(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ノズル切替位置の設定方法、液体吐出ヘッド装置、液体吐出ユニット、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/155 20060101AFI20241212BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B41J2/155
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2021044252
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-185627(JP,A)
【文献】特開2014-188979(JP,A)
【文献】特表2019-527637(JP,A)
【文献】特開2017-189884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置された液体吐出ヘッド装置で、前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置の設定方法であって、
前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取る読取工程と、
前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、前記ノズル切替位置を設定する設定工程と
、
少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に延びる線画像を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った線画像の傾きから、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きを特定する傾き特定工程とを有
し、
前記設定工程では、前記傾き特定工程で特定した傾きにも基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするノズル切替位置の設定方法。
【請求項2】
複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置された液体吐出ヘッド装置で、前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置の設定方法であって、
前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取る読取工程と、
前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、前記ノズル切替位置を設定する設定工程と、
少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に2つ以上の独立画像を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った2つ以上の独立画像におけるヘッド長手方向の位置ずれ量から、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きを特定する傾き特定工程とを有し、
前記設定工程では、前記傾き特定工程で特定した傾きにも基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするノズル切替位置の設定方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のノズル切替位置の設定方法において、
前記2つの液体吐出ヘッドは、ノズルピッチが第一ピッチとなるように配列された2以上のノズルからなる第一ノズル群と、ノズルピッチが該第一ピッチとは異なる第二ピッチとなるように配列された2以上のノズルからなる第二ノズル群とを、ヘッド長手方向の両端部にそれぞれ備え、前記一方の液体吐出ヘッドの前記第一ノズル群のヘッド長手方向範囲が前記他方の液体吐出ヘッドの前記第二ノズル群のヘッド長手方向範囲と重複するように配置されていることを特徴とするノズル切替位置の設定方法。
【請求項4】
請求
項3に記載のノズル切替位置の設定方法において、
前記設定工程では、前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうちのノズルピッチが狭い一方のノズル群の中から、ノズルピッチの広い他方のノズル群における互いに隣接する2つのノズルの間にヘッド長手方向の吐出位置が位置するノズルを特定し、特定したノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするノズル切替位置の設定方法。
【請求項5】
請求項1乃
至4のいずれか1項に記載のノズル切替位置の設定方法において、
前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンのうちの少なくとも一方は、対応する液体吐出ヘッドに配列された一部のノズルだけから液体を吐出して作成したパターンであり、
前記設定工程では、前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる前記一部のノズルのヘッド長手方向の吐出位置と、該一部のノズルのヘッド長手方向の吐出位置から推定される他のノズルのヘッド長手方向の吐出位置とに基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするノズル切替位置の設定方法。
【請求項6】
請求項1乃
至5のいずれか1項に記載のノズル切替位置の設定方法において、
前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンのうちの少なくとも一方は、個々のノズルから吐出される液体によって孤立ドット画像が形成された孤立ドットパターンであることを特徴とするノズル切替位置の設定方法。
【請求項7】
請求項1乃
至5のいずれか1項に記載のノズル切替位置の設定方法において、
前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンのうちの少なくとも一方は、個々のノズルからそれぞれ複数回吐出される液体によってノズルごとにヘッド長手方向に対して直交する方向に延びるライン状画像が形成されたラインパターンであることを特徴とするノズル切替位置の設定方法。
【請求項8】
請求
項7に記載のノズル切替位置の設定方法において、
前記設定工程では、前記読取工程で読み取った前記ラインパターンにおける各ライン状画像の幅方向エッジを検出した結果から、対応するノズルのヘッド長手方向の吐出位置を決定することを特徴とするノズル切替位置の設定方法。
【請求項9】
請求項1乃
至8のいずれか1項に記載のノズル切替位置の設定方法において、
前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンのうちの少なくとも一方は、1つのノズルから液体を複数回吐出して作成した吐出位置パターンを含むことを特徴とするノズル切替位置の設定方法
。
【請求項10】
複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置され、
前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置が設定された液体吐出ヘッド装置であって、
前記ノズル切替位置は、前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取って得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置
と、少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に延びる線画像を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った線画像の傾きから特定される前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きとに基づいて、設定されていることを特徴とする液体吐出ヘッド装置。
【請求項11】
