(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B41J2/14
(21)【出願番号】P 2021002024
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 慶太郎
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-129557(JP,A)
【文献】特開2000-211146(JP,A)
【文献】特開2020-11435(JP,A)
【文献】特開2019-81316(JP,A)
【文献】特開2007-144888(JP,A)
【文献】特開2000-211143(JP,A)
【文献】特開2015-28425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出口と、
前記液体吐出口に連通する流路と、
前記液体吐出口を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動するアクチュエータと
を備え、前記弁体が前記液体吐出口を開いている間に、前記流路に供給した液体を前記液体吐出口から吐出する液体吐出ヘッドであって、
前記弁体の1つに対して複数のアクチュエータを設け
、
前記複数のアクチュエータは、同時に駆動しないときがあることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
液体を吐出する液体吐出口と、
前記液体吐出口に連通する流路と、
前記液体吐出口を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動するアクチュエータと
を備え、前記弁体が前記液体吐出口を開いている間に、前記流路に供給した液体を前記液体吐出口から吐出する液体吐出ヘッドであって、
前記弁体の1つに対して複数のアクチュエータを設け、
前記複数のアクチュエータを交互に駆動することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
液体を吐出する液体吐出口と、
前記液体吐出口に連通する流路と、
前記液体吐出口を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動するアクチュエータと
を備え、前記弁体が前記液体吐出口を開いている間に、前記流路に供給した液体を前記液体吐出口から吐出する液体吐出ヘッドであって、
前記弁体の1つに対して複数のアクチュエータを設け、
前記複数のアクチュエータは、所定駆動回数おきに前記アクチュエータの切り替えを繰り返して駆動することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
液体を吐出する液体吐出口と、
前記液体吐出口に連通する流路と、
前記液体吐出口を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動するアクチュエータと
を備え、前記弁体が前記液体吐出口を開いている間に、前記流路に供給した液体を前記液体吐出口から吐出する液体吐出ヘッドであって、
前記弁体の1つに対して複数のアクチュエータを設け、
前記液体吐出口の開閉に必要な前記アクチュエータの印加電圧をVxとした場合、前記複数のアクチュエータは、それぞれVx/Na(但しNaはアクチュエータの個数)の電圧で、かつ同周期で駆動することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
液体を吐出する液体吐出口と、
前記液体吐出口に連通する流路と、
前記液体吐出口を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動するアクチュエータと
を備え、前記弁体が前記液体吐出口を開いている間に、前記流路に供給した液体を前記液体吐出口から吐出する液体吐出ヘッドであって、
前記弁体の1つに対して複数のアクチュエータを設け、
前記液体吐出口の開閉に必要な前記弁体の変位量をxとした場合、前記複数のアクチュエータは、それぞれx/Na(但しNaはアクチュエータの個数)の変位量で、かつ同周期で駆動することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記複数のアクチュエータは、当該アクチュエータの変位方向が同じであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記複数のアクチュエータを、前記液体の吐出方向に直列に配置することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記印加電圧Vxは、入力データに応じて可変であることを特徴とする請求項4記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記変位量xは、入力データに応じて可変であることを特徴とする請求項5記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記流路に、加圧した状態の液体を供給することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ノズル22に連通するキャビティ23に吐出液体を加圧供給すると共に、ピン24でノズル22を閉塞可能とし、このピン24をアクチュエータ25でノズル22に対して