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特許7601887元素分析装置、取付治具、及び、取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】元素分析装置、取付治具、及び、取付方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20241210BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20241210BHJP
   G01N 31/12 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01N1/22 U
G01N31/00 A
G01N31/12 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022548361
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033379
(87)【国際公開番号】W WO2022054919
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2020154063
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】内原 博
(72)【発明者】
【氏名】平田 泰士
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-103282(JP,U)
【文献】特開2009-053119(JP,A)
【文献】特開昭58-153087(JP,A)
【文献】特開昭52-128194(JP,A)
【文献】米国特許第03936587(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
G01N 31/12
G01N 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が入れられたるつぼを第1電極と第2電極との間で挟持し、前記第1電極及び前記第2電極間に電流を流すことで前記試料を加熱する元素分析装置であって、
前記第1電極が、
前記るつぼが収容される収容凹部が形成された第1電極本体と、
前記第1電極本体の前記収容凹部内に一部が露出するように設けられる第1電極チップと、
前記第1電極本体と前記第1電極チップとの間に設けられ、前記第1電極チップを前記第1電極本体に対して着脱可能に固定する固定構造と、を備え
前記固定構造が、前記第1電極本体及び前記第1電極チップとの間に形成された雄ネジ部と雌ネジ部とからなる第1螺合構造であり、
前記第1電極本体が、前記収容凹部に一端が開口し、前記るつぼ内に試料を投入するための試料投入孔をさらに具備し、
前記第1螺合構造が、前記第1電極本体の試料投入孔の一部と前記第1電極チップとの間に形成された前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とからなることを特徴とする元素分析装置。
【請求項2】
前記第1電極チップが、
前記雄ネジ部が外側周面に形成され、前記第1電極本体の試料投入孔内に挿入される挿入筒と、
前記収容凹部内に露出される部分であり、前記挿入筒の一端側において半径方向に広がるフランジ部と、
前記挿入筒及び前記フランジ部を軸方向に貫通するように形成された貫通孔と、
前記フランジ部において、少なくとも前記貫通孔に一端が開口するとともに半径方向に延びるように形成されたガス導出溝と、を備えた請求項記載の元素分析装置。
【請求項3】
前記ガス導出溝の他端が前記フランジ部の外側周面に開口するように形成された請求項記載の元素分析装置。
【請求項4】
前記ガス導出溝が複数形成されており、前記第1電極チップの中心軸に対して軸対称に配置されている請求項又は記載の元素分析装置。
【請求項5】
前記ガス導出溝が、前記第1電極本体から前記第1電極チップを取り外す際に治具が係合される係合溝を兼ねる請求項乃至いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項6】
前記第2電極が、前記第1電極との間で前記収容凹部内にある前記るつぼを挟持する第1位置と、前記第1位置から所定距離離間し、前記るつぼが前記収容凹部の外側に配置される第2位置との間を移動可能に構成された請求項1乃至いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項7】
請求項又はに記載の元素分析装置において、前記第1電極本体に前記第1電極チップを取り付けるための取付治具であって、
前記収容凹部に嵌合されるガイドと、
前記ガイドに対して回動可能に設けられた回転軸と、
前記回転軸の先端部において半径方向に突出させて設けられ、前記ガス導出溝と係合する係合部材と、を備えた取付治具。
【請求項8】
