(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法および光学積層体の製造装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241211BHJP
C09J 171/02 20060101ALI20241211BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241211BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J171/02
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2021063706
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020089499
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】三浦 秀宣
(72)【発明者】
【氏名】門 英昭
(72)【発明者】
【氏名】宮村 勲
(72)【発明者】
【氏名】石渡 和孝
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 雅士
(72)【発明者】
【氏名】久米 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】倉本 賢尚
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118804(JP,A)
【文献】特開2013-061377(JP,A)
【文献】特開2012-234112(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026346(WO,A1)
【文献】実開昭59-193850(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 171/02
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムからなる層を少なくとも1つ有する光学積層体の製造方法であって、
互いに異なる2つのフィルムをエネルギー線活性型の接着剤を介して貼合して、貼合フィルムを形成する貼合工程と、
前記貼合フィルムをロールに接触させながら、前記ロール上で前記貼合フィルムにエネルギー線を照射して、前記接着剤の活性化処理を行う活性化処理工程と
を備え、
前記ロールの内部には、熱媒体を流す熱媒体流路が設けられ、前記ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部
であって、外管および内管から構成されるロール本体部を備え、前記熱媒体流路に前記熱媒体を循環させる熱媒体循環手段により前記ロールの表面の温度が調節され、
前記熱媒体流路は、前記回転軸心に沿って前記ロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路
であって、前記ロールの回転軸心方向からみて、前記外管と前記内管の間に位置する断面環状の第1通路と、回転軸心から放射状に延在して前記第1通路の一端側に連通する複数の第2通路と、回転軸心から放射状に延在して前記第1通路の他端側に連通する複数の第3通路とから構成される主通路と、前記回転軸心上に延びるとともに前記主通路に連通して前記主通路に前記熱媒体を導入する導入通路と、前記回転軸心上に延びるとともに前記主通路に連通して当該主通路に流れた熱媒体を排出する第1排出通路と、一端が前記主通路の下流側で、且つ、前記外周面部に接近した位置にある主通路に連通する一方、他端が前記第1排出通路に連通する第2排出通路とを備えており、
前記活性化処理工程は、前記ロール本体部を回転させながら、前記熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含む、光学積層体の製造方法。
【請求項2】
光学フィルムからなる層を少なくとも1つ有する光学積層体の製造方法であって、
互いに異なる2つのフィルムをエネルギー線活性型の接着剤を介して貼合して、貼合フィルムを形成する貼合工程と、
前記貼合フィルムをロールに接触させながら、前記ロール上で前記貼合フィルムにエネルギー線を照射して、前記接着剤の活性化処理を行う活性化処理工程と
を備え、
前記ロールの内部には、熱媒体を流す熱媒体流路が設けられ、前記ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部
であって、外管および内管から構成されるロール本体部を備え、前記熱媒体流路に前記熱媒体を循環させる熱媒体循環手段により前記ロールの表面の温度が調節され、
前記熱媒体流路は、前記回転軸心に沿って前記ロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路
であって、前記ロールの回転軸心方向からみて、前記外管と前記内管の間に位置する断面環状の第1通路と、回転軸心から放射状に延在して前記第1通路の一端側に連通する複数の第2通路と、回転軸心から放射状に延在して前記第1通路の他端側に連通する複数の第3通路とから構成される主通路と、前記主通路に流れた熱媒体を排出する排出通路とを備えており、
前記活性化処理工程は、前記ロール本体部を回転させながら、前記熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含み、前記主通路内を流れる熱媒体の体積は、前記主通路の総容積の90%以上100%以下に維持される、光学積層体の製造方法。
【請求項3】
前記活性化処理工程は、前記ロール本体部の表面の幅方向の温度分布を3.5℃以下に維持した状態で行う、請求項1または2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記活性化処理を経た貼合フィルム上にエネルギー線を照射する工程を含む、請求項1から3の何れか一つに記載の光学積層体の製造方法。
【請求項5】
