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特許7602720接合部材、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】接合部材、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20241212BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/14 613
B41J2/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020199838
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087728
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】林 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 仁
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074201(JP,A)
【文献】特開2017-128110(JP,A)
【文献】特開2019-155906(JP,A)
【文献】特開2000-218789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/16
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部品が被接合部品に接合された接合部材であって、
前記被接合部品は、前記接合部品が接合される接合面に凹部を備え、
前記凹部の底面上に、該凹部の深さよりも低い台部を備え、
前記台部上に保持される接着剤だけでなく、前記接合面上の凹部周囲に付された別の接着剤により前記接合部品が前記被接合部品に接合されており、
前記台部上に保持される前記接着剤は、光硬化型接着剤であり、
前記接合面上に保持される前記別の接着剤は、熱硬化型接着剤であることを特徴とする接合部材
【請求項2】
接合部品が被接合部品に接合された接合部材であって、
前記被接合部品は、前記接合部品が接合される接合面に凹部を備え、
前記凹部の底面上に、該凹部の深さよりも低い台部を備え、
前記台部上に保持される接着剤により前記接合部品が前記被接合部品に接合されており、
前記凹部は、前記接合面の外周縁部に設けられ、該外周縁部側の凹部側部が前記被接合部品の側面に開口していることを特徴とする接合部材。
【請求項3】
請求項2に記載の接合部材において、
前記凹部の底面上には、前記台部の周囲を取り囲むように、該凹部の深さ以下の高さをもつ壁部が設けられ、
前記壁部は、前記開口している凹部側部に対向する箇所が欠けていることを特徴とする接合部材。
【請求項4】
請求項3に記載の接合部材において、
前記壁部は、前記欠けている箇所に、接着剤の流出する抑制する流出抑制部を有することを特徴とする接合部材。
【請求項5】
請求項3は4に記載の接合部材において、
前記壁部と前記台部との間に隙間を有することを特徴とする接合部材。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の接合部材において、
前記接合部品は、前記台部上に保持される接着剤だけでなく、前記接合面上の凹部周囲に付された別の接着剤により前記被接合部品に接合されていることを特徴とする接合部材。
【請求項7】
請求項6に記載の接合部材において、
前記台部上に保持される前記接着剤は、光硬化型接着剤であり、
前記接合面上に保持される前記別の接着剤は、熱硬化型接着剤であることを特徴とする接合部材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の接合部材において、
前記台部は、前記凹部の深さの1/2以上の高さを有することを特徴とする接合部材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の接合部材を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記接合部品及び前記被接合部品のうちの一方は、液体を吐出するノズルを有するノズル板であり、他方は、前記ノズルに通じる個別液室を形成する流路部材であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の液体吐出ヘッドを含むことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の接合部材、請求項9若しくは10に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項11に記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部材、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、接合部品が被接合部品に接合された接合部材が知られている。例えば、特許文献1には、ノズルを有するノズル板(接合部品)が、ノズルに通じる個別液室を形成する流路部材を含むアクチュエータ基板に接合された液体吐出ヘッドが開示されている。このヘッドは、ノズル板が接合されるアクチュエータ基板の接合面に凹部を有し、この凹部の底面には、紫外線硬化型の接着剤が凹部開口面から迫り出すように塗布される。