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特許7602556ガス分析装置、ガス分析方法、ガス分析装置用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ガス分析装置、ガス分析方法、ガス分析装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20241211BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G01N1/22 L
B01D53/26 220
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022565127
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2021039297
(87)【国際公開番号】W WO2022113603
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2020194367
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】西川 雅浩
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072032(JP,A)
【文献】特開2020-011173(JP,A)
【文献】特開昭53-012685(JP,A)
【文献】特開2015-059771(JP,A)
【文献】特開2010-075819(JP,A)
【文献】米国特許第06128193(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22
B01D 53/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングされた大気に含まれる水分を吸湿する乾燥剤を備え、当該乾燥剤を通過した大気を用いて、測定対象ガス中の成分を分析するガス分析装置であって、
前記乾燥剤を通過する前の前記大気の温度又は湿度の少なくとも一方を計測するセンサ部と、
前記センサ部により計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、前記乾燥剤が吸湿した水分量を算出する水分量算出部と、
前記水分量算出部により算出された水分量と前記乾燥剤に設定された許容水分量とを比較可能に出力する出力部とを備える、ガス分析装置。
【請求項2】
サンプリングされた大気に含まれる水分を吸湿する乾燥剤を備え、当該乾燥剤を通過した大気を用いて、測定対象ガス中の成分を分析するガス分析装置であって、
前記乾燥剤を通過する前の前記大気の温度又は湿度の少なくとも一方を計測するセンサ部と、
前記センサ部により計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、前記乾燥剤が吸湿した水分量を算出する水分量算出部と、
前記水分量算出部により算出された水分量と前記乾燥剤に設定された許容水分量とを比較し、その比較結果に基づいて、前記乾燥剤が使用不可であることを示すアラームを出力する報知部を備える、ガス分析装置。
【請求項3】
前記報知部は、前記比較結果に基づいて、前記アラームを出力する前段階として事前通知を出力する、請求項に記載のガス分析装置。
【請求項4】
車両搭載型のものであり、車両から排出される排ガス中の成分を分析する、請求項1乃至の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記水分量算出部は、以下の式(1)に基づいて、前記乾燥剤が吸収した水分量を算出する、請求項1乃至の何れか一項に記載のガス分析装置。
【数1】
ここで、Wは、前記乾燥剤が吸収した水分量(g)であり、Lは、前記大気のサンプリング流量(cm/sec)であり、a(T)は、前記センサ部により計測された温度Txにおける飽和水蒸気量(g/cm)であり、RHは、前記センサ部により計測された相対湿度(%)である。
【請求項6】
サンプリングされた大気に含まれる水分を乾燥剤により吸湿し、当該乾燥剤を通過した大気を用いて、測定対象ガス中の成分を分析するガス分析方法であって、
前記乾燥剤を通過する前の前記大気の温度又は湿度の少なくとも一方を計測し、
計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、前記乾燥剤が吸収した水分量を算出し、
算出された水分量と前記乾燥剤に設定された許容水分量とを比較可能にする、ガス分析方法。
【請求項7】
サンプリングされた大気に含まれる水分を乾燥剤により吸湿し、当該乾燥剤を通過した大気を用いて、測定対象ガス中の成分を分析するガス分析装置に用いられるプログラムであって、
