(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】位置推定装置、位置推定方法、及び、位置推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20241211BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
(21)【出願番号】P 2023522123
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2021019176
(87)【国際公開番号】W WO2022244193
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】工藤 理一
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 馨子
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-123920(JP,A)
【文献】特開2017-162384(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0328793(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0092611(US,A1)
【文献】特開2017-003348(JP,A)
【文献】FUKUSHIMA,T. et al.,Evaluating Indoor Localization Performance on an IEEE 802.11ac Explicit-feedback-based CSI Learning System,2019 IEEE 89th Vehicular Technology Conference,2019年,1-6,DOI:10.1109/VTCSpring.2019.8746628
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置推定に用いる無線信号の送信開始、送信頻度、又は送信スケジュールに関する送信命令を決定し、前記無線信号の送信命令を、自装置と同じ環境内に設置された固定端末の無線通信部又は位置推定対象の無線通信部へ送信する無線通信制御部と、
前記送信命令に基づき前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号を受信し、前記無線信号から電波伝搬に関するチャネル情報を取得する無線通信部と、
前記チャネル情報を位置推定モデルに入力可能な入力特徴量に変換する入力特徴量生成部と、
前記入力特徴量を、前記電波伝搬に関するチャネル情報と前記位置推定対象の位置情報との関係性を機械学習によりモデル化した位置推定モデルに入力することで、前記位置推定対象の位置を推定計算する位置推定モデル利用部と、
を備え、
前記無線通信制御部は、
前記位置推定対象の位置推定精度を基に、前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号の位置推定に対する寄与度を計算し、当該寄与度に応じて、前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号の送信停止若しくは送信開始を決定し、又は当該無線信号の送信頻度を決定する位置推定装置。
【請求項2】
前記無線通信部は、
利用中の周波数帯域での無線通信の逼迫度を検出し、
前記無線通信制御部は、
前記逼迫度に基づき、無線信号の送信頻度又は無線信号を送信する無線通信部の数を決定する請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記無線通信制御部は、
所定のアプリケーションプログラムが要求する位置推定精度に応じて、無線信号の送信頻度を決定する請求項1又は2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記入力特徴量生成部は、
前記入力特徴量として、前記無線信号の受信電力、信号電力、受信電力又は信号電力の移動平均から得られる電力比情報、前記チャネル情報のチャネル行列、前記チャネル行列の相関行列、前記チャネル行列を信号処理して得られる演算行列、前記相関行列を信号処理して得られる演算行列、複数の周波数に対応する前記チャネル行列又は前記相関行列を信号処理して得られる演算行列、前記チャネル行列を線形演算して得られるユニタリ行列、前記相関行列を線形演算して得られるユニタリ行列、前記演算行列を線形演算して得られるユニタリ行列、前記チャネル行列を線形演算して得られる対角行列、前記相関行列を線形演算して得られる対角行列、前記演算行列を線形演算して得られる対角行列、前記チャネル行列を線形演算して得られる三角行列、前記相関行列を線形演算して得られる三角行列、前記演算行列を線形演算して得られる三角行列に関する特徴量のうち、1つ以上の特徴量の位相、振幅、実数成分、虚数成分の値、当該1つ以上の値の係数の範囲を規格化した値、及び、複数の時間に対する前記1つ以上の値又は前記規格化した値を生成する請求項1乃至
3のいずれかに記載の位置推定装置。
【請求項5】
位置推定装置で行う位置推定方法において、
位置推定に用いる無線信号の送信開始、送信頻度、又は送信スケジュールに関する送信命令を決定し、前記無線信号の送信命令を、自装置と同じ環境内に設置された固定端末の無線通信部又は位置推定対象の無線通信部へ送信するステップと、
前記送信命令に基づき前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号を受信し、前記無線信号から電波伝搬に関するチャネル情報を取得するステップと、
前記チャネル情報を位置推定モデルに入力可能な入力特徴量に変換するステップと、
前記入力特徴量を、前記電波伝搬に関するチャネル情報と前記位置推定対象の位置情報との関係性を機械学習によりモデル化した位置推定モデルに入力することで、前記位置推定対象の位置を推定計算するステップと、
前記位置推定対象の位置推定精度を基に、前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号の位置推定に対する寄与度を計算し、当該寄与度に応じて、前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号の送信停止若しくは送信開始を決定し、又は当該無線信号の送信頻度を決定するステップと、
を行う位置推定方法。
【請求項6】
請求項1乃至
4のいずれかに記載の位置推定装置としてコンピュータを機能させる位置推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定装置、位置推定方法、及び、位置推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機器がインターネットに繋がるIOT(Internet of things)の実現が進んでいる。自動車、ドローン、建設機械車両等、様々な機器が無線で接続されつつある。無線通信規格についても、標準化規格IEEE 802.11で規定される無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、LTEや5Gによるセルラー通信、IOT向けのLPWA(Low Power Wide Area)通信、車両用の通信に用いられるETC(Electronic Toll Collection System)、VICS(Vehicle Information and Communication System)、ARIB-STD-T109等、サポートする無線通信規格も発展しており、今後の普及が期待されている。
【0003】
