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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20241210BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20241210BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B49/10
B24B49/16
H01L21/304 631
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021061024
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157024
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑名 一孝
(72)【発明者】
【氏名】山下 真司
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051646(JP,A)
【文献】特開2012-210698(JP,A)
【文献】特表2008-503356(JP,A)
【文献】特開2007-276097(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235581(WO,A1)
【文献】米国特許第05827111(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102009387(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B5/00-7/30
B24B41/00-51/00
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面においてウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を通るチャック回転軸を軸として該チャックテーブルを回転させるチャック回転機構と、スピンドルの先端に配置した環状の研削砥石の下面によって該保持面に保持されたウェーハを研削する研削機構と、該スピンドルを回転させるスピンドル回転機構と、該研削砥石を該保持面に垂直な方向に接近および離間させる研削送り機構と、制御部とを備える研削装置であって、
該保持面が保持したウェーハに該研削砥石を押し付けた力を測定する荷重センサを備え、
該制御部は、該スピンドルの回転速度を記憶する第1記憶部を備え、研削加工中に該荷重センサで荷重を測定し、該測定した荷重が予め設定した荷重に一致していない場合は、研削加工中の荷重が該予め設定した荷重に一致するようにスピンドル回転速度を変更し、該荷重が予め設定した荷重になったときの該スピンドル回転速度を該第1記憶部に記憶し、
次に該保持面に保持したウェーハから、該第1記憶部に記憶された該スピンドル回転速度で該スピンドルを回転させ該ウェーハを研削する、研削装置。
【請求項2】
保持面においてウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を通るチャック回転軸を軸として該チャックテーブルを回転させるチャック回転機構と、スピンドルの先端に配置した環状の研削砥石の下面によって該保持面に保持されたウェーハを研削する研削機構と、該スピンドルを回転させるスピンドル回転機構と、該研削砥石を該保持面に垂直な方向に接近および離間させる研削送り機構と、制御部とを備える研削装置であって、
該保持面が保持したウェーハに該研削砥石を押し付けた力を測定する荷重センサと、
荷重とスピンドル回転速度との関係を示す荷重データテーブルと、を備え、
該制御部は、該荷重データテーブルからスピンドル回転速度を選択する第1選択部を備え、研削加工中に該荷重センサで荷重を測定し、該測定した荷重が予め設定した荷重に一致しない場合は該荷重データテーブルを参照し、該測定した荷重が予め設定した荷重になるスピンドル回転速度を該第1選択部が選択し、
次に該保持面に保持したウェーハから、該第1選択部に選択された該スピンドル回転速度で該スピンドルを回転させ該ウェーハを研削する、研削装置。
【請求項3】
該制御部は、該第1記憶部に記憶されたスピンドル回転速度または該第1選択部によって選択されたスピンドル回転速度を含む範囲内で該スピンドルの回転速度を変化させながら、該荷重センサが測定した荷重を予め設定した荷重に保つ、
請求項1または請求項2に記載の研削装置。
【請求項4】
保持面においてウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を通るチャック回転軸を軸として該チャックテーブルを回転させるチャック回転機構と、スピンドルの先端に配置した環状の研削砥石の下面によって該保持面に保持されたウェーハを研削する研削機構と、該スピンドルを回転させるスピンドル回転機構と、該研削砥石を該保持面に垂直な方向に接近および離間させる研削送り機構と、制御部とを備える研削装置であって、
該スピンドルの負荷電流値を測定する負荷電流値測定部を備え、
該制御部は、スピンドル回転速度を記憶する第2記憶部を備え、研削加工中に該負荷電流値測定部で負荷電流値を測定し、該測定した負荷電流値が予め設定した負荷電流値に一致しない場合は、研削加工中の負荷電流値が該予め設定した負荷電流値に一致するように該スピンドル回転速度を変更し、該負荷電流値が予め設定した負荷電流値になったときのスピンドル回転速度を該第2記憶部に記憶し、
次に該保持面に保持されたウェーハから、該第2記憶部に記憶された該スピンドル回転速度で該スピンドルを回転させ該ウェーハを研削する、研削装置。
【請求項5】
保持面においてウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を通るチャック回転軸を軸として該チャックテーブルを回転させるチャック回転機構と、スピンドルの先端に配置した環状の研削砥石の下面によって該保持面に保持されたウェーハを研削する研削機構と、該スピンドルを回転させるスピンドル回転機構と、該研削砥石を該保持面に垂直な方向に接近および離間させる研削送り機構と、制御部とを備える研削装置であって、
該スピンドルの負荷電流値を測定する負荷電流値測定部と、
負荷電流値とスピンドル回転速度との関係を示す負荷電流値データテーブルと、を備え、
