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特許7601942炭素原子間の不飽和結合によるプラズマ硬化性化合物を含む段差基板被覆膜形成組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】炭素原子間の不飽和結合によるプラズマ硬化性化合物を含む段差基板被覆膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20241210BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20241210BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G03F7/11 503
C08G59/14
C08F2/44 Z
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2023076776
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2019512557の分割
【原出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2023109817
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2017080826
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴文
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 光
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122296(WO,A1)
【文献】特開2016-185999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 - 7/40
C08F 2/44
C08G 59/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差を有する基板にプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物を塗布する工程(i)、及び該段差を有する基板にプラズマを照射する工程(ii)を含む被覆基板の製造方法であって、
前記工程(ii)は、前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物による段差基板被覆膜に対してプラズマを照射する工程であり、
前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物が、下記式(1-1)乃至式(1-7)で表される部分構造(I):
【化1】
(式中、R、R1a、R、R5a、及びR6aはそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-、-NR-又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し(但し、R は-O-C(O)-で表される2価の基を除く)
は、それぞれ独立して、窒素原子、又は窒素原子と炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる3価の基を表し、
は、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR -及び-NR -からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、
2a、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、
は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキルカルボニル基を表し、
nは1~10の繰り返し単位数を表し、及び
点線は隣接原子との化学結合を表す。)
から選ばれる少なくとも一つの部分構造を含む化合物(E)と溶剤(F)とを含み、及び前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物が、架橋剤と酸触媒を含まない、
被覆基板の製造方法。
【請求項2】
上記R5a、及びR6aはそれぞれ炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6
~40のアリーレン基、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、又はそれらの組み合わせからなる2価の基である請求項1に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項3】
化合物(E)が
炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)とエポキシ化合物(B)(ただし、炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)を除く)との反応で得られた化合物(1)、
炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)とプロトン発生化合物(D)との反応で得られた化合物(2)、又は
エポキシ化合物(B)(ただし、炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)を除く)もしくは炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)と、炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)もしくはプロトン発生化合物(D)との反応で生成したヒドロキシ基を有する化合物と、不飽和結合を含む該ヒドロキシ基に反応可能な化合物(G)との反応で得られた化合物(3)
である請求項1又は請求項2に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項4】
上記化合物(E)が、上記エポキシ化合物(C)のエポキシ基と上記プロトン発生化合物(D)のプロトンとのモル比1:1~1.5:1の、上記エポキシ化合物(C)と上記プロトン発生化合物(D)との反応物である請求項3に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項5】
上記炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)が、炭素原子間の不飽和結合含有カルボン酸、炭素原子間の不飽和結合含有酸無水物、炭素原子間の不飽和結合含有アミン、炭素原子間の不飽和結合含有アミド、炭素原子間の不飽和結合含有イソシアヌレート、炭素原子間の不飽和結合含有フェノール、又は炭素原子間の不飽和結合含有チオールである請求項3に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項6】
上記エポキシ化合物(B)が、グリシジル基含有エーテル、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物とエピクロルヒドリンとの反応物、グリシジル基含有イソシアヌレート、エポキシシクロヘキシル基含有化合物、エポキシ基置換シクロヘキシル化合物、又はグリシジルエステル化合物である請求項3に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項7】
上記エポキシ化合物(B)が、フェノール性ヒドロキシ基含有樹脂とエピクロルヒドリンとの反応物である請求項3に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項8】
上記炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)が、炭素原子間の不飽和結合含有グリシジルエーテル化合物、又は炭素原子間の不飽和結合含有フェノール性ヒドロキシ基含有化合物とエピクロルヒドリンとの反応物である請求項3に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項9】
上記炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)が、炭素原子間の不飽和結合含有フェノール性ヒドロキシ基含有樹脂とエピクロルヒドリンとの反応物である請求項3に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項10】
上記プロトン発生化合物(D)が、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物、カルボン酸含有化合物、アミン含有化合物、チオール含有化合物、又はイミド含有化合物である請求項3に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項11】
上記化合物(G)が炭素原子間の不飽和結合を含有する酸ハロゲライド、酸無水物、イソシアネート、若しくはハロゲン化アルキル、又は上記(A)である請求項3に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項12】
プラズマがエッチングガスで用いられるプラズマガス照射によるものである請求項1又は2に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項13】
プラズマが、ハロゲン含有ガスプラズマ、酸素ガスプラズマ、又は水素ガスプラズマである請求項1又は2に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項14】
上記段差基板被覆膜形成組成物が、半導体装置製造のリソグラフィー工程に用いられるレジスト下層膜形成組成物である請求項1又は2に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項15】
工程(i)に従うプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物の塗布の後に該組成物に対し70乃至400℃の温度で、10秒~5分間の加熱を行う工程(ia)をさらに含む請求項1又は2に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項16】
工程(ii)に従うプラズマ照射が、フッ素含有ガス、又は酸素と不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ照射である請求項1又は請求項2に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項17】
工程(ii)に従うプラズマ照射が、ドライエッチング工程に用いられる装置を用いたエッチングガスによるものである請求項1又は2に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項18】
基板がオープンエリア(非パターンエリア)と、DENCE(密)及びISO(粗)のパターンエリアとを有し、パターンのアスペクト比が0.1~10である請求項1又は2に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項19】
オープンエリアとパターンエリアとのBias(塗布段差)が1乃至50nmである請求項18に記載の被覆基板の製造方法。
【請求項20】
段差を有する基板上に段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜の上にレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜に光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程が、段差を有する基板にプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物を塗布する工程(i)、及び該段差を有する基板にプラズマを照射する工程(ii)を含み、
