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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20241210BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L23/02 F
H01L31/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023124799
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTイノベーティブデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川尻 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 智浩
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大司
(72)【発明者】
【氏名】菊池 清史
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-049333(JP,A)
【文献】特開2021-118215(JP,A)
【文献】特開2001-230274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージと、
前記パッケージに実装された光回路と、
前記パッケージに実装された1つ以上の電子回路と、
前記光回路および前記1つ以上の電子回路を覆うリッドと
を備え、
前記1つ以上の電子回路の内の1つのチップは、厚さ方向に、第1の接着層、スペーサ、第2の接着層の順に、前記リッドの接着面に固定されており、
前記スペーサは、前記リッド側に前記チップの幅よりも広い幅を有する第1の面と、前記第1の面よりも狭い幅を有する第2の面を有し、
前記リッドは、前記第1の面の幅方向に伸長した前記スペーサの縁部を含む領域に、前記接着面から連続して前記第2の接着層の接着剤を収納する凹部を有すること
を特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記スペーサは、垂直断面において略T字形状を有し、前記第1の面を含み、前記チップの幅方向に延びた前記縁部を有する伸長部分と、前記チップの前記幅よりも狭い前記第2の面を含むベース部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記スペーサは、垂直断面において、厚さ方向に、前記チップの前記幅よりも狭い前記第2の面から、前記第1の面に向かって、幅が徐々に広まる略台形状を有することを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記縁部から前記凹部の内部に向かって、突起を有することを特徴とする請求項2または3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記光回路はシリコンフォトニクスチップであり、前記1つ以上の電子回路の内の前記1つのチップは、トランスインピーダンスアンプ(TIA)であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第2の接着層の接着剤は、8~350pa・s(23℃)の粘度を有する高熱伝導の導電性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記光回路は、前記リッドの最表面より下がって形成された第1の深さの接着面に接着剤によって固定され、
前記チップが固定される前記接着面は、前記第1の深さの接着面からさらに下がって形成された第2の深さの接着面であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。より詳細には、光モジュール内の接着剤を制御する構造に関する。
【0002】
光通信ネットワークを経由したサービスの増大が進み、多数の光機能素子を高密度に集積したデバイスの開発が進められている。光伝送用装置では、複数のチャンネルの光信号処理が可能で、着脱が可能なデジタルコヒーレントトランシーバ(以下、簡単のためトランシーバ)の仕様が規定されている。トランシーバの消費電力やサイズは、標準化団体のOIF(The Optical Internetworking Forum)等によって規格が決定されている。トランシーバ動作の高速化、大容量化、および、小型化、低消費電力化のさらなる要求に応えるため、シリコンフォトニクス技術を利用した、新たな構成の光送受信モジュールの開発が進められている。