請求項記載の取付治具を用いた前記第1電極本体に対する前記第1電極チップの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を加熱して生成される試料ガスに基づいて、試料中に含まれる元素を分析する元素分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる例えば窒素(N)、水素(H)、酸素(O)等の元素を定量するために元素分析装置が用いられる。このような元素分析装置は、試料を収容した黒鉛るつぼを加熱炉内において一対の電極により挟持し、当該るつぼに直接電流を流して、るつぼ及び試料を加熱する。加熱により発生した試料ガスは加熱炉から外部に導出されて、各種成分の濃度がNDIR(Non Dispersive Infrared:非分散型赤外線ガス分析計)やTCD(Thermal Conductivity Detector熱伝導度検出器)等からなる分析機構によって測定される。
【0003】
例えば特許文献1に示される元素分析装置の加熱炉は、内部に収容凹部が形成された上部電極と、るつぼが載置される下部電極と、を備えている。下部電極が上昇することで、るつぼが上部電極と下部電極に挟持された状態で収容凹部内に収容される。
【0004】
具体的に上部電極は、収容凹部が形成された概略円筒状の上部電極本体と、収容凹部内において上部電極本体にろう付されて固定された上部電極チップと、を備えている。
【0005】
このため、元素分析が繰り返されて上部電極チップが消耗してくると、上部電極全体を交換しなくてはならず、交換に非常に大きな手間やコストがかかってしまっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許文献US9808797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、元素分析時にるつぼが内部に収容される収容凹部が形成された電極について、消耗した電極チップの部分だけを交換可能な元素分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る元素分析装置は、試料が入れられたるつぼを第1電極と第2電極との間で挟持し、前記第1電極及び前記第2電極間に電流を流すことで前記試料を加熱する元素分析装置であって、前記第1電極が、前記るつぼが収容される収容凹部が形成された第1電極本体と、前記第1電極本体の前記収容凹部内に一部が露出するように設けられる第1電極チップと、前記第1電極本体と前記第1電極チップとの間に設けられ、前記第1電極チップを前記第1電極本体に対して着脱可能に固定する固定構造と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記第1電極チップが前記第1電極本体に対して着脱可能に構成されているので、前記第1電極チップが消耗した場合にはこの部分だけを交換できる。したがって、従来のように前記第1電極全体を交換していた場合と比較して、交換にかかる手間やコストを大幅に低減できる。
【0010】
前記第1電極本体に対して前記第1電極チップを着脱可能に固定するための具体的な態様としては、前記固定構造が、前記第1電極本体及び前記第1電極チップとの間に形成された雄ねじ部と雌ネジ部とからなる第1螺合構造であるものが挙げられる。
【0011】
前記第1電極チップを前記第1電極本体に対して着脱可能にするとともに、前記第1電極チップと前記第1電極本体の間から試料から発生した試料ガスが外部に漏出するのを防げるようにするには、前記第1電極本体が、前記収容凹部に一端が開口し、前記るつぼ内に試料を投入するための試料投入孔をさらに具備し、前記第1螺合構造が、前記第1電極が、前記第1電極本体の試料投入孔の一部と前記第1電極チップとの間に形成された前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とからなるものであればよい。
【0012】
前記るつぼ内の試料から発生する試料ガスが前記収容凹部内に速やかに導出されて、元素分析を短時間で正確に行えるようにするには、前記第1電極チップが、前記雄ネジ部が外側周面に形成され、前記第1電極本体の試料投入孔内に挿入される挿入筒と、前記収容凹部内に露出される部分であり、前記挿入筒の一端側において半径方向に広がるフランジ部と、前記挿入筒及び前記フランジ部を軸方向に貫通するように形成された貫通孔と、前記フランジ部において、少なくとも前記貫通孔に一端が開口するとともに半径方向に延びるように形成されたガス導出溝と、を備えたものであればよい。
【0013】
前記ガス導出溝に例えば取付治具等の器具を係合させて、前記第1電極本体に対して前記第1電極チップを螺合させる際に十分なトルクをかけられるようにするには、前記ガス導出溝の他端が前記フランジ部の外側周面に開口するように形成されたものであればよい。
【0014】
試料ガスの流れに偏りが生じないようにしつつ、前記第1電極チップの取り付け時にもトルクが均一にかかりやすくするには、前記ガス導出溝が複数形成されており、前記第1電極チップの中心軸に対して軸対称に配置されていればよい。
【0015】