光学フィルムからなる層を少なくとも1つ有する光学積層体の製造装置であって、
互いに異なる2つのフィルムをエネルギー線活性型の接着剤を介して貼合して、貼合フィルムを形成する貼合装置と、
前記貼合フィルムに接触するロールと、
前記ロール上で前記貼合フィルムにエネルギー線を照射して、前記接着剤の活性化処理を行う活性化処理装置と
を備え、
前記ロールの内部には、熱媒体を流す熱媒体流路が設けられ、前記ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部
であって、外管および内管から構成されるロール本体部を備え、前記熱媒体流路に前記熱媒体を循環させる熱媒体循環手段により前記ロールの表面の温度が調節され、
前記熱媒体流路は、前記回転軸心に沿って前記ロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路
であって、前記ロールの回転軸心方向からみて、前記外管と前記内管の間に位置する断面環状の第1通路と、回転軸心から放射状に延在して前記第1通路の一端側に連通する複数の第2通路と、回転軸心から放射状に延在して前記第1通路の他端側に連通する複数の第3通路とから構成される主通路と、前記回転軸心上に延びるとともに前記主通路に連通して前記主通路に前記熱媒体を導入する導入通路と、前記回転軸心上に延びるとともに前記主通路に連通して当該主通路に流れた熱媒体を排出する第1排出通路と、一端が前記主通路の下流側で、且つ、前記外周面部に接近した位置にある主通路に連通する一方、他端が前記第1排出通路に連通する第2排出通路とを備えている、光学積層体の製造装置。
【請求項6】
前記活性化処理装置により前記接着剤の活性化処理を行うとき、前記ロール本体部の表面の幅方向の温度分布を3.5℃以下に維持した状態に制御する制御装置を更に有する、請求項5に記載の光学積層体の製造装置。
【請求項7】
前記第2排出通路は、2つ以上設けられている、請求項5
または6に記載の光学積層体の製造装置。
【請求項8】
前記第2排出通路は、前記回転軸心周りに等間隔に設けられている、請求項
7に記載の光学積層体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法および光学積層体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板等の光学積層体の製造では、光学積層体を構成する各層の光学フィルムをエネルギー線活性型の接着剤で貼合させた後、得られた貼合フィルムを搬送させながら活性化処理が行われている。該活性化処理は、ロール上を通過する貼合フィルムにエネルギー線を照射することより行われている。該エネルギー線の照射は、貼合フィルムの変形や硬化ムラ等の貼合フィルムの品質の問題が生じないよう、通常、冷却したロール上で貼合フィルムを冷却しながら行われる。
従来、ロールの冷却方法として、例えば、特開2019-3210号公報(特許文献1)に示すように、ロール内に熱媒体を流すことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のようにロール内に熱媒体を流す際、ロールの表面の幅方向において温度ムラが発生するおそれがあった。そして、ロールの表面の幅方向の温度ムラは、貼合フィルムの幅方向において接着剤の反応速度を不均一にし、貼合フィルムの品質の問題が発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、本開示は、ロールの表面の幅方向の温度ムラを低減して、貼合フィルムの品質の問題を低減した光学積層体の製造方法および光学積層体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に対し、本願発明者らは、温度ムラの発生が、熱媒体の循環に伴う気体により生じることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
本発明の光学積層体の製造方法は、
光学フィルムからなる層を少なくとも1つ有する光学積層体の製造方法であって、
互いに異なる2つのフィルムをエネルギー線活性型の接着剤を介して貼合して、貼合フィルムを形成する貼合工程と、
前記貼合フィルムをロールに接触させながら、前記ロール上で前記貼合フィルムにエネルギー線を照射して、前記接着剤の活性化処理を行う活性化処理工程と
を備え、
前記ロールの内部には、熱媒体を流す熱媒体流路が設けられ、前記ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部を備え、前記熱媒体流路に前記熱媒体を循環させる熱媒体循環手段により前記ロールの表面の温度が調節され、
前記熱媒体流路は、前記回転軸心に沿って前記ロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路と、前記回転軸心上に延びるとともに前記主通路に連通して前記主通路に前記熱媒体を導入する導入通路と、前記回転軸心上に延びるとともに前記主通路に連通して当該主通路に流れた熱媒体を排出する第1排出通路と、一端が前記主通路の下流側で、且つ、前記外周面部に接近した位置にある主通路に連通する一方、他端が前記第1排出通路に連通する第2排出通路とを備えており、
前記活性化処理工程は、前記ロール本体部を回転させながら、前記熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含む。
【0007】
前記態様によれば、活性化処理工程は、ロール本体部を回転させながら、熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含むので、主通路内の気体を第2排出通路から排出させながらロール本体部内に熱媒体を流すことができる。これにより、ロール内の気体に起因するロールの表面の幅方向の温度ムラを低減して、貼合フィルムの幅方向において接着剤の反応速度を略均一にし、貼合フィルムの品質の問題を低減することができる。
【0008】
また、本発明の光学積層体の製造方法は、
光学フィルムからなる層を少なくとも1つ有する光学積層体の製造方法であって、
