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特許7601637注射デバイスに取り付けるためのデータ収集装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】注射デバイスに取り付けるためのデータ収集装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20241210BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20241210BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61M5/168 510
A61M5/172
A61M5/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020536196
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018086104
(87)【国際公開番号】W WO2019129623
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】17306955.0
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ユーグル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】村上 哲
【審判官】三森 雄介
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3058970(EP,A1)
【文献】実開平3-106418(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/172
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ収集デバイスであって:
該データ収集デバイスを薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルに取り付けるための取付けアセンブリと;
薬剤投与デバイスの内部構成要素の端面に設けられた識別子を検出するように構成されたセンサとを含み;
ここで、該センサは、薬剤投与デバイスの内部構成要素の端面に形成された幾何学的識別子を検出するように構成された超音波センサを含み、
内部構成要素は、薬剤送達の間、薬剤投与デバイスの長手方向軸の周りで回転するように構成され、該データ収集デバイスのプロセッサ装置は、超音波センサから受信される信号から、内部構成要素の回転量を判定するように構成され、
取付けアセンブリは、該超音波センサの超音波検出器が、超音波源によって該長手方向軸に実質的に平行に遠位方向に放出され、該内部構成要素の端面によって該長手方向軸に実質的に平行な方向に反射された音を受信することができるように、データ収集デバイスを薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルに解放可能に取り付けるように構成される、前記データ収集デバイス。
【請求項2】
プロセッサ装置は、薬剤投与デバイスからの薬剤送達が行われたことを検出するようにさらに構成される、請求項1に記載のデータ収集デバイス。
【請求項3】
プロセッサ装置は、検出された薬剤送達が行われたことに関するタイムスタンプを判定し、判定された薬剤投与量およびタイムスタンプを記憶するように構成される、請求項2に記載のデータ収集デバイス。
【請求項4】
システムであって:
薬剤投与デバイスであって:
用量設定ダイヤル;および
ある用量の薬剤がデバイスから送達されるとき、デバイスの長手方向軸の周りで回転する内部構成要素であって、端面に形成された識別子を含む内部構成要素
を含む薬剤投与デバイスと、
請求項1~3のいずれか1項に記載のデータ収集デバイスと
を含む前記システム。
【請求項5】
システムであって:
薬剤投与デバイスであって:
用量設定ダイヤル;および
ある用量の薬剤がデバイスから送達されるとき、デバイスの長手方向軸の周りで回転する内部構成要素であって、端面に形成された識別子を含む内部構成要素と
を含む薬剤投与デバイスと、
データ収集デバイスであって:
プロセッサ装置:
該データ収集デバイスを用量設定ダイヤルに取り付けるための取付けアセンブリ;
薬剤投与デバイスの内部構成要素の端面に設けられた識別子を検出するように構成されたセンサ
を含むデータ収集デバイスとを含み、
ここで、センサは、薬剤投与デバイスの内部構成要素の端面に形成された幾何学的識別子を検出するように構成された超音波センサを含み、
プロセッサ装置は、超音波センサから受信される信号から、内部構成要素の回転量を判定するように構成され、
取付けアセンブリは、該超音波センサの超音波検出器が、超音波源によって該長手方向軸に実質的に平行に遠位方向に放出され、該内部構成要素の端面によって該長手方向軸に実質的に平行な方向に反射された音を受信することができるように、データ収集デバイスを薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルに解放可能に取り付けるように構成される、前記システム。
【請求項6】
プロセッサ装置は、薬剤投与デバイスからの薬剤送達が行われたことを検出するようにさらに構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