離接可能とし、このアクチュエータ25を制御装置12で制御する構成とすることで、ピン24がノズル22から離間している間だけ、加圧供給されている吐出液体がノズル22から液滴として吐出される液滴吐出ヘッドを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、アクチュエータに掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、液体を吐出する液体吐出口と、前記液体吐出口に連通する流路と、前記液体吐出口を開閉する弁体と、前記弁体を駆動するアクチュエータとを備え、前記弁体が前記液体吐出口を開いている間に、前記流路に供給した液体を前記液体吐出口から吐出する液体吐出ヘッドであって、前記弁体の1つに対して複数のアクチュエータを設け、前記複数のアクチュエータは、同時に駆動しないときがあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、アクチュエータに掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す全体斜視図。
【
図5】本発明に係る液体吐出装置の一例を示す全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0008】
図1は、本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す全体斜視図である。
【0009】
液体吐出ヘッド300は、ハウジング310、コネクタ350、供給ポート311および回収ポート313を主に備える。ハウジング310は、金属材料または樹脂材料からなる。ハウジング310の上部には、電気信号の通信のためのコネクタ350を備えている。
【0010】
また、ハウジング310の左右には、液体をヘッド内に供給するための供給ポート311、および液体をヘッドから排出するための回収ポート313を設けている。
【0011】
図2は、本発明に係る液体吐出ヘッドの全体断面図(
図1のA-A線矢視断面図)である。
【0012】
ハウジング310は、上部に電気信号の通信のためのコネクタ350を備えており、下部には液体を吐出するノズル302を備えたノズル板301を保持している。また、ハウジング310は、供給ポート311側からの液体をノズル板301上を経て回収ポート313側へ送る流路312を備えている。
【0013】
供給ポート311と回収ポート313との間には、流路312内のインクをノズル302から吐出するための液体吐出モジュール330(詳細は後述する)を配置している。液体吐出モジュール330は、ノズル302の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル302に対応する8個の液体吐出モジュール330を備えた構成を示している。
【0014】
なお、ノズル302および液体吐出モジュール330の数および配列は上記に限るものではない。例えば、ノズル302および液体吐出モジュール330の数は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル302および液体吐出モジュール330の配列は、1列ではなく複数列で配置してもよい。
【0015】
上記の構成により、供給ポート311は加圧した状態の液体を外部から取り込み、液体を矢印a1方向へ送り、液体を流路312に供給する。流路312は、供給ポート311からの液体を矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート313は、流路312に沿って配置したノズル302から吐出しなかった液体を矢印a3方向へ排出する。
【0016】
液体吐出モジュール330は、ノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332を備える。ハウジング310は、圧電素子332の上端部と対向する位置に規制部材314を備えている。この規制部材314は、圧電素子332の上端部に当接しており、圧電素子332の固定点をなしている。ここで、ニードル弁331は弁体の一例であり、圧電素子332はアクチュエータの一例である。
【0017】
上記構成において圧電素子332を作動し、ニードル弁331が図において上方向へ変位すると、ニードル弁331によって閉じていたノズル302が開いた状態になり、ノズル302から液体が吐出する。また、圧電素子332を作動し、ニードル弁331が下方向へ変位すると、ニードル弁331の先端部がノズル302に当接してノズル302が閉じた状態になり、ノズル302から液体が吐出しなくなる。
【0018】
なお、ノズル302から液体を吐出している期間は、ノズル302からの吐出効率を下げないようにするため、回収ポート313からの液体の排出は一時的に行わないようにしてもよい。
【0019】
図3は、液体吐出ヘッドを構成する液体吐出モジュール単体の説明図である。
【0020】
液体吐出モジュール330は、ノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332とを備えている。ノズル板301はハウジング310に接合している。また、流路312はハウジング310に設けた複数の液体吐出モジュール330に共通の流路である。
【0021】