該制御部は、スピンドル回転速度を選択する第2選択部を備え、研削加工中に該負荷電流値測定部で負荷電流値を測定し、該測定した負荷電流値が予め設定した負荷電流値に一致しない場合は該負荷電流値データテーブルを参照し、該測定した負荷電流値が予め設定した負荷電流値になるスピンドル回転速度を該第2選択部が選択し、
次に該保持面に保持されたウェーハから、該第2選択部に選択された該スピンドル回転速度で該スピンドルを回転させ該ウェーハを研削する、研削装置。
【請求項6】
該制御部は、該第2記憶部に記憶されたスピンドル回転速度または該第2選択部によって選択されたスピンドル回転速度を含む範囲内で該スピンドルの回転速度を変化させながら、該負荷電流値測定部が測定した負荷電流値を予め設定した負荷電流値に保つ、
請求項4または請求項5に記載の研削装置。
【請求項7】
該荷重データテーブルまたは該負荷電流値データテーブルを参照した際に該当するスピンドル回転速度がなかったときは、
該荷重データテーブルまたは該負荷電流値データテーブルの下限または上限のスピンドル回転速度を選択し、
該チャックテーブルの回転速度を変更する
請求項2または請求項5記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削砥石を用いてウェーハを研削する研削装置では、チャックテーブルの保持面にウェーハを保持させ、保持面の中心を軸にチャックテーブルを回転させ、スピンドルの先端に装着した環状の研削砥石を、その軌道が保持面が保持したウェーハの回転中心を通るようにウェーハの上方に位置づける。そして、回転する研削砥石を保持面に接近する方向に移動させる(研削送りする)ことにより、ウェーハの上面を研削する。スピンドル回転速度、チャックテーブル回転速度、研削送り速度などの研削条件は、研削装置に設定され、その研削条件の下でウェーハが研削される(例えば、特許文献1参照)。研削条件は、ウェーハ及び研削砥石の種類に応じて決められており、異なる研削装置を使用する場合でも、研削対象のウェーハ及び使用する研削砥石が同じであれば、同じ研削条件の下で研削加工が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-131368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、研削装置が異なると、機差によって、研削されたウェーハの断面形状(ウェーハの面内厚み)が僅かに異なる。つまり、研削条件を同一にしても、ウェーハの断面形状は同一にはならないという問題がある。
また、同じ研削装置であっても、研削砥石を交換すると、交換後の研削砥石が交換前と同一品種のものであっても、研削後のウェーハの断面形状が僅かに異なることがある。つまり、同一の研削装置であっても、研削砥石を交換すると、ウェーハの断面形状が同一にならないという問題がある。
したがって、研削装置の違いや研削砥石の違いがあったとしても、研削されたウェーハの断面形状のばらつきを低減するという解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、保持面においてウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を通るチャック回転軸を軸として該チャックテーブルを回転させるチャック回転機構と、スピンドルの先端に配置した環状の研削砥石の下面によって該保持面に保持されたウェーハを研削する研削機構と、該スピンドルを回転させるスピンドル回転機構と、該研削砥石を該保持面に垂直な方向に接近および離間させる研削送り機構と、制御部とを備える研削装置であって、該保持面が保持したウェーハに該研削砥石を押し付けた力を測定する荷重センサを備え、該制御部は、該スピンドルの回転速度を記憶する第1記憶部を備え、研削加工中に該荷重センサで荷重を測定し、該測定した荷重が予め設定した荷重に一致していない場合は、研削加工中の荷重が該予め設定した荷重に一致するようにスピンドル回転速度を変更し、該荷重が予め設定した荷重になったときの該スピンドル回転速度を該第1記憶部に記憶し、次に該保持面に保持したウェーハから、該第1記憶部に記憶された該スピンドル回転速度で該スピンドルを回転させ該ウェーハを研削する。
また、本発明は、保持面においてウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を通るチャック回転軸を軸として該チャックテーブルを回転させるチャック回転機構と、スピンドルの先端に配置した環状の研削砥石の下面によって該保持面に保持されたウェーハを研削する研削機構と、該スピンドルを回転させるスピンドル回転機構と、該研削砥石を該保持面に垂直な方向に接近および離間させる研削送り機構と、制御部とを備える研削装置であって、該保持面が保持したウェーハに該研削砥石を押し付けた力を測定する荷重センサと、荷重とスピンドル回転速度との関係を示す荷重データテーブルと、を備え、該制御部は、該荷重データテーブルからスピンドル回転速度を選択する第1選択部を備え、研削加工中に該荷重センサで荷重を測定し、該測定した荷重が予め設定した荷重に一致しない場合は該荷重データテーブルを参照し、該測定した荷重が予め設定した荷重になるスピンドル回転速度を該第1選択部が選択し、次に該保持面に保持したウェーハから、該第1選択部に選択された該スピンドル回転速度で該スピンドルを回転させ該ウェーハを研削する。
上記研削装置において、該制御部は、該第1記憶部に記憶されたスピンドル回転速度または該第1選択部によって選択されたスピンドル回転速度を含む範囲内で該スピンドルの回転速度を変化させながら、該荷重センサが測定した荷重を予め設定した荷重に保つようにしてもよい。
【0006】
本発明は、保持面においてウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を通るチャック回転軸を軸として該チャックテーブルを回転させるチャック回転機構と、スピンドルの先端に配置した環状の研削砥石の下面によって該保持面に保持されたウェーハを研削する研削機構と、該スピンドルを回転させるスピンドル回転機構と、該研削砥石を該保持面に垂直な方向に接近および離間させる研削送り機構と、制御部とを備える研削装置であって、該スピンドルの負荷電流値を測定する負荷電流値測定部を備え、該制御部は、スピンドル回転速度を記憶する第2記憶部を備え、研削加工中に該負荷電流値測定部で負荷電流値を測定し、該測定した負荷電流値が予め設定した負荷電流値に一致しない場合は、研削加工中の負荷電流値が該予め設定した負荷電流値に一致するように該スピンドル回転速度を変更し、該負荷電流値が予め設定した負荷電流値になったときのスピンドル回転速度を該第2記憶部に記憶し、次に該保持面に保持されたウェーハから、該第2記憶部に記憶された該スピンドル回転速度で該スピンドルを回転させ該ウェーハを研削する。