【0003】
図1は、シリコンチップを含む光送受信モジュールの構成を示す図である。図1の(a)は、光送受信モジュール20のリッド(蓋)を取り外した状態で、チップ搭載面を見た上面図(x-y面)である。光送受信モジュール20は、所定の変調を受けた光信号を受信して、電気信号のベースバンド信号を出力するとともに、電気信号のベースバンド信号で変調光を生成し出力する。光送受信モジュールは、上述のOIFによるトランシーバ上に搭載され、図示していない1本以上の光ファイバと電気信号のインタフェースを持っている。以下の説明では、光送受信モジュールを光モジュールと簡略化して呼ぶ。
【0004】
光モジュール20は、パッケージ(基板)1の上に、シリコンフォトニクス(Silicon Phonics:SiP)チップ2と、光-電気間の変換および外部インタフェースを行う電子部品が集積されている。SiPチップ2は、Si基板上に、偏波分離器、コヒーレントミキサ、複数の光検出器(PD)、偏波回転器、偏波合成器、光変調器など、光受信器および光変調器の光機能が、1つのチップに集積化されている。電子部品は、変調信号を駆動するためのドライバIC3およびPDからの電流出力を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプ(TransImpedance Amplifier:TIA)4a、4bを含む。他にチップコンデンサ5-1a~5-2b等の電子部品も搭載されている。一例を挙げれば、TIAチップ内に含まれる4系統の信号ラインに対応して、TIA4aでは、DCラインのそれぞれに、コンデンサ群5-1a、5-2aとしてバイパス用のチップコンデンサが配置され得る。
【0005】
図1の(b)は、光モジュール20の全体を覆うリッド(蓋)8を示している。図1の(a)に示したように、光モジュール20内においてSiPチップ2が、面積および高さとも、最大サイズを持っている。ドライバIC3はSiPチップ2よりも小さく、TIA4a、4bは最小サイズを持っている。光モジュール20では、内部に実装された部品を保護し、部品から生じる熱を外部へ放出するため、リッド8がパッケージ全体を覆うように実装されている。図1(b)に示したように、リッド8の外形はパッケージ1の外形に対応する。点線の領域8aは、後述するように、リッドの内側に彫り込んで形成され、ドライバIC3、TIA4を収納する浅い接着面を示している。また、点線の領域8bは、浅い接着面よりさら彫り込んで形成され、SiPチップ2を収納する深い接着面を示している。図1に示した部品配置や接着面領域は、例示的なものである。
【0006】
図2は、TIAを含み、基板面に垂直に切った光モジュール断面構造を示す図である。リッド8が搭載された状態で、図1でドライバIC3およびTIA4aを通るII―II線を含み、基板面に垂直に切った断面(y-z面)を示している。光モジュール20は、ボールグリッドアレイ(BGA)9によって、トランシーバ上に搭載される。リッド8は、例えばアルミなどの材料で構成された板状の1つの面に、異なる2種類の深さの接着面を持つ。最も高いSiPチップ2に対応する領域の深い接着面と、図2に示した、より低いドライバIC3、TIA4を収納する浅い接着面22によって空間21が形成されている。異なる高さの2つの接着面は、パッケージ1の面上に搭載されるチップ、IC、電子部品を収納する空間を区画する。内部部品の保護と放熱が実現される限り、接着面で形成される空間21の形状は、パッケージ1上の部品配置に応じて任意で良い。
【0007】
高さの異なる3種類のチップのそれぞれに対して、対応する深さの3つの接着面をリッドに形成することも可能だが、接着面の加工精度や組立精度の制限もあり、2つの異なる深さの接着面が形成されている。図2の断面図を参照すれば、ドライバIC3は、リッド8の接着面22に接着剤によって直接固定されているのに対して、より薄いTIA4は、スペーサ7を介して接着面22に接着剤で固定される。
【0008】