複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置され、
前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置が設定された液体吐出ヘッド装置であって、
前記ノズル切替位置は、前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取って得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置と、少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に2つ以上の独立画像を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った2つ以上の独立画像におけるヘッド長手方向の位置ずれ量から特定される前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きとに基づいて、設定されていることを特徴とする液体吐出ヘッド装置。
【請求項12】
請求項
10又は11に記載の液体吐出ヘッド装置を含むことを特徴とする液体吐出ユニット
。
【請求項13】
複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置され、
前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置が設定される液体吐出ヘッド装置の前記ノズル切替位置を設定するために、コンピュータに実行されるプログラムであって、
前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取る読取工程と、
前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、前記ノズル切替位置を設定する設定工程と
、
少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に延びる線画像を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った線画像の傾きから、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きを特定する傾き特定工程とを、前記コンピュータに実行させる
ものであり、
前記設定工程では、前記傾き特定工程で特定した傾きにも基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするプログラム。
【請求項14】
複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置され、
前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置が設定される液体吐出ヘッド装置の前記ノズル切替位置を設定するために、コンピュータに実行されるプログラムであって、
前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取る読取工程と、
前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、前記ノズル切替位置を設定する設定工程と、
少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に2つ以上の独立画像を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った2つ以上の独立画像におけるヘッド長手方向の位置ずれ量から、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きを特定する傾き特定工程とを、前記コンピュータに実行させるものであり、
前記設定工程では、前記傾き特定工程で特定した傾きにも基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル切替位置の設定方法、液体吐出ヘッド装置、液体吐出ユニット、及び、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列と一部重複させるように配置された液体吐出ヘッド装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一方の記録ヘッド(液体吐出ヘッド)のノズル列のノズルピッチがP1で配列され、他方の記録ヘッドのノズル列のノズルピッチがP2(<P1)で配列されたライン記録ヘッド(液体吐出ヘッド装置)が開示されている。この特許文献1には、このライン記録ヘッドを組み立てた後の記録検査工程において、一方の記録ヘッドと他方の記録ヘッドとの重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを一方の記録ヘッドのノズルから他方の記録ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置を設定する。具体的には、ノズル切替位置を1つずつずらして記録材(記録材)上にドット記録を行い、一方の記録ヘッドと他方の記録ヘッドとの切り替え地点が作業者の目視により区別できない程度になっているときのノズル切替位置に設定する。これによれば、記録ヘッド間で高精度な位置合わせを行わなくても、記録ヘッド間の記録幅の切り替わり箇所でのピッチずれによる記録ムラが抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来は、ノズル切替位置を作業者の目視により設定していたため、作業者の作業負担が大きく、ノズル切替位置の設定作業が困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置された液体吐出ヘッド装置で、前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置の設定方法であって、前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取る読取工程と、前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、前記ノズル切替位置を設定する設定工程と、少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に延びる線画像を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った線画像の傾きから、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きを特定する傾き特定工程とを有し、前記設定工程では、前記傾き特定工程で特定した傾きにも基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作業者の作業負担を軽減でき、ノズル切替位置の設定作業が容易になるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態におけるヘッドユニットを記録材の法線方向から見た平面図。
【
図2】同ヘッドユニットの記録部毎に設けられている記録ヘッドのヘッド配置を示す説明図。
【
図3】(a)及び(b)は、ヘッド長手方向に沿って隣り合って並べされる2つの記録ヘッドのノズルピッチの関係を示す説明図。
【
図4】同ヘッドユニットを搭載するインクジェット記録装置の制御系のハードウェア構成を示すブロック図。
【
図5】同ヘッドユニットのヘッド駆動部のハードウェア構成を示すブロック図。
【
図6】(a)~(f)は、2つの記録ヘッドのオーバーラップ領域においてノズルの切替位置を一つずつずらして画像記録(ドットの打ち出し)を行ったテストチャートの例を示す説明図。
【
図7】(a)は、2つの記録ヘッドの各ノズル配置を示す説明図。(b)は、記録材上に形成されるテストチャート(吐出位置パターン)の一例を示す図。
【
図8】(a)は、2つの記録ヘッドの各ノズル配置を示す説明図。(b)は、記録材上に形成されるテストチャート(吐出位置パターン)の他の例を示す図。
【
図9】(a)は、記録材上に形成された孤立ドットからなるテストチャートを示す図。(b)は、同テストチャートの孤立ドットを読み取った読取画像を示す図。
