(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】光伝送装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/291 20130101AFI20241211BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H04B10/291
H04J14/02
(21)【出願番号】P 2023562034
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2021042544
(87)【国際公開番号】W WO2023089755
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 慎
(72)【発明者】
【氏名】金井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智暁
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/131001(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/009869(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142907(WO,A1)
【文献】特開2003-255195(JP,A)
【文献】特開2009-284304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/291
H04J 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを収容する収容モジュールと光通信を行うよう接続可能な接続部と、
前記接続部から光信号が入力されるとともに、前記接続部へ光信号を出力する光スイッチと、
前記光スイッチを制御する光スイッチ制御部と、
前記光スイッチから出力された複数の波長の光を合波し、伝送路に出力する上りの波長合分波部と、
伝送路から入力された光を分波し、前記光スイッチに出力する下りの波長合分波部と、
を備え、
前記接続部は、前記収容モジュールとして、1芯収容用モジュールおよび2芯収容用モジュールのいずれも接続可能である光伝送装置。
【請求項5】
複数の前記接続部を備え、
複数の前記接続部のうち、光ファイバを接続する前記収容モジュールが接続された前記接続部を特定可能な特定部を備えた請求項1に記載の光伝送装置。
【請求項7】
光ファイバを収容する収容モジュールと光通信を行うよう接続可能な接続部と、
前記接続部から光信号が入力されるとともに、前記接続部へ光信号を出力する光スイッチと、
前記光スイッチから出力された複数の波長の光を合波し、伝送路に出力する上りの波長合分波部と、
伝送路から入力された光を分波し、前記光スイッチに出力する下りの波長合分波部と、
を備え、
前記接続部は、前記収容モジュールとして、1芯収容用モジュールおよび2芯収容用モジュールのいずれも接続可能である光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遅延を低減しながら光信号を宛先に応じて中継することができる光通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に関連する光通信装置の構成として、
図8に示される構成例について説明する。
【0003】
図8には、光スイッチ(光SW)と、波長管理制御部と、光SW制御部と、上りと下りの波長合分波部とが示されている。光スイッチは、入力された1以上の加入者装置からの光信号を、それぞれいずれかの方路の伝送路へ出力する。波長管理制御部は、加入者装置の使用波長を動的に割り当てる。光SW制御部は、加入者装置の光信号が所望の方路の伝送路へ伝送されるように光スイッチを制御する。波長合分波部は、複数の波長を合波したり、複数の波長に分波する。
【0004】
また、
図8に示される加入者装置は光トランシーバを有する。光トランシーバは波長可変光送受信器でよく、その場合は任意の波長で通信が行える。また、光トランシーバはAMCC(Auxiliary Management and Control Channel)機能付き光トランシーバでもよく、その場合はAMCCにより重畳された制御信号を介して、利用波長を制御可能である。波長管理制御部が制御を行う場合は、光SW制御部が、加入者装置と波長管理制御部が接続されるよう光SWの配線を変更する。
【0005】
光ファイバ数に関し、中継では上りと下りのファイバを別々のファイバとし、同一波長を使うことが多いため、
図8の構成例において、波長合分波部は、上りと下りで分けているため、光ファイバ数はそれらに対応した数となる。またアクセス区間では上りと下りを別波長として1芯とすることが多かった。この場合、1芯の加入者装置からの光信号を、2芯に変換する必要がある。
図8の構成例では、加入者装置から1芯の光ファイバで送信された光信号をWDMフィルタで2芯に変換しているが、加入者装置からの接続態様は1芯に光ファイバのみに限定しているわけではなく、
図8に示されるように、2芯のトランシーバを用いる加入者装置を収容することもある。
【0006】
図8の構成例では、最初に加入者装置が波長管理制御部に制御信号を送り、波長管理制御部が使用波長を通知する。この時、制御信号による光電力の有無で上りポートを特定できるが、その加入者装置に対応する下りポートは、事前情報無しに発見することはできない。このため、ある加入者装置の上りポートに対して下りポートをどこにするかは、事前に決めておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8の構成例に示されるように、加入者装置が1芯の場合は、WDMフィルタの設置が必要となり、そして光スイッチとWDMフィルタ間の配線作業が発生する。このように、
図8の構成例では、加入者装置ごとに現地作業内容が異なるため、現地作業者の混乱を招きやすい。また、WDMフィルタの設置や、そのためのラック選定に加え、光スイッチの設置場所によってはラック間配線作業も発生する。