図3は、TIAの周辺を拡大した基板面に垂直な光モジュール断面構造を示す図である。図2のIIIの領域を拡大し、リッド8およびパッケージ1の一部を切り取って示している。TIA4は、他の2つのチップに比べて非常に薄いため、スペーサ7を介在させて高さを調整し、スペーサ7とリッドの接着面22を接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2001-230274号公報
【文献】特開2012-146363号公報
【文献】特開2015-204356号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】OIF, Implementation Agreement for the High Bandwidth Coherent Driver Modulator (HB-CDM), [online], July 15,2021, [令和5年3月20日検索],インターネット<URL: https://www.oiforum.com/wp-content/uploads/OIF-HB-CDM-02.0.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、スペーサを介してTIAおよびリッドを固定する場合、スペーサと接着面の間の接着剤の制御が難しく、接着剤がスペーサ周囲にはみ出す問題があった。スペーサ7は、例えば窒化アルミ等の高熱伝導材料によって構成され、高熱伝導性の導電性接着剤を介して接着面22に放熱し、リッド8と共にヒートシンクの役割を有している。光モジュールで発熱量が最も大きい要素はドライバIC3であり、ドライバIC3を接着面22に密着させて、効率良くリッド8に放熱する必要がある。したがって、リッド8を光モジュールに搭載する際は、ドライバIC3と接着面22の間を、最適量の接着剤で固定する。組立工程では、パッケージ1に対するリッド8の高さ位置は、ドライバIC3と接着面22によって規定されることになる。
【0012】
ドライバICよりは発熱量が少ないものの、TIA4についても十分な放熱が必要である。まずスペーサ7とTIA4を接着剤12によって接着した後、リッド8がドライバIC3に搭載されるのと同時に、スペーサ7の上面と接着面22が、接着剤11で固定される。光モジュール20の組立では、BGA10の高さ、上下2つの接着剤層の厚さ、TIA、スペーサの厚さの、高さ方向(z方向)の累積誤差を考慮しなければならない。累積誤差のばらつきを考慮して、リッド8の接着面22との間隔は、ドライバIC3と接着面22との間隔よりも、広く設定される。
【0013】
光モジュール内では、高熱伝導性を持つ導電性接着剤として、かなり粘度の高いものが利用されている。具体的には、利用される接着剤の粘度は、8~350pa・s(23℃)のものが利用されている。接着剤の粘度が高い分、接着面の上に塗布する量を制御することは難しく、接着剤の塗布量には、ばらつきが生じ得る。接着剤は、確実な放熱のために、接着領域の所定の割合(例えば80%)以上に広がることが必要である。リッド8を搭載する工程で、スペーサ7とリッド接着面22の間隔が広いほうに偏った場合でも、接着剤が接着面からはみ出る(100%以上)ように、十分な量の接着剤が塗布される。スペーサ7とリッド8の接着面22との間を接着剤で確実に充たす必要があり、接着剤の量は多めに設定せざるを得ない。
【0014】
スペーサ7はTIAの外形の領域(x-y面)よりも一回り小さいサイズを持っているので、スペーサ7の下面の接着剤12の余剰分は、TIA上面でスペーサの周囲に留まる。一方、スペーサ7の上面の接着剤11の余剰分は、接着面22に沿ってスペーサ7の周囲にはみ出ることになる。上述の組立時の累積誤差によって、スペーサ7と接着面22との間隔が狭くなり、かつ、接着剤量が多い方に偏った場合、はみ出す接着剤12の量が多くなる。このような状態では、TIA4の周囲に配置されたチップコンデンサ5aの電極と接着剤12の接触箇所13を生じる可能性があった。チップコンデンサ5aの電極と接着剤12が接触すると、接着剤は導電性を有しているためチップコンデンサ5aのショートを誘発する可能性がある。
【0015】
