(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】円柱状またはリング状の波長変換部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20241211BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20241211BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20241211BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20241211BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08
G03B21/14 A
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2020198430
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 武志
(72)【発明者】
【氏名】太田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】光永 隆之
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151350(JP,A)
【文献】特開2016-089181(JP,A)
【文献】特開2017-148874(JP,A)
【文献】特開2011-165687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0057375(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102720957(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
G03B 21/14
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の波長変換部材を保持体上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材に切削加工処理を施して、円柱状の波長変換部材の前駆体
と前記前駆体に連続する波長変換部材のボディ部分とから構成される波長変換部材ブロックを形成する工程と、
前記波長変換部材ブロックの形成後に前記円柱状の波長変換部材の前駆体と前記ボディ部分とを互いに分離させる工程と、
前記円柱状の波長変換部材の前駆体を個片化する工程と、
を含み、
前記切削加工処理として、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う、円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項2】
前記ボディ部分と前記円柱状の波長変換部材の前駆体との分離を、研削部材を用いた研削加工処理により行う、請求項1に記載の円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項3】
板状の波長変換部材を保持体上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材に切削加工処理を施して、円柱状の波長変換部材の前駆体の一部とボディ部分とから構成される波長変換部材ブロックを形成する工程と、
前記ボディ部分に前記前駆体の残りの部分を形成するとともに前記ボディ部分を除去することにより前記円柱状の波長変換部材の前駆体を形成する工程と、
前記円柱状の波長変換部材の前駆体を個片化する工程と、
を含み、
前記切削加工処理として、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う、円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項4】
板状の波長変換部材をワックスが配置された保持体上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材の表側主面および裏側主面の両方に切削加工処理を施して、前記ワックスと一体となった円柱状の波長変換部材の前駆体を含む波長変換部材ブロックを形成する工程と、
前記ワックスを除去して前記円柱状の波長変換部材の前駆体を個片化する工程と、
を含み、
前記切削加工処理として、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う、円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項5】
前記ワックスを除去して個片化させた前記円柱状の波長変換部材の前駆体が所定高さとなるように、前記円柱状の波長変換部材の前駆体にダイシングを施す、請求項
4に記載の円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項6】
板状の波長変換部材をワックスが配置された保持体上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材の表側主面に切削加工処理を施して、前記ワックスと一体となった円柱状の波長変換部材の前駆体を含む波長変換部材ブロックを形成する工程と、
得られた前記波長変換ブロックの裏側主面に研削加工処理を行い、中心軸が前記保持体の主面に直交する円柱状の波長変換部材の前駆体を形成する工程と、
前記ワックスを除去して前記円柱状の波長変換部材の前駆体を個片化する工程と、
を含み、
前記切削加工処理として、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う、円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項7】
前記切削加工処理により前記ワックスと一体となった円柱状の波長変換部材の前駆体と前記前駆体に連続する波長変換部材のボディ部分とから構成される前記波長変換部材ブロックを形成し、前記波長変換部材ブロックの形成後に前記円柱状の波長変換部材の前駆体と前記ボディ部分とを互いに分離させる、請求項6に記載の円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項8】
前記円柱状の波長変換部材の前駆体が所定高さとなるように、前記ワックスと前記円柱状の波長変換部材の前駆体が一体化された状態で研削加工処理を行う、請求項
6に記載の円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項9】
前記ワックスを除去した前記円柱状の波長変換部材の前駆体が所定の径寸法を有するように前記円柱状の波長変換部材の前駆体に研削処理を施す、請求項
4から8のいずれか一項に記載の円柱状の波長変換部材の製造方法。
【請求項10】
複数の板状の波長変換部材を
積層した板状の波長変換部材の積層体を基材上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材
の積層体に対して
一括して略同心円でかつ互いに径寸法の異なる第1の切削加工処理と第2の切削加工処理をそれぞれ略円周状に施すことで、リング状の波長変換部材の前駆体を形成する工程と、
を含み、
前記第1の切削加工処理および前記第2の切削加工処理においてそれぞれ、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う、リング状の波長変換部材の製造方法。
【請求項11】
板状の波長変換部材を基材上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材に対して略同心円でかつ互いに径寸法の異なる第1の切削加工処理と第2の切削加工処理をそれぞれ略円周状に施すことで、リング状の波長変換部材の前駆体を形成する工程と、
を含み、
前記第1の切削加工処理および前記第2の切削加工処理においてそれぞれ、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行い、
前記第1の切削加工処理または前記第2の切削加工処理の少なくとも一方を行う際に、前記基材の一部を共削り加工する、リング状の波長変換部材の製造方法。
【請求項12】
板状の波長変換部材をガラス基材上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材に対して略同心円でかつ互いに径寸法の異なる第1の切削加工処理と第2の切削加工処理をそれぞれ略円周状に施すことで、リング状の波長変換部材の前駆体を形成する工程と、
を含み、
前記第1の切削加工処理および前記第2の切削加工処理においてそれぞれ、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う、リング状の波長変換部材の製造方法。
【請求項13】
前記板状の波長変換部材に前記第1の切削加工処理を施して第1の円盤状の波長変換部材を形成した後、前記第1の円盤状の波長変換部材に前記第2の切削加工処理を施して、前記第1の円盤状の波長変換部材の径寸法よりも小さい径寸法の第2の円盤状の波長変換部材を前記第1の円盤状の波長変換部材から形成する、請求項1
0から12のいずれか一項に記載のリング状の波長変換部材の製造方法。
【請求項14】