【
図10】読み取ったテストチャートのドット部分についてヘッド長手方向の画像濃度(画素値)をプロットしたグラフ。
【
図11】(a)は、記録材上に形成されたラインパターンからなるテストチャートを示す図。(b)は、同テストチャートのラインパターンを読み取った読取画像を示す図。
【
図12】読取画像の回転補正を行うために用いる回転補正用チャートの一例を示す図。
【
図13】読取画像の回転補正を行うために用いる回転補正用チャートの他の例を示す図。
【
図14】液体を吐出する装置の他の一例についての要部平面説明図。
【
図16】液体吐出ユニットの他の一例についての要部平面説明図。
【
図17】液体吐出ユニットの更に他の一例についての正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、液体を吐出する装置である画像形成装置としてのインクジェット記録装置の液体吐出ヘッド装置を備えるヘッドユニットに適用した一実施形態について説明する。
【0009】
まず、本実施形態におけるヘッドユニットについて説明する。
図1は、ヘッドユニット2を記録材P0の法線方向から見た平面図である。
記録材P0は、例えば用紙であり、ロール紙(連続用紙)又はカット紙等でもよい。また、用紙以外の様々な媒体でもよい。記録材P0は、
図1に矢印で示す搬送方向に沿って搬送される。ヘッドユニット2は、記録材P0の記録面に、所定の距離を保って対向するように支持されている。
【0010】
ヘッドユニット2は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各インク(液体)に対応して設けられた色毎の液体吐出ヘッド装置としてのK記録部2K、C記録部2C、M記録部2M及びY記録部2Yを備えている。すなわち、ヘッドユニット2は、4つの液体吐出ヘッド装置を組み合わせて構成されている。
【0011】
各色の記録部2K,2C,2M,2Yには、
図1に示すように、ヘッド長手方向である記録材幅方向(搬送方向に対して直交する方向)に沿って、液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド3および記録ヘッド4が千鳥状に並べて配置されている。なお、本実施形態では、説明の都合上、
図1中左側から数えて奇数番目の記録ヘッドを記録ヘッド3とし、偶数番目の記録ヘッドを記録ヘッド4として説明するが、記録ヘッド3と記録ヘッド4の構成や機能に違いはない。
【0012】
ヘッドユニット2が、搬送される記録材の位置に同期して、各色の記録部2K,2C,2M,2Yのノズルからインク滴の吐出を行うことで、記録材P0上にカラー画像が形成される。なお、ヘッドユニット2に搭載される記録部の数、記録部に配置される記録ヘッドの数、記録部から吐出するインクの色などは、任意に設定することができる。したがって、例えば、ヘッドユニット2は、ブラック単体の記録部2Kのみを備え、ブラック単色で記録を行うヘッドユニットであってもよい。
【0013】
図2は、ヘッドユニット2の記録部毎に設けられている記録ヘッド3と記録ヘッド4とのヘッド配置を示す説明図である。
記録ヘッド3および記録ヘッド4には、複数のノズル5がヘッド長手方向に沿って配列されたノズル列を有する。本実施形態では、ノズル列が1列である例で説明するが、2以上のノズル列が記録材搬送方向に並べてられた構成であってもよい。また、ノズル列は、そのノズル列方向がヘッド長手方向に対して傾斜するように配置されてもよい。
【0014】
また、本実施形態の1つの記録部上には、
図2に示すように、ヘッド長手方向に沿って隣り合って並べされる2つの記録ヘッド3,4のうちの一方の記録ヘッド3が他方の記録ヘッド4と部分的に重複(オーバーラップ)するように配置されている。このように記録ヘッド3,4を配置することで、記録部全体におけるヘッド長手方向の記録範囲(ノズル5から吐出されるインクによって画像を記録できる範囲)を広げることができる。その結果、記録材P0の幅方向にわたる記録範囲を備えた記録部を得て、ライン型のヘッドユニット2を実現できるので、ヘッドユニット2を走査することなく記録材P0に対してワンパスで画像を形成することができる。
【0015】
図3(a)及び(b)は、ヘッド長手方向に沿って隣り合って並べされる2つの記録ヘッド3,4のノズルピッチの関係を示す説明図である。
図3(a)に示す記録ヘッド3,4に設けられるノズル列には、ノズル5が通常ピッチP1で配列された第一ノズル群としての通常領域と、ノズル5が通常ピッチP1よりも狭いピッチP2で配列された第二ノズル群としての狭領域とが存在する。本例においては、ノズル列の大部分が通常領域であるが、ノズル列の一端側のみに狭領域が設けられている。なお、狭領域に代えて、ノズル5が通常ピッチP1よりも広いピッチで配列された広領域を採用してもよい。本例では、記録ヘッド3と記録ヘッド4との重複範囲(オーバーラップ領域)において、記録ヘッド3の通常領域と記録ヘッド4の狭領域とが重複するように配置される。
【0016】
図3(b)に示す記録ヘッド3,4に設けられるノズル列には、通常ピッチP3の通常領域と、通常ピッチP3よりも広いピッチP1の第一ノズル群としての広領域と、通常ピッチP3よりも狭いピッチP2の第二ノズル群としての狭領域とが存在する。本例においては、ノズル列の大部分が通常領域であるが、ノズル列の一端側に狭領域が設けられ、ノズル列の他端側に広領域が設けられている。本例では、記録ヘッド3と記録ヘッド4との重複範囲(オーバーラップ領域)において、記録ヘッド3の広領域と記録ヘッド4の狭領域とが重複するように配置される。
【0017】
つまり、本実施形態では、記録ヘッド3と記録ヘッド4との重複範囲(オーバーラップ領域)において、記録ヘッド3のノズルピッチP2と記録ヘッド4のノズルピッチP1とが異なるように構成されていればよい。このような構成とすることで、記録ヘッド3と記録ヘッド4との高精度に位置決めしなくても、オーバーラップ領域において、記録ヘッド3と記録ヘッド4との間でヘッド長手方向位置のずれが最小となるノズルが決まる。よって、このノズルで各記録ヘッド3,4の使用するノズル(有効なノズル)が切り替わるように各記録ヘッドを動作させれば、記録ヘッド3,4間の記録幅の切り替わり箇所でのピッチずれによる記録ムラを抑制することができる。
【0018】
なお、記録ヘッド3と記録ヘッド4との間でヘッド長手方向位置のずれが最小となるノズル(ノズル切替位置)は、例えば、ヘッドユニット2を組み上げた後に実際にインクを吐出してドット間距離(ドットピッチ)が区別できない程度の位置であればよい。したがって、記録ヘッド3と記録ヘッド4との間でヘッド長手方向位置のずれが最小から外れていてもかまわない。なお、設定したノズルの切替位置は、後述する記憶部620に記憶させておく。本実施形態におけるノズル切替位置の設定方法についての詳細は後述する。
【0019】
本実施形態において、
図3(a)の例では、通常ピッチP1も、狭いピッチP2も、記録ヘッド3と記録ヘッド4との間では同じピッチとなるように設定されている。そのため、記録ヘッド3及び記録ヘッド4としては、お互いに同一構成のものを用いることができる。
図3(b)の例でも同様である。したがって、本実施形態の記録部は、1種類の記録ヘッドを用意するだけで製造することができ、記録ヘッド3及び記録ヘッド4がそれぞれ異なる構成である場合のものと比べて、製造コストを少なく抑えることができる。
【0020】
図4は、上述したヘッドユニット2を搭載するインクジェット記録装置1の制御系のハードウェア構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、上述したヘッドユニット2のほか、制御部600、搬送駆動部710、操作表示部720及び入出力インタフェース730が、バスライン740を介して相互に接続されて構成されている。
【0021】
ヘッドユニット2には、各色の記録部2K,2C,2M,2Yに配置されている記録ヘッド3,4を駆動するヘッド駆動部20が備わっている。ヘッド駆動部20は、制御部600から入力される制御信号に応じて、各記録部2K,2C,2M,2Yの各記録ヘッド3,4におけるアクチュエータとしての電気機械変換素子である各圧電素子を変形動作させる駆動波形を生成する。この駆動波形が各記録部2K,2C,2M,2Yの各記録ヘッド3,4の各圧電素子に入力されることで、ノズル5に連通する圧力室内の液体が加圧されて吐出エネルギーが印加され、対応するノズル5からインクが吐出される。