前記乾燥剤を通過する前の前記大気の温度又は湿度の少なくとも一方を取得する取得部と、
前記取得部により取得された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、前記乾燥剤が吸収した水分量を算出する水分量算出部と、
前記水分量算出部により算出された水分量と前記乾燥剤に設定された許容水分量とを比較可能に出力する出力部と、
としての機能をコンピュータに備えさせることを特徴とする、ガス分析装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析装置、ガス分析方法、ガス分析装置用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば排ガスに含まれるNOを測定するガス分析装置としては、特許文献1に示すように、化学発光法(CLD)を用いたものがある。このCLDを用いたガス分析装置は、化学発光に必要なオゾン(O)を装置内部で生成するオゾン発生器を備えている。このオゾン発生器は、別途排ガスサンプリングとは別にオゾン源としてサンプリングされた大気からOを生成することから、大気に含まれる水分によってオゾン生成量の減少や消光作用により、CLDの検出値が影響を受けてしまう。
【0003】
このため、従来のCLDを用いたガス分析装置では、オゾン発生器に導入される大気をシリカゲル等の乾燥剤を通過させることにより、大気に含まれる水分の影響を低減している。この乾燥剤は、吸湿可能な水分量が許容値を超えると、CLDの検出値に影響を及ぼすため、吸湿可能な水分量を超える前に乾燥剤を交換する等のメンテナンスが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-72032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガス分析装置が車両搭載型である場合には、その交換時期(メンテナンス時期)の判断が難しい。なぜならば、実路走行試験は、温度及び湿度、気圧が管理された台上試験とは異なり、温度及び湿度、気圧が試験時の気候条件によって大きく変動し、それにより試験中の大気中の水分量も変化するため、使用した時間から乾燥剤が吸湿した水分量を推測することが困難だからである。
【0006】
なお、試験前後に乾燥剤を取り外し、試験前後の乾燥剤の重量と比較して、次の試験にも使用可能であるか否かをユーザが推測することも行われているが、次の試験の気候条件が変化した場合に乾燥能力が失われる恐れもあり、また、試験前後の作業が煩雑になってしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点を解決すべくなされたものであり、ガス分析装置に用いられる乾燥剤の交換等のメンテナンス時期を容易に判断できるとともに、その判断を行うための作業を軽減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るガス分析装置は、オゾン源としてサンプリングされた大気に含まれる水分を吸湿する乾燥剤を備え、当該乾燥剤を通過した大気を用いて、測定対象ガス中の成分を分析するガス分析装置であって、前記乾燥剤を通過する前の前記大気の温度又は湿度の少なくとも一方を計測するセンサ部と、前記センサ部により計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、前記乾燥剤が吸収した水分量を算出する水分量算出部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このガス分析装置であれば、センサ部により計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、乾燥剤が吸収した水分量を算出するので、乾燥剤が吸湿可能な残りの水分量(許容水分量)を判断できるようになり、乾燥剤の交換等のメンテナンス時期を容易に推測できる。また、従来のように試験前後において乾燥剤の重量を計測する必要がないので、メンテナンス時期を判断するための作業を軽減することができる。
【0010】
また、本発明に係るガス分析装置は、前記水分量算出部により算出された水分量と前記乾燥剤に設定された許容水分量とを比較可能に出力する出力部をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、乾燥剤が吸湿可能な残りの水分量を認識しやすく、乾燥剤の交換等のタイミングを容易に判断することができる。
【0011】
さらに、本発明に係るガス分析装置は、前記水分量算出部により算出された水分量と前記乾燥剤に設定された許容水分量とを比較し、その比較結果に基づいて、前記乾燥剤が使用不可であることを示すアラームを出力する報知部を更に備えることが望ましい。
この構成であれば、装置が乾燥剤のタイミングを自動的に判断しているので、ユーザの主観的判断による判断ミスを防ぐことができる。