無線通信機器は、高いスループットや信頼性能を確保するため、複数のアンテナを用いたMIMO(Multiple input multiple output)通信技術が導入されている。MIMO通信技術は、送信側と受信側との間でどのように電波が伝搬しているかを示すチャネル情報を利用することで、スループットや信頼性能を向上できる。例えば、送信側の無線通信機器には、受信側の無線通信機器に対してチャネル情報を伝えるフィードバック信号の送信機能がサポートされている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、電波伝搬に関するチャネル情報を無線通信機器の位置を推定するために用いる技術が知られている(非特許文献2、3参照)。例えば、複数の基地局と無線通信した無線信号の到達時間やレベル等を基に、無線通信機器の位置を特定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】“Part 11: Wireless LAN Medium Access Control (MAC) and Physical Layer (PHY) Specifications”、IEEE Computer Society、IEEE Std 802.11、2016年、p.2396-p.2400
【文献】Y. Tao、外1名、“A Novel System for WiFi Radio Map Automatic Adaptation and Indoor Positioning”、in IEEE Transactions on Vehicular Technology、vol. 67、 no. 11、2018年11月、p.10683-p.10692
【文献】H. CAO、外5名、“Indoor Positioning Method Using WiFi RTT Based on LOS Identification and Range Calibration”、in Proc., ISPRS International Journal of Geo-Information、2020年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の位置推定技術は、無線通信機器において、複数の基地局と同時に無線通信を行い、かつ、高性能な時間分解性能を備える機器を必要とするため、物体の位置推定に大きなコストを要するという課題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、物体の位置を低コストで推定可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の位置推定装置は、位置推定に用いる無線信号の送信開始、送信頻度、又は送信スケジュールに関する送信命令を決定し、前記無線信号の送信命令を、自装置と同じ環境内に設置された固定端末の無線通信部又は位置推定対象の無線通信部へ送信する無線通信制御部と、前記送信命令に基づき前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号を受信し、前記無線信号から電波伝搬に関するチャネル情報を取得する無線通信部と、前記チャネル情報を位置推定モデルに入力可能な入力特徴量に変換する入力特徴量生成部と、前記入力特徴量を、前記電波伝搬に関するチャネル情報と前記位置推定対象の位置情報との関係性を機械学習によりモデル化した位置推定モデルに入力することで、前記位置推定対象の位置を推定計算する位置推定モデル利用部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様の位置推定方法は、位置推定装置で行う位置推定方法において、位置推定に用いる無線信号の送信開始、送信頻度、又は送信スケジュールに関する送信命令を決定し、前記無線信号の送信命令を、自装置と同じ環境内に設置された固定端末の無線通信部又は位置推定対象の無線通信部へ送信するステップと、前記送信命令に基づき前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号を受信し、前記無線信号から電波伝搬に関するチャネル情報を取得するステップと、前記チャネル情報を位置推定モデルに入力可能な入力特徴量に変換するステップと、前記入力特徴量を、前記電波伝搬に関するチャネル情報と前記位置推定対象の位置情報との関係性を機械学習によりモデル化した位置推定モデルに入力することで、前記位置推定対象の位置を推定計算するステップと、を行う。
【0010】
本発明の一態様の位置推定プログラムは、上記位置推定装置としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、物体の位置を低コストで推定可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、無線通信システムの基本動作(前提動作)を示す図である。
【
図3】
図3は、無線通信システムの動作(第1例)を示す図である。
【
図4】
図4は、無線通信システムの動作(第2例)を示す図である。
【
図5】
図5は、無線通信システムの動作(第3例)を示す図である。
【
図6】
図6は、無線通信システムの動作(第4例)を示す図である。
【
図7】
図7は、無線通信システムの動作(第5例)を示す図である。
【
図9】
図9は、実験環境エリアの分割例を示す図である。
【
図11】
図11は、エリア毎の最善の端末の組み合わせを示す図である。
【
図12】
図12は、位置推定装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0014】
[発明の概要]
本発明は、通常用いられる汎用的な無線通信情報を用いて、つまり、固定に設置した固定端末と位置推定装置との間のチャネル情報を用いて、又は、当該固定端末と同じ環境内に位置する特定物体と位置推定装置との間のチャネル情報を用いて、当該特定物体の位置を推定する。具体的には、位置推定に用いる無線信号の送信開始等に関する送信命令を、固定端末の無線通信部又は特定物体の無線通信部に送信し、当該送信命令に基づき送信された無線信号に含まれるチャネル情報の入力特徴量を位置推定モデルに入力することで、特定物体の実世界内での位置を推定する。
【0015】
このように、本発明は、チャネル情報を用いて特定物体の位置を推定するので、特定物体の位置推定を汎用的な無線通信で行うことが可能となり、特定物体の位置を低コストで推定可能な技術を提供できる。
【0016】
また、本発明は、位置推定に用いる無線信号の送信開始等に関する送信命令を送信するので、無線通信システムの通信品質等に応じて無線信号を送信せることが可能となり、位置推定対象を推定する確実性が向上し、位置推定対象の推定精度を向上可能となり、特定物体の位置推定に要する運用コストをより低コストで実現可能となる。
【0017】
なお、チャネル情報とは、送信側の無線通信端末と受信側の無線通信端末との間でどのように電波が伝搬しているかを示す情報である。チャネル情報とは、MIMO通信技術において、送信側の無線通信端末の備える複数のアンテナと受信側の無線通信端末の備える複数のアンテナとの間での電波伝搬の状態を表す情報である。例えば、チャネル情報は、伝搬ロスから得られる情報、伝搬ロスと電波の位相回転情報とから得られる情報である。
【0018】
入力特徴量とは、チャネル情報を位置推定モデルに入力可能に変換したチャネル情報の特徴量である。例えば、入力特徴量は、変換しないチャネル情報そのもの、チャネル情報に様々な演算を施して得られる数値である。
【0019】
特定物体とは、無線通信端末と同じ環境内に位置する移動可能な位置推定対象である。特定物体の位置とは、例えば、特定物体が移動している経路上の位置、2次元空間内(地図等)の位置、3次元空間内の位置である。これらの位置情報に加え、向きや速度等、より詳細な物理的な状態を更に推定してもよい。
【0020】
[無線通信システムの全体構成]
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。
【0021】
無線通信システムは、位置推定装置1と、固定端末3-1~3-M、若しくは、位置推定対象2-1~2-Q、又は、固定端末3-1~3-Mと位置推定対象2-1~2-Qの両方と、を備える。
【0022】