プロセッサ装置は、検出された薬剤送達が行われたことに関するタイムスタンプを判定し、判定された薬剤投与量およびタイムスタンプを記憶するように構成される、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注射デバイスに取り付けられ、そこから薬剤投与量情報を収集するためのデータ収集デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な治療を必要とする様々な疾患が存在する。そのような注射は、注射デバイスを使用することによって行うことができ、注射デバイスは、医療従事者または患者自身のいずれかによって適用される。一例として、1型および2型糖尿病は、患者自身が、例えば1日1回または数回のインスリン用量を注射することによって治療することができる。例えば、充填済み使い捨てインスリンペンを注射デバイスとして使用することができる。代替として、再利用可能なペンを使用することもできる。再利用可能なペンは、空の薬剤カートリッジを新しいものと交換できるようにする。どちらのペンにも、各使用の前に交換される1組の一方向針が付属している。ここで、例えば、注射すべきインスリン用量は、投与量ノブを回し、インスリンペンの用量窓またはディスプレイから実際の用量を観察することによって、インスリンペンにおいて手動で選択することができる。次いで、針を適切な皮膚部分に挿入し、インスリンペンの投与量ノブまたは注射ボタンを押すことによって用量が注射される。インスリン注射を監視できるようにするため、例えばインスリンペンの誤った取扱いを防止するため、またはすでに適用されている用量を追跡するために、注射デバイスの状態および/または使用に関する情報、例えば注射されたインスリン用量に関する情報を測定することが望ましい。
【0003】
特許文献1は、注射デバイスに取り付けるためのデータ収集デバイスであって、薬剤の送達中に注射デバイスの可動構成要素のモーメントを検出するためのセンサ構成を含むデータ収集デバイスに関する。
【0004】
特許文献2は、液体ディスペンサと共に使用するための投与量監視デバイスであって、投与量が投薬された時を感知するための投薬センサと、投薬された投与量を判定するための量センサとを含む投与量監視デバイスに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第3,058,970号
【文献】国際公開第2012/046199号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、一態様では、データ収集デバイスは、データ収集デバイスを薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルに取り付けるための取付けアセンブリと、薬剤投与デバイスの内部構成要素の表面に設けられた識別子を検出するように構成されたセンサとを含み;ここで、センサは、薬剤投与デバイスの内部構成要素の表面に形成された幾何学的識別子を検出するように構成された超音波センサを含む。
【0007】
いくつかの例では、センサは、薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルに当接するデータ収集デバイスの側方に支持される。
【0008】
いくつかの例では、取付けアセンブリは、薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルがセンサと内部構成要素の表面との間に配設されるように、データ収集デバイスを薬剤投与デバ
イスの用量設定ダイヤルに解放可能に取り付けるように構成される。
【0009】
いくつかの例では、データ収集デバイスは、センサから信号を受信し、検出された識別子に基づいて、薬剤投与デバイスから送達された薬剤の同一性を判定するように構成されたプロセッサ装置を含む。
【0010】
いくつかの例では、プロセッサ装置は、薬剤投与デバイスからの薬剤送達が行われたことを検出するようにさらに構成される。
【0011】
いくつかの例では、プロセッサ装置は、検出された薬剤送達が行われたことに関するタイムスタンプを判定し、判定された薬剤投与量および上記タイムスタンプを記憶するように構成される。
【0012】
いくつかの例では、識別子は、薬剤送達中に回転する内部構成要素の表面に設けられ、プロセッサ装置は、光学センサから受信される信号から、内部構成要素の回転量を判定するように構成される。
【0013】
一般に、別の態様では、システムは、用量設定ダイヤルと、ある用量の薬剤がデバイスから送達されるとき、デバイスの長手方向軸の周りで回転する内部構成要素であって、表面に形成された識別子を含む内部構成要素とを含む薬剤投与デバイスを含み、データ収集デバイスは、上述したように構成される。
【0014】
一般に、別の態様では、システムは、用量設定ダイヤルと、ある用量の薬剤がデバイスから送達されるとき、デバイスの長手方向軸の周りで回転する内部構成要素とを含む薬剤投与デバイスを含む。内部構成要素は、その表面に形成された識別子を含む。システムはまた、データ収集デバイスであって、データ収集デバイスを用量設定ダイヤルに取り付けるための取付けアセンブリと、薬剤投与デバイスの内部構成要素の表面に設けられた識別子を検出するように構成されたセンサとを含むデータ収集デバイスを含み、センサは、薬剤投与デバイスの内部構成要素の表面に形成された幾何学的識別子を検出するように構成された超音波センサを含む。
【0015】
いくつかの例では、センサは、薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルに当接するデータ収集デバイスの側方に支持される。
【0016】
いくつかの例では、取付けアセンブリは、薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルがセンサと内部構成要素の表面との間に配設されるように、データ収集デバイスを薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルに解放可能に取り付けるように構成される。
【0017】
いくつかの例では、データ収集デバイスは、センサから信号を受信し、検出された識別子に基づいて、薬剤投与デバイスから送達された薬剤の同一性を判定するように構成されたプロセッサ装置を含む。
【0018】
いくつかの例では、プロセッサ装置は、薬剤投与デバイスからの薬剤送達が行われたことを検出するようにさらに構成される。
【0019】
いくつかの例では、プロセッサ装置は、検出された薬剤送達が行われたことに関するタイムスタンプを判定し、判定された薬剤投与量および上記タイムスタンプを記憶するように構成される。
【0020】
いくつかの例では、識別子は、薬剤送達中に回転する内部構成要素の表面に設けられ、