前記工程(ii)は、前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物による段差基板被覆膜に対してプラズマを照射する工程であり、
前記段差基板被覆膜形成組成物が、下記式(1-1)乃至式(1-7)で表される部分構造(I):
【化2】
(式中、R、R1a、R、R5a、及びR6aはそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-、-NR-又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し(但し、R は-O-C(O)-で表される2価の基を除く)
は、それぞれ独立して、窒素原子、又は窒素原子と炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる3価の基を表し、
は、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR -及び-NR -からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、
2a、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、
は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキルカルボニル基を表し、
nは1~10の繰り返し単位数を表し、及び
点線は隣接原子との化学結合を表す。)
から選ばれる少なくとも一つの部分構造を含む化合物(E)と溶剤(F)とを含み、及び前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物が、架橋剤と酸触媒を含まない、
半導体装置の製造方法。
【請求項21】
上記段差を有する基板がオープンエリア(非パターンエリア)と、DENCE(密)及
びISO(粗)のパターンエリアとを有し、パターンのアスペクト比が0.1~10である基板である請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(i)に従うプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物の塗布の後に該組成物に対し70乃至400℃の温度で、10秒~5分間の加熱を行う工程(ia)をさらに含む請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(ii)に従うプラズマ照射が、フッ素含有ガス、又は酸素と不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ照射である請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(ii)に従うプラズマ照射が、ドライエッチング工程に用いられる装置を用いたエッチングガスによるものである請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
段差基板被覆膜形成組成物により得られた下層膜のオープンエリアとパターンエリアとのBias(塗布段差)が1乃至50nmである請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項26】
段差を有する基板にプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜の上にハードマスクを形成する工程、更に該ハードマスクの上にレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜に光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、該パターン化されたハードマスクにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程が、段差を有する基板にプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物を塗布する工程(i)、及び該段差を有する基板にプラズマを照射する工程(ii)を含み、
前記工程(ii)は、前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物による段差基板被覆膜に対してプラズマを照射する工程であり、
前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物が、下記式(1-1)乃至式(1-7)で表される部分構造(I):
【化3】
(式中、R、R1a、R、R5a、及びR6aはそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-、-NR-又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し(但し、R は-O-C(O)-で表される2価の基を除く)
は、それぞれ独立して、窒素原子、又は窒素原子と炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる3価の基を表し、
は、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR -及び-NR -からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、
2a、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、
は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキルカルボニル基を表し、
nは1~10の繰り返し単位数を表し、及び
点線は隣接原子との化学結合を表す。)
から選ばれる少なくとも一つの部分構造を含む化合物(E)と溶剤(F)とを含み、及び
前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物が、架橋剤と酸触媒を含まない、
半導体装置の製造方法。
【請求項27】
上記段差を有する基板がオープンエリア(非パターンエリア)と、DENCE(密)及びISO(粗)のパターンエリアとを有し、パターンのアスペクト比が0.1~10である基板である請求項26に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項28】
上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(i)に従うプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物の塗布の後に該組成物に対し70乃至400℃の温度で、10秒~5分間の加熱を行う工程(ia)をさらに含む請求項26に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項29】
上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(ii)に従うプラズマ照射が、フッ素含有ガス、又は酸素と不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ照射である請求項26に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項30】
上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(ii)に従うプラズマ照射が、ドライエッチング工程に用いられる装置を用いたエッチングガスによるものである請求項26に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項31】
上記段差基板被覆膜形成組成物により得られた下層膜のオープンエリアとパターンエリアとのBias(塗布段差)が1乃至50nmである請求項26に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
段差を有する基板にプラズマ照射によって平坦化膜を形成するための段差基板被覆膜形成組成物と、その段差基板被覆膜形成組成物を用いた平坦化された積層基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置は微細なデザインルールに加工されるようになってきた。光リソグラフィー技術により一層微細なレジストパターンを形成するためには、露光波長を短波長化する必要がある。
ところが、露光波長の短波長化に伴って焦点深度が低下するために、基板上に形成される被膜の平坦化性を向上させることが必要になる。微細なデザインルールを持つ半導体装置を製造するためには、基板上の平坦化技術が重要になってきている。
【0003】
平坦化膜形成方法として、例えばレジストの下に形成されるレジスト下層膜を光硬化により形成する方法が開示されている。
側鎖にエポキシ基又はオキセタン基を有するポリマーと光カチオン重合開始剤とを含むレジスト下層膜形成組成物、又はラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するポリマーと光ラジカル重合開始剤とを含むレジスト下層膜形成組成物が開示されている(特許文献1参照)。
また、エポキシ基及びビニル基等のカチオン重合可能な反応性基を有するケイ素系化合物と、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤とを含むレジスト下層膜形成組成物が開示されている(特許文献2参照)
また、側鎖に架橋性官能基(例えばヒドロキシ基)を有するポリマーと架橋剤と光酸発生剤とを含有するレジスト下層膜を用いる半導体装置の製造方法が開示されている(特許文献3参照)。
また、光架橋系のレジスト下層膜ではないが、不飽和結合を主鎖又は側鎖に有するレジスト下層膜が開示されている(特許文献4、5参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開パンフレット2006/115044
【文献】国際公開パンフレット2007/066597
【文献】国際公開パンフレット2008/047638
【文献】国際公開パンフレット2009/008446
【文献】特表2004-533637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光架橋材料では、ヒドロキシ基等の熱架橋形成官能基を有するポリマーと架橋剤と酸触媒(酸発生剤)とを含むレジスト下層膜形成組成物では、基板上に形成されたパターン(例えば、ホールやトレンチ構造)に充填するために加熱時に架橋反応が進行し粘度上昇が生じ、パターンへの充填性が問題になる。そして脱ガスによる熱収縮が発生するために平坦化性が問題になる。
また、エポキシ基及びビニル基等のカチオン重合可能な反応性基を有するポリマーと酸発生剤とを含むレジスト下層膜形成組成物では、光照射と加熱が行われる。その際にやはり脱ガスによる熱収縮が発生するために平坦化性が問題になる。
【0006】
本発明はパターンへの充填性が高く、脱ガスや熱収縮が発生しない塗膜形成が可能な平坦化性を有する被膜を基板上に形成するためのプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は第1観点として、下記式(1-1)乃至(1-7)で表される部分構造(I):
【化1】