位置推定装置1は、固定端末3-1~3-Mのうち少なくとも1つの固定端末から送信される無線信号のチャネル情報を収集することで、固定端末3-1~3-Mと同じ環境内に位置する特定物体の位置、つまり、複数の位置推定対象2-1~2-Qのうち少なくとも1つの位置推定対象の位置を推定する(Mは1以上の整数)。また、位置推定装置1は、位置推定対象2-1~2-Qのうち少なくとも1つの位置推定対象から送信される無線信号のチャネル情報を収集することで、位置推定対象2-1~2-Qのうち少なくとも1つの位置推定対象の位置を推定する(Qは1以上の整数)。位置推定装置1は、固定端末のチャネル情報を用いて位置推定対象の位置を推定可能であり、位置推定対象のチャネル情報を用いて位置推定対象の位置を推定可能であり、固定端末のチャネル情報及び位置推定対象のチャネル情報を用いて位置推定対象の位置を推定可能である。
【0023】
固定端末3-1~3-Mは、無線通信部3-1-1~3-M-1を備える。1つの固定端末は、1つ以上の無線通信部を備えてもよい。位置推定対象2-1~2-Qは、無線通信部2-1-1~2-Q-1を備えてもよい。1つの位置推定対象は、1つ以上の無線通信部を備えてもよい。無線通信部3-1-1~3-M-1、若しくは、無線通信部2-1-1~2-Q-1、又は、その両方は、それぞれ、送受で既知となるパイロット信号、又は、任意の無線通信部との間のチャネル情報を含む無線信号を送信する。任意の無線通信部とは、位置推定装置1に備わる無線通信部1-1~1-R、又は、それ以外の無線通信部である。
【0024】
位置推定装置1は、無線通信部1-1~1-Rを介して、固定端末3-i(1≦i≦M)からの無線信号を受信する。又は、位置推定装置1は、無線通信部1-1~1-Rを介して、位置推定対象2-j(1≦j≦Q)からの無線信号を受信する。
【0025】
そして、位置推定装置1は、受信した無線信号から、複数の固定端末3-1~3-Mのうちいずれかの無線通信部3-i-1と任意の自身の無線通信部1-1~1-Rとの間のチャネル情報を取得する。又は、位置推定装置1は、受信した複数の無線信号から、複数の位置推定対象2-1~2-Qのうちいずれかの無線通信部2-j-1と任意の自身の無線通信部1-1~1-Rとの間のチャネル情報を取得する。
【0026】
そして、位置推定装置1は、取得したチャネル情報を入力特徴量生成部1-2に入力する。入力特徴量生成部1-2は、チャネル情報を位置推定モデルへの入力に適した入力特徴量に変換し、変換した入力特徴量を位置推定モデル利用部1-3に入力する。
【0027】
その後、位置推定モデル利用部1-3は、固定端末3-1~3-Mのうち少なくとも1つの固定端末3-iから収集したチャネル情報の入力特徴量を、位置推定対象の位置情報とチャネル情報の入力特徴量との関係性を機械学習によりモデル化した位置推定モデルに入力することで、位置推定対象2-jの位置を推定する。
【0028】
又は、位置推定モデル利用部1-3は、位置推定対象2-1~2-Qのうち少なくとも1つの位置推定対象2-jから収集したチャネル情報の入力特徴量を、上記位置推定モデルに入力することで、位置推定対象2-jの位置を推定する。
【0029】
又は、位置推定モデル利用部1-3は、固定端末3-1~3-Mと位置推定対象2-1~2-Qとのうち複数の端末(固定端末、位置推定対象)から収集したチャネル情報の入力特徴量を、上記位置推定モデルに入力することで、位置推定対象2-jの位置を推定する。
【0030】
[固定端末の構成]
固定端末3-iは、無線通信部3-i-1を備え、所定環境内に設置された無線通信端末である。固定端末3-iは、例えば、壁、床、天井等に固定され、動かないように固定されていることが望ましい。固定端末3-iは、特殊な専用装置を用いて実現してもよいし、スマートフォン、PC等の無線通信部を内蔵する任意の端末を用いて実現してもよい。1つの固定端末3-iが複数の無線通信部3-i-1を備えてもよい。固定端末3-iは、複数でもよい。
【0031】
[無線通信部を具備する位置推定対象の構成]
位置推定対象2-jは、無線通信部2-j-1を備える移動可能な無線通信端末であり、位置推定対象である。例えば、位置推定対象2-jは、自律走行ロボットである。位置推定装置1は固定端末3-jのチャネル情報のみを用いて位置推定対象2-jの位置を推定することとし、無線通信部2-j-1を備えなくてもよい。1つの位置推定対象2-jが複数の無線通信部2-j-1を備えてもよい。位置推定対象2-jは、複数でもよい。
【0032】
[位置推定装置の構成]
位置推定装置1は、例えば、主要場所に設置された無線通信システムの基地局である。位置推定装置1は、固定端末3-iや位置推定対象2-jと通信可能な無線通信部を備えるいかなる構成でもよい。位置推定装置1は、無線通信部1-1~1-Rのアンテナ部が固定である方が、位置推定精度を向上するために望ましい。
【0033】
位置推定装置1は、
図1に示したように、例えば、無線通信制御部1-0と、無線通信部1-1~1-Rと、入力特徴量生成部1-2と、位置推定モデル利用部1-3と、位置推定モデル訓練部1-4と、位置推定対象情報生成部1-5と、を備える。
【0034】
無線通信制御部1-0は、位置推定に用いる無線信号の送信に関する送信命令を決定し、決定した無線信号の送信命令を、無線通信部1-1~1-Rを介して、自装置と同じ環境内に設置された固定端末3-iの無線通信部3-j-1や位置推定対象2-jの無線通信部2-j-1へ送信する機能を備える。
【0035】
無線通信部1-1~1-Rは、無線通信を行うか、無線信号の送受信を行う通信部である。無線通信部1-1~1-Rのうち少なくとも1つの無線通信部は、固定端末3-iの無線通信部3-j-1や位置推定対象2-jの無線通信部2-j-1に対し、チャネル情報を取得するための無線信号の送信を行わせることができる。無線通信部1-1~1-Rは、複数の周波数、複数の周波数帯域、又は、複数の無線通信システムに対応してもよい。
【0036】
無線通信部1-1~1-Rは、それぞれ、上記送信命令を含む無線信号を固定端末3-iの無線通信部3-j-1や位置推定対象2-jの無線通信部2-j-1へ送信し、上記送信命令に基づき固定端末3-iの無線通信部3-j-1や位置推定対象2-jの無線通信部2-j-1から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号から電波伝搬に関するチャネル情報を取得する機能を備える。無線通信部1-1~1-Rは、固定端末3-iや位置推定対象2-jに対応するチャネル情報を取得すると、取得したチャネル情報を入力特徴量生成部1-2へ入力する。
【0037】
入力特徴量生成部1-2は、入力されたチャネル情報を、位置推定モデルに入力可能な入力特徴量に変換する機能を備える。入力特徴量生成部1-2は、変換後のチャネル情報の入力特徴量を位置推定モデル利用部1-3へ入力する。
【0038】
位置推定モデル利用部1-3は、入力特徴量を位置推定モデルに入力することで、移動中又は停止中の位置推定対象2-1~2-Qのうち少なくとも1つの位置推定対象2-jの位置を推定計算し、推定計算した位置情報を出力する機能を備える。位置推定モデル利用部1-3は、予め生成済みの位置推定モデルを用いてもよいし、位置推定モデル訓練部1-4で生成されアップデートされる位置推定モデルを用いてもよい。
【0039】
位置推定モデルとは、別途測定された位置推定対象2-jの位置情報と、固定端末3-iや位置推定対象2-jから取得される電波伝搬に関するチャネル情報(≒入力特徴量)と、の関係性を、機械学習により訓練することで生成した実世界通信モデルである。その他、位置推定モデルは、デジタルツイン技術等により、シミュレーション空間に実空間と同等の空間を生成し、仮想的に生成した位置推定対象とシミュレーションにより計算したチャネル情報との間の関係性を用いて生成してもよい。位置推定モデルは、他の位置推定部で計測したチャネル情報と位置推定対象との関係性から作成した位置推定モデルを用いてもよい。
【0040】