プロセッサ装置は、光学センサから受信される信号から、内部構成要素の回転量を判定するように構成される。
【0021】
本開示のこれらおよび他の態様は、以下に述べる実施形態を参照して明らかになり、解明されよう。
【0022】
以下、例示的実施形態を、添付図面を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】データ収集デバイスと共に使用するための注射デバイスの分解図である。
図2図1の注射デバイスに取り付けられたデータ収集デバイスを表す図である。
図3】第1のタイプの注射デバイスに取り付けられたときのデータ収集デバイスの断面図である。
図4】第1のタイプのデータ収集デバイスと共に使用するための注射デバイスの内部図である。
図5】データ収集デバイスの構成要素のさらなる代替的構成を例示する図である。
図6】データ収集デバイスのブロック図である。
図7】データ収集デバイスがパーソナルコンピュータなど別のデバイスに接続されたシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の開示では、インスリン注射デバイスを参照して実施形態を述べる。しかし、本開示は、そのような用途に限定されず、他の薬剤を吐出する注射デバイスと共に用いられてもよい。
【0025】
図1は、薬剤投与デバイスの分解図である。本例では、薬剤投与デバイスは、Sanofi製AllStar(商標登録)インスリン注射ペンなどの注射デバイス1であるが、本開示は、後述するような他のタイプおよび製造元の注射ペンとも適合性がある。
【0026】
図1の注射デバイス1は、ハウジング10を含む充填済み注射ペンであり、インスリン容器14を含み、インスリン容器14に針15を装着することができる。注射デバイス1は、使い捨てでも再利用可能でもよい。針は、内側ニードルキャップ16と、外側ニードルキャップ17または代替キャップ18のいずれかとによって保護される。注射デバイス1から吐出されるインスリン用量は、プログラムすることができ、または投与量ノブ12(本明細書では、用量選択要素12とも呼ぶ)を回して「ダイヤルイン」することができ、次いで、現在プログラムされている用量が、例えば、複数の単位で投与量窓13を通して表示される。例えば、注射デバイス1がヒトインスリンを投与するように構成されている場合、投与量は、いわゆる国際単位(IU)で表示され、1IUは、約45.5マイクログラム(1/22mg)の純粋な結晶性インスリンの生物学的等量である。アナログインスリンまたは他の薬剤を送達するための注射デバイスでは、他の単位が使用される。選択された用量は、図1での投与量窓13に示されているものとは異なる形態でも同様に好適に表示することができることに留意されたい。
【0027】
投与量窓13は、ハウジング10のアパーチャの形態でもよく、これにより、現在プログラムされている用量の視覚的表示を提供するために投与量ノブ12を回されたときに動くように構成された数字スリーブ70の限られた部分をユーザが見ることができる。代替として、数字スリーブ70は、用量ダイヤル設定段階中には静止したままであり、投与量窓13は、用量がダイヤルインされたときに動いて、ダイヤルされた用量に対応する数字を表す。どちらの場合でも、数字スリーブ70は、注射デバイス1から用量が投薬されているときに回転する構成要素である。
【0028】
本例では、投与量ノブ12は、投与量ノブ12を握ったときにユーザが感じるグリップ性を改善するのでプログラミングを容易にする1つまたはそれ以上の形成物71a、71b、71cを含む。別の例(図示せず)では、投与量ノブは、形成物を含まない。
【0029】
データ収集デバイスの取付けは、形成物を有する投与量ノブを必要としない。データ収集デバイスと注射デバイスとの間の接触面で密接な嵌合を有することおよび/またはゴム状材料を使用することは、一方では、2つのデバイスが互いに取り付けられたままであるという意味で安定した接続を容易にし、他方では、意図したときに2つのデバイスを分離することを可能にする取付けを提供する。ゴム状材料は、データ収集デバイスの回転が投与量ノブの回転を引き起こす、および逆も生じるような滑らかな表面を有する投与量ノブなど、滑らかな表面においても確実に適切な嵌合を行う。
【0030】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことにより機械的クリック音が生じ、ユーザに音響フィードバックを提供するように構成される。数字スリーブ70は、インスリン容器14のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分に刺され、次いで注射ボタン11が押されると、表示窓13に表示されたインスリン用量が注射デバイス1から吐出される。注射ボタン11が押された後、注射デバイス1の針15が皮膚部分に一定時間留まると、高い割合の用量が、実際に患者の体内に注射される。インスリン用量の吐出により機械的なクリック音が生じることもあるが、これは、投与量ノブ12を使用したときに生成される音とは異なる。いくつかの他の実施形態では、注射デバイス1は別個の注射ボタン11を有さず、ユーザが投与量ノブ12全体を押し下げ、投与量ノブ12は、薬剤が投薬されるようにハウジング10に対して長手方向に移動する。
【0031】
様々な実施形態において、インスリン用量の送達中、投与量ノブ12は、軸方向運動で、すなわち回転せずに、その初期位置に向けられ、一方、数字スリーブ70は回転されて、その初期位置に戻り、例えばゼロ単位の用量を表示する。
【0032】
注射デバイス1は、インスリン容器14が空になるか、または注射デバイス1の薬剤の有効期限(例えば、最初の使用から28日)に達するかのどちらかまで、いくつかの注射プロセスに使用することができる。
【0033】
さらに、注射デバイス1を初めて使用する前に、例えば2単位のインスリンを選択し、針15を上に向けた状態で注射デバイス1を保持しながら注射ボタン11を押すことによって、インスリン容器14および針15から空気を除去するためにいわゆる「プライムショット」を行う必要があり得る。提示を簡単にするために、以下では、吐出される量が、注射される用量に実質的に対応し、したがって、例えば、注射デバイス1から吐出される薬剤の量が、ユーザによって受け取られる用量に等しいと仮定する。それにもかかわらず、吐出される量と注射される用量との差(例えば損失)を考慮に入れる必要があり得る。
