するデバイス(イオン性素子)として、各種機能を有するものが提案されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Q.Pai, A.J.Heeger et al., Science(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イオン性素子や、それを用いた各種のデバイスおよび機器(装置)等では、一般に、ユーザの利便性を向上させることが求められている。
【0005】
利便性を向上させることが可能なイオン性素子およびその製造方法、機能性デバイスならびに電子機器を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態に係るイオン性素子は、基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層を備えたものである。このイオン層内において、上記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面の近傍領域に、上記イオンが化学的に固定された状態で配置されている。また、上記一対の端面の各々における端面自体の領域内に、上記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域と、上記イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域とが、それぞれ設けられている。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る第1の機能性デバイスは、基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、上記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された被制御層とを備えたものである。上記イオン層内において、上記少なくとも一方の端面の近傍領域に、上記イオンが化学的に固定された状態で配置されている。また、上記一対の端面の各々における端面自体の領域内に、上記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域と、上記イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域とが、それぞれ設けられている。
本開示の一実施の形態に係る第2の機能性デバイスは、基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、上記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された、被制御層としての半導体層と、この半導体層と上記イオン層との間に設けられ、上記イオン層内に電圧を印加するための複数の電極とを備えたものである。上記イオン層内において、上記少なくとも一方の端面の近傍領域に、上記イオンとしての陽イオンおよび陰イオンのうちの一方のイオンのみが、化学的に固定された状態で配置されている。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る第1の電子機器は、1または複数の機能性デバイスを備えたものである。この機能性デバイスは、基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、上記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された被制御層とを備えている。上記イオン層内において、上記少なくとも一方の端面の近傍領域に、上記イオンが化学的に固定された状態で配置されている。また、上記一対の端面の各々における端面自体の領域内に、上記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域と、上記イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域とが、それぞれ設けられている。
本開示の一実施の形態に係る第2の電子機器は、1または複数の機能性デバイスを備えたものである。この機能性デバイスは、基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、上記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された、被制御層としての半導体層と、この半導体層と上記イオン層との間に設けられ、上記イオン層内に電圧を印加するための複数の電極とを備えたものである。上記イオン層内において、上記少なくとも一方の端面の近傍領域に、上記イオンとしての陽イオンおよび陰イオンのうちの一方のイオンのみが、化学的に固定された状態で配置されている。
【0009】
本開示の一実施の形態に係るイオン性素子の製造方法は、基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層を形成し、上記一対の端面上にそれぞれ電極を取り付け、これらの電極を介して上記一対の端面間に電圧を印加することにより、上記イオン層内において上記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面の近傍領域に、上記イオンを配置させ、上記イオンと上記ポリマーとを互いに重合させることにより、上記少なくとも一方の端面の近傍領域に、上記イオンを化学的に固定された状態で配置させ、上記一対の端面上からそれぞれ上記電極を取り外すと共に、上記一対の端面内における上記電圧の印加領域を制御することによって、上記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域を、上記一対の端面内において任意に設定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施の形態に係るイオン性素子およびその製造方法、第1および第2の機能性デバイス、ならびに、第1および第2の電子機器によれば、利便性を向上させることが可能となる。
【0011】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施の形態に係るイオン性素子の構成例を表す模式断面図である。
【
図2】
図1に示したイオン性素子の製造方法の一例を工程順に表す流れ図である。
【
図3】
図2に示したイオン性素子の製造工程の際の構成例を表す模式断面図である。
【
図4】
図3に続く製造工程の際の構成例を表す模式断面図である。
【
図5】
図1に示したイオン性素子を備えた機能性デバイスの構成例を表す模式断面図である。
【
図6】
図5に示した機能性デバイスの作用について説明するための模式断面図である。
【
図7】変形例1に係るイオン性素子の構成例を表す模式断面図である。
【
図8】変形例1に係る機能性デバイスの構成例を表す模式断面図である。
【
図9】変形例2に係る機能性デバイスとしてのスイッチング素子の構成例を表す模式断面図である。
【
図10】
図9に示したスイッチング素子の動作について説明するための模式断面図である。
【
図11】
図9に示したスイッチング素子の動作について説明するための模式回路図である。
【
図12】
図9に示したスイッチング素子における特性の一例を表す図である。
【
図13】変形例3に係るイオン性素子の構成例を表す模式平面図である。
【
図14】変形例4に係るイオン性素子の構成例について説明するための図である。
【
図15】適用例に係る電子機器の構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(陽イオン,陰イオンの双方が化学的に固定配置された場合の例)