位置推定モデル訓練部1-4は、位置推定対象2-jの位置情報に関するデータを別途取得し、取得した位置情報とチャネル情報との関係性を基に位置推定対象2-jの位置を推定可能な推定位置推定モデルを訓練することで、位置推定モデルを生成する機能を備える。また、位置推定モデル訓練部1-4は、生成した位置推定モデルをアップデートする更に機能を備える。アップデートの方法として、例えば、深層学習で知られるファインチューニングやトランスファーラーニングを用いることができる。
【0041】
位置推定対象2-jの位置情報については、位置推定対象2-jに搭載された位置測定機能による位置測定データを何らかの手段で定期的に収集することで取得してもよい。また、所定の機械学習モデルを用いることで、位置推定対象2-jの位置情報と固定端末3-iから得られるチャネル情報との間の関係性を推定学習可能である。何らかの手段とは、位置推定対象2-jに搭載されたセンサ、カメラ、無線測位、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)、GPS(Global Positioning System)等である。位置推定装置1は、位置推定対象2-jにおける無線測位により得られた位置推定対象2-jの位置及び時間情報を記憶部に記憶し、その位置及び時間情報を定期的に一括して位置推定モデル訓練部1-4へ入力することで、位置推定モデルを訓練するための教師データとすることができる。
【0042】
位置推定モデル訓練部1-4は、入力された位置推定対象2-jの位置及び時間情報と、同じく記憶部に記憶しているチャネル情報及び時間情報とを、同じ時間軸で比較することで、両者の関係性を学習することで、位置推定モデルを訓練できる。又は、位置推定モデル訓練部1-4は、位置推定装置1に搭載されたカメラ、センサ等の情報から位置推定対象2-jの位置情報を取得し、同一時刻・同一時間帯のチャネル情報との関係性を学習することで、位置推定モデルを訓練してもよい。
【0043】
位置推定対象情報生成部1-5は、例えば、位置推定対象2-jの無線通信における位置推定対象ID、無線通信ID等を取得する。その他、位置推定対象情報生成部1-5は、位置推定対象2-jの検出性能を上げるための固有情報として、例えば、所有者情報、ヒト・車・ドローン等の形態、無線通信部2-j-1のアンテナ構成・アンテナ高・アンテナ数・アンテナ形状・端末種別・通信モード・消費電力モード・利用アプリケーション等の通信部情報等により分類されたカテゴリID等を生成してもよい。位置推定対象情報生成部1-5で取得・生成された情報は、位置推定モデル利用部1-3の位置推定モデルへ入力され、又は、位置推定モデル訓練部1-4へ入力される。
【0044】
[無線通信システムの基本動作(前提動作)]
図2は、無線通信システムの基本動作(前提動作)を示す図である。
【0045】
まず、固定端末3-iの無線通信部3-i-1、位置推定対象2-jの無線通信部2-j-1、又は、その両方が、予め定められた無線通信機(位置推定装置1の無線通信部1-1と仮定する)との間で無線通信を行い、パイロット信号又はチャネル情報を含む無線信号の送信を開始する(ステップS1-1)。
【0046】
次に、位置推定装置1の無線通信部1-kが、固定端末3-iの無線通信部3-i-1や位置推定対象2-jの無線通信部2-j-1から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号から電波伝搬に関するチャネル情報を取得する(ステップS1-2)。
【0047】
次に、入力特徴量生成部1-2が、取得した電波伝搬に関するチャネル情報を、位置推定モデルへの入力に適した入力特徴量に変換する(ステップS1-3)。入力特徴量とは、例えば、変換しないチャネル情報の少なくとも一部や、チャネル情報に様々な演算を施して得られる数値である。例えば、無線信号の受信電力、信号電力、受信電力や信号電力の移動平均から得られる電力比情報、複数のアンテナ間の電波伝搬係数からなるチャネル行列、チャネル行列の相関行列、チャネル行列を信号処理して得られる演算行列、相関行列を信号処理して得られる演算行列、複数の周波数に対応するチャネル行列若しくは相関行列を信号処理して得られる演算行列、チャネル行列を線形演算して得られるユニタリ行列、相関行列を線形演算して得られるユニタリ行列、演算行列を線形演算して得られるユニタリ行列、チャネル行列を線形演算して得られる対角行列、相関行列を線形演算して得られる対角行列、演算行列を線形演算して得られる対角行列、チャネル行列を線形演算して得られる三角行列、相関行列を線形演算して得られる三角行列、演算行列を線形演算して得られる三角行列に関する特徴量のうち、1つ以上の特徴量の位相、振幅、実数成分、虚数成分の値、及び当該1つ以上の値の係数の範囲を規格化した値を生成する。入力特徴量生成部1-2は、入力特徴量を時系列のデータとして記憶し、過去から現在までの複数の時間に対する入力特徴量を位置推定モデルに出力してもよい。それらの情報のうち少なくとも1つの時系列情報を用いることができる。入力特徴量の具体的な計算方法については、後述する。
【0048】
また、位置推定装置1は、位置推定モデルに入力するチャネル情報以外の補助情報を別途生成し、生成した補助情報を入力特徴量に追加してもよい(ステップS1-4)。補助情報とは、例えば、位置推定対象2-j又は位置推定対象2-jを特定する特定情報、カメラ・センサ等の温度・位置情報、推定対象装置やその周辺の反射構造体に関する位置・速度・設定等の状態情報、時間、気温、湿度、混雑状況、無線通信システムの設定情報である。
【0049】
最後に、位置推定モデル利用部1-3が、変換したチャネル情報の入力特徴量を位置推定モデルに入力することで、位置推定対象2-jの位置情報を推定計算して出力する(ステップS1-5)。
【0050】
[チャネル情報の収集方法、入力特徴量の計算方法]
チャネル情報の収集方法、入力特徴量の計算方法の例を以下説明する。
【0051】
[チャネル情報の収集方法、入力特徴量の計算方法(第1例)]
第1の方法では、固定端末3-i、又は、位置推定対象2-jは、送受で既知となるパイロット信号を送信する。予め、既知のパターンを送信することで、位置推定装置1の無線通信部1-r(1≦r≦R)は、自身の無線通信部1-rのアンテナ(受信アンテナ数:Mr)と、パイロット信号を送信した無線通信部3-i-1又は無線通信部2-j-1のアンテナ(送信アンテナ数:Ni)と、の間のチャネル行列を取得できる。様々な無線通信システムで利用されているOFDM(直交波分割多重方式)であれば、複数の周波数に対応するサブキャリアのチャネル行列を得ることが可能である。
【0052】
このようにして得られた「送信アンテナ数Ni×受信アンテナ数Mr」のチャネル行列Hから、位置推定モデル利用部1-3に入力する入力特徴量を生成する。例えば、OFDMにより複数のサブキャリアに対してチャネル行列を得る場合、η番目のサブキャリアのチャネル行列をHηと定義する。そして、入力特徴量に変換する方法としては、まず、式(1)のように、チャネル行列Hηを、予め定めたノルムで規格化した規格化チャネル行列Gηと、振幅情報γη又は電力情報γη
2と、に分離する。
【0053】
【0054】
Gηは、例えば、||Gη||F=1となるように設定できる。||・|| Fは、フロベニウムノルムを表す。γηは、一般に大きな振れ幅を持ち、10の5乗やそれ以上の値の変化がありうる。このため、γηやγη
2をdBに変換し、その最大値と最小値を規定し、その範囲を0~1の範囲内等で規格化した値で表現するように変換した値を用いてもよい。これを異なる周波数条件やアンテナ条件に対して複数選択したり平均したりした値γallを用いてもよい。
【0055】
その他、式(2)のように、振幅情報γηをアンテナ毎に分離し、ノルム値をある値に規格化した各列ベクトルg1,η~gMr,ηと、その振幅値γ1,η~γMr,ηと、を得るようにしてもよい。
【0056】
【0057】
ga,ηは、例えば、||ga,η||F=1となるように規定ベクトルとして設定できる。γa,ηやγa,η
2をdBに変換し、その最大値と最小値を規定し、その範囲を0~1の範囲内等で規格化した値で表現するように変換した値を用いてもよい。これをηに対して複数選択したり平均したりしたa番目の列ベクトルに対応する値γa,allを用いてもよい。