前記リング状の波長変換部材の前駆体にスライス加工を行って、複数のリング状の波長変換部材を得る、請求項1
0から13のいずれか一項に記載のリング状の波長変換部材の製造方法。
【請求項15】
前記板状の波長変換部材の積層体の側面に対して一括した前記第1の切削加工処理を施して少なくとも2枚の第1の円盤状の波長変換部材の積層体を形成し、前記第1の円盤状の波長変換部材の積層体に前記第2の切削加工処理を施して、少なくとも2枚のリング状の波長変換部材を得る、請求項1
0に記載のリング状の波長変換部材の製造方法。
【請求項16】
前記粗加工と前記仕上げ加工との間に中仕上げ加工を更に行う、請求項1から1
5のいずれか一項に記載に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項17】
前記波長変換部材がYAG蛍光体を含んで成る、請求項1から1
6のいずれか一項に記載の波長変換部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、円柱状またはリング状の波長変換部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の発光素子を備える発光装置として、例えば、特許文献1に開示されたように、発光素子と、発光素子の上に配置された波長変換部材と、を組み合わせたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記波長変換部材としては、発光装置の用途に応じて寸法精度の高い円柱状やリング状のものが求められる場合がある。本発明の実施形態は、寸法精度の高い円柱状またはリング状の波長変換部材を効率よく製造可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
板状の波長変換部材を保持体上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材に切削加工処理を施して、円柱状の波長変換部材の前駆体を含む波長変換部材ブロックを形成する工程と、
前記円柱状の波長変換部材の前駆体を個片化する工程と、
を含み、
前記切削加工処理として、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う、円柱状の波長変換部材の製造方法である。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
板状の波長変換部材を基材上に保持する工程と、
保持した前記板状の波長変換部材に対して略同心円でかつ互いに径寸法の異なる第1の切削加工処理と第2の切削加工処理をそれぞれ略円周状に施すことで、リング状の波長変換部材の前駆体を形成する工程と、
を含み、
前記第1の切削加工処理および前記第2の切削加工処理においてそれぞれ、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う、リング状の波長変換部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に従えば、寸法精度の高い円柱状またはリング状の波長変換部材を効率よく製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(板状の波長変換部材の保持工程)の模式図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(板状の波長変換部材の切削加工処理(粗加工+仕上げ加工)工程)の模式図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(波長変換部材ブロックの反転工程)を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(波長変換部材ブロックの研削工程)を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(波長変換部材ブロックの研削工程)を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(波長変換部材ブロックの研削工程)を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(円柱状の波長変換部材の前駆体の個片化工程)の模式図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(板状の波長変換部材の保持工程)の模式図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(板状の波長変換部材の切削加工処理(粗加工+仕上げ加工)工程)の模式図である。
【
図10】本発明の実施形態2に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(波長変換部材ブロックの反転工程)を模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(波長変換部材ブロックの切削加工処理(粗加工+仕上げ加工)工程)の模式図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(円柱状の波長変換部材の前駆体の径調整工程)の模式図である。
【
図13】本発明の実施形態2に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(円柱状の波長変換部材の前駆体の個片化工程)の模式図である。
【
図14】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(板状の波長変換部材の準備工程)を模式的に示す斜視図である。
【
図15】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(板状の波長変換部材の保持工程)を模式的に示す斜視図である。
【
図16】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(板状の波長変換部材の切削加工処理(粗加工+仕上げ加工)工程)を模式的に示す斜視図である。
【
図17】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(挿入孔付き保持体の準備工程)を模式的に示す斜視図である。
【
図18】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(挿入孔付き保持体への波長変換部材ブロックの一部挿入開始工程)を模式的に示す斜視図である。
【
図19】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(挿入孔付き保持体への波長変換部材ブロックの保持工程)を模式的に示す斜視図である。
【
図20】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(波長変換部材ブロックの研削工程)を模式的に示す斜視図である。
【
図21】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(波長変換部材ブロックの研削工程)を模式的に示す拡大断面図である。
【
図22】本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法(円柱状の波長変換部材の前駆体の個片化工程)を模式的に示す断面図である。
【
図23】本発明の実施形態4に係るリング状の波長変換部材の製造方法(基材への板状の波長変換部材の保持工程)を模式的に示す断面図である。
【
図24】本発明の実施形態4に係るリング状の波長変換部材の製造方法(第1の切削加工処理(粗加工)工程)を模式的に示す断面図である。
【
図25】本発明の実施形態4に係るリング状の波長変換部材の製造方法(第2の切削加工処理(粗加工)工程)を模式的に示す断面図である。
【
図26】本発明の実施形態4に係るリング状の波長変換部材の製造方法(第1の切削加工処理(仕上げ加工)工程)を模式的に示す断面図である。
【
図27】本発明の実施形態4に係るリング状の波長変換部材の製造方法(第2の切削加工処理(仕上げ加工)工程)を模式的に示す断面図である。
【
図28】本発明の実施形態4に係るリング状の波長変換部材の製造方法(リング状の波長変換部材の前駆体の取外し工程)を模式的に示す断面図である。
【
図29】本発明の実施形態5に係るリング状の波長変換部材の製造方法(基材への板状の波長変換部材の積層体の保持工程)を模式的に示す断面図である。
【
図30】本発明の実施形態5に係るリング状の波長変換部材の製造方法(第1の切削加工処理(粗加工)工程)を模式的に示す断面図である。
【
図31】本発明の実施形態5に係るリング状の波長変換部材の製造方法(第2の切削加工処理(粗加工)工程)を模式的に示す断面図である。
【
図32】本発明の実施形態5に係るリング状の波長変換部材の製造方法(リング状の波長変換部材の前駆体の取外し工程)を模式的に示す断面図である。
【
図33】本発明の実施形態6に係るリング状の波長変換部材の製造方法(基材への板状の波長変換部材の積層体の保持工程)を模式的に示す断面図である。
【
図34】本発明の実施形態6に係るリング状の波長変換部材の製造方法(第1の切削加工処理(粗加工)工程)を模式的に示す断面図である。
【
図35】本発明の実施形態6に係るリング状の波長変換部材の製造方法(第2の切削加工処理(粗加工)工程)を模式的に示す断面図である。