2.変形例
変形例1(陽イオン,陰イオンの一方のみが化学的に固定配置された場合の例)
変形例2(電界効果ダイオードからなるスイッチング素子への応用例)
変形例3(固定配置領域および非固定配置領域を有するイオン性素子の例)
変形例4(固定配置領域におけるイオンの電荷量を可変としたイオン性素子の例)
3.適用例(イオン性素子の電子機器への適用例)
4.その他の変形例
【0014】
<1.実施の形態>
[イオン性素子の構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係るイオン性素子(イオン性素子1)の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。本実施の形態のイオン性素子1は、詳細は後述するが、いわゆる電石(エレクトレット:electret)として機能する素子であり、イオン層12を備えている。
【0015】
イオン層12は、
図1に示したように、ポリマー(重合体)121および電解質(電解質の分子)122を有している。イオン層12は、これらの電解質122およびポリマー121が、所定の混合比(例えば、混合重量比または混合体積比など)にて混合されたものとなっている。ここで、イオン層12における、電解質122とポリマー121との混合比は、例えば、電解質122:ポリマー121=1:m(例えば、m≧0.05)であることが望ましい。これは、イオン層12を形成できる限界となる範囲であるからである。なお、このようなイオン層12の厚みは、例えば0.1~3000μm程度である。
【0016】
(ポリマー121)
ポリマー121は、イオン層12の母材(基材)として機能するものである。このポリマー121は、例えば、高分子材料によって構成される。具体的には、高分子材料としては、例えば、アクリル系の材料が挙げられる。また、他の高分子材料としては、例えば、アクリレート系ポリマー等の有機材料が挙げられる。なお、ポリマー121として有機材料を用いた場合には、分子量が大きくなるため、イオン層12を形成し易くなる。
【0017】
ここで、イオン層12において、互いに対向する一対の端面(表面,裏面)のうちの少なくとも一方の端面が粘着性を有することになるように、ポリマー121が粘着性を示す材料により構成されているのが望ましい。具体的には、ポリマー121が、例えば、アクリル系の材料やアクリレート系ポリマー等の材料からなるのが望ましい。イオン層12における少なくとも一方の端面が粘着性を示す場合、後述する電極111,112等や被制御層21,22等を、イオン層12に取り付け易くなる(貼り付けるだけで取り付けることが可能となる)からである。
【0018】
(電解質122)
電解質122は、その分子がポリマー121内に配置された状態となっている。また、例えば
図1中に模式的に示したように、この電解質122は、実際にはイオン層12内において、主にイオン状態となって分散している。すなわち、電解質122の分子には、陽イオン122cと陰イオン122aとに電離した状態となっているものが存在する。これは、ポリマー121が電解質122の分散剤として機能するからである。
【0019】
電解質122は、多重結合性(例えば、2重結合性または3重結合性など)を有するイオン(陽イオン122cおよび陰イオン122a)により構成されている。このような電解質122としては、例えば、イオン液体を用いるのが望ましい。イオン層12内において、以下説明するように、イオン(陽イオン122cおよび陰イオン122a)の化学的な固定配置が形成され易くなるからである。
【0020】
なお、このようなイオン液体としては、例えば、以下の陽イオン122cおよび陰イオン122aのうちの一方または両方に対して多重結合性基を付けたものを組み合わせてなる、イオン液体を用いることができる。
【0021】
(A)陽イオン122c
・イミダゾリウム系陽イオン:
1-methyl-3-methylimidazolium(MMI),
1-ethyl-3-methylimidazolium(EMI),
1-propyl-3-methylimidazolium(PMI),
1-butyl-3-methylimidazolium(BMI),
1-pentyl-3-methylimidazolium(PeMI),
1-hexyll-3-methylimidazolium(HMI),
1-Octyl-3-methylimidazolium,
1-oxyl-3-methylimidazolium(OMI),
1-hexadecyl-3-methylimidazolium,
1-Butyl-2,3-dimethulimidazolium,
1,2-dimethyl-3-propylimidazolium(DMPI);
・ピリジニウム系陽イオン:
1-methl-1-propylpiprodonium(PP13),
1-methyl-1-propylpyrrolidinium(P13),
1-methyl-1-butylpyrrolidinium(P14),
1-butyl-1-methylpyrrolidinium(BMP);
・アンモニウム系陽イオン:
trimethylpropylammonium(TMPA),
trimethyloctylammonium(TMOA),
trimethylhexylammonium(TMHA),
trimethylpentylammonium(TMPeA),
trimethylbutylammonium(TMBA);
・ピラゾリウム系陽イオン:
1-ethyl-2,3,5-trimethylpyrazolium(ETMP),
1-butyl-2,3,5-trimethylpyrazolium(BTMP),
1-propyl-2,3,5-trimethylpyrazolium(PTMP),
1-hexyl-2,3,5-trimethylpyrazolium(HTMP),
1-Buthylpyridium,
1-Hexylpyridium;
(B)陰イオン122a
bis(trifluoromethanesulfonyl)imide(TFSI),
bis(fluorosulfonyl)imide(FSI),
bis(perfluoroethylsulfonyl)imide(BETI),
tetrafluoroborate(BF4),
hexafluorophosphate(PF6);
【0022】
ここで、
図1中に模式的に示したように、このようなイオン層12内では、前述した一対の端面(表面,裏面)のうちの少なくとも一方の端面の近傍領域に、イオン(陽イオン122cまたは陰イオン122a)が化学的に固定された状態で配置されている。具体的には、この
図1の例では、イオン層12内において、一方の端面(裏面)の近傍領域に陽イオン122cが化学的に固定配置されていると共に、他方の端面(表面)の近傍領域に陰イオン122aが化学的に固定配置されている。なお、詳細は後述するが、イオン(陽イオン122cまたは陰イオン122a)とポリマー121とが互いに重合していることによって、これらのイオンが化学的に固定配置される(半永久的に化学的固定される)ようになっている。
【0023】
[イオン性素子の製造方法]
このようなイオン性素子1は、例えば、
図2に示したようにして製造することができる。
図2は、イオン性素子1の製造方法の一例を、工程順に流れ図で表わしたものである。
【0024】
(A.イオン層の形成工程)
まず、例えば
図3に示したように、前述した材料からなるポリマー121と、前述した材料(例えばイオン液体)からなる電解質122とを含むと共に、互いに対向する一対の端面(表面,裏面)を有するイオン層10を形成する(