その後、アクチュエータ基板の接合面にノズル板を合わせ、接着剤に紫外線を照射して硬化させることで、アクチュエータ基板にノズル板が接合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、接合部材の小型化に伴い、接合面上に形成可能な凹部の寸法が小さくなって、接着剤が凹部からはみ出して適切な接合が妨げられるおそれがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、接合部品が被接合部品に接合された接合部材であって、前記被接合部品は、前記接合部品が接合される接合面に凹部を備え、前記凹部の底面上に、該凹部の深さよりも低い台部を備え、前記台部上に保持される接着剤だけでなく、前記接合面上の凹部周囲に付された別の接着剤により前記接合部品が前記被接合部品に接合されており、前記台部上に保持される前記接着剤は、光硬化型接着剤であり、前記接合面上に保持される前記別の接着剤は、熱硬化型接着剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、接合面上の凹部の寸法が小さくても、接着剤が凹部からはみ出して適切な接合が妨げられる事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態における液体吐出ヘッドの外観斜視説明図。
図2】同液体吐出ヘッドの分解斜視説明図。
図3】同液体吐出ヘッドの断面斜視説明図。
図4】同液体吐出ヘッドのフレーム部材を除いた分解斜視説明図。
図5】同液体吐出ヘッドの流路部分の断面斜視説明図。
図6】同液体吐出ヘッドの流路部分の拡大断面斜視説明図。
図7】同液体吐出ヘッドの流路部分の平面説明図。
図8】同液体吐出ヘッドをノズル板側から見たときの平面図。
図9】同ノズル板が接合される個別流路部材の接合面のうち、図8中符号Bで示す破線で囲った部分を拡大した平面図。
図10図9中符号A-A’の断面図。
図11】(a)は、台部上における接合前の接着剤の状態を示す断面図。(b)は、台部上における接合後の接着剤の状態を示す断面図。
図12】変形例における個別流路部材の接合面の一部分を拡大した平面図。
図13図12中符号A-A’の断面図。
図14】変形例の壁部に、接着剤の流出する抑制するための出っ張り部を設けた例を示す平面図。
図15】変形例において、壁部と台部との間に隙間を設けた例を示す平面図。
図16】実施形態のヘッドモジュールの分解斜視説明図。
図17】実施形態のヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図。
図18】実施形態における印刷装置の概略説明図。
図19】印刷装置のヘッドユニットの一例の平面説明図。
図20】印刷装置の一例の要部平面説明図。
図21】印刷装置の一例の要部側面説明図。
図22】液体吐出ユニットの一例の要部平面説明図。
図23】液体吐出ユニットの一例の正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を、液体を吐出する装置に設けられる液体吐出ヘッドに適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における液体吐出ヘッドの外観斜視説明図である。
図2は、同液体吐出ヘッドの分解斜視説明図である。
図3は、同液体吐出ヘッドの断面斜視説明図である。
図4は、同液体吐出ヘッドのフレーム部材を除いた分解斜視説明図である。
図5は、同液体吐出ヘッドの流路部分の断面斜視説明図である。
図6は、同液体吐出ヘッドの流路部分の拡大断面斜視説明図である。
図7は、同液体吐出ヘッドの流路部分の平面説明図である。
【0008】
本実施形態の液体吐出ヘッド1は、ノズル板10と、流路板(個別流路部材)20と、振動板部材30と、共通流路部材50と、ダンパ部材60と、フレーム部材80と、駆動回路102を実装した基板(フレキシブル配線基板)101とを備えている。
【0009】
ノズル板10には、液体を吐出する複数のノズル11が設けられている。複数のノズル11は、二次元状にマトリクス配置され、図7に示すように、第1方向F、第2方向S及び第3方向Tの三方向に並んで配置されている。
【0010】
個別流路部材20は、複数のノズル11に各々連通する複数の圧力室(個別液室)21と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別供給流路22と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別回収流路23とを形成している。1つの圧力室21とこれに通じる個別供給流路22及び個別回収流路23とを併せて個別流路25と称する。
【0011】
振動板部材30は、圧力室21の変形可能な壁面である振動板31を形成し、振動板31には圧電素子40が一体に設けられている。また、振動板部材30には、個別供給流路22に通じる供給側開口32と、個別回収流路23に通じる回収側開口33とが形成されている。圧電素子40は、振動板31を変形させて圧力室21内の液体を加圧する圧力発生手段である。
【0012】
なお、個別流路部材20と振動板部材30とは、部材として別部材であることに限定さるものではない。例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板を使用して個別流路部材20及び振動板部材30を同一部材で一体に形成することができる。つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を個別流路部材20とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜とで振動板31を形成することができる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は個別流路部材20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0013】