【
図36】本発明の実施形態6に係るリング状の波長変換部材の製造方法(リング状の波長変換部材の前駆体のスライス工程)を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[円柱状またはリング状の波長変換部材の製造方法]
以下、図面に基づいて本発明の一態様に係る円柱状またはリング状の波長変換部材の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語を用いる。しかしながら、これらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、これらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。又、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一または同等の部分を指す。なお、図面では下記実施形態で説明する所定の構成要素と関連するものだけでなく、当該所定の構成要素と直接関連しない構成要素にも符号を付している。
【0010】
更に、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための円柱状またはリング状の波長変換部材の製造方法を例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、図面が示す部材の大きさおよび位置関係等は、説明を明確にするため誇張している場合がある。
【0011】
以下で具体的に述べるが、本発明の一態様に係る円柱状またはリング状の波長変換部材の製造方法はいずれも、板状の波長変換部材に切削加工処理を施す際に、粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つの加工を含む切削加工処理を行うという点に特徴を有する。
【0012】
これにより、第1段階で粗加工により所定形状の波長変換部材の前駆体を形成し、次いで第2段階で所望の寸法となるようにこの所定形状の波長変換部材の前駆体に対して仕上げ加工を行うため、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて最終的に所望の寸法を有する波長変換部材を得やすくなる。その結果、本発明によれば、寸法精度の高い波長変換部材を効率よく得ることが可能となる。特に、かかる特徴に従い、少なくとも2つの円柱状の波長変換部材を製造する場合、各円柱状の波長変換部材の寸法のばらつきを小さくできる点で有利である。同様に、少なくとも2つのリング状の波長変換部材を製造する場合、リング状の波長変換部材の各々の寸法のばらつきを小さくできる点で有利である。
【0013】
以下では、実施形態1から3にて円柱状の波長変換部材の製造方法について説明し、実施形態4から7にてリング状の波長変換部材の製造方法について説明する。
【0014】
<円柱状の波長変換部材の製造方法>
実施形態1
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態1に係る円柱状の波長変換部材の製造方法について説明する。
【0015】
(板状の波長変換部材の準備工程)
まず、板状の波長変換部材を準備する。板状の波長変換部材30Aとしては、板状の波長変換焼結体を用いることができる。板状の波長変換焼結体は、例えば、蛍光体粉末と無機物粉末との混合物を原料として、特開2018-172628号公報に開示された方法によって得たり、その他、蛍光体粉末と無機物粉末との混合物を、放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いて無機物粉末を溶融し冷却することにより得たりすることができる。SPS法は、蛍光体粉末と無機物粉末との粉体混合物に対して低電圧でパルス状大電流を供給し、火花放電現象により発生する放電プラズマの高エネルギーにより無機物粉末を溶融させるものである。
【0016】
蛍光体粉末としては、黄色系の発光をするYAG蛍光体((Y,Lu,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce)粉末、緑色系の発光をするβサイアロン蛍光体粉末、赤色系の発光をするフッ化物系蛍光体粉末(K2(Si,Ti,Ge,Al)F6:Mn)、窒化物系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)粉末等が挙げられる。一例としては、蛍光体粉末としては、上記YAG蛍光体粉末を用いることができる。かかる蛍光体粉末は、一種類でも、複数種から構成されていてもよい。無機物粉末としては、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)を用いることができる。蛍光体粉末として上記YAG蛍光体粉末を用い、無機物粉末として酸化アルミニウム(Al2O3)を用いる場合、上記焼結法により板状の焼結体を得ることができる。
【0017】
(板状の波長変換部材の保持工程)
図1に示すように、準備した板状の波長変換部材30Aを保持体10A上に保持する。具体的には、板状の波長変換部材30Aをワックス20A付きの保持体10Aに保持する。ワックス20Aとしては、常温において固体であり水に溶けず、加熱時に軟性を有する性質を有するものを選択することができる。ワックスは、高級脂肪酸と一価または二価の高級アルコールとのエステルであり、例えばロウであり得る。
【0018】
(板状の波長変換部材への切削加工処理工程)
図1に示すように、板状の波長変換部材30Aを保持した後、
図2に示すように、保持した板状の波長変換部材30Aに切削加工処理を施す。具体的には、切削工具40Aを用いて板状の波長変換部材30Aの表側主面31Aに切削加工を行い、所定の間隔をおいて円柱状の波長変換部材の前駆体51Aを有する波長変換部材ブロック50Aを形成する。かかる切削加工により、円柱状の波長変換部材の前駆体51Aと前駆体51Aに連続する波長変換部材のボディ部分55Aとから構成される波長変換部材ブロック50Aを形成する。実施形態1では、この円柱状の波長変換部材の前駆体51Aは、平面視すると円形であり、中心軸が波長変換部材ブロック50Aの主面56Aに直交している。
【0019】
特に、本実施形態では、
図2に示すように、上記切削加工処理として粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う。具体的には、第1段階として、第1の切削工具41Aを用いて板状の波長変換部材30Aに粗加工を行い、円柱状の波長変換部材の前駆体51Aに相当する凸部を形成する。第1の切削工具41Aとして粒度が#200~1000のものが好ましく、例えば#400の電着工具を用いることができる。粗加工された円柱状の波長変換部材の前駆体51Aの側面は、8μm以上20μm以下の算術平均粗さRzを有する。
【0020】
ここでいう算術平均粗さRzとは、JIS B0601で規定されている粗さRzのことを言う。つまり、Rzは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう(JIS B0601:1994参照)。
【0021】
次に、第2段階として、上記粗加工により形成した円柱状の波長変換部材の前駆体51Aの表面に対して第2の切削工具42Aを用いて仕上げ加工を行う。第2の切削工具42Aとして粒度が♯2500~5000のものが好ましく、例えば#3000の電着工具を用いることができる。これにより、所望の寸法を有しかつ算術平均粗さRzが2μm以上8μm未満である円柱状の波長変換部材の前駆体52Aを得ることができる。仕上げ加工を行う箇所としては、例えば、粗加工により形成した円柱状の波長変換部材の前駆体51Aの側面51Aaを少なくとも含む前駆体51Aの表面である。
【0022】
上述の少なくとも2つの切削加工により、第1段階で粗加工により円柱状の波長変換部材の前駆体を形成し、次いで第2段階で所望の寸法、具体的には所望の径寸法となるように円柱状の波長変換部材の前駆体に対して仕上げ加工を行うため、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて、円柱状の波長変換部材の前駆体を所望の寸法としやすくなる。特に、少なくとも2つの円柱状の波長変換部材の前駆体を形成する場合、円柱状の波長変換部材の前駆体の各々の寸法のばらつきを小さくできる。更に、少なくとも2段階の切削加工により、円柱状の波長変換部材の前駆体の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。
【0023】
なお、上記第1の切削工具41Aおよび上記第2の切削工具42Bを用いた切削加工については、コンピュータ上にて予め決定/制御した切削タイミング、切削領域、切削加工パス、および用いる切削工具の種類等の情報に基づき行うことができる。具体的には、数値制御(NC:Numerical Control)工作機械またはそれに準ずるもの(以下、NC工作機械等という。)を用い、コンピュータ処理にて得た情報からプログラム変換した数値情報を、当該NC工作機械等に対して命令する。これにより、NC工作機械等として用いる切削工具(電着工具等)の動作を好適に制御し得る。
【0024】