また、本発明は、保持面においてウェーハを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を通るチャック回転軸を軸として該チャックテーブルを回転させるチャック回転機構と、スピンドルの先端に配置した環状の研削砥石の下面によって該保持面に保持されたウェーハを研削する研削機構と、該スピンドルを回転させるスピンドル回転機構と、該研削砥石を該保持面に垂直な方向に接近および離間させる研削送り機構と、制御部とを備える研削装置であって、該スピンドルの負荷電流値を測定する負荷電流値測定部と、負荷電流値とスピンドル回転速度との関係を示す負荷電流値データテーブルと、を備え、該制御部は、スピンドル回転速度を選択する第2選択部を備え、研削加工中に該負荷電流値測定部で負荷電流値を測定し、該測定した負荷電流値が予め設定した負荷電流値に一致しない場合は該負荷電流値データテーブルを参照し、該測定した負荷電流値が予め設定した負荷電流値になるスピンドル回転速度を該第2選択部が選択し、次に該保持面に保持されたウェーハから、該第2選択部に選択された該スピンドル回転速度で該スピンドルを回転させ該ウェーハを研削する。
上記研削装置において、該制御部は、該第2記憶部に記憶されたスピンドル回転速度または該第2選択部によって選択されたスピンドル回転速度を含む範囲内で該スピンドルの回転速度を変化させながら、該負荷電流値測定部が測定した負荷電流値を予め設定した負荷電流値に保つようにしてもよい。
【0007】
さらに、該荷重データテーブルまたは該負荷電流値データテーブルを参照した際に該当するスピンドル回転速度がなかったときは、該荷重データテーブルまたは該負荷電流値データテーブルの下限または上限のスピンドル回転速度を選択し、該チャックテーブルの回転速度を変更するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、測定した荷重があらかじめ設定した荷重と一致しない場合に、両荷重が一致するようにスピンドル回転速度を変更する。したがって、研削装置の機差や研削砥石の違いがあっても、その差に対応してスピンドル回転速度が定まり、荷重が一定となるため、ウェーハの断面形状のばらつきを低減することができる。
また、荷重とスピンドル回転速度との関係を示す荷重データテーブルを備え、測定した荷重があらかじめ設定した荷重と一致しない場合に荷重データテーブルにおける荷重の測定値に対応するスピンドル回転速度を選択することにより、荷重値を設定した値と一致させる制御を迅速に行い、ウェーハの断面形状のばらつきを低減することができる。
さらに、荷重値が所望の設定値になるようにスピンドル回転速度が調整されてから、さらにそのスピンドル回転速度を含む範囲内でスピンドル回転速度を変化させながら、荷重の測定値をあらかじめ設定した値に保つことにより、荷重をより高精度に一定の値に保つことができるため、ウェーハの断面形状のばらつきをより低減することができる。
【0009】
本発明は、スピンドルの負荷電流値も荷重と同様にウェーハの断面形状を左右する要素であることにかんがみ、測定した負荷電流値があらかじめ設定した負荷電流値と一致しない場合に、両負荷電流値が一致するようにスピンドル回転速度を変更する。したがって、研削装置の機差や研削砥石の違いがあっても、その差に対応してスピンドル回転速度が定まり、負荷電流値が一定となるため、ウェーハの断面形状のばらつきを低減することができる。
また、負荷電流値とスピンドル回転速度との関係を示す負荷電流値データテーブルを備え、測定した負荷電流値があらかじめ設定した負荷電流値と一致しない場合に負荷電流値データテーブルにおける負荷電流の測定値に対応するスピンドル回転速度を選択することにより、負荷電流値を設定した値と一致させる制御を迅速に行い、ウェーハの断面形状のばらつきを低減することができる。
さらに、負荷電流値が所望の設定値になるようにスピンドル回転速度が調整されてから、さらにそのスピンドル回転速度を含む範囲内でスピンドル回転速度を変化させながら、負荷電流の測定値をあらかじめ設定した値に保つことにより、負荷電流値をより高精度に一定の値に保つことができるため、ウェーハの断面形状のばらつきをより低減することができる。
【0010】
荷重データテーブル又は負荷電流値データテーブルに該当するスピンドル回転速度がない場合にこれらのテーブルの上限又は下限のスピンドル回転速度を設定するとともに、チャックテーブルの回転速度を変更することにより、荷重の測定値又は負荷電流の測定値が荷重データテーブル又は負荷電流値データテーブルではカバーできていない範囲にある場合にも、それらの測定値に対応してウェーハの断面形状のばらつきを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】研削装置の第1実施形態を示す斜視図である。
図2】ウェーハ研削時における研削砥石の研削面の高さの推移を示すグラフである。
図3】同第1実施形態における第1制御例を示すフローチャートである。
図4】同第1実施形態における第2制御例を示すフローチャートである。
図5】同第1実施形態における同第2制御例で用いる荷重データテーブルの例を示す表である。
図6】同第1実施形態における第3制御例に特有の処理を示すフローチャートである。
図7】同第1実施形態における第4制御例に特有の処理を示すフローチャートである。
図8】同第1実施形態における同第4制御例で用いるチャック回転速度データテーブルの例を示す表である。
図9】研削装置の第2実施形態を示す斜視図である。
図10】同第2実施形態における第5制御例を示すフローチャートである。
図11】同第2実施形態における第6制御例を示すフローチャートである。
図12】同第2実施形態における同第6制御例で用いる負荷電流値データテーブルの例を示す表である。
図13】同第2実施形態における第7制御例に特有の処理を示すフローチャートである。
図14】同第2実施形態における第8制御例に特有の処理を示すフローチャートである。
図15】同第2実施形態における同第8制御例で用いるチャック回転速度データテーブルの例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1 第1実施形態
図1に示す研削装置1は、チャックテーブル2に保持されたウェーハを、研削機構3を用いて研削する装置であり、チャックテーブル2はチャックテーブル送り機構4によって駆動されてY軸方向に移動可能であり、研削機構3は研削送り機構5によって駆動されてZ軸方向に移動可能となっている。
【0013】