ニードル弁331の先端には弾性部材331aを備えており、ニードル弁331の先端をノズル板301に押し付けた際にノズル302を確実に閉塞するようにしている。また、ニードル弁331とハウジング310との間には、軸受部321を設け、軸受部321とニードル弁331との間にはOリングなどのシール部材315を設けている。
【0022】
ハウジング310の空間322内には、保持部材333を介して圧電素子332を収容している。保持部材333は、7つの部材333a~333gからなる。保持部材333の下部に位置した部材333aは、ニードル弁331の上端部を保持する。部材333a、部材333b、部材333cおよび部材333dが形成する空間は、第1の圧電素子3321を保持する。また、部材333d、部材333e、部材333fおよび部材333gが形成する空間は、第2の圧電素子3322を保持する。
【0023】
保持部材333の上部に位置した部材333gは、その一部が規制部材314に当接しており、保持部材333が上方へ移動できないように固定点をなしている。また、保持部材333をなす7つの部材333a~333gは、それぞれが板バネなどの弾性体333hを介して連結している。
【0024】
上記の構成により、ニードル弁331、第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322は、保持部材333を介して同軸上、すなわち、液体の吐出方向に直列に配置している。なお、保持部材333には、ステンレス、または他の熱膨張しにくい材料(インバー等)を用いている。
【0025】
第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322は、変位方向が同じ方向になるように設けており、2つの圧電素子は、図示しない電圧印加手段によって電圧を印加すると、ノズル302が開く方向にニードル弁331を駆動する。したがって、圧電素子332に電圧を印加していないときは、ニードル弁331がノズル302を閉塞しているので、流路312に液体が加圧供給されていても、ノズル302から液体が吐出することはない。
【0026】
そして、圧電素子332に電圧を印加することで、圧電素子332が収縮し、保持部材333を介してニードル弁331を引っ張るので、ニードル弁331がノズル302から離間してノズル302を開放する。これにより、流路312に加圧供給した液体をノズル302から吐出する。
【0027】
なお、上記の説明では、2つの圧電素子3321、3322を、液体の吐出方向に直列に配置した構成としたが、圧電素子の配置はこれに限るものではない。例えば2つの圧電素子3321、3322は並列に配置してももよい。また、圧電素子の数についても、2つに限るものではなく、3つ以上でもよい。
【0028】
上述のように、本実施形態は、液体を吐出するノズル302と、ノズル302に連通する流路312と、ノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332とを備え、ニードル弁331がノズル302を開いている間に、流路312に供給した液体をノズル302から吐出する液体吐出ヘッド300であって、ニードル弁331の1つに対して複数の圧電素子3321、3322を設ける。
【0029】
また、上述のように、複数の圧電素子3321、3322は、当該圧電素子の変位方向が同じである。
【0030】
さらに、上述のように、複数の圧電素子3321、3322を、液体の吐出方向に直列に配置する。
【0031】
これにより、圧電素子に掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0032】
図4は、アクチュエータの制御タイミングチャートである。
【0033】
図4(a)は、第1の圧電素子3321と第2の圧電素子3322とを交互に駆動する場合を示している。この場合は、ヘッド駆動制御部902(詳細は
図7で説明する)からの駆動波形に対して、第1の圧電素子3321と第2の圧電素子3322とを交互に駆動する。例えば、第1滴目の駆動パルスに対しては第1の圧電素子3321、第2滴目の駆動パルスに対しては第2の圧電素子3322、第3滴目の駆動パルスに対しては第1の圧電素子3321のように2つの圧電素子を交互に駆動する。
【0034】
また、交互に切り替える周期は、1回の液体吐出毎に限るものではない。例えば、第1の圧電素子3321で複数回駆動を行った後に、第2の圧電素子3322で同じ回数の駆動を行うという要領で、所定駆動回数おきに2つの圧電素子の切り替えを繰り返すようにしてもよい。
【0035】
以上のように、第1の圧電素子3321と第2の圧電素子3322とが同時に駆動しないときがあるようにすることで、圧電素子単体の駆動周波数を半減し、圧電素子に掛かる負荷を低減することができる。
【0036】
図4(b)は、
図4(a)と異なる実施例であり、第1の圧電素子3321と第2の圧電素子3322とで分担して、ニードル弁331を動かす場合を示している。すなわち、ノズル302を開閉するために必要となる圧電素子の印加電圧をVxとした場合に、各圧電素子3321、3322にVx/2ずつの電圧を印加する。そして、ヘッド駆動制御部902からの駆動波形に対して、第1の圧電素子3321と第2の圧電素子3322とにVx/2の電圧を同周期で印加する。
【0037】
図4(c)は、
図4(b)と同様、第1の圧電素子3321と第2の圧電素子3322とで分担して、ニードル弁331を動かす場合を示している。
図4(b)が印加電圧の視点で捉えていたのに対し、