図2の工程S11)。なお、このイオン層10の段階においては、前述したイオン層12とは異なり、イオン(陽イオン122cおよび陰イオン122a)がポリマー121内で分散配置された状態となっている。
【0025】
このようなイオン層10を形成する際には、まず、前述した材料からなるポリマー121および電解質122と、両親媒性物質(両親媒性分子を有する物質;レベリング剤)とを、所定の溶媒(例えば、クロロベンゼン,ジクロロベンゼン等の高沸点溶剤など)中で混合することにより、混合体を作製する。なお、両親媒性物質としては、例えば界面活性剤が挙げられる。また、この界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。フッ素系界面活性剤の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。この際、ポリマー121と電解質122とは、例えば、前述した所定の混合比にて混合するようにする。また、この混合体における両親媒性物質の含有量は、例えば1000ppm以下程度とするのが望ましく、例えば10ppm程度とするのがより望ましい。混合体への両親媒性物質の過剰な含有が防止され、後述する両親媒性物質の機能がより効果的に発揮されるからである。
・ペルフルオロアルキルスルホン酸(CF3(CF2)nSO3H)
・ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS;perfluorooctanesulfonate)
・ペルフルオロアルキルカルボン酸(CF3(CF2)nCOOH)
・ペルフルオロオクタン酸(PFOA;perfluorooctanoate)
・フッ素テロマーアルコール(F(CF2)nCH2CH2OH)
【0026】
ここで、このようにしてポリマー121、電解質122および両親媒性物質を混合する際には、これらの材料について、事前に超音波(例えば、50kHz,100W程度の超音波)を用いた撹拌を行っておくのが望ましい。これらの材料同士(例えば、ポリマー121および電解質122同士)が、均一に混ざり易くなるからである。なお、このような超音波を用いた撹拌は、例えば、下限時間以上かつ上限時間以下の所定の期間(撹拌時間)で行うのが望ましい。撹拌効率を高めつつ、イオン性素子1の耐久性を確保できるようになるからである。ここで、上記した上限時間および下限時間としてはそれぞれ、例えば、3分,10分が挙げられる。つまり、例えば、超音波を用いた撹拌を3分以上かつ10分以下の期間で行うようにする。ただし、これらの上限値および下限値(適切な撹拌時間)はそれぞれ、ポリマー121や電解質122の種類、超音波の出力値等に応じて変化する。そのため、超音波を用いた撹拌を行う場合は、上記したように、撹拌効率が高く、かつイオン性素子1が壊れない程度の出力および撹拌時間で行うのが好ましい。
【0027】
なお、この例では、上記したように、両親媒性物質の混合および超音波を用いた撹拌の双方を行っているが、これには限られず、例えば、これらのうちのいずれか一方を行わないようにしてもよい。
【0028】
次いで、例えばスピンコートやインクジェット等を用いて、上記した混合体を薄膜状に成形する。換言すると、上記のようにして得られた混合体を、薄膜化させる。この際、スピンコートを用いる場合には、例えば、空気中において、500rpm(回転/分)程度の回転率にて1分間程度のスピンコートを行うようにする。なお、このようにして混合体を薄膜状にする手法としては、上記したスピンコートおよびインクジェットには限られず、他の印刷技術を用いることも可能である。具体的には、例えば、ナノインプリント法、誘導プラズマエッチング法、ドライエッチング法といったプリント技術、エッチング技術などの印刷技術を用いることが可能である。ただし、このようにして混合体を薄膜状にする手法を、用いないようにしてもよい。
【0029】
続いて、このようにして得られた薄膜状の混合体を乾燥させることにより、この混合体から上記した溶媒を蒸発させる。これにより、
図3に示したイオン層10が形成される。なお、乾燥させる際には、例えば、窒素(N
2)雰囲気中において乾燥を行うようにする。
【0030】
(B.電極の取り付け工程)
次いで、例えば
図3に示したように、このようして得られたイオン層10における一対の端面(表面,裏面)上にそれぞれ、電極111,112を取り付ける(工程S12)。具体的には、例えば真空蒸着法や塗布法等を用いて別途形成した一対の電極111,112の間に、イオン層10を挟み込むようにする。また、このような電極111,112の取り付け手法としては、前述したようにポリマー121が粘着性を示す材料により構成されている場合には、イオン層10の端面上に電極111,112を貼り付ける手法が望ましい。電極111,112を容易に取り付けることができるからである。
【0031】
ここで、これらの電極111,112はそれぞれ、イオン層10に対して電圧(後述する直流電圧Vdc)を印加するための電極である。電極111,112の厚みはそれぞれ、例えば30nmである。また、電極111,112はそれぞれ、例えば、金(Au),白金(Pt),アルミニウム(Al),ニッケル(Ni),チタン(Ti)などの各種金属の他、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)などの導電性酸化物、導電性高分子、カーボンナノチューブ、グラファイト等の導電性材料からなる。なお、このイオン性素子1では、一般的な有機EL(Electro-Luminescence)素子等とは異なり、電極111,112とイオン層10との間の仕事関数の値の差を考慮せずに、電極111,112の材料を選定することができる。このため、電極111,112としては種々の導電性材料を使用することが可能となっている。
【0032】
(C.電極を介した電圧の印加工程)
続いて、例えば
図4に示したように、電極112を直流電圧供給源PS(dc)の正(+)側、電極111を直流電圧供給源PS(dc)の負(-)側とそれぞれ電気的に接続する。そして、この直流電圧供給源PS(dc)から電極111,112を介して、イオン層10における一対の端面(表面,裏面)間に、所定の電圧(直流電圧Vdc)が印加されるようにする(工程S13)。
【0033】
すると、例えば
図4に示したように、陽イオン122cおよび陰イオン122aがそれぞれイオン層10内で分散した状態から、陽イオン122cおよび陰イオン122aがそれぞれ選択的に移動し、イオン層10内に電気二重層が形成される。具体的には、
図4に示したように、イオン層10内の陽イオン122cが、電極111の表面(イオン層10側の表面)と所定の間隔をおいて整列するようになる。一方、イオン層10内の陰イオン122aは、電極112の表面と所定の間隔をおいて整列するようになる。このとき、電極111側の電気二重層および電極112側の電気二重層はそれぞれ、例えば1nm程度の微小な距離(間隔)を用いて形成される。このようにして、電極111,112を介してイオン層10における一対の端面間に直流電圧Vdcを印加することによって、イオン層10内において、少なくとも一方の端面(この例では双方の端面)の近傍領域に、イオン(この例では陽イオン122cおよび陰イオン122a)を配置させる。なお、
図4中において、「h」は正孔(ホール)を表すと共に「e」は電子を表し、以降の図においても同様である。
【0034】
(D.イオンとポリマーとの重合工程)
次に、イオン層10内において、イオン(この例では陽イオン122cおよび陰イオン122a)とポリマー121とを、互いに重合させる(工程S14)。これにより、例えば