チャックテーブル2は、ポーラス部材により形成された吸引部20と、吸引部20を支持する枠体21とを含み、吸引部20の表面は、ウェーハを保持する保持面200を構成している。保持面200と枠体21の上面とは面一となっている。
【0014】
チャックテーブル2の下方には、保持面200の中心を通るチャック回転軸28を軸としてチャックテーブル2を回転させるチャック回転機構22を備えている。チャック回転機構22の上方にはテーブルベース23を備えており、テーブルベース23は、3つのチャック支持部24(図1では2つのみ示す)によって少なくとも3箇所が支持されている。各チャック支持部24には、保持面200が保持したウェーハに研削砥石341を押し付けた力を荷重として測定する荷重センサ25が配設されている。また、少なくとも2つのチャック支持部24には、チャックテーブル2の高さを調整して保持面200の傾きを調整する機能を有している。
【0015】
研削機構3は、Z軸方向の回転軸300を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転させるスピンドル回転機構31と、スピンドル30を回転可能に支持するスピンドルハウジング32と、スピンドル30の下端に連結されたマウント33と、マウント33に装着された研削ホイール34とを備えている。スピンドル回転機構31がスピンドル30を回転させると、研削ホイール34も回転する。研削ホイール34は、マウント33に固定される基台340と、基台340の下面に環状に固着された複数の研削砥石341とで構成されている。
【0016】
チャックテーブル送り機構4は、Y軸方向の回転軸400を有するボールネジ40と、ボールネジ40を回転させるモータ41と、ボールネジ40と平行に配設された一対のガイドレール42と、底部がガイドレール42に摺接しボールネジ40に螺合する図示しないナットを内部に有するスライド板43とを備えている。スライド板43の上方には荷重センサ25が配設されている。ボールネジ40が回転すると、スライド板43がガイドレール42にガイドされてY軸方向に移動し、スライド板43のY軸方向の移動にともない、チャックテーブル2も同方向に移動する構成となっている。枠体21は基台27によって回転可能に支持され、基台27のY軸方向の側部には蛇腹26が接続されており、チャックテーブル2は、蛇腹26の伸縮をともなってY軸方向に移動する。
【0017】
研削送り機構5は、Z軸方向の回転軸500を有するボールネジ50と、ボールネジ50を回転させるモータ51と、ボールネジ50と平行に配設された一対のガイドレール52と、側部がガイドレール52に摺接しボールネジ50に螺合する図示しないナットを内部に有する昇降板53と、昇降板53に連結されスピンドルハウジング32を支持するホルダ54と、ガイドレール52に沿って配設されたスケール55と、昇降板53のZ軸方向の位置をスケール55の読み取り値として検出する読取部56とを備えている。ボールネジ50が回転すると、昇降板53がガイドレール52にガイドされて保持面200に垂直な方向に移動し、これにともない研削機構3も同方向に移動し、研削砥石341が保持面200に接近又は離間する構成となっている。研削機構3のZ軸方向の位置は、読取部56によって検出される。なお、研削機構3のZ軸方向の位置は、モータ51のエンコーダの読み取り値によって認識するようにしてもよい。
【0018】
チャックテーブル2のY軸方向の移動経路の側方には、保持面200に保持されたウェーハの厚さを測定する厚さ測定部6が配設されている。厚さ測定部6は、保持面200の高さを測定する第1ゲージ61と、保持面200に保持されたウェーハの上面の高さを測定する第2ゲージ62とを備え、第1ゲージ61と第2ゲージ62との高さの差に基づきウェーハの高さを測定する。
【0019】
制御部7は、CPU及び記憶素子を備えている。チャックテーブル2、研削機構3、チャックテーブル送り機構4及び研削送り機構5は、制御部7による制御の下で動作する。
【0020】
制御部7は、研削時の所定の荷重値があらかじめ記憶される設定荷重値記憶部71と、研削中に荷重センサ25によって測定される実際の荷重値が設定荷重値記憶部71に記憶された荷重値となるようにスピンドル30の回転速度を制御するスピンドル回転速度制御部72と、実際の荷重が設定荷重値記憶部71に記憶させた荷重値になったときのスピンドル回転速度を記憶する第1記憶部73とを備えている。
【0021】
研削装置1は、荷重とスピンドル回転速度との関係を示す荷重データテーブルを記憶する荷重データテーブル記憶部91を有しており、制御部7は、荷重データテーブル記憶部91の内容を参照し荷重センサ25の測定値に対応するスピンドル回転速度を選択する第1選択部74を備えている。
【0022】
また、研削装置1は、チャックテーブル2の回転速度と荷重との関係を示すチャック回転速度データテーブルを記憶するチャック回転速度データテーブル記憶部92を有しており、制御部7は、荷重センサ25の測定値に対応して回転速度チャックテーブル2の回転速度を変更するチャックテーブル回転速度制御部75を備えている。
【0023】
研削対象のウェーハ10の下面には保護テープ11が貼着され、チャックテーブル2の保持面200において保護テープ11側が保持される。そして、チャックテーブル2を+Y方向に移動させてウェーハ10を研削機構3の下方に位置させ、チャックテーブル2を回転させ、研削機構3のスピンドル回転機構31がスピンドル30を回転させるとともに研削送り機構5が研削機構3を下降させる。そうすると、スピンドル30の先端部に配置された研削砥石341の下面がウェーハ10の上面に接触して研削が開始される。ウェーハ10が所定の厚さに仕上がると、研削機構3を上昇させて研削を終了する。
なお、ウェーハ10の下面に保護テープ11を貼着しなくてもよい。
【0024】
研削開始前から研削終了後までの研削機構3の昇降動作は、図2に示すT1~T7の7段階に分けられる。T1は、研削砥石341をウェーハ10の上面の近くにより速く移動させるために研削機構3を退避位置から高速にて降下させる段階、T2は、研削砥石341をウェーハ10の上面に接触させる直前のエアカットと呼ばれる段階である。T3~T5は、いずれも、研削砥石341がウェーハ10の上面に接触して研削が行われる段階であり、T3は、比較的高速な第1研削送り速度の下で研削を行う段階、T4は、第1研削送り速度よりも低速な第2研削送り速度の下で研削を行う段階、T5は、研削機構3の降下を止めて研削を行う最終段階でありスパークアウトと呼ばれる段階である。T6は、研削機構3をゆっくりと上昇させて研削を終了させる段階、T7は、研削機構3を高速に上昇させて退避位置に戻す段階である。