【0009】
また、建設工事工程で光スイッチやWDMフィルタなどを一度設置し、後の開通工程で、例えば事前情報と異なり加入者装置が実は2芯であったことが判明した際は、設置されたWDMフィルタや光ファイバを全て撤去する必要がある。このように、
図8に示される構成例では、1芯から2芯に変更された場合に、柔軟に対応できない。
【0010】
さらに、一つの加入者装置に対する上りと下りを、事前に決められたポートに挿す必要があるが、
図8に示される構成例では、上りと下りを複数ポート(光スイッチの全ポート)から選択するため、配線間違いが起こり得る。
【0011】
このように、従来技術では作業内容が加入者装置に依存していたため、WDMフィルタの設置や配線作業が発生するなど作業を単純化することができなかった。
【0012】
上記事情に鑑み、本発明は、作業を単純化することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、光ファイバを収容する収容モジュールと光通信を行うよう接続可能な接続部と、前記接続部から光信号が入力されるとともに、前記接続部へ光信号を出力する光スイッチと、前記光スイッチを制御する光スイッチ制御部と、前記光スイッチから出力された複数の波長の光を合波し、伝送路に出力する上りの波長合分波部と、伝送路から入力された光を分波し、前記光スイッチに出力する下りの波長合分波部と、を備え、前記接続部は、前記収容モジュールとして、1芯収容用モジュールおよび2芯収容用モジュールのいずれも接続可能である光伝送装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、作業を単純化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態における光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】1芯収容用モジュールの構成例を示す図である。
【
図3】2芯収容用モジュールの構成例を示す図である。
【
図4】第2実施形態における光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】第3実施形態における光伝送システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】1芯収容用モジュールの構成例を示す図である。
【
図7】2芯収容用モジュールの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における光伝送システム1の構成を示すブロック図である。光伝送システム1は、光伝送装置100、収容モジュール200、および加入者装置300で構成される。このうちの収容モジュール200には、1芯用収容モジュール201と、2芯用収容モジュール202がある。また、加入者装置300には、1芯の加入者装置301と、2芯の加入者装置302がある。1芯用収容モジュール201は、1芯の加入者装置301と光ファイバで接続するモジュールである。2芯用収容モジュール202は、2芯の加入者装置302と光ファイバで接続するモジュールである。
【0017】
光伝送装置100は、上りの波長合分波部111、下りの波長合分波部112、上りの光SW(スイッチ)141、下りの光SW(スイッチ)142、波長管理制御部120、光SW(スイッチ)制御部130、LED(Light Emitting Diode)ランプ161、162、163、および接続部151、152、153で構成される。接続部151、152、153をそれぞれ区別しない場合には、接続部150と表現する。上りと下りで光SW(スイッチ)を別々に置くのでなく、一つの光SWで上りと下りを収容する構成でも良い。
【0018】
波長管理制御部120は、加入者装置300の使用波長を動的に割り当てる。具体的に、波長管理制御部120は、加入者装置300の通信開始時に、加入者装置300と光SW141または光SW142を介して接続し、加入者装置300の使用波長を動的に割り当てる。光SW制御部130は、加入者装置300からの光信号が所望の方路の伝送路へ伝送されるように光SW130を制御する。波長合分波部111は、光SW141から出力された複数の波長の光を合波し、伝送路に出力する。波長合分波部112は、伝送路から入力された光を分波し、光SW142に出力する。光SW141は、加入者装置300からの光信号を光SW制御部130の制御に従って経路を切り替えて波長合分波部111に出力する。光SW142は、波長合分波部111からの光信号を光SW制御部130の制御に従って経路を切り替えて加入者装置300に出力する。なお、各加入者装置300がどの波長と経路で通信を行うかは、ネットワーク全体を監視する別装置で決定し、波長管理制御部120および光SW制御部130に指示を出してもよい。その場合は、光伝送装置100に上記別装置との接続のためのポートが設けられる。
【0019】
接続部150は、収容モジュール200を光伝送装置100に光通信を行うよう接続可能である。接続部150は、光伝送装置100に、複数(本実施形態では3つの接続部151、152、153)設けられる。この接続部150は、1芯収容用モジュール201および2芯収容用モジュール202のいずれも光伝送装置100に光通信を行うよう接続可能である。接続部150は、例えば、収容モジュール200を抜き差し可能なソケットである。
【0020】
各接続部150は、2つのポートが設けられる。本実施形態において、ポートとは、光ファイバを通す穴を示す。1つのポートは、上りの光ファイバ用のポートであり、もう1つのポートは下りの光ファイバ用のポートである。上りの光ファイバ用のポートを通った光ファイバは、光SW141に接続する。下りの光ファイバ用のポートを通った光ファイバは、光SW142に接続する。
【0021】
加入者装置301のように1芯で接続する装置の場合は、接続部150に1芯用収容モジュール201が接続される。加入者装置302のように2芯で接続する装置の場合は、接続部150に2芯収容用モジュール202が接続される。
【0022】