特に限定されるものではないが、粗加工完了時の円柱状の波長変換部材の前駆体51Aは、高さが例えば350μm以上1000μm以下、例えば450μmであり、直径が例えば190μm以上300μm以下、例えば200μmであり得る。又、仕上げ加工を終えた円柱状の波長変換部材の前駆体52Aは、高さが例えば350μm以上1000μm以下、例えば450μmであり、直径が例えば50μm以上190μm以下、例えば160μmであり得る。
【0025】
(波長変換部材ブロックの反転工程)
仕上げ加工済みの波長変換部材ブロック50Aの形成後、
図3に示すように、この波長変換部材ブロック50Aを、ワックス20Aから一旦離して上下反転させ、波長変換部材の前駆体52Aがワックス20Aに埋設されるようにワックス20Aに再度貼り付ける。具体的には、(1)ワックス20Aから波長変換部材ブロック50Aを分離させて、(2)波長変換部材ブロック50Aを反転させ、(3)ワックス20Aを加熱して軟化させ、波長変換部材ブロック50Aの裏側主面56Aを上にして円柱状の波長変換部材の前駆体52Aをワックス20Aに対向させ、(4)波長変換部材ブロック50Aを押圧して円柱状の波長変換部材の前駆体52Aがワックス20Aに埋設されるように波長変換部材ブロック50Aをワックス20Aに再度貼り付ける。
【0026】
(波長変換部材ブロックの研削工程)
波長変換部材ブロック50Aの反転後、この波長変換部材ブロック50Aに研削加工処理を行う。実施形態1では、この研削加工処理によって波長変換部材ブロック50Aのボディ部分55Aを除去する。
【0027】
具体的には、まず、
図3および
図4に示すように、波長変換部材ブロック50Aの裏側主面56Aに第1研削部材81Aを用いた研削加工処理を行う。第1研削部材81Aとして粒度が♯200~1000のものが好ましく、例えば♯600のダイヤモンド砥石を用い、砥石回転数500~1000rpmの条件下で研削処理を行う。
【0028】
研削加工処理で波長変換部材ブロック50Aのボディ部分55Aを除去することにより、円柱状の波長変換部材の前駆体52Aをワックス20Aに埋設された状態で分離することができる。これにより、ワックス20Aに埋設された円柱状の波長変換部材の前駆体52Aの表面の一部(上面に相当)を露出させることができる。実施形態1では、ワックス20Aの上面に露出された前駆体52Aの表面の一部は、円柱状の波長変換部材の前駆体52Aの一方の端面である。この際の円柱状の波長変換部材の前駆体52Aの高さは、例えば350μm以上1000μm以下、例えば450μmであり得る。
【0029】
その後、
図5および
図6に示すように、円柱状の波長変換部材の前駆体52Aが所定高さとなるように、ワックス20Aと円柱状の波長変換部材の前駆体52Aが一体化された状態で研削加工処理を行う。本実施形態では、一例として下記に示すように2段階の研削加工処理を施す場合を例に採る。しかしながら、これに限定されることなく3段階以上の研削処理を行うことができる。
【0030】
具体的には、ワックス20Aと円柱状の波長変換部材の前駆体52Aが一体化された状態で、第2研削部材82Aを用いて研削加工処理を行う。この第2研削部材82Aとして粒度が♯1500~3000のものが好ましく、例えば♯2000のダイヤモンド砥石を用い、砥石回転数500~1000rpmの条件下で研削処理を行う。この研削加工処理により、
図5に示すように、ワックス20Aと一体化された状態で、
図4に示す円柱状の波長変換部材の前駆体52Aよりも高さが低い、円柱状の波長変換部材の前駆体53Aを得ることができる。円柱状の波長変換部材の前駆体53Aの高さは例えば200μm以上350μm未満、例えば150μmであり得る。
【0031】
続けて、ワックス20Aと円柱状の波長変換部材の前駆体53Aが一体化された状態で第3研削部材83Aを用いて研削加工処理を行う。第3研削部材83Aとして粒度が♯5000~15000のものが好ましく、例えば♯10000のダイヤモンド砥石を用い、砥石回転数500~1000rpmの条件下で研削処理を行う。この研削加工処理により、
図6に示すように、ワックス20Aと一体化された状態で、
図5に示す円柱状の波長変換部材の前駆体53Aよりも高さが低い、円柱状の波長変換部材の前駆体54Aを得ることができる。円柱状の波長変換部材の前駆体54Aの高さは、例えば50μm以上150μm未満、例えば100μmであり得る。
【0032】
(円柱状の波長変換部材の前駆体の個片化工程)
最後に、ホットプレート等を用いてワックスの融点以上の温度でワックスを加熱することでワックスを溶解させ、円柱状の波長変換部材の前駆体54Aに付着していたワックスを除去する。これにより、
図6に示された円柱状の波長変換部材の前駆体54Aを
図7に示すように個片化させ、それによって最終的に円柱状の波長変換部材60Aを得ることができる。
【0033】
以上のように、実施形態1の円柱状の波長変換部材の製造方法は、切削加工処理工程にて粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つの加工を含む切削加工処理を行う。これにより、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて、波長変換部材ブロックに含まれる円柱状の波長変換部材の前駆体を所望の寸法としやすくなる。その結果、上記の個片化工程を経て最終的に得られる円柱状の波長変換部材を寸法精度の高いものとすることができる。
【0034】
また、少なくとも2段階の切削加工により円柱状の波長変換部材の前駆体の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。そのため、上記の個片化工程を経て最終的に得られる円柱状の波長変換部材の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。更に、かかる特徴に従い、切削加工処理工程にて少なくとも2つの円柱状の波長変換部材の前駆体を形成する場合、各円柱状の波長変換部材の前駆体の寸法のばらつきを小さくできる。その結果、上記の個片化工程を経て最終的に得られる各円柱状の波長変換部材の寸法のばらつきを小さくできる。
【0035】
更に、実施形態1では、外周を加工した後の波長変換部材の前駆体52Aをワックス20Aに埋設した状態で、波長変換部材ブロック50Aのボディ部分55Aの除去及び波長変換部材の前駆体52Aの高さ調整を行っている。これにより、切削加工時における波長変換部材の前駆体52Aの欠けや破損を防ぐことができ、波長変換部材の前駆体52Aの外形寸法の高い形状精度を維持できる。
【0036】
実施形態2
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態2に係る円柱状の波長変換部材の製造方法について説明する。実施形態2は、特に切削加工処理工程において、波長変換部材の前駆体の一部とボディ部分を形成した後、ボディ部分を除去することにより前駆体の残りの部分を形成して中心軸が主面に平行な円柱状の波長変換部材の前駆体を形成する点で実施形態1とは異なる。
【0037】
(板状の波長変換部材の準備工程)
まず、
図8に示すような板状の波長変換部材30Bを準備する。準備する板状の波長変換部材30Bとしては、上記実施形態1における板状の波長変換部材30Aと同じである。
【0038】
(板状の波長変換部材の保持工程)
板状の波長変換部材30Bの準備後、
図8に示すように、板状の波長変換部材30Bをワックス20B付きの保持体10Bに保持する。
【0039】
(板状の波長変換部材への切削加工処理工程)
板状の波長変換部材30Bを保持した後、
図9に示すように、切削工具40Bを用いて、
図8に示した板状の波長変換部材30Bの表側主面31Bに切削加工を行うことにより、波長変換部材ブロック50Bを形成する。具体的には、切削工具40Bを用いて、所定の間隔をおいて断面視して略半円状の部分51Bが形成されるように、板状の波長変換部材30Aの表側主面31Bに切削加工を行う。かかる切削加工により、断面視して略半円状の部分51Bと波長変換部材のボディ部分55Bとから構成される波長変換部材ブロック50Bを形成することができる。この略半円状の部分51Bの中心軸は、形成する波長変換部材ブロック50Bの主面(
図9の裏側主面57Bに対応)に対して平行となっている。
【0040】
特に、本実施形態では、
図9の右の図に示すように、上記切削加工処理として粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つの加工を含む切削加工処理を行う。具体的には、第1段階として、第1の切削工具41Bを用いて板状の波長変換部材30Bに粗加工を行い、略半円状部分51Bを形成する。第1の切削工具41Bとして粒度が♯200~1000のものが好ましく、例えば♯400の電着工具を用いることができる。
図9に示す粗加工が付された略半円状部分の表面は8μm以上20μm以下の算術平均粗さRzを有し得る。
【0041】
次に、第2段階として、略半円状部分51Bの表面に対して第2の切削工具42Bを用いて仕上げ加工を行う。第2の切削工具42Bとして粒度が♯2500~5000のものが好ましく、例えば♯3000の電着工具を用いることができる。これにより、所望の寸法を有しかつ算術平均粗さRzが2μm以上8μm以下である略半円状部分52Bを得ることができる。仕上げ加工を行う箇所は、粗加工により形成した略半円状部分51Bの表面の少なくとも一部である。
【0042】