前記ガス導出溝が、前記第1電極本体から前記第1電極チップを取り外す際に治具が係合される係合溝を兼ねるものであれば、元素分析に必要な構成を利用して前記収容凹部の奥に前記第1電極チップを着脱作業ができるので、治具と係合する係合溝等の要素を別途前記第1電極チップに設ける必要がない。このため、前記第1電極チップを前記第1電極本体に対して着脱可能にしつつ、着脱のための要素により元素分析のために最適化されたガスの流れ等が阻害されないようにできる。このため、従来のように第1電極全体を一体ものとして形成した場合と同等の精度で元素分析を行うことが可能となる。
【0016】
前記収容凹部内で前記るつぼを前記第1電極と前記第2電極により挟持して試料を閉鎖空間内で加熱し、発生した試料ガスをすべて分析装置側へと導出しやすくするには、前記第2電極が、前記第1電極との間で前記収容凹部内にある前記るつぼを挟持する第1位置と、前記第1位置から所定距離離間し、前記るつぼが前記収容凹部の外側に配置される第2位置との間を移動可能に構成されたものであればよい。
【0017】
本発明に係る元素分析装置において、前記第1電極本体に前記第1電極チップを取り付けるための取付治具であって、前記収容凹部に嵌合されるガイドと、前記ガイドに対して回動可能に設けられた回転軸と、前記回転軸の先端部において半径方向に突出させて設けられ、前記ガス導出溝と係合する係合部材と、を備えた取付治具を用いれば、収容凹部の奥側に前記第1電極チップを螺合させていく場合でもまっすぐな姿勢のまま取り付けることが容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記第1電極チップが前記第1電極本体の前記収容凹部内に対して着脱可能に構成されているので、前記第1電極チップが消耗した場合にはこの部分だけを交換できる。したがって、前記第1電極全体を交換する必要がなく、交換にかかる手間やコストを従来よりも大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る元素分析装置を示す模式図。
図2】第1実施形態の第1電極及び第2電極がるつぼを挟持している状態を示す模式的断面図。
図3】第1実施形態の第1電極の模式的分解斜視図、及び、フランジ部の端面を示す模式図。
図4】第1実施形態の第2電極の模式的分解斜視図。
図5】本発明の第2実施形態に係る元素分析装置に用いられる取付治具の使用状態を示す模式的断面図。
図6】第2実施形態の取付治具を示す模式的斜視図。
図7】本発明のその他の実施形態に係る第1電極チップの例を示す模式図。
図8】本発明のその他の実施形態に係る第2電極のキャップの表側示す模式図。
図9】その他の実施形態に係る第2電極のキャップの裏側を示す模式図。
図10】第2電極のキャップのさらに別の実施例を示す模式図。
図11】雌ネジ部又は雄ネジ部のいずれかにガス抜き溝が形成されている場合におけるガス抜き流路を示す模式図。
【符号の説明】
【0020】
100・・・元素分析装置
1 ・・・供給源
2 ・・・精製器
3 ・・・加熱炉
31 ・・・第1電極
31B・・・第1電極本体
311・・・収容凹部
312・・・流出孔
313・・・試料投入孔
31C・・・第1電極チップ
314・・・挿入筒
315・・・フランジ部
316・・・貫通孔
317・・・ガス導出溝
31S・・・第1螺合構造
32 ・・・第2電極
32B・・・第2電極本体
ST ・・・段部
322・・・凹部
32C・・・第2電極チップ
32D・・・キャップ
32S・・・第2螺合構造
323・・・露出口
324・・・押圧板
325・・・通気孔
326・・・ガス排出溝
327・・・リング状凹部
32F・・・ガス抜き流路
4 ・・・ダストフィルタ
5 ・・・CO検出部
6 ・・・酸化器
7 ・・・CO2検出部
8 ・・・H2O検出部
9 ・・・除去機構
10 ・・・マスフローコントローラ
11 ・・・N2検出部(熱伝導度分析部)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1実施形態に係る元素分析装置100について各図を参照しながら説明する。図1に第1実施形態の元素分析装置100の概略を示す。
【0022】
元素分析装置100は、黒鉛るつぼMP内に収容された例えば金属試料やセラミックス試料等(以下、単に試料という)を加熱溶解し、その際に発生する試料ガスを分析することにより、当該試料内に含まれている元素の量を測定するものである。第1実施形態では試料中に含まれているC(炭素)、H(水素)、N(窒素)が測定対象となる。
【0023】
図1に示すように、元素分析装置100は、るつぼMPに収容された試料が加熱される加熱炉3と、加熱炉3に対してキャリアガスを導入する導入流路L1と、加熱炉3からキャリアガスと試料ガスの混合ガスが導出される導出流路L2と、を備えている。より具体的には、元素分析装置100は、加熱炉3と、導入流路L1又は導出流路L2に設けられた各機器と、各機器の制御や測定された濃度等の演算処理を司る制御演算機構COMによって構成されている。制御演算機構COMは例えばCPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力手段を備えたいわゆるコンピュータであって、メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協業することにより後述する測定値算出部C1としての機能を発揮する。また、制御演算機構COMは後述する、例えばCO検出部5、CO2検出部7、H2O検出部8、N2検出部11の出力に基づいて試料中に含まれる各種元素の濃度を表示する表示部(図示しない)としての機能も発揮する。