【0058】
その他、式(3)のように、振幅情報γηをアンテナ毎に分離し、ノルム値をある値に規格化した各行ベクトルg’1,η~g’Ni,ηと、その振幅値γ’1,η~γ’Ni,ηと、を得るようにしてもよい。
【0059】
【0060】
g’b,ηは、例えば、||g’b,η||F=1となるように規定ベクトルとして設定できる。γ’b,ηやγ’b,η
2をdBに変換し、その最大値と最小値を規定し、その範囲を0~1の範囲内等で規格化した値で表現するように変換した値を用いてもよい。これをηに対して複数選択したり平均したりしたb番目の列ベクトルに対応する値γ’b,allを用いてもよい。
【0061】
チャネル行列Hη、規格化チャネル行列Gη、規格化ベクトルga,η、規格化ベクトルg’b,ηは、各要素の実部と虚部をそれぞれ入力特徴量としたり、虚数のまま入力情報としたり、角度情報等の別形式に変換したり、量子化したりすることができる。
【0062】
また、チャネル行列Hηを用いて生成される相関行列HηHη
H、Hη
HHηを用いることができる。規格化チャネル行列Gηを用いて生成される相関行列GηGη
H、Gη
HGηを用いることができる。チャネル行列Hη、規格化チャネル行列Gη、それらの相関行列HηHη
H、Hη
HHη、GηGη
H、Gη
HGηを、複数の周波数に対して和や平均をとった行列ΣHη、ΣGη、ΣHηHη
H、ΣHη
HHη、ΣGηGη
H、ΣGη
HGηを用いることができる。これら行列のQR分解、SVD(Singular value decomposition)、固有ベクトル分解等をすることで得られる固有値、対角行列、ユニタリ行列を用いることができる。
【0063】
また、上記行列ΣHη、ΣGη、ΣHηHη
H、ΣHη
HHη、ΣGηGη
H、ΣGη
HGηを用いて、到来波方向推定技術により得られる、通信機に対する到来方向に対する電力特性を入力特徴量としてもよい。例えば、ベクトル成分に、(1,exp(jdθ),exp(j2dθ),…,exp(jNdθ))をそれぞれ乗算して得られる値をθに対して計算できる。0~2πまでのθを任意の角度間隔で生成し、複数のθに対しての出力を入力特徴量とすることもできる。dは、予め定めた定数である。Nは、ベクトルの要素数である。
【0064】
つまり、入力特徴量生成部1-2は、入力特徴量として、無線信号の受信電力、信号電力、受信電力や信号電力の移動平均から得られる電力比情報、複数のアンテナ間の電波伝搬係数からなるチャネル行列、チャネル行列の相関行列、チャネル行列を信号処理して得られる演算行列、相関行列を信号処理して得られる演算行列、複数の周波数に対応するチャネル行列若しくは相関行列を信号処理して得られる演算行列、チャネル行列を線形演算して得られるユニタリ行列、相関行列を線形演算して得られるユニタリ行列、演算行列を線形演算して得られるユニタリ行列、チャネル行列を線形演算して得られる対角行列、相関行列を線形演算して得られる対角行列、演算行列を線形演算して得られる対角行列、チャネル行列を線形演算して得られる三角行列、相関行列を線形演算して得られる三角行列、演算行列を線形演算して得られる三角行列に関する特徴量のうち、1つ以上の特徴量の位相、振幅、実数成分、虚数成分の値、及び当該1つ以上の値の係数の範囲を規格化した値を生成する。入力特徴量生成部1-2は、入力特徴量を時系列のデータとして記憶し、過去から現在までの複数の時間に対する入力特徴量(上記1つ以上の値、1つ以上の値の係数の範囲を規格化した値)を位置推定モデルに出力してもよい。
【0065】
等化技術を用いる無線通信システムであれば、到来する電気信号のパスの到来時間と電力と位相条件を推定することができる。このように時系列で得られたチャネル情報であっても、電力の規格化、周波数成分への変換、既存の到来波方向技術で抽出される特徴量や角度情報を用いて位置推定モデルの入力特徴量とすることができる。
【0066】
[チャネル情報の収集方法、入力特徴量の計算方法(第2例)]
第2の方法では、固定端末3-i、又は、位置推定対象2-jは、ある特定の無線基地局と通信を行い、当該特定の無線基地局から送信され受信するパイロット信号からチャネル情報を推定し、何らかの形で量子化してフィードバック情報を生成し、生成したフィードバック情報を含む無線信号を送信する。位置推定装置1の無線通信部1-rは、当該無線信号を受信し、受信した無線信号の中に含まれる特定の無線基地局と固定端末3-i又は位置推定対象2-jとの間のチャネル情報を取得する。
【0067】
まず、特定の無線既知基地局から、送受で既知となるパイロット信号を送信する。予め、既知のパターンを送ることで、固定端末3-iの無線通信部3-i-1又は位置推定対象2-jの無線通信部の2-j-1は、自身の受信するアンテナ(受信アンテナ数:Ni)と、パイロット信号を送信した特定の無線基地局のアンテナ(送信アンテナ数:Mt)と、の間のチャネル行列を取得できる。様々な無線通信システムで利用されているOFDMであれば、複数の周波数に対応するサブキャリアのチャネル行列を得ることができる。
【0068】
このようにして得られた「送信アンテナ数Mt×受信アンテナ数Ni」のチャネル行列Hαから、位置推定モデル利用部1-3に入力する入力特徴量を生成する。例えば、OFDMにより複数のサブキャリアに対してチャネル行列を得る場合、η番目のサブキャリアのチャネル行列をHα,ηと定義する。ここで、特定の無線基地局が位置推定装置1の無線通信部1-rである場合、送信アンテナ数Mtは、第1の方法において無線通信部1-rに対して定義した受信アンテナ数Mrと等しい。また、この場合、チャネル行列Hα,ηは、チャネル行列Hηの転置行列に対応する。
【0069】
そこで、入力特徴量に変換する方法としては、第1の方法と同じように、式(4)のように、チャネル行列Hα,ηを、予め定めたノルムで規格化した規格化チャネル行列Gα,ηと、振幅情報γα,η又は電力情報γη
2と、に分離する。
【0070】
【0071】
Gα,ηは、例えば、||Gα,η||F=1となるように設定できる。||・||Fは、フロベニウムノルムを表す。γα,ηやγα,η
2をdBに変換し、その最大値と最小値を規定し、その範囲を0~1の範囲内等で規格化した値で表現するように変換した値を用いてもよい。これを複数選択したり平均したりした値γα,allを用いてもよい。γα,allを平均化して得る場合には、真値で平均化してもよいし、dBにしてから平均にしてもよいし、真値で平均化したものをdB単位にしてもよい。
【0072】
その他、式(5)のように、振幅情報γα,ηをアンテナ毎に分離し、ノルム値をある値に規格化した各列ベクトルgα,1,η~gα,Ni,ηと、その振幅値γα,1,η~γα,Ni,ηと、を得るようにしてもよい。
【0073】
【0074】
gα,a,ηは、例えば、||gα,a,η||F=1となるように規定ベクトルとして設定できる。γα,a,ηやγα,a,η
2をdBに変換し、その最大値と最小値を規定し、その範囲を0~1の範囲内等で規格化した値で表現するように変換した値を用いてもよい。これをηに対して複数選択したり平均したりしたa番目の列ベクトルに対応する値γα,a,allを用いてもよい。
【0075】
その他、式(6)のように、振幅情報γα,ηをアンテナ毎に分離し、ノルム値をある値に規格化した各行ベクトルg’α,1,η~g’α,Mt,ηと、その振幅値γ’α,1,η~γ’α,Mt,ηと、を得るようにしてもよい。
【0076】
【0077】
g’α,b,ηは、例えば、||g’α,b,η||F=1となるように規定ベクトルとして設定できる。γ’α,b,ηやγ’α,b,η
2をdBに変換し、その最大値と最小値を規定し、その範囲を0~1の範囲内等で規格化した値で表現するように変換した値を用いてもよい。これをηに対して複数選択したり平均したりしたb番目の列ベクトルに対応する値γ’α,b,allを用いてもよい。
【0078】
チャネル行列Hα,η、規格化チャネル行列Gα,η、規格化ベクトルgα,a,η、規格化ベクトルg’α,b,ηは、各要素の実部と虚部をそれぞれ入力特徴量としたり、虚数のまま入力情報としたり、角度情報等の別形式に変換したり、量子化したりすることができる。