互いに異なる2つのフィルムをエネルギー線活性型の接着剤を介して貼合して、貼合フィルムを形成する貼合工程と、
前記貼合フィルムをロールに接触させながら、前記ロール上で前記貼合フィルムにエネルギー線を照射して、前記接着剤の活性化処理を行う活性化処理工程と
を備え、
前記ロールの内部には、熱媒体を流す熱媒体流路が設けられ、前記ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部を備え、前記熱媒体流路に前記熱媒体を循環させる熱媒体循環手段により前記ロールの表面の温度が調節され、
前記熱媒体流路は、前記回転軸心に沿って前記ロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路と、前記主通路に流れた熱媒体を排出する排出通路とを備えており、
前記活性化処理工程は、前記ロール本体部を回転させながら、前記熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含み、前記主通路内を流れる熱媒体の体積は、前記主通路の総容積の90%以上100%以下に維持される。
【0009】
前記態様によれば、活性化処理工程は、ロール本体部を回転させながら、熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含み、主通路内を流れる熱媒体の体積は、主通路の総容積の90%以上100%以下に維持されるので、主通路内の気体を排出通路から排出させながらロール本体部内に熱媒体を流すことができる。これにより、ロール内の気体に起因するロールの表面の幅方向の温度ムラを低減して、貼合フィルムの幅方向において接着剤の反応速度を略均一にし、貼合フィルムの品質の問題を低減することができる。
【0010】
好ましくは、光学積層体の製造方法の一実施形態では、前記活性化処理工程は、前記ロール本体部の表面の幅方向の温度分布を3.5℃以下に維持した状態で行う。
【0011】
前記実施形態によれば、活性化処理工程は、ロール本体部の表面の幅方向の温度分布を3.5℃以下に維持した状態で行うので、ロールの表面の幅方向の温度ムラをより低減して、貼合フィルムの品質の問題をより低減することができる。
【0012】
光学積層体の製造方法の一実施形態では、活性化処理を得た貼合フィルム33上にエネルギー線を照射する工程を含む。
【0013】
前記実施形態によれば、さらに、活性化処理を経た貼合フィルム上にエネルギー線を照射する工程を含むので、接着剤の活性化処理をより確実に行うことができる。
【0014】
また、本開示の一態様である光学積層体の製造装置は、
光学フィルムからなる層を少なくとも1つ有する光学積層体の製造装置であって、
互いに異なる2つのフィルムをエネルギー線活性型の接着剤を介して貼合して、貼合フィルムを形成する貼合装置と、
前記貼合フィルムに接触するロールと、
前記ロール上で前記貼合フィルムにエネルギー線を照射して、前記接着剤の活性化処理を行う活性化処理装置と
を備え、
前記ロールの内部には、熱媒体を流す熱媒体流路が設けられ、前記ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部を備え、前記熱媒体流路に前記熱媒体を循環させる熱媒体循環手段により前記ロールの表面の温度が調節され、
前記熱媒体流路は、前記回転軸心に沿って前記ロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路と、前記回転軸心上に延びるとともに前記主通路に連通して前記主通路に前記熱媒体を導入する導入通路と、前記回転軸心上に延びるとともに前記主通路に連通して当該主通路に流れた熱媒体を排出する第1排出通路と、一端が前記主通路の下流側で、且つ、前記外周面部に接近した位置にある主通路に連通する一方、他端が前記第1排出通路に連通する第2排出通路とを備えている。
【0015】
前記態様によれば、ロールの熱媒体流路は、主通路に連通する第2排出通路を有するので、主通路内の気体を第2排出通路から排出させながらロール本体部内に熱媒体を流すことができる。これにより、ロール内の気体に起因するロールの表面の幅方向の温度ムラを低減して、貼合フィルムの幅方向において接着剤の反応速度を略均一にし、貼合フィルムの品質の問題を低減することができる。
【0016】
好ましくは、光学積層体の製造装置の一実施形態では、前記活性化処理装置により前記接着剤の活性化処理を行うとき、前記ロール本体部の表面の幅方向の温度分布を3.5℃以下に維持した状態に制御する制御装置を更に有する。
【0017】
前記実施形態によれば、活性化処理装置により接着剤の活性化処理を行うとき、ロール本体部の表面の幅方向の温度分布を制御することにより、ロールの表面の幅方向の温度ムラをより低減して、貼合フィルムの品質の問題をより低減することができる。
【0018】
好ましくは、光学積層体の製造装置の一実施形態では、
前記ロール本体部は、外管と内管とを有し、
前記外管と前記内管との間の空間が、前記熱媒体流路の一部を構成する。
【0019】
前記実施形態によれば、外管と内管との間の空間が熱媒体流路の一部を構成するので、外管内の一部の空間のみ熱媒体が流れる構成とできる。このため、径が同じ単管のロールと比べて、より少ない熱媒体の量で流速を増加させることができる。
【0020】
好ましくは、光学積層体の製造装置の一実施形態では、前記第2排出通路は、2つ以上設けられている。
【0021】
前記実施形態によれば、第2排出通路は、2つ以上設けられているので、効率的に気体を排出することができる。
【0022】
好ましくは、光学積層体の製造装置の一実施形態では、前記第2排出通路は、前記回転軸心周りに等間隔に設けられている。
【0023】