【0022】
制御部600は、CPU(Central Processing Unit)610、記憶部620、RAM(Random Access Memory)630及びROM(Read Only Memory)640を有する。CPU610は、ROM640に記憶された各種制御用のプログラム及び設定データを読み出してRAM630に記憶させて実行し、各種演算処理を行う。また、CPU610は、インクジェット記録装置1の全体動作を制御する。
【0023】
記憶部620には、入出力インタフェース730を介して入力されるプリントジョブ(画像記録命令)、プリントする画像データ(画像情報)及び後述するノズル切替位置検出用パターン(吐出位置パターン)に基づいて設定されるノズル切替位置が記憶される。
【0024】
搬送駆動部710は、制御部600から供給される制御信号に基づいて、搬送用モータに駆動信号を供給し、所定の速度及びタイミングで記録材P0を搬送する。
操作表示部720は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示装置と、操作キー及び表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネル等の入力装置とを備える。操作表示部720は、表示装置に各種情報を表示させ、また、入力装置に対するユーザの入力操作に対応する操作信号を制御部600に供給する。
入出力インタフェース730は、外部装置800と制御部600との間のデータの送受信を媒介する。
バスライン740は、制御部600と他の構成部との間で、信号の送受信を行うための経路である。
【0025】
図5は、ヘッドユニット2のヘッド駆動部20のハードウェア構成を示すブロック図である。
なお、
図5では、図の簡略化のため、1つの記録ヘッド3だけが示され、他の記録ヘッドは省略されている。
【0026】
ヘッド駆動部20は、記録ヘッド3上のノズル5-1~5-N(「N」は当該記録ヘッド3上のノズル数である)ごとに対応した駆動波形補正部21-1~21-Nと、ヘッド制御部22と、基本駆動波形生成部23と、駆動波形補正情報保持部24とを備えている。
【0027】
ヘッド制御部22は、制御部600から入力される画像データを、各記録部2K,2C,2M,2Yの各記録ヘッド3および記録ヘッド4の各ノズル5-1~5-Nの制御信号に変換する。
基本駆動波形生成部23は、ヘッド制御部22から入力される制御信号に基づいて、画像パターン、搬送速度、及び、温湿度等の印字環境に応じて、リファレンスとなる吐出動作を可能とする基本駆動波形を生成する。
駆動波形補正情報保持部24は、補正が必要なノズルのノズル番号を示す情報、及び、補正量を示す情報を記憶する。
【0028】
駆動波形補正部21-1~21-Nは、基本駆動波形生成部23から供給される駆動電圧の基本駆動波形を、駆動波形補正情報保持部24から読み出した補正情報に基づいて補正し、ノズル5-1~5-Nにそれぞれ対応する各圧電素子に供給する。これにより、ノズル5-1~5-Nをそれぞれ個別に異なる吐出特性を与えることができ、それぞれのノズル5-1~5-Nから適切なインク吐出が可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、ノズル毎に異なる吐出特性を与えているが、それに限らない。すなわち、ノズル列単位で吐出特性を与えてもよいし、ピッチの異なる領域単位で吐出特性を与えるでも良い。どの単位で吐出特性を与えるかは、装置のメモリや印加電圧の負荷などの制約により決めても良い。
【0030】
図6は、記録材P0上に印刷された従来のテストチャートの一例を示す説明図である。
図6(a)~(f)に示す各テストチャートは、
図3(a)に示す記録ヘッド3および記録ヘッド4のオーバーラップ領域において、ノズル切替位置を一つずつずらして画像記録(ドットの打ち出し)を行ったものである。なお、
図6中白抜き丸は、記録ヘッド3のノズルから吐出したインクによるドットを示し、
図6中黒塗り丸は、記録ヘッド4のノズルから吐出したインクによるドットを示す。
【0031】
ノズル切替位置が
図6(a)に示す例の場合、記録ヘッド3における最端(
図6中右端)のドットと記録ヘッド4における最端(
図6中左端)のドットとの距離が近すぎる。そのため、そのドット間距離Xaは、通常領域に対応するドット間距離X1や狭領域に対応するドット間距離X2から大きく外れている。この場合、このノズル切替位置におけるドット密度が局所的に高くなるため、当該ノズル切替位置に対応するヘッド長手方向位置の画像濃度が局所的に高まってしまい、ヘッド長手方向における画像濃度ムラを引き起こす。
【0032】
また、ノズル切替位置が
図6(f)に示す例の場合、記録ヘッド3における最端(
図6中右端)のドットと記録ヘッド4における最端(
図6中左端)のドットとの距離が遠すぎる。そのため、そのドット間距離Xfは、通常領域に対応するドット間距離X1や狭領域に対応するドット間距離X2から大きく外れている。この場合、このノズル切替位置におけるドット密度が局所的に低くなるため、当該ノズル切替位置に対応するヘッド長手方向位置の画像濃度が局所的に低くなってしまい、やはり、ヘッド長手方向における画像濃度ムラを引き起こす。
【0033】
図6(a)~(f)に示す例の中では、ノズル切替位置が
図6(d)に示す例が、通常領域に対応するドット間距離X1や狭領域に対応するドット間距離X2とのずれを最小にすることができる。この場合、このノズル切替位置におけるドット密度は、通常領域や狭領域に対応する箇所のドット密度と同程度のものとなり、ヘッド長手方向における画像濃度ムラが抑制される。
【0034】
ずれが最小になるノズル切替位置は、従来、テストチャートを作業者が目視で確認して、最も画像濃度ムラが少ないと判断される位置に決定していた。しかしながら、この方法では、作業者の作業負担が大きく、ノズル切替位置の設定作業が困難である。
【0035】
そこで、本実施形態においては、作成したテストチャート(吐出位置パターン)をスキャナやカメラ(撮像装置)などの読取装置で読み取る。このテストチャートは、一方の記録ヘッド3のノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、他方の記録ヘッド4のノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを含むものである。そして、読み取ったテストチャートの読取情報を画像処理して各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置を取得し、ずれが最小になるノズル切替位置を設定する。
【0036】
本実施形態によれば、作業者の目視によるノズル切替位置の設定が不要となるため、作業者の作業負担を軽減でき、ノズル切替位置の設定作業が容易になる。
【0037】
図7(a)及び(b)は、記録材P0上に形成されるテストチャート(吐出位置パターン)の一例を示す説明図である。
ここでは、記録ヘッド3及び記録ヘッド4の各ノズル配置が、
図7(a)に示すように、ヘッド長手方向(X方向)に沿って配列されるノズル列を4列備える例である場合で説明する。本例も、記録ヘッド3の端部と記録ヘッド4の端部とが重複するように配置され、オーバーラップ領域内に複数のノズルが位置するように各記録ヘッド3,4が配置されている。
【0038】
図7(b)は、
図7(a)に示す各記録ヘッド3,4のノズルからそれぞれ複数の液滴を吐出し、各液滴からなるドットが互いに重ならないように記録材搬送方向へ記録材を搬送しながら形成したドットパターンからなるテストパターンを示す図である。
図7(b)に示すテストパターンは、各記録ヘッド3,4の各ノズルからそれぞれ複数回吐出される液滴で形成されるドットを含むものであるが、各ノズルからそれぞれ1回以上吐出される液滴で形成されるドットを含むものであればよい。
【0039】
このように作成されるテストパターンは、記録材上に形成され、当該インクジェット記録装置内に搭載されている読取装置や、当該インクジェット記録装置の外部に設置される読取装置(外部装置800)にて、読み取られる。ここでは、当該インクジェット記録装置内に搭載されている読取装置で読み取る場合で説明する。
【0040】