共通流路部材50は、2以上の個別供給流路22に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の個別回収流路23に通じる複数の共通回収流路支流53とを、ノズル11の第2方向Sに交互に隣接して形成している。
【0014】
共通流路部材50には、個別供給流路22の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、個別回収流路23の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔とが形成されている。
【0015】
また、共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1又は複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1又は複数の共通回収流路本流57とを形成している。
【0016】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面する(対向する)供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面する(対向する)回収側ダンパ63とを有している。
【0017】
ここで、共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62又は回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜又は無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
【0018】
次に、本実施形態の接合部材について説明する。
本実施形態では、接合部品であるノズル板10が被接合部品である個別流路部材20に接着剤90で接合されて接合部材を構成している。ここで、個別流路部材20のノズル板10と接合される面を接合面20aとする。
【0019】
図8は、本実施形態の液体吐出ヘッド1をノズル板10側から見たときの平面図である。なお、ノズル11の図示は省略してある。
図9は、ノズル板10が接合される個別流路部材20の接合面20aのうち、図8中符号Bで示す破線で囲った部分を拡大した平面図である。
図10は、図9中符号A-A’の断面図である。
なお、符号15で示す部材は、ノズルカバーである。
【0020】
個別流路部材20は、ノズル板10との接合面20aの四隅付近に、接合面20a側に開口する凹部24が設けられている。本実施形態の凹部24は、接合面20aの外周縁部に設けられ、その外周縁部側の凹部側部が個別流路部材20の側面20bにも開口している。
【0021】
個別流路部材20とノズル板10とを接合する際、本実施形態では、接合面20aの四隅の各凹部24内に仮接合用の接着剤91を塗布するとともに、個別流路部材20の接合面20a上の所定箇所に本接合用である別の接着剤90を塗布する。仮接合用の接着剤91には、例えば光硬化型接着剤、特に紫外線硬化型接着剤を好適に用いることができる。
【0022】
なお、凹部24内に塗布される仮接合用の接着剤91として紫外線硬化型接着剤を用いる場合、個別流路部材20の接合面20a上にノズル板10を位置決めした後に、その凹部24内の紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する必要がある。本実施形態では、凹部側部を個別流路部材20の側面20bに開口させているため、個別流路部材20の接合面20a上にノズル板10を位置決めした後でも、個別流路部材20の側面20bから紫外線を凹部24内の紫外線硬化型接着剤に容易に照射できる。
【0023】
また、本接合用の接着剤90としては、必要な機械的強度、接液性、弾性率、部品との密着性から任意のものを用いることができる。例えば、エポキシ系樹脂接着剤、ウレタン系樹脂接着剤、エラストマー系樹脂接着剤などを挙げることができる。特に、本接合用の接着剤90としては、熱硬化型接着剤であるのが好ましい。接着剤90の塗布方法としては、薄膜印刷法、スプレー塗布法、ディスペンス法などがある。
【0024】
個別流路部材20にノズル板10を仮接合用の接着剤91により仮接合した後、熱硬化型接着剤である本接合用の接着剤90を硬化させるために、加熱処理を行う。この加熱処理時に、位置決めされたノズル板10が個別流路部材20の接合面20aに対して動かないようにする必要があるため、本実施形態では、事前に、仮接合用の接着剤91により仮接合している。
【0025】
仮接合のためには、凹部24内に供給される接着剤91は、凹部24の開口面から迫り出すように(接合面20aよりも上側まで迫り出すように)、凹部24内に保持される必要がある。すなわち、接着剤91が凹部24の開口面から迫り出した状態で保持されるのに十分な量の接着剤91を、凹部24内に供給する必要がある。
【0026】
ここで、液体吐出ヘッド1の小型化が進むにつれて、個別流路部材20の接合面20a上に凹部24を形成できる領域も狭くなってきているため、凹部24の寸法(接合面20aの法線方向から見たときの凹部24の開口面積)を小さくせざるを得ない状況である。その結果、接着剤91が凹部24の開口面から迫り出した状態で保持されるのに十分な量の接着剤91を凹部24内に供給しようとすると、接着剤91の剤滴が凹部24の開口よりも大きくなってしまい、接着剤91が凹部24からはみだしてしまう。
【0027】