(式中、R、R1a、R、R5a、及びR6aはそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-、-NR-又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し、Rは、それぞれ独立して、窒素原子、又は窒素原子と炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる3価の基を表し、R、R2a、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキルカルボニル基を表し、nは1~10の繰り返し単位数を表し、及び点線は隣接原子との化学結合を表す。)から選ばれる少なくとも一つの部分構造を含む化合物(E)と溶剤(F)とを含むプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第2観点として、上記R5a、及びR6aはそれぞれ炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、又はそれらの組み合わせからなる2価の基である第1観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第3観点として、化合物(E)が炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)とエポキシ化合物(B)との反応で得られた化合物(1)、炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)とプロトン発生化合物(D)との反応で得られた化合物(2)、又はエポキシ化合物(B)もしくは炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)と、炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)もしくはプロトン発生化合物(D)との反応で生成したヒドロキシ基を有する化合物と、不飽和結合を含む該ヒドロキシ基に反応可能な化合物(G)との反応で得られた化合物(3)である第1観点又は第2観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第4観点として、上記化合物(E)が、上記プロトン発生化合物(A)のプロトンと上記エポキシ化合物(B)のエポキシ基とのモル比で1:1~1:1.5の、上記プロトン発生化合物(A)とエポキシ化合物(B)との反応物である第3観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第5観点として、上記化合物(E)が、上記エポキシ化合物(C)のエポキシ基と上記プロトン発生化合物(D)のプロトンとのモル比で1:1~1.5:1の、上記エポキシ化合物(C)と上記プロトン発生化合物(D)との反応物である第3観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第6観点として、上記炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)が、炭素原子間の不飽和結合含有カルボン酸、炭素原子間の不飽和結合含有酸無水物、炭素原子間の不飽和結合含有アミン、炭素原子間の不飽和結合含有アミド、炭素原子間の不飽和結合含有イソシアヌレート、炭素原子間の不飽和結合含有フェノール、又は炭素原子間の不飽和結合含有チオールである第3観点又は第4観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第7観点として、上記エポキシ化合物(B)が、グリシジル基含有エーテル、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物とエピクロルヒドリンとの反応物、フェノール性ヒドロキシ基含有樹脂とエピクロルヒドリンとの反応物、グリシジル基含有イソシアヌレート、エポキシシクロヘキシル基含有化合物、エポキシ基置換シクロヘキシル化合物、又はグリシジルエステル化合物である第3観点又は第4観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第8観点として、上記炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)が、炭素原
子間の不飽和結合含有グリシジルエステル化合物、炭素原子間の不飽和結合含有フェノール性ヒドロキシ基含有化合物とエピクロルヒドリンとの反応物、又は炭素原子間の不飽和結合含有フェノール性ヒドロキシ基含有樹脂とエピクロルヒドリンとの反応物である第3観点又は第5観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第9観点として、上記プロトン発生化合物(D)が、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物、カルボン酸含有化合物、アミン含有化合物、チオール含有化合物、又はイミド含有化合物である第3観点又は第5観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第10観点として、上記化合物(G)が炭素原子と炭素原子との不飽和結合を含有する酸ハロゲライド、酸無水物、イソシアネート、若しくはハロゲン化アルキル、又は上記(A)である第3観点又は第5観点に記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第11観点として、プラズマがエッチングガスで用いられるプラズマガス照射によるものである第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第12観点として、プラズマが、ハロゲン含有ガスプラズマ、酸素ガスプラズマ、又は水素ガスプラズマである第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第13観点として、上記段差基板被覆組成物が、半導体装置製造のリソグラフィー工程に用いられるレジスト下層膜形成組成物である第1観点乃至第12観点のいずれか一つに記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物、
第14観点として、段差を有する基板に第1観点乃至第13観点のいずれか一つに記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物を塗布する工程(i)、及び該段差を有する基板にプラズマを照射する工程(ii)を含む被覆基板の製造方法、
第15観点として、工程(i)に従うプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物の塗布後に該組成物に対し70乃至400℃の温度で、10秒~5分間の加熱を行う工程(ia)をさらに含む第14観点に記載の被覆基板の製造方法、
第16観点として、工程(ii)に従うプラズマ照射が、フッ素含有ガス、又は酸素と不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ照射である第14観点又は第15観点に記載の被覆基板の製造方法、
第17観点として、工程(ii)に従うプラズマの照射が、ドライエッチング工程に用いられる装置を用いたエッチングガスによるものである第14観点乃至第15観点のいずれか一つに記載の被覆基板の製造方法、
第18観点として、基板がオープンエリア(非パターンエリア)と、DENCE(密)及びISO(粗)のパターンエリアとを有し、パターンのアスペクト比が0.1~10である第14観点乃至第17観点のいずれか一つに記載の被覆基板の製造方法、
第19観点として、オープンエリアとパターンエリアとのBias(塗布段差)が1乃至50nmである第18観点のいずれか一つに記載の被覆基板の製造方法、
第20観点として、段差を有する基板上に第1観点乃至第13観点のいずれか一つに記載の段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜の上にレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜に光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、レジストパターンにより該下層膜をエッチングする工程、及びパターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法、
第21観点として、上記段差を有する基板が第18観点に記載の基板である第20観点に記載の半導体装置の製造方法、
第22観点として、上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程が第14観点乃至第19観点のいずれか一つに記載の方法により形成されたものである第20観点に記載の半導体装置の製造方法、
第23観点として、段差基板被覆膜形成組成物により得られた下層膜が第19観点に記載の塗布段差を有する第20観点に記載の半導体装置の製造方法、
第24観点として、段差を有する基板に第1観点乃至第13観点のいずれか一つに記載のプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜の上
にハードマスクを形成する工程、更に該ハードマスクの上にレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜に光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、該パターン化されたハードマスクにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法、
第25観点として、上記段差を有する基板が第18観点に記載の基板である第24観点に記載の半導体装置の製造方法、
第26観点として、上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程が第14観点乃至第19観点のいずれか一つに記載の方法により形成されたものである第24観点に記載の半導体装置の製造方法、及び
第27観点として、上記段差基板被覆膜形成組成物により得られた下層膜が第19観点に記載の塗布段差を有する第24観点に記載の半導体装置の製造方法である。
特に、本発明は下記[1]乃至[32]の発明に関する。
[1]段差を有する基板にプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物を塗布する工程(i)、及び該段差を有する基板にプラズマを照射する工程(ii)を含む被覆基板の製造方法であって、前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物が、下記式(1-1)乃至式(1-7)で表される部分構造(I):
【化1】
(式中、R 、R 1a 、R 、R 5a 、及びR 6a はそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR -、-NR -又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し、R は、それぞれ独立して、窒素原子、又は窒素原子と炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR -及び-NR
-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる3価の基を表し、R 、R 2a 、R 、及びR は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR -及び-NR -からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、R は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキルカルボニル基を表し、nは1~10の繰り返し単位数を表し、及び点線は隣接原子との化学結合を表す。)から選ばれる少なくとも一つの部分構造を含む化合物(E)と溶剤(F)とを含む、被覆基板の製造方法、
[2]上記R 5a 、及びR 6a はそれぞれ炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、又はそれらの組み合わせからなる2価の基である[1]に記載の被覆基板の製造方法、
[3]化合物(E)が炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)とエポキシ化合物(B)との反応で得られた化合物(1)、炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)とプロトン発生化合物(D)との反応で得られた化合物(2)、又はエポキシ化合物(B)もしくは炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)と、炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)もしくはプロトン発生化合物(D)との反応で生成したヒドロキシ基を有する化合物と、不飽和結合を含む該ヒドロキシ基に反応可能な化合物(G)との反応で得られた化合物(3)である[1]又は[2]に記載の被覆基板の製造方法、