【0034】
図2は、例示的実施形態によるデータ収集デバイス20が取り付けられたときの注射デバイス1の一端の斜視図である。データ収集デバイス20は、ユーザ対話表面を形成する端部プレート22を有するハウジング21を含む。ハウジング21は、1つまたはそれ以上のLED(図示せず)などの光学ユーザフィードバックをサポートする。場合により採用されるいくつかの実施形態では、データ収集デバイス20は、ディスプレイ(図示せず)を含む。
【0035】
データ収集デバイス20は、いくつかの既存の注射デバイス1と適合性がある。データ収集デバイス20は、別個の用量送達ボタンまたは統合されたダイヤルを有する注射デバイスと適合性がある。データ収集デバイス20は、用量投与中に用量設定ダイヤルが回転
しないが、用量投与中に用量設定ダイヤルの近くの内部構成要素が回転する注射デバイスと適合性がある。データ収集デバイス20は、この内部構成要素の回転を検出および測定することを可能にする。
【0036】
図3は、第1のタイプの注射デバイス1に取り付けられたときの、いくつかの実施形態によるデータ収集デバイス20の断面図である。
【0037】
これらの実施形態では、注射デバイス1は、押下げ可能な用量送達ボタン11を有する用量設定ダイヤル12を含むタイプのものであり、投薬機構を作動させるために通常はユーザが用量送達ボタン11を押し下げる。用量設定ダイヤル12は、用量を設定するように回転されるように構成される。いくつかの注射デバイスでは、用量設定ダイヤル12の回転により、内部のばねに張力をかけるか、またはデバイスが、予め張力をかけられたばねを有する。用量設定ダイヤル12は、用量設定中は長手方向に動かない。用量設定ダイヤル12は、用量投薬中は静止している。また、いくつかの他の注射デバイスの場合、用量設定ダイヤル12の回転により、用量設定ダイヤルがハウジング10から近位方向に移動して出る。注射デバイス1から用量が投薬されると、用量設定ダイヤルは、ハウジング内に(遠位方向に)戻るが、回転はしない。いずれの場合も、数字スリーブ70などの内部構成要素70は、用量投薬中に回転する。データ収集デバイス20は、注射デバイス1に取り付けられたとき、この内部構成要素70の回転を検出および測定するように構成される。
【0038】
データ収集デバイス20は、ハウジング21と、ハウジング21の内部に配設された電子機器アセンブリ24と、ハウジング21の近位端から突出し、ハウジング21に対して長手方向に可動のボタン26とを含む。ハウジング21は、データ収集デバイス20を用量設定ダイヤル12に固定するように構成された取付けアセンブリ23を含む。データ収集デバイス20の取付けを容易にするために、用量設定ダイヤル12の形成物71a、71b、71cが使用される。
【0039】
この特定の例では、取付けアセンブリ23は、投与量のプログラム中に用量設定ダイヤル12が回転するときにデータ収集デバイス20も回転するように、用量設定ダイヤル12の形成物71a、71b、71cと協働する形成物(図示せず)を介して、用量設定ダイヤル12を覆って位置決めされたスリーブである。代替として、または追加として、発泡ゴムパッド44などの弾性パッドが、取付けアセンブリ23の形成物内に提供され、取付けアセンブリ23の形成物と用量設定ダイヤル12の形成物71a、71b、71cとの寸法の公差を許容し、かつ/または取付けアセンブリ23の回転が用量設定ダイヤル12の回転を引き起こす、および逆も生じるように、取付けアセンブリ23と用量設定ダイヤル12との間の係合を提供する。さらに代替として、取付けアセンブリ23は、用量設定ダイヤルの形成物71a、71b、および71cと協働する形成物を提供するのに十分な厚さの弾性パッドを含む。パッドは、用量設定ダイヤル12の表面に適合するのに十分に柔らかい。例えば、パッドは、用量設定ダイヤル12の表面の形成物に適合するのに十分に柔らかい。
【0040】
電子機器アセンブリ24は、ハウジングに対して長手方向に移動することができるように、ハウジング21内に保定される。電子機器アセンブリ24の遠位側は、データ収集デバイス20が注射デバイスに取り付けられたときに、用量送達ボタン11に当接するように構成される。電子機器アセンブリ24の近位側は、ボタン26に当接するか、またはボタン26と一体である。ボタン26および電子機器アセンブリ24は、単一のサブアセンブリを形成する。取付けアセンブリ23は、別のサブアセンブリを形成する。本実施形態では、2つのサブアセンブリは、互いに対して長手方向に移動することができるが、互いに対して回転することはできない。ボタン26は、ユーザのための指置き部(finge
r rest)と、注射デバイスの用量送達ボタン11に押圧力を伝達するための押圧面(push surface)とを提供する。この構成の結果、データ収集デバイス20のボタン26が押し下げられると、電子機器アセンブリ24を介して用量送達ボタン11に力が移送され、用量送達ボタン11が押し下げられることになる。
【0041】
電子機器アセンブリ24は、PCB28と、例えばコイン電池の形態でのバッテリ30とを含む。PCB28は、プロセッサ装置50、超音波源32、および超音波検出器34を含むいくつかの構成要素をサポートする。図3に示されるように、いくつかの実施形態では、超音波源32および超音波検出器34は、用量送達ボタン11に当接するPCBの側でサポートされる。用量送達ボタン11は、超音波に対して透明または実質的に透明である。したがって、超音波源32によって放出された音は、用量送達ボタン11を通過し、内部構成要素によって反射される。特に、数字スリーブ70は、ハウジング10の近位端まで延び、用量設定ダイヤル12に解放可能に固定された中空円筒体である。したがって、数字スリーブ70の環状端面は、用量送達ボタン11の下に位置し、放出される超音波の経路にある。数字スリーブ70は、環状端面に三次元の幾何学パターンを設けられている。例えば、隆起セクションと非隆起セクションとが交互に配置される。代替として、環状端面の周りに穴のパターンが間隔を空けて設けられる。