図4(c)は変位量の視点で捉えている点が異なる。すなわち、ノズル302を開閉するために必要となるニードル弁331の変位量をxとした場合に、各圧電素子3321、3322でx/2ずつの変位量を生成する。そして、ヘッド駆動制御部902からの駆動波形に対して、第1の圧電素子3321と第2の圧電素子3322とでx/2の変位量を同周期で生成する。
【0038】
なお、印加電圧Vxおよび変位量xは、一定値に限るものではない。印加電圧Vxおよび変位量xは、入力データに応じて可変にしてもよい。
【0039】
上述のように、本実施形態において、複数の圧電素子3321、3322は、同時に駆動しないときがあるようにしている。
【0040】
また、上述のように複数の圧電素子3321、3322を交互に駆動する。また、上述のように複数の圧電素子3321、3322は、所定駆動回数おきに圧電素子3321、3322の切り替えを繰り返して駆動する。
ド。
【0041】
また、上述のようにノズル302の開閉に必要な圧電素子の印加電圧をVxとした場合、複数の圧電素子3321、3322は、それぞれVx/2(分母は圧電素子の個数)の電圧で、かつ同周期で駆動する。
【0042】
また、上述のようにノズル302の開閉に必要なニードル弁331の変位量をxとした場合、複数の圧電素子3321、3322は、それぞれx/2(分母は圧電素子の個数)の変位量で、かつ同周期で駆動する。
【0043】
これにより、圧電素子単体の駆動周波数を半減し、圧電素子に掛かる負荷を低減することができる。
【0044】
また、上述のように印加電圧Vxは、入力データに応じて可変である。さらに、変位量xは、入力データに応じて可変である。
【0045】
これにより、印加電圧Vx、変位量xを大きい値にすると大きなサイズの液滴を吐出することが可能になり、印加電圧Vx、変位量xを小さい値にすると小さなサイズの液滴を吐出することが可能になる。その結果、吐出したい液滴のサイズに柔軟に対応することが可能になる。
【0046】
図5は、本発明に係る液体吐出装置の一例として示した印刷装置の全体斜視図である。
【0047】
印刷装置1000は、対象物の一例である被描画物100に対向して設置している。印刷装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0048】
Y軸レール102は、X軸レール101がY方向(正側および負側)に移動可能なように、X軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX方向(正側および負側)に移動可能なように、Z軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向(正側および負側)に移動可能なように、キャリッジ1を保持する。ここで、キャリッジ1は液体吐出ユニットの一例である。
【0049】
印刷装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、印刷装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、印刷装置1000は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。ここで、ヘッド保持体70は、保持体の一例である。
【0050】
上記構成の印刷装置1000は、キャリッジ1をX方向、Y方向およびZ方向に動かしながら、ヘッド保持体70に設けた液体吐出ヘッドから液体の一例であるインクを吐出し、被描画物100に描画を行う。なお、キャリッジ1およびヘッド保持体70のZ方向の移動は、必ずしもZ方向に平行であることを意味するものではなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。
【0051】
なお、
図5において被描画物100の表面形状は平面としているが、被描画物100の表面形状は、車やトラックの車体、航空機の機体などのように鉛直に近い面、曲率半径の大きい面、もしくは多少の凹凸を有する面でもよい。
【0052】
図6は、
図5に示した印刷装置のキャリッジの全体斜視図であり、キャリッジ1を被描画物100側から見たものである。
【0053】
キャリッジ1はヘッド保持体70を備えている。また、キャリッジ1は、
図5に示した第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向(正側および負側)へ移動可能である。
【0054】
ヘッド保持体70は、
図5に示した第2のZ方向駆動部93からの動力によりキャリッジ1に対してZ方向(正側および負側)へ移動可能である。また、ヘッド保持体70は液体吐出ヘッド300を取り付けるためのヘッド固定板70aを備えている。
【0055】
本実施形態では、
図1乃至
図3等で説明した液体吐出ヘッド300を、ヘッド固定板70aに6個取り付けた構成を例示しており、6個の液体吐出ヘッド300a~300fを積層状に並べて設けている。
【0056】
液体吐出ヘッド300a~300fは、それぞれ複数のノズル302を備えている。なお、ヘッド300a~300fで用いるインクの色の種類や数は、各ヘッド毎に異なる色としてもよいし、すべて同じ色としてもよい。例えば、印刷装置1000として例示した液体吐出装置が、単色を用いる塗装装置である場合は、ヘッド300a~300fで用いるインクは同色でよい。また、ヘッド300を構成するヘッドの数は6つに限るものではない。6つより多くてもよく、また、6つより少なくてもよい。