接着剤91が凹部24内の底面上に適切に供給された場合、濡れ性の影響で、接着剤91は自らの表面張力で丸く膨らんだ形状を維持し、凹部24の開口面から迫り出すほどの高さをもつことができる。しかしながら、接着剤91が凹部24からはみだしてしまうと、接着剤91の表面張力が崩れ、凹部24内を流れて個別流路部材20の側面20bから接着剤91が流出してしまい、仮接合を適切に行うことができない。また、接着剤91が凹部24からはみだしてしまうと、接着剤91が本接合用の接着剤90と混合されてしまい、本接合用の接着剤90の接着性を低下させ、接合強度を落とすおそれもある。
【0028】
また、接着剤91の剤滴が凹部24の開口よりも小さい場合でも、凹部24の内側壁面と接着剤91との距離に十分なマージンがないと、接着剤91の供給量誤差や供給位置誤差などにより、接着剤91が凹部24の内側壁面に接してしまう場合がある。この場合、接着剤91の表面張力が崩れ、凹部24内を流れて個別流路部材20の側面20bから接着剤91が流出してしまい、仮接合を適切に行うことができない。
【0029】
そこで、本実施形態においては、図9及び図10に示すように、凹部24の底面上に、凹部24の深さh1よりも低い高さh2をもつ台部26を設け、その台部26の上面に接着剤91を供給して保持させる。このような台部26の形成方法としては、例えば、個別流路部材20に凹部24を形成する工程をエッチングによって行う場合、台部26の底面上に台部26が残るようにエッチングする方法が挙げられる。また、例えば、個別流路部材20に凹部24を形成した後に、凹部24の底面上に台部26を後付けする方法も挙げられる。なお、台部26の形成方法は、これらの方法に限られるものではない。
【0030】
台部26を持たない凹部24の底面上に接着剤91を供給して保持させる従来構成では、接着剤91の高さを凹部24の深さh1よりも高くできる量の接着剤91が必要であった。これに対し、本実施形態では、台部26の高さh2だけ嵩上げされ、h1-h2の高さ分だけ接着剤91に必要な高さを低くすることができる。これにより、従来構成よりも少ない量の接着剤91によって、図11(a)に示すように、凹部24の開口面から迫り出すように接着剤91を保持することができる。例えば、台部26の高さh2が凹部の深さh1の1/2とした場合(h2=h1/2)、必要な接着剤91の量(体積)は、おおよそ、従来構成の1/8とすることができる。
【0031】
このように必要な接着剤91の量を少なくできることで、接着剤91が凹部24からはみだしてしまったり、凹部24から接着剤91が流れ出てしまったりする事態を回避でき、図11(b)に示すように、適切な仮接合が実現される。また、接着剤91が本接合用の接着剤90と混合する事態も回避され、本接合用の接着剤90の接着性を低下させて接合強度を落とす事態も回避される。
【0032】
なお、凹部24内に台部26を設けず、凹部24の深さを浅く形成することによっても、少ない量の接着剤91で、凹部24の開口面から迫り出した状態にすることは可能である。しかしながら、個別流路部材20の凹部24は、個別流路部材20に設けられる圧力室(個別液室)21や個別流路25等の他の加工箇所と同じ工程で形成されるものであり、凹部24の深さを変更することには制約がある。したがって凹部24の深さを変更しないまま、少ない量の接着剤91で、接着剤91が凹部24の開口面から迫り出した状態になることが望まれる。
【0033】
〔変形例〕
次に、上述した実施形態の液体吐出ヘッド1の一変形例について説明する。
図12は、本変形例における個別流路部材20の接合面20aの一部分を拡大した平面図である。
図13は、図12中符号A-A’の断面図である。
【0034】
本変形例では、上述した実施形態における凹部24の底面上に、台部26の周囲を取り囲むように壁部27が設けられている。この壁部27は、凹部24の深さh1以下の高さをもつものであり、本変形例では、凹部24の深さh1と同じ高さをもつ。凹部24の深さh1と同じ高さをもつ壁部27は、製造工程の容易化につながるメリットがある。
【0035】
本変形例において、壁部27は、図11に示すように、開口している凹部側部側(個別流路部材20の側面20b側)に対向する箇所が欠け、それ以外の3方向の箇所では、台部26と凹部24の内側壁面との間に壁部27が介在している。これにより、台部26に過剰な量の接着剤91が供給された場合でも、接着剤91が壁部27に阻止されて、凹部24の当該内側壁面を超えて個別流路部材20の接合面20aに流れ出ることを抑制できる。よって、接着剤91が接合面20a上の本接合用の接着剤90と混合する事態がより安定して回避でき、本接合用の接着剤90の接着性を低下させて接合強度を落とす事態を安定して抑制することができる。
【0036】
また、本変形例の壁部27は、凹部24の内側壁面との間に隙間が介在するように設けられている。これにより、仮に、接着剤91が壁部27を超えて流出することになっても、流出した接着剤91が壁部27と凹部24の内側壁面との隙間に保持され、凹部24の内側壁面を超えて接合面20aに流れ出ることが抑制される。
【0037】
なお、本変形例の壁部27は、開口している凹部側部側(個別流路部材20の側面20b側)に対向する箇所が欠けていて開いているので、台部26上の接着剤91(紫外線硬化型接着剤)への紫外線照射にあたって壁部27が邪魔になることはない。
【0038】
また、このように壁部27の当該箇所が欠けていて開いていることで、台部26上から接着剤91が流出する事態になったとき、接着剤91は、壁部27の当該欠けている箇所から流出し、個別流路部材20の側面20b側へと流れる。これにより、流出した接着剤91が接合面20a上の本接合用の接着剤90と混合する事態がより安定して回避でき、本接合用の接着剤90の接着性を低下させて接合強度を落とす事態を安定して抑制することができる。
【0039】