【0042】
用量投薬動作中、超音波源32は、比較的隆起したおよび隆起していない領域のパターンを含む数字スリーブ70の部分に対して超音波音を放出し;超音波検出器34は、そのパターンによって反射された音を受け取る。超音波検出器34の出力は、プロセッサ50に中継され、プロセッサ50は、数字スリーブ70の環状端面のパターンを判定する。
【0043】
図4Aは、数字スリーブ70の環状端面に形成されたパターンの第1の例を示す。数字スリーブ70の端面には、比較的隆起したおよび隆起していない領域のパターンが設けられている。一例では、隆起領域は、数字スリーブの端面からデバイスの軸方向に延びるように配置された形状または複数の歯である。複数の歯は、特定の形状または輪郭で形成される。歯の形状または輪郭により、薬剤を識別することができる。
【0044】
図4Bは、数字スリーブ70の環状端面に形成されたパターンの第2の例を示す。数字スリーブ70の端面には、環状端面の周りに間隔を空けて配置された穴のパターンが設けられる。穴は、特定の形状およびサイズで形成される。穴の形状および/またはサイズにより、薬剤を識別することができる。環状端面の縁部には、数字スリーブの端面からデバイスの半径方向に延びるように配置された、複数の歯が設けられる。複数の歯は、特定の形状または輪郭で形成される。歯の形状または輪郭により、薬剤を識別することができる。
【0045】
検出の精度を高めるために、環状端面に形成される半径方向および/または軸方向の歯および/または穴の任意の組合せを提供することができる。
【0046】
プロセッサ50は、用量投薬動作中の数字スリーブ70の回転量を計算する。回転量から、送達された用量を計算することができる。これは、データ収集デバイス20または別の計算デバイスによって行われる。一般に、用量設定ダイヤルの近くに配置され、注射デバイス1から用量が投薬されるときに回転する任意の構成要素を、その表面に形成された比較的反射性および非反射性の領域のパターンを有する内部構成要素として使用することができる。
【0047】
本開示のデータ収集デバイスは、薬剤投与デバイスの用量設定ダイヤルに直接取り付けられる。従来のデータ収集デバイスは、薬剤投与デバイスのメインハウジングに取り付けられている。これは、ユーザによる薬剤投与デバイスの使用を妨げる可能性がある。多く
のそのようなデバイスは、薬剤投与デバイスのハウジングにある用量表示窓の上に取り付けられる。これにより、用量表示窓が見づらくなり、ユーザは、ダイヤルされた用量の表示に関してデータ収集デバイスに全面的に依拠することになり、ユーザの薬剤投与デバイスへの信頼性を低減させることがある。そのようなデバイスは、薬剤投与デバイスによる薬剤投薬のタイプを用量表示窓のみから判定することはできない。いくつかの他のそのようなデバイスは、内部の可動構成要素を見るため、または内部の可動構成要素と接続するために、薬剤投与デバイスのハウジングに追加の切欠きまたはアパーチャを必要とする。薬剤投与デバイスのハウジングの一部を切り欠くと、送達機構内部に埃および汚れがより進入しやすくなる。これは、薬剤投与デバイスの無菌性に関する問題も生じ得る。
【0048】
本開示のデータ収集デバイスは、薬剤投与デバイスのメインハウジングに接触または固定することなく、薬剤投与デバイスから投薬される薬剤を遠隔で識別し、投薬される薬剤の量を監視することができる。データ収集デバイスは、ユーザが通常対話する薬剤投与デバイスの部分に取り付けられ、効果的にその部分の代わりとなるように構成される。ユーザは、用量をダイヤルしたいとき、データ収集デバイス20のハウジング21を掴んで回転させ、それにより用量設定ダイヤル12が回転される。ユーザは、薬剤投与デバイスの機械的な用量表示窓13を観察し続けることができる。ユーザは、用量を注射したいとき、データ収集デバイスの近位端に力を加える。これにより、用量設定ダイヤルに力が伝達される。薬剤投与デバイスが用量送達ボタン11を有する場合、データ収集デバイスのボタン26は、ハウジング21を押し下げ、したがって用量送達ボタン11を押し下げるように構成される。したがって、ユーザは、本開示によるデータ収集デバイスを追加したことによる薬剤投与デバイスの操作法の実質的な違いには気付かないであろう。
【0049】
データ収集デバイスは、複数のタイプの薬剤投与デバイスに関して、投与回数および投薬された薬剤の量を記録し、識別された各薬剤を個別に監視することができる。
【0050】
本開示のデータ収集デバイスは、超音波音を使用してパターンを識別する。これにより、薬剤投与デバイスの外部構成要素は、光に対して不透明であるが、超音波に対しては透明であるプラスチックまたは他の材料から作ることができる。数字スリーブ70に提供されたパターンを超音波検出器が検出するために、追加の切欠きやアパーチャなどは必要ない。
【0051】
代替として、データ収集デバイスは、照射源として光を使用する。薬剤投与デバイスの外部構成要素は、光に対して透明または部分的に透明のプラスチックまたは他の材料から形成される。薬剤投与デバイスの適切な領域のみが透明な材料から作られて、窓を効果的に形成し、または代替として開口もしくはアパーチャが形成される。
【0052】
この実施形態では、数字スリーブ70のパターンは、環状端面の比較的反射性および非反射性の領域のパターンとして形成される。例えば、反射性セクションと非反射性セクションとが交互に配置される。用量投薬動作中、光源は、比較的反射性および非反射性の領域のパターンを含む数字スリーブ70の一部を照射し;光学センサが、少なくとも比較的反射性の領域によって反射された光を受け取る。比較的反射性および非反射性の領域は、例えば黒と白など、異なる色である。
【0053】
代替として、データ収集デバイスは、照射源として赤外光を使用する。これにより、薬剤投与デバイスの外部構成要素は、光波長に対しては不透明であるが、赤外波長に対しては透明または部分的に透明のプラスチックまたは他の材料から作ることができる。追加の切欠きやアパーチャなどは必要なく、薬剤投与デバイスの適切な領域のみが赤外線透過性材料で作られて、赤外線「窓」を効果的に形成する。
【0054】