[4]上記化合物(E)が、上記エポキシ化合物(C)のエポキシ基と上記プロトン発生化合物(D)のプロトンとのモル比1:1~1.5:1の、上記エポキシ化合物(C)と上記プロトン発生化合物(D)との反応物である[3]に記載の被覆基板の製造方法、
[5]上記炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)が、炭素原子間の不飽和結合含有カルボン酸、炭素原子間の不飽和結合含有酸無水物、炭素原子間の不飽和結合含有アミン、炭素原子間の不飽和結合含有アミド、炭素原子間の不飽和結合含有イソシアヌレート、炭素原子間の不飽和結合含有フェノール、又は炭素原子間の不飽和結合含有チオールである[3]に記載の被覆基板の製造方法、
[6]上記エポキシ化合物(B)が、グリシジル基含有エーテル、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物とエピクロルヒドリンとの反応物、グリシジル基含有イソシアヌレート、エポキシシクロヘキシル基含有化合物、エポキシ基置換シクロヘキシル化合物、又はグリシジルエステル化合物である[3]に記載の被覆基板の製造方法。
[7]上記エポキシ化合物(B)が、フェノール性ヒドロキシ基含有樹脂とエピクロルヒドリンとの反応物である[3]に記載の被覆基板の製造方法、
[8]上記炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)が、炭素原子間の不飽和結合含有グリシジルエステル化合物、又は炭素原子間の不飽和結合含有フェノール性ヒドロキシ基含有化合物とエピクロルヒドリンとの反応物である請求項3に記載の被覆基板の製造方法、
[9]上記炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)が、炭素原子間の不飽和結合含有フェノール性ヒドロキシ基含有樹脂とエピクロルヒドリンとの反応物である[3]に記載の被覆基板の製造方法、
[10]上記プロトン発生化合物(D)が、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物、カルボン酸含有化合物、アミン含有化合物、チオール含有化合物、又はイミド含有化合物である[3]に記載の被覆基板の製造方法、
[11]上記化合物(G)が炭素原子間の不飽和結合を含有する酸ハロゲライド、酸無水物、イソシアネート、若しくはハロゲン化アルキル、又は上記(A)である[3]に記載の被覆基板の製造方法、
[12]プラズマがエッチングガスで用いられるプラズマガス照射によるものである[1]又は[2]に記載の被覆基板の製造方法、
[13]プラズマが、ハロゲン含有ガスプラズマ、酸素ガスプラズマ、又は水素ガスプラズマである[1]又は[2]に記載の被覆基板の製造方法、
[14]上記段差基板被覆膜形成組成物が、半導体装置製造のリソグラフィー工程に用いられるレジスト下層膜形成組成物である[1]又は[2]に記載の被覆基板の製造方法、[15]工程(i)に従うプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物の塗布の後に該組成物に対し70乃至400℃の温度で、10秒~5分間の加熱を行う工程(ia)をさらに含む[1]又は[2]に記載の被覆基板の製造方法、
[16]工程(ii)に従うプラズマ照射が、フッ素含有ガス、又は酸素と不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ照射である[1]又は[2]に記載の被覆基板の製造方法、
[17]工程(ii)に従うプラズマ照射が、ドライエッチング工程に用いられる装置を用いたエッチングガスによるものである[1]又は[2]に記載の被覆基板の製造方法、[18]基板がオープンエリア(非パターンエリア)と、DENCE(密)及びISO(粗)のパターンエリアとを有し、パターンのアスペクト比が0.1~10である[1]又は[2]に記載の被覆基板の製造方法、
[19]オープンエリアとパターンエリアとのBias(塗布段差)が1乃至50nmである[18]に記載の被覆基板の製造方法、
[20]段差を有する基板上に段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜の上にレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜に光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法であって、前記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程が、段差を有する基板にプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物を塗布する工程(i)、及び該段差を有する基板にプラズマを照射する工程(ii)を含み、前記段差基板被覆膜形成組成物が、下記式(1-1)乃至式(1-7)で表される部分構造(I):
【化1】
(式中、R 、R 1a 、R 、R 5a 、及びR 6a はそれぞれ独立して炭素原子数1~1
0のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR -、-NR -又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し、R は、それぞれ独立して、窒素原子、又は窒素原子と炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR -及び-NR -からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる3価の基を表し、R 、R 2a 、R 、及びR は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR -及び-NR -からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、R は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキルカルボニル基を表し、nは1~10の繰り返し単位数を表し、及び点線は隣接原子との化学結合を表す。)から選ばれる少なくとも一つの部分構造を含む化合物(E)と溶剤(F)とを含む、半導体装置の製造方法、
[21]上記段差を有する基板がオープンエリア(非パターンエリア)と、DENCE(密)及びISO(粗)のパターンエリアとを有し、パターンのアスペクト比が0.1~10である基板である[20]に記載の半導体装置の製造方法、
[22]上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(i)に従うプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物の塗布の後に該組成物に対し70乃至400℃の温度で、10秒~5分間の加熱を行う工程(ia)をさらに含む[20]に記載の半導体装置の製造方法、
[23]上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(ii)に従うプラズマ照射が、フッ素含有ガス、又は酸素と不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ照射である[20]に記載の半導体装置の製造方法、
[24]上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(ii)に従うプラズマ照射が、ドライエッチング工程に用いられる装置を用いたエッチングガスによるものである[20]に記載の半導体装置の製造方法。
[25]段差基板被覆膜形成組成物により得られた下層膜のオープンエリアとパターンエリアとのBias(塗布段差)が1乃至50nmである[20]に記載の半導体装置の製造方法、
[26]段差を有する基板にプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜の上にハードマスクを形成する工程、更に該ハードマスクの上にレジスト膜を形成する工程、該レジスト膜に光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、該パターン化されたハードマスクにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法であって、前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程が、段差を有する基板にプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物を塗布する工程(i)、及び該段差を有する基板にプラズマを照射する工程(ii)を含み、前記プラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物が、下記式(1-1)乃至式(1-7)で表される部分構造(I):
【化1】
(式中、R 、R 1a 、R 、R 5a 、及びR 6a はそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR -、-NR -又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し、R は、それぞれ独立して、窒素原子、又は窒素原子と炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR -及び-NR -からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる3価の基を表し、R 、R 2a 、R 、及びR は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR -及び-NR -からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、R は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキルカルボニル基を表し、nは1~10の繰り返し単位数を表し、及び点線は隣接原子との化学結合を表す。)から選ばれる少なくとも一つの部分構造を含む化合物(E)と溶剤(F)とを含む、半導体装置の製造方法、
[27]上記段差を有する基板がオープンエリア(非パターンエリア)と、DENCE(密)及びISO(粗)のパターンエリアとを有し、パターンのアスペクト比が0.1~10である基板である[26]に記載の半導体装置の製造方法、
[28]上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(i)に従うプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物の塗布の後に該組成物に対し70乃至400℃の温度で、10秒~5分間の加熱を行う工程(ia)をさらに含む[26]に記載の半導体装置の製造方法、
[29]上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(i
i)に従うプラズマ照射が、フッ素含有ガス、又は酸素と不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ照射である[26]に記載の半導体装置の製造方法、
[30]上記段差基板被覆膜形成組成物により下層膜を形成する工程において、工程(ii)に従うプラズマ照射が、ドライエッチング工程に用いられる装置を用いたエッチングガスによるものである[26]に記載の半導体装置の製造方法、