読み取ったテストチャートの読取情報は、読取装置から制御部600へ送られ、制御部600において画像処理される。これにより、テストチャートの各ドット位置(ドットに対応する各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置)を計測する。このとき、
図7(b)に示すように、1つのノズルに対して複数のドットを作成する場合には、当該複数のドットの平均をとるなどして、当該ノズルのドット位置(当該ノズルの吐出位置)の計測精度を高めることができる。
【0041】
次に、制御部600は、計測した各ノズルのドット位置を参照して、記録ヘッド3と記録ヘッド4との間のノズル切替位置を設定し、記録ヘッド3及び記録ヘッド4の有効ノズルを決定する。ノズル切替位置の設定条件としては、例えば、記録ヘッド3によるドットと記録ヘッド4によるドットとの間のドット間距離(ヘッド長手方向=X方向の距離)XがX2<X<X1となる場合(
図6参照)を選ぶという条件を採用できる。ただし、これに限らず、例えば、ドット間距離Xが通常領域のドット間距離X1に最も近い場合を選ぶという条件など、他の条件を採用してもよい。
【0042】
本例では、例えば、オーバーラップ領域内において狭いピッチP2の記録ヘッド3のノズルの中から、広いピッチP1の記録ヘッド4における互いに隣接する2つのノズルn,n+1の間にヘッド長手方向の吐出位置が位置するノズルを特定する。そして、特定した記録ヘッド3のノズルの吐出位置をノズル切替位置のノズルとしてノズル切替位置を設定する。なお、「n」は、ノズル列のノズル数Nよりも小さい数である。
【0043】
具体的には、広いピッチP1の記録ヘッド4における互いに隣接する2つのノズルn,n+1を順次選択し、順次選択される2つのノズルn,n+1の間に吐出位置が位置している狭いピッチP2の記録ヘッド3上のノズルを順次選択していく。そして、記録ヘッド4における2つのノズルn,n+1のいずれかと記録ヘッド3上のノズルとのずれが最小となるノズルの組み合わせを特定し、特定したノズルをノズル切替位置として設定する。
【0044】
図8(a)及び(b)は、記録材P0上に形成されるテストチャート(吐出位置パターン)の他の例を示す説明図である。
ここでも、記録ヘッド3及び記録ヘッド4の各ノズル配置が、
図8(a)に示すように、ヘッド長手方向(X方向)に沿って配列されるノズル列を4列備える例である場合で説明する。本例も、記録ヘッド3の端部と記録ヘッド4の端部とが重複するように配置され、オーバーラップ領域内に複数のノズルが位置するように各記録ヘッド3,4が配置されている。
【0045】
図8(b)は、本例におけるドットパターンからなるテストパターンを示す図である。
図8(b)に示すテストパターンは、各記録ヘッド3,4上のノズルの中から任意に一部のノズル(本例では各記録ヘッド3,4について1つずつのノズル)を選択し、選択したノズルからそれぞれ複数回吐出される液滴で形成されるドットを含むものである。なお、選択されたノズルからそれぞれ1回以上吐出される液滴で形成されるドットを含むものであればよい。
【0046】
このとき、各記録ヘッド3,4から選択されるノズルは、任意に選択でき、どのノズル列のノズルでもよいし、どのヘッド長手方向位置のノズルでもよいし、オーバーラップ領域内のノズルでもオーバーラップ領域外のノズルでもよい。また、その選択数も、全ノズルのうちの一部のノズルであれば、1つでもよいし2以上でもよい。
図8(b)に示す例では、各記録ヘッド3,4の隅に位置するノズル5-3,5-4を1つずつ選択している。このように作成されるテストパターンは、記録材上に形成され、当該インクジェット記録装置内に搭載されている読取装置にて読み取られる。読み取ったテストチャートの読取情報は、読取装置から制御部600へ送られ、制御部600において画像処理される。
【0047】
ここで、
図8(b)に示す例は、各記録ヘッド3,4から1つずつ選択された2つのノズルだけから液滴を吐出したドットパターンからなるテストパターンであるため、オーバーラップ領域内におけるすべてのノズルの吐出位置を直接把握することはできない。しかしながら、各記録ヘッド3,4上におけるノズルの相対位置精度(各記録ヘッド3,4上のノズルピッチP1,P2,P3の精度)は、一般に非常に高いものである。そのため、各記録ヘッド3,4上の少なくとも1つのノズルの位置が決まれば、他のすべてのノズルの位置を高い精度で推定することができる。
【0048】
そこで、本例では、まず、
図8(b)に示すテストチャートの2つのドット位置(ドットに対応する各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置)をそれぞれ計測する。そして、予め決められたノズルピッチの情報を用いて、他のノズルのドット位置を推定する。これにより、
図7(b)の例のようにオーバーラップ領域内のすべてのノズルについてのドットパターンを形成しなくても、オーバーラップ領域内のすべてのノズルについてのドット位置を特定することができる。したがって、本例によれば、テストチャートを形成する際の液体消費を抑制しつつ、ノズル切替位置を設定することができる。
【0049】
次に、本実施形態における画像処理によるドット位置の計測方法について説明する。
図9(a)及び(b)は、画像処理によるドット位置の計測方法の一例を示す図である。
上述した記録材上のテストチャートには、
図9(a)に示すような孤立ドットが形成されるが、これを読取装置で読み取った読取画像は、
図9(b)に示すようなものとなる。各ノズルの吐出位置(ドットのヘッド長手方向位置)を特定する場合、例えば、ドットの中心位置を求めてもよい。この場合、例えば、ヘッド長手方向における画像濃度のピーク位置(ピークを示す画素)を選定することで、ノズルの吐出位置を特定することができる。
【0050】
図10は、読み取ったテストチャートのドット部分についてヘッド長手方向の画像濃度(画素値)をプロットしたグラフである。
図10の例では、最も画像濃度の高い画素O’をドット位置(ノズルの吐出位置)として特定することができる。また、
図10の例において、ドット部分全体における画素値の重心位置を求め、その重心位置をドット位置(ノズルの吐出位置)として特定することもできる。これらの特定方法は、特に、読取装置の読取解像度が高い場合に有効である。
【0051】
また、
図10の例において、画素値に対してスプライン関数を求め、その曲線を微分した値がゼロになる地点Oを求め、その地点をドット位置(ノズルの吐出位置)として特定することもできる。この特定方法は、読取装置の読取解像度を超える高い分解能が求められる場合に有効である。
【0052】
上述したテストパターンは、個々のノズルから吐出される液体によって孤立ドット画像が形成された孤立ドットパターンである例であるが、他のパターンであってもよい。例えば、
図11(a)に示すように、個々のノズルからそれぞれ複数回吐出される液体によってノズルごとにヘッド長手方向に対して直交する方向(記録材搬送方向)に延びるライン状画像が形成されたラインパターンであってもよい。この場合も、
図11(b)に示すような読取画像が得られるので、上述した各種の特定方法により、各ノズルについてのドット位置(ノズルの吐出位置)を特定することができる。
【0053】
また、
図11(b)の例であれば、読み取ったライン状画像の幅方向エッジを検出し、その結果から特定されるエッジ位置を、対応するノズルのヘッド長手方向の吐出位置として特定することもできる。この場合、例えば、所定の閾値を超える画素値変化を示す位置を、当該ライン状画像のヘッド長手方向のエッジ位置として決定することができる。このような場合、孤立ドットよりも高い精度で、ノズルの吐出位置を特定することが可能である。
【0054】
次に、読取画像の回転補正について説明する。
読取装置の設置誤差や記録材の搬送誤差などによって、例えば、テストチャートの読取画像上の左右方向と各ノズル列に対応するドット列の方向(ヘッド長手方向)とがずれる場合がある。この場合、読取画像上の左右方向におけるドット位置の計測結果が、ヘッド長手方向のノズルの吐出位置の計測結果からズレてしまい、ノズル切替位置の設定を適切に行うことができない可能性がある。したがって、ヘッド長手方向のノズルの吐出位置をより高精度に特定する場合には、テストチャートの読取画像上の左右方向と各ノズル列に対応するドット列の方向(ヘッド長手方向)とのずれを修正するように、読取画像の回転補正を行うのが好ましい。