【0025】
第1研削送り速度での研削加工T3の最後の仕上げ段階T30では、例えば以下の第1~第4制御例に示すいずれかの制御が行われる。
【0026】
(1-1)第1制御例
図3に示すフローチャートに沿って説明する。
最初に、仕上げ段階T30の研削中における理想的な荷重値を制御部7の設定荷重値記憶部71に記憶させておく(ステップ101)。この荷重値は、使用する研削砥石341の種類、研削対象のウェーハ10の材質、及びこれらに応じて定まる研削送り速度との関係で、経験上、仕上げ研削に最適と思われる荷重の値である。
【0027】
仕上げ段階T30では、研削送り機構5による研削機構3の降下を停止させた状態で、スピンドル回転機構31がスピンドル30を回転させた状態を維持して研削を行いつつ(ステップ102)、制御部7が荷重センサ25における荷重の測定値を読み取り(ステップ103)、その測定値が設定荷重値記憶部71に設定した所定の荷重値と一致するか否かを判断する(ステップ104)。そして、両荷重値が一致していれば、設定荷重値記憶部71に記憶した荷重値を第1記憶部73に記憶させる(ステップ105)。一方、一致しない場合は、スピンドル回転速度制御部72が、スピンドル30の回転速度を変更していく(ステップ106)。具体的には、荷重センサ25の測定値が設定荷重値記憶部71に記憶した所定の荷重値よりも大きい場合はスピンドル30の回転速度を遅くし、荷重センサの測定値が設定荷重値記憶部71に記憶した所定の荷重値よりも小さい場合はスピンドル30の回転速度を速くする。そして、スピンドル回転速度を変化させながら、研削を行うとともに(ステップ102)荷重センサ25の荷重値を測定し(ステップ103)、両荷重値が一致すると、そのときのスピンドル回転速度を第1記憶部73に記憶させる(ステップ105)。
【0028】
こうしてスピンドル回転速度が第1記憶部73に記憶されると、ウェーハ10を保持面200から取り外して別のウェーハ10を保持面200において保持する。そして、図2に示したT1~T5と同様の制御によって研削機構3を降下させ、仕上げ段階T30では、スピンドル回転速度制御部72は、スピンドル30の回転速度を第1記憶部73に記憶した速度に維持しつつ、ウェーハ10を研削する(ステップ107)。そして、厚さ測定部6がウェーハ10と保護テープ11との厚さの合計値が所定の厚さになったか否かを監視し(ステップ108)、その合計値が所定の厚さとなった時点で、研削送り機構5が研削機構3を上昇させ、研削を終了する。
また、第2研削送り速度での研削加工T4の最後にも同様に仕上げ段階T40を設けて荷重を測定して、所定の荷重になるようにスピンドル回転速度を制御してもよい。
なお、スパークアウトT5を実施中に仕上げ段階T50を設けて荷重を測定して、所定の荷重になるようにスピンドル回転速度を制御してもよい。
【0029】
従来は、経験によって把握されている研削送り速度と荷重値との対応関係を利用し、研削送り速度を制御することのみによって荷重値を所定の値とするようにしていたため、装置の機差や研削砥石のロット等の違いによって荷重値が所定の値にならないことがあった。しかしながら、本第1制御例によれば、最初に経験上把握されている理想の研削送り速度に対応する荷重値を設定し、荷重センサ25による測定値がその設定した荷重値になるようにスピンドル回転速度を変更し、荷重センサ25による測定値と設定した荷重値とが一致した時のスピンドル回転速度を記憶し、その記憶したスピンドル回転速度でスピンドル30を回転させて研削を行うため、機差や研削砥石のロットごとの差があっても、その差に対応してスピンドル回転速度が定まる。したがって、ウェーハの断面形状のばらつきを低減することができる。
【0030】
(1-2)第2制御例
図4に示すフローチャートに沿って説明する。
仕上げ段階T30の研削中における理想的な荷重値を制御部7の設定荷重値記憶部71に記憶させておく(ステップ201)。この荷重値は、使用する研削砥石341の種類、研削対象のウェーハ10の材質、及びこれらに応じて定まる研削送り速度との関係で、経験上、仕上げ研削に最適と思われる荷重の値である。
【0031】
仕上げ段階T30では、研削送り機構5による研削機構3の降下を停止させた状態で、スピンドル回転機構31がスピンドル30を回転させた状態を維持して研削を行いつつ(ステップ202)、制御部7が荷重センサ25における荷重の測定値を読み取り(ステップ203)、その測定値が設定荷重値記憶部71に設定した所定の荷重値と一致するか否かを判断する(ステップ204)。そして、両荷重値が一致していれば、次のウェーハ10の研削を開始する(ステップ205)。
一方、両荷重値が一致しない場合は、荷重データテーブル記憶部91の記憶内容を参照する。荷重データテーブル記憶部91には、例えば図5に示す荷重データテーブル910が記憶されている。この荷重データテーブル910は、特定の研削送り速度の下で特定の研削砥石を用いた研削実験によって得られたもので、左側の列が荷重センサ25による測定値、右側の列がその測定値から荷重値を35Nにするためのスピンドル回転速度を示している。例えば荷重センサ25による測定値が30Nである場合において、測定を35Nにするためには、スピンドル回転速度を1200rpmにすればよい。
第1選択部74は、荷重センサ25の測定値を読み出し、荷重データテーブル910において、その測定値に対応するスピンドル回転速度の値を選択する。例えば、設定荷重値記憶部71に記憶した荷重が35Nであり、荷重センサ25の測定値が32Nである場合は、スピンドル回転速度として1400rpmを選択する(ステップ206)。そして、ウェーハ10を保持面200から取り外して別のウェーハ10を保持面200において保持する。そして、図2に示したT1~T5と同様の制御によって研削機構3を降下させ、仕上げ段階T30では、スピンドル回転速度制御部72は、1400rpmのスピンドル回転速度の下で研削を行う(ステップ205)。なお、荷重データテーブル910は、目標とする荷重値ごと、研削送り速度ごとに用意され、荷重データテーブル記憶部91に記憶されている。
【0032】
仕上げ段階T30では、厚さ測定部6がウェーハ10と保護テープ11との厚さの合計値が所定の厚さになったか否かを監視しステップ207)、その合計値が所定の厚さとなった時点で、研削送り機構5が研削機構3を上昇させ、研削を終了する。
【0033】