前記実施形態によれば、ロールの回転動作時において各第2排出通路がロール上部の気体溜まりを短い間隔で通過していくようになるので、ロールの一回転当たりの主通路の上部に溜まる気体の排出時間が増えるようになり、効率良く主通路に熱媒体を満たすことができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一態様である光学積層体の製造方法および光学積層体の製造装置によれば、ロールの表面の幅方向の温度ムラを低減して、貼合フィルムの品質の問題を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】光学積層体の製造装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図5A】ロールの他の実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の一態様である光学積層体の製造方法および光学積層体の製造装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0027】
(実施形態)
(光学積層体の製造装置)
図1は、光学積層体の製造装置の一実施形態を示す概略図である。
図1に示すように、光学積層体の製造装置15は、互いに異なる第1フィルム31と第2フィルム32を貼合して貼合フィルム33を形成する貼合装置16と、貼合フィルム33に接するロール2と、貼合フィルム33にエネルギー線を照射して光学積層体34を形成する活性化処理装置13と、ロール2を制御する制御装置17とを備える。
【0028】
この実施形態では、第1フィルム31は、偏光フィルム等の光学フィルムであり、第2フィルム32は、透明フィルムであり、光学積層体34は、偏光板である。これらのフィルムは、
図1の矢印で示す方向に搬送される。
【0029】
光学フィルムは、偏光フィルム、位相差フィルム等、光学特性を示す樹脂フィルムであある。偏光フィルムは、例えば、一軸延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料による染色を施し、その後ホウ酸処理して形成される。
透明フィルムとしては、非晶性ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリサルホン系樹脂フィルム、脂環式ポリイミド系樹脂フィルムなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。透明フィルムとしては、透湿度の低い樹脂フィルムが好ましい。透明フィルムとしては、更に、トリアセチルセルロースフィルムやジアセチルセルロースフィルムなどのセルロースアセテート系の樹脂フィルムが挙げられる。
【0030】
光学フィルムは、単層であってもよいし、積層体であってもよい。光学フィルムは、光学特性を示すフィルムであれば、その種類は特に限定されない。得られる光学積層体は、光学特性を示さないフィルムを有するものであってもよく、光学特性を示すものであれば、例えば、位相差フィルム、プロテクトフィルム、上述の偏光フィルム等の光学フィルムや、これらのフィルムや熱可塑性樹脂が積層された光学積層体であってもよい。つまり、光学積層体は、光学フィルムからなる層を少なくとも1つ有していればよい。
【0031】
貼合装置16は、第1フィルム31の片面に接着剤を塗布する接着剤塗工装置11と、第1フィルム31と第2フィルム32を重ね合わせ接着剤を介して貼合する第1貼合ロール21および第2貼合ロール22とを有する。接着剤は、エネルギー線活性型の接着剤である。
【0032】
接着剤は、例えば、耐候性や屈折率、カチオン重合性などの観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂を用いる。エポキシ樹脂は、例えば、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などを用いる。エポキシ樹脂には、重合開始剤、例えば、活性エネルギー線照射で重合させるための光カチオン重合開始剤、加熱によって重合させるための熱カチオン重合開始剤、さらに他の添加剤(増感剤など)が添加される。
【0033】
ロール2は、ロール2の中心線が回転軸心に一致するように回転駆動され、貼合フィルム33をロール2の表面に接触させながら搬送する。ロール2は、貼合フィルム33に接触する。つまり、ロール2は、活性化処理装置13から貼合フィルム33にエネルギー線が照射される際に、貼合フィルム33に接触することにより貼合フィルム33に熱が加わりにくくする。ロール2は、その内部に、熱媒体を流す熱媒体流路を有し、熱媒体が熱媒体流路を流れることで、貼合フィルム33が冷却される。熱媒体は、例えば、水などの冷媒である。
【0034】
ロール2は、外周面部が円筒状に延びるロール本体部を備える。熱媒体流路に熱媒体を循環させる熱媒体循環手段によりロール2の表面の温度が調節される。熱媒体循環手段は、例えば、循環ポンプ等を含む熱媒体循環ユニットから構成され、制御装置17により制御される。
【0035】
熱媒体流路は、回転軸心に沿ってロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路と、回転軸心上に延びるとともに主通路に連通して主通路に熱媒体を導入する導入通路と、回転軸心上に延びるとともに主通路に連通して当該主通路に流れた熱媒体を排出する第1排出通路と、一端が主通路の下流側で、且つ、外周面部に接近した位置にある主通路に連通する一方、他端が第1排出通路に連通する第2排出通路とを備えている。
【0036】
ロール2の熱媒体流路は、主通路に連通する第2排出通路を有するので、主通路内の気体を第2排出通路から排出させながらロール本体部内に熱媒体を流すことができる。気体は、例えば、空気である。第2排出通路は、気体のみならず、熱媒体を排出してもよい。したがって、ロール2内の気体に起因するロール2の表面の幅方向の温度ムラを低減して、貼合フィルム33の幅方向において接着剤の反応速度を略均一にし、貼合フィルム33の品質の問題を低減することができる。
【0037】
また、第2排出通路は、外周面部に接近した位置にある主通路に連通するので、ロール2の回転軸心を水平に配置して使用する際、主通路の外周面部側に溜まった気体を第2排出通路から有効に排出させることができる。
また、第2排出通路は、主通路の下流側に連通しているので、熱媒体の流れに従って効率的に気体を排出することができる。
【0038】