【0055】
図12は、読取画像の回転補正を行うために用いる回転補正用チャートの一例を示す図である。
図12に示す回転補正用チャートは、各記録ヘッド3,4の少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向(記録材搬送方向)に延びる線画像L1,L2を作成したものである。この回転補正用チャートは、
図7(b)に示したテストチャートと同じ記録材上に形成しているが、当該テストチャートとは別の記録材上に形成してもよい。また、回転補正用チャートの線画像の本数に制限はなく、一本でも複数本でもよい。
【0056】
このように形成される線画像L1,L2は、記録材搬送方向に平行に延びるように形成される。そのため、本来では、読取装置によって読み取られたときの読取画像上では、その線画像L1,L2の延び方向は、読取画像の上下方向に一致する。しかしながら、読取装置の設置誤差や記録材の搬送誤差などが生じていると、読取画像上における線画像L1,L2の延び方向が、読取画像の上下方向に一致せず、読取画像の上下方向に対して傾く。この場合、読取画像上におけるテストチャートも、読取画像の上下方向(あるいは左右方向)に対して傾いたものとなる。
【0057】
図12の例では、作成した線画像L1,L2と読取画像の上下方向との傾き量(傾き角度)を計測して、読取画像の回転量を求める。そして、読み取ったテストチャートの読取画像からドット位置を計測する際、線画像L1,L2から求めた読取画像の回転量を用いて回転補正を行い、回転補正後におけるテストチャートの読取画像からドット位置を計測する。
【0058】
図13は、読取画像の回転補正を行うために用いる回転補正用チャートの他の例を示す図である。
図13に示す回転補正用チャートは、各記録ヘッド3,4の少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向(記録材搬送方向)に2つ以上の独立画像D1~D4を作成したものである。この回転補正用チャートも、
図7(b)に示したテストチャートと同じ記録材上に形成しているが、当該テストチャートとは別の記録材上に形成してもよい。また、回転補正用チャートの独立画像の個数に制限はない。
【0059】
このように形成される独立画像D1,D2及び独立画像D3,D4は、それぞれ、ヘッド長手方向の同じ位置に形成される。そのため、本来では、読取装置によって読み取られたときの読取画像上では、これらの独立画像D1,D2及び独立画像D3,D4の並び方向は、読取画像の上下方向に一致する。しかしながら、読取装置の設置誤差や記録材の搬送誤差などが生じていると、読取画像上における独立画像D1,D2及び独立画像D3,D4の並び方向が、読取画像の上下方向に一致せず、読取画像の上下方向に対して傾く。この場合、読取画像上におけるテストチャートも、読取画像の上下方向(あるいは左右方向)に対して傾いたものとなる。
【0060】
図13の例でも、作成した独立画像D1,D2及び独立画像D3,D4の並び方向と読取画像の上下方向との傾き量(傾き角度)を計測することで、読取画像の回転量を求めることができる。そして、読み取ったテストチャートの読取画像からドット位置を計測する際、独立画像D1~D4から求めた読取画像の回転量を用いて回転補正を行い、回転補正後におけるテストチャートの読取画像からドット位置を計測する。
【0061】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の一例について、
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は同装置の要部平面説明図、
図15は同装置の要部側面説明図である。
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0062】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド装置404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド装置404は、上述した実施形態のヘッドユニット2と同様、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する記録部を備える。また、液体吐出ヘッド装置404における各色の記録部は、上述した実施形態の記録部2K,2C,2M,2Yと同様、複数のノズルからなるノズル列を備えた記録ヘッド3,4が千鳥状に配置されている。また、各色の記録部は、そのノズル列方向は主走査方向と直交する副走査方向(ヘッド長手方向)に沿っており、吐出方向を下方に向けて装着されている。
【0063】
液体吐出ヘッド装置404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド装置404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0064】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0065】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0066】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド装置404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0067】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0068】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド装置404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0069】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド装置404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0070】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0071】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0072】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド装置404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0073】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0074】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図16を参照して説明する。
図16は同ユニットの要部平面説明図である。
【0075】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A,491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド装置404で構成されている。
【0076】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0077】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図17を参照して説明する。
図17は同ユニットの正面説明図である。