本変形例においては、図14に示すように、壁部27の当該欠けている箇所に、接着剤91の流出する抑制する流出抑制部を設けてもよい。図13の例では、壁部27の当該欠けている箇所の一部を塞ぐように流出抑制部としての出っ張り部27aを設けている。これによれば、台部26上から接着剤91が流出する事態になったとき、接着剤91が壁部27の当該欠けている箇所から流出しにくくなり、個別流路部材20の側面20b側から流れ出る接着剤91の量を抑制できる。これにより、個別流路部材20の側面20b側から流れ出る接着剤91の悪影響(ノズルカバー15の接合を阻害するなど)を抑制することができる。
【0040】
また、図15に示すように、壁部27と台部26との間にも隙間を設けてもよい。これによれば、台部26上から接着剤91が流出する事態になっても、流出した接着剤91が台部26と壁部27との隙間に保持され、壁部27を超えて流れ出ることが抑制される。
【0041】
次に、本実施形態の液体吐出ヘッド1を備えるヘッドモジュールの一例について、図16及び図17を参照して説明する。
図16は、本実施形態のヘッドモジュールの分解斜視説明図である。
図17は、本実施形態のヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【0042】
ヘッドモジュール100は、液体を吐出する液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)1と、複数のヘッド1を保持するベース部材103と、複数のヘッド1のノズルカバー15となるカバー部材113とを備えている。また、ヘッドモジュール100は、放熱部材104と、複数のヘッド1に対して液体を供給する流路を形成しているマニホールド105と、フレキシブル配線部材101と接続するプリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。
【0043】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について、図18及び図19を参照して説明する。
図18は、本実施形態における液体を吐出する装置としてのインクジェット記録装置である印刷装置の概略説明図である。
図19は、本実施形態の印刷装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0044】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0045】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0046】
本実施形態の印刷装置500では、ヘッドユニット550に、上述した本実施形態に係る2つのヘッドモジュール100A,100Bを共通ベース部材552に備えている。
【0047】
そして、ヘッドモジュール100A,100Bの搬送方向と直交する方向におけるヘッド1の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0048】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について、図20及び図21を参照して説明する。
図20は、本例の印刷装置の要部平面説明図である。
図21は、本例の印刷装置の要部側面説明図である。
【0049】
本例の印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0050】
このキャリッジ403には、本発明に係る液滴吐出ヘッドであるヘッド1及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440のヘッド1は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド1は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。液体吐出ヘッド1は、液体循環装置と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0051】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。搬送ベルト412は用紙410を吸着してヘッド1に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0052】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。維持回復機構420は、例えばヘッド1のノズル面をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。また、主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0053】
このように構成した印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じてヘッド1を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0054】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について、図22を参照して説明する。
図22は、本例の液体吐出ユニットの要部平面説明図である。
【0055】
この液体吐出ユニット440は、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、ヘッド1で構成されている。
【0056】
なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0057】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について、図23を参照して説明する。