【0079】
また、チャネル行列Hα,ηを用いて生成される相関行列Hα,ηHα,η
H、Hα,η
HHα,ηを用いることができる。規格化チャネル行列Gα,ηを用いて生成される相関行列Gα,ηGα,η
H、Gα,η
HGα,ηを用いることができる。チャネル行列Hα,η、規格化チャネル行列Gα,η、それらの相関行列Hα,ηHα,η
H、Hα,η
HHα,η、Gα,ηGα,η
H、Gα,η
HGα,ηを、複数の周波数に対して和や平均をとった行列ΣHα,η、ΣGα,η、ΣHα,ηHα,η
H、ΣHα,η
HHα,η、ΣGα,ηGα,η
H、ΣGα,η
HGα,ηを用いることができる。これら行列のQR分解、SVD、固有ベクトル分解等をすることで得られる固有値、対角行列、ユニタリ行列を用いることができる。
【0080】
一例として、無線LAN規格であるIEEE 802.11n/ac/axで用いられているチャネル情報のフィードバックを用いる場合を示す。これは、上述の例のうちチャネル行列Hα,ηのSVDで得られる右特異行列を角度情報に圧縮し、量子化したものを複数の周波数に対応して生成し、フィードバックするものである。ユニタリ行列は、Compressed beamforming feedback matrixとして角度φとψに変換され、SNR情報と合わせてフィードバックされる。詳細は非特許文献に記載されているが、式(7)のように、角度情報を用いて行列演算を行うことで、チャネル行列の右特異行列に対応するV行列を得ることができる。
【0081】
【0082】
Niは、受信アンテナ数である。Mtは、送信アンテナ数である。この表現は、ある周波数に注目して表記しており、式(7)のV行列は、指定されたサブキャリア数分存在し、サブキャリア毎に角度情報が生成される。更に、チャネル行列の固有値に対応する情報から、NiとMtとのいずれか小さい方のアンテナ数のSNR情報とともに、指定された量子化ビット数で量子化され、無線信号に格納されて送信される。位置推定装置1の無線通信部1-rは、この角度情報及びSNR情報を得ることができ、更には当該無線信号のRSSI情報を得ることができる。
【0083】
角度情報は、そのまま入力特徴量としてもよい。角度情報から算出した正弦と余弦成分を入力特徴量としてもよい。式(7)を用いて、角度情報を右特異行列に戻した行列を用いてもよい。角度情報を右特異行列に戻した後、右特異行列又はその相関行列を周波数方向に平均化した平均化行列を用いてもよい。平均化行列に更にQR分解等の信号処理を加えた行列を用いてもよい。
【0084】
上述の形式で、角度情報として圧縮した右特異行列の各列ベクトルの最後の要素の虚部は必ず0になるため、右特異行列をM×Niの行列として得たとすると、各要素の実部と虚部の数値から、2×Mt×Ni-Niの数値が意味のある情報となる。例えば、右特異行列を4×1の行列とした場合、実部4、虚部3の計7つの要素が意味のある情報であり、4×2の行列を得た場合は、実部8、虚部6の計14つの要素が意味のある情報である。各列の最後の要素の虚部は0であるため、各列の最後の要素は用いなくてもよい。
【0085】
[無線通信システムの動作]
チャネル情報を収集する時間頻度が高いほど、位置推定対象2-jの位置を高頻度かつ高精度で推定できる。しかし、その分多くの無線通信リソースを用いる必要があり、無線通信へ影響を及ぼす。そこで、本実施形態では、上記第1の方法又は第2の方法によるチャネル情報の取集処理を制御する。つまり、固定端末3-iや位置推定対象2-jから送信される無線信号の送信開始時刻や送信頻度等を調整する。例えば、予め定めた長時間又は短時間の所定周期で時間的に連続した複数の入力特徴量を生成する。また、チャネル情報の収集周期を、固定端末3-i又は位置推定対象2-jに対し、それぞれ独立に設定したり、無線通信システムへの影響を鑑みて無線通信システムの品質を重視したい場合に、収集頻度を下げたりする。1度だけ位置推定を行ったり、所定の時間区間だけ位置推定を行ったりする。これにより、位置推定対象の位置推定に要する運用コストをより低コストで実現可能となる。以下、具体例を説明する。
【0086】
[無線通信システムの動作(第1例)]
第1例では、位置推定に用いる無線信号の送信頻度を調整する場合を説明する。送信頻度以外に、例えば、送信開始時刻や送信スケジュールを調整する場合も同様に実施可能である。
【0087】
図3は、無線通信システムの動作(第1例)を示す図である。位置推定を開始、又は、位置推定のためのパイロット信号若しくはチャネル情報を含む無線信号の送信頻度を指定する処理フローである。
【0088】
まず、無線通信制御部1-0は、位置推定の実行又は位置推定の実行頻度の指定を行うことを決定すると、信号の送信又は信号の送信頻度を指定する命令を固定端末3-i又は位置推定対象2-jへ通知する(ステップS2-1)。
【0089】
前述の第1の方法(パイロット信号の送信)の場合、無線通信制御部1-0は、無線信号の送信者である固定端末3-i又は位置推定対象2-jに対し、無線通信部1-1~1-Rのうちいずれかの無線通信部を用いて上記命令を通知する(ステップS2-1)。固定端末3-i又は位置推定対象2-jは、当該命令を受信すると、当該命令に含まれる指示内容に従い、パイロット信号を送信開始し、又は指定された送信頻度でパイロット信号の送信を開始する(ステップS2-2)。
【0090】
位置推定のためのチャネル情報の取得のための無線信号の送信開始は、後述するように無線通信システムのトラヒックや、アプリケーションによる位置推定への要求、又は、位置推定の精度をもとに決定することができる。さらに、位置推定システムの環境内に、位置推定対象となりうる物体が侵入したことを別の方法により検出したものをトリガとしてもよいし、特定の時間や条件を満たす場合に、位置推定を実施したり、本発明の位置推定装置以外の位置推定装置が故障する等、他のシステムの状態をトリガとしてもよい。
【0091】
前述の第2の方法(チャネル情報の送信)の場合、無線通信制御部1-0は、固定端末3-i又は位置推定対象2-jが電気的に接続している無線通信部1-1~1-Rのうちいずれかの無線通信部に対し、チャネル情報のフィードバックを求める無線信号の生成の開始、又は無線信号の生成頻度を指示する命令を行う(ステップS2-1)。この無線信号は、通信相手に対して送受で既知のパイロット信号を送信するとともに、受信側である固定端末3-i又は位置推定対象2-jにおいて受信されたパイロット信号から得られたチャネル情報を何らかの形で量子化し、固定端末3-i又は位置推定対象2-jからチャネル情報を含む無線信号の送信を行わせる(ステップS2-2)。
【0092】
つまり、第2の方法では、無線通信制御部1-0は、無線通信部1-1~1-Rのうちいずれかの無線通信部を介して、固定端末3-i又は位置推定対象2-jにチャネル情報を含む無線信号を送信させる。一定の送信頻度でチャネル情報を含む無線信号を送信させる場合、無線通信部1-1~1-Rが送信するチャネル情報の推定用の無線信号の送信頻度で当該送信頻度を実現することができる。これは、固定端末3-i又は位置推定対象2-jにチャネル情報を取得するには、通信相手からのパイロット信号の送信と当該パイロット信号の受信が必要となるためである。
【0093】
[無線通信システムの動作(第2例)]
第2例では、利用している無線通信の周波数における無線通信の逼迫度に基づき、無線信号の送信頻度を決定する場合を説明する。
【0094】
図4は、無線通信システムの動作(第2例)を示す図である。位置推定の頻度を制御する場合に、無線通信システムの状況を用いる処理フローである。
【0095】
この制御では、無線通信部1-1~1-Rのうちいずれかの無線通信部は、位置推定に利用している周波数帯域のリソース逼迫度を監視する機能を備える。具体的には、無線通信部は、当該周波数帯域で、何らかの受信信号を予め定めたレベルより高い受信電力で受信している時間的比率を計測したり、通信を行っている端末の数をカウントしたり、優先度の高いアプリケーションの利用数や頻度を計測したり、一定時間における無線信号の数を計測したりすることで、当該周波数帯域で、どの程度位置推定用の無線信号を送信することが許容されるかを評価する(ステップS3-1)。