図1に示したイオン層12のように、その少なくとも一方の端面(この例では双方の端面)の近傍領域に、イオン(この例では陽イオン122cおよび陰イオン122a)を化学的に固定された状態で配置させる。すなわち、上記したように、イオンが分散配置されたイオン層10を基にして、端面の近傍領域にイオンが化学的に固定配置された、イオン層12を形成する。
【0035】
ここで、このようなイオンとポリマー121との重合処理は、例えば以下のようにして行う。すなわち、例えば、イオン層10に重合開始剤を混合させて、光照射または熱供給を行うことによって、イオンとポリマー121とを互いに重合させることができる。具体的には、光照射としては、例えば紫外線の照射等が挙げられ、熱供給としては、例えば100℃度程度に加熱することが挙げられる。また、重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスブチロニトリルのようなアゾ化合物、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスホニウム塩等が挙げられる。このようにして、光照射、熱供給または重合開始剤の供給を行うと、イオン同士の多重結合(前述した2重結合や3重結合等)の一部が解けることで、イオンとポリマー121とが互いに重合する(上記した電気二重層の状態が保持される)ようになっている。
【0036】
(E.電極の取り外し工程)
その後、このようにして得られたイオン層12の一対の端面(表面,裏面)上からそれぞれ、電極111,112を取り外す(工程S15)。このとき、前述したように、電極111,112がイオン層12に貼り付けられている(粘着性を利用して取り付けられている)場合には、これらの電極111,112をそれぞれ容易に取り外すことが可能となる。
【0037】
以上により、
図1に示したイオン性素子1が完成する。
【0038】
[機能性デバイスの構成]
続いて、
図5を参照して、これまでに説明したイオン性素子1を備えた機能性デバイスの構成例について説明する。
図5(A),
図5(B)はそれぞれ、イオン性素子1を備えた機能性デバイス(機能性デバイス2)の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。
【0039】
この機能性デバイス2では、イオン性素子1におけるイオン層12の少なくとも一方の端面上に、被制御層が設けられている。そして、詳細は後述するが、この被制御層における物性が、イオン性素子1(イオン層12内)における前述したイオン(この例では陽イオン122cおよび陰イオン122a)の化学的な固定配置現象によって、制御されるようになっている。
【0040】
具体的には、
図5(A)に示した機能性デバイス2では、イオン層12の一方の端面(裏面)上に、このイオン層12内の陽イオン122cの化学的固定配置と対向するようにして、被制御層21が配置されている。一方、この
図5(A)に示した機能性デバイス2では、イオン層12の他方の端面(表面)上には、被制御層が配置されていない。
【0041】
図5(B)に示した機能性デバイス2では、イオン層12の双方の端面上にそれぞれ、被制御層が配置されている。すなわち、イオン層12の一方の端面(裏面)上に、このイオン層12内の陽イオン122cの化学的固定配置と対向するようにして、被制御層21が配置されている。また、イオン層12の他方の端面(表面)上に、このイオン層12内の陰イオン122aの化学的固定配置と対向するようにして、被制御層22が配置されている。
【0042】
ここで、これらの被制御層21,22はそれぞれ、例えば、前述したようにポリマー121が粘着性を示す材料により構成されている(イオン層12の端面が粘着性を有している)場合には、イオン層12の端面上に貼り付けられている。これにより、被制御層21,22をイオン層12の端面上に容易に配置させることが可能となる。
【0043】
このような被制御層21,22としては、例えば、各種材料からなる半導体層、絶縁体層、導電体層または熱電変換層などを用いることが可能である。
【0044】
[作用・効果]
次に、
図6を参照して、このようなイオン性素子1および機能性デバイス2の作用および効果について説明する。
図6(A),
図6(B)はそれぞれ、
図5(A),
図5(B)に示したイオン性素子1および機能性デバイス2の作用について、模式的に断面図(Z-X断面図)にて表したものである。
【0045】
まず、
図6(A)に示した機能性デバイス2では、イオン層12の裏面上に、このイオン層12内の陽イオン122cの化学的固定配置と対向するようにして、被制御層21が配置されている。これにより、例えば
図6(A)に示したように、被制御層21におけるイオン層12との界面付近の領域に、陽イオン122cの化学的固定配置と対向するようにして、キャリアとしての電子eが並んで配置するようになる。換言すると、この被制御層21におけるイオン層12との界面付近の領域に、電子eによる導電領域(負の電荷量が相対的に高い領域)が形成されることになる。
【0046】
その結果、イオン性素子1の制御対象(貼り付け先)である被制御層21において、イオン層12との界面付近の領域の物性(この例では、電荷量やキャリア特性、導電性など)が、容易に制御できるようになる。具体的には、この例では、イオン性素子1(イオン層12内)における陽イオン122cの化学的な固定配置現象によって、被制御層21におけるイオン層12との界面付近の領域の物性が、制御される。
【0047】
一方、
図6(B)に示した機能性デバイス2では、まず、
図6(A)の例と同様にして、イオン層12の裏面上に、このイオン層12内の陽イオン122cの化学的固定配置と対向するようにして、被制御層21が配置されている。その結果、上記した
図6(A)の場合と同様の作用により、被制御層21におけるイオン層12との界面付近の領域の物性が、容易に制御できるようになる。
【0048】
また、この
図6(B)に示した機能性デバイス2では、更に、イオン層12の表面上にも、このイオン層12内の陰イオン122aの化学的固定配置と対向するようにして、被制御層22が配置されている。これにより、例えば
図6(B)に示したように、被制御層22におけるイオン層12との界面付近の領域に、陰イオン122aの化学的固定配置と対向するようにして、キャリアとしての正孔hが並んで配置するようになる。換言すると、この被制御層22におけるイオン層12との界面付近の領域に、正孔hによる導電領域(正の電荷量が相対的に高い領域)が形成されることになる。
【0049】
その結果、イオン性素子1の制御対象(貼り付け先)である被制御層22においてもまた、イオン層12との界面付近の領域の物性(この例では、電荷量やキャリア特性、導電性など)が、容易に制御できるようになる。具体的には、この例では、イオン性素子1(イオン層12内)における陰イオン122aの化学的な固定配置現象によって、被制御層22におけるイオン層12との界面付近の領域の物性が、制御される。
【0050】
このようにして、イオン性素子1がいわゆる電石(エレクトレット)として機能し、その結果、制御対象(貼り付け先)である被制御層21,22において、イオン層12との界面付近の領域の物性が、容易に制御できるようになる。なお、この被制御層21,22の物性(制御される物性)としては、上記した電荷量やキャリア特性、導電性などの他、例えば被制御層21,22が熱電変換材料からなる場合には、熱電変換特性も挙げられる。
【0051】