【0024】
各部について詳述する。
【0025】
導入流路L1の基端にはキャリアガスの供給源1であるガスボンベが接続されている。第1実施形態では供給源1からHe(ヘリウム)が導入流路L1内に供給される。また、導入流路L1上にはキャリアガスに含まれる微小量の炭化水素を除去し、キャリアガスの純度を上昇させる精製器2が設けられている。
【0026】
精製器2はキャリアガス中に含まれる炭化水素を物理的に吸着し、キャリアガス自体は実質的に吸着しない特性を有する材料で形成されている。なお、精製器2を形成する材料はキャリアガス又は炭化水素とは化学的には反応しない。すなわち、この精製器2は例えばガスクロマトグラフにおいても用いられるものであり、この精製器2を形成する材料として例えばゼオライト系モレキュラーシーブを用いることができる。また、精製器2を形成する材料としてはシリカゲルや活性炭、アスカライト等であっても構わない。この精製器2は例えば加熱することにより吸着されている分子を脱着し、その吸着能を再生できる。
【0027】
加熱炉3は、試料を収容した黒鉛るつぼMPを一対の電極により挟持し、当該るつぼMPに直接電流を流して、るつぼMP及び試料を加熱するように構成されている。試料の加熱時には加熱炉3内の圧力が60kPa以下の圧力、より好ましくは40kPa以下の圧力となるように加熱炉3の上流側に設けられている調圧弁(図示しない)によってキャリアガスは圧力が調節される。加熱炉3の電極の詳細については後述する。
【0028】
次に導出流路L2上に設けられている各機器について説明する。
【0029】
導出流路L2上には、ダストフィルタ4、CO検出部5、酸化器6、CO2検出部7、H2O検出部8、除去機構9、マスフローコントローラ10、熱伝導度分析部であるN2検出部11が上流側からこの順番で並べて設けられている。
【0030】
ダストフィルタ4は、試料ガスに含まれているすすなどを濾し取り、除塵するものである。
【0031】
CO検出部5は、ダストフィルタ4を通過した混合ガスに含まれるCO(一酸化炭素)を検出し、その濃度を測定するものであり、NDIR(非分散型赤外線ガス分析計)で構成されている。このCO検出部5は、その測定精度から試料内部に含まれている酸素が高濃度の場合に有効に動作する。具体的には150ppm以上のCOを測定対象とするのが好ましい。
【0032】
酸化器6は、CO検出部5を通過した混合ガスに含まれるCOやCO2を酸化するとともに、H2をH2O(水)に酸化して水蒸気を生成するものである。この酸化器6として第1実施形態では酸化銅が用いられており、その温度は周囲に設けられた発熱抵抗体により450℃以下の温度に保たれている。
【0033】
CO2検出部7は、酸化器6を通過した混合ガス中のCO2を検出して、その濃度を測定するNDIRである。このCO2検出部7は、測定精度の観点から試料に含まれる酸素が低濃度(例えば150ppm未満)の場合に有効に動作する。
【0034】
H2O検出部8は、CO2検出部7を通過した混合ガス中のH2Oを検出して、その濃度を測定するNDIRである。なお、酸化器6からH2O検出部8に至るまでの流路は混合ガスの温度が100℃以上に保たれて、H2Oが水蒸気の状態を保つように構成されている。このようにして、結露による測定誤差がH2O検出部8において発生しないようにしている。
【0035】
除去機構9は、混合ガス中に含まれているCO2及びH2Oを吸着して除去するものである。この除去機構9は吸着剤によって構成されており、例えば前述した導入流路L1に設けられた精製器2と同じものが用いられる。
【0036】
マスフローコントローラ10は、流量センサM1、制御バルブM2、流量制御器M3が1つのパッケージとなった流量制御デバイスである。このマスフローコントローラ10は、下流側にあるN2検出部11には設定流量で一定に保たれた混合ガスを供給する。このため、除去機構9によって混合ガスに圧力の変動が生じても、N2検出部11における混合ガスの圧力を測定に適した値に保つことができる。第1実施形態では加熱炉3内の圧力を60kPaに保つことができるように、マスフローコントローラ10は、60kPaよりも低い圧力で動作するように例えば前後の差圧が20kPaでも動作するように構成されている。
【0037】
N2検出部11は、TCD(熱伝導度検出器)であり、混合ガスの熱伝導度の変化と、供給されている混合ガスの流量から混合ガスに含まれている所定成分であるN2の濃度を測定する。すなわち、N2検出部11に供給される混合ガスはほぼキャリアガスとN2だけで構成されているので、混合ガス中に含まれるN2の濃度は測定される熱伝導度の変化に対応した値となる。また、第1実施形態ではN2検出部11の下流側には流量計は設けられておらず、N2検出部11の下流側は導出流路L2の排気口に直結されている。