【0057】
液体吐出ヘッド300は、図示のように各ヘッドのノズル列が水平面(X-Z面)と交差し、かつ複数のノズル302の配列方向をX軸に対して傾けた状態でヘッド固定板70aに固定する。この状態でノズル302は、重力方向と交差する方向(Z方向正側)にインクを吐出する。ここで、ノズル302は液体吐出口の一例である。
【0058】
図7は、本発明に係る液体吐出装置の一例として示した印刷装置におけるインク吐出制御まわりのブロック図である。
【0059】
印刷装置1000は、コントローラ901、ヘッド駆動制御部902等を備えている。また、コントローラ901にはコンピュータ903を接続している。コンピュータ903は、RIP(Routing Information Protocol)部9031、レンダリング部9032等を備える。
【0060】
RIP部9031は、カラープロファイルやユーザの設定に応じて画像処理を行う機能を有する。レンダリング部9032は、被描画物100(
図5参照)に描画する画像データを、スキャン毎(例えばキャリッジ1が1回のX軸方向正側(または負側)への移動で描画する単位毎)の画像データに分解する機能を有する。ここで、画像データは、入力データの一例である。
【0061】
また、コンピュータ903には、入力装置9033を接続している。入力装置9033はキーボード、マウス、タッチパネル等からなり、入力装置9033は、被描画物100に描画する画像データ、座標データの設定、描画モードの選択等、ユーザからの入力を受け付ける。
【0062】
コントローラ901は、システム制御部9011、画像データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014およびキャリッジ制御部9015等を備える。システム制御部9011は、コンピュータ903から画像データや指令を受信し、印刷装置1000の全体動作を制御する。
【0063】
画像データ格納部9012は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等のメモリを備え、コンピュータ903から受信した画像データ等を格納する。メモリ制御部9013は、システム制御部9011からの指令に基づき、画像データ格納部9012への画像データ等の書き込み、画像データ格納部9012からの画像データ等の読み出しを行う。
【0064】
吐出周期信号生成部9014は、エンコーダセンサ109の出力信号と、コンピュータ903から受信した画像データの解像度を示す情報とに基づき、インクの吐出周期信号を生成する。
【0065】
ここで、エンコーダセンサ109は、例えば印刷装置1000のX軸レール101に沿って設置したリニアエンコーダ(図示せず)のスリットを光学的に検出して前述の出力信号を発生する。なお、エンコーダセンサ109は、キャリッジ1のX方向の位置を検知できる構成であればよく、リニアエンコーダ方式に限るものではない。リニアエンコーダ方式以外に、例えばX方向駆動部72の駆動モータの回転をカウントする方式に置き換えてもよい。
【0066】
キャリッジ制御部9015は、エンコーダセンサ109の出力信号に基づきキャリッジ1の位置情報を算出して、X方向駆動部72の速度を制御する。なお、本例においては、システム制御部9011にてキャリッジ1の移動速度の変化量を算出している。そしてシステム制御部9011は、この変化量に基づきキャリッジ1の速度制御を行う。
【0067】
以上のようにコントローラ901は、システム制御部9011、画像データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014およびキャリッジ制御部9015等を備えている。コントローラ901は、演算処理装置および記憶装置を有し、記憶装置内に事前に記録されているプログラムを演算処理装置が実行することで、これら各機能部を実現する。
【0068】
次に、ヘッド駆動制御部902を説明する。液体吐出ヘッド300の駆動を制御するヘッド駆動制御部902は、駆動波形データ格納部9021、駆動波形生成部9022、D/Aコンバータ9023、電圧増幅部9024および電流増幅部9025等を備える。駆動波形データ格納部9021は、液体吐出ヘッド300を駆動するための駆動波形を格納する。
【0069】
駆動波形生成部9022は、駆動波形データ格納部9021から読み出した駆動波形データを、吐出周期信号生成部9014からの吐出周期信号を契機としてD/Aコンバータ9023に出力する。D/Aコンバータ9023は、駆動波形生成部9022から受信した駆動波形データをアナログデータに変換し、そのアナログデータを電圧増幅部9024に出力する。電圧増幅部9024は、D/Aコンバータ9023から受信したアナログデータの電圧を増幅する。また、電流増幅部9025は、電圧増幅部9024から受信したアナログデータの電流を増幅する。
【0070】
以上のようにヘッド駆動制御部902は、駆動波形データ格納部9021、駆動波形生成部9022、D/Aコンバータ9023、電圧増幅部9024および電流増幅部9025等を備えている。ヘッド駆動制御部902で生成した駆動波形によって、液体吐出ヘッド300のノズル毎の駆動制御を実現する。
【0071】
なお、ここに示した制御構成は一例であり、これに限るものではない。例えば、RIP部9031とレンダリング部9032は、コンピュータ903に設けるのではなく、コントローラ901のシステム制御部9011に設ける構成としてもよい。