以上のように本実施の形態では、イオン性素子1におけるイオン層12が、ポリマー121と、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質122とを含むと共に、一対の端面を有している。そして、このイオン層12内において、これら一対の端面のうちの少なくとも一方の端面の近傍領域に、イオンが化学的に固定された状態で配置されている。これにより、イオン性素子1がいわゆる電石(エレクトレット)として機能するようになり、その結果、制御対象(貼り付け先)である被制御層21,22において、イオン層12との界面付近の領域の物性が、容易(簡易)に制御できるようになる。よって、機能性デバイス2における機能性を容易に高めることができ、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0052】
また、これらのイオン性素子1および機能性デバイス2では、特に化学反応を行わずとも、被制御層21,22の物性を制御することが可能となる。すなわち、例えば、イオン性素子1を被制御層21,22等に貼り付けるだけで、そのような物性制御を簡易に実現することが可能となる。
【0053】
更に、これらのイオン性素子1および機能性デバイス2を製造する際には、真空プロセスやイオン注入プロセス等の複雑な工程が不要であると共に、室温環境下にて作製可能であることから、比較的簡易なプロセスにて安価に製造することが可能となる。
【0054】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~4)について説明する。なお、以下では、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0055】
[変形例1]
図7(A),
図7(B)はそれぞれ、変形例1に係るイオン性素子(イオン性素子1A,1B)の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。本変形例のイオン性素子1A,1Bではそれぞれ、実施の形態のイオン性素子1(陽イオン122c,陰イオン122aの双方が化学的に固定配置されている)とは異なり、以下詳述するように、陽イオン122c,陰イオン122aの一方のみが化学的に固定配置されるようになっている。
【0056】
具体的には、
図7(A)に示したイオン性素子1Aは、実施の形態で説明したイオン層12の代わりに、イオン層12Aを備えている。このイオン層12Aは、基本的にはイオン層12と同様の構成であるが、イオン層12とは異なり、陽イオン122cのみが化学的に固定配置されている。詳細には、イオン層12A内では、一方の端面(裏面)の近傍領域に、陽イオン122cが化学的に固定配置されていると共に、陰イオン122aは、ポリマー121中に分散した状態で配置されている(化学的に固定配置されていない)。
【0057】
一方、
図7(B)に示したイオン性素子1Bは、イオン層12の代わりに、イオン層12Bを備えている。このイオン層12Bは、基本的にはイオン層12と同様の構成であるが、イオン層12とは異なり、陰イオン122aのみが化学的に固定配置されている。詳細には、イオン層12B内では、他方の端面(表面)の近傍領域に、陰イオン122aが化学的に固定配置されていると共に、陽イオン122cは、ポリマー121中に分散した状態で配置されている(化学的に固定配置されていない)。
【0058】
また、
図8(A),
図8(B)にそれぞれ模式的な断面図(Z-X断面図)で示したように、このようなイオン性素子1A,1Bを備えた機能性デバイス(機能性デバイス2A,2B)は、以下のような構成および作用となっている。
【0059】
具体的には、
図8(A)に示した機能性デバイス2Aでは、イオン性素子1Aにおけるイオン層12Aの一方の端面(裏面)上に、このイオン層12A内の陽イオン122cの化学的固定配置と対向するようにして、被制御層21が配置されている。一方、この機能性デバイス2Aでは、イオン層12Aの他方の端面(表面)上には、被制御層が配置されていない。
【0060】
このような構成の機能性デバイス2Aでは、例えば
図8(A)に示したように、被制御層21におけるイオン層12Aとの界面付近の領域に、陽イオン122cの化学的固定配置と対向するようにして、キャリアとしての電子eが並んで配置するようになる。換言すると、この被制御層21におけるイオン層12Aとの界面付近の領域に、電子eによる導電領域(負の電荷量が相対的に高い領域)が形成されることになる。
【0061】
その結果、イオン性素子1Aの制御対象(貼り付け先)である被制御層21において、イオン層12Aとの界面付近の領域の物性(この例では、電荷量やキャリア特性、導電性など)が、容易に制御できるようになる。具体的には、この例では、イオン性素子1A(イオン層12A内)における陽イオン122cの化学的な固定配置現象によって、被制御層21におけるイオン層12Aとの界面付近の領域の物性が、制御される。
【0062】
一方、
図8(B)に示した機能性デバイス2Bでは、イオン性素子1Bにおけるイオン層12Bの他方の端面(表面)上に、このイオン層12B内の陰イオン122aの化学的固定配置と対向するようにして、被制御層22が配置されている。一方、この機能性デバイス2Bでは、イオン層12Bの一方の端面(裏面)上には、被制御層が配置されていない。
【0063】
このような構成の機能性デバイス2Bでは、例えば
図8(B)に示したように、被制御層22におけるイオン層12Bとの界面付近の領域に、陰イオン122aの化学的固定配置と対向するようにして、キャリアとしての正孔hが並んで配置するようになる。換言すると、この被制御層22におけるイオン層12Bとの界面付近の領域に、正孔hによる導電領域(正の電荷量が相対的に高い領域)が形成されることになる。
【0064】
その結果、イオン性素子1Bの制御対象(貼り付け先)である被制御層22において、イオン層12Bとの界面付近の領域の物性(この例では、電荷量やキャリア特性、導電性など)が、容易に制御できるようになる。具体的には、この例では、イオン性素子1B(イオン層12B内)における陰イオン122aの化学的な固定配置現象によって、被制御層22におけるイオン層12Bとの界面付近の領域の物性が、制御される。
【0065】
このようにして本変形例では、イオン層12A,12B内において、一対の端面のうちの一方の端面の近傍領域にのみ、イオンが化学的に固定された状態で配置されている。これにより、本変形例においても上記実施の形態と同様にして、制御対象(貼り付け先)である被制御層21,22において、イオン層12A,12Bとの界面付近の領域の物性が、容易(簡易)に制御できるようになる。よって、本変形例においても上記実施の形態と同様に、機能性デバイス2A,2Bにおける機能性を容易に高めることができ、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0066】
[変形例2]
(構成)
図9は、変形例2に係る機能性デバイスとしてのスイッチング素子(スイッチング素子3)の断面構成例(Z-X断面構成例)を、模式的に表したものである。本変形例のスイッチング素子3は、
図9に示したように、前述したイオン性素子1Aを有する機能性デバイス2Aを用いて構成されており、イオン性素子1Aと、複数の電極(この例では2つの電極231,232)とを備えている。このスイッチング素子3は、詳細は後述するが、電界効果ダイオード(FED:Field Effect Diode)として機能する素子となっている。
【0067】
イオン性素子1Aは、前述したように、イオン層12Aおよび被制御層21を有している。特に、このスイッチング素子3では、被制御層21が、半導体層210により構成されている。また、イオン層12A内では、前述したように、一方の端面(この例では被制御層21および電極231,232側の端面)の近傍領域に、陽イオン122cが化学的に固定配置されていると共に、陰イオン122aは、ポリマー121中に分散した状態で配置されている(化学的に固定配置されていない)。