パターンの比較的反射性および非反射性の領域は、その構成要素の製造中に、数字スリーブ70または他の適切な内部構成要素に直接印刷、堆積、エッチング、または別の方法で作製される。次いで、薬剤投与デバイスは、同じ組立て方法およびツールを使用して、前と同じ様式で組み立てられる。したがって、本開示を実施するために、薬剤投与デバイスの設計および作成のごく最小限だけ変更すればよい。
【0055】
図5を参照すると、代替的実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、超音波源または光源および検出器/センサを有する代わりに、電子機器アセンブリは、パッシブセンサのみを含む。本実施形態では、電子機器アセンブリは、非接触磁気センサ80、例えばホールセンサを含む。本実施形態では、回転可能構成要素70は、回転可能構成要素70の円周に沿って間隔を空けて交互に配置された一連の磁性領域82および非磁性領域84を含む。磁性領域82は、磁性粒子または磁性インクを含む領域など、永久磁石である。磁性および非磁性領域82、84が用量投薬中に磁気センサ80を通り過ぎて回転するとき、磁気センサ80は、磁場の強度および場合により方向の変化のパターンを検出する。次いで、この情報を使用して、薬剤を識別し、回転可能構成要素70の回転の量(角度)を判定することができる。
【0056】
本実施形態では、磁気センサ80は、用量設定ダイヤル12と取付けアセンブリ23の内面との間の凹部内で支持される。例えば、磁気センサ80は、電子機器アセンブリ24の突起に支持される。取付けアセンブリ23は、この突起のための空間を確保するように凹部を有する。本実施形態では、一連の磁性領域82および非磁性領域84は、円周に沿って数字スリーブ70の外面に配設される。そのような配置により、より多くの空間が数字スリーブ70のこの表面で利用可能であるので、一連の磁性領域82および非磁性領域84をより大きくするか、またはより大きな間隔を空けて配置することを可能にする。
【0057】
用量設定ダイヤル12は、磁気領域82によって生成された磁場に対して透過性または部分透過性であり、磁気センサ80が回転可能構成要素70の回転を遠隔で、かつ用量設定ダイヤル12の切欠きまたはアパーチャの必要なしに検出することを可能にする。本実施形態は、磁気センサ80と一連の磁気領域82および非磁気領域84との間の距離を最小にし、用量送達ボタン11が押し下げられたときに変化しないようにする。これにより、用量検出の信頼性がさらに向上する。本実施形態はまた、単純な機械的設計および構造を有する。本実施形態の取付けアセンブリ23は、図3の直径と比較して広い直径を有し、磁気センサ80のための空間を確保する。これにより、ユーザが用量ダイヤル設定中に用量設定ダイヤル12を回転させるのに必要な力を低減し、したがって、器用でないユーザにもより使いやすくすることができる。
【0058】
図5は、用量設定ダイヤル12に対して半径方向に配置された磁気センサ80を示すが、代わりに、磁気センサ80は、図3に示されるのと同じ様式で、用量設定ダイヤル12の近位方向に位置する。
【0059】
代替実施形態では、電子機器アセンブリは、音響検出器、例えばマイクロフォンを含み、回転可能構成要素70は、回転可能構成要素70の円周に沿って間隔を空けて配置された1つまたはそれ以上の圧電変換器を含む。圧電変換器は、例えば特定の強度、トーン、またはピッチで音を放出するようにそれぞれ構成される。用量投薬中に圧電変換器がマイクロフォンを通り過ぎて回転するとき、マイクロフォンは、放出される音の強度、トーン、またはピッチの変化を検出することができる。次いで、この情報を使用して、薬剤を識別し、回転可能構成要素70の回転の量(角度)を判定することができる。代替として、各圧電変換器は、時間変化する音響信号を放出し、この音響信号をマイクロフォンによって検出し、プロセッサ装置50によって識別することができる。
【0060】
図6は、データ収集デバイス20のブロック図である。データ収集デバイス20は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたはそれ以上のプロセッサを含むプロセッサ装置50を含み、さらに、プロセッサ装置50によって実行するためのソフトウェアを記憶することができるプログラムメモリ52aおよびメインメモリ52bを含むメモリユニット52a、メモリユニット52bを含む。データ収集デバイスは、超音波源32および超音波検出器34を含む。プロセッサ装置50は、超音波源32の動作を制御し、超音波検出器34から信号を受信する。
【0061】
データ収集デバイス20は電源54を有し、電源54は、バッテリ、例えばコイン電池である。データ収集デバイス20は、用量が投薬される時点またはその直前にトリガされるように構成されたスイッチ53を場合により含む。この目的のために、スイッチ53は、データ収集デバイス20の端部プレート22またはボタン26に、圧力またはタッチ感知領域(pressure or touch sensitive area)、例えば圧電スイッチなど含む。スイッチ53は、電源54からプロセッサ装置50およびデータ収集デバイス20の他の構成要素への電力の印加を制御する。電子機器アセンブリ24と取付けアセンブリ23とが互いに対して長手方向に移動するように構成される実施形態では、スイッチ53は、機械的に実装される。例えば、電極は、取付けアセンブリ23の内面に配設され、電子機器アセンブリ24の対応する電極は、ボタン26が押し下げられたときに接触(したがって回路を完成)する。これにより、光源および光学センサを含む他の電子機器のウェイクアップをトリガする。
【0062】