LEDランプ161、162、163は、それぞれ接続部151、152、153に対応して設けられる。LEDランプ161、162、163は、光ファイバを接続する収容モジュール200が接続された接続部150を特定可能な特定部の一例である。LEDランプ161、162、163は、LED遠隔制御装置170に接続される。LED遠隔制御装置170は、LEDランプ161、162、163の状態(点灯、消灯、点滅など)を遠隔から制御可能である。LEDランプ161、162、163は、開通作業時に、光伝送装置100に収容モジュール200が複数接続されている場合、作業員はいずれの収容モジュール200と接続すればよいのかを特定する。
【0023】
例えば遠隔操作により光ファイバを接続する収容モジュール200が接続された接続部150に対応するLEDをLED遠隔制御装置170により点灯させる。一例として接続部151に接続された収容モジュール200に光ファイバを接続する場合には、LED161を点灯する。これにより、作業員は、光伝送装置100の筐体前で確認できるため、いずれの収容モジュール200と接続すればよいのか判断に困ることなく作業を行うことができる。
【0024】
図2は、1芯収容用モジュール201の構成例を示す図である。1芯収容用モジュール201は、1-2芯変換部211を備える。1-2芯変換部211は、1芯から2芯、および2芯から1芯の変換を行う。1-2芯変換部211は、例えばWDMフィルタ、またはサーキュレータである。
図3は、2芯収容用モジュール202の構成例を示す図である。2芯収容用モジュール202は、単に加入者装置302からの光ファイバと光伝送装置100の連結部であって、特別な機能を備えていない。
【0025】
このように、加入者装置300が1芯でも2芯であっても、光伝送装置100と加入者装置300との接続作業は、光伝送装置100に収容モジュール200を接続し、加入者装置300からの光ファイバを接続する作業となるので、作業が単純化される。また光伝送装置100に収容モジュール200を接続するだけなので、作業現場でのWDMフィルタの設置やファイバ配線作業と比較して、作業量が減少する。
【0026】
また、加入者装置300からの光ファイバが光伝送装置100に直接接続されないので、作業者が収容モジュール200を介さず光ファイバを光伝送装置100に接続するようなミスを防ぐことができる。
【0027】
(第2実施形態)
次に接続部150が収容モジュール200を介さずに光ファイバを直接接続可能な構成例について説明する。以下の説明において、既出の符号についての説明は省略する。
図4は、第2実施形態における光伝送システム1の構成を示すブロック図である。
【0028】
接続部150は、1芯収容用モジュール201を接続可能であり、さらに光ファイバを直接接続可能な構成となっている。
図4に示されるように、2芯の加入者装置302からの光ファイバは、接続部152に直接接続される。
【0029】
第2実施形態によれば、収容モジュール200を接続するか否かの違いはあるが、従来技術と比較して、作業現場でのWDMフィルタの設置やファイバ配線作業が不要となっている。そして、光ファイバや収容モジュール200の接続作業は、全て光伝送装置100の筐体前での作業となるため、第2実施形態においても作業が単純化することができる。
【0030】
(第3実施形態)
次に接続部150が収容モジュール200と1ポートで接続する構成例について説明する。以下の説明において、既出の符号についての説明は省略する。
図5は、第3実施形態における光伝送システム1の構成を示すブロック図である。
【0031】
第1、第2の実施形態では、接続部150は、収容モジュール200と2ポートで接続していたが、第3実施形態では、
図5に示されるように、収容モジュール200と1ポートで接続する。そして、1ポートから2本の光ファイバが光SW141、142に通っていく構成としている。この場合の収容モジュール200の構成について説明する。
【0032】
図6は、1芯収容用モジュール201の構成例を示す図である。1芯収容用モジュール201は、1-2芯変換部211を備える。1-2芯変換部211は、1芯から2芯、および2芯から1芯の変換を行う。1-2芯変換部211は、例えばWDMフィルタ、またはサーキュレータである。
図7は、2芯収容用モジュール202の構成例を示す図である。2芯収容用モジュール202は、単に加入者装置302からの光ファイバと光伝送装置100の連結部であって、特別な機能を備えていない。
【0033】
このように、加入者装置300が1芯でも2芯であっても、光伝送装置100と加入者装置300との接続作業は、光伝送装置100に収容モジュール200を接続し、加入者装置300からの光ファイバを接続する作業となるので、作業が単純化される。また光伝送装置100に収容モジュール200を接続するだけなので、作業現場でのWDMフィルタの設置やファイバ配線作業と比較して、作業量が減少する。
【0034】
また、接続部150を1ポートにすることで、光伝送装置100に用意すべきポート数を減らすことができるので、2ポートの場合と比較して、光伝送装置100の筐体サイズをスリム化できる。また、2ポートの場合と比較して、光伝送装置100の部品点数も削減でき、さらに製造工数も削減できることから、光伝送装置100のコストを抑えることができる。
【0035】
さらに、第3実施形態では、加入者装置300からの光ファイバが光伝送装置100に直接接続されないので、作業者が収容モジュール200を介さず光ファイバを光伝送装置100に接続するようなミスを防ぐことができる。
【0036】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、光ファイバ伝送路で伝送を行う光伝送装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…光伝送システム
100…光伝送装置
111…波長合分波部
111、112…上りの波長合分波部
120…波長管理制御部
130…光SW制御部
150、151、152、153…接続部
200…収容モジュール
201…1芯用収容モジュール
202…2芯用収容モジュール
211…1-2芯変換部
300、301、302…加入者装置