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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】歯肉組織の破壊抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20241212BHJP
   A61K 31/785 20060101ALI20241212BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241212BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K31/785
A61P1/02
A61P43/00 111
A61Q11/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017249912
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019116426
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友美
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】冨永 保
【審判官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-298913(JP,A)
【文献】特開2015-853(JP,A)
【文献】特開2010-59203(JP,A)
【文献】特表2005-509662(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0105526(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホコリン基含有重合体を含リポポリサッカライドの刺激により生じる歯肉線維芽細胞のMMP-1の産生を抑制するために使用される、MMP-1の産生抑制剤(但し、歯肉炎の予防用途に使用されるものを除く)。
【請求項2】
前記ホスホコリン基含有重合体が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、請求項に記載のMMP-1の産生抑制剤。
【請求項3】
液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、又は洗口液である、請求項又はに記載のMMP-1の産生抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯肉組織の破壊を抑制できる、歯肉組織の破壊抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯肉(歯茎)組織は、歯牙を支持する歯周組織であり、歯肉細胞(歯肉上皮細胞や歯肉線維芽細胞等)及び当該歯肉細胞が産生する細胞外基質(コラーゲン等)等によって形成されている。細菌感染や炎症等によって歯肉細胞が損傷を受けると、コラーゲン分解酵素MMP-1の過剰産生等が生じ、その結果、細胞増殖能の低下やコラーゲンの破壊が生じ、歯肉の退縮が引き起こされる。このような歯肉の退縮は、歯周病の進行を招き、歯の喪失要因にもなっている。そのため、歯肉組織の破壊を抑制し、健全な歯肉組織を維持することは、口腔内衛生上、重要になっている。
【0003】
従来、歯肉組織の正常化に有効な成分について種々報告されている。例えば、特許文献1には、レイシ、アカショウガ、ドクダミ等の植物抽出物を、歯肉の健康維持剤として使用できることが開示されている。しかしながら、口腔衛生製品において歯肉の健康な状態の維持又は改善に対する要求特性は年々高まっており、口腔衛生製品の処方の多様化にも対応する必要があり、歯肉組織の正常化をより効果的に実現できる新たな製剤の開発が求められている。
【0004】
一方、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体等のホスホコリン基含有重合体は、生体への親和性が高く、更に保湿作用を有していることが報告されており、主に外用製剤において利用されている。しかしながら、ホスホコリン基含有重合体が、歯肉組織に及ぼす影響については明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-263332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、歯肉組織の破壊を抑制して、歯肉を正常な状態に回復させ得る、歯肉組織の破壊抑制剤を提供することである。また、本発明の他の目的は、歯肉組織の正常化を図って歯肉退縮を予防又は改善できる、歯肉退縮の予防又は改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ホスホコリン基含有重合体は、炎症や細菌感染等が生じた際に歯肉細胞において過剰に産生されるコラーゲン分解酵素MMP-1の活性を抑制し、歯肉組織において細胞外基質として機能しているコラーゲンの分解を抑制でき、歯肉組織の破壊抑制及び歯肉退縮の予防又は改善に有効であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ホスホコリン基含有重合体を含む、歯肉組織の破壊抑制剤。
項2. 前記ホスホコリン基含有重合体が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、項1に記載の歯肉組織の破壊抑制剤。
項3. 液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、又は洗口液である、項1又は2に記載の歯肉組織の破壊抑制剤。
項4. ホスホコリン基含有重合体を含む、歯肉組織において産生されるMMP-1の活性抑制剤。
項5. 前記ホスホコリン基含有重合体が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、項4に記載のMMP-1の活性抑制剤。