[31]上記段差基板被覆膜形成組成物により得られた下層膜のオープンエリアとパターンエリアとのBias(塗布段差)が1乃至50nmである[26]に記載の半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の段差基板被覆膜形成組成物は基板上に塗布され、場合により更に加熱によるリフローによりパターンに充填されるが、その際に熱架橋部位や酸触媒を持たないため段差基板被覆膜形成組成物の粘度上昇がなく、基板上のオープンエリア(非パターンエリア)や、DENCE(密)及びISO(粗)のパターンエリアを問わず、平坦な膜が形成される。そして、炭素原子と炭素原子との不飽和結合へのプラズマ照射によりラジカル種による不飽和結合同士の架橋構造が形成される。本発明の段差基板被覆膜形成組成物は架橋剤
と酸触媒を含むことなく、段差基板被覆膜形成組成物を塗布して形成された段差基板被覆膜(平坦化膜)は炭素原子と炭素原子との不飽和結合に由来する二重結合、三重結合同士の反応により架橋することができる。
【0009】
本発明の段差基板被覆膜形成組成物による段差基板被覆膜(平坦化膜)は、熱リフロー時に架橋剤と酸触媒による架橋反応を生じず、その後のプラズマ照射による架橋は脱ガスを伴わないプラズマ反応であるため段差基板被覆膜に熱収縮は生じない。これにより、本発明はパターンへの充填性と、充填後の平坦化性が同時に満たされ、優れた平坦化膜を形成することが可能となった段差基板被覆膜形成組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は部分構造(I)から選ばれる少なくとも一つの部分構造を含む化合物(E)と溶剤(F)とを含むプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物である。
【0011】
プラズマはレジストパターンのエッチングのエッチングガスで用いられるプラズマガス照射によるものである。
そしてプラズマとしては、ハロゲン含有ガスプラズマ、酸素ガスプラズマ、又は水素ガスプラズマを単独で用いる事ができる。
そして、プラズマとしては、ハロゲン含有ガス、酸素、及び水素から選ばれるガスを混合した混合ガスプラズマや、それらに更にその他のガスを混合した混合ガスプラズマを用いることができる。
【0012】
ハロゲンとしてはフッ素、塩素が挙げられる。例えば、ハロゲン含有ガスとしてはテトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C8)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン(CHF)、ジフルオロメタン(CH)、三フッ化窒素、六フッ化硫黄、三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等が挙げられる。
その他のガスとしては不活性ガス、一酸化炭素等が挙げられる。不活性ガスとしては例えば窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスが挙げられる。
上記プラズマガスとしてはテトラフルオロメタン(CF4)プラズマ、酸素と窒素の混合ガスプラズマを好ましく用いることができる。
【0013】
部分構造(I)は上記式(1-1)乃至式(1-7)から選ばれる少なくとも一つの部分構造である。
部分構造(I)は例えば式(1-1)の部分構造、式(1-2)の部分構造、式(1-3)の部分構造、式(1-4)の部分構造、式(1-5)の部分構造、式(1-6)の部分構造と式(1-7)の部分構造の組み合わせ、式(1-1)の部分構造と式(1-3)の部分構造の組み合わせ、又は式(1-1)の部分構造と式(1-4)の部分構造の組み合わせも挙げられる。
【0014】
上記式中、R、R1a、R、R5a、及びR6aはそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-、-NR-又はそれらの組み合わせからなる2価の基を表し、Rは、それぞれ独立して、窒素原子、又は窒素原子と炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基(該アルキレン基及びアリーレン基は、1つ又は2つ以上のアミド基又はアミノ基で任意に置換されていても良い)、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる3価の基を表し、R、R2a、R、及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1
~10のアルキル基、又は水素原子と、炭素原子数1~10のアルキレン基、酸素原子、カルボニル基、-C(O)-NR-及び-NR-からなる群から選択される少なくとも一つ以上の基との組み合わせからなる1価の基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、
は、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキルカルボニル基を表し、nは1~10の繰り返し単位数を表し、及び
点線は隣接原子との化学結合を表す。
【0015】
上記R5a、及びR6aはそれぞれ炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、又はそれらの組み合わせからなる2価の基とすることができる。
【0016】
上記段差基板被覆膜形成組成物は必要に応じて界面活性剤等の添加剤を含むことができる。
【0017】
この組成物の固形分は0.1~70質量%、又は0.1~60質量%、又は0.2~30質量%、又は0.3~15質量%である。固形分は段差基板被覆膜形成組成物から溶剤を除いた全成分の含有割合である。固形分中に上記化合物(E)を1~100質量%、または1~99.9質量%、または50~99.9質量%、または50~95質量%、または50~90質量%の割合で含有することができる。
【0018】
本発明に用いられる化合物(E)は、平均分子量が600~1000000、又は600~200000、又は1500~15000である。
【0019】
化合物(E)は、分子間又は分子内で炭素原子と炭素原子との不飽和結合のプラズマ反応で架橋構造を形成することができるが、この炭素原子間の不飽和結合、即ち炭素原子間の不飽和二重結合を分子内に少なくとも1個有することができ、また分子内に複数個(例えば1乃至1000個)有することもできる。
【0020】
上記アルキル基としては、炭素原子数1乃至10のアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル
基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0021】
上記アリール基としては、炭素原子数6~40のアリール基であり、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニレン基、フルオレン基、ナフチル基、アントリル基、ピレン基、カルバゾール基等が挙げられる。
【0022】
上記アルキレン基としては上記アルキル基から誘導される2価の有機基が例示される。
上記アリーレン基としては上記アリール基から誘導される2価の有機基が例示される。
上記アルキルカルボニル基としてはカルボニル基に上記アルキル基が結合した基が例示される。
【0023】
部分構造(I)の式(1-4)において、R5a、及びR6aはそれぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~40のアリーレン基、酸素原子、カルボニル基、イオウ原子、又はそれらの組み合わせからなる2価の基とすることができる。
【0024】
部分構造(I)において式(1-4)で表される部分構造は式(II)で表される部分構造と結合して鎖状高分子を形成するが、R5a、及びR6aがこれらの基からなる場合は、プラズマ反応による架橋構造形成能が高くなり好ましい。
【0025】
化合物(E)は、部分構造(I)と部分構造(II)とを有することができる。
部分構造(II)は下記式(2-1)、式(2-2)で表される部分構造であり、ヒドロキシ基を有する部分構造である。
【化2】
式(2-1)及び式(2-2)中、R、R、R、R10及びR11はそれぞれ水素原子、又は炭素原子数1~10のアルキル基を示し、点線は隣接原子との化学結合を示す。
【0026】
化合物(E)は炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)とエポキシ化合物(B)との反応で得られた化合物(1)、炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)とプロトン発生化合物(D)との反応で得られた化合物(2)、又はエポキシ化合物(B)もしくは炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)と、炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)もしくはプロトン発生化合物(D)との反応で生成したヒドロキシ基を有する化合物と、不飽和結合を含む該ヒドロキシ基に反応可能な化合物(G)との反応で得られた化合物(3)とすることができる。
【0027】
部分構造(II)がエポキシ基とプロトン発生化合物の反応により生じたヒドロキシル
基を含み、化合物(E)中に、0≦(エポキシ基)/(ヒドロキシル基)≦0.5のモル比でエポキシ基及びヒドロキシ基を含むことができる。エポキシ化合物(B)又は(C)に、プロトン発生化合物(A)又は(D)を反応させ、エポキシ基に付加反応を生じヒドロキシル基が発生する。その付加反応の割合は0≦(エポキシ基)/(ヒドロキシル基)≦0.5のモル比であるが、残留エポキシ基は少ないことが好ましく、化合物(E)の残留エポキシ基の割合は光反応性の上でゼロ又はゼロに近い値であることが望ましい。
【0028】
上記化合物(E)は、上記プロトン発生化合物(A)のプロトンと上記エポキシ化合物(B)のエポキシ基とのモル比1:1~1:1.5の割合の上記プロトン発生化合物(A)とプロトンと上記エポキシ化合物(B)との反応で得られたものとすることができる。
また、上記化合物(E)が、上記エポキシ化合物(C)のエポキシ基と上記プロトン発生化合物(D)のプロトンとのモル比1:1~1.5:1の割合の上記エポキシ化合物(C)と上記プロトン発生化合物(D)との反応で得られたものであるとすることができる。
【0029】
プロトン発生化合物(A)のプロトン発生基とエポキシ化合物(B)のエポキシ基が反応して部分構造(I)と部分構造(II)が形成される。部分構造(I)のR、R、R、R5a、R6a、R1a、及びエステル基の酸素原子は、部分構造(II)のRとR10の間の炭素原子、又はRとR11の間の炭素原子、又はヒドロキシシクロヘキシル環の環中の炭素原子と結合を形成する。
【0030】
炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)としては例えば、炭素原子間の不飽和結合含有カルボン酸、炭素原子間の不飽和結合含有酸無水物、炭素原子間の不飽和結合含有アミン、炭素原子間の不飽和結合含有アミド、炭素原子間の不飽和結合含有イソシアヌレート、炭素原子間の不飽和結合含有フェノール、又は炭素原子間の不飽和結合含有チオールを挙げることができる。
【0031】
エポキシ化合物(B)としては例えば、グリシジル基含有エーテル、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物とエピクロルヒドリンとの反応物、フェノール性ヒドロキシ基含有樹脂とエピクロルヒドリンとの反応物、グリシジル基含有イソシアヌレート、エポキシシクロヘキシル基含有化合物、エポキシ基置換シクロヘキシル化合物、又はグリシジルエステル化合物を挙げることができる。
なお、エポキシ化合物(B)は、例えばプラズマ照射により架橋構造を形成する不飽和結合を有さない化合物である。
【0032】
また、化合物(C)のエポキシ基と化合物(D)のプロトン発生基が反応して部分構造(I)と部分構造(II)が形成される。部分構造(I)のR、R、R、R5a、R6a、R1a、及びエステル基の酸素原子は、部分構造(II)のRとR10、又はRとR11の間の炭素原子、又はヒドロキシシクロヘキシル環の環中の炭素元素と結合を形成する。
【0033】
炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)としては例えば、炭素原子間の不飽和結合含有グリシジルエステル化合物、炭素原子間の不飽和結合含有フェノール性ヒドロキシ基含有化合物とエピクロルヒドリンとの反応物、又は炭素原子間の不飽和結合含有フェノール性ヒドロキシ基含有樹脂とエピクロルヒドリンとの反応物が挙げられる。
【0034】
プロトン発生化合物(D)としては例えば、フェノール性ヒドロキシ基含有化合物、カルボン酸含有化合物、アミン含有化合物、チオール含有化合物、又はイミド含有化合物が挙げられる。
なお、プロトン発生化合物(D)は、例えばプラズマ照射により架橋構造を形成する不
飽和結合を有さない化合物である。
【0035】
部分構造(I)に基づく炭素原子間の不飽和結合基と、部分構造(II)に基づくヒドロキシル基の割合がモル比で0.01≦(部分構造(II))/(部分構造(I)+部分構造(II))≦0.8とすることができる。化合物(A)と化合物(B)、又は化合物(C)と化合物(D)との反応が1:1のモル比で起これば、部分構造(I)に基づく炭素原子間の不飽和結合基と、部分構造(II)に基づくヒドロキシル基の割合がモル比で1:1の割合で生成する。しかし、プロトン発生基を有する化合物が炭素原子間の不飽和結合を有していない任意化合物を使用する場合は、生成するヒドロキシル基の割合が増加するが、本発明ではそのモル比が1:4の割合まで得られる。
【0036】
化合物(E)は部分構造(I)と部分構造(II)とをそれぞれ1~1000個の割合で含むことができる。これは単分子化合物からポリマーまで包含するものであり、それぞれが上記範囲の割合を含むものである。
【0037】
本発明に用いられる炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)は例えば以下に例示することができる。
【化3】
【化4】
【化5】
上記化合物は試薬として入手することができる。
本発明に用いられるエポキシ化合物(B)は例えば以下に例示することができる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
式(B-1)はDIC(株)製、商品名EPICLON HP-5000として入手することができる。
式(B-2)は日本化薬(株)製、商品名EPPN-501Hとして入手することができる。
式(B-3)は旭化成エポキシ(株)製、商品名ECN-1229として入手することができる。
式(B-4)は日本化薬(株)製、商品名EPPN-501Hとして入手することができる。
式(B-5)は日本化薬(株)製、商品名NC-2000Lとして入手することができる。
式(B-6)は日本化薬(株)製、商品名NC-3000Lとして入手することができる。
式(B-7)は日本化薬(株)製、商品名NC-7000Lとして入手することができる。
式(B-8)は日本化薬(株)製、商品名NC-7300Lとして入手することができる。
式(B-9)は日本化薬(株)製、商品名NC-3500として入手することができる。
式(B-10)はDIC(株)製、商品名HP-7200Lとして入手することができる。
式(B-11)は(株)ダイセル製、商品名EHPE-3150として入手することができる。
式(B-12)はDIC(株)製、商品名EPICLON HP-4700として入手することができる。
式(B-13)は旭有機材工業(株)製、商品名TEP-Gとして入手することができる。
式(B-14)は(株)ダイセル製、商品名エポリード GT401であり、a、b、
c、dはそれぞれ0又は1であり、a+b+c+d=1である。
式(B-15)は日産化学工業(株)製、商品名TEPIC-SSとして入手することができる。
式(B-16)はナガセケムテック(株)製、商品名EX-411として入手することができる。
式(B-17)はナガセケムテック(株)製、商品名EX-521として入手することができる。
式(B-18)は新日鉄住金化学(株)製、商品名YH-434Lとして入手することができる。
式(B-19)はナガセケムテック(株)製、商品名EX-711として入手することができる。
式(B-20)はDIC(株)製、商品名YD-4032Dとして入手することができる。
式(B-21)はDIC(株)製、商品名HP-4770として入手することができる。
式(B-22)は新日鉄住金化学(株)製、商品名YH-434Lとして入手することができる。
式(B-23)は試薬として入手できる
(B-25)は日本化薬(株)製、商品名FAE-2500として入手することができる。
式(B-26)は日本化薬(株)製、商品名NC-6000として入手することができる。
また、DIC(株)製、商品名EPICLON HP-6000(エポキシ価244g/eq.)を用いることもできる。
【0038】
本発明に用いられる炭素原子間の不飽和結合を含むエポキシ化合物(C)は例えば以下に例示することができる。
【化12】
式(C-1)は四国化成工業(株)製、商品名MA-DGICとして入手することができる。
式(C-3)は四国化成工業(株)製、商品名DA-MGICとして入手することができる。
その他の化合物は試薬として入手することができる。
【0039】
本発明に用いられるプロトン発生化合物(D)は例えば以下に例示することができる。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
上記化合物は試薬として入手することができる。
式(D-23)は旭有機材(株)製、商品名TEP-DFとして入手することができる。
式(D-24)は旭有機材(株)製、商品名TEP-TPAとして入手することができる。
式(D-25)は旭有機材(株)製、商品名TEPC-BIP-Aとして入手することができる。
式(D-26)は旭有機材(株)製、商品名TEP-BOCPとして入手することができる。
式(D-27)乃至式(D-37)は、試薬から調達できる原料を用いたノボラック樹脂である。得られるポリマーの重量平均分子量は1000~100000、又は1000~50000、又は1000~10000の範囲に調整する事ができる。
【0040】
本発明では化合物(E)中に部分構造(II)のヒドロキシル基を有するが、上記ヒドロキシル基の一部は、炭素原子間の不飽和結合を含む上記ヒドロキシル基と反応可能な化合物(G)と反応させることができる。化合物(G)が反応することによりプラズマ反応性が向上する。この反応によっても化合物(E)中で、0.01≦(部分構造(II))/(部分構造(I)+部分構造(II))≦0.8のモル比の範囲にある。
【0041】
化合物(G)としては例えば、炭素原子と炭素原子との不飽和結合を含有する酸ハロゲライド、酸無水物、イソシアネート、若しくはハロゲン化アルキル、又は上記炭素原子間の不飽和結合を含むプロトン発生化合物(A)を挙げることができる。
【0042】
化合物(G)は例えば以下に例示することができる。
【化19】
【0043】
上記式中でXはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を表す。例えば式(G-1)のXは塩素原子が好ましく、式(G-2)のXは塩素原子が好ましく、式(G-7)のXは臭素原子が好ましく、式(G-8)のXは塩素原子が好ましく挙げられる。上記化合物は試薬として入手することができる。
【0044】
本発明に用いる化合物(E)は以下に例示することができる。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
式(E-17)において単位構造(E-17-1)と、単位構造(E-17-2)の割合はモル比で60:40である。
【化26】
【化27】
【0045】
本発明の段差基板被覆膜形成組成物は界面活性剤を含有することができる。前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R30、同R-30N、同R-40LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)を挙げることができる。これらの界面活性剤から選択された1種類を添加してもよいし、2種以上を組合せて添加することもできる。前記界面活性剤の含有割合は、本発明の段差基板被覆膜形成組成物から後述する溶剤を除いた固形分に対して、例えば0.01質量%乃至5質量%である。
【0046】
本発明で化合物(E)を溶解させる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコ-ルモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、キシレン、スチレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2ーヒドロキシプロピオン酸エチル、2ーヒドロキシー2ーメチルプロピオン酸エチル、エトシキ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2ーヒドロキシー3ーメチルブタン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、1-オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1-メトキシ-2-ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、γ-ブチルラクトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノーマルブチルケトン、酢酸イソプロピルケトン、酢酸ノーマルプロピル、酢酸イソブチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、アリルアルコール、ノーマルプロパノール、2-メチル-2-ブタノール、イソブタノール、ノーマルブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチルヘキサノール、1-オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、1-メトキシ-2-ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、イソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルパターンムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N-シクロヘキシル-2-ピロリジノン等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、または2種以上の組合せで使用される。
【0047】
次に本発明の段差基板被覆膜形成組成物を用いた段差基板被覆膜(平坦化膜)形成法について説明する。精密集積回路素子の製造に使用される基板(例えばシリコン/二酸化シリコン被覆、ガラス基板、ITO基板などの透明基板)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により段差基板被覆膜形成組成物を塗布後、ベーク(加熱)してプラズマ照射して被膜を作成する。即ち、段差を有する基板に段差基板被覆膜形成組成物を塗布する工程(i)、及びプラズマを照射する工程(ii)を含み被覆基板が製造される。
【0048】
スピナーを用いて塗布するとき、例えば回転数100~5000で、10~180秒間行って塗布することができる。
【0049】
上記基板はオープンエリア(非パターンエリア)と、DENCE(密)及びISO(粗)のパターンエリアとを有し、パターンのアスペクト比が0.1~10のものを用いることができる。
非パターンエリアとは基板上でパターン(例えば、ホールやトレンチ構造)のない部分
を示し、DENCE(密)は基板上でパターンが密集している部分を示し、ISO(粗)は基板上でパターンとパターンの間隔が広くパターンが点在している部分を示す。パターンのアスペクト比はパターンの幅に対するパターン深さの比率である。パターン深さは通常数百nm(例えば、100~300nm程度)であり、DENCE(密)には数十nm(例えば30~80nm)程度のパターンが100nm程度の間隔で密集した場所である。ISO(粗)は数百nm(例えば200~1000nm程度)のパターンが点在している場所である。
【0050】