【0012】
前記報知部は、前記比較結果に基づいて、前記アラームを出力する前段階として事前通知を出力することが望ましい。
この構成であれば、ユーザは試験計画の変更や交換用の乾燥剤の準備等を行うことができる。
【0013】
本発明の効果をより一層顕著にするためには、車両搭載型のもので路上走行試験中に分析指示値を常に監視するのが通常困難で、路上試験のために気候条件が変化しやすい環境下にある分析装置が望ましい。
このように車両搭載型のものであれば、路上走行試験中に気候条件が変化しやすいため、センサ部により計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて水分量を算出することで、乾燥剤が吸湿可能な残りの水分量を正確に認識できるようになる。
【0014】
乾燥剤が吸湿した水分量を正確に算出するためには、前記水分量算出部は、以下の式(1)に基づいて、前記乾燥剤が吸収した水分量を算出することが望ましい。
【0015】
【数1】
ここで、Wは、前記乾燥剤が吸収した水分量(g)であり、Pは、前記センサ部により計測された気圧(kPa)、Pは、基準となる気圧で例えば101.3(kPa)である。Lは、前記大気のサンプリング流量(cm/sec)であり、a(T)は、前記センサ部により計測された温度Tにおける飽和水蒸気量(g/cm)であり、Tは、基準となる温度で例えば273.15(℃)、RHは、前記センサ部により計測された相対湿度(%)である。
【0016】
また、本発明に係るガス分析方法は、サンプリングされた大気に含まれる水分を乾燥剤により吸収して除去し、当該乾燥剤を通過した大気を用いて、測定対象ガス中の成分を分析するガス分析方法であって、前記乾燥剤を通過する前の前記大気の温度又は湿度の少なくとも一方を計測し、計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、前記乾燥剤が吸収した水分量を算出することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明に係るガス分析装置用プログラムは、サンプリングされた大気に含まれる水分を乾燥剤により吸収して除去し、当該乾燥剤を通過した大気を用いて、測定対象ガス中の成分を分析するガス分析装置に用いられるプログラムであって、前記乾燥剤を通過する前の前記大気の温度又は湿度の少なくとも一方を取得する取得部と、前記取得部により取得された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、前記乾燥剤が吸収した水分量を算出する水分量算出部と、としての機能をコンピュータに備えさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べた本発明によれば、ガス分析装置に用いられる乾燥剤の交換タイミングの判断を容易にするとともに、その判断に伴う作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るガス分析装置の全体模式図である。
図2】同実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
図3】同実施形態の表示画面を示す模式図である。
図4】表示画面の変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0020】
100・・・ガス分析装置
7・・・乾燥剤
10・・・センサ部
11・・・水分量算出部
13・・・出力部
15・・・報知部
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るガス分析装置100について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
<装置構成>
本実施形態のガス分析装置100は、例えば車両に搭載される車両搭載型のものであり、路上走行試験中に車両から排出される排ガス中の成分を分析するものである。なお、車両としては、エンジン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などを挙げることができる。
【0023】
具体的にガス分析装置100は、化学発光(CLD)法(ケミルミネッセンス法)により排ガス中の窒素酸化物(NO)の濃度を連続測定するものである。なお、ガス分析装置100には、非分散赤外線吸収(NDIR)法を用いた分析計や、水素炎イオン化(FID)法を用いた分析計や、凝縮粒子カウンタ(CPC)が含まれていても良い。
【0024】
そして、ガス分析装置100は、図1に示すように、サンプリングされた排ガスが流れる排ガス流路2と、当該排ガス流路2に設けられ、排ガス中のNOを検出するCLD検出器3と、当該CLD検出器3にオゾンガス(O)を導入するオゾンガス導入路4と、当該オゾンガス導入路4に設けられ、大気からオゾンガスを生成するオゾン発生器5と、当該オゾン発生器5に大気を導入する大気導入路6と、当該大気導入路6に設けられた大気の水分を吸湿する例えばシリカゲル等の乾燥剤7とを備えている。