本第2制御例によれば、最初に、経験上把握されている理想の荷重値を設定した上で、荷重センサ25による測定値がその設定した荷重値と一致しない場合は、荷重データテーブルを参照してその荷重の測定値から設定された荷重値に変化させるためのスピンドル回転速度を求め、その求めたスピンドル回転速度の下で研削を行うため、機差や研削砥石のロットごとの差があっても、その差に対応して荷重値を迅速に所定の値とすることができる。したがって、ウェーハの断面形状のばらつきを低減することができる。
なお、本第2制御例を仕上げ段階T40及びT50に適用してもよい。
【0034】
(1-3)第3制御例
本第3制御例は、図3に示した上記第1制御例におけるステップ107とステップ108との間、又は、図4に示した上記第2制御例におけるステップ205とステップ207との間に、図6のフローチャートに示す処理を行う例である。
【0035】
図6に示すように、第1制御例のステップ107の後又は第2制御例におけるステップ205の後においても、すなわち、荷重の測定値に応じて一度スピンドル回転速度を調整した後の仕上げ段階T30の研削においても、制御部7が荷重センサ25の測定値を読み出し、測定値が設定荷重値記憶部71に記憶されている荷重値と一致しているか否かを判断する(ステップ301)。そして、両荷重値が一致していればそのまま処理を終了し、一致していなければ、一致するまで、第1選択部74によって選択されたスピンドル回転速度を含む範囲内でスピンドル回転速度を変化させる(ステップ302)。このような処理を、仕上げ段階T30研削終了まで行う。
これにより、荷重値をより精度良く制御することができるため、ウェーハ10の断面形状のばらつきをより低減することができる。
なお、本第3制御例を仕上げ段階T40及びT50に適用してもよい。
【0036】
(1-4)第4制御例
本第4制御例は、図4に示した上記第2制御例のステップ206において図5に示した荷重データテーブル910を参照した際に、該当するスピンドル回転速度がなかった場合の処理を行う例である。すなわち、第4制御例は、第2制御例のステップ206の変更例であり、図7のフローチャートに示す処理を行う例である。
【0037】
制御部7が図5に示した荷重データテーブル910を参照し(ステップ401)、荷重の測定値に対応するスピンドル回転速度があるか否かを判断する(ステップ402)。対応するスピンドル回転速度がある場合は、第1選択部74がそのスピンドル回転速度を選択し、次のウェーハ10について同一条件下で仕上げ段階T30の研削を行う(図4のステップ205)。一方、対応するスピンドル回転速度がなかった場合、第1選択部74は、荷重データテーブル910の上限又は下限のスピンドル回転速度を選択する。例えば、設定荷重値記憶部71に設定した荷重値が35Nであるのに対し、荷重センサ25による測定値が28Nであった場合、第1選択部74は、30Nに対応するスピンドル回転速度である下限の1200rpnを選択する(ステップ403)。
【0038】
次に、制御部7は、図8に示すチャック回転速度データテーブル920を参照する(ステップ404)。このチャック回転速度データテーブル920は、特定の研削送り速度の下で特定の研削砥石を用いた研削実験によって得られたもので、チャックテーブル2の回転速度の変化量に対する荷重の変化量を示したもので、制御部7は、荷重センサ25による測定値と第1選択部74が選択したスピンドル回転速度に対応する荷重値との差を荷重変化量として求め、その荷重変化量に対応するチャックテーブル回転速度変化量を求める。上記例では、荷重変化量は、30N-28N=2Nであるため、チャック回転速度データテーブル920において荷重変化量2Nに対応するチャックテーブル回転速度変化量として20rpmが選択される。当初のチャックテーブル2の回転速度が200rpmであったとすると、チャックテーブル回転速度として200rpm+20rpm=220rpmが選択される。制御部7のチャックテーブル回転速度制御部75は、チャックテーブル2の回転速度を220rpmに変更する(ステップ405)。次に、その条件下で仕上げ段階T30の研削を続行する(図4のステップ205)。
【0039】
第4制御例では、荷重センサ25における測定値が荷重データテーブル910の範囲外であるために荷重の測定値に対応するスピンドル回転速度を設定できない場合においても、チャックテーブル2の回転速度を変更することによって、設定荷重値記憶部71に記憶させた荷重値の条件下で研削を行うことが可能となるため、荷重の測定値が設定荷重値記憶部71に記憶させた荷重値と大きく異なる場合においても、ウェーハ10の断面形状のばらつきを低減することが可能となる。
なお、研削砥石によっては、スピンドルの回転速度またはチャックテーブルの回転速度を遅くした方が荷重を大きくすることができるものがあり、予め、研削砥石毎にスピンドルの回転速度の変化に対する荷重の変化、または、チャックテーブルの回転速度の変化に対する荷重の変化を装置に設定しておくとよい。
なお、本第4制御例を仕上げ段階T40及びT50に適用してもよい。
【0040】
2 第2実施形態
図9に示す研削装置100は、図1に示した研削装置1と同様に、チャックテーブル2に保持されたウェーハを、研削機構3を用いて研削する装置であり、チャックテーブル2はチャックテーブル送り機構4によって駆動されてY軸方向に移動可能であり、研削機構3は研削送り機構5によって駆動されてZ軸方向に移動可能となっている。以下では、研削装置1と異なる部位について説明し、同様に構成される部位については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
研削装置100は、チャックテーブル2、研削機構3、チャックテーブル送り機構4及び研削送り機構5を制御する制御部8を有している。制御部8は、CPU及び記憶素子を備えている。
【0042】
制御部8は、研削時の所定のスピンドル負荷電流値があらかじめ記憶される設定負荷電流値記憶部81と、研削中に負荷電流値測定部95によって測定される実際の負荷電流値が設定負荷電流値記憶部81に記憶された負荷電流値となるようにスピンドル30の回転速度を制御するスピンドル回転速度制御部82と、実際の負荷電流値が設定負荷電流値記憶部81に記憶させた負荷電流値になったときのスピンドル回転速度を記憶する第2記憶部83とを備えている。
【0043】
研削装置1は、負荷電流値とスピンドル回転速度との関係を示す負荷電流値データテーブルを記憶する負荷電流値データテーブル記憶部93を有しており、制御部8は、負荷電流値データテーブル記憶部93の内容を参照し負荷電流値測定部95の測定値に対応するスピンドル回転速度を選択する第2選択部84を備えている。
【0044】