【0096】
その後、無線通信制御部1-0は、上記周波数帯域における逼迫度に対して許容される位置推定頻度の評価結果を参照し、位置推定頻度を決定する(ステップS3-2)。
【0097】
例えば、10秒間における無線信号(予め定めた受信電力よりも高いレベルの無線信号)の時間的な受信比率が80%以上の場合に位置推定用の無線信号の送信頻度を1秒間隔、50~70%で0.5秒間隔、20~50%で0.2秒間隔、0~20%で0.1秒間隔として予め決定しておき、測定された時間的占有率で位置推定用の無線信号の送信頻度を決定する。
【0098】
又は、送信頻度ではなく、無線通信を送信する固定端末3-i又は位置推定対象2-jの数を決定してもよい。多くの無線通信部から無線信号を送信させる場合、各無線通信部の送信頻度が低くても、無線通信システムへの影響が大きくなるため、端末数を制限し、できるだけ少ない無線通信部に対応するチャネル情報を用いることで、無線通信システムへの影響を最小化することができる。
【0099】
[無線通信システムの動作(第3例)]
第3例では、所定のアプリケーションプログラムが要求する位置推定対象の位置推定精度に応じて、無線信号の送信頻度を決定する場合を説明する。
【0100】
図5は、無線通信システムの動作(第3例)を示す図である。推定された位置情報を用いるアプリケーションプログラムが、位置推定用の無線信号の送信頻度を決定する処理フローである。
【0101】
まず、位置情報を利用するアプリケーションプログラムが、位置推定の精度又は頻度に関する情報を生成する。(ステップS4-1)。その後、無線通信制御部1-0は、当該情報に含まれる位置推定精度又は頻度に応じて、無線信号の送信頻度を変更する(ステップS4-2)。
【0102】
[無線通信システムの動作(第4例)]
第4例では、位置推定対象の位置推定に対する無線信号の貢献度や寄与度に応じて、位置推定対象の位置推定に用いる無線信号の送信を停止させ、又は無線信号の送信頻度を下げる場合を説明する。
【0103】
図6は、無線通信システムの動作(第4例)を示す図である。位置推定対象の位置推定に貢献・寄与していない無線信号の送信を停止させたり、送信頻度を下げたりすることで、無線通信システムへの影響を最小限としたり、不要な固定端末を検出したりする処理フローである。
【0104】
まず、無線通信制御部1-0は、位置推定精度を評価し、無線信号の位置推定に対する貢献度や寄与度を評価する(ステップS5-1)。その後、無線通信制御部1-0は、位置推定に貢献・寄与していない無線通信端末(固定端末の無線通信部、位置推定対象の無線通信部)の無線信号について、当該無線信号の送信停止や送信頻度の低下を固定端末3-i又は位置推定対象2-jへ指示する(ステップS5-2)。送信停止や送信頻度の低下のみならず、該当の固定端末を利用固定端末群から取り除くことで、運用コストを低減することもできる。
【0105】
位置推定精度の評価は、例えば、固定端末3-i及び位置推定対象2-jを複数の組み合わせにして位置推定モデルを生成し、取得しているチャネル情報に対応する端末の複数の組み合わせに対応する位置推定結果を出力し、出力結果がずれてきているものを抽出し、当該位置推定モデルにかかわる固定端末3-i又は位置推定対象2-jからの無線信号の送信やチャネル情報の取得を停止したり、送信頻度を低下させる。出力結果のずれは、機械学習の異常検知のアルゴリズムを用いることができる。又は、予め位置推定対象の位置に対応して位置推定への貢献度・寄与度を評価しておき、現在の位置推定対象の位置や動きに応じて、貢献度・寄与度の低い無線信号の送信停止、チャネル情報取得の停止、送信頻度の低下を決定できる。
【0106】
[無線通信システムの動作(第5例)]
第5例では、位置推定対象の位置推定に対する無線信号の貢献度や寄与度に応じて、位置推定対象の位置推定に用いる無線信号の送信を開始させ、又は無線信号の送信頻度を上げる場合を説明する。
【0107】
図7は、無線通信システムの動作(第5例)を示す図である。位置推定対象の位置推定精度を基に、位置推定に貢献・寄与する無線信号の送信を開始又は送信頻度を高め、位置推定に貢献・寄与しない無線信号の送信を停止させたり、送信頻度を下げることで、位置推定精度を高めつつ、無線通信システムへの影響を最小限としたり、位置推定に不要な固定端末を検出したりする処理フローである。
【0108】
まず、無線通信制御部1-0は、位置推定対象の位置条件に対し、位置推定精度を評価し、無線信号の位置推定に対する貢献度や寄与度を評価する(ステップS6-1)。その後、無線通信制御部1-0は、位置推定モデル利用部1-3で推定された現在の構成での位置推定対象の現在位置に対し、位置推定への貢献度が高い、又は近い未来に貢献度が高くなる無線通信端末の位置推定用の無線信号の送信開始、又は送信頻度の向上を決定し、逆に、位置推定に貢献していない、今後貢献しなくなる無線通信端末の無線信号の送信停止や送信頻度の低下を指示する(ステップS6-2)。
【0109】
位置推定精度の評価は、例えば、固定端末3-i及び位置推定対象2-jを複数の組み合わせにして位置推定モデルを生成し、取得しているチャネル情報に対応する端末の複数の組み合わせに対応する位置推定結果を出力し、出力結果がずれてきているものを抽出し、当該位置推定モデルにかかわる固定端末3-i又は位置推定対象2-jからの無線信号の送信やチャネル情報の取得を停止したり、送信頻度を低下させる。
【0110】
又は、固定端末3-i及び位置推定対象2-jを複数の組み合わせにして位置推定モデルを生成し、現在利用していない固定端末3-i及び位置推定対象2-jの無線通信部から、チャネル情報を取得するための無線信号を送信させたり、チャネル推定用の無線信号を送信して、チャネル情報を推定させ、フィードバック信号を遅らせたりする制御を、低い発生頻度で実行する。そして、現在使っていないが低頻度で取得した固定端末3-i又は位置推定対象2-jを含めた位置推定モデルの効果があることが分かった場合に、当該固定端末3-i又は位置推定対象2-jのチャネル情報を取得するための無線信号の送信開始、又は、送信頻度の増加を決定する。又は、予め位置推定対象の位置に対応して位置推定への貢献度・寄与度を評価しておき、現在の位置推定対象の位置や動きに応じて、貢献度・寄与度の低い無線信号の送信停止、チャネル情報取得の停止又は開始、送信頻度の低下又は増加を決定できる。
【0111】
また、第4例と第5例による、位置推定精度への寄与による制御方式では、もう一つの効果として、貢献度が低い固定端末3-i又は位置推定対象2-jを抽出できる点があげられる。すなわち、固定端末3-i又は位置推定対象2-jの複数の組み合わせによる位置推定モデルにより、予測した位置情報をリアルタイム又はオフラインで評価をすれば、貢献しているタイミングが少ないか、若しくは貢献していない固定端末3-i又は位置推定対象2-jを得ることができる。このように、位置推定に寄与していない固定端末3-i又は位置推定対象2-jを除去するか、位置等の条件を変えて再運用することを可能にすることも、効果としてあげられる。
【0112】
[実験結果]
具体的な例と屋内実験結果を交えて、本実施形態の位置推定方法とその効果を説明する。
【0113】
図8に示す屋内の実験環境エリア内に、4台の固定端末3-1~3-4と、1台の位置推定対象2-1と、2つの無線通信部1-1、1-2が接続された位置推定装置1と、を配置した。位置推定対象2-1は、実験環境エリア内の中央部を8の字で走行している。固定端末3-1~3-4は、アクセスポイントである基地局APと無線通信を行っている。
【0114】
固定端末3-1~3-4と位置推定対象2-1は、基地局APから100ms毎にチャネル情報の報告を求められており、無線LANの標準化規格IEEE 802.11acで定められたチャネル情報のフィードバック方法によりチャネル情報の角度情報をフィードバック送信している。基地局APのアンテナ数は、4つである。固定端末3-1~3-4と位置推定対象2-1と無線通信部1-1と1-2のアンテナ数は、2つである。20MHzの帯域幅を用い、5.66GHzの搬送波周波数による通信を行った。