ロール本体部は、例えば、外管の単管から構成されてもよく、このとき、外管の内部の空間が、熱媒体流路の一部(主通路)を構成する。また、ロール本体部は、例えば、外管と内管の二重管から構成されてもよく、このとき、外管と内管の間の空間は、熱媒体流路の一部(主通路)を構成する。外管と内管の間の空間は、ロール2の回転軸心方向からみて、円環状に形成される。
【0039】
活性化処理装置13は、ロール2に向かい合って配置される。活性化処理装置13は、ロール2上で貼合フィルム33にエネルギー線を照射して、接着剤の活性化処理を行う。つまり、活性化処理装置13は、エネルギー線の照射により、接着剤を重合硬化させる。このようにして、活性化処理装置13の活性化処理により形成された光学積層体34は、巻取ロール20により、巻き取られる。なお、エネルギー線は、通常、ロール2上だけでなくロール2の周辺にも照射される。
活性化処理装置13は、例えば、波長400nm以下に発光分布を有し、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いる。
【0040】
制御装置17は、好ましくは、活性化処理装置13により接着剤の活性化処理を行うとき、ロール本体部の表面の幅方向の温度分布(最大温度差)を3.5℃以下、より好ましくは2℃以下に維持した状態に制御する。つまり、好ましくは、制御装置17は、ロール本体部の表面の幅方向の最大温度とロール本体部の表面の幅方向の最小温度との差を3.5℃以下とする。これによれば、ロール2の表面の幅方向の温度ムラをより低減して、貼合フィルム33の品質の問題をより低減することができる。
具体的に述べると、制御装置17は、中央処理装置から構成される。制御装置17は、例えば、熱媒体循環手段を制御して、ロール2内の熱媒体の流速、ロール2内の熱媒体の流量、または、ロール2内の熱媒体量などを調整することにより、ロール2の表面の幅方向の温度分布を3.5℃以下に維持する。
【0041】
好ましくは、ロール本体部は、外管と内管とを有し、外管と内管との間の空間が、熱媒体流路の一部を構成する。これによれば、外管内の一部の空間のみ熱媒体が流れる構成とできるので、径が同じ単管のロール2と比べて、より少ない熱媒体の量で流速を増加させることができる。
【0042】
好ましくは、第2排出通路は、2つ以上設けられている。これによれば、第2排出通路の数量が多くなり、効率的に気体を排出することができる。好ましくは、第2排出通路は、回転軸心周りに等間隔に設けられている。これによれば、ロール2の回転動作時において各第2排出通路がロール上部の気体溜まりを短い間隔で通過していくようになるので、ロール2の一回転当たりの主通路の上部に溜まる気体の排出時間が増えるようになり、効率良く主通路に熱媒体を満たすことができる。
【0043】
なお、本開示の製造装置は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。前記製造装置は、活性化処理装置やロールを、それぞれ2つ以上有してもよい。前記製造装置において、複数の活性化処理装置は、1つのロールに面するよう設けられていてもよい。
【0044】
(光学積層体の製造方法)
次に、
図1を用いて光学積層体の製造方法の一実施形態について説明する。
まず、第1フィルム31および第2フィルム32をエネルギー線活性型の接着剤を介して貼合して、貼合フィルム33を形成する。これを、貼合工程という。その後、貼合フィルム33をロール2に接触させながら、ロール2上で貼合フィルム33にエネルギー線を照射して、接着剤の活性化処理を行う。これを、活性化処理工程という。
【0045】
ここで、ロール2の内部には、熱媒体を流す熱媒体流路が設けられている。ロール2は、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部を備える。熱媒体流路に熱媒体を循環させる熱媒体循環手段によりロール2の表面の温度が調節される。
【0046】
熱媒体流路は、回転軸心に沿ってロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路と、回転軸心上に延びるとともに主通路に連通して主通路に熱媒体を導入する導入通路と、回転軸心上に延びるとともに主通路に連通して当該主通路に流れた熱媒体を排出する第1排出通路と、一端が主通路の下流側で、且つ、外周面部に接近した位置にある主通路に連通する一方、他端が第1排出通路に連通する第2排出通路とを備える。
そして、活性化処理工程は、ロール本体部を回転させながら、熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含む。
【0047】
これによれば、活性化処理工程は、ロール本体部を回転させながら、熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含むので、主通路内の気体を第2排出通路から排出させながらロール本体部内に熱媒体を流すことができる。したがって、ロール2内の気体に起因するロール2の表面の幅方向の温度ムラをより低減して、貼合フィルム33の幅方向において接着剤の反応速度を略均一にし、貼合フィルム33の品質の問題を低減することができる。
【0048】
好ましくは、活性化処理工程において、主通路内を流れる熱媒体の体積が、主通路の総容積に対し、90%以上100%以下、より好ましくは95%以上100%以下に維持される。これによれば、ロール2の表面の幅方向の温度ムラをより低減して、貼合フィルム33の品質の問題をより低減することができる。
【0049】
ここで、主通路内の気体の排出量は、熱媒体流路内に流れる熱媒体の流量、ロール本体の回転速度、各排出通路の断面積のサイズ等を適宜調節することにより調整することができる。つまり、主通路内の気体を排出することにより、主通路内を流れる熱媒体の体積を調節することができる。主通路内を流れる熱媒体の体積は、本開示の製造装置におけるロールであれば、容易に調整することができる。
【0050】
好ましくは、活性化処理工程は、ロール本体部の表面の幅方向の温度分布を3.5℃以下(より好ましくは、2℃以下)に維持した状態で行う。これによれば、ロール2の表面の幅方向の温度ムラをより低減して、貼合フィルム33の品質の問題をより低減することができる。