【0068】
半導体層210は、各種の半導体材料を含んで構成されており、上記したように、前述した被制御層21として機能する層である。半導体材料の具体例としては、例えば、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3),ケイ素(Si),窒化ガリウム(GaN),炭化ケイ素(SiC),酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。
【0069】
電極231,232はそれぞれ、半導体層210(被制御層21)とイオン層12Aとの層間において、互いに所定の距離(例えば、5nm~10μm程度)を隔てて配置されている。これらの電極231,232はそれぞれ、イオン層12A内に電圧(後述する電圧VSD)を印加するための電極(ソース電極およびドレイン電極として機能する電極)である。このような電極231,232はそれぞれ、例えば、金(Au),アルミニウム(Al),銀(Ag),銅(Cu),炭素(C)等の材料により構成されている。
【0070】
(動作および作用・効果)
続いて、
図10~
図12を参照して、このようなスイッチング素子3の動作および作用・効果について説明する。
【0071】
図10(A)~
図10(C)はそれぞれ、スイッチング素子3の動作例について、模式的に断面図(Z-X断面図)にて表したものである。なお、この例では、電極231がソース電極(S)として機能すると共に、電極232がドレイン電極(D)として機能するようになっている。
【0072】
このスイッチング素子3では、まず、例えば
図10(A)に示したように、電極231,232間に(イオン層12Aに対して)、0V(ボルト)以上の電圧V
SD(V
SD≧0V)が印加された場合、以下のようになる。すなわち、この場合、イオン層12A内において陰イオン122aが全体的に分散された状態のままである。したがって、イオン層12A内における半導体層210との界面付近の領域には、陽イオン122cの化学的固定配置に加えて、陰イオン122aの一部も配置されることになる。そのため、陽イオン122cの周りを陰イオン122aが囲むことにより、陽イオン122cの電荷を、陰イオン122aが遮蔽することになる。この場合には、半導体層210内におけるイオン層12Aとの界面付近の領域(電極231,232間)には、電子eによる導電領域(負の電荷量が相対的に高い領域)であるチャネルは、形成されない。その結果、この場合、電極231,232間(ソース・ドレイン間)には、電流(後述する電流I
SD)は流れないことになる。
【0073】
ここで、例えば
図10(B)に示したように、電極231,232間に、閾値電圧Vth(例えば-3V)と0Vとの間の絶対値である負の電圧V
SD(Vth<V
SD<0V)が印加された場合、以下のようになる。すなわち、この場合、イオン層12A内において、陰イオン122aが部分的に電極232側(ドレイン側)に引き寄せられた状態となる(
図10(B)中の矢印P1参照)。したがって、イオン層12A内では、半導体層210との界面付近の領域において、陽イオン122cの化学的固定配置のみの領域(陰イオン122aが配置されていない領域)が、電極231側(ソース側)に部分的に形成されることになる。そのため、この場合には、半導体層210内におけるイオン層12Aとの界面付近の領域(電極231,232間)には、電子eによる導電領域であるチャネルCが、電極231側に部分的に形成される。ただし、チャネルCが電極231側に部分的に形成されているだけ(チャネルCの中間状態,電荷の傾斜分布状態)であることから、この場合も、電極231,232間には、電流I
SDは流れないことになる。
【0074】
そして、例えば
図10(C)に示したように、電極231,232間に、閾値電圧Vth以上の絶対値である負の電圧V
SD(V
SD≦Vth)が印加された場合、以下のようになる。すなわち、この場合、イオン層12A内において、陰イオン122aが全体的に電極232側に引き寄せられた状態となる。したがって、イオン層12A内では、半導体層210との界面付近の領域において、陽イオン122cの化学的固定配置のみの領域(陰イオン122aが配置されていない領域)が、電極231,232間に全体的に形成されることになる。そのため、この場合には、半導体層210内におけるイオン層12Aとの界面付近の領域には、電子eによる導電領域であるチャネルCが、電極231,232間に全体的に形成される。その結果、この場合、電極231,232間に、電流I
SDが流れることになる。
【0075】
このようにしてスイッチング素子3では、2つの電極231,232間の電圧VSDの印加状況に応じて、半導体層210内の電極231,232間の領域において、電流路(電流ISDの経路としてのチャネルC)の形成態様が制御される。つまり、2端子(2つの電極231,232)によるスイッチング素子が実現されると共に、このスイッチング素子3は電界効果ダイオードとして機能することになる。なお、このスイッチング素子3におけるスイッチング特性は、例えば、メガヘルツ(MHz)帯域の周波数でのスイッチング動作に適用可能である。
【0076】
図11(A),
図11(B)に模式的な回路図にて示したように、このスイッチング素子3では、具体的には以下のようにして、スイッチング動作が行われる。すなわち、まず、例えば
図11(A)に示したように、電極231,232間の電圧V
SDの値が、(V
SD≧0V)または(Vth<V
SD<0V)である場合には、上記したように電極231,232間には電流I
SDが流れず、スイッチング素子3がオフ状態(遮断状態)となる。一方、例えば
図11(B)に示したように、電極231,232間の電圧V
SDの値が、(V
SD≦Vth)である場合(負の電圧である電圧V
SDの絶対値が、閾値電圧Vthの絶対値以上となった場合)、以下のようになる。すなわち、この場合、上記したように電極231,232間に電流I
SDが流れるため、スイッチング素子3がオン状態(導通状態)となる(
図11(B)中の矢印P2参照)。
【0077】
ここで、
図12は、スイッチング素子3における特性(V
SD-I
SD特性)の一例(実測データの一例)を表したものである。なお、
図12中に示した、ゲート電圧Vg=0V,3Vとは、実験の際の動作確認の便宜上、スイッチング素子3にゲート電極を補助的に設けてゲート電圧Vgを印加した場合の実測データを意味している。ちなみに、ゲート電圧Vg=0Vの場合が、
図9および
図10に示した、本来の2端子(2つの電極231,232)によるスイッチング素子3の場合の実測データに対応している。
【0078】
この
図12により、上記したように、電圧V
SDの値が(V
SD≧0V)または(Vth<V
SD<0V)である場合には電流I
SDが流れず、電圧V
SDの値が(V
SD≦Vth)である場合には電流I
SD(数μA程度の電流)が流れることが分かる。また、この場合のV
SD-I
SD特性では、電圧V
SDの絶対値が増加する過程と減少する過程とで、電流I
SDの値が異なっており(
図12中の破線の矢印参照)、ヒステリシス特性を示すことが分かる。
【0079】