図1および図3に示したように、TIA4は、SiPチップ上のPDからの差動形式の電流信号(I信号、Q信号)の電流電圧変換を実施し、バイパスコンデンサとしてチップコンデンサが配置される。スペーサ7の上面からはみ出してくる接着剤12と隣接する部品との接触を検出するため、X線による検査工程が必須となる。従来技術の光モジュールでは、スペーサを介して実装されるTIAの周囲にはみ出した接着剤と電子部品との接触のために、製品歩留まりの低下や、検査工程の高コスト化が問題となっていた。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、光モジュール内で使用される接着剤を制御して、光モジュールの歩留まりを向上させ、製造コストを下げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの実施態様は、パッケージと、前記パッケージに実装された光回路と、前記パッケージに実装された1つ以上の電子回路と、前記光回路および前記1つ以上の電子回路を覆うリッドとを備え、前記1つ以上の電子回路の内の1つのチップは、厚さ方向に、第1の接着層、スペーサ、第2の接着層の順に、前記リッドの接着面に固定されており、前記スペーサは、前記リッド側に前記チップの幅よりも広い幅を有する第1の面と、前記第1の面よりも狭い幅を有する第2の面を有し、前記リッドは、前記第1の面の幅方向に伸長した前記スペーサの縁部を含む領域に、前記接着面から連続して前記第2の接着層の接着剤を収納する凹部を有することを特徴とする光モジュールである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、歩留まりを向上し、低コストの光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】シリコンチップを含む光送受信モジュールの構成を示した図である。
図2】TIAを含み基板面に垂直に切った光モジュール断面を示した図である。
図3】TIA周辺を拡大した基板面に垂直な光モジュール断面を示した図である。
図4】本開示の光モジュールのTIA周辺の断面構造を拡大して示した図である。
図5】本開示の光モジュールにおけるスペーサをTIA側から見た斜視図である。
図6】TIAおよびリッド接着面に形成される凹部の位置関係を示した図である。
図7】本開示の光モジュールのスペーサの作製工程を説明する図である。
図8】本開示の光モジュールのスペーサ形状と凹部の関係を説明する図である。
図9】実施形態2の光モジュールのTIA周辺の断面構造を示した図である。
図10】実施形態3の光モジュールのTIA周辺の断面構造を示した図である。
図11】実施形態4の光モジュールのTIA周辺の断面構造を示した図である。
図12】実施形態5の光モジュールのTIA周辺の断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の光モジュールは、光回路と1つ以上電子回路チップを備えており、1つの電子回路チップは、スペーサを介して、接着剤によって光モジュールのリッドに接着される。スペーサは、厚さ方向でリッド側に、隣接部品に向かって延びた縁部を有し、その電子回路チップのサイズを越えた幅の広い面を有する。さらにリッドは、スペーサとの接着面の延びた縁部に概ね一致する位置に、余剰接着剤を収納する凹部を有する。スペーサとリッドの接着面の間の余剰接着剤は、リッドの凹部内に導かれ、接着剤と隣接する部品との接触を防止する。以下、本開示の光モジュールの構造と製造工程を改善する効果、様々な実施形態を説明する。
【0021】
[実施形態1]
図4は、本開示の光モジュールのTIA周辺を拡大した基板面に垂直な断面構造を示した図である。典型的な構成の実施形態1の光モジュール100は、スペーサ101を介してTIA4とリッド8を固定する構造に特徴があり、光モジュールの全体構成、内部の部品構成や配置は、図1図3で説明した従来技術の光モジュールと変わりは無い。
【0022】
一例として光モジュール100も、図1に示した部品配置で、SiPチップ2、ドライバIC3、TIA4a、4bがパッケージ1上に搭載されているものとして、詳細は省略する。TIAの周辺には、チップコンデンサなどの隣接する電子部品も配置されている。光モジュール100は、パッケージおよび内部部品の全体を覆うようにリッド8が実装されている。また図2に示したようにドライバIC3とTIA4を通る断面(y-z面)を見れば、ドライバIC3は、リッド8の接着面22に直接に接着される。TIA4は、第1の接着層12、第2の接着層11の上下2つの接着層に挟まれたスペーサ101を介して、リッド8の接着面22に固定されているのも図3の構成と同様である。一方、スペーサ101は、従来技術におけるスペーサ7とは異なる形状を持っている。以下、従来技術の光モジュールとは異なるTIA周辺の構造に焦点を当て説明する。