項6. 液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、又は洗口液である、項4又は5に記載のMMP-1の活性抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、炎症や細菌感染等が生じた際に歯肉組織中で過剰に産生されるコラーゲン分解酵素MMP-1の活性を低減でき、歯肉組織内のコラーゲンを安定に維持して歯肉組織の破壊を抑制することができる。また、歯肉炎や歯周病は、コラーゲン分解酵素MMP-1の産生が促進されており、歯肉組織の破壊を伴うことが多いため、本発明は、歯肉炎や歯周病の予防又は改善にも有効である。
【0010】
また、本発明によれば、炎症や細菌感染等が生じた際に歯肉組織において過剰に産生されるMMP-1(コラーゲン分解酵素)の活性を抑制し、歯肉組織においてコラーゲンを安定に維持することにより、歯肉の退縮を効果的に予防又は改善することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.歯肉組織の破壊抑制剤
本発明の歯肉組織の破壊抑制剤は、ホスホコリン基含有重合体を含むことを特徴とする。なお、以下、「歯肉組織の破壊抑制剤」を単に「破壊抑制剤」と表記することもある。以下、本発明の破壊抑制剤について詳述する。
【0012】
[ホスホコリン基含有重合体]
本発明の破壊抑制剤は、ホスホコリン基含有重合体を有効成分として使用する。ホスホコリン基含有重合体には、歯肉組織において炎症や細菌感染等が生じた際に過剰に産生されるMMP-1(コラーゲン分解酵素)の活性を抑制し、歯肉組織においてコラーゲンを安定に維持させることにより、歯肉組織の破壊を抑制することができる。
【0013】
ホスホコリン基含有重合体とは、ホスホコリン基を含む単量体(以下、「ホスホコリン基含有単量体」と表記することがある)が重合したポリマーであり、保湿作用等を有する公知の成分である。
【0014】
ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体の種類については、特に制限されないが、例えば、ホスホコリン基とビニル基を有する単量体が挙げられる。ホスホコリン基含有単量体として、より具体的には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン等が挙げられる。ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体は1種単独で含まれていてもよく、また2種以上組み合わされて含まれていてもよい。これらのホスホコリン基含有単量体の中でも、より一層効果的に歯肉組織の破壊を抑制させるという観点から、好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが挙げられる。
【0015】
本発明で使用されるホスホコリン基含有重合体は、1種のホスホコリン基含有単量体からなる単重合体であってもよく、また2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。
【0016】
ホスホコリン基含有重合体が共重合体である場合、2種以上のホスホコリン基含有単量体からなる共重合体であってもよく、また少なくとも1種のホスホコリン基含有単量体と少なくとも1種のホスホコリン基含有単量体以外の単量体からなる共重合体であってもよい。
【0017】
ホスホコリン基含有重合体に含まれるホスホコリン基含有単量体以外の単量体の種類については、薬学的に許容されるものであってホスホコリン基含有単量とラジカル重合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ビニル基を有する単量体が挙げられる。ホスホコリン基含有単量体以外の単量体として、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メタクリル酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体以外の単量体は1種単独で含まれていてもよく、また2種以上組み合わされて含まれていてもよい。これらのホスホコリン基含有単量体以外の単量体の中でも、より一層効果的に歯肉組織の破壊を抑制させるという観点から、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレート、更に好ましくはアルキル基の炭素数が3~5のアルキル(メタ)アクリレート、特に好ましくはブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及び/又はアクリレートを示す。
【0018】
本発明で使用されるホスホコリン基含有重合体として、具体的には、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウム-51)、2-メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン・メタエリル酸ブチル・メタエリル酸ナトリウム共重合体(ポリクオタニウム-65)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム-64)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体(ポリクオタニウム-61)等が挙げられる。なお、ホスホコリン基含有重合体に関する前記表記において、括弧内の名称は化粧品成分表示名称を示す。
【0019】
本発明の破壊抑制剤において、有効成分として、1種のホスホコリン基含有重合体を使用してもよく、また2種以上のホスホコリン基含有重合体を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
これらのホスホコリン基含有重合体の中でも、より一層効果的に歯肉組織の破壊を抑制するという観点から、好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体;より好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体;更に好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。
【0021】
本発明の破壊抑制剤において、ホスホコリン基含有重合体の含有量については、使用するホスホコリン基含有重合体の種類、破壊抑制剤の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.005~0.5重量%、好ましくは0.025~0.25重量%、より好ましくは0.05~0.1重量%が挙げられる。
【0022】
[その他の成分]
