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特許7602629ゼオライト系吸着剤を使用してGeH4を貯蔵するための貯蔵送出容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ゼオライト系吸着剤を使用してGeH4を貯蔵するための貯蔵送出容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
F17C11/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023521507
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2021053756
(87)【国際公開番号】W WO2022076546
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】63/089,441
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バイル, オレグ
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-538139(JP,A)
【文献】特表2016-533881(JP,A)
【文献】特表2020-514387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤と、前記吸着剤に吸着されたGeHとを収容する内部容積を囲む貯蔵分配容器であって、
ポート、
前記ポートに取り付けられたバルブ、
前記内部容積内のゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤、および
前記ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤に吸着されたGeHを含み、
前記容器は、前記容器から前記GeHを排出するために、前記容器の前記内部容積から前記バルブを通って気体GeHを流すように選択的に作動可能であり、
前記容器に収容されているゲルマンを3Torr以下の排出圧力で分配することができる、貯蔵分配容器。
【請求項2】
760Torr未満の内部圧力を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤が、イミダゾレートリンカーによって連結された四面体配位亜鉛原子を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
準大気圧で前記内部容積内にGeHを収容し、前記GeHが、前記吸着剤に吸着される部分と、前記吸着されたGeHと平衡状態にある凝縮または気体GeHとして存在する部分とを含む、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記容器に収容されるゲルマンの少なくとも99.3%を前記容器から分配することができる、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記容器に収容されているゲルマンを1Torr以下の排出圧力で分配することができる、請求項1に記載の容器。
【請求項7】
GeHの水素ガス(H)への分解量が、摂氏30度で365日間にわたって、最初に吸着されたゲルマン全体の1%未満である、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
GeHの水素ガス(H)への分解量が、摂氏30度で365日間にわたって、最初に吸着されたゲルマン全体の0.1%未満である、請求項1に記載の容器。
【請求項9】
前記吸着剤が、顆粒、微粒子、ビーズ、またはペレットの形態である、請求項1に記載の容器。
【請求項10】
請求項1に記載の容器からGeHを供給する方法であって、前記GeH を容器内部から容器外部に送出することを含み、前記GeH3Torr以下の圧力で前記容器から送出される、方法。
【請求項11】
前記GeHTorr以下の圧力で送出される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ゲルマン(GeH)がゼオライト系イミダゾレート骨格を備える固体吸着媒体に対して吸着関係で保持されている容器から試薬ガスとして選択的にゲルマンを分配するための貯蔵分配システムおよび関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス状原料(「試薬ガス」と呼ばれることもある)は、様々な産業および産業用途で使用されている。産業用途のいくつかの例としては、とりわけ、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、プラズマ堆積、フォトリソグラフィー、洗浄、およびドーピングなどの半導体材料またはマイクロ電子デバイスの処理に使用されるものが挙げられ、これらの使用は、とりわけ、半導体、マイクロ電子、光起電力、およびフラットパネルディスプレイデバイスおよび製品の製造方法に含まれる。