【0038】
各検出部で得られた各成分の濃度を示す測定信号は測定値算出部C1に対して入力される。測定値算出部C1は各測定信号に基づき、試料に含まれているO,H,Nの濃度を算出する。なお、測定値算出部C1は、試料に含まれる酸素濃度を算出する際に試料内部の酸素濃度が所定の閾値(150ppm)以上の場合にはCO検出部5で得られた酸素濃度を出力値とし、閾値未満の場合にはCO2検出部7で得られた酸素濃度を出力値とする。
【0039】
最後に加熱炉3に設けられている一対の電極について詳述する。
【0040】
加熱炉3は、図2の断面図、図3及び図4の斜視図に示すように、上方に固定された上部電極である第1電極31と、下方に設けられ、るつぼMPが載置される下部電極である第2電極32と、を備えている。
【0041】
第1電極31は、図3(a)に示すように上側が細円筒状をなし、下側が扁平円盤状をなす概略二段円筒状の電極である。この第1電極31は、図2の断面図に示すように内部にるつぼMPが収容される中空円筒状の収容凹部311が下部中央部に形成された第1電極本体31Bと、収容凹部311内において第1電極本体31Bに対して着脱可能に設けられた第1電極チップ31Cと、を備えている。第1電極チップ31Cは、概略円筒状をなするつぼMPの上端縁と直接接触する部分であり、元素分析を繰り返すことにより消耗する。また、第1電極本体31Bは例えば銅で形成されており、第1電極チップ31Cは例えばタングステンを含む銅合金で形成されている。すなわち、第1電極チップ31Cは第1電極本体31Bよりも硬度が高い材料で形成されている。
【0042】
第1電極本体31Bは、第1電極31の外形をなすものであり、図2の断面図に示すように扁平円盤状部分の中央部に円筒状の収容凹部311が上下方向に延びるように形成されている。また、収容凹部311の側面に開口するように水平方向に延びる試料ガスの導出孔312が形成されている。また、収容凹部311の上面側にはるつぼMP内に試料を投下するための試料投入孔313が形成してある。試料投入孔313は、収容凹部311よりも直径の小さい概略細中空円筒状の孔であり、第1電極31の中心軸に沿って上下方向に延びるように形成されている。
【0043】
第1電極チップ31Cは、概略二段円筒状をなすものであり、図2及び図3(a)に示すように第1電極本体31Bの試料投入孔313内に挿入される細円筒状の挿入筒314と、挿入筒314の下端側において半径方向に広がる扁平平板状のフランジ部315と、を備えている。また、第1電極チップ31Cは、挿入筒314及びフランジ部315を軸方向に貫通するように形成された貫通孔316と、フランジ部315において、少なくとも貫通孔316の側面に一端が開口するとともに半径方向に延びるように形成されたガス導出溝317と、をさらに備えている。ガス導出溝317は、図3(b)の第1電極チップ31Cの下側端面図に示すように中心軸に対して軸対称となるように90°ごとに4つ設けてある。図2(b)に示すようにガス導出溝317の半径方向内側端部は、るつぼMPの内側に開口している。また、第1実施形態ではガス導出溝317はフランジ部315の外側周面に他端部を開口させてある。すなわち、るつぼMP内の試料から加熱により発生する試料ガスは、るつぼMP内からガス導出溝317を経由してるつぼMPの外側に流れ出る。その後、試料ガスは収容凹部311から第1電極本体31Bに形成された導出孔312を経由して導出流路L2へと流れ出る。
【0044】
第1電極本体31Bと第1電極チップ31Cとの間には、第1電極チップ31Cを第1電極本体31Bに対して着脱可能に固定する固定構造が設けられている。より具体的には第1電極チップ31Cの挿入筒314の外側周面と第1電極本体31Bの試料投入孔313の内側周面との間には、固定構造として雄ネジ部S1と雌ネジ部S2とからなる第1螺合構造31Sが形成されている。この第1螺合構造31Sによって第1電極チップ31Cは第1電極本体31Bに対して着脱可能に構成されている。また、第1螺合構造31Sのねじ山にはピッチ方向に切り欠かれた溝は存在しない。したがって、第1螺合構造31Sを完全に螺合させた状態では、フランジ部315と収容凹部311の上側の壁面との間は密着するとともに、雄ネジ部S1と雌ネジ部S2が隙間なく密着した状態となる。このため、るつぼMPから流れ出る試料ガス第1電極本体31Bと第1電極チップ31Cとの隙間に蓄えられたり、逆流してしまったりするのを防ぐことができる。
【0045】
次に第2電極32について図2及び図4を参照しながら説明する。
【0046】
第2電極32は例えば図示しないエアシリンダによって上下方向に移動可能に構成されており、その一部が載置されているるつぼMPとともに収容凹部311内に差し込まれる。具体的には第2電極32は、第1電極31との間で収容凹部311内にあるるつぼを挟持する第1位置と、第1位置から所定距離離間し、るつぼが前記収容凹部311の外側に配置される第2位置との間を移動可能に構成してある。