このような少なくとも2つの加工を含む切削加工により、第1段階で粗加工により略半円状の波長変換部材の前駆体を形成し、次いで第2段階で所望の寸法となるようにこの略半円状の波長変換部材の前駆体に対して仕上げ加工を行うため、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて、断面視で略半円状の波長変換部材の前駆体を所望の寸法としやすくなる。
【0043】
(波長変換部材ブロックの反転工程)
切削加工処理工程において仕上げ加工を終えた略半円状部分52Bを含む波長変換部材ブロック50Bについて、この波長変換部材ブロック50Bを、ワックス20Bから一旦離して上下反転させ、
図10に示すように、略半円状部分52Bがワックス20Bに埋設されるようにワックス20Bに再度貼り付ける。具体的には、(1)ワックス20Bから波長変換部材ブロック50Bを分離させて、(2)波長変換部材ブロック50Bを反転させ、(3)ワックス20Bを加熱して軟化させ、波長変換部材ブロック50Bの裏側主面57Bを上にして略半円状部分52Bをワックス20Bに対向させ、(4)波長変換部材ブロック50Bを押圧して略半円状部分52Bがワックス20Bに埋設されるように波長変換部材ブロック50Bをワックス20Bに再度貼り付ける。
【0044】
(波長変換部材ブロックへの切削処理工程)
波長変換部材ブロック50Bの反転後、
図11に示すように、反転させた波長変換部材ブロック50Bに切削加工処理を施す。実施形態2では、この切削加工処理により、全体として円柱状の波長変換部材の前駆体53Bをワックス20Bと一体化された状態で得る。具体的には、切削工具40Bを用いて波長変換部材ブロック50Bの主面(反転前に裏面57Bであった面に相当)に対し、上記略半円状部分52Bと合せて断面視で円形となる、略半円状部分58Bを形成するように切削加工を行う。すなわち、波長変換部材のボディ部分55Bから、円柱状の波長変換部材の前駆体となる残りの部分58Bを形成するとともに余分な波長変換部材のボディ部分55Bを除去する。ここでは、
図9に示す工程と同様に、上記切削加工処理として粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つの切削加工処理を行う。かかる切削加工処理により、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて形成する円柱状の波長変換部材の前駆体を所望の寸法、具体的には所望の径寸法としやすくすることができる。
【0045】
この略半円状部分58Bについては、反転前に仕上げ加工した略半円状部分52Bと半円の中心軸がほぼ一致するように形成する。かかる切削加工により、円柱状の波長変換部材の前駆体53Bをワックス20Bと一体化された状態で得ることができる。この円柱状の波長変換部材の前駆体53Bは、断面視で円形であり、中心軸が保持体10Bの主面に平行なものとなっている。
【0046】
(円柱状の波長変換部材の前駆体の個片化工程)
ワックス20Bと円柱状の波長変換部材の前駆体53Bとが一体化された状態で、ワックスの融点以上の温度で加熱することによりワックス溶解させ、円柱状の波長変換部材の前駆体53Bからワックスを除去する。これにより、複数の円柱状の波長変換部材の前駆体54Bを得る。
【0047】
(円柱状の波長変換部材の前駆体の径調整工程)
さらに、仕上げ加工済みの円柱状の波長変換部材の前駆体53Bの直径を調整するため、研削部材70Bを用いて研削加工処理を行うこともできる。即ち、
図12に示すように、円柱状の波長変換部材の前駆体53Bが所定の寸法を有するように円柱状の波長変換部材の前駆体53Bに研削処理を施すこともできる。
【0048】
径調整工程は、例えば、研削部材70Bとして粒度が♯200~1000のもの、例えば♯600のダイヤモンド砥石を用い、砥石回転数500~1000rpmの条件下で研削処理を行う。なお、この径調整工程の有無にかかわらず、実施形態1と同様に、最終的に円柱状の波長変換部材の前駆体53Bの直径は例えば50μm以上190μm以下とすることが好ましく、例えば160μmである。
【0049】
(円柱状の波長変換部材の前駆体の切断工程)
最後に、
図13に示すように、円柱状の波長変換部材の前駆体54Bをダイシング部材90Bによりダイシングにより所定の高さに切断する。具体的には、円柱状の波長変換部材の前駆体54Bが所定高さとなるように、円柱状の波長変換部材の前駆体54Bにダイシングを施す。これにより、最終的に所定の高さを有する円柱状の波長変換部材60Bを得ることができる。
【0050】
以上のように、実施形態2の円柱状の波長変換部材の製造方法でも、切削加工処理工程にて粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つの切削加工処理を行う。これにより、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて円柱状の波長変換部材の前駆体を所望の寸法としやすくなる。その結果、最終的に得られる円柱状の波長変換部材を寸法精度の高いものとすることができる。又、かかる少なくとも2つの切削加工により円柱状の波長変換部材の前駆体の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。そのため、最終的に得られる円柱状の波長変換部材の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。
【0051】
実施形態3
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態3に係る円柱状の波長変換部材の製造方法について説明する。実施形態3は、特に保持体として、以下に説明する挿入孔付き保持体を用いる点で実施形態1および実施形態2とは異なる。
【0052】
(板状の波長変換部材の準備工程)
まず、
図14に示すような板状の波長変換部材30Cを準備する。本実施形態では、作業効率の観点から、
図14に示すようにダイシング部材により切断して四角柱の形状を有する波長変換部材30αCを準備する。板状の波長変換部材30Cは、上記実施形態1および2における板状の波長変換部材30A、30Bと同じである。
【0053】
(板状の波長変換部材の保持工程)
図15に示すように、準備した波長変換部材30αCを保持体10αC上に保持する。
【0054】
(板状の波長変換部材への切削加工処理工程)
波長変換部材30αCを保持した後、
図16に示すように、保持された波長変換部材30αCに切削加工処理を施す。具体的には、切削工具40Cを用いて波長変換部材30αCの表側主面31αCに切削加工を行い、円柱状の波長変換部材の前駆体51Cを含む波長変換部材ブロック50Cを形成する。
【0055】
この切削加工により、円柱状の波長変換部材の前駆体51Cと波長変換部材のボディ部分55Cとから構成される波長変換部材ブロック50Cを形成する。実施形態3では、この円柱状の波長変換部材の前駆体51Cは、平面視で円形であり、中心軸が波長変換部材ブロック50Cの主面に直交する。
【0056】
上記切削加工処理として粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つの切削加工処理を行う。具体的には、第1段階として、第1の切削工具を用いて板状の波長変換部材30αCに粗加工を行い、円柱状の波長変換部材の前駆体51Cを形成する。第1の切削工具として粒度が♯200~1000のものが好ましく、例えば♯400の電着工具を用いることができる。
図16に示す粗加工が付された円柱状の波長変換部材の前駆体51Cの側面は8μm以上20μm以下の算術平均粗さRzを有し得る。
【0057】
次に、第2段階として、粗加工により形成した円柱状の波長変換部材の前駆体51Cの表面に対して第2の切削工具を用いて仕上げ加工を行う。第2の切削工具として粒度が♯2500~5000のものが好ましく、例えば♯3000の電着工具を用いることができる。これにより、所望の径寸法を有しかつ算術平均粗さRzが2μm以上8μm以下である円柱状の波長変換部材の前駆体52Cを得ることができる。仕上げ加工を行う箇所としては、粗加工により形成した円柱状の波長変換部材の前駆体51Cの側面51Caを少なくとも含む前駆体52Cの表面である。
【0058】
なお、
図16内に矢印で示す進行方向に、切削工具40C(上記第1の切削工具および上記第2の切削工具を含む。)を移動させるとして、粗加工および仕上げ加工の両方を施して得られた円柱状の波長変換部材の前駆体を符号52Cで示している。一方、粗加工は施しているが、仕上げ加工は施していない円柱状の波長変換部材の前駆体は、切削工具40Cの進行方向の先に符号51Cで示している。
【0059】
実施形態1と同様に、粗加工を施した円柱状の波長変換部材の前駆体51Cは、高さが350μm以上1000μm以下であることが好ましく、例えば450μmであり、円の直径が190μm以上300μm以下であることが好ましく、例えば200μmであり得る。又、仕上げ加工を施した円柱状の波長変換部材の前駆体52Cは、高さが350μm以上1000μm以下であることが好ましく、例えば450μmであり、円の直径が50μm以上190μm以下であることが好ましく、例えば160μmであり得る。
【0060】
(挿入孔付き保持体の準備工程)
図17に示すように、円柱状の波長変換部材の前駆体52Cを挿入するための、挿入孔11Cが形成された保持体10Cを準備する。本実施形態では、この挿入孔11Cは、複数の円柱状の波長変換部材の前駆体51Cがボディ部分55Cと一体化された波長変換部材ブロック50Cの状態で、円柱状の波長変換部材の前駆体52Cを挿入できるように形成されている。この挿入孔11Cの内径は、仕上げ加工を終えた円柱状の波長変換部材の前駆体52Cが挿入可能な径寸法を有する。なお、