【0051】
上記活性化処理工程において、貼合フィルム33上にエネルギー線を複数回照射する場合、通常、2つ以上の活性化処理装置が備わった製造装置を用いて、エネルギー線照射を行う。該エネルギー線照射は、2つ以上の活性化処理装置に面した1つのロールを通過させながら行ってもよいし、1つ又は複数の活性化処理装置に面しているロールを2つ以上有する装置を用いて、貼合フィルムを複数のロールに通過させながら行ってもよい。
本実施形態において、さらに、活性化処理を得た貼合フィルム33上にエネルギー線を照射する工程を含む。これによれば、接着剤の活性化処理をより確実に行うことができる。
本実施形態において、活性化処理を得た貼合フィルム33上にエネルギー線を照射する工程は、上記活性化処理工程におけるロールと異なる構成のロール上で行う点で、上記活性化処理工程におけるエネルギー線照射と異なる。
【0052】
なお、本開示の製造方法は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、本開示の製造方法は、
図1の製造装置15により実現されることに限らず、他の異なる装置により実現されてもよい。
【0053】
また、光学積層体の製造方法の他の実施形態では、貼合工程と活性化処理工程とを備え、ロールの内部には、熱媒体を流す熱媒体流路が設けられ、ロールは、ロール中心線が回転軸心に一致するとともに外周面部が円筒状に延びるロール本体部を備え、熱媒体流路に前記熱媒体を循環させる熱媒体循環手段により前記ロールの表面の温度が調節される。熱媒体流路は、回転軸心に沿ってロール本体部の外周面部の全域に対応するように延びる主通路と、主通路に流れた熱媒体を排出する排出通路とを備える。つまり、排出通路は、前記第1排出通路および前記第2排出通路に限定されず、例えば、前記第2排出通路がなくてもよい。活性化処理工程は、ロール本体部を回転させながら、熱媒体流路内に熱媒体を流す操作を含む。活性化処理工程において、主通路内を流れる熱媒体の体積は、主通路の総容積の90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%以下に維持される。
【0054】
これによれば、主通路内の気体を排出通路から排出させながらロール本体部内に熱媒体を流すことができる。したがって、ロール内の気体に起因するロールの表面の幅方向の温度ムラを低減して、貼合フィルムの幅方向において接着剤の反応速度を略均一にし、貼合フィルムの品質の問題を低減することができる。
【0055】
(ロールの構造)
図2は、本開示の製造方法に適用可能なロールを備えた装置の一例(以下、本ロールを「ロール装置1」ということがある。)の概略断面図である。
図2に示すように、ロール装置1は、連続搬送される貼合フィルムW1(
図1の貼合フィルム33)に接して当該貼合フィルムW1の温度を調整するためのものである。ロール装置1は、前記光学積層体の製造装置15に含まれる。
【0056】
ロール装置1は、内部に熱媒体H1が流通する熱媒体流路10を有し、回転軸心C1周りに回転可能な上述したロール2と、熱媒体流路10に熱媒体H1を循環させる熱媒体循環ユニット3(前記熱媒体循環手段)とを備えている。
【0057】
ロール2は、金属材により形成され、ロール中心線が回転軸心C1に一致するとともに外周面部4aが円筒状に延びるロール本体部4と、該ロール本体部4の各端面部4bにそれぞれ一体に設けられ、軸中心線が回転軸心C1に一致する一対の軸部5と、各軸部5と熱媒体循環ユニット3とを接続する一対の回転継手6とを備え、各軸部5は、ベアリングB1を介して支持フレーム7に回転可能に軸支されている。
【0058】
熱媒体流路10は、ロール本体部4の内部に形成された主通路10aと、一方の軸部5の回転軸心C1上を直線状に延びるとともに主通路10aに連通する導入通路10bと、他方の軸部5の回転軸心C1上を直線状に延びるとともに主通路10aに連通する第1排出通路10cとを備えている。
【0059】
主通路10aは、断面円形状をなすとともに外周面部4aの全域に対応するように回転軸心C1に沿って延びる形状をなしている。
導入通路10bは、断面円形状をなすとともに主通路10aよりも断面積が狭く設定され、熱媒体循環ユニット3から吐出される熱媒体H1を主通路10aに導入するようになっている。
第1排出通路10cは、断面円形状をなすとともに主通路10aよりも断面積が狭く設定され、主通路10aの熱媒体H1を熱媒体循環ユニット3へと排出するようになっている。つまり、第1排出通路10cの断面積は、主通路10aにおける回転軸心C1に沿って外周面部4aの全域に対応するように延びている部分の断面積よりも狭い。
熱媒体循環ユニット3は、ロール2の一端側から他端側に熱媒体H1を循環させていて、当該熱媒体H1は、ロール2の内部を導入通路10b、主通路10a及び第1排出通路10cの順に通過するようになっている。
【0060】
ロール本体部4における他方の端面部4bの内部には、正面視でL字状に延びる第2排出通路10dが形成されている。第2排出通路10dは、
図2から
図4に示すように、一端がロール本体部4における主通路10aの下流側で、且つ、外周面部4aに接近する位置の主通路10aに連通する一方、他端が第1排出通路10cの上流側に連通していて、回転軸心C1周りに等間隔に12か所形成されている。
【0061】
次に、ロール装置1を作動させたときのロール2内部における熱媒体H1の流れについて詳述する。
まず初めに、ロール装置1における熱媒体循環ユニット3を作動させる。すると、熱媒体H1がロール2における導入通路10b、主通路10a及び第1排出通路10cを順に流れる。
【0062】
次いで、ロール2を回転軸心C1周りの一方側(