【0047】
また、第2電極32は、概略に段円筒状をなす第2電極本体32Bと、第2電極本体32Bの先端面に設けられる薄円盤状をなす第2電極チップ32Cと、第2電極チップ32Cを第2電極本体32Bに対して固定するとともに、第2電極チップ32Cにおける、るつぼMPとの接触面が外部に露出させるための露出口が形成されたキャップ32Dと、を備えている。なお、第2電極本体32B及びキャップ32Dは銅で形成されており、第2電極チップ32Cはタングステンを含む銅合金で形成されている。
【0048】
このように第2電極32は3つの分離したパーツからなり、第2電極チップ32Cのみを交換可能に構成されている。より具体的には、第2電極本体32Bの先端部外側周面と、キャップ32Dの内側周面との間には雄ネジ部S1及び雌ネジ部S2からなる第2螺合構造32Sが形成してある。
【0049】
第2螺合構造32Sは、第1電極31に形成された第1螺合構造31Sとは構造が異なっている。すなわち、図4に示すように第2螺合構造32Sの雄ネジ部S1にはネジのピッチ方向に延び、ネジ山の一部を切り欠くように形成されている。ガス抜き溝321は例えばネジ山についてネジ底の高さまで切り欠くように構成されているが、もっと浅く形成してもよい。また、ガス抜き溝321は第2電極32の中心軸に対して軸対称となるように90°ごとに4つ設けてある。ガス抜き溝321を設ける個数については、4つに限られるものではなく、もっと少なくしてもよいし、もっと多くしてもよい。また、必ずしも軸対称に配置されていなくてもよい。
【0050】
このガス抜き溝321が形成されているので、キャップ32Dの取付時に第2螺合構造32Sのネジ山間の隙間にある空気はネジ山間に溜め込まれたとしても、例えば加熱炉3内から存在している空気からキャリアガスに置換する際に、第2電極32内の空気はガス抜き溝321から第2電極32の外部へと排出できる。
【0051】
第2電極本体32Bは、先端面に第2電極チップ32Cの裏面側がほぼ嵌合するように形成された凹部322が形成されているとともに、図2に示すようにキャップ32Dの縁と対向する段部STが先端側に形成されている。第2電極32の先端側は第2電極チップ32Cが取り付けられる先端面が最も直径が小さく形成してあり、段部STの部分において取り付けられるO‐リングSLの外径と略同じ外径に拡大する。
【0052】
具体的には予め凹部322に第2電極チップ32Cがはめ込まれた状態にしておくことで、第2電極本体32Bに対して第2電極チップ32Cの位置合わせを行うことができる。また、第2電極チップ32Cの位置が定まった状態でキャップ32Dを第2電極本体32Bに螺合させていくことで、第2電極チップ32Cの位置を正しい位置に保ちながら固定することができる。
【0053】
また、第2電極本体32Bの段部STとキャップ32Dの縁との間に形成されるリング状溝RTにはO‐リングSLが配置される。すなわち、キャップ32Dが取り付けられる前の状態では、O‐リングSLの軸方向の移動を規制する部材は存在しない。また、リング状溝RTはO‐リングSLの厚み寸法よりも若干大きく形成してある。るつぼMPを各電極で挟持し電流を流すために、第1電極本体31Bの収容凹部311内に第2電極32が差し込まれていく過程でO‐リングSLはキャップ32Dの縁側にずり動き、当接して収容凹部311内のシールが形成される。このように構成されているので、従来のようにO‐リングSLの内径を非常に大きく拡大した状態で取り付ける必要がなく、O‐リングSLの取付作業を簡単にすることができる。
【0054】
キャップ32Dは、天面部D1と側面部D2とを備えている。天面部D1には、第2電極チップ32Cを外部に露出させる露出口323と、露出口323の周囲に設けられ、キャップ32Dが第2電極本体32Bに螺合した状態において第2電極チップ32Cを第2電極本体32Bの先端面に対して押し付ける押圧板324、が設けられている。側面部D2には、内側周面に雌ネジ部S1が形成されている。また、側面部D2の端面と第2電極本体32Bとの間に隙間が形成されており、キャップ32Dが第2電極本体32Bに対して完全に螺合した状態でも、キャップ32Dの下側の縁からガス抜き溝321を通過した空気が第2電極32の外側への排出の妨げとならないようにしてある。
【0055】
このように構成された元素分析装置100であれば、第1電極本体31Bに対して第1電極チップ31Cは第1螺合構造31Sによって着脱可能に構成されているので、元素分析の繰り返しにより第1電極チップ31Cが消耗した場合には、第1電極チップ31Cだけを交換できる。したがって、従来のように第1電極本体31Bを含む第1電極31全体を交換する必要がない。
【0056】
また、第2電極チップ32Cは第2電極本体32Bとキャップ32Dとの間に形成された第2螺合構造32Sによって着脱可能に構成されているので、第2電極チップ32Cも消耗時にはこの部分だけを交換できる。
【0057】
これらのことから、加熱炉3において元素分析を継続するのに必要となる消耗品の交換作業にかかる手間とコストを従来と比較して大幅に低減できる。