図17では図示していないが、挿入孔付き保持体10Cの上面10Caには挿入孔11Cの表面を覆うようにワックスを塗布し得る。
【0061】
(挿入孔付き保持体への波長変換部材ブロックの保持工程)
波長変換部材ブロックを、挿入孔付き保持体へ保持する。例えば、
図17に示す挿入孔11C付き保持体10Cの準備後、
図18に示すように仕上げ加工を終えた波長変換部材ブロック50Cを上下反転させる。具体的には、波長変換部材ブロック50Cの裏側主面56Cが上方向に方向づけられるように波長変換部材ブロック50Cを上下反転させる。
【0062】
上下反転させた波長変換部材ブロック50Cを、
図18に示すように、円柱状の波長変換部材の前駆体52Cと挿入孔付保持体10Cの挿入孔11Cとが直接対向するように位置合わせする。その後、仕上げ加工を終えた円柱状の波長変換部材の前駆体52Cを当該挿入孔11Cに挿入する。
【0063】
挿入孔11Cへ円柱状の波長変換部材の前駆体52Cを挿入して、円柱状の波長変換部材の前駆体52Cの端面52Caが挿入孔11Cの底部11Caに当接させる。これにより、
図19に示すように、波長変換部材ブロック50Cを挿入孔付き保持体10Cに保持する。
【0064】
(波長変換部材ブロックの研削工程)
波長変換部材ブロック50Cを挿入孔付き保持体10Cに保持した後、
図20、
図21(a)および
図21(b)に示すように、波長変換部材ブロック50Cに対して研削加工処理を行う。実施形態3では、この研削加工処理によって、円柱状の波長変換部材の前駆体52Cを残して、波長変換部材ブロック50Cのボディ部分55Cを除去する。なお、
図21では、挿入孔11Cへの円柱状の波長変換部材の前駆体52Cの挿入が容易となるように挿入孔内にもワックス20Cが配置されていることが好ましい。
【0065】
具体的には、まず、
図20に示すように、波長変換部材ブロック50Cの裏側主面56Cに相当する主面に研削部材80Cを用いた研削加工処理を行う。例えば、研削部材80Cとして粒度が♯200~1000のものが好ましく、例えば♯600のダイヤモンド砥石を用い、砥石回転数500~1000rpmの条件下で研削処理を行う。
【0066】
かかる研削加工処理で波長変換部材ブロック50Cのボディ部分55Cを除去する。これにより、挿入孔付き保持体10Cの挿入孔11Cに挿入された状態で、円柱状の波長変換部材の前駆体52Cを得ることができる。当該研削面には、円柱状の波長変換部材の前駆体52Cの端面が露出している。実施形態3では、露出させた前駆体52Cの端面は、最終的に得られる円柱状の波長変換部材の前駆体52Cの一方の端面となる。この際の円柱状の波長変換部材の前駆体52Cの高さは350μm以上1000μm以下であることが好ましく、例えば450μmであり得る。
【0067】
次に、
図21(b)に示す円柱状の波長変換部材の前駆体52Cが、
図21(c)および(d)に示すように、所定の高さを有する円柱状の波長変換部材の前駆体54Cとなるように、円柱状の波長変換部材の前駆体52Cを挿入孔付き保持体10Cの一部とともに、上述したのと同様に、少なくとも2段階の研削加工処理を行う。
【0068】
具体的には、研削加工前の円柱状の波長変換部材の前駆体52Cの高さは350μm以上1000μm以下の範囲、例えば450μmであったのに対して、研削加工を終えた円柱状の波長変換部材の前駆体54Cの高さは50μm以上150μm以下の範囲、例えば100μmとすることができる。
【0069】
(円柱状の波長変換部材の前駆体の個片化工程)
最後に、
図22に示すように、挿入孔付き保持体10Cの挿入孔11Cから円柱状の波長変換部材の前駆体54Cを取り出す。例えば、挿入を容易にするためにワックスを使用している場合には、ホットプレート等を用いてワックスの融点以上の温度でワックスを加熱して挿入孔11Cから円柱状の波長変換部材の前駆体54Cを取り出す。以上のようにして、円柱状の波長変換部材60Cを得ることができる。
【0070】
以上のように、実施形態3の円柱状の波長変換部材の製造方法では、切削加工処理工程にて粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つの切削加工処理を行い、それによって円柱状の波長変換部材の前駆体を含む波長変換部材ブロックを形成する。そのため、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて形成する円柱状の波長変換部材の前駆体を所望の寸法としやすくなる。その結果、最終的に得られる円柱状の波長変換部材を寸法精度の高いものとすることができる。
【0071】
なお、上記実施形態1から3においては、粗加工と仕上げ加工の2つの加工を有する切削加工処理を説明したが、算術平均粗さRzをより低減させるため、粗加工と仕上げ加工との間に中仕上げ加工を加えることもできる。
【0072】
<リング状の波長変換部材の製造方法>
実施形態4
次に、図面を参照しながら、本発明の実施形態4に係るリング状の波長変換部材の製造方法について説明する。なお、図示していないが、板状の波長変換部材と基材との間にはワックスが存在し得る。
【0073】
(板状の波長変換部材の準備工程)
まず、
図23に示すような板状の波長変換部材130Aを準備する。準備する板状の波長変換部材130Aとしては、上記実施形態1における板状の波長変換部材30Aと同じである。
【0074】
(板状の波長変換部材の保持工程)
準備した板状の波長変換部材130Aを、
図23に示すように、基材110A上に保持する。ここで、板状の波長変換部材130Aは、ワックス付きの基材110Aに保持することが好ましい。基材110Aは、ガラス基材を用いることができる。
【0075】
(リング状の波長変換部材の前駆体の形成工程)
板状の波長変換部材130Aを保持した後、板状の波長変換部材130Aに対して、略同心円でかつ切削加工処理の範囲の内径寸法が異なる第1の切削加工処理と第2の切削加工処理を施して、リング状の波長変換部材の前駆体を形成する。すなわち、第1の切削加工処理でリング状の波長変換部材の前駆体の外周又は内周の一方を形成するように研削加工した後、第2の切削加工処理で内周又は外周の他方を形成するように研削加工する。
【0076】
なお、以下の説明では、第1の切削加工処理ではリング状の波長変換部材の前駆体の外周を形成するように研削加工し、第2の切削加工処理ではリング状の波長変換部材の前駆体の内周を形成するように研削加工するものとして説明する。ここで、後述するように、第1の切削加工処理および第2の切削加工処理のそれぞれにおいて粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行う。
【0077】
この少なくとも2つを含む段階の切削加工によれば、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて、リング状の波長変換部材の前駆体を所望の寸法としやすくなる。又、下記のとおり、かかる少なくとも2段階の切削加工によりリング状の波長変換部材の前駆体の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。
【0078】
又、以下の説明では、(1)第1の切削加工処理の粗加工、(2)第2の切削加工処理の粗加工、(3)第1の切削加工処理の仕上げ加工、(4)第2の切削加工処理の仕上げ加工、を順に説明するが本実施形態はこの順番に限定されるものではない。
【0079】
以下、リング状の波長変換部材の前駆体の形成工程について図面を参照しながら詳細に説明する。まず、
図23に示すように保持した板状の波長変換部材130Aの外周面に対して第1の切削加工処理の粗加工を行う。具体的には、第1の切削工具141Aを用いて、板状の波長変換部材130Aの側面131A(即ち外縁部に相当)に対して平面視して略円状に粗加工を施す。例えば、
図24に示すように、第1の切削工具141Aが略円状の軌跡を描くように回転させながら矢印の方向に移動させることで、板状の波長変換部材130Aの側面131Aに粗加工を行う。これにより、
図24に示すように、第1の円盤状(又は円形状)の波長変換部材150Aを形成する。第1の切削工具141Aとして粒度が♯200~1000のものが好ましく、例えば♯400の電着工具を用いることができる。本明細書でいう「円盤状」とは外周が真円だけでなく楕円も包含するものを指す。
【0080】
第1の円盤状の波長変換部材150Aの形成後、第1の円盤状の波長変換部材150Aに第2の切削加工処理としての粗加工を施す。具体的には、
図25に示すように第2の切削加工処理の粗加工では、上記第1の切削加工処理時における第1の切削工具141Aの軌跡と同心円でかつ小さい内径で軌跡を描くように、第1の切削工具141Aを矢印の方向に移動させて波長変換部材150Aをリング状に加工する。
【0081】
これにより、平面視してリング状の波長変換部材の前駆体160Aを得ることができる。本実施形態では、粗加工により得られるリング状の波長変換部材の前駆体160Aは、算術平均粗さRzが8μm以上20μm以下の外側面161Aと内側面162Aを有し得る。
【0082】