【0023】
TIA4は、上下の2つの接着層に挟まれたスペーサ101を介して、リッド8の接着面22に固定されているのも図3の構成と同様である。
【0024】
再び図4を参照すれば、光モジュール100において、TIA4上で接着剤12によって固定されるスペーサ101は、隣接する部品を含む断面(y-z面)を見たとき、TIAに隣接するチップコンデンサ5a、5bのある側に向かって延びた縁部を持ち、T字状の断面を持っている。図3に示した従来技術のスペーサ7は、断面形状は単純な矩形であったのに対して、本開示の光モジュール100では、スペーサ101は、厚さ方向(z軸)におけるリッド8側の部分がTIA4の領域を越えて、隣接する部品5a、5bの側(y軸方向)に延びている。スペーサ101の厚さ方向(z軸)でTIA4側の部分は、従来技術の構成と同様に、TIA4の外形の領域よりも内側に納まっている。
【0025】
したがって、スペーサ101は、隣接する部品を含む断面を見たとき、高さ方向でリッド側に、隣接部品に向かって延びた縁部を持っていると見ることができる。この延びた縁部があることによって、スペーサはTIA4の幅を越えた幅を持つ。また、スペーサ101は、隣接する電子部品を含む断面で見たときに、リッド側にTIAよりも広い幅の「第1の面」を持ち、TIA側に第1の面よりも狭い幅の「第2の面」を持つと見ることもできる。スペーサの作製法、より詳細な構成、変形例は、図7および図8とともに後述する。隣接する部品を含む断面で見たときに、スペーサ101のリッド側の幅の広い部分を伸長部分、スペーサ101のTIA側の幅の狭い部分をベース部分と呼ぶ。伸長部分とベース部分は一体のものであってもよいし、別個の部分であっても良い。
【0026】
光モジュール100は、上述の延びた縁部を持つスペーサ101に加えて、リッド8の接着面22に、スペーサの延びた縁部を内包する位置に、溝状の凹部102-1、102-2を持っている。スペーサ101の延びた縁部は、接着面22とスペーサ101の間の接着剤の余剰分11をスペーサ101の上面に沿って凹部102-1、102-2内に導く。このため、はみ出した接着剤11は、隣接するチップコンデンサ5a、5bと接触することが無い。接着剤量のばらつきや、光モジュール組立時の累積誤差の影響を受けることなく、スペーサのリッド側から隣接する部品へ向かう、接着剤のはみ出しを防ぐことができる。
【0027】
図4は、図1に示した例示的な部品配置の光モジュールにおいて、II-II線を通る断面について、TIA4aの周辺を拡大したものである。図1のもう1つのTIA4bを通り、II-II線に垂直な線で切った断面も、図4と同様となる。したがって、本開示の光モジュール100では、スペーサを介して接続される電子部品チップ(例えばTIA)に対する隣接する部品の位置関係にしたがって、スペーサの形状を柔軟に修正できることに留意されたい。
【0028】
図5は、本開示の光モジュールにおけるスペーサをTIA側から見た斜視図である。図5の(a)は、図4に示した断面がT字型のスペーサ101-1を、隣接するチップコンデンサ群5-1、5-2とともに示している。スペーサ101-1は、隣接するチップコンデンサが配置されている2辺の側において、リッドと接着されることになる図面で上側に、隣接部品に向かって延びた縁部を持っている。すなわち、スペーサ101-1は、隣接するチップコンデンサ群を含む断面(y-z面)で見たとき、幅の広い第1の面103-1と、第1の面よりも幅の狭い第2の面103-2を持っていることがわかる。
【0029】
図4で説明したように、スペーサ101の隣接する部品に向かって延びた縁部は、リッド側の接着剤の余剰分のはみ出しを防ぐよう機能する。スペーサの構成は、図1に例示したようなTIA4の2つの辺に隣接する部品5-1a、5-2aが配置される場合だけに限られない。例えば、TIAの周囲の4辺に隣接する部品が配置される場合には、図5の(b)に示したスペーサ101-2のように、チップコンデンサ群5-1~5-4のある4辺において、隣接部品に向かって延びた縁部を持つこともできる。すなわち、スペーサ101-2は、全周に渡って、隣接する部品に向かって延びた縁部を持っている。
【0030】