【0003】
半導体材料およびデバイスの製造、ならびに様々な他の工業プロセスおよび用途において、高純度の試薬ガスの信頼性の高い供給源が継続的に必要とされている。例としては、シラン、ゲルマン(GeH)、アンモニア、ホスフィン、アルシン、ジボラン、スチビン、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、および対応するおよび他のハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)化合物が挙げられる。これらのガスの多くは、準大気圧の試薬ガスを収容する貯蔵容器など、高度な注意と多くの安全予防措置を伴って貯蔵、輸送、取り扱い、および使用されなければならない。
【0004】
産業用途の試薬ガスを収容し、貯蔵し、輸送し、分配するために、様々な異なる種類の容器が使用される。本明細書で「吸着系容器」と呼ばれるいくつかの容器は、容器内に備えられる多孔質吸着材料を使用するガスを収容し、試薬ガスは吸着材料に吸着されることによって貯蔵される。吸着試薬ガスは、容器内に凝縮形態または気体形態でも存在する試薬ガスと平衡状態で容器内に収容されていてもよい。
【0005】
ガス状原料は、濃縮形態または実質的に純粋な形態での使用のために送出されなければならず、製造システムにおけるガスの効率的な使用のためのガスの確実な供給をもたらす包装形態で利用可能でなければならない。
【0006】
高純度に加えて、貯蔵ガス生成物の他の所望の特徴は、貯蔵容器生成物から分配することができる大量の送出可能ガスである。容器内の送出可能な材料の量が多い(高い「ガス送出能力」)と、容器を交換せずに(送出可能な材料の量が少ない容器と比較して)より長期間使用することができるため、製造プロセスで貯蔵ガス生成物およびその収容ガス状原料を使用する効率が向上する。使用済み(例えば、空)の容器を新しい容器と交換する頻度が低減されれば、運用効率が向上する。さらに、低減された量の高価なガス状原料が、使用されない、すなわち貯蔵容器内で利用されない。
【発明の概要】
【0007】
ゲルマン(GeH)は、例えばゲルマニウムのエピタキシャル成長のためのゲルマン源ガスとして、様々な目的のために半導体処理産業において使用されている。半導体処理に使用される場合、ゲルマンは非常に高い純度で提供されなければならない。市販の製品形態では、固体吸着剤に吸着され、高レベルの純度でゲルマンガスを分配することができるシリンダ内に貯蔵されたゲルマンガスとして、ゲルマンガスが利用可能になっている。
【0008】
現在および過去の吸着系貯蔵システムから送出されるゲルマンの純度は、多くの市販の用途に十分である。それでも、半導体処理に使用されるゲルマンのますます高いレベルの純度が依然として必要とされている。ゲルマンは、吸着系貯蔵システム内に貯蔵された場合を含め、貯蔵中に分解して水素ガス(H)を生成することが知られている。望ましいまたは好ましいゲルマン貯蔵システムは、ゲルマンの過度の分解を引き起こさないまたは許容しない条件でゲルマンを貯蔵するもの、例えば、貯蔵中に少量のゲルマンの分解しか許容しない条件でゲルマンを貯蔵するシステムである。したがって、ゲルマンを貯蔵するための吸着系システムの所望の特徴は、貯蔵中に起こるゲルマンの分解の量の低減または最小化、およびそれに付随して貯蔵システムから送出されるガス状ゲルマンに収容される水素の量の低減または最小化である。
【0009】
ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を収容する貯蔵容器にゲルマンを貯蔵する有用なまたは好ましいシステムの例は、貯蔵されたゲルマンの貯蔵中に有用なまたは比較的低い量のゲルマン分解を示し得る。例えば、記載されているような貯蔵容器に貯蔵されたゲルマンは、常温(例えば、32℃)で365日間貯蔵した後、初期吸着されたゲルマンの総量の1%未満の分解、または好ましくは0.1%未満の分解、またはより好ましくは0.01%未満の分解を示し得る。
【0010】
また望ましくは、ゲルマンを貯蔵するための吸着系システムは、有用な、または有利には高いガス送出能力を有する有用な貯蔵能力を示すものであり得る。吸着されたゲルマンを収容するための吸着剤としてゼオライト系イミダゾレート骨格を収容する記載の貯蔵容器は、準大気圧で、有用または有利な送出能力と組み合わせて有用な貯蔵能力を示すことができる。
【0011】
吸着剤および吸着試薬ガス、例えばゲルマンを収容する貯蔵容器の「貯蔵能力」または「総貯蔵能力」は、容器の容積当たりの容器に収容することができる試薬ガスの量を指す。貯蔵能力の別の尺度は、吸着剤重量(例えば、グラム)あたりの試薬ガスの総重量(例えば、グラム)である。貯蔵能力は、容器の総容積当たりの、吸着剤を収容する容器に収容することができるガスの量として測定される。準大気圧でゲルマンなどの試薬ガスを貯蔵するために使用されるゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤は、本質的に、炭素型吸着剤などの他の種類の吸着剤と比較して貯蔵能力が低い場合がある。