図23は、本例の液体吐出ユニットの正面説明図である。
【0058】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられたヘッド1と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0059】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド1と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0060】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0061】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0062】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0063】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0064】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0065】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0066】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0067】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0068】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0069】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0070】
なお、ここでは、「液体吐出ユニット」について、液体吐出ヘッドとの組み合わせで説明しているが、「液体吐出ユニット」には上述した液体吐出ヘッドを含むヘッドモジュールやヘッドユニットと上述したような機能部品、機構が一体化したものも含まれる。
【0071】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニットなどを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0072】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0073】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0074】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0075】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0076】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0077】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0078】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0079】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0080】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、接合部品(例えばノズル板10)が被接合部品(例えば個別流路部材20)に接合された接合部材(例えば液体吐出ヘッド1)であって、前記被接合部品は、前記接合部品が接合される接合面(例えば接合面20a)に凹部24を備え、前記凹部の底面上に、該凹部の深さh1よりも低い台部26を備え、前記台部上に保持される接着剤91により前記接合部品が前記被接合部品に接合されていることを特徴とするものである。
本態様においては、凹部の底面上に設けた台部に接着剤を保持させるため、台部のない凹部の底面上に接着剤を保持させる従来構成よりも、少ない接着剤量で凹部開口面から迫り出すように接着剤を付することができる。これにより、接合面の法線方向から見た接着剤の専有面積が凹部開口面を超えるほどの接着剤量を必要とせずに済むので、接着剤が凹部からはみ出して適切な接合が妨げられる事態を回避できる。
【0081】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記接合部品は、前記台部上に保持される接着剤91だけでなく、前記接合面上の凹部周囲に付された別の接着剤90により前記被接合部品に接合されていることを特徴とするものである。
接合面上の凹部周囲に付された別の接着剤により被接合部品に接合される場合、凹部内の接着剤が凹部からはみだしてしまうと、その接着剤が前記別の接着剤と混合されてしまうことがある。このような混合が生じると、前記別の接着剤の接着性が低下してしまい、当該別の接着剤による接合強度を落とすおそれがある。
本態様によれば、上述したとおり、凹部の底面上に設けた台部に接着剤を保持させる構成により、接着剤が凹部からはみ出すような事態が回避される。よって、前記別の接着剤の接着性が低下してしまう事態が回避され、当該別の接着剤による接合強度が落ちて適切な接合が妨げられるという事態が回避できる。
【0082】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記台部上に保持される前記接着剤は、光硬化型接着剤であり、前記接合面上に保持される前記別の接着剤は、熱硬化型接着剤であることを特徴とするものである。