図6は、TIAと、リッドの接着面に形成される凹部の位置関係を示した図である。図6は、リッドが搭載された状態で光モジュールの上面(x-y面)を見た透視図であって、点線4はTIAの外形の領域を、2点鎖線の5-1~5-4は、TIAに隣接するチップコンデンサ群の位置を示している。さらにハッチング部分102-1、102-2は、リッドに形成された凹部を示している。図6の(a)は、隣接する部品がTIA4の2辺に沿って配置されている図5の(a)のスペーサ101-1の場合に対応する。凹部は、リッド8の接着面22に形成された2本の溝102-1、102-2として形成される。また図6の(b)は、隣接する部品がTIA4の全周の4辺に沿って配置されている図5の(b)のスペーサ101-2の場合に対応する。この場合、凹部はリッド8の接着面22に形成され、TIA4の外周と一致する矩形状の1周の溝102である。
【0031】
再び図4を参照すれば、スペーサ101は、高さ方向におけるリッド8側に、TIAを越えて外側へ、すなわち隣接する部品側へ延びた縁部を有することで、はみ出した接着剤11を、凹部102-1、102-2内に導くことができる。はみ出した接着剤が、隣接する部品であるチップコンデンサ等とショートを起こす可能性は無くなるため、従来必要であった煩雑なX線検査が不要となる。光モジュールの歩留まりの向上も可能となる。図3に示した従来技術の光モジュールに対して、スペーサ形状をわずかに変更し、リッドの接着面に凹部を形成するだけで、接着剤の制御性を各段に向上させることができる。
【0032】
したがって本開示の光モジュールは、パッケージ1と、前記パッケージに実装された光回路2と、前記パッケージに実装された1つ以上の電子回路3、4と前記光回路および前記1つ以上の電子回路を覆うリッド8とを備え、前記1つ以上の電子回路の内の1つのチップ4は、厚さ方向に、第1の接着層12、スペーサ101、第2の接着層11の順に、前記リッドの接着面22に固定されており、前記スペーサは、前記リッド側に前記チップの幅よりも広い幅を有する第1の面103-1と、前記第1の面よりも狭い幅を有する第2の面103-2を有し、前記リッドは、前記第1の面の幅方向に伸長した前記スペーサの縁部を含む領域に、前記接着面から連続して前記第2の接着層の接着剤を収納する凹部102-1、102-2を有するものとして実施できる。
【0033】
図4の光モジュールでは、リッド8の接着面22は、リッド8の一方の面を彫り込んで(座繰り加工で)形成される、異なる深さの2つの接着面の内で、浅い方の接着面である。しかしながら、光モジュールにおける電子回路チップの数、構成、サイズが異なれば、接着面22は、図4の構成だけに限られない。リッドの一方の面に、彫り込んで形成される接着面を1つのみとし、リッドの最表面を、放熱が必要な電子部品チップのもう1つの接着面として、スペーサ101を介してTIAを接着することもできる。TIA4およびスペーサ101と、リッドの接着面22との関係は、リッド8の内側面における接着面の位置に依らない。
【0034】
図7は、本開示の光モジュールにおけるTIAのスペーサの作製工程を説明する図である。各図には、完成時のスペーサの上面と側面に相当する2つの面を見た構成を示している。(a)に示した工程1では、AlNなどの高熱伝導材料を短冊状の板110に加工する。次に(b)に示した工程2では、短冊状の板110の一方の面の破線の一部111を、切削加工によって除去して、等間隔の溝112を形成する。次に(c)に示した工程3では、形成された溝112の中央位置の破線113で、ダイシング等でスペーサへ切断する。最後に(d)に示した工程4のように、図5の(a)に示したのと同じ形状の、切断されたスペーサ101が得られる。
【0035】
上述の作製手順を修正することで、図5の(b)に示したように、4辺において、隣接部品に向かって延びた縁部を持つスペーサとすることもできる。上述の作製工程では、ベース材料となる板材を切削することでスペーサを得ていたが、2枚の板材を張りつけて作製することも可能である。したがって、図7の切削加工に基づくスペーサの作製方法は、一例に過ぎないことに留意されたい。
【0036】