【0012】
吸着剤型貯蔵システムの性能の異なる尺度は、吸着剤を入れた容器に貯蔵された試薬ガスを収容する容器の「送出能力」である。「送出能力」とは、容器に収容された全試薬ガスの量と比較して、容器に収容され、有用な形態で容器から送出され得る貯蔵試薬ガスの量を指す。送出能力は、貯蔵容器内に貯蔵された貯蔵ガスの総量と比較して、貯蔵容器から送出(排出)することができる貯蔵ガスの量(パーセンテージ)として説明することができる。望ましくは、市販の貯蔵容器に収容されたガスの送出能力は、容器に収容されたガスの総量の少なくとも50または70%であり得る。
【0013】
本明細書の例示的な貯蔵システムによれば、ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤および吸着したゲルマンを収容する貯蔵容器は、準大気圧で、容器に貯蔵されたゲルマンの総量の少なくとも80、90、95、または99%を送出することができ、すなわち、貯蔵容器は、容器内のガスの総量の少なくとも80、90、95、または99%の送出能力を有する。容器は、50、30、20、15、10、5、3、1、または0.5Torr未満の排出圧力で容器からゲルマンガスを送出することが可能であり得る。貯蔵されたゲルマンガスのこの高レベルの送出能力は、所与のシステム内の総吸着ガスの10%(モル)を超える「ヒール」(5Torrという低い排出圧力では抽出することができないガス)を有することが多い炭素系吸着剤などの他の種類の吸着材料の送出能力と比較して有用であるか、または潜在的に有利である。
【0014】
一態様では、本発明は、ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤および吸着剤に吸着されたGeHを収容する内部容積を囲む貯蔵分配容器に関する。容器は、ポート、ポートに取り付けられたバルブ、内部容積内のゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤、およびゼオライト系イミダゾレート骨格に吸着したGeHを備える。容器は、容器からGeHを排出するために、容器の内部容積からバルブを通ってガス状GeHを流すように選択的に作動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書の例示的な貯蔵システムを示す。
図2】本明細書の貯蔵システムの性能データを示す。
図3】本明細書の貯蔵システムの性能データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書は、ゲルマンが吸着剤に吸着された状態でゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を収容する容器にゲルマンを貯蔵することを含む新規かつ発明的なシステム、およびゲルマンを貯蔵、取り扱い、および送出するために貯蔵システムを使用する新規かつ発明的な方法に関する。
【0017】
記載されている貯蔵システムは、その内部にゼオライト系イミダゾレート骨格(ZIF)吸着材料を収容する容器を備える。吸着材料は、貯蔵容器からゲルマンを収容し、貯蔵し、送出するのに有効である。ゲルマンは、ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤に吸着され、容器内部で気体として存在し、ゲルマンの一部はゼオライト系イミダゾレート骨格に吸着され、他の部分は気体形態または凝縮および気体形態であり、吸着部分と平衡状態にある。
【0018】
容器の内部の圧力は、約760Torr(絶対)未満を意味する準大気圧であり得る。容器の貯蔵中、またはゲルマンを分配するための容器の使用中、容器の内部の圧力は、760Torr未満、例えば700、600、400、200、100、50、または20Torr未満であり得る。
【0019】
以下の説明は、準大気圧でゲルマン(GeH)を貯蔵するための吸着系貯蔵容器におけるゼオライト系イミダゾレート骨格(「ZIF」)の使用に関する。本出願人は、吸着剤としてのゼオライト系イミダゾレート骨格の使用が、ゲルマンの有用なまたは好ましい貯蔵能力を可能にし得ることを見出した。
【0020】
ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤によって吸着されたゲルマンの貯蔵のための記載の好ましい貯蔵システムの例は、ゲルマンについての有用な貯蔵能力、例えば、少なくとも100g/kg、または好ましくは200g/kg、またはより好ましくは300g/kgを超える貯蔵能力を示すことができる。
【0021】
例示的な貯蔵システムはまた、ゲルマンの有用または有利な送出能力、例えば、少なくとも80、90、95、または99%の送出能力を示すことができ、これは、貯蔵容器が容器内部に貯蔵されたゲルマンの総量の少なくとも80、90、95、または99%を分配することができることを意味する。例示的な貯蔵システムは、50、20、10、5、3、1、または0.5Torrの低い圧力でゲルマンを分配することができる。