ここで、段差基板被覆膜(平坦化膜)の膜厚としては0.01~3.0μmが好ましい。また工程(ia)として、塗布後に加熱することができ、その条件としては70~400℃、又は100~250℃で10秒~5分間、又は30秒~2分間である。この加熱により段差基板被覆膜形成組成物がリフローして平坦な段差基板被覆膜(平坦化膜)が形成される。
【0051】
工程(ii)はプラズマの照射には、フッ素含有ガス、又は酸素と不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ照射を用いることができる。
工程(ii)のプラズマの照射には、レジストパターンのドライエッチング工程に用いられる装置によるエッチングガスによる方法を利用することができる。
このプラズマ照射でプラズマ反応が生じ、架橋が形成され、段差基板被覆膜に溶剤耐性が生じる。
【0052】
この様に形成された段差基板被覆膜(平坦化膜)は、オープンエリアとパターンエリアとのBias(塗布段差)がゼロであることが望ましいが、1~50nm、又は1~25nmの範囲となるように平坦化することができる。オープンエリアとDENCEエリアのBiasは15~20nm程度であり、オープンエリアとISOエリアのBiasは1~10nm程度である。
【0053】
本発明により得られた段差基板被覆膜(平坦化膜)は、その上にレジスト膜を被覆し、リソグラフィーによりレジスト膜を露光と現像してレジストパターンを形成し、そのレジストパターンに従って基板加工を行うことができる。その場合、段差基板被覆膜(平坦化膜)はレジスト下層膜であり、段差基板被覆膜形成組成物はレジスト下層膜形成組成物でもある。
【0054】
本発明の段差基板被覆膜上にレジストを塗布し、所定のマスクを通して光又は電子線の照射を行い、現像、リンス、乾燥することにより良好なレジストパターンを得ることができる。必要に応じて光又は電子線の照射後加熱(PEB:Post Exposure Bake)を行うこともできる。そして、レジストが前記工程により現像除去された部分の段差基板被覆膜をドライエッチングにより除去し、所望のパターンを基板上に形成することができる。
【0055】
上記フォトレジストの露光光は、近紫外線、遠紫外線、又は極端紫外線(例えば、EUV、波長13.5nm)等の化学線であり、例えば248nm(KrFレーザー光)、193nm(ArFレーザー光)、157nm(Fレーザー光)等の波長の光が用いられる。光照射には、レジスト中の光酸発生剤から酸を発生させることができる方法であれば、特に制限なく使用することができ、露光量1~3000mJ/cm、または10~3000mJ/cm、または10~1000mJ/cmによる。
また上記電子線レジストの電子線照射は、例えば電子線照射装置を用いて照射することができる。
【0056】
本発明で段差基板被覆膜形成組成物を使用して形成した段差基板被覆膜を有するレジス
トの現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジーn-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
【0057】
また、現像液としては有機溶剤を用いることができる。例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5~50℃、時間10~600秒から適宜選択される。
【0058】
本発明では、半導体基板に段差基板被覆膜形成組成物により段差基板被覆膜を形成する工程、その上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、レジストパターンにより該段差基板被覆膜をエッチングする工程、及びパターン化された段差基板被覆膜により半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0059】
今後、レジストパターンの微細化が進行すると、解像度の問題やレジストパターンが現像後に倒れるという問題が生じるため、レジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成される段差基板被覆膜にも基板加工時の
マスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。このようなプロセス用の段差基板被覆膜として従来の高エッチレート性レジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つ段差基板被覆膜、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つ段差基板被覆膜や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つ段差基板被覆膜が要求されるようになってきている。また、このような段差基板被覆膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0060】
一方、微細なレジストパターンを得るために、段差基板被覆膜のドライエッチング時にレジストパターンと段差基板被覆膜をレジスト現像時のパターン幅より細くするプロセスも使用され始めている。このようなプロセス用の段差基板被覆膜として従来の高エッチレート性反射防止膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つ段差基板被覆膜が要求されるようになってきている。また、このような段差基板被覆膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0061】
本発明では基板上に本発明の段差基板被覆膜を成膜した後、段差基板被覆膜上に直接、または必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料を段差基板被覆膜上に成膜した後、レジストを塗布することができる。これによりレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐ為にレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。
【0062】
即ち、半導体基板に段差基板被覆膜形成組成物により段差基板被覆膜を形成する工程、その上にケイ素成分等を含有する塗膜材料によるハードマスク又は蒸着によるハードマスク(例えば、窒化酸化ケイ素)を形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、レジストパターンによりハードマスクをハロゲン系ガスでエッチングする工程、パターン化されたハードマスクにより該段差基板被覆膜を酸素系ガス又は水素系ガスでエッチングする工程、及びパターン化された段差基板被覆膜によりハロゲン系ガスで半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0063】
ハロゲンとしてはフッ素、塩素が挙げられる。例えば、ハロゲン含有ガスとしてはテトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C8)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン(CHF)、ジフルオロメタン(CH)、三フッ化窒素、六フッ化硫黄、三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等が挙げられる。
その他のガスとして不活性ガス、一酸化炭素等を混合することができる。不活性ガスとしては例えば窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスが挙げられる。
【0064】
また、化合物(E)はその骨格に光吸収部位を有していてもよい。光吸収部位としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トリアジニル基、シアヌル基、チアジアゾリル基又はチアゾリル基である。
本発明の段差基板被覆膜形成組成物は、反射防止膜としての効果を考慮した場合、光吸収部位が骨格に取りこまれているため、加熱乾燥時にフォトレジスト中への拡散物がなく、また、光吸収部位は十分に大きな吸光性能を有しているため反射光防止効果が高い。
【0065】
本発明で段差基板被覆膜形成組成物は、熱安定性が高く、焼成時の分解物による上層膜への汚染が防げ、また、焼成工程の温度マージンに余裕を持たせることができるものである。
【0066】
さらに、本発明で段差基板被覆は、プロセス条件によっては、光の反射を防止する機能と、更には基板とフォトレジストとの相互作用の防止或いはフォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する膜としての使用が可能である。
【実施例
【0067】
<合成例1>
エポキシ基含有ベンゼン縮合環式化合物(製品名:EPICLON HP-4700、エポキシ価:165g/eq.、DIC(株)製、式(B-12))10.00g、アクリル酸4.37g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.56g、ヒドロキノン0.03gにプロピレングリコールモノメチルエーテル34.91gを加え、窒素雰囲気下、100℃で21時間加熱撹拌した。得られた溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))15g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))15gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。イオン交換樹脂を分離後、化合物(E)溶液が得られた。得られた化合物(E)は式(E-1)に相当し、GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1400であった。
【0068】
<合成例2>
エポキシ基含有ベンゼン縮合環式化合物(製品名:EPICLON HP-4700、エポキシ価:162g/eq.、DIC(株)製、式(B-12))9.00g、N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド9.84g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド1.04g、ヒドロキノン0.02gにプロピレングリコールモノメチルエーテル45.22gを加え、窒素雰囲気下、100℃で25時間加熱撹拌した。得られた溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))20g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))20gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。イオン交換樹脂を分離後、化合物(E)溶液が得られた。得られた化合物(E)は式(E-11)に相当し、GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1900であった。
【0069】
<合成例3>
エポキシ基含有ベンゼン縮合環式化合物(製品名:EPICLON HP-6000、エポキシ価:239g/eq.、DIC(株)製)14.00g、アクリル酸4.24g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.54g、ヒドロキノン0.03gにプロピレングリコールモノメチルエーテル43.89gを加え、窒素雰囲気下、100℃で22時間加熱撹拌した。得られた溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))19g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))19gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。イオン交換樹脂を分離後、化合物(E)溶液が得られた。得られた化合物は、GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは800であった。