以上のように、本変形例のスイッチング素子3では、2つの電極231,232間の電圧VSDの印加状況に応じて、半導体層210内の電極231,232間の領域において、電流路(電流ISDの経路としてのチャネルC)の形成態様が制御される。つまり、2端子(2つの電極231,232)によるスイッチング素子が実現されると共に、このスイッチング素子3が電界効果ダイオードとして機能することになる。よって、従来の3端子(ゲート電極,ソース電極,ドレイン電極の3つの電極)によるスイッチング素子、つまり、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を用いたスイッチング素子の場合と比べ、端子を1つ削減した簡易な構成でのスイッチング素子を、容易に実現することができる。その結果、本変形例では、ユーザの利便性を更に向上させることが可能となる。
【0080】
また、このようなスイッチング素子3は、例えば、半導体ウェハ(半導体層210および電極231,232)上にイオン層12Aを一面に貼り付けたのち、素子領域ごとにダイシングを行うことで、簡易に製造することが可能である。
【0081】
なお、本変形例では、イオン性素子1A(イオン層12A内において、陽イオン122cが化学的に固定配置され、陰イオン122aが分散配置されている構成)を用いて、スイッチング素子を実現した場合の例について説明した。ただし、この例には限られず、例えば、逆に、
図7(B)に示したイオン性素子1B(イオン層12B内において、陰イオン122aが化学的に固定配置され、陽イオン122cが分散配置されている構成)を用いて、スイッチング素子を実現するようにしてもよい。そのようなイオン性素子1Bを用いたスイッチング素子の場合、本変形例で説明したスイッチング素子3の場合とは異なり、正孔hによる導電領域であるチャネルが形成されることで、2端子間に電流が流れることになる。
【0082】
[変形例3]
図13(A)~
図13(C)はそれぞれ、変形例3に係るイオン性素子の平面構成例(X-Y平面構成例)を、模式的に表したものである。本変形例のイオン性素子は、これまでに説明した構成のイオン性素子1(またはイオン性素子1A,1B)において、イオンが化学的に固定配置された領域が、端面内で部分的に形成されたものとなっている。つまり、本変形例のイオン性素子は、端面内において、イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域と、イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域とをそれぞれ有している。
【0083】
具体的には、
図13(A)に示したイオン性素子1(またはイオン性素子1A,1B)では、以下のようになっている。すなわち、端面内のY軸方向に沿って、イオン(陽イオン122c,陰イオン122aの少なくとも一方)が化学的に固定配置された領域である固定配置領域41と、イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域42とが、それぞれ設けられている。したがって、前述した、イオンの化学的固定配置を形成するための直流電圧Vdcは、固定配置領域41に対して選択的に印加されたことになり、以下同様である。
【0084】
また、
図13(B)に示したイオン性素子1(またはイオン性素子1A,1B)では、以下のようになっている。すなわち、端面内のX軸方向,Y軸方向の各々に沿って、固定配置領域41および非固定配置領域42が、それぞれ設けられている。詳細には、この例では、端面内において、固定配置領域41が2次元的に行列状に配置されている(2次元的なマトリクス配置)。
【0085】
更に、
図13(C)に示したイオン性素子1(またはイオン性素子1A,1B)では、以下のようになっている。すなわち、端面内において、固定配置領域41が
、任意の回路の一部を構成できるようにパターニングされている。詳細には、この例では、2つの矩形状の固定配置領域41同士が、配線状の固定配置領域41によって電気的に並列接続された、回路
の一部を構成している。
【0086】
このようにして本変形例のイオン性素子では、端面内における直流電圧Vdcの印加領域を制御することによって、固定配置領域41が端面内において任意に設定されるようになっている。したがって本変形例では、イオン性素子が前述した電石(エレクトレット)として機能する領域を、直流電圧Vdcの選択的な領域印加だけで、簡易かつ任意に設定することができる。よって、本変形例では、ユーザの利便性を更に向上させることが可能となる。なお、固定配置領域41の形状,配置,大きさ,個数,回路パターン等としては、上記した例には限られず、任意に設定することが可能である。
【0087】
[変形例4]
図14は、変形例4に係るイオン性素子の構成例について表したものである。本変形例のイオン性素子では、端面の全体または部分的に形成されている固定配置領域41において、イオン(陽イオン122c,陰イオン122aの少なくとも一方)の電荷量が可変のものとなっており、その電荷量が任意に設定可能となっている。
【0088】
具体的には、例えば
図14に示したように、イオンの化学的固定配置を形成するための直流電圧Vdcの大きさを制御することによって、固定配置領域41でのイオンの電荷量が任意に設定されるようになっている。詳細には、この例では、直流電圧Vdcの値が増加するのに応じて、固定配置領域41でのイオンの電荷量も増加するようになっている。つまり、直流電圧Vdcの大きさが相対的に小さい場合には、固定配置領域41でのイオンの電荷量も相対的に小さくなり、直流電圧Vdcの大きさが相対的に大きい場合には、固定配置領域41でのイオンの電荷量も相対的に大きくなる。
【0089】
このようにして本変形例のイオン性素子では、直流電圧Vdcの大きさを制御することによって、固定配置領域41におけるイオンの電荷量が、任意に設定されるようになっている。したがって本変形例では、イオン性素子が前述した電石(エレクトレット)として機能する際の電荷量、つまり、制御対象である被制御層における物性の制御度合いを、直流電圧Vdcの大きさだけで、簡易かつ任意に設定することができる。よって、本変形例では、ユーザの利便性を更に向上させることが可能となる。
【0090】
<3.適用例>
続いて、これまでに説明した実施の形態および変形例(変形例1~4)に係るイオン性素子(イオン性素子1,1A,1B)の、電子機器への適用例について説明する。
【0091】
図15(A),
図15(B)はそれぞれ、適用例に係る電子機器(電子機器5)のブロック構成例を表したものである。
【0092】
まず、
図15(A)に示した電子機器5内には、1または複数のイオン性素子1(またはイオン性素子1A,1B)を有する機能性デバイス2(または、機能性デバイス2A,2B、スイッチング素子3)が、1つ設けられている。また、この電子機器5内には、このような機能性デバイス2等を外部から封止するためのパッケージ(封止部材)50が設けられている。このようなパッケージ50が設けられていることにより、外部から機能性デバイス2等への水分などの侵入が防止され、機能性デバイス2等の耐久性(素子寿命,信頼性)を向上することが可能となっている。
【0093】
一方、
図15(B)に示した電子機器5内には、1または複数のイオン性素子1(またはイオン性素子1A,1B)を有する機能性デバイス2(または、機能性デバイス2A,2B、スイッチング素子3)が、複数(この例では2つ)設けられている。また、この電子機器5内においても、このような機能性デバイス2等を外部から封止するためのパッケージ50が設けられている。
【0094】
このような電子機器5の具体例としては、例えば、上記した1または複数の機能性デバイス2を用いた各種回路(抵抗回路や増幅回路など)や、そのような各種回路を有する各種機器等が挙げられる。
【0095】
<4.その他の変形例>
以上、実施の形態、変形例および適用例を挙げて本開示の技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0096】