図8は、本開示の光モジュールにおけるスペーサ形状とリッドに形成される凹部の関係を説明する図である。図8の(a)は、図4の実施形態1の光モジュール100の構成に対応している。既に説明をしたように、スペーサ101は、厚さ方向におけるリッド8側の伸長部分101aと、TIA側のベース部分101bとから構成されていると見ることもできる。図4で説明したように、隣接する部品を含む断面を見たときの、TIAよりも広いスペーサの第1の面(上面)の幅をL1とする。第1の面よりも狭い第2の面(下面)の幅をL2とする。
【0037】
スペーサのリッド側の伸長部分101aの縁部は、リッド8に形成された2つの凹部102-1、102-2の中に納まるように位置しているのが好ましい。具体的には、スペーサの延びた縁部の両端間の幅L1が、2つの凹部間の最短距離d2と最大距離d1の間にあれば良い。スペーサの幅L1が、凹部間の最小距離d2よりも狭ければ、接着剤が、リッド8の接着面からTIAおよび隣接する部品側に向かってはみ出す。また、スペーサの幅L1が、凹部間の最大距離d1よりも広ければ、縁部と隣接する部品とが著しく近くなってしまう。放熱効果も考慮して、図8の(a)のように、スペーサの端が、凹部の概ね中央となるような位置関係となるように、スペーサおよび凹部を構成すれば良い。
【0038】
凹部間の最短距離d2は、スペーサ101との間で十分な接触面積を確保するために、図示していないTIAの幅からやや狭い程度とするのが好ましい。図4に示したように、スペーサのTIA側の部分(図8でベース部分101b)の幅L2を、TIAの周囲を接着剤の溜まりとするために、TIAの幅よりわずかに狭くしている。TIA4からのスムーズな放熱経路を形成する観点からも、スペーサのベース部分101bの幅L2と、凹部間の最小距離d2を、同程度の長さとするのが好ましい。
【0039】
図8の(b)は、接着剤のはみ出しを防止するためのスペーサの別の構成例を示している。図8の(b)のスペーサ101-3は、スペーサの伸長部分の延びた縁部から、さらに厚さ方向に凹部の内側に向かって突起部101cを持っている。この突起部101cによって、スペーサと接着面22の間からはみ出してくる接着剤を、凹部の奥に向かって導くことができる。スペーサ101-3の突起部101cは、図7に示したスペーサの作製工程を追加・修正すれば、作製可能である。
【0040】
以上の説明では、実装上で考慮すべき隣接する部品は、断面を見たときTIAの両側に在って、スペーサの断面形状およびリッドの凹部の構成も、TIAの中心線に対して対称である。しかしながら、TIAチップ内の異なる回路配置や、TIAではない電子部品チップの場合は、チップの一方の側のみに隣接する部品がある場合もある。このような場合は、一方の側のみに伸長部分を持つ、非対称なスペーサ構成も可能である。接着剤の挙動の予測性や、非対称性に起因する組立上の問題、スペーサの作製工程も考慮すれば、上述のような対称な構成がより好ましい。
【0041】
以下では、図4に示した実施形態1の光モジュールを修正した別の実施形態について説明する。
【0042】
[実施形態2]
図9は、実施形態2の光モジュールのTIA周辺を拡大した基板面に垂直な断面構造を示した図である。光モジュール200の基本的な構造は、図1図3の従来技術の光モジュール20、図4の実施形態1のTIA周辺の断面構成と同様あって、スペーサ201の構成のみが実施形態1の光モジュール100と相違する。
【0043】
スペーサ201は、先の図8の(b)で示した突起部を持つスペーサ101-3に対応する。すなわち、スペーサ201は、厚さ方向(z軸)についてリッド8側の幅の広い伸長部分とTIA4側のベース部分を備え、概略T字状の断面形状(y-z面)を有する。伸長部分において、隣接する部品であるチップコンデンサ5a、5bのある側に向かって延びた縁部を持つ。スペーサ201は、さらに伸長部分の縁部からリッドに形成された凹部102-1、102-2の内部側に向かって形成された突起部202を持っている。突起部202があることで、スペーサ201のリッド側の接着面からはみ出した接着剤11は、凹部の奥に導かれる。実施形態1のT字形状のスペーサ101よりも接着剤の制御性がさらに良くなる。
【0044】
[実施形態3]
図10は、実施形態3の光モジュールのTIA周辺を拡大した基板面に垂直な断面構造を示した図である。光モジュール300でも、スペーサ301のみが、実施形態1におけるスペーサ101、実施形態2におけるスペーサ201と相違する。前述のスペーサ101、201は、厚さ方向(z軸)について、リッド側の幅の広い伸長部分とTIA4側の幅の狭いベース部分を2つの部分を含んでいた。すなわち、TIAよりも幅の広い第1の面と、第1の面よりも幅の狭い第2の面を有していた。TIAよりも幅の広い面を含む、幅の広い伸長部分が、リッド側の接着面から、隣接する部品に向かって接着剤がはみ出すのを阻止することができた。