図3の矢印R1)に回転させるとともに、連続搬送される貼合フィルムW1に接触させる。このとき、ロール2の内部において熱媒体H1が導入通路10b、主通路10a及び第1排出通路10cの順に流れる。そして、主通路10a内の気体を第2排出通路10dから排出させながらロール本体部4内に熱媒体H1を流すことができる。熱媒体H1は、ロール本体部4における外周面部4aの裏面全域に常時接するように循環することが好ましい。熱媒体H1が上記外周面部4aの裏面全域に常時接するように循環すると、ロール本体部4における外周面部4aがバラつきなく冷却されるようになるので、ロール2に接する貼合フィルムW1に温度分布のバラつきを発生させないようにすることができる。
【0063】
また、ロール本体部4の上部に気体が溜まらなくなるので、外周面部4aを所望する温度まで冷却するまでの時間が短くなり、貼合フィルムW1を効率良く冷却することができる。
【0064】
また、第2排出通路10dが回転軸心C1周りに等間隔に2か所以上形成されているので、ロール2の回転動作時において各第2排出通路10dがロール2の上部の気体溜まりを短い間隔で通過していくようになる。したがって、ロール2の1回転当たりの主通路10aの上部に溜まる気体の排出時間が増えるようになり、効率良く主通路10aに熱媒体H1を隙間無く満たすことができる。
【0065】
また、各第2排出通路10dは、ロール本体部4における端面部4bの内部に形成されているので、ロール本体部4の外側に第2排出通路10dを有する構造を取り付ける場合に比べてロール2の外形が小さくなる。したがって、ロール2全体をコンパクトにすることができ、ロール2周りのスペースを有効利用することができる。
【0066】
(ロールの他の構造)
図5Aは、本開示の製造方法や製造装置に適用可能なロールの他の実施形態を示す概略断面図である。
図5Bは、
図5AのA-A断面図である。このロール50は、単管である
図2のロール2と異なり、二重管のロールである。以下、前記ロール2と異なる部分のみ説明する。
【0067】
図5Aと
図5Bに示すように、ロール50は、外管51と内管52と第1軸部53と第2軸部54とを有する。内管52は、外管51の内部に配置され、外管51と内管52は、ロール本体部を構成する。第1軸部53は、ロール本体部の一端に設けられ、第2軸部54は、ロール本体部の他端に設けられている。
【0068】
ロール50は、熱媒体が流れる熱媒体流路55を有する。熱媒体流路55は、ロール本体部(外管51および内管52)に設けられた主通路と、第1軸部53に設けられた導入通路55dと、第2軸部54に設けられた第1排出通路55eとを有する。
【0069】
主通路は、ロール50の回転軸心C1方向からみて、外管51と内管52の間に位置する断面環状の第1通路55aと、回転軸心C1から放射状に延在して第1通路55aの一端側に連通する複数の第2通路55bと、回転軸心C1から放射状に延在して第1通路55aの他端側に連通する複数の第3通路55cとから構成される。
【0070】
第1通路55aは、ロール本体部の外周面部51aの全域に対応するように回転軸心C1に沿って延びている。第2通路55bおよび第3通路55cは、それぞれ、回転軸心C1周りに等間隔に形成されている。各第2通路55bは、導入通路55dと第1通路55aとを連通させ、各第3通路55cは、第1通路55aと第1排出通路55eとを連通させる。
第1排出通路55eは、第1通路55aよりも断面が狭く設定されている。つまり、第1排出通路55eの断面積は、主通路における回転軸心C1に沿って外周面部51aの全域に対応するように延びている部分の断面積よりも狭い。
そして、熱媒体は、
図5Aの点線の矢印で示すように、導入通路55dから、第2通路55b、第1通路55aおよび第3通路55cを順に通過して、第1排出通路55eから排出される。
【0071】
第2軸部54の周りには、回転軸心C1方向からみて、略放射状に延びる複数の第2排出通路55fが回転軸心C1周りに等間隔に配設されている。第2排出通路55fは、配管を含む。配管は、例えば、ゴム材からなる配管チューブで構成されるが、金属パイプや樹脂パイプで形成されていてもよい。
第2排出通路55fの一端は、主通路の下流側で、且つ、外周面部51aに接近する位置の主通路(第1通路55a)に連通し、第2排出通路55fの他端は、第1排出通路55eに連通している。
なお、主通路(第1通路55a)の上部に溜まる気体が排出される動きは、
図2のロール2と比べて、排出される経路が第2排出通路10dから第2排出通路55fに変わる以外は同じであるので詳細な説明を省略する。
【0072】
以上により、第2排出通路55fがロール本体部や第2軸部54の外側に配設されているので、第2排出通路55fがロール本体部の端部の内部に形成される構造に比べて、加工コストが低くなり、コストを抑えたロール50にすることができる。
【0073】
(実施例)
次に、実施例について説明する。
【0074】
(第1フィルム)
厚さ20μmのPVAフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約6倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に40秒間浸漬した。
【0075】
次に、このフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.044/5.7/100である28℃の染色水溶液に30秒間浸漬することにより、染色処理した。次に、染色処理後のフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が11.0/6.2/100である70℃のホウ酸水溶液に120秒間浸漬することにより、架橋処理した。
【0076】
引き続き、架橋処理後のフィルムを、8℃の純水で15秒間洗浄した後、300N/mの張力で保持した状態で、60℃で50秒間、次いで75℃で20秒間乾燥した。こうして、PVAフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ7μmの偏光フィルムを得た。
【0077】
保護フィルムとして、シクロオレフィン系樹脂フィルム(COP、日本ゼオン株式会社製ZF-14 UV吸収特性無し 厚さ13μm)を準備した。得られた偏光フィルムと、シクロオレフィン系樹脂フィルムとの間に水系接着剤を注入し、ニップロールで貼り合わせた。得られた積層体の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、偏光子層と、偏光子層の片面に配置された保護層と、を備える第1フィルムを得た。第1フィルムの厚さは20μmであった。