例えば、上記実施の形態等において説明した各部材の構成(形状や配置位置、個数、材料等)は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、個数、材料等としてもよい。具体的には、上記実施の形態等では、イオン層における一対の端面同士が、互いに対向している場合を例に挙げて説明したが、この場合には限られない。すなわち、例えば、イオン層における一対の端面同士が、互いに対向していない(例えば、同一平面上に配置されている)ようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態等では、イオン性素子の製造方法について具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明した製造方法には限られず、他の手法を用いるようにしてもよい。
【0098】
更に、本技術では、これまでに説明した内容を、任意の組み合わせで適用することも可能である。
【0099】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0100】
また、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層を備え、
前記イオン層内において、前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンが化学的に固定された状態で配置されている
イオン性素子。
(2)
前記イオン層内において、
前記一対の端面のうちの一方の端面の近傍領域に、前記イオンとしての陽イオンが、化学的に固定配置されていると共に、
前記一対の端面のうちの他方の端面の近傍領域に、前記イオンとしての陰イオンが、化学的に固定配置されている
上記(1)に記載のイオン性素子。
(3)
前記イオン層内において、
前記一対の端面のうちの一方の端面の近傍領域に、前記イオンとしての陽イオンおよび陰イオンのうちの一方のイオンが、化学的に固定配置されていると共に、
前記陽イオンおよび陰イオンのうちの他方のイオンは、分散した状態で配置されている
上記(1)に記載のイオン性素子。
(4)
前記一対の端面内に、
前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域と、
前記イオンが分散した状態で配置された領域である非固定配置領域と
が設けられている
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のイオン性素子。
(5)
前記一対の端面内において、前記固定配置領域が所定の回路形状にパターニングされている
上記(4)に記載のイオン性素子。
(6)
前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域での電荷量が、任意に設定可能となっている
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のイオン性素子。
(7)
前記イオンと前記ポリマーとが互いに重合していることによって、前記イオンが化学的に固定配置されている
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のイオン性素子。
(8)
前記イオン層における前記少なくとも一方の端面が、粘着性を有している
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のイオン性素子。
(9)
前記電解質がイオン液体である
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のイオン性素子。
(10)
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、
前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された被制御層と
を備え、
前記イオン層内において、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンが化学的に固定された状態で配置されている
機能性デバイス。
(11)
前記被制御層における物性が、前記イオン層内における前記イオンの化学的な固定配置現象によって、制御されるようになっている
上記(10)に記載の機能性デバイス。
(12)
前記被制御層が半導体層であり、
前記半導体層と前記イオン層との間に、前記イオン層内に電圧を印加するための複数の電極が更に設けられており、
前記イオンとしての陽イオンおよび陰イオンのうちの一方のイオンのみが、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、化学的に固定配置されている
上記(10)または(11)に記載の機能性デバイス。
(13)
前記電圧の印加状況に応じて、前記半導体層内の前記複数の電極間の領域において、電流路の形成態様が制御されるようになっており、
スイッチング素子として構成されている
上記(12)に記載の機能性デバイス。
(14)
前記電極が2つ設けられており、
電界効果ダイオードとして構成されている
上記(12)または(13)に記載の機能性デバイス。
(15)
前記被制御層が、前記少なくとも一方の端面上に貼り付けられている
上記(10)ないし(14)のいずれかに記載の機能性デバイス。
(16)
1または複数の機能性デバイスを備え、
前記機能性デバイスは、
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層と、
前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面上に配置された被制御層と
を備え、
前記イオン層内において、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンが化学的に固定された状態で配置されている
電子機器。
(17)
基材としてのポリマーと、多重結合性を有するイオンにより構成される電解質と、を含むと共に、一対の端面を有するイオン層を形成し、
前記一対の端面上にそれぞれ、電極を取り付け、
前記電極を介して前記一対の端面間に電圧を印加することにより、前記イオン層内において前記一対の端面のうちの少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンを配置させ、
前記イオンと前記ポリマーとを互いに重合させることにより、前記少なくとも一方の端面の近傍領域に、前記イオンを化学的に固定された状態で配置させ、
前記一対の端面上からそれぞれ、前記電極を取り外す
イオン性素子の製造方法。
(18)
前記イオン層に対して、光照射、熱供給または重合開始剤の供給を行うことによって、前記イオンと前記ポリマーとを互いに重合させる
上記(17)に記載のイオン性素子の製造方法。
(19)
前記一対の端面内における前記電圧の印加領域を制御することによって、前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域を、前記一対の端面内において任意に設定する
上記(17)または(18)に記載のイオン性素子の製造方法。
(20)
前記電圧の大きさを制御することによって、前記イオンが化学的に固定配置された領域である固定配置領域での電荷量を、任意に設定する
上記(17)ないし(19)のいずれかに記載のイオン性素子の製造方法。
【0101】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。