これによれば、光硬化型接着剤により仮接合した後、熱硬化型接着剤で本接合することができる。
【0083】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記台部は、前記凹部の深さの1/2以上の高さを有することを特徴とするものである。
これによれば、凹部開口面から迫り出すように接着剤を付するのに必要な接着剤の量を十分に少量にすることができ、接着剤が凹部からはみ出して適切な接合が妨げられる事態を安定して回避することが可能である。
【0084】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記凹部は、前記接合面の外周縁部に設けられ、該外周縁部側の凹部側部が前記被接合部品の側面に開口していることを特徴とするものである。
これによれば、凹部内の接着剤が流れ出る事態が発生しても、接着剤が接合面の外周縁部へと流れ、接合面上へ流れることを回避でき、適切な接合が妨げられる事態をより安定して回避することが可能である。また、このように凹部側部が前記被接合部品の側面に開口していることで、台部上に付する接着剤として光硬化型の接着剤を用いたときに、当該接着剤への光照射が容易になり、製造工程を容易化することができる。
【0085】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記凹部の底面上には、前記台部の周囲を取り囲むように、該凹部の深さ以下の高さをもつ壁部27が設けられ、前記壁部は、前記開口している凹部側部に対向する箇所が欠けていることを特徴とするものである。
これによれば、台部上に付された接着剤が台部から流れ出る事態が発生しても、その接着剤が壁部によって阻止されて、凹部から流出することが防止される。よって、接着剤が凹部からはみ出して適切な接合が妨げられる事態をより安定して回避することが可能である。また、このように壁部が欠けていることで、台部上に付する接着剤として光硬化型の接着剤を用いたときに、当該接着剤への光照射が容易になり、製造工程を容易化することができる。
【0086】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記壁部は、前記欠けている箇所に、接着剤の流出する抑制する流出抑制部(例えば出っ張り部27a)を有することを特徴とするものである。
これによれば、壁部に設けられた前記欠けている箇所から接着剤が流出する事態が発生しても、流出抑制部によって、その接着剤の流出が抑制されるので、接着剤が凹部からはみ出して適切な接合が妨げられる事態をより安定して回避することが可能である。
【0087】
[第8態様]
第8態様は、第6又は第7態様において、前記壁部と前記台部との間に隙間を有することを特徴とするものである。
これによれば、台部上に付された接着剤が台部から流れ出る事態が発生しても、その接着剤が台部と壁部との間の隙間に保持され、凹部から流れ出にくくすることができる。よって、接着剤が凹部からはみ出して適切な接合が妨げられる事態をより安定して回避することが可能である。
【0088】
[第9態様]
第9態様は、液体吐出ヘッドであって、第1乃至第8態様のいずれか接合部材を備えることを特徴とするものである。
本態様によれば、適切に接合された接合部材を備える液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0089】
[第10態様]
第10態様は、第9態様の液体吐出ヘッドにおいて、前記接合部品及び前記被接合部品のうちの一方は、液体を吐出するノズルを有するノズル板10であり、他方は、前記ノズルに通じる個別液室を形成する流路部材(例えば個別流路部材20)であることを特徴とするものである。
これによれば、ノズル板と流路部材とが適切に接合された液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0090】
[第11態様]
第11態様は、液体吐出ユニットであって、第9又は第10態様の液体吐出ヘッドを含むことを特徴とするものである。
本態様によれば、適切に接合された接合部材を備える液体吐出ユニットを提供することができる。
【0091】
[第12態様]
第12態様は、液体を吐出する装置であって、第1乃至第8態様のいずれかの接合部材、第9若しくは第10態様の液体吐出ヘッド、又は、第11態様の液体吐出ユニットを備えることを特徴とするものである。
本態様によれば、適切に接合された接合部材を備える液体を吐出する装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 :液体吐出ヘッド
10 :ノズル板
11 :ノズル
15 :ノズルカバー
20 :個別流路部材
20a :接合面
20b :側面
21 :圧力室
22 :個別供給流路
23 :個別回収流路
24 :凹部
25 :個別流路
26 :台部
27 :壁部
27a :出っ張り部
30 :振動板部材
31 :振動板
32 :供給側開口
33 :回収側開口
40 :圧電素子
50 :共通流路部材
52 :共通供給流路支流
53 :共通回収流路支流
54 :供給口
55 :回収口
56 :共通供給流路本流
57 :共通回収流路本流
60 :ダンパ部材
62 :供給側ダンパ
63 :回収側ダンパ
80 :フレーム部材
90 :接着剤
91 :接着剤
100 :ヘッドモジュール
440 :液体吐出ユニット
500 :印刷装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【文献】特開2017-74731号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23