【0022】
ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を収容する貯蔵容器に貯蔵されたゲルマンの有用なまたは好ましい系の例は、貯蔵されたゲルマンの貯蔵中に有用なまたは比較的少量のゲルマン分解を示すことができる。例えば、記載されるような貯蔵容器に貯蔵されたゲルマンは、常温で365日間にわたって、全初期吸着ゲルマン容量に基づいて、1%未満、または好ましくは0.1%未満、またはより好ましくは0.01%未満の分解を示し得る。
【0023】
化学式GeHを有する化合物であるゲルマンは、「四水素化ゲルマニウム」またはゲルマノメタンとしても知られており、半導体産業で使用される既知の試薬ガスである。
【0024】
本明細書によれば、ゲルマンは、ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を収容する容器に貯蔵され、ゲルマンはゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤に吸着される。貯蔵システムは、ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を収容する容器を備える吸着系貯蔵システムとして公知の種類のものである。ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤は公知であり、炭素系吸着媒体、ポリマー吸着媒体、シリカなどの他の既知の種類の吸着媒体とは組成的に異なることが知られている。
【0025】
ゼオライト系イミダゾレート骨格は、半導体処理に使用するための試薬ガスの貯蔵および送出を含む、特定の試薬ガスを貯蔵するための吸着剤として有用であることが知られている金属有機骨格(MOF)の一種である。ゼオライト系イミダゾレート骨格は、イミダゾレートリンカーによって結合された、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、または亜鉛(Zn)などの四面体配位遷移金属を備えた金属有機骨格であり、特定のZIF組成物内で、またはZIF構造の単一遷移金属原子に対して同じであっても異なっていてもよい。ZIF構造は、四面体トポロジーに基づく拡張骨格を生成するためにイミダゾレート単位を介して連結された4配位遷移金属を備える。ZIFは、ゼオライトおよび他の無機微孔質酸化物材料に見られるものと同等の構造トポロジーを形成すると言われている。
【0026】
ゼオライト系イミダゾレート骨格は、他の物理的および化学的特性の中でも以下を含む特徴によって特徴付けることができる:骨格の特定の遷移金属(例えば、鉄、コバルト、銅、または亜鉛);リンカーの化学的性質(例えば、イミダゾレート単位の化学置換基);ZIFの孔径;ZIFの表面積;ZIFの細孔容積。骨格を構成する遷移金属の種類およびリンカー(または複数のリンカー)の種類に基づいて異なる化学構造をそれぞれ有する、数十(少なくとも105)の固有のZIF種または構造が知られている。各トポロジーは、固有のZIF名称、例えばZIF-1~ZIF-105を使用して識別される。多数の既知のZIF種の特定の化学組成物および関連する特性を含むZIFの説明については、Phanら、「Synthesis,Structure,and Carbon Dioxide Capture Properties of Zeolitic Imidazolate Frameworks」、Accounts of Chemical Research、2010、43(1)、58~67頁(2009年4月6日受領)を参照されたい。
【0027】
ZIFの細孔径は、吸着剤としてのZIFの性能に影響を及ぼし得る。例示的なZIFは、約0.2~13オングストローム、例えば2~12オングストロームまたは3~10オングストロームの範囲の孔径を有することができる。孔径は、ZIF結晶の表面を通過する最大の球の直径を指す。本明細書の容器内の吸着剤として使用するために、ZIFは、所望の貯蔵性能を提供するのに有効な任意の孔径を有することができる。
【0028】
有用または好ましいZIFは、有用な貯蔵能力、有用な送出能力を提供することができ、好ましくは、貯蔵されたゲルマンの分解量が比較的低い貯蔵容器において吸着されたゲルマンを貯蔵するために使用することができる。
【0029】
容器内のゲルマンガスを吸着し、準大気圧で容器内にゲルマンガスを貯蔵するために、記載されているような容器内で有用であることが分かっているZIFの一例は、「ZIF-8」と呼ばれ、これは亜鉛ジメチルイミダゾレート(別名「亜鉛2-ジメチルイミダゾレート)」である。このゼオライト系イミダゾレート骨格は、3.4オングストロームの孔径を有すると報告されている。他のMOFの中でもZIF-8について記載している米国特許第9,138,720号明細書を参照されたい。
【0030】