【0072】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。
【0073】
これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0074】
また、本発明に係る液体吐出装置は、上述の印刷装置の形態に限るものではない。例えば、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能とした多関節ロボットのロボットアームの先端に、本発明の液体吐出ヘッドを取り付けた形態でもよい。
【0075】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0076】
[第1態様]
第1態様は、液体を吐出する液体吐出口(例えばノズル302)と、前記液体吐出口に連通する流路(例えば流路312)と、前記液体吐出口を開閉する弁体(例えばニードル弁331)と、前記弁体を駆動するアクチュエータ(例えば圧電素子332)とを備え、前記弁体が前記液体吐出口を開いている間に、前記流路に供給した液体を前記液体吐出口から吐出する液体吐出ヘッド(例えば液体吐出ヘッド300)であって、前記弁体の1つに対して複数のアクチュエータ(例えば第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322)を設けることを特徴とするものである。
【0077】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記複数のアクチュエータ(例えば第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322)は、当該アクチュエータの変位方向が同じであることを特徴とするものである。
【0078】
[第3態様]
第3態様は、第1態様または第2態様において、前記複数のアクチュエータ(例えば第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322)を、前記液体の吐出方向に直列に配置することを特徴とするものである。
【0079】
第1態様乃至第3態様によれば、圧電素子に掛かる負荷を軽減し、十分な寿命を確保することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0080】
[第4態様]
第4態様は、第1態様乃至第3態様のいずれかにおいて、前記複数のアクチュエータ(例えば第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322)は、同時に駆動しないときがあることを特徴とするものである。
【0081】
[第5態様]
第5態様は、第1態様乃至第4態様のいずれかにおいて、前記複数のアクチュエータ(例えば第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322)を交互に駆動することを特徴とするものである。
【0082】
[第6態様]
第6態様は、第1態様乃至第5態様のいずれかにおいて、前記複数のアクチュエータ(例えば第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322)は、所定駆動回数おきに前記アクチュエータの切り替えを繰り返して駆動することを特徴とするものである。
【0083】
[第7態様]
第7態様は、第1態様乃至第6態様のいずれかにおいて、前記液体吐出口(例えばノズル302)の開閉に必要な前記アクチュエータ(例えば圧電素子332)の印加電圧をVxとした場合、前記複数のアクチュエータ(例えば第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322)は、それぞれVx/Na(但しNaはアクチュエータの個数)の電圧で、かつ同周期で駆動することを特徴とするものである。
【0084】
[第8態様]
第8態様は、第1態様乃至第7態様のいずれかにおいて、前記液体吐出口(例えばノズル302)の開閉に必要な前記弁体(例えばニードル弁331)の変位量をxとした場合、前記複数のアクチュエータ(例えば第1の圧電素子3321および第2の圧電素子3322)は、それぞれx/Na(但しNaはアクチュエータの個数)の変位量で、かつ同周期で駆動することを特徴とするものである。
【0085】
第4態様乃至第8態様によれば、アクチュエータ単体に掛かる負荷を低減することができる。
【0086】
[第9態様]
第9態様は、第7態様において、前記印加電圧Vxは、入力データ(例えば画像データ)に応じて可変であることを特徴とするものである。
【0087】
[第10態様]
第10態様は、第8態様において、前記変位量xは、入力データ(例えば画像データ)に応じて可変であることを特徴とするものである。
【0088】
第9態様および第10態様によれば、吐出したい液滴のサイズに柔軟に対応することができる。
【符号の説明】
【0089】
300 液体吐出ヘッド
301 ノズル板
302 ノズル(液体吐出口)
310 ハウジング
312 流路
330 液体吐出モジュール
331 ニードル弁(弁体)
332 圧電素子(アクチュエータ)
3321 第1の圧電素子
3322 第2の圧電素子
333 保持部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】