【0045】
光モジュール300のスペーサ301は、隣接する部品を含む断面(y-z面)において、逆台形状を有しており、リッド側のTIAよりも幅の広い第1の面と、TIA側の第1の面よりも幅の狭い第2の面を持っている。厚さ方向(z軸)に、TIA4からリッド8に向かって幅が広くなる形状でも、TIAよりも幅の広いリッド側の第1の面が、リッド側の接着面から、隣接する部品に向かって接着剤がはみ出すのを阻止する。図10では、スペーサ301の断面形状は、TIA4からリッド8に向かって直線的に幅が増加しているが、幅の変化率は任意であって曲線的な変化でも良い。
【0046】
[実施形態4]
図11は、実施形態4の光モジュールのTIA周辺を拡大した基板面に垂直な断面構造を示した図である。光モジュール400におけるスペーサ401は、実施形態1の断面がT字型のスペーサ101と同じである。
【0047】
実施形態4の光モジュール400は、リッド8において、スペーサの延びた縁部の位置に対応した凹部402-1、402-5に加え、スペーサ401の上方に、追加の凹部402-2~402-4を形成している。凹部を追加することで、接着剤の余剰分が、追加した凹部内にも収納され、隣接する部品側へのはみ出しが軽減される。ただし放熱面の面積が小さくなるため、この点の配慮は必要である。
【0048】
[実施形態5]
図12は、実施形態5の光モジュールのTIA周辺を拡大した基板面に垂直な断面構造を示した図である。光モジュール500では、他の実施形態におけるリッド8の凹部を省略している。その代わりに、スペーサ501の延びた縁部の手前側に、凹部を持っており、この凹部に余剰分の接着剤を収容できる。リッドの凹部のための加工が不要となる分、より低コストとなり、接着剤の制御性も向上させることができる。
【0049】
上述の各実施形態の説明では、光モジュール内にドライバICおよびTIAの2種類の電子回路チップが含まれている構成において、最も高さの低いTIAがスペーサを介して放熱する場合を例に示した。しかしながら、電子回路チップの集積の態様が変われば、TIAおよびドライバICが1つのチップに集積化されたり、他の電気信号処理の機能とTIAまたはドライバICが集積化されたりする場合もある。そのような場合でも、スペーサを介した放熱が必要な電子回路チップ周辺で、接着剤の制御性を向上させる効果に変わりない。
【0050】
以上詳細に述べたように、本開示の光モジュールは、光モジュール内で使用される接着剤の制御性を良くして、接着剤のはみ出しによって生じるショート不良を防止する。光モジュールの製造歩留まりを上げて、検査工程を簡略し、低コスト化を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、一般的に光通信に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
2 SiPチップ
3 ドライバIC
4、4a、4b TIA
5a、5b チップコンデンサ
7、101、201、301、401、501 スペーサ
8 リッド
9、10 BGA
11、12 接着剤
20、100、200、300、400、500 光モジュール
22 接着面
102、102-1、102-2、402-1~402-5 凹部
112 溝
【要約】
【課題】従来技術の光モジュールでは、スペーサを介して実装されるTIA周囲にはみ出した接着剤のため、製品歩留まりの低下、検査工程の高コスト化が問題となっていた。
【解決手段】本開示の光モジュールは、光回路と1つ以上電子回路チップを備えており、1つの電子回路チップは、スペーサを介して、接着剤によって光モジュールのリッドに接着される。スペーサは、厚さ方向でリッド側に、隣接部品に向かって延びた縁部を有し、その電子回路チップのサイズを越えた幅の広い面を有する。さらにリッドは、スペーサとの接着面の延びた縁部に概ね一致する位置に、余剰接着剤を収納する凹部を有する。スペーサとリッドの接着面の間の余剰接着剤は凹部内に導かれ、接着剤と隣接する部品との接触を防止する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12