【0078】
なお、水系接着剤は、水100質量部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバール(登録商標) KL318)3質量部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(田岡化学工業株式会社製;スミレーズレジン(登録商標)650;固形分濃度30%の水溶液)1.5質量部とを添加して調製した。
【0079】
(第2フィルム)
透明フィルムとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで形成されたフィルムを準備した。透明フィルムの片面に配向層用組成物を膜厚3μmになるように塗工し、積算光量が20mJ/cm2となるように紫外線を照射して、配向層を形成した。
【0080】
なお、上述の配向層用組成物は、2-フェノキシエチルアクリレートと、テトラヒドロフルフリルアクリレートと、ジペンタエリスリトールトリアクリレートと、ビス(2-ビニルオキシエチル)エーテルとを1:1:4:5の割合で混合し、得られた混合物の総質量に対して、重合開始剤としてLUCIRIN(登録商標) TPOを4%の割合で添加した調製した。
【0081】
形成した配向層上に、重合性ネマチック液晶化合物(メルク社製,RMM28B)を含有する液晶組成物を、ダイコーティングにより配向層上に塗工した。
【0082】
液晶組成物の調製には、熱媒体として、メチルエチルケトン(MEK)と、メチルイソブチルケトン(MIBK)と、沸点が155℃であるシクロヘキサノン(CHN)とを、質量比(MEK:MIBK:CHN)で35:30:35の割合で混合させた混合熱媒体を用いた。そして、液晶組成物100g当たりの固形分が1~1.5gとなるように調製した液晶組成物を、乾燥前の塗工量が4~5gとなるように配向層上に塗工した。
【0083】
配向層上に液晶組成物を塗工した後、得られた塗工層を、乾燥温度を75℃とし、乾燥時間を120秒間として乾燥処理した。その後、紫外線(UV)照射により液晶化合物を重合させて硬化させた。こうして、位相差層、配向層および透明フィルムとで構成された第2フィルムを得た。この位相差層は、nz>nx=nyの関係を満足しており、ポジティブC層であった。位相差層と、配向層との合計の厚さは4μmであった。
【0084】
(エネルギー線活性型の接着剤の製造方法)
接着剤として、下記の表1に示す割合で化合物を混合した。表1では、化合物の割合を質量部数で表す。
【0085】
【0086】
表1中の化合物の詳細は、次の通りである。
化合物1:
【化1】
3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業株式会社製「CEL2021P」、脂環式ジエポキシ)
【0087】
化合物2:
【化2】
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(NPGDGE)(ナガセケムテックス株式会社製「EX-211」、ジエポキシ)
【0088】
化合物3:
【化3】
2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(EHGE)(東京化成工業株式会社製、モノエポキシ)
【0089】
開始剤:株式会社ADEKA製のカチオン系開始剤SP-500(固形分2.25部)
増感剤:川崎化成工業株式会社製の増感剤DEN
レベリング剤:株式会社ADEKA製のレベリング剤KRM-430
【0090】
(光学積層体の製造方法)
図1に示す製造装置を用いて、下記の手順で光学積層体を作製する。ただし、該製造装置に用いるロールは、
図5Aに示すようなロール50とする。具体的に述べると、ロールは、主通路に連結した第2排出通路を有する。第2排出通路の配管の直径は、10mmである。ロールの最外径は、150mmであり、ロールの長さは、300mmである。主通路の第1通路の外径(外管の内径)は、128mmであり、主通路の第1通路の内径(内管の外径)は、100mmである。主通路の第1通路の断面積は、0.0050m
2である。
【0091】
そして、第1フィルムおよび第2フィルムを連続的に搬送しながら、第1フィルムおよび第2フィルムの表面にコロナ処理を施す。第1フィルムおよび第2フィルムを引き続き搬送しながら、第1フィルムのコロナ処理面にエネルギー線活性型の接着剤を塗工機(バーコータ)を用いて塗工した後、第1フィルムおよび第2フィルムを重ね合わせ、一対の貼合ロール間に通して、第1フィルム/塗工層/第2フィルムの層構成を有する貼合フィルムを得る。
【0092】
得られた貼合フィルムを速度10m/分で搬送しながら、貼合フィルムに対して積算光量が250mJ/cm2(UVB))となるようにロール本体部に密着させながら活性化処理装置から紫外線を照射し、接着剤を硬化させることにより、光学積層体を得る。活性化処理装置は、アイグラフィックス社製高圧水銀ランプを使用する。
【符号の説明】
【0093】
1 ロール装置
2 ロール
3 熱媒体循環ユニット(熱媒体循環手段)
4 ロール本体部
4a 外周面部
4b 端面部
5 軸部
10 熱媒体流路
10a 主通路
10b 導入通路
10c 第1排出通路
10d 第2排出通路
15 光学積層体の製造装置
16 貼合装置
17 制御装置
11 接着剤塗工装置
13 活性化処理装置
20 巻取ロール
21 第1貼合ロール
22 第2貼合ロール
31 第1フィルム(偏光フィルム)
32 第2フィルム(透明フィルム)
33 貼合フィルム
34 光学積層体(偏光板)
50 ロール
51 外管(ロール本体部)
51a 外周面部
52 内管(ロール本体部)
53 第1軸部
54 第2軸部
55 熱媒体流路
55a 第1通路(主通路)
55b 第2通路(主通路)
55c 第3通路(主通路)
55d 導入通路
55e 第1排出通路
55f 第2排出通路
C1 回転軸心