【0058】
また、第2螺合構造32Sはネジ山をピッチ方向に各ネジ山を貫通するガス抜き溝321を備えているので、試料の加熱前に加熱炉3内にキャリアガスを満たすことで、第2電極32内の空気をガス抜き溝321から外部へと排出できる。そして、試料の加熱時には第2電極32内に空気が存在しないようにでき、従来のように試料ガスの発生時には第2電極32内から熱膨張した空気が漏出することがない。すなわち、試料ガス発生時には第2電極32内から誤差要因となる窒素(N)を含む空気の漏出がないので、N2検出部11において試料ガスに含まれる微量の窒素(N)の測定精度を向上させることができる。
【0059】
次に本発明の第2実施形態における元素分析装置に用いられる取付治具200について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0060】
第2実施形態の取付治具200は、第1実施形態において説明した元素分析装置100の第1電極本体31Bに対して第1電極チップ31Cを取り付けるために用いるものである。すなわち、軸対称部品として形成されている第1電極チップ31Cは第1電極本体31Bの収容凹部311の最奥に取り付ける必要があるとともに、第1電極チップ31Cは第1電極本体31Bよりも硬度が高いため、取付治具200なしで取り付けを行うと、第1電極チップ31Cは第1電極本体31Bを削って斜めに取り付けられてしまう可能性がある。このような問題が解決されるように第1電極本体31Bの収容凹部311内において第1電極チップ31Cの軸方向が第1電極本体31Bの軸方向に一致させた状態で第1電極チップ31Cを回転させて螺合させる必要がある。
【0061】
具体的に取付治具200は、図5の断面図及び図6の斜視図に示すように収容凹部311に嵌合される円筒状のガイド20Aと、ガイド20Aの軸方向と一致するように取り付けられた円筒棒状の部材であり、ガイド20Aに対して回動可能に設けられた回転軸20Bと、回転軸20Bの先端部において半径方向に突出させて設けられ、第1電極チップ31Cのガス導出溝317と係合する概略直方体形状をなす係合部材20Cと、を備えたものである。
【0062】
第2実施形態ではガイド20Aは収容凹部311の最大直径部分とほぼ同じ外径寸法を有しており、このガイド20Aが収容凹部311内にはめ込まれることで、ガイド20A及び回転軸20Bの軸方向を第1電極本体31Bの収容凹部311及び試料投入孔313の軸方向とほぼ合致させることができる。このような状態で回転軸20Bをガイド20Aに対して回動させることで、係合部材20Cにガス導出溝317が係合された第1電極チップ31Cを正しい姿勢を保ちながら回転させて第1電極本体31Bに螺合させていくことができる。
【0063】
このように第2実施形態の取付治具200によれば、収容凹部311の最奥に対して第1電極チップ31Cをまっすぐに取り付けることが容易になり、第1電極チップ31Cのフランジ部315の端面全体をるつぼMPの縁に対して完全に当接させられるようになる。このため、るつぼMPに対してフランジ部315が十分に接触しないことにより十分な電流が流れず、想定されている通りに試料を加熱できないといったことを防げる。
【0064】
本発明のその他の実施形態について説明する。
【0065】
図7の各図に示すように第1電極チップ31Cに形成されるガス導出溝317の形状は各実施形態において説明したものに限られない。例えばガス導出溝317が貫通孔316に対してのみ一端が開口するようにして、フランジ部315の外側周面にはガス導出溝317の他端が開口しないようにしてもよい。また、ガス導出溝317の数については4つに限られず、2つや3つであっても構わない。
【0066】
第1電極チップの貫通孔の直径については複数通り用意してもよい。例えば投入される試料の形状が棒状等の場合に、第1電極本体の試料投入孔からるつぼに至るまでの間につっかえてしまうのを防げるように適切な直径に変更してもよい。すなわち、第1電極チップを取り換えるだけで、試料の通り道の直径を適宜変更できるので、試料の形状や性質に応じたものに簡単に換装できる。また、第1電極チップを第1電極本体に対して着脱可能に固定する固定構造は、第1螺合構造に限られない。固定構造は、例えば第1電極チップと第1電極本体との間に形成された係合爪と係合溝からなる係合構造や、嵌合構造であっても構わない。
【0067】
図8(a)、図8(b)、図9の各図に示すように第2電極32のキャップ32Dの変形例としては、キャップ32Dが、天面部D1において第2電極チップ32Cの一部を外部に露出させるための露出口323よりも外周側に開口する通気口325と、ネジのピッチ方向に延び、雌ネジ部S2においてネジ山の一部を切り欠くように形成されたガス抜き溝321と、キャップ32Dの縁である側面部D2の下側端面において半径方向に延びるガス排出溝326と、を備えたものであってもよい。
【0068】