【0025】
排ガス流路2には、サンプリングされた排ガスに含まれるNOをNOに還元する触媒を有するNOコンバータ8が設けられている。このNOコンバータ8を排ガスが通過することにより、NOがNOに還元されて、CLD検出器3ではNO(NO+NO)が検出され、NOの濃度を測定することが可能となる。
【0026】
また、排ガス流路2には、NOコンバータ8をバイパスするバイパス路21が設けられており、このバイパス路21に排ガスを流すことにより、CLD検出器3ではNOが検出され、NOの濃度を測定することができる。また、この流路構成により、NOの濃度及びNOの濃度を測定できることから、それらの差を計算することにより、NOの濃度を測定することもできる。なお、排ガス流路2においてCLD検出器3の下流側にはオゾンガスを分解するためのオゾン分解器9が設けられている。
【0027】
CLD検出器3は、排ガス流路2からの排ガスと、オゾンガス導入路4からのオゾンガスとが導入されるリアクタを備えたものであり、リアクタ内ではオゾンガスによるNOの酸化反応が起こる。このとき生成されるNOの一部が励起状態となり、この励起状態から基底状態に戻る際の励起エネルギーを光子として放出される。この現象は化学発光と呼ばれる。そして、この化学発光の発光強度を光電素子で検出することでサンプルガスのNO濃度を測定することができる。
【0028】
しかして、本実施形態のガス分析装置100は、図1及び図2に示すように、乾燥剤7を通過する前の大気の温度及び湿度、気圧を計測するセンサ部10と、センサ部10により計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、乾燥剤7が吸湿した水分量を算出する水分量算出部11とを備えている。
【0029】
センサ部10は、乾燥剤7を通過する前の大気の温度を計測する温度センサ10aと、乾燥剤7を通過する前の大気の相対湿度を計測する湿度センサ10bと、乾燥剤7を通過する前の大気の気圧を計測する気圧センサ10cとを有している。これらセンサ10a、10b、10cは、ガス分析装置100の周囲の温度及び相対湿度、気圧を連続的に計測するものである。なお、センサ部10としては、車両に搭載された温度センサ及び湿度センサ、気圧センサを用いても良い。
【0030】
水分量算出部11は、図2に示すように、ガス分析装置100の制御装置COMによりその機能が発揮されるものである。なお、制御装置COMは、CPU、内部メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器等を有する専用乃至汎用のコンピュータである。また、制御装置COMは、センサ部10から温度データ及び湿度データ、気圧データを取得するデータ取得部12を備えている。
【0031】
具体的に水分量算出部11は、以下の式(1)に基づいて、乾燥剤7が吸収した水分量を算出する。
【0032】
【数1】
ここで、Wは、乾燥剤7が吸収した水分量(g)であり、Pは、気圧センサ10cにより計測された気圧(kPa)、Pは、基準となる気圧で例えば101.3(kPa)である。Lは、大気のサンプリング流量(cm/sec)であり、a(Tx)は、温度センサ10aにより計測された温度Txにおける飽和水蒸気量(g/cm)であり、Tは、基準となる温度で例えば273.15(℃)、RHxは、湿度センサ10bにより計測された相対湿度(%)である。
【0033】
ここで、ある瞬間の温度をT(℃)、相対湿度をRH(%)とすると、その時の大気に含まれる単位体積当たりの水分量w(g/cm)は、Tでの飽和水蒸気量をa(T)(g/cm)を用いて、以下の式で表される。
【0034】
【数2】
【0035】
大気導入路6に流れる大気のサンプリング流量L(cm/sec)は、設計により一定の値としてある。これにより、ある瞬間にガス分析装置100が吸引する単位時間当たりの水の重量W(g/sec)は、以下の式で表される。
【0036】
【数3】
【0037】
以上から、ガス分析装置100の測定時間t(sec)中に大気から乾燥剤7に吸湿された水分の総量W(g)は、以下の式で求められる。
【0038】
【数4】
【0039】
乾燥剤7の吸湿可能な水分量(許容水分量)Wsilicaは、乾燥剤7の重量及びメーカの仕様から、ユーザが設定可能である。
【0040】
そして、本実施形態の制御装置COMは、水分量算出部11により算出された水分量Wと乾燥剤7に設定された許容水分量Wsilicaとを比較可能に出力する出力部13をさらに備えている。この出力部13は、ガス分析装置100の制御装置COMによりその機能が発揮されるものである。
【0041】