また、研削装置1は、チャックテーブル2の回転速度と荷重との関係を示すチャック回転速度データテーブルを記憶するチャック回転速度データテーブル記憶部94を有しており、制御部8は、負荷電流値測定部95の測定値に対応してチャックテーブル2の回転速度を変更するチャックテーブル回転速度制御部85を備えている。
【0045】
(2-1)第5制御例
図10に示すフローチャートに沿って説明する。
最初に、仕上げ段階T30の研削中における理想的な荷重値を制御部8の設定負荷電流値記憶部81に記憶させる(ステップ501)。この負荷電流値は、使用する研削砥石341の種類、研削対象のウェーハ10の材質、及びこれらに応じて定まる研削送り速度との関係で、経験上、最適と思われる負荷電流値の値である。
【0046】
仕上げ段階T30では、研削送り機構5による研削機構3の降下を停止させた状態で、スピンドル回転機構31がスピンドル30を回転させた状態を維持して研削を行いつつ(ステップ502)、制御部8が負荷電流値測定部95における測定値を読み取り(ステップ503)、設定負荷電流値記憶部81に設定した所定の負荷電流値に一致するか否かを判断する(ステップ504)。そして、両負荷電流値が一致していれば、設定負荷電流値記憶部81に記憶した負荷電流値を第2記憶部83に記憶させる(ステップ505)。一方、一致しない場合は、スピンドル回転速度制御部72が、スピンドル30の回転速度を変更していく(ステップ506)。具体的には、負荷電流値測定部95の測定値が設定負荷電流値記憶部81に記憶した所定の負荷電流値よりも大きい場合はスピンドル30の回転速度を遅くし、負荷電流値測定部95の測定値が設定負荷電流値記憶部81に記憶した所定の荷重値よりも小さい場合はスピンドル30の回転速度を速くする。そして、スピンドル回転速度を変化させながら、研削を行うとともに(ステップ502)、負荷電流値測定部95において負荷電流値を測定し(ステップ503)、両荷重値が一致すると、そのときのスピンドル回転速度を第2記憶部83に記憶させる(ステップ505)。
【0047】
こうしてスピンドル回転速度が第2記憶部83に記憶されると、ウェーハ10を保持面200から取り外して別のウェーハ10を保持面200において保持する。そして、図2に示したT1~T5と同様の制御によって研削機構3を降下させ、仕上げ段階T30では、スピンドル回転速度制御部82は、スピンドル30の回転速度をこの第2記憶部83に記憶した速度に維持しつつ、ウェーハ10を研削する(ステップ507)。
【0048】
そして、厚さ測定部6がウェーハ10と保護テープ11との厚さの合計値が所定の厚さになったか否かを監視し(ステップ508)、その合計値が所定の厚さとなった時点で、研削送り機構5が研削機構3を上昇させ、研削を終了する。
【0049】
本第5制御例によれば、最初に経験上把握されている理想の負荷電流値を設定した上で、負荷電流値測定部95による測定値がその設定した負荷電流値になった時のスピンドル回転速度を記憶し、その記憶したスピンドル回転速度でスピンドル30を回転させて研削を行うため、機差や研削砥石のロットごとの差があっても、その差に対応してスピンドル回転速度を調整することができる。したがって、ウェーハの断面形状のばらつきを低減することができる。
なお、本第5制御例を仕上げ段階T40及びT50に適用してもよい。
【0050】
(2-2)第6制御例
図11に示すフローチャートに沿って説明する。
最初に、仕上げ段階T30の研削中における理想的な負荷電流値を制御部8の設定負荷電流値記憶部81に記憶させる(ステップ601)。この負荷電流値は、使用する研削砥石341の種類、研削対象のウェーハ10の材質、及びこれらに応じて定まる研削送り速度との関係で、経験上、最適と思われる負荷電流の値である。
【0051】
仕上げ段階T30では、研削送り機構5による研削機構3の降下を停止させた状態で、スピンドル回転機構31がスピンドル30を回転させた状態を維持して研削を行いつつ(ステップ602)、制御部8が負荷電流値測定部95における測定値を読み取り(ステップ603)、設定負荷電流値記憶部81に設定した所定の負荷電流値に一致するか否かを判断する(ステップ604)。そして、両負荷電流値が一致していれば、次のウェーハ10の研削を開始する(ステップ605)。
一方、両負荷電流値が一致しない場合は、負荷電流値データテーブル記憶部93の記憶内容を参照する。負荷電流値データテーブル記憶部93には、例えば図12に示す負荷電流値データテーブル930が記憶されている。この負荷電流値データテーブル930は、特定の研削送り速度の下で特定の研削砥石を用いた研削実験によって得られたもので、左側の列が負荷電流値測定部95による測定値、右側の列が、その測定値から負荷電流値が7Aになるスピンドル回転速度を示している。
第2選択部84は、負荷電流値測定部95の測定値を読み出し、負荷電流値データテーブル930において、その測定値に対応するスピンドル回転速度の値を選択する。例えば、負荷電流値測定部95による測定値が6.7Aである場合において、測定値を7Aにするためには、スピンドル回転速度を1400rpmにすればよい。設定負荷電流値記憶部81に記憶した荷重が7[A]であり、負荷電流値測定部95の測定値が6.7Aである場合は、スピンドル回転速度として1400rpmを選択する(ステップ606)。そして、スピンドル回転速度制御部72は、そのスピンドル回転速度の下で研削を続行する(ステップ605)。
【0052】
ウェーハ10の仕上げ段階T30の研削中は、厚さ測定部6がウェーハ10と保護テープ11との厚さの合計値が所定の厚さになったか否かを監視し(ステップ607)、その合計値が所定の厚さとなった時点で、研削送り機構5が研削機構3を上昇させ、研削を終了する。
【0053】
本第6制御例によれば、最初に、経験上把握されている理想の負荷電流値を設定した上で、負荷電流値測定部95による測定値がその設定した負荷電流値と一致しない場合は、負荷電流値データテーブル930を参照してその負荷電流の測定値から設定された負荷電流値に変化させるためのスピンドル回転速度を求め、その求めたスピンドル回転速度の下で研削を行うため、機差や研削砥石のロットごとの差があっても、その差に対応してスピンドル回転速度を調整することができる。したがって、ウェーハの断面形状を一定にすることができる。
なお、本第6制御例を仕上げ段階T40及びT50に適用してもよい。
【0054】
(2-3)第7制御例
本第7制御例は、図10に示した上記第5制御例におけるステップ507とステップ508との間、又は図11に示した第6制御例におけるステップ605とステップ607との間に、図13に示すフローチャートに示す処理を行う例である。
【0055】