通気口325は、図8(b)に示すようにキャップ32Dが第2電極本体32Bに対して螺合し、第2電極チップ32Cを固定している状態において第2電極32内と外部とが連通するように構成されている。すなわち、この実施例では通気孔325は露出口323から半径方向に延びる切り欠きとして形成されており、キャップ32Dで固定されている薄円盤状の第2電極チップ32Cの最外周よりも外側に至るまで延びている。また、通気口325は第2電極32の中心軸に対して軸対称となるように90°ごとに4つ設けてある。
【0069】
図9に示すようにガス抜き溝321及びガス排出溝326も、中心軸に対して軸対称となるように90°ごとに4つ設けてあり、通気口325に対して略同相となるように配置されている。通気口325とガス抜き溝321はそれぞれの端部において近接させてあり、ガス抜き溝321とガス排出溝326についてはそれぞれ直交させて一続きの溝として形成してある。
【0070】
このようにキャップ32Dの天面部D1に通気口325を形成すれば、キャップ32Dの取付時に第2螺合構造32Sのネジ山間の隙間にある空気を天面部D1側からさらに逃がしやすくできる。また、ガス排出溝326によってキャップ32Dの縁とO‐リングSLとの間からも空気を逃がしやすくなる。このため、分析が繰り返されて第2電極32への熱影響によりガス抜き溝321が変形したり、ダストが堆積したりしても、ガス抜け性能については低下しにくくできる。
【0071】
次にキャップ32Dのさらに別の変形例を図10に示す。通気口325を切り欠きとして形成するのではなく、例えばた貫通穴として形成してもよい。貫通穴が形成される位置はキャップ32Dによって押圧されている第2電極チップ32Cの外側となるようにすればよい。なお、図8乃至図10に示したキャップ32Dについては、通気口325、ガス抜き溝321、ガス排出溝326の3つがそれぞれの位置が同相となるように配置されていたが、それぞれの位置が円周方向に対してずれていてもよい。また、キャップ32Dは通気口325、ガス抜き溝321、ガス排出溝326の少なくとも1つを備えているものであってもよい。例えばキャップ32Dは通気口325又はガス排出溝326のいずれかを備えていて、第2電極本体32Bにのみガス抜き溝321が形成されていてもよい。加えて、キャップ32D自体の外形寸法を小さくして側面部D2の外側と第1電極31の内側面との間の隙間が所定値以上となるように構成して、ガス排出溝326からさらに空気が排出されやすくしてもよい。
【0072】
図11に示すように第2螺合構造32Sの内側と第2電極32の外側とを連通させるガス抜き流路32Fが形成されているので、第2電極本体32Bに対してキャップ32Cを取り付ける際にネジ山間にある空気を第2電極32の外側へと速やかに排出できる。具体的にはキャップ32Cの雌ネジ部S2にガス抜き溝321が形成されている場合には、図11(a)に示すようにネジ山間に存在する空気はガス抜き溝321から通気口325を介してキャップ32Cの上側から排出するとともに、ガス排出溝325を介してキャップ32Cの下側からも排出できる。
【0073】
また、図11(b)に示すようにキャップ32Cの雌ネジ部S2ではなく、電極本体32Bの雄ネジ部S1にガス抜き溝321が形成されている場合にも、同様のガス抜き流路32Fを形成できる。具体的には雄ネジ部S1の基端近傍に形成されたリング状凹部327が形成されており、このリング状凹部327はガス抜き溝321及びガス排出溝325の双方と連通するように形成されている。すなわち、リング状凹部327は例えば雄ネジ部S1のネジ山の高さと略同じ深さを有するに第2電極本体3Bを内周側へ削って形成されている。このように雄ネジ部S1にガス抜き溝321が形成されている場合でもキャップ32Cの通気孔325又はガス排出溝326を介してネジ山間に存在する空気を第2電極32の外部へと速やかに排出することが可能となる。
【0074】
第2電極チップやキャップの形状についても各実施形態に示したものに限られない。例えば第2螺合構造のガス抜き溝の位置を適正位置に調節しやすくするために、キャップの取り付け向きを示す印として円形状ではなく、一部切り欠き部を形成してもよい。また、第2電極の第2螺合構造に形成されるガス抜き溝は、雄ネジ部だけでなく雌ネジ部にも形成されるようにしてもよい。これらのガス抜きは第2電極本体に対してキャップが完全に螺合した状態において周方向の位置がほぼ一致するように同期させてもよい。すなわち、雄ネジ部及び雌ネジ部の双方に形成されたガス抜き溝が合致して空気の通過可能な面積を大きくできるようにしてもよい。加えて、雌ネジ部だけにガス抜き溝を形成してもよい。
【0075】
第1電極及び第2電極の位置関係や動く方向についても各実施形態に示したものに限られない。例えば固定されている第1電極に対して第2電極が水平方向に移動して、るつぼが収容凹部内に収容されるようにしてもよい。
【0076】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、第1電極全体を交換する必要がなく、交換にかかる手間やコストを従来よりも大幅に低減可能な元素分析装置を提供できる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11