【0070】
<合成例4>
エポキシ基含有ベンゼン縮合環式化合物(製品名:RE-810NM、エポキシ価:221g/eq.、日本化薬(株)製、式(B-24))14.00g、アクリル酸4.56g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.59g、ヒドロキノン0.03gにプロピレングリコールモノメチルエーテル44.77gを加え、窒素雰囲気下、100℃で22時間加熱撹拌した。得られた溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))19g、陰イオン交換樹脂(製品名:ア
ンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))19gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。イオン交換樹脂を分離後、化合物(E-23)溶液が得られた。得られた化合物(E)は式(E-23)に相当し、GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは900であった。
【0071】
<比較合成例1>
エポキシ基含有脂肪族ポリエーテル(商品名:EHPE-3150、エポキシ価:179g/eq.、(株)ダイセル製、式(B-11))5.00g、9-アントラセンカルボン酸3.11g、安息香酸2.09g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.62gにプロピレングリコールモノメチルエーテル7.57g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート17.67gを加え、窒素雰囲気下、13時間加熱還流した。得られた溶液に陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))16g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))16gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。イオン交換樹脂を分離後、化合物(F)溶液が得られた。得られた化合物(F)は式(F-1)に相当し、GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4700であった。
【化28】
【0072】
<比較合成例2>
ジフェニルアミン10.00g、3-ヒドロキシジフェニルアミン3.11g、安息香酸17.52g、2-エチルヘキシルアルデヒド24.63g、メタンスルホン酸0.45gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート47.40gを加え、窒素雰囲気下、2時間加熱還流した。得られた溶液を濃アンモニア水/メタノール/水=3/10/10の混合溶液中に滴下し、得られた析出物を60℃で減圧乾燥した。これにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート63.12gを加えて溶解させた後、陽イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス〔登録商標〕550A、ムロマチテクノス(株))42g、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライト〔登録商標〕15JWET、オルガノ(株))42gを加えて、室温で4時間イオン交換処理した。イオン交換樹脂を分離後、化合物(F)溶液が得られた。得られた化合物(F)は式(F-2)に相当し、GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは10700であった。
【化29】
【0073】
<製造例1>
合成例1で得た樹脂溶液(固形分は25.02質量%)4.19gに界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル6.62g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.19gを加え段差基板被覆膜形成組成物の溶液を調製した。
【0074】
<製造例2>
合成例2で得た樹脂溶液(固形分は25.71質量%)6.80gに界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.002g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.20g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート6.98gを加え段差基板被覆膜形成組成物の溶液を調製した。
【0075】
<製造例3>
合成例3で得た樹脂溶液(固形分は25.80質量%)8.13gに界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.002g、プロピレングリコールモノメチルエーテル13.50g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート8.37gを加え段差基板被覆膜形成組成物の溶液を調製した。
【0076】
<製造例4>
合成例2で得た樹脂溶液(固形分は25.71質量%)2.72g、合成例4で得た樹脂溶液(固形分は22.76質量%)3.07gに界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル8.62g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.58gを加え段差基板被覆膜形成組成物の溶液を調製した。
【0077】
<比較製造例1>
比較合成例1で得た樹脂溶液(固形分は23.17質量%)6.04gに界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.63g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.33gを加え段差基板被覆膜形成組成物の溶液を調製した。
【0078】
<比較製造例2>
比較合成例2で得た樹脂溶液(固形分は30.20質量%)4.63gに界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.35g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート13.02gを加え段差基板被覆膜形成組成物の溶液を調製
した。
【0079】
<比較製造例3>
比較合成例1で得た樹脂溶液(固形分は23.17質量%)5.15gに熱架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル(製品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.30g、熱架橋反応触媒としてピリジウニムp-トルエンスルホナート0.01g、界面活性剤(DIC(株)製、品名:メガファック〔商品名〕R-40、フッ素系界面活性剤)0.001g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.76g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.78gを加え段差基板被覆膜形成組成物の溶液を調製した。
【0080】
〔硬化性試験〕
実施例1乃至実施例4として、製造例1乃至製造例4で調製された段差基板被覆膜形成組成物を、それぞれスピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布(スピンコート)した。ホットプレート上で170℃、1分間加熱し、膜厚200nmの被膜(段差基板被覆膜)を形成した。この段差基板被覆膜をサムコ(株)製、プラズマドライエッチング装置RIE-10NRを用い、フッ素系ガス(成分はCF)、又は酸素系ガス(成分はO/N)にてそれぞれドライエッチング(エッチングガスの照射)を行い、膜厚100nmとなるようにエッチバックした。ドライエッチング後の段差基板被覆膜の溶剤剥離性を確認するために、プロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの7対3の混合溶剤を段差基板被覆膜に1分間浸漬し、スピンドライ後に100℃で1分間ベークした。混合溶剤を浸漬する前後の段差基板被覆膜の膜厚を光干渉膜厚計で測定した。
【0081】
比較例1乃至比較例2として、比較製造例1乃至比較製造例2で得られた段差基板被覆膜形成組成物をそれぞれ上記と同様にシリコンウエハー上にスピンコートして加熱し、プラズマドライエッチング装置でドライエッチバックした後、上記の溶剤剥離性試験を行った。
【0082】
また、比較例3として、比較製造例3で得られた段差基板被覆膜形成組成物をシリコンウエハー上にスピンコートし、215℃、1分間加熱し、膜厚200nmの被膜を形成し、プラズマドライエッチング装置でドライエッチバックせず、上記の溶剤剥離性試験を行った。溶剤耐性試験の結果を表1に示す。尚、表1で初期膜厚とは溶剤剥離試験前の膜厚を表す。
【0083】
【表1】
【0084】
上記結果から、実施例1乃至実施例4はフッ素系ガス、酸素系ガスでドライエッチング(エッチングガスの照射)することによって、段差基板被覆膜は溶剤剥離性を示さなかった(すなわち、耐溶剤性を発現した)。一方、比較例1乃至比較例2はフッ素系ガス、酸素系ガスでドライエッチング(エッチングガスの照射)することによって、段差基板被覆膜は耐溶剤性を発現しなかった。すなわち、実施例1乃至実施例4の段差基板被覆膜はドライエッチング(エッチングガスの照射)によって硬化膜を形成することができる。ドライエッチング装置はエッチングガスの照射を伴うためエッチングガスの成分であるプラズマ成分により段差基板被覆膜の硬化が生じたものと考えられる。
尚、比較例3では熱架橋剤を添加することにより、ドライエッチングすることなく耐溶剤性を有する硬化膜を形成した。
【0085】
(段差基板上での平坦化性試験)
段差被覆性の評価として、200nm膜厚のSi基板にトレンチ幅50nm、ピッチ100nmのデンスパターンエリア(D-1)、パターンが形成されていないオープンエリア、トレンチ幅230nm(T-1)、800nm(T-2)のレンチエリアを有する段差基板に膜厚5nmでSiNを蒸着した段差基板上で被覆膜厚の比較を行った。実施例1乃至実施例4として製造例1乃至製造例4で調製された段差基板被覆膜形成組成物を上記基板上に400nm膜厚で塗布、170℃で60秒ベークし、プラズマドライエッチング装置でフッ素系ガス(成分はCF4)、又は酸素系ガス(成分はO2/N2)にてそれぞれドライエッチングを行い、膜厚200nmとなるようにエッチバックした。得られた段差基板に対する段差被覆性を日立ハイテクノロジーズ(株)製走査型電子顕微鏡(S-4800)を用いて断面形状を観察し、D-1、T-1、T-2とオープンエリアの膜厚差を測定することで平坦化性を評価した。
【0086】
比較例3として、比較製造例3で得られた段差基板被覆膜形成組成物を上記段差基板にそれぞれ上記と同様に段差基板上に200nm膜厚で塗布、215℃で60秒ベークした場合の膜厚差を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
上記の結果から、プラズマエッチングでエッチバックすることで硬化膜を形成する実施例1乃至実施例4は、プラズマエッチングでエッチバックせずにベークによって硬化膜を形成した比較例3よりもD-1、T-1、T-2とオープンエリアの膜厚差が小さかった。すなわち、プラズマエッチング(エッチングガスの照射)で硬化膜を形成した実施例1乃至実施例4は、ベークで硬化膜を形成した比較例3よりも良好な平坦化性を発現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
パターンへの充填性が高く、脱ガスや熱収縮が発生しない塗膜形成が可能な平坦化性を有する被膜を基板上に形成するためのプラズマ硬化性段差基板被覆膜形成組成物として利用することができる。