【0078】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド装置404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0079】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド装置404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0080】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッド装置又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0081】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0082】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0083】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0084】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録材、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0085】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0086】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0087】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0088】
また、「液体を吐出する装置」には、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルから噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0089】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0090】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0091】
例えば、液体吐出ユニットとして、
図15で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0092】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0093】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、
図16で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0094】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0095】
また、液体吐出ユニットとして、
図17で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0096】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0097】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用するアクチュエータが限定されるものではない。例えば、前記実施形態で説明したような圧電素子(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0098】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0099】
最後に、上述の実施形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。このような実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0100】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、複数のノズル5がそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッド(例えば記録ヘッド3,4)のうちの一方の液体吐出ヘッド(例えば記録ヘッド3)におけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッド(例えば記録ヘッド4)におけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置された液体吐出ヘッド装置(例えば記録部2C,2K,2M,2Y)で、前記一部重複させる重複領域(例えばオーバーラップ領域)内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置の設定方法であって、前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取る読取工程と、前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置(例えばドット位置)に基づいて、前記ノズル切替位置を設定する設定工程とを有することを特徴とするものである。
本態様においては、一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して第一吐出位置パターンが作成されるとともに、他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して第二吐出位置パターンが作成される。そして、本態様では、これらの吐出位置パターンを読取装置で読み取り、読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、ノズル切替位置を設定する。これにより、作業者の目視によるノズル切替位置の設定が不要となるため、作業者の作業負担を軽減でき、ノズル切替位置の設定作業が容易になる。
【0101】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記2つの液体吐出ヘッドは、ノズルピッチが第一ピッチ(例えば狭いピッチP2)となるように配列された2以上のノズルからなる第一ノズル群と、ノズルピッチが該第一ピッチとは異なる第二ピッチ(例えば通常のピッチP1又は広いピッチP1)となるように配列された2以上のノズルからなる第二ノズル群とを、ヘッド長手方向の両端部にそれぞれ備え、前記一方の液体吐出ヘッドの前記第一ノズル群のヘッド長手方向範囲が前記他方の液体吐出ヘッドの前記第二ノズル群のヘッド長手方向範囲と重複するように配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、液体吐出ヘッド間でのヘッド長手方向位置のずれが最小となるノズルを用意に得ることができる。
【0102】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記設定工程では、前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置(例えばドット位置)に基づいて、前記第一ノズル群及び前記第二ノズル群のうちのノズルピッチP2が狭い一方のノズル群の中から、ノズルピッチP1の広い他方のノズル群における互いに隣接する2つのノズルの間にヘッド長手方向の吐出位置が位置するノズルを特定し、特定したノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするノズル切替位置のものである。
これによれば、液体吐出ヘッド間でのヘッド長手方向位置のずれが最小となるノズルを特定することができ、ノズル切替位置の設定が容易になる。
【0103】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンのうちの少なくとも一方は、対応する液体吐出ヘッドに配列された一部のノズル5-3,5-4だけから液体を吐出して作成したパターンであり、前記設定工程では、前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる前記一部のノズルのヘッド長手方向の吐出位置と、該一部のノズルのヘッド長手方向の吐出位置から推定される他のノズルのヘッド長手方向の吐出位置とに基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするものである。
これによれば、パターンを形成する際の液体消費を抑制しつつ、ノズル切替位置を設定することができる。
【0104】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンのうちの少なくとも一方は、個々のノズルから吐出される液体によって孤立ドット画像が形成された孤立ドットパターンであることを特徴とするものである。