図13に示すように、第5制御例のステップ507の後又は第6制御例におけるステップ605の後においても、すなわち、負荷電流の測定値に応じて一度スピンドル回転速度を調整して研削している間においても、制御部8が負荷電流値測定部95の測定値を読み出し、測定値が設定負荷電流値記憶部81に記憶されている負荷電流値と一致しているか否かを判断する(ステップ701)。そして、一致していればそのまま処理を終了し、一致していなければ、第2選択部84によって選択された負荷電流値を含む範囲内で負荷電流値が一致するまでスピンドル回転速度を変化させる(ステップ702)。このような処理を、仕上げ段階T30の研削終了まで行う。
これにより、スピンドル回転速度をより精度良く制御することができるため、ウェーハ10の断面形状のばらつきをより軽減することができる。
なお、本第7制御例を仕上げ段階T40及びT50に適用してもよい。
【0056】
(2-4)第8制御例
本第8制御例は、図11に示した上記第6制御例のステップ606において図12に示した負荷電流値データテーブル930を参照した際に、該当するスピンドル回転速度がなかった場合の処理を行う例である。すなわち、第8制御例は、第6制御例のステップ606の変更例であり、図14のフローチャートに示す処理を行う例である。
【0057】
制御部8が図12に示した負荷電流値データテーブル930を参照し(ステップ801)、負荷電流の測定値に対応するスピンドル回転速度があるか否かを判断する(ステップ802)。対応するスピンドル回転速度がある場合は、第2選択部84がそのスピンドル回転速度を選択し、次のウェーハ10について同一条件下で仕上げ段階T30の研削を行う(図11のステップ605)。
一方、対応するスピンドル回転速度がなかった場合、第2選択部84は、負荷電流値データテーブル930の上限又は下限のスピンドル回転速度を選択する。例えば、設定負荷電流値記憶部81に設定した負荷電流値が7Aであるのに対し、負荷電流値測定部95による8Aであった場合、第2選択部84は、7.5Aに対応するスピンドル回転速度である上限の2200rpmを選択する(ステップ803)。
【0058】
次に、制御部7は、図15に示すチャック回転速度データテーブル940を参照する(ステップ804)。このチャック回転速度データテーブル940は、特定の研削送り速度の下で特定の研削砥石を用いた研削実験によって得られたもので、チャックテーブル2の回転速度の変化量に対する負荷電流値の変化量を示している。制御部8は、負荷電流値測定部95による測定値と第2選択部84が選択したスピンドル回転速度に対応する負荷電流値との差を負荷電流値変化量として求め、その負荷電流値変化量に対応するチャックテーブル回転速度変化量を求める。上記例では、負荷電流値変化量は、7A-7.5A=-0.5Aであるため、チャック回転速度データテーブル940において負荷電流値変化量-0.5Aに対応するチャックテーブル回転速度変化量として-5が選択される。そして、当初のチャックテーブル2の回転速度が200rpmであったとすると、チャックテーブル回転速度として195rpmが選択される。制御部8のチャックテーブル回転速度制御部85は、チャックテーブル2の回転速度を195rpmに変更する(ステップ805)。次に、その条件下で研削を続行する(図5のステップ605)。
【0059】
第8制御例では、負荷電流値測定部95における測定値が負荷電流値データテーブル930の範囲外であるために負荷電流の測定値に対応するスピンドル回転速度を設定できない場合においても、チャックテーブル2の回転速度を変更することによって、設定負荷電流値記憶部81に記憶させた負荷電流値の下で研削を行うことが可能となるため、負荷電流の測定値が設定負荷電流値記憶部81に記憶させた負荷電流値と大きく異なる場合においても、ウェーハ10の断面形状のばらつきを低減することができる。
なお、本第8制御例を仕上げ段階T40及びT50に適用してもよい。
【0060】
以上のように、第5~第8制御例では、スピンドル30の負荷電流値も荷重と同様に研削品質を左右する要素であることを利用し、負荷電流値を一定とすることによってスピンドル回転速度を一定とし、これによって、研削荷重を一定とする場合と同様にウェーハ10の断面形状のばらつきを低減することとしている。
【0061】
また、いずれの制御例においても、ウェーハ10の断面形状のばらつきを低減することができる。研削時の荷重は、通常は研削送り機構5による研削送り速度の制御によって調整しており、研削送り機構5を構成するボールネジ50の分解能を超える細かな制御は不可能であったところ、本発明では、スピンドル回転速度の制御を通じて荷重又は負荷電流値を調整することによって、研削送り速度の調整のみによってはできない細かな制御を可能としている。
【0062】
なお、上記第1実施形態の研削装置1では、チャックテーブル2の下方に荷重センサ25を設けたが、研削機構3側に荷重センサを備える構成としてもよい。また、第2実施形態の研削装置100には荷重センサ25を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1、100:研削装置
2:チャックテーブル
20:吸引部 200:保持面 21:枠体 22:チャック回転機構
23:テーブルベース 24:チャック支持部 25:荷重センサ
26:蛇腹 27:基台 28:チャック回転軸
3:研削機構
30:スピンドル 300:回転軸 31:スピンドル回転機構
32:スピンドルハウジング 33:マウント
34:研削ホイール 340:基台 341:研削砥石
4:チャックテーブル送り機構
40:ボールネジ 400:回転軸 41:モータ 42:ガイドレール
43:スライド板
5:研削送り機構
50:ボールネジ 500:回転軸 51:モータ 52:ガイドレール
53:昇降板 54:ホルダ 55:スケール 56:読取部
6:厚さ測定部 61:第1ゲージ 62:第2ゲージ
7、8:制御部
71:設定荷重値記憶部 72:スピンドル回転速度制御部 73:第1記憶部
74:第1選択部 75:チャックテーブル回転速度制御部
81:設定負荷電流記憶部 82:スピンドル回転速度制御部 83:第2記憶部
84:第2選択部 85:チャックテーブル回転速度制御部
91:荷重データテーブル記憶部 910:荷重データテーブル
92:チャック回転速度データテーブル記憶部
920:チャック回転速度データテーブル
93:負荷電流値データテーブル記憶部 930:負荷電流値データテーブル
94:チャック回転速度データテーブル記憶部
940:チャック回転速度データテーブル
95:負荷電流値測定部
10:ウェーハ 11:保護テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15