本実施形態の出力部13は、図3に示すように、算出された水分量Wと許容水分量Wsilicaとを示すグラフG1をディスプレイ14に表示するように構成されている。このグラフG1の縦軸が水分量(g)であり、横軸が経過時間である。その他、出力部13は、許容水分量Wsilicaに対する算出された水分量Wの割合(%)をディスプレイ13上に表示するものであっても良い。
【0042】
その他、出力部13は、図4に示すように、縦軸が乾燥剤7の残存保水可能量(g)であり、横軸が経過時間のグラフG2を表示しても良いし、グラフG3のように縦軸を許容水分量Wsilicaで正規化してパーセント表示したグラフを表示しても良い。なお、図4におけるXは、(W/Wsilica)×100(%)である。
【0043】
また、ガス分析装置100は、水分量算出部11により算出された水分量Wと乾燥剤7に設定された許容水分量Wsilicaとを比較し、その比較結果に基づいて、乾燥剤7が使用不可であることを示すアラームを出力する報知部15を更に備えていても良い。この報知部15は、ガス分析装置100の制御装置COMによりその機能が発揮されるものである。ここで、算出された水分量Wが許容水分量Wsilicaに達しない限りは使用可能である。つまり、報知部15は、算出された水分量Wが許容水分量Wsilicaに達した場合に、乾燥剤7が使用不可であることを示すアラームを出力する。ここで、アラームを出力する態様としては、ディスプレイ14上にアラーム情報(例えば警告メッセージ)を表示する、又は、グラフGを表示するアプリケーションを起動するためのアイコンの表示態様を変化させる等が考えられる。
【0044】
さらに、報知部15は、算出された水分量Wと許容水分量Wsilicaとの比較結果に基づいて、アラームを出力する前段階として事前通知(Pre Caution)を出力するように構成しても良い。例えば、算出された水分量Wが許容水分量WsilicaのX%(例えば80%)に到達した場合に、事前通知を出力することが考えられる。ここで、事前通知を出力する態様としては、ディスプレイ14上に事前通知情報(例えば事前通知メッセージ)を表示する、又は、グラフGを表示するアプリケーションを起動するためのアイコンの表示態様を変化させる等が考えられる。
【0045】
その他、報知部15は、算出された水分量Wと許容水分量Wsilicaとの比較結果に基づいて、乾燥剤7の残りの使用可能時間を推定して、その使用可能時間をユーザに通知するように構成しても良い。ここで、使用可能時間を推定する方法としては、乾燥剤7が吸湿可能な残りの水分量(Wsilica-W)、センサ部により計測された温度及び湿度、気圧、その他の使用態様、これまでの使用実績(算出された水分量Wのグラフの傾き)等から求めることが考えられる。
【0046】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のガス分析装置100によれば、センサ部10により計測された温度又は湿度の少なくとも一方を用いて、乾燥剤7が吸収した水分量Wを算出するので、乾燥剤7が吸湿可能な残りの水分量(Wsilica-W)を判断できるようになり、乾燥剤7の交換等のメンテナンス時期を容易に判断できる。また、従来のように試験前後において乾燥剤7の重量を計測する必要がないので、メンテナンス時期を判断するための作業を軽減することができる。
【0047】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0048】
例えば、前記実施形態では、センサ部が温度及び湿度、気圧を計測し、計測された温度及び湿度、気圧を用いて、乾燥剤が吸湿した水分量を算出する構成であったが、センサ部が温度又は湿度、気圧の一方を計測し、温度又は湿度、気圧の他方を設定値として、それらから乾燥剤が吸湿した水分量を算出する構成としても良い。
【0049】
また、前記実施形態では、乾燥剤7を通過した大気から生成されたオゾンを用いてCLD法により排ガス中の窒素酸化物(NO)の濃度を測定するものであったが、乾燥剤7を通過した大気を用いて測定対象ガス中(例えばCO、CO又はNOなどいずれかの成分)の成分を分析するその他のガス分析装置であっても良い。
【0050】
また、乾燥剤7を通過した大気を希釈用ガスとして用いても良い。このときの測定対象ガス中の成分は、例えば粒子状物質(Particulate Matter:PM)や固体粒子数(Particle Number:PN)が挙げられる。固体粒子数の計測に用いる場合は、サンプリングした排ガスの一部を粒子捕集フィルタで濾過し、浮遊する固体粒子を取り除いたガスからさらに乾燥剤を通過させて、希釈ガスに用いてもよい。
【0051】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、ガス分析装置に用いられる乾燥剤の交換タイミングの判断を容易にするとともに、その判断に伴う作業を軽減することができる。

図1
図2
図3
図4