リング状の波長変換部材の前駆体160Aの形成後、リング状の波長変換部材の前駆体160Aに対して第1の切削加工処理の仕上げ加工を行う。具体的には、第2の切削工具142Aを略円状の軌跡を描くように移動させて、リング状の波長変換部材の前駆体160Aの外側面161A(即ち外縁部に相当)に対して仕上げ加工を施す。第2の切削工具142Aとして粒度が♯2500~5000のものが好ましく、例えば♯3000の電着工具を用いることができる。かかる仕上げ加工処理により、
図26に示すように外側面の算術平均粗さRzが小さいリング状の波長変換部材の前駆体170Aを得ることができる。
【0083】
リング状の波長変換部材の前駆体170Aの形成後、リング状の波長変換部材の前駆体170Aの内周面に対して第2の切削加工処理の仕上げ加工を行う。具体的には、
図27に示すように、第2の切削工具142Aを前駆体170Aの内周面に沿って略円状の軌跡を描くように矢印の方向に移動させて、
図26に示したリング状の波長変換部材の前駆体170Aの内側面172Aに対して仕上げ加工を施す。
【0084】
かかる仕上げ加工処理により、内側面の算術平均粗さRzが小さいリング状の波長変換部材の前駆体180Aを得ることができる。本実施形態では、仕上げ加工により得られるリング状の波長変換部材の前駆体180Aは、算術平均粗さRzが2μm以上8μm以下の外側面181Aと内側面182Aを有し得る。即ち、粗加工に加えて仕上げ加工を行うことで、リング状の波長変換部材の前駆体の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。
【0085】
(リング状の波長変換部材の前駆体の取外し工程)
最後に、基材110Aから
図27に示したリング状の波長変換部材の前駆体180Aを取り外す。以上により、
図28に示すように、最終的に所望の外径寸法および内径寸法を有するリング状の波長変換部材190Aを得ることができる。
なお、
図24から
図28に示すように、上記第1の切削加工処理および上記第2の切削加工処理において、第1の切削工具141Aおよび第2の切削工具142Aの先端が基材110Aの表面に接するように切削加工処理を行っている。そのため、
図28に示すように、基材110Aからリング状の波長変換部材の前駆体180Aを取り外すと、基材110Aの表面に、第1の切削工具141Aおよび第2の切削工具142Aの先端が通過した軌跡に沿った溝が、平面視して同心円のリング状に形成される。なお、第1の切削工具141Aおよび第2の切削工具142Aの先端が基材110Aの表面に接し、基材110Aの表面の一部を切削するように切削加工処理を行うことにより、リング状の波長変換部材の前駆体180Aの側面に発生する虞があるバリを抑制することができる。
【0086】
以上に説明したように、実施形態4のリング状の波長変換部材の製造方法は、少なくとも2つの切削加工処理工程にて、それぞれ粗加工および仕上げ加工の少なくとも2段階の切削加工処理を行う。これにより、1段階のみの切削加工処理を施す場合と比べて、リング状の波長変換部材の前駆体を所望の寸法としやすくなる。その結果、最終的に得られるリング状の波長変換部材を寸法精度の高いものとすることができる。
【0087】
又、かかる少なくとも2段階の切削加工によりリング状の波長変換部材の前駆体の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなるため、最終的に得られるリング状の波長変換部材の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。
【0088】
実施形態4の上記第1の切削加工処理および上記第2の切削加工処理におけるそれぞれの粗加工と仕上げ加工との間に中仕上げ加工を更に採り入れてもよい。粗加工と仕上げ加工との間に中仕上げ加工を更に採り入れることで、最終的に得られるリング状の波長変換部材の寸法をより所望のものとしやすくなり、かつその表面粗さも所定の範囲となるようにより制御しやすくすることができる。
【0089】
実施形態5
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態5に係るリング状の波長変換部材の製造方法について説明する。実施形態5は、少なくとも2枚の板状の波長変換部材から成る積層体に対して切削加工処理を施す点で、実施形態4とは異なる。これにより、最終的に所望の寸法を有するリング状の波長変換部材を効率よく製造することができる。
【0090】
以下では、上記の実施形態4のリング状の波長変換部材の製造方法の欄で述べた内容と同様の内容となる部分については、内容の重複を避けるため記載を簡略化又は省略する。
【0091】
(少なくとも2枚の板状の波長変換部材の準備工程)
まず、少なくとも2枚の板状の波長変換部材130Cを準備する。準備する板状の波長変換部材130Cとしては、上記の本発明の実施形態1の円柱状の波長変換部材の製造方法の欄で述べた板状の波長変換部材30Aと同じである。
【0092】
(板状の波長変換部材の積層体の保持工程)
図29に示すように、準備した少なくとも2枚の板状の波長変換部材130Cを、基材110C上に積層させた積層体130αCを形成する。これにより、基材110C上に板状の波長変換部材の積層体130αCを保持することができる。なお、基材110Cと板状の波長変換部材130Cとの間および複数の板状の波長変換部材130Cの間にはそれぞれワックス120Cを配置させることが好ましい。
【0093】
(リング状の波長変換部材の前駆体の形成工程)
波長変換部材の積層体130αCの保持後、板状の波長変換部材の積層体130αCに対して略同心円でかつ互いに径寸法の異なる第1の切削加工処理と第2の切削加工処理をそれぞれ略円周状に施して、リング状の波長変換部材積層体の前駆体を形成する。
【0094】
実施形態5では、以下の工程を経て最終的にリング状の波長変換部材の前駆体を形成することができる。なお、実施形態5では、第1の切削加工処理を施してリング状の波長変換部材積層体の前駆体の外側面をなす部分を形成し、次いで第2の切削加工処理を施してリング状の波長変換部材積層体の前駆体の内側面をなす部分を形成する。
【0095】
まず、保持した波長変換部材の積層体130αCに対して第1の切削加工処理の粗加工を行う。具体的には、切削工具140C(具体的には実施形態4の第1の切削工具141Aに対応)を用いて、
図29に示す波長変換部材の積層体130αCの側面131αCに対して一括して粗加工を施す。かかる粗加工処理により、
図29に示すように、積層された複数の板状の波長変換部材130Cそれぞれの側面により形成されていた凹凸形状が平坦化された側面を有する、
図30に示すような第1の円盤状(又は円形状)の波長変換部材の積層体150αCを形成し得る。第1の円盤状の波長変換部材の積層体150αCは、2枚以上の第1の円盤状の波長変換部材150Cから構成され得る。なお、「第1の円盤状の波長変換部材の積層体150αC」は全体としては円柱状の形態をなしている。
【0096】
第1の円盤状の波長変換部材の積層体150αCに第2の切削加工処理の粗加工を施す。この第2切削加工処理については、第1の円盤状の波長変換部材の積層体150αCの側面に一括して行うことができる。2枚以上のリング状の波長変換部材も一括して得ることができるため製造効率の観点から好ましい。
【0097】
以下では、第1の円盤状の波長変換部材の積層体150αCに第2の切削加工処理を一括して行う場合を説明する。具体的には、第1の円盤状の波長変換部材の積層体150αCの形成後、同積層体150αCに一括して第2の切削加工処理としての粗加工を施す。具体的には、第1の切削加工処理時における第1の切削工具の軌跡を基準として、第1の切削工具が略同心円でかつ径寸法の小さい軌跡をえがくように第1の切削工具を動作させる。
【0098】
これにより、第1の円盤状の波長変換部材の積層体150αCの径寸法よりも小さい径寸法の第2の円盤状の波長変換部材の積層体を第1の円形状の波長変換部材の積層体150αCから形成することができる。その結果、
図31に示すようにリング状の波長変換部材積層体の前駆体160αCを得ることができる。本実施形態では、粗加工により得られるリング状の波長変換部材積層体の前駆体160αCは、算術平均粗さRzが8μm以上20μm以下の外側面161αCと内側面162αCを有し得る。
【0099】
リング状の波長変換部材の積層体の前駆体160αCの形成後、実施形態4と同様に、リング状の波長変換部材積層体の前駆体160αCに対して第1の切削加工処理および第2切削加工処理としての仕上げ加工を行う。具体的には、実施形態4の第2の切削工具142Aに対応する切削工具を用いて、
図31に示すリング状の波長変換部材積層体の前駆体160αCの外側面161αCおよび内側面162αCに対してそれぞれ一括して略円周状に仕上げ加工を施す。かかる一括的な仕上げ加工処理により、外側面および内側面の算術平均粗さRzが小さいリング状の波長変換部材積層体の前駆体を得ることができる。
【0100】
(リング状の波長変換部材の前駆体の取外し工程)
仕上げ加工を終えたリング状の波長変換部材積層体の前駆体の形成後、ワックスの融点以上の温度でワックスを加熱することでワックスを溶解させて除去する。これにより、
図32に示すように基材110Cからリング状の波長変換部材の積層体の前駆体を取り外し、その後当該積層体の前駆体の構成要素であるリング状の波長変換部材の前駆体を個片化する。以上により、最終的に2枚以上のリング状の波長変換部材を形成することができる。
【0101】