これによれば、ドットの重なりによる誤差がなく、各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置を高い精度で特定することができる。
【0105】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンのうちの少なくとも一方は、個々のノズルからそれぞれ複数回吐出される液体によってノズルごとにヘッド長手方向に対して直交する方向に延びるライン状画像が形成されたラインパターンであることを特徴とするものである。
これによれば、より安定して、各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置を高い精度で特定することができる。
【0106】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記設定工程では、前記読取工程で読み取った前記ラインパターンにおける各ライン状画像の幅方向エッジを検出した結果から、対応するノズルのヘッド長手方向の吐出位置を決定することを特徴とするノズル切替位置のものである。
これによれば、各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置を簡易に特定することができる。
【0107】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンのうちの少なくとも一方は、1つのノズルから液体を複数回吐出して作成した吐出位置パターンを含むことを特徴とするものである。
これによれば、各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置を高い精度で特定することができる。
【0108】
[第9態様]
第9態様は、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に延びる線画像L1,L2を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った線画像の傾きから、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きを特定する傾き特定工程を有し、前記設定工程では、前記傾き特定工程で特定した傾きにも基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするものである。
これによれば、読取装置の設置誤差や記録材の搬送誤差などによる誤差を補正して、各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置を高い精度で特定することができる。
【0109】
[第10態様]
第10態様は、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、少なくとも1つのノズルから複数回吐出される液体によってヘッド長手方向に対して直交する方向に2つ以上の独立画像を作成して前記読取装置で読み取り、読み取った2つ以上の独立画像におけるヘッド長手方向の位置ずれ量から、前記第一吐出位置パターン及び前記第二吐出位置パターンの傾きを特定する傾き特定工程を有し、前記設定工程では、前記傾き特定工程で特定した傾きにも基づいて、前記ノズル切替位置を設定することを特徴とするものである。
これによれば、読取装置の設置誤差や記録材の搬送誤差などによる誤差を補正して、各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置を高い精度で特定することができる。
【0110】
[第11態様]
第11態様は、複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッド(例えば記録ヘッド3,4)のうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置され、前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置が設定された液体吐出ヘッド装置(例えば記録部2C,2K,2M,2Y)であって、前記ノズル切替位置は、前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取って得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、設定されていることを特徴とするものである。
これによれば、ノズル切替位置の設定作業が容易になるので、製造コストを抑えた液体吐出ヘッド装置を提供できる。
【0111】
[第12態様]
第12態様は、液体吐出ユニットであって、第11態様の液体吐出ヘッド装置を含むことを特徴とするものである。
これによれば、ノズル切替位置の設定作業が容易になるので、製造コストを抑えた液体吐出ユニットを提供できる。
【0112】
[第13態様]
第13態様は、液体を吐出する装置であって、第11態様の液体吐出ヘッド装置、又は、第12態様の液体吐出ユニットを備えることを特徴とするものである。
これによれば、ノズル切替位置の設定作業が容易になるので、製造コストを抑えた液体を吐出する装置を提供できる。
【0113】
[第14態様]
第14態様は、複数のノズルがそれぞれ配列された2つの液体吐出ヘッドのうちの一方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲を他方の液体吐出ヘッドにおけるノズル列のヘッド長手方向範囲と一部重複させるように、該2つの液体吐出ヘッドがヘッド長手方向に対して直交する方向にずらして配置され、前記一部重複させる重複領域内で液体吐出動作を行う有効なノズルを前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから前記他方の液体吐出ヘッドのノズルへと切り替えるノズル切替位置が設定される液体吐出ヘッド装置の前記ノズル切替位置を設定するために、コンピュータに実行されるプログラムであって、前記一方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第一吐出位置パターンと、前記他方の液体吐出ヘッドのノズルから液体を吐出して作成した第二吐出位置パターンとを読取装置で読み取る読取工程と、前記読取工程で読み取った各吐出位置パターンから得られる各ノズルのヘッド長手方向の吐出位置に基づいて、前記ノズル切替位置を設定する設定工程とを、前記コンピュータに実行させることを特徴とするものである。
これによれば、作業者の目視によるノズル切替位置の設定が不要となるため、作業者の作業負担を軽減でき、ノズル切替位置の設定作業が容易になる。
【符号の説明】
【0114】
1 :インクジェット記録装置
2 :ヘッドユニット
2C,2K,2M,2Y:記録部
3 :記録ヘッド
4 :記録ヘッド
5 :ノズル
20 :ヘッド駆動部
21 :駆動波形補正部
22 :ヘッド制御部
23 :基本駆動波形生成部
24 :駆動波形補正情報保持部
401 :ガイド部材
403 :キャリッジ
404 :液体吐出ヘッド装置
405 :主走査モータ
406 :駆動プーリ
407 :従動プーリ
408 :タイミングベルト
410 :用紙
412 :搬送ベルト
413 :搬送ローラ
414 :テンションローラ
416 :副走査モータ
417 :タイミングベルト
418 :タイミングプーリ
420 :維持回復機構
421 :キャップ部材
422 :ワイパ部材
440 :液体吐出ユニット
441 :ヘッドタンク
442 :カバー
443 :コネクタ
444 :流路部品
450 :液体カートリッジ
451 :カートリッジホルダ
452 :送液ユニット
456 :チューブ
491A :側板
491B :側板
491C :背板
493 :主走査移動機構
494 :供給機構
495 :搬送機構
600 :制御部
610 :CPU
620 :記憶部
630 :RAM
640 :ROM
710 :搬送駆動部
720 :操作表示部
730 :入出力インタフェース
740 :バスライン
800 :外部装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】