【0115】
2つの無線通信部1-1、1-2は、固定端末3-1~3-4と基地局APとの間のチャネル行列の右特異行列から生成した角度情報、SNR、及び、固定端末3-1~3-4からの無線信号の無線通信部1-1、1-2におけるRSSIの値を得ることができる。無線通信部1-1、1-2からのRSSIは、各1つ取得した。
【0116】
入力特徴量生成部1-2は、前述の数式に従い角度情報からユニタリ行列を算出し、算出したユニタリ行列を周波数で平均化する。これにより、実部8、虚部6の計14つの成分が得られる。また、2つのSNR情報のdB値を0から1の範囲で分布するように規格化したものと、無線通信部1-1、1-2の受信アンテナにおけるRSSIのdB値を0から1の範囲で分布するように規格化したものと、の14+2+2=18の入力特徴量が、固定端末毎に100ms周期で取得される。
【0117】
ここで、位置推定モデルの生成方法を説明する。
【0118】
本実施形態に係る位置推定モデルを生成するため、屋内の実験環境エリア内において、位置推定対象2-1である自律走行ロボットを8時間走行させる。この際、位置推定モデル訓練部1-4は、位置推定対象に具備されたLIDAR(light detection and ranging)とタイヤの制御情報とから得られる高精度な自律走行ロボットの位置情報と、上述の伝搬伝搬に関する入力特徴量と、を200ms周期で同じ時系列で整理した訓練データを生成する。前述のように、入力特徴量の生成周期は100msであるが、200ms周期で区切った時間幅で得られる最新の情報を選択して用いて訓練データを生成した。
【0119】
そして、生成した訓練データを用いて、GRU(Gated Reccurent Unit)と直接結合とを用いた深層ニューラルネットワークによる位置推定モデルを訓練した。学習率は0.0002、最適化アルゴリズムはADAMを用いた。GRUは隠れ層1、次元を35とし、入力35、出力35の2つの直接結合層と、入力35、出力2の1つの直接結合層と、を用いて、実験環境エリア内におけるX座標とY座標情報を出力するように、重みとバイアスを逆伝搬により更新した。更新後の位置推定モデルを用いた。
【0120】
位置推定を行った出力を実際の値からの誤差を単位をmとして整理した結果を
図10に示す。左から順に、2-1、3-1、3-2、3-3、3-4、{2-1,3-1}、{2-1,3-2}、{2-1,3-3}、{2-1,3-4}、{2-1,3-1,3-2,3-3,3-4}、{2-1,3-1,3-3}、{2-1,3-3,3-4}の端末(固定端末、位置推定装置)からのチャネル情報から各端末に対して18の入力特徴量を生成し、位置推定モデルに入力して位置情報を予測した結果の平均誤差である。
図9で区分されたArea毎の推定誤差で整理されている。
【0121】
無線通信システムの動作(第5例)において、予め固定端末又は位置推定対象の無線通信部からのチャネル情報から入力特徴量を生成するにあたり、
図10の組み合わせ全てに位置推定モデルを生成し、別途測定された自律走行ロボットの位置情報に対して位置推定精度への貢献が
図10から得られる。Area A~Fにおいて、最も高い位置推定精度を出力できる組み合わせを
図11に示す。このように、予め位置推定対象の位置に対する入力特徴量の貢献度が評価できていれば、位置推定対象の位置に応じて、無線信号の送信又は停止を決定できる。例えば、Area Aにロボットが入った場合、又は近づいた場合に、全ての固定端末と位置推定対象からのチャネル情報を収集し、Area B~Fでは固定端末3-2の無線信号を停止させ、Area B、D、E、Fではさらに固定端末3-4の無線信号を送信を停止させても、位置推定精度に影響はないことがわかる。さらに、
図10の結果からは、{2-1,3-1,3-3}の組み合わせを使うことで、全体的には最善又は次善の効果が得られていることもわかる。このことから、固定端末3-2、3-4の廃止、又は位置の変更を検討することもできる。さらに、Area Aにおいて、全ての端末のチャネル情報を選択するか否かについて、無線通信システムの動作(第2例)から、無線通信システムの逼迫度により判断してもよい。無線通信システムがデータ通信にあまり利用されていない等、制約がない場合には、全ての端末からチャネル情報を取得し、制約がある場合には、次善の組み合わせとして{2-1,3-1,3-3}からのチャネル情報を用いた位置推定モデルを用いると判断してもよい。
【0122】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、位置推定装置1は、位置推定に用いる無線信号の送信開始、送信頻度、又は送信スケジュールに関する送信命令を決定し、前記無線信号の送信命令を、自装置と同じ環境内に設置された固定端末の無線通信部又は位置推定対象の無線通信部へ送信する無線通信制御部1-0と、前記送信命令に基づき前記固定端末の無線通信部又は前記位置推定対象の無線通信部から送信される無線信号を受信し、前記無線信号から電波伝搬に関するチャネル情報を取得する無線通信部1-1~1-Rと、前記チャネル情報を位置推定モデルに入力可能な入力特徴量に変換する入力特徴量生成部1-2と、前記入力特徴量を、前記電波伝搬に関するチャネル情報と前記位置推定対象の位置情報との関係性を機械学習によりモデル化した位置推定モデルに入力することで、前記位置推定対象の位置を推定計算する位置推定モデル利用部1-3と、を備える。
【0123】
つまり、無線通信端末の無線信号に含まれる電波伝搬に関するチャネル情報と位置推定モデルとを用いて位置推定対象の位置を推定するので、位置推定対象の位置推定を汎用的な無線通信で行うことが可能となり、位置推定対象の位置を低コストで推定可能な技術を提供できる。
【0124】
また、位置推定装置1は、位置推定に用いる無線信号の送信開始、送信頻度、又は送信スケジュールに関する送信命令を送信するので、無線通信システムの通信品質等に応じて無線信号を送信せることが可能となり、位置推定対象を推定する確実性が向上し、位置推定対象の推定精度を向上可能となり、特定物体の位置推定に要する運用コストをより低コストで実現可能となる。
【0125】
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0126】
上記説明した本実施形態の位置推定装置1は、例えば、
図12に示すように、CPU901と、メモリ902と、ストレージ903と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906と、を備えた汎用的なコンピュータシステムを用いて実現できる。メモリ902及びストレージ903は、記憶装置である。当該コンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、位置推定装置1の各機能が実現される。
【0127】
位置推定装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよい。位置推定装置1は、複数のコンピュータで実装されてもよい。位置推定装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであってもよい。位置推定装置1用のプログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。位置推定装置1用のプログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0128】
1:位置推定装置
1-0:無線通信制御部
1-1~1-R:無線通信部
1-2:入力特徴量生成部
1-3:位置推定モデル利用部
1-4:位置推定モデル訓練部
1-5:位置推定対象情報生成部
2-1~2-Q:位置推定対象
2-1-1~2-Q-1:無線通信部
3-1~3-M:固定端末
3-1-1~3-M-1:無線通信部
901:CPU
902:メモリ
903:ストレージ
904:通信装置
905:入力装置
906:出力装置