タイマ55も含まれる。プロセッサ装置50は、スイッチ53を使用して判定される注射の完了からの経過した時間の長さを、タイマ55を使用して監視する。また場合により、プロセッサ装置50は、経過時間を所定の閾値と比較して、ユーザが、前回の注射後に尚早に次の注射を投与しようとしているかどうかを判断し、そうである場合、可聴信号などの警告を発生させ、かつ/または1つまたはそれ以上のLEDを点滅させるなど光信号を発生させる。データ収集デバイス20は、ユーザに光フィードバックを提供するためのいくつかのLEDまたは他の光源を含む。例えば、LEDは、異なる色、および/または例えば一定のもしくは変化する周期性での点滅などの照射パターンを使用する。一方、経過時間が非常に短い場合、それは、ユーザが薬剤量を「分割用量」として投与していることを示し、プロセッサ装置50は、投与量がそのように送達されたことを示す情報を記憶する。そのようなシナリオでは、経過時間は、数秒(例えば10秒)から数分(例えば5分)までの範囲内の所定の閾値と比較される。一例によれば、所定の閾値は2分に設定される。最後の注射から経過した時間が2分以下である場合、プロセッサ装置50は、投与量が「分割用量」として送達されたことを示す情報を記憶する。場合により生じる、プロセッサ装置50によって経過時間を監視する別の任意選択の目的は、経過時間が所定の閾値を超えた時点を判定することであり、これは、ユーザがさらなる注射を投与することを忘れている可能性があることを示唆し、そうである場合、警告を発生する。
【0063】
さらに、プロセッサは、日付および/または時間の情報に関するデータ、超音波検出器34からの情報に関するデータ、またはそれらの組合せを記憶するように構成される。特に、メモリは、日付および/または時間情報と、薬剤識別情報と、超音波検出器34の出力データから検索された内部構成要素回転情報との組合せを記憶するように構成される。このようにして、メモリは、数字スリーブ70(または他の内部構成要素)の回転に関する情報の履歴を提供するログを記憶することができる。データは、例えば、メインメモリ52bに記憶することができる。代替として、データは、メモリの別個のデータ記憶セクション(図示せず)に記憶される。
【0064】
薬剤が注射デバイス1から排出されるときに数字スリーブまたは他の内部構成要素が回
転するため、超音波検出器34によって測定される回転角度は、排出される薬剤の量に比例する。注射デバイス1に含まれる薬剤のゼロレベルまたは絶対量を判定する必要はない。このようにして、センサ構成は、絶対位置を検出するように構成されたセンサ構成に比べて複雑ではない。さらに、投与量窓13を通して表示される数字スリーブ70の数字または目盛りを監視する必要がないため、データ収集デバイス20は、投与量窓13を見づらくしないように設計される。
【0065】
出力57が提供され、これは、Wi-Fi、Bluetooth(商標登録)、またはNFCなどの無線ネットワークを介して別のデバイスと通信するための無線通信インターフェースでも、USB(Universal Series Bus)、mini-USB、またはmicro-USBコネクタを受け取るためのソケットなどの有線通信リンク用のインターフェースである。図7は、データ収集デバイス20がデータ転送用の無線接続61を介してパーソナルコンピュータ60などの別のデバイスに接続されているシステムの例を表す。代替としてまたは追加として、データ収集デバイス20は、有線接続を介して別のデバイスに接続される。例えば、プロセッサ装置50は、ユーザによって注射が投与されたとき、それらの注射に関して、判定された数字スリーブ70の回転角度およびタイムスタンプ(日付および/または時間を含む)を記憶し、その後、その記憶されたデータをコンピュータ60に転送する。コンピュータ60は、注射デバイスのタイプおよび薬剤のタイプに関してユーザまたは医療専門家によって入力されたさらなる情報に基づいて、投与された用量を計算するように構成される。コンピュータ60は、例えば、医療専門家による検討のために、治療ログを維持し、かつ/または治療履歴情報を遠隔地に転送する。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、データ収集デバイス20は、薬剤識別、数字スリーブ70の回転角度、および最大35回の注射イベントのタイムスタンプなどのデータを記憶するように構成される。1日1回の注射療法に従えば、これは約1ヶ月の治療歴を記憶するのに十分である。データ記憶は、先入れ先出し方式で編成され、最新の注射イベントが、データ収集デバイス20のメモリに常に確実に存在するようにする。コンピュータ60に転送されると、データ収集デバイス20にある注射イベント履歴が削除される。代替として、データは、データ収集デバイス20に残り、新しいデータが記憶されると、最も古いデータが自動的に削除される。このように、データ収集デバイスのログは、使用中に時間と共に蓄積され、常に最新の注射イベントを含む。代替として、他の構成は、70回(1日2回)、100回(3ヶ月)、またはユーザの療法要件および/または嗜好に応じて任意の他の適切な回数の注射イベントの記憶容量を含むことができる。
【0067】
別の実施形態では、出力57は、無線通信リンクを使用して情報を送信するように構成され、かつ/またはプロセッサ装置23は、そのような情報をコンピュータ60に定期的に送信するように構成される。
【0068】
詳細に上述した特定の実施形態は、本開示がどのように実施されるかの例としてのみ意図されている。データ収集デバイス20および/または注射デバイス1の構成における多くの変形形態が考えられる。
【0069】
特に、上記の実施形態は、インスリン注射器ペンからデータを収集することに関連して述べてきたが、本開示の実施形態は、他の薬剤または複数の異なる薬剤の注射の監視など他の目的に使用することができることに留意されたい。
【0070】
データ収集デバイス20は、例えば、データ収集デバイス20の端部プレート22を占有することがあるディスプレイ(図示せず)を場合により含む。注射が完了してから経過した時間の長さ、および前回の注射後にユーザが尚早に次の注射を投与しようとしている
場合の警告メッセージなど、様々な情報を表示することができる。
【0071】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0072】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸例えばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0073】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、例えば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(例えば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルであり得る。例えば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(例えば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1ヶ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(例えば、約20℃)または冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(例えば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジであり得るか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。例えば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(例えば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0074】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、例えば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症例えば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害例えば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(例えば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0075】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかであり得る。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、例えば、1つまたはそれ以上の有機置換基(例えば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0076】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0077】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0078】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、例えば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグ
ルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0079】
オリゴヌクレオチドの例は、例えば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))である。
【0080】
DPP4阻害剤の例は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0081】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0082】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖例えばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0083】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(例えばネズミ)抗体、または一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。例えば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、例えば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体であり得る。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0084】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(例えば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本開示に有用な抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体
フラグメント、例えば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、例えば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0085】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0086】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(例えば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0087】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0088】
本明細書で述べたAPI、定式化、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または除去)が、本開示の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行われ、本開示の完全な範囲および趣旨は、そのような修正およびそれらのあらゆる均等物を包含することを当業者は理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7