本発明の破壊抑制剤は、ホスホコリン基含有重合体以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、増粘剤、湿潤剤、賦形剤、香料、甘味剤、色素、消臭剤、界面活性剤、溶剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0023】
防腐剤、殺菌剤、抗菌剤としては、例えば、ヒノキチオール、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化リゾチーム、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
【0024】
消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、アラントイン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、塩化ナトリウム、ビタミン類等が挙げられる。
【0025】
研磨剤としては、例えば、無水ケイ酸、含水ケイ酸、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース、ポリエチレン末、炭粒等が挙げられる。
【0026】
GTase阻害剤としては、例えば、アカバナ科マツヨイグサ属植物の抽出物、ブドウ科ブドウ属植物の抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、タステイン、タンニン類、エラグ酸、ポリフェノール、ウーロン茶抽出物、緑茶抽出物、センブリ、タイソウ、ウイキョウ、芍薬、ゲンチアナ、センソ、龍胆、黄連等が挙げられる。
【0027】
プラーク抑制剤としては、例えばクエン酸亜鉛やグルコン酸等が挙げられる。
【0028】
知覚過敏抑制剤としては、例えば、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0029】
歯石予防剤としては、例えば、ポリリン酸塩類、ゼオライト、エタンヒドロキシジホスフォネート等が挙げられる。
【0030】
歯質強化/再石灰化剤としては、例えば、フッ素、フッ化ナトリウム、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ等が挙げられる。
【0031】
増粘剤としては、例えば、プルラン、プルラン誘導体、デンプン等の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩類(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等)、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体等)、メタアクリル酸類の共重合体(メタアクリル酸とアクリル酸 n-ブチルの重合体、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの重合体及びメタアクリル酸とアクリル酸エチルの重合体等)等のセルロース系高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子物質;レクチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸トリイソプロパノールアミン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ブチルアミン、アルギン酸ジアミルアミン等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、寒天、キトサン、カラギーナン等の天然系高分子物質;コラーゲン、ゼラチン等のアミノ酸系高分子物質;アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、ジェランガム等のゴム系高分子物質等が挙げられる。
【0032】
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール、エリスリトール等が挙げられる。
【0033】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、デンプン、デキストリン、結晶セルロース、シリカ(軽質無水ケイ酸等)等が挙げられる。
【0034】
香料としては、例えば、天然香料(ウイキョウ油等)、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
【0035】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、アスパルテーム、キシリトール、水飴、蜂蜜、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、糖類(乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖等)等が挙げられる。
【0036】
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。
【0037】
消臭剤としては、例えば、塩化亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム、コーヒー生豆抽出物、ゴボウパウダー、緑茶、焙煎米糠エキス等が挙げられる。
【0038】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の両性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0039】
溶剤としては、例えば、水;エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソプロパノール等の1価アルコール等が挙げられる。
【0040】
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
本発明の破壊抑制剤において、これらの成分を含有させる場合、その含有量については、当該技術分野で通常使用される範囲で適宜設定すればよい。
【0042】
[剤型・製剤形態]
本発明の破壊抑制剤の剤型については、口腔内に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)が挙げられる。
【0043】