以上のように、実施形態5のリング状の波長変換部材の製造方法は、切削加工処理工程にて板状の波長変換部材の“積層体”に粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つの加工を含む切削加工処理を行う。これにより、所望の寸法を有するリング状の波長変換部材の前駆体を一括して2枚以上形成することができる。その結果、最終的に所望の寸法を有するリング状の波長変換部材を一括して2枚以上形成することができる。少なくとも2段階の切削加工により、2枚以上のリング状の波長変換部材の前駆体の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなるため、最終的に得られる2枚以上のリング状の波長変換部材の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。
【0102】
実施形態6
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態7に係るリング状の波長変換部材の製造方法について説明する。実施形態6は、相対的に厚みの大きい板状の波長変換部材に対して切削加工処理を施し、その後にスライス加工する点が実施形態4とは異なる。これにより、相対的に厚みの大きい1枚の板状の波長変換部材から、最終的に所望の寸法を有するリング状の波長変換部材を2枚以上形成することができる。
【0103】
以下では、上記の実施形態4のリング状の波長変換部材の製造方法の欄で述べた内容と同様の内容となる部分については、内容の重複を避けるため記載を簡略化又は省略する。
【0104】
(円柱状の波長変換部材の準備工程)
まず、相対的に厚みの大きい板状の波長変換部材として円柱状の波長変換部材130Dを準備する。準備する円柱状の波長変換部材130Dは、上記の本発明の実施形態1の円柱状の波長変換部材の製造方法の欄で述べた板状の波長変換部材30Aの構成材料が同じである一方、板状の波長変換部材30Aの厚みよりも大きい点で相違する。なお、上記の本発明の実施形態1の円柱状の波長変換部材の製造方法の欄で述べた板状の波長変換部材30Aの説明内容と同じ部分については、内容の重複を避けるため記載を省略する。
【0105】
(円柱状の波長変換部材の保持工程)
次に、
図33に示すように、準備した円柱状の波長変換部材130Dを基材110D上にワックス120Dを介して保持する。
【0106】
(円柱状の波長変換部材に対する切削加工処理工程)
円柱状の波長変換部材130Dの保持後、
図34および
図35に示すように、円柱状の波長変換部材130Dに対して略同心円でかつ互いに径寸法の異なる第1の切削加工処理の粗加工と第2の切削加工処理の粗加工をそれぞれ略円周状に施す。なお、少なくとも2枚のリング状の波長変換部材を一括して研削する切削工具として、単一枚の板状の波長変換部材又は第1の円盤状の波長変換部材を切削加工処理する際に用いる切削工具よりも有効刃長さが長いものを用いることはいうまでもない。
【0107】
まず、保持した円柱状の波長変換部材130Dに対して第1の切削加工処理の粗加工を行う。かかる粗加工により、
図34に示すように第1の円柱状の波長変換部材150Dを形成し得る。
【0108】
第1の円柱状の波長変換部材150Dに第2の切削加工処理の粗加工を施す。これにより、
図35に示すように、円筒状の波長変換部材の前駆体160D(相対的に厚みの大きいリング状の波長変換部材の前駆体に対応)を得ることができる。
【0109】
実施形態4と同様に、円筒状の波長変換部材の前駆体160Dに対して第1の切削加工処理の仕上げ加工と第2の切削加工処理の仕上げ加工を行う。これにより、外側面および内側面の算術平均粗さRzが小さい円筒状の波長変換部材の前駆体を得ることができる。
【0110】
(円筒状の波長変換部材の前駆体のスライス加工工程)
円筒状の波長変換部材の前駆体にスライス加工を行う。スライス加工としては、厚み方向に対して略垂直な方向に沿ってダイシング装置を用いて厚み寸法が大きいリング状の波長変換部材の前駆体を切断する態様を挙げることができる。かかるスライス加工により、
図36に示すように、最終的に少なくとも2枚のリング状の波長変換部材170Dを得ることができる。
【0111】
以上のように、実施形態6のリング状の波長変換部材の製造方法は、切削加工処理工程にて円筒状の波長変換部材に対して粗加工および仕上げ加工の少なくとも2つを含む切削加工処理を行い、かつ得られた円筒状の波長変換部材の前駆体に対してスライス加工を行うという特徴を含む。
【0112】
これにより、円筒状の波長変換部材から、所望の寸法を有するリング状の波長変換部材の前駆体を形成することができる。そのため、この前駆体にスライス加工を施すことで、最終的に所望の寸法を有するリング状の波長変換部材を2枚以上形成することができる。又、かかる少なくとも2段階の切削加工により、相対的に厚みの大きい1枚の板状の波長変換部材から得られるリング状の波長変換部材の前駆体の表面粗さを所定の範囲となるように制御しやすくなる。そのため、この前駆体にスライス加工を施すことで最終的に得られる2枚以上のリング状の波長変換部材の表面粗さも所定の範囲となるように制御しやすくなる。
【0113】
なお、最終的に得られるリング状の波長変換部材170Dの厚み寸法およびスライス枚数、即ちリング状の波長変換部材170Dの枚数を考慮して、上記円筒状の波長変換部材160Dの厚みを予め決定することが好ましい。円筒状の波長変換部材160Dの厚みを予め決定することで、最終的に得られる2枚以上のリング状の波長変換部材170Dを効率的に生産することが可能となる。
【0114】
最後に、実施形態4から6のいずれにおいても、第1の切削加工処理時および第2の切削加工処理時に、基材の一部を共削り加工することが好ましい。本明細書でいう「共削り加工」とは、切削工具を用いて板状の波長変換部材等の側面と当該波長変換部材を保持する基材の両方を切削する加工を指す。
【0115】
実施形態4を例に採ると、第1切削工具141Aおよび第2の切削工具142Aを用いて、基材110A上に保持された板状の波長変換部材130A、第1の円盤状の波長変換部材150A等の側面に対して切削加工処理を行う。この際、切削工具の有効刃部分(又は首下部分)を波長変換部材の側面の上端から下端に至る領域に接触させることができないと、波長変換部材の側面の下端側にて波長変換部材の削り残し部分が生じ、波長変換部材の側面の下端側の形状が裾拡がり形状となるおそれがある。
【0116】
そこで、上記波長変換部材の側面の切削加工処理時に、波長変換部材と共に当該波長変換部材を保持する基材110Aの一部も共削り加工することで、波長変換部材を保持する基材110Aの一部にまで切削工具の先端部(非有効刃部分に対応)を入り込ませることができる。これにより、切削工具の当該先端部を除く有効刃部分(又は首下部分)を波長変換部材の側面の上端から下端に至る領域に接触させることができる。
【0117】
その結果、切削工具使用時における波長変換部材の側面の削り残し部分の発生を回避できる。それ故、波長変換部材の側面の下端側の形状が裾拡がり形状となることが回避され、それによって、切削加工後に得られるリング状の波長変換部材の側面形状を所望の形状にすることができる。なお、基材の一部も切削加工可能とする観点から、上述のように基材としてガラス基材を用いることが好ましい。
【0118】
上記製造方法により得られた円柱状またはリング状の波長変換部材については、少なくとも発光素子と組み合わせることで発光装置を得ることができる。具体的には、発光素子の発光面と対向するように上記円柱状又はリング状の波長変換部材を配置することで、発光装置が得られる。かかる構成により、上記波長変換部材により、発光素子から発せられる光を吸収して異なる波長の光に変換することができる。又、得られた円柱状またはリング状の波長変換部材の発光面側にエッチング加工により凹凸形状を設けることで、配光色度ムラの低減を図ることができる。
【0119】
以上、本発明の一態様について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本態様に係る円柱状またはリング状の波長変換部材は、プロジェクタ、医療機器等に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0121】
10A、10B、10C 保持体
110A、110B、110C、110D 基材
20A、20B、20C、120C、120D ワックス
30A、30B、30C、130A、130B、130C、130D 板状の波長変換部材
40A、40B、40C、140C、140D 切削工具
41A、41B、141A、142B 第1の切削工具
42A、42B、142A、142B 第2の切削工具
50A、50B、50C 波長変換部材ブロック
51A、51B、51C 円柱状の波長変換部材の前駆体
52A、52B、52C 円柱状の波長変換部材の前駆体
53A、53B、53C 円柱状の波長変換部材の前駆体
54A、54B、54C 円柱状の波長変換部材の前駆体
60A、60B、60C 円柱状の波長変換部材
70B 研削部材
140αD 切削工具の有効刃部分(又は首下部分)
140βD 切削工具の非有効刃部分(又は非首下部分)
150A、150B、150C、150D 第1の円盤状の波長変換部材
160A、160B、160D、170A、170B、180A、180B、190B、160αC リング状の波長変換部材積層体の前駆体
170C、170D、190A リング状の波長変換部材
200B リング状の波長変換部材の前駆体