ゼオライト系イミダゾレート骨格は、本明細書に記載のようにゲルマンを貯蔵するための容器に収容される場合、粒状(粒子)、モノリシック、またはその他の任意の有用な形態であり得る。様々な例示的な実施形態について、好ましいゼオライト系イミダゾレート骨格は、比較的小さな開口部を備えるシリンダなどの容器に容易に配置する(例えば、注ぐ)ことができる粒子の形態であり得る。さらに、他の形態のゼオライト系イミダゾレート骨格も、モノリシックもしくはブロック吸着剤、ロッド、または空間充填多面体吸着剤を含む、異なる製品設計に有用または好ましい可能性がある。
【0031】
例示的な容器内で、容器がゲルマンを送出するために使用される温度において、収容されるゲルマンは、ゼオライト系イミダゾレート骨格上に吸着されたゲルマンと平衡状態にある、凝縮形態または気体形態(すなわち、ガス状ゲルマンとして)である部分を含む形態であり得る。容器およびゲルマンの温度は、使用中に容器が曝され得る温度の範囲内(例えば、約0~約50℃の範囲の温度)であり得る。この範囲は、容器が「常温」または室温環境で制御された貯蔵および使用中に保持される典型的な温度である動作温度を含み、一般に、約20~約26℃の範囲の温度を含むと理解される。
【0032】
容器が試薬ガスを送出するために使用される温度では、ガス状ゲルマンは、準大気圧、すなわち約1気圧(760torr)未満の絶対圧力であり得る。容器の内圧は、使用中にこの範囲内にあってもよく、容器が最大量のゲルマンを収容する場合、すなわち容器がゲルマンで「満たされている」場合に最も高くなり得る。使用中、ゲルマンが容器から徐々に除去されると、容器内の圧力は徐々に低下し、700、600、400、200、100、50、20、10、5、3、1、または0.5Torr未満の圧力に達する可能性がある。
【0033】
記載されるような貯蔵システムの容器は、容器内部に存在する唯一の種類の吸着媒体としてゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を収容していてもよく、または所望であれば、他の種類の吸着媒体と組み合わせてゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を収容していてもよい。特定の現在好ましい実施形態では、容器に収容される吸着媒体は、本明細書に記載の実質的に(例えば、少なくとも50、80、90、95、または97%)または完全にゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤であってもよく、他のタイプの吸着媒体は必要とされず、容器内部から除外されてもよい。換言すれば、容器の内部に収容される吸着剤の総量は、ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり得、特に本明細書に記載の一般的および特定の種類のゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤を含む。
【0034】
本明細書によれば、特定の材料または材料の組み合わせから本質的になる組成物は、特定の1つまたは複数の材料と、わずかな量以下の任意の他の材料、例えば、2、1、0.5、0.1、または0.05重量%以下の任意の他の材料とを含む組成物である。例えば、本質的にゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤からなる吸着剤を収容する容器内部の記載は、容器内部の吸着媒体の総重量に基づいて、ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤および2、1、0.5、0.1、または0.05重量%以下の他の種類の吸着媒体を収容する内部を有する容器を指す。
【0035】
試薬ガスを貯蔵するための容器構造の様々な例は、本明細書による適合によって、吸着剤としてゼオライト系イミダゾレート骨格を使用してゲルマンを貯蔵するのに有用であり得る。例示的な容器としては、容器内部および円筒の端部の出口(または「ポート」)を画定する剛性円筒形側壁を備える円筒形容器(「シリンダ」)が挙げられる。容器の側壁は、金属または他の剛性の、例えば強化された材料で作ることができ、容器の内部に試薬ガスを収容するために推奨される所望の最大圧力を安全に超える圧力レベルに耐えるように設計される。
【0036】
図1は、上述の流体供給システム(「流体供給パッケージ」)の一例を示し、ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤は、ゲルマンの貯蔵および送出のために配置される。図示されるように、流体供給パッケージ10は、円筒壁14と、容器12の内部容積16を囲む床とを含む容器12を備え、その中にゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤18が配置されている。容器12は、その上端部においてキャップ20に接合されており、キャップは、その外周部において平坦な特徴を有し、その上面において上方に延在するボス28に外接し得る。キャップ20は、流体分配アセンブリの対応するねじ付き下部26を受け入れる中央ねじ開口部を有する。
【0037】
バルブヘッド22は、手動で操作されるハンドホイールまたはそれに結合された空気圧で操作される作動装置30などの任意の適切な動作によって開位置と閉位置との間で移動可能である。流体分配システムは、バルブがハンドホイール30の操作によって開かれたときに流体供給システムから気体のゲルマンを分配するための出口ポート24を備える。
【0038】
容器12の内部容積16内のゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤18は、本明細書に開示される任意の適切な種類のものであってもよく、例えば、粉末、微粒子、ペレット、ビーズ、モノリス、錠剤、または他の適切な形態の吸着剤を含んでいてもよい。ゼオライト系イミダゾレート骨格吸着剤は、ゲルマンに対して吸着親和性を有し、容器内でのゲルマンの貯蔵および分配を可能にする。分配は、吸着剤上に吸着された形態で貯蔵されているゲルマンの脱着、および容器から流体分配アセンブリを通って出口ポート24および関連する流れ回路(図示せず)へのゲルマンの排出に対応するようにバルブヘッド22を開くことによって実行することができ、出口ポート24における圧力は、流体供給パッケージからのゲルマンの圧力媒介脱着および排出を引き起こす。例えば、分配アセンブリは、そのような圧力媒介脱着および分配のための容器内の圧力よりも低い圧力である流れ回路、例えば、流れ回路によって流体供給パッケージに結合された下流ツールに適した準大気圧である流れ回路に結合されてもよい。任意に、分配は、流体供給パッケージから排出するための流体の熱媒介脱着を引き起こすために、吸着剤18の加熱に関連してバルブヘッド22を開くことを含んでいてもよい。
【0039】
流体供給パッケージ10は、容器12の内部容積16から流体を最初に排出し、続いて出口ポート24を通って容器にゲルマンを流すことによって、吸着剤上に貯蔵するためにゲルマンを充填することができ、それにより、充填および流体供給パッケージからの流体の分配の二重の機能を果たす。あるいは、バルブヘッド22には、容器の充填および導入された流体による吸着剤の充填のための別個の流体導入ポートが設けられてもよい。
【0040】
容器内のゲルマンは、任意の適切な圧力条件、好ましくは準大気圧または低準大気圧で貯蔵することができ、それによって高圧ガスシリンダなどの流体供給パッケージと関連して流体供給パッケージの安全性を高める。
【実施例
【0041】
図2は、送出圧力に対する準大気圧での、記載の貯蔵容器内のZIF-8(ZIF-8の1グラム当たりのゲルマンのグラム)上のゲルマンの吸着の表である。このデータの線の直線形状は、容器に収容されるゲルマンの高い割合が送出可能であることを示す。さらに、圧力と吸着との間の線形関係は、炭素充填シリンダのより複雑な関係とは対照的に、使用のために接続されたときにZiF-8充填シリンダに貯蔵されたGeHの量を容易に決定することを可能にする。
【0042】
図3は、長期間の貯蔵期間にわたってZIF-8上に貯蔵されたゲルマンの水素含有量を示す。
【0043】
以下の表は、異なる圧力における、記載されるような貯蔵システム内のZIF-8の量によって保持されるゲルマンの量を示す。システムから送出され得る量、およびシステムの送出能力も記載される。
ZIF-8吸着貯蔵システム
この実施例について、貯蔵容器、ゲルマン、ならびに包装および試験条件の関連する特徴は以下の通りである。
容器に充填した場合のゲルマンの初期水素含有量:10ppmV未満(体積百万分率);
貯蔵容器の総容積:0.5リットル;
貯蔵容器中のZIFの量(質量):140グラム;
ZIFの表面積:1500~1600m/g窒素BET表面積;
ZIFの形状および形態:押出物、直径1~3mm、長さ1~5cm;
貯蔵容器および充填用吸着剤の温度:温度制御された筐体内でGeHを21℃で充填した。
充填前の容器およびZIF処理:ZIF-8は、10ppm未満のOおよび2ppm未満のHOレベルのグローブボックス雰囲気中で常に保管した。空気不純物が材料に吸着するのを防ぐために、貯蔵容器にグローブボックス内でZIF-8を装填した。ZIF-8を有する貯蔵容器を、水を含む吸着した空気不純物を除去するために24時間圧送しながら150℃で加熱した。
図2において、ZIF-8へのGeHの吸着を重量測定で測定した。ZIF-8の正味量を、試験シリンダに装填し、排気した後に測定した。重量変化を、安定した目標圧力に達するために一定量のGeHを引き出したときおよびその後のたびに、GeHの最初の充填後に測定した。圧力は、キャパシタンスマノメーター(MKS model 722「Baratron」)を用いて測定した。
図3では、ゲルマンの送出された試料のH濃度を貯蔵の期間にわたって定期的に測定するために使用される技術および機器の詳細が示されている。
保存条件(温度):温度制御された筐体内で21℃
送出されたゲルマン中のHを測定するためのガスクロマトグラフィー技術:Gow-Mac Series580 GC試験装置、Hayesep多孔質ポリマーカラム、および50C 35cm/分の温度および流速を使用した熱伝導率検出器、TCDを備えたガスクロマトグラフ。
図1
図2
図3