本発明の破壊抑制剤の製剤形態は、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り特に制限されないが、例えば、液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液(液体歯磨剤、洗口液は、一般にマウスリンス、マウスウォッシュ、デンタルリンス等と呼称されることがある)、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用軟膏剤等の口腔衛生剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、より好ましくは液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、特に好ましくは練歯磨剤が挙げられる。
【0044】
[用途・使用方法]
本発明の破壊抑制剤は、歯肉組織の破壊抑制の目的で、口腔内に適用して使用される。本発明において、「歯肉組織の破壊抑制」とは、歯肉組織中のコラーゲンの分解によって、歯肉組織が脆弱化され、破壊されるのを抑制することであり、歯肉組織の破壊されるのを予防することに加え、歯肉組織の破壊の進行を抑制することも包含される。
【0045】
また、歯肉炎や歯周病は、コラーゲン分解酵素MMP-1の産生が促進されており、歯肉組織の破壊を伴うことが多いため、本発明の破壊抑制剤は、歯肉炎の予防又は改善剤、歯周病の予防又は改善剤等として使用することもできる。
【0046】
本発明の破壊抑制剤は、その製剤形態に応じた形式で口腔内に適用して口腔内で一定時間滞留させればよい。本発明の破壊抑制剤の使用量及び使用頻度については、特に制限されないが、例えば、1回当たりホスホコリン基含有重合体が0.05~5mg程度となる量を、1日当たり1~数回、好ましくは1~3回程度の頻度で使用すればよい。
【0047】
2.歯肉退縮の予防又は改善剤
歯肉組織において、コラーゲンは細胞外基質として正常な歯肉組織の形成に寄与している。ホスホコリン基含有重合体は、炎症や細菌感染等が生じた際に歯肉組織において過剰に産生されるMMP-1(コラーゲン分解酵素)の活性を抑制し、歯肉組織においてコラーゲンを安定に維持することにより、歯肉の退縮を予防又は改善することができる。従って、本発明は、更に、ホスホコリン基含有重合体を含む、歯肉退縮の予防又は改善剤を提供する。
【0048】
本発明の歯肉退縮の予防又は改善剤において、使用するホスホコリン基含有重合体の種類や含有量、配合する他の成分、剤型・製剤形態、使用方法等については、前記「1.歯肉組織の破壊抑制剤」の欄に記載の通りである。
【0049】
歯肉退縮の予防又は改善は、退縮した歯肉を健常な状態に回復又は維持させて歯肉退縮が関連する疾患や障害の予防又は改善に有効になるので、本発明の歯肉退縮の予防又は改善剤は、歯肉退縮が関連する疾患又は障害の予防又は改善剤として使用することもできる。
【0050】
3.歯肉退縮の予防又は改善剤
ホスホコリン基含有重合体は、歯肉組織において産生されるMMP-1(コラーゲン分解酵素)の活性を抑制することができる。従って、本発明は、更に、ホスホコリン基含有重合体を含む、MMP-1抑制剤を提供する。
【0051】
本発明のMMP-1抑制剤において、使用するホスホコリン基含有重合体の種類や含有量、配合する他の成分、剤型・製剤形態、使用方法等については、前記「1.歯肉組織の破壊抑制剤」の欄に記載の通りである。
【0052】
本発明のMMP-1抑制剤は、歯肉組織において産生されるMMP-1の活性を抑制する目的で、口腔内に適用して使用される。
【実施例
【0053】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
試験例1:歯肉細胞がLPSの刺激によって産生するMMP-1の活性抑制効果の検証
ヒト口腔歯肉繊維芽細胞HGF-1(CRL-2014、ATCC)を10%FBS(ウシ胎仔血清)を含むD-MEM highグルコース培地に懸濁し、96wellプレートに1×104cells/wellとなるように播種した。細胞播種1日後、培養液を除去し、表1に示す試験液を100μL/wellとなるように各ウェルに添加した。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示す試験液を添加した後に、37℃5%CO2インキュベーターで培養した。試験液の添加から24時間後に培養液を除去し、MMP-1定量用ELISAキット(R&D製 Duo Set Human Total MMP-1)を用いて、培養液中のMMP-1を定量した。また、同時に、Cell Couting kit-8(同仁化学製 製品コードCK04)を用いて、生存している細胞の指標となる450nmの吸光度を測定した。別途、既知細胞数に対して、前記Cell Couting kit-8を用いて450nmの吸光度を測定して細胞数VS吸光度の検量線を作成し、当該検量線を用いて試験液添加後の細胞数を算出した。次いで、生細胞1個当たりのMMP-1量を算出し、下記式に従って、コラーゲン分解活性(%)を算出した。なお、本試験はn=3の条件で実施し、コラーゲン分解活性は、それらの平均値として算出した。
【数1】
【0057】
得られた結果を表2に示す。この結果、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を添加した場合(実施例1)に、無添加の場合(比較例1)に比して、コラーゲン分解酵素(MMP-1)の活性を低減できることが確認された。即ち、本結果から、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体は、炎症や細菌感染時の歯肉組織内のコラーゲンを安定に維持させ、歯肉組織の破壊や歯肉退縮を抑制し得ることが明らかとなった。
【0058】
【表2】
【0059】
処方例
表3に示す練歯磨剤、及び表4に示すマウスリンスを調製した。当該練歯磨剤及びマウスリンスは、ホスホコリン基含有重合体(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、又はポリクオタニウム-64)が含まれており、炎症や細菌感染時の歯肉組織内のコラーゲンを安定に維持させて歯肉組織の破壊や歯肉退縮を抑制する効果、およびコラーゲンの分解に伴って生じる歯ぐき下がりを